第31期クロスメディアエキスパート認証論述試験講評

掲載日:2021年6月10日
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第31期クロスメディアエキスパート認証試験は、2021年3月14日(日)、東京・大阪など全国4会場で実施された。

第2部論述試験は、架空の企業に関する与件文を読み、顧客の課題を解決するコミュニケーション戦略提案書の内容を記述するものである。

リサイクルショップ運営企業への企画・提案

リサイクル(リユース)市場は、数10年に渡って成長を続けている。近年は、フリマアプリなどが登場したことで個人間のネット販売が急成長しており、市場規模の拡大に貢献している。

提案先は、中部地区で中古衣料やゲーム・玩具、雑貨、ブランド品などを扱うリサイクルショップを30店舗運営している企業である。これまで、古着・ファッション、ゲーム、玩具、貴金属・ブランド品というジャンル・顧客層ごとに店舗を分けて運営していたる。また、「超スピード買取査定」や「地域密着サービス」などで多くの固定ファンを獲得し、大手リサイクルショップチェーン店に対抗して業績を伸ばしてきた。

しかし、元々は男性・ファミリー層の顧客が中心であり、女性向けの商品構成に課題があった。数年前に開設した30代以上の社会人女性向けの貴金属・ブランド品店舗は、商品構成が豊富でないこと、ターゲットとなる女性からの認知度が低いことなどから、業績が低迷していた。そこで、若年層~30代女性をターゲットにした古着・靴・バッグ・小物などファッション、インテリア雑貨、ブランド品などを総合的に扱う新ブランドを立ち上げ、女性向け市場を開拓しようとしている。

新ブランドに関してファンとのつながりを重視し、新たな生活者とのコミュニケーション手法を確立したいと考えており、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めている、という設定である。

そのためにはどのようなコンテンツを用意し、どのようなキャンペーンを行うべきか。SNSや動画配信をどのように活用するか。これらを提案書の要素として記述することが求められている。 第31期試験与件:リサイクルショップ

解答方式のポイントと採点基準

解答方式は、提案書の要素を所定のフォーマットに記述するものである。

「課題設定」「ターゲット」「提案の骨格・方針」 「施策内容」 「スケジュール」「概算見積」 「タイトル」「序文」「施策の総合的効果」

という項目がある。

どのような意図でどんなコンテンツを用意するか、共有・拡散を促す仕組みは何か、競合他社との差別化などを記述することが求められている。

講評

新ブランド・新店舗が中高生~30代女性をターゲットにしていることから、Twitter、Instagram、LINEなどを活用する施策が多く取り上げられていた。また、コーディネート例を店員が紹介・解説する動画を撮影し、Youtubeにアップするなど、実践的な提案もあった。

リサイクルショップの品揃えは、一般に商品の買取量や内容に比例する。また、商品を持ち込む顧客ほど、リサイクル品を購入する傾向がある。そのため、買取を促進するための情報発信に注力した提案も、いくつかあった。

例えば、このチェーンは「超スピード買取査定」を標榜しており、同意を得たうえで実際に査定している様子を撮影し、公開するというものがあった。また、商品を持ち込みした顧客に、その経緯やコメントなどをメッセージカードに記入してもらい、そのカードをSNS上で公開するというものもあった。これらは、買取に抵抗のある人たちに心理的なハードルを下げる効果が期待できるだろう。類似したものとして、保有している衣料や小物を整理して、買取に持ち込もうという断捨離キャンペーンという提案もあった。また、買取キャンペーンを行い、クーポンを発行するなどがあった。

買取促進以外では、タウン誌を通じた情報発信で自社サイトに誘導するというものや、来店促進のために店舗でくじ引きなどのイベントを行うものなどがあった。ポイントカードを通じた割引キャンペーンなどもあった。 合格レベルの答案では、全般にSNSを通じた情報発信や上記のような買取キャンペーンが目立っていた。SNSを通じた情報の共有・拡散を重視しており、妥当だと言える。AISAS、AISCEASなどの消費行動モデルを反映したシナリオがあると、さらに説得力が上がるだろう。

(JAGAT 資格制度事務局)