『未来を創る』(英語名はTHIS POINT FORWARD)発刊決定

掲載日:2015年4月27日

三月末に発刊予定だったWebb博士の著作『未来を創る』が、約一か月の遅れで四月末に発刊できる運びとなった。読み進めるうちに本の内容の深さが伝わり、機械的な訳や表面的な直訳はしたくないとの気持ちから、JAGAT内でも徹底的に議論が行われた結果である。

『未来を創る』は印刷技術書というよりは、マーケティング指南書であり、且つ「単なる提案力のある印刷会社になれ」という単純明快なものでもない。

印刷にとってのライバルであるWebが、マーケティング面で日進月歩の進歩を見せている。マスマーケティングに置いて印刷はかなりの競争力を有しているのだが、マーケティング対象がマスから個になると印刷でそれに追従するのは正直難しくなる。

学校で教えるマーケティング手法などもう古いと言って、一時、女子高生集団等を雇って個別にマーケティングしたりしていたのが、目新しく感じられたこともあったが、これもあくまでマスマーケティングに立脚したものであることは忘れてはならない(だから最近は忘れ去られてしまったようだ)。

筆者としては、マスマーケティングを否定するものではないし、マスマーケティングに対してなら印刷はとても大きな力を発揮できると思っている。マスまで大きくなくともミドルくらいでも印刷は大きな戦闘力を有しているだろう。しかし、Web革命がもたらした一つの結果として、消費者の行動もマスから個に変化したし、マーケティング手法もそれに伴ってデジタルマーケティングに移行しようとしているのだ。これは素直に認めないといけない。要するに一億同じ嗜好で、同じブランド物を買い、同じ行動パターンをする時代は終わったということである。

『未来を創る』の中ではページ数を多く割いて、印刷会社がやることは新しいデジタルマーケティングに沿った印刷物を作っていかねばならないということを力説している。デジタルマーケティングの必須アイテムとしてマーケティングオートメーションが注目され、欧米の代表的なマーケティングオートメーション企業が紹介されている。

例えばマルケトやエロクア(オラクルに買収され、Oracleマーケティングクラウドなどと区別できなくするのかも?)だけではなく、印刷業界になじみの深いEFIやAdobeもこの辺のマーケティングオートメーションツールに力を入れているのだ。印刷周辺の会社もこの辺のところをやっているなら印刷会社もやるしかないだろう。そのアウトプットにはやはりデジタル印刷機の方が適しているといえるが、必ずデジタルというものではないことは断っておく。

さて、話を整理してみよう。JAGATでは『未来を創る』の翻訳・編集を進めていくうえで何回も議論を行った。そんな議論のきっかけとしても『未来を創る』は最適なツールである。この本を熟読することで、印刷業の未来について真剣に考えることが出来たと思う。

その一つの結論なのだが、マスマーケティングに乗った印刷をビジネスにするのは悪いことではなく、ビジネスは確実に存在しているのだが、この先無尽蔵に増えるかというとそれには「?」と言わざるを得ない。そしてマスの仕事をする会社は上場(大)会社か、力のある中堅会社と一部の特殊な会社で寡占されている(しまう)。それ以外の伸びしろといえば、やはりこれからはデジタルマーケティングに立脚したバラエティに富んだ(デジタルマーケティングの結果としての多品種小ロットといっても良い)印刷物をデジタルマーケティングに沿った方法でデリバーしていくというビジネスが大きくなっていくというのが、現在のところの結論である。

クロスメディアが得意な会社は、クロスメディアもオムニチャンネル的(クロスチャンネル的)にビジネスにしていけば良い。Webが出来ても印刷は出来ないが、印刷が出来ればWebはやれないことはない(印刷とは違ったスキルが必要だが…)。このように考えていくと、印刷会社の社数でみるとこの方向で行かねばならない会社の方が多そうであり、これからJAGATでは啓蒙活動だけではなく、周辺スキルの教育も考えている。

まずはこの話が本当かどうか?経営者(+中堅リーダー)の方はご自分で『未来を創る』を読んで、考え、議論し、結論付けて行動していただきたいと願っている次第である。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

関連情報

『未来を創る― THIS POINT FORWARD ―』