ブランディングに欠かせない商標権・意匠権の知識

掲載日:2021年12月10日

ブランディングの重要なポイントとして、「一貫性」と「持続性」があることが挙げられる。一貫性をもたせるためにはデザインの力が大きく、そしてそのデザインを守るためには商標権や意匠権が関連してくる。従って商標権や意匠権についての知識と理解も重要となる。

 

去る11月9日に、セミナー「ブランド構築とその価値を高める商標・意匠」を開催した。講師からは、印刷会社がクライアントや自社のブランディングをしていく上で必要なブランディングの基礎、さらに商標権や意匠権がブランディングとどのように密接に関わってくるかについてわかりやすく解説していただいた。今回は、その商標権・意匠権についての内容を整理してお伝えする。

 

 

商標権・意匠権とは

商標権、意匠権は、特許権や実用新案権、著作権と並び知的財産権の一種であり、産業の発展を図ることを目的としている。これらの権利を取得することによって、一定期間、新しい技術などを独占的に実施(使用)することができる制度のことである。

 

【 商標権 】 

社名やブランド名、サービス名など区別するために使用するマーク(識別標識)のことであり、商品やサービスの顔として重要な役割を担っている。商標には、文字や図形、イラストを組み合わせ、多面的に企業や商品・サービスの保護をすることができる。
例えば、パソコンやケータイで検索を行うときに必ず目に留まるGoogleやYAHOO!の文字表記、店舗や車体などに印字されたロゴマーク、店頭で出迎えてくれるペコちゃんやカーネルおじさんといった立体商標など街の至る所で見られる。弊協会もブランド保護の観点から2008年に「JAGAT(ジャガット)」を文字商標として登録している。

 

商標登録の目的は、取引上の信用の保護と出所の混同防止の2つがあり、その商品やサービスを利用・使用する顧客に対し、企業のブランドであり、常に同じ品質を備えているという信用にもつながっていく。登録期限は10年間で、何回でも更新可能である。

 

【 意匠権 】

工業製品のデザインを守るためにあり、独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩などデザインを保護し、まねを防ぐことができる。意匠権は、新規性があり、簡単に創作できるものではないことが求められるが、出願から25年間は独占し使用してよい。ただし、更新はできない。
パンフレットのレイアウトやDM、リーフレット(形状や色の工夫)、ラベルなどのデザインも意匠登録の対象になる。例えば、商標登録されているネーミングの商品に使用するラベルのデザインが意匠登録している、というようなダブルで保護されているケースもある。卓上カレンダーのように、日付など印刷面に立体的形状のデザインや組み立て方を寄与したものなども対象になるので、加工技術や印刷技術を意匠登録することにより、他社にはまねされない自社特有の商品を販売することができる。

 

また、クライアントが意匠登録をすることによって、他のクライアントに提案する際の事例となり、ひとつの宣伝効果になる。そのような事例が蓄積されることで、他のクライアントからも信頼が得られ、自社の強みへと変わっていくのではないだろうか。

 

 

ブランディングになぜ商標権・意匠権の知識が必要なのか

ブランディングをしていく上で大切なことは、一貫性と持続性をもたせることである。Webサイトやパンフレット、商品パッケージなどのデザイン・企業コンセプトに一貫性をもたせ、浸透させていくことで認知度やブランド力が高まっていく。ブランディングを実行するツールとして、ネーミングやロゴマークは欠かせない。商標や意匠登録がされていないと品質の違う類似品やロゴ・デザインの模倣品が流通してしまう可能性もあり、せっかくの良い商品・サービスが埋もれてしまうこともあり得る。従って、法律上における商標登録・意匠登録を活用し、安全に顧客の元へ届けることが重要となる。

 

印刷会社が自社やクライアント企業のブランディングの際には、他社にまねされない戦略の一つとして意匠登録や商標登録の検討も視野に入れ、有利にビジネスを進めていただきたい。

 

JAGAT CS部 加治 寛子