【マスター郡司のキーワード解説2021】ミラーレス

掲載日:2021年10月29日

今回はミラーレス一眼デジカメについて語る。先日、取材を受けた際に写真撮影があり、そのカメラマンがSONYの一眼デジカメを持っていた。ミラーレスカメラ特有のシャッターテクニックだったものだから、しばしカメラ談義をしてしまった。

 

モデル専門のカメラマンでも「さぁ撮るよ!」「いいよ、いいよ、乗ってきた♪」などという言葉や合図音は必須である。連写されているシャッター音を聞くと、モデルさんも乗ってくるようだ。写真館なら鳩が出るカメラ風の撮り方が基本なので、子供をあやすグッズと共に、合い言葉でシャッターチャンスを合わせる。しかし、この前撮影してくれたカメラマンは、ビデオカメラのように無音でシャッターを押すのだ。カメラはSONYのαシリーズであり、今や現役のプロカメラマンのデジカメといえばSONYが普通で、Canonは営業力があるので踏みとどまっているが、Nikonの元気がなくなってしまっている。

 

もともとC&Nの2社が良いとされていたのは、機械系がしっかり設計・製造されていたからであり、この2社のミラーアップ機能が特に優れていたのだ。一眼レフとはレフレックス(鏡を使用)なので、レンズ系を通した光が反射板(ミラー)に反射して、その反射光をペンタプリズム(一眼レフの象徴的なモノ)という特殊なプリズムでファインダーに結像する機構のカメラを一眼レフと呼んでいる。反射させていたミラーを跳ね上げるとその裏にフィルムがあり、露光できる仕組みになっていた(シャッターがこれとは別に必要)。

 

二眼レフの場合は、上下2つのレンズ系を用意して、上のレンズはファインダーのみ、下のレンズが撮影(フィルムの露光)用に使用される。それをファインダーに持っていくのにミラーを使って反射させていたから、二眼レフと呼ぶのだ。ところが、二眼レフはレンズの位置が異なっているので、正確な構図を決めての撮影となると一眼レフの出番ということになる。デジタルカメラになっても、従来のフィルムがあった位置にCMOSなどの撮像素子を配置してデジタルカメラとしていたので、「デジカメなのにミラーアップが必要なのか?」ということになり、ミラーレスが生まれてきたという経緯がある。

 

ミラーレスカメラの代表がスマートフォン(スマホ)で、スマホはファインダーを覗かずに、画面を見て構図を決める。そうなると、ピントやアングル、シャッターチャンスの概念も大幅に変わってくる。今まで一眼レフでプロの撮影技術を学んできた人はファインダーでピントを確認しながら撮影していたと思うが、これが不可能になり、オートフォーカスが主流になってしまった。マニュアルフォーカスの場合は、ピントを合わせたいところを液晶画面で指示して作画設計したりするのだが、これじゃ素人と大差ない。

 

ミラーレスは、当初廉価版のデジカメにだけ採用されていたが、コニミノの高級カメラ部門がSONYに吸収され、最初はSONYも手探りだったのだが、自社に欠けているミラーアップ技術がミラーレスには要らないことから、SONYがαシリーズとしてフルサイズの高級一眼デジカメを売り出したのだ。

 

カメラ背面の液晶画面で写真は確認できるし、撮像素子から実際に撮影されている信号を引っ張ってきているので、視野率何%と競っている一眼レフよりもアングルは正確だ。ファインダーには液晶ビューファインダーと呼ばれる小型の液晶画面を付ければ、解像性や実物との違和感はあるが、背面パネルと同じ信号を使うので問題ない。光を分光するわけではないので、光量不足の心配は皆無だ。

 

デジタルになって、収差補正も歪曲などはRAW現像ソフト(またはPhotoshop)で行ってしまうので、プロ用高級カメラ品質といってもC&Nの2社が長年培ってきたノウハウのほとんどがリセットされてしまったのだ。C&N社は一眼レフタイプの売れ筋デジカメ(フィルムの位置にCMOSを配置したもの)があるため、ミラーレス一本に絞るのをためらっているウチに、こんなことになってしまったというわけだ。

 

Canonは販売力があるのでEOS kissシリーズを中心になんとかメンツを保っているが、現役バリバリでブランドにこだわらないカメラマンは、何の躊躇もなくSONYを選択している。いくら「動画はキヤノンだ」と言ったって、動画の世界はSONYが牛耳っているのだから、今の仕事状況(静止画カメラマンも動画で稼いでいる)を考えれば納得だ。最近のSONYを見ていると、全く新しい形の高級デジカメを生み出しそうな感じだ。個人的には期待しているが、そのときに他社がどう出るかは「?」である。

(専務理事 郡司 秀明)