印刷業定点調査 各地の声(2021年8月度)

掲載日:2021年9月27日

6月の売上高は+8.9%。消費増税前の駆け込み需要があった2019年7~9月以来の3カ月連続プラス。ただし、コロナ禍前の2019年6月と比べた実質は売上高△13.6%、受注件数△16.9%。依然として10~20%減で推移している。なお、4月の19年比はそれぞれ△7.2%、△12.4%、5月の19年比は△12.7%、△21.3%だった。売上高は4月から2カ月連続で減速、実質的な回復の足取りは次第に弱くなっていることが分かる。

地域別では、首都圏(2020年比:+12.9%、2019年比:△16.6%。以下同)は4カ月連続のプラス。名古屋圏(+8.4%、△14.9%)は3カ月連続のプラス。首都圏・名古屋圏と比べて回復の遅かった大阪圏(+17.6%、△9.5%)は、一転して全国で最も高くなった。

業種・業態別では、商業印刷(+14.9%、△8.1%)が3カ月連続で2桁の高い伸びだが、昨年の落ち込んでいた反動である。出版印刷(+1.7%、△23.3%)は3カ月連続のプラスだが、19年比は大幅減。総合印刷(△3.4%、△19.8%)はコロナで落ち込んだ昨年をも下回った。紙器・事務印刷(+18.4%、△7.2%)は2カ月連続のプラス、19年比の落ち込み幅は最も小さい。

用紙(+5.2%、△19.7%)、インキ(+28.8%、+15.9%)、CTP/PS版(+22.5%、+0.3%)など、材料仕入額も減速傾向だ。労働時間(+4.6%、△11.7%)は4カ月連続の増加とはいえ、19年比では10%以上の減が続く。

 

【印刷会社経営者の声】

茨城:商業
厳しい状況が続きますが、なんとか当社期末(7月)を迎えることができました。お客様・協力会社様・スタッフの皆様に感謝いたします。個人的にはワクチンを接種できました。少しでも明るい気持ちで来期を迎えたいと思います。

 

東京:事務
コロナ禍でも伸びている印刷会社、元気な会社がある。既存業務をただオペレーションするのではなく、より良い顧客満足や市場・社会・ユーザーのためになることを絶えず思考し、勉強し、行動・実践し続ける会社だ。自分たちの枠や常識はどんどん取っ払い、変化を楽しめる文化を作っていきたい。

 

神奈川:商業
仕事量は前年より増加傾向ですが、東京オリンピック終了後は新型コロナの感染拡大によって減少の懸念もあります。ワクチン接種率の高まりが感染拡大の歯止めになることを期待しています。

 

長野:総合
コンピューター導入時にさまざまなソフトが利用しやすくなっていることを感じます。しかし、その一番の課題はデジタルツールを扱える人材の有無です。一人でも多く確保して営業力強化に生かし、成果を上げることです。

 

岐阜:総合
先月、事業再構築の第1回採択結果が発表されました。残念ながら当社は不採択でしたが、採択された事業の一覧を見ていると、各社が創意工夫を凝らしていることが分かります。事業再構築は容易ではありませんが、同じように頑張ろうとしている企業がいると思うと、負けてはいられない。

 

岐阜:その他
「『差別化』は目指すものではない。自社の特長(強み)を伸ばすことにより、結果として差別化されることとなるのである」と聞いてナルホドと思った。まずは自社の特長をしっかり理解しなければ。もちろん、社員全員が。

 

愛知:出版
目指すはコロナ前。後期は事業戦略。体制の「リ・デザイン」。第1四半期は計画達成したが、さらに売り方の変革、時間当たり加工高の向上に力を注ぐ。

 

大阪:商業
今月はワクチン関係でパンフは大きく伸びたが、それ以外は低調、戻りが鈍い。コロナ禍が続くだろうという危惧を前提に、その打開策を模索する。

 

和歌山:商業
JAGATの提言を信じて、昨年よりウェブサイトの制作・運用を見直し、その過程で自社のサービスを棚卸ししてウェブサイト上に全て展開してきた。アクセスを分析し、弱みをそぎ落としていく作業を進めたところ、自社のウェブサイトのアクセスが急増して、単価は小さいながら受注が堅調だ。専任者の頑張りと、営業・生産管理関係者とで情報を共有しながら、上記の作業をコツコツとしてきた結果だと思う。

 

山口:事務
地元の旅行代理店の話。個人客はもちろん団体旅行客のキャンセルが続く一方、お客様の懐には将来の旅行代金が貯まっているので、コロナ明けには豪華旅行が一気に増えそうとのことです。すでにその予兆があるとか…。

 

熊本:商業
3月までは例年並みだったが、4・5月は受注が鈍った。夏のイベントは軒並み中止が決まって、仕事的にも気分的にも寂しいばかり。昨年の緊急事態宣言明けは受注が大きく伸びたが、今年は本当の意味でのポストコロナに期待。

 

(『JAGAT info』 2021年8月号,印刷経営ウォッチング,p68-69より抜粋して要約)