標準作業手順、標準工数の設定とスキルマップの作成、活用に向けて
案件別収支の見える化の意義は、問題点を具体的に把握し、小さなPDCAサイクルを素早く回す改善活動にある。そして、見える化の土台となるのが正確な実績データの把握である。
実績データの把握手法は、手書きの日報からオペレータによるバーコード入力やシステム画面への着手、完了入力へとシフトしつつある。かつてJDFワークフローが登場したときには、製造機器から自動でダイレクトに稼働実績データが取得できることが話題になったが、費用対効果などが課題となり本格的な普及には至っていない。しかし、ここにきてクラウドベースの比較的利用しやすい形態でのシステムがメーカーから提供されてきている。オペレータによる実績入力は、うっかりミスなどのエラーをゼロにはできないし、改善のためのデータを取得しようと細かい作業状況のデータを取ろうとすると操作が煩雑になり、かえって生産性を落としかねない。
オーソドックスな生産性改善活動は次のようなものとなる。①稼働実績の見える化、②作業の標準化、③標準工数の設定、④スキルマップの作成、⑤改善目標の設定、⑥改善成果の見える化、⑦人事評価への反映。これらの取り組みを行う上では、設備の稼働状況のデータは細かく「見える」ほどスムーズに行うことができ、稼働実績の自動取得の意義は大きい。
一方で、精緻な実績データが取得できたとしても、人員や時間に余裕のないなかで、業務を行いながら改善活動に取り組むことは容易ではないし、上からのやらされ感だけでは継続した取り組みは難しい。
スキルの見える化を行うツールがスキルマップである。稼働実績とあわせて、オペレータが自分の状況を客観的に知ること、そして改善活動の成果を客観的に「見える化」することでモチベーションの維持や現場の活性化につなげることができる。
9月7日(火)に行う印刷総合研究会のセミナーでは、稼働実績の取得ツールとして(株)ホリゾンの「iCE LiNK」を取り上げる。ポストプレスは典型的な労働集約の現場であり、かつ製造工程の最後に位置するため効率的な稼働よりも納期最優先の対応となっていることが多い。しかしながらコロナ収束後は人手不足も想定され、自動化だけではないスマート化を実現するツールとして期待される。
また、現場に寄り添う改善活動サポートを続けている(株)トークから、標準作業手順と標準工数、スキルマップの作成方法とそれらを活用した改善活動の進め方について伺う。
(研究調査部 花房 賢)
印刷総合研究会
2021年9月7日(火)「稼働実績の見える化から改善成果の見える化へ」