オンラインビジネスは、コロナ禍では追い風だ。印刷業においてもオンラインイベントやオンラインプレゼンテーション支援サービスなどのビジネスチャンスを耳にすることがある。
page2021オンラインカンファレンスを終えての考察
慣れないオンライン配信ノウハウについては、運営方法やシステム、設備について相談されることがあるも多くなった。JAGATのpage2021オンラインも展示やカンファレンス、セミナーの内容に加え、配信や映像収録ノウハウが重要な要素となっている。オンライン配信においてはカメラが必要になるがSNSなどの情報を見ているとしばしば的外れな情報もあるので気を付けたい。時折話題になる動画撮影におけるビデオカメラVSデジタルカメラ(デジタル一眼) について取り上げてみた。
動画収録ができる機材は色々ある。ビデオカメラと呼ばれるものの他にも、デジタル一眼やコンデジ、スマートフォン、GoPro(アクションカメラ)、監視カメラなど様々だ。中でもユーチューバーの間で話題になっているカメラがデジタル一眼だ。確かに魅力的な機材のひとつだ。だからと言って、必ずしも動画収録においてのベストチョイスとは限らない。使う目的や用途によって変わるからだ。状況に合わせて選ぶことが必要だ。何をどんな風に収録するのか、どんな仕上がりイメージにするのかを考え必要な機種を選定することだ。
<デジタル一眼カメラの利点>
・背景をボカした映像が撮影できる
・比較的暗い場所での撮影に強い
<ビデオカメラの利点>
・長時間の撮影に強い
・比較的ピント合わが簡単で使い勝手良い
背景をぼかすこと、高感度画質がどこまで必要?
デジタル一眼は本当に必要なのであろうか。デジタル一眼カメラの特徴は、映像イメージを記録するセンサーサイズが比較的大きいことだ。一般的な主なデジタル一眼カメラのイメージセンサーのサイズは、フルサイズ(36mm×24mm)、APS-C(23.6mm×15.8mm)、フォーサーズ(17.3mm×13mm)などで、それ以外には1型(13.2mm×8.8mm)やフルサイズよりも大きい中判(43.8mm×32.9mm)と言ったものもある。コンデジやスマートフォンなどのイメージセンサーは1/2.3型前後の大きさで、フルサイズと比較するとかなり小さい。
画素ひとつひとつのセンサーサイズが大きいほど多くの光を取り込めるので画質が良くなる。一方、センサー性能が向上した現在ではどの程度必要かを判断することも重要だ。見る側のニーズを知り、効果に見合った性能を判断することが求められる。動画収録では、解像度に起因する画素数の多さはあまり優先事項にはならない。例えば、フルハイビジョン2Kは1080P(1080×1920)で200万画素程度、4Kは2160P(2160×3840)で800万画素程度の画素数あれば事足りる。ポイントは、階調再現や高感度性能に加えてフレームレート(コマ数)になる。
絵作りとしては、レンズの焦点距離とイメージサークルのサイズ、絞り(f値)の関係よる被写界深度(ピントの深さ)を意識することだ。つまり、焦点を合わせた被写体の前後のボケ加減が判断のポイントだ。例えば、オンラインセミナーを室内で収録する場合は、ピントはやや深い方が良い。講師を映し、背景のモニターや資料がハッキリと見えた方が良いからだ。また、レンズ性能面からも画質がもっとも安定しているのはf8(絞り値)あたりが望ましい。因みに、筆者の場合はオンラインセミナーの収録において、1型(13.2mm×8.8mm)センサーサイズのビデオカメラを使用している。理由は、30分を超える長時間収録時間と十分な映像品質が保てるからだ。ちなみに、ISO800、シャッタースピード80分の1、f8、4800Kで撮ることにしている。余計な背景のぼかしは不必要だ。
レンズのイメージサークルとは何か
イメージサークルとは、レンズを通った光が結像する(ピントが合う)円形の範囲のこと。四角のセンサーフレームによって切り取っている。イメージサークルは、カメラのセンサーサイズより小さいとケラレがおきる。画角は、レンジの焦点距離とセンサーフレームサイズで決まる。
オンライン配信に欠かせないカメラ選定のポイントは、今回はセンサーサイズと絵作りの視点で述べたが項目は多岐にわたりキリがない。コツは、撮りたいもの、イメージ、目的を決めることで必要な要素を絞ることだ。例えば、JAGATで求められている収録内容は、カンファレンスやセミナーだ。講演者数、時間、手法、会場、受講人数等が分かれば照明や音声、撮影方法が決まる。自ずとカメラの種類はビデオカメラの出番が多くなっている。
(CS部 古谷芸文)