コロナ禍によりライフスタイルが大きく変わり、仕事や生活のなかで動画コンテンツに触れることは多いだろう。page2021オンラインを経て、動画の有効性と課題について紹介する。
■動画コンテンツは有効なPRツール
JAGATも緊急事態宣言への対応に伴い、34回目を迎えた印刷・メディアの展示会「page2021」を初の完全オンラインで開催した。今回は、本展の来場者向けに双方向でコミュニケーションが図れる「チャット、名刺交換機能」や、画像やテキストで構成される「製品情報ページ」、基調講演、セミナーなど合計200本以上の無料で視聴できる「動画コンテンツ」を用意した。
実際に来場者はどの機能を使用して、どの機能が良かったのかを把握するべく来場者にアンケート(有効回答数306)を行った結果、2つの問いに対して、共に最も回答が多かったのは「動画コンテンツ」だった。
Q.page2021オンラインのコミュニケーションツールについて
【Q.1】 | 最も利用した機能は? |
【A.1】 | 動画コンテンツ |
【Q.2】 | 出展社から必要な情報を得やすかった機能は? |
【A.2】 | 動画コンテンツ |
※page2021オンライン来場者アンケートより抜粋
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動画は画像やテキストより情報量が圧倒的に多く、出展者の製品・サービスを理解しやすい。また、オンデマンド配信の場合はいつでも視聴できるので、来場者は細切れの時間を利用して少しづつ視聴できる点できるため利便性が高い。それらの理由で動画コンテンツを選んだ回答者も多かった。
■動画の課題は視聴者の飽き
この1年間、イベントや研修を動画で提供していて肌で感じることは、参加者(視聴者)の集中力が続かないことである。では、動画の場合どれくらいの時間を視聴しているのか、本展における適切な動画コンテンツの長さはどうなのか?そこで、YouTubeのアナリティクスを利用して、page2021の無料オンデマンドセミナーで検証してみると平均視聴時間は5分46秒であった。それが長いか短いかは別として、従来の会場セミナーに参加している方の多くは、開始5分前後で離席することはなく終了時刻まで聞くことが多い。動画の視聴はその手軽さ故に視聴を止めるのも容易い。動画コンテンツは、いかに端的に表現し、飽きさせない構成にするかが勝負の分かれ道なのが良くわかる。その平均視聴時間は5分46秒のデータをベースに、5分程度の視聴時間の動画コンテンツをつくればいいのか?それとも、最初の5分間で飽きさせず(離脱させず)に、それ以上見てもらえるような編集構成にするか等、仮説→検証→実行を繰り返すことが重要になる。
無料オンデマンドセミナーのコンテンツとして、平均視聴再生率が高かったのが、以下の2つのコンテンツである。
タイトル | 平均視聴再生率 |
page2021オンラインの歩き方 ダイジェスト4分ver. | 53.28% |
5分で分かるオンライン展示会の活用法 | 47.62% |
それぞれ5分以内の短いコンテンツであることが、再生率を高めたひとつの要因だが、動画タイトルに4分、5分と時間を明示していることも大きい。「4~5分なら視聴してみようか?」「何分のコンテンツか事前に理解してから視聴する」等の理由で、視聴前のユーザーの心理的ハードルを下げることが、再生率だけではなく視聴クリック数の増加にも起因する。コンテンツや撮影のクオリティが高さは再生率のアップの大きな要因ではあるが、視聴前の動画タイトル、サムネイル、概要コメントへの細かい配慮の差が視聴数、再生率の差を生むことを実感した次第である。
今後も、with/afterコロナによる新しい生活様式や、5G(第5世代通信システム)の整備によりますます動画は身近な存在になるだろう。データ通信の高速化、低遅延、同時多数接続によって、4K、VR等の没入型・バーチャル体験型の高解像度の動画や、個人が気軽に投稿できるショートムービー、ライバーも増えてくる。プレイヤーが増えれば、動画で差別化を図るのはどんどん難しくなってくるのは当たり前だ。しかし、オンライン化の波は止まらない今、企業がビジネス活動において動画を効果的に活用することからは避けては通れない。数年後5Gが全国的に使用できる時代に向けて、しっかり対応していく必要がある。そのためには、動画の基本理論を勉強することはもちろん、実際に撮影、編集、投稿を繰り返し経験することが動画の勘所をつかむうえで重要である。そうした勉強や経験ができる機会をJAGATとしては設けていきたい。
JAGAT 塚本 直樹