印刷統計によると、2020年の印刷業の生産金額は3465億円(前年比6.4%減)、商業印刷と出版印刷で5割以上を占め、特に商業印刷の動向が市場を左右しています。(数字で読み解く印刷産業2021その7)
JAGAT刊『印刷白書』では多くの公的統計データを利用して、印刷メディア産業の現状を捉えています。印刷市場の規模を見るときには「工業統計」が使われますが、年に一度の工業統計調査に対して、毎月の「印刷統計」では製品別・印刷方式別の生産金額を知ることができます。
5月28日公表の「工業統計」2020年調査の産業別統計表〔概要版〕は2019年実績ですが、6月2日公表の「経済産業省生産動態統計」2020年年報には、2020年1~12月の「印刷統計」を集計した2020年実績が掲載されています。
工業統計の出荷額4.8兆円に対して、印刷統計の2020年年計では生産金額は3465億41百万円です。この差はどこからくるかというと、印刷統計は100人以上の印刷業を対象とした標本調査で、印刷前工程(企画・編集・製版など)と印刷後工程(製本・加工など)、用紙代などを除いた、印刷工程の生産金額に限定された数字だからです。
印刷製品別の構成比を見ると、商業印刷と出版印刷で5割以上を占めています。印刷方式別では平版印刷(オフセット印刷)が圧倒的ですが、その他の印刷方式(デジタル印刷など)が毎年少しずつ増えています。
「印刷統計」の2004年調査開始以来の製品別シェアを見ると、この16年間で大きく減少したのは出版印刷(30.0%→16.7%)で、包装印刷は逆に13.0%→23.7%と大きくシェアを伸ばし、建装材印刷は3.2%からこの8年間は4%台で推移しています。出版不況の長期化、包装材や建装材の多様化などを反映した数字となっています。
同じく2004年調査開始以来の印刷方式別シェアを見ると、平版印刷は2011年までは70%を超えていましたが、2020年は63.8%となっています。その他の印刷(デジタル印刷など)は逆に3.9%→7.1%と着実に増加しています。
時系列表で過去61カ月分の推移を見ると、商業印刷の動向がそのまま印刷業全体の動向となっていることがよくわかります。商業印刷の動向はクライアント産業の動向によって決まるわけで、また違う統計データを見る必要があります。
『印刷白書2020』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)