10月の売上高は△1.4%。マイナス幅は9月(△23.6%)に比べて22.2ポイントの大幅改善になった。コロナ禍の影響で5月に底打ちして以降の最高値となっている。前年売上高を上回る印刷会社が現れ始めた。
しかし、昨年10月は消費増税前の駆け込み需要による反動減があったので、名目上の前年比が押し上げられた効果がある点を差し引いてみる必要がある。実質的には前年比95%前後と見るべきで、前年水準には至らないながらも回復基調は続いていると考えるべきだ。
業種・業態別では、商業印刷はコロナ禍以降の最高値となったが、いかんせん昨年の落ち込み(△8.5%)が大きかった前年要因がある。出版印刷は昨年10月以来、1年ぶりの前年比増と、製品別では最も早く回復を遂げた。長期低落の続いてきた出版市場の持ち直し傾向が影響しているようだ。総合印刷は9月まで堅調な回復ぶりだったが、10月はもたついた。紙器・事務印刷は、他の製品より遅れて9月から回復傾向を見せ始めた。
規模別では、30~49人(+8.8%)がいち早く前年比増を果たし、それに29人以下が続いて、小規模の方が早い戻りとなっている。50人以上は△6~△8%程度。受注件数(△10.0%)は緩やかな回復傾向が続いている。材料仕入額は、用紙が△1.7%とコロナ禍以降の最高を更新。インキ+7.6%、CTP/PS版+9.9%と増加しており、印刷の実需が戻りつつある兆しが見られる。
【印刷会社経営者の声】
■茨城:商業
タイミングが重なり、同業者のオンラインセミナーに立て続けに参加しました。このような状況でも、各社工夫を凝らして新しい商品開発やサービス展開を行う姿勢に、感銘と刺激を受けることができました。
■ 岐阜:その他
精進を続けることは難しいが、続けることで力になる。良いことはなかなか続かないが、良くないことは容易に続くものだ。「良くないことへの対応」が精進と言えるなら、きっといつか力になると信じたい。
■ 神奈川:商業
コロナ禍による影響にも若干回復の兆しが見えてきたが、再び全国的な感染拡大で春先の状況に逆戻りした感が強い。ワクチンの早期実用化が現実に見えないなか、さらに厳しい状況が続くと思われる。
■ 長野:総合
デザイナーと営業の連携が欠かせない時代です。両方が連携すれば他社に負けない強いチームワークを育てられます。営業を強化して、案件を受注につなげていくべく受注力強化を図りましょう!!
■ 和歌山:商業
withコロナ、afterコロナに向けた策として、社員全員に客体ではなく、主体的に「何のために仕事をしているのか」という経営・営業理念を真剣に考えてもらうことが、一番大切なように思う。
■ 熊本:商業
10月~1月までの見通しは、例年よりも若干良い。原因はコロナ需要。顧客周辺も少しずつ良くなっているよう。しかし、来年の同時期に不安があるので、今のうちに足固めをしておこう。コロナでなくなった仕事は来年同時期に戻ってくるのか、見通しが立たない。
(『JAGAT info』 2020年12月号,印刷経営ウォッチング,p56-57より抜粋して要約)