次世代ビジネスを展開できる人材育成の第一歩

掲載日:2022年3月1日

縮小する印刷業界にあって、今や古い価値観となった「きれいな印刷物を造る」から「新たなビジネスを創る」へと発想を転換し、新たな価値を生み出すことができる人材が求められている。その礎を築くために、まもなく迎える新入社員の基礎教育はますます重要性を増してきている。

 

1980年代中頃に、DTPの三要素と言われるにMacintosh(パソコン)、LaserWriter(プリンター)、PageMaker(レイアウトソフト)が出現し、プリプレスのフルデジタル化がスタートした。これまでの専門職によるクローズド、縦割り作業からオープン化された技術の連携作業へと、デジタルで印刷業界の環境は一変し、人材育成のベクトルが変わるきっかけとなるはずであった。

当面は新たな設備を導入し、それをオペレーションできる人材確保が急務となり、ビジネススクールや専門学校でもDTP講座に多くの人が集まった。初期のDTPエキスパート試験は彼らにより、受験者を増やしてきた経緯がある。

ただし、DTPのオペレーションにとどまる限りでは、デジタル化で技術が進歩しても製造するものは同じで道具が変わったに過ぎない。DTPエキスパートはオペレーター養成ではなく、標準化された知識の普及のために1993年にJAGATがカリキュラム化したものである。DTPエキスパートカリキュラムは2年毎に改訂をしており、デジタル化の先の新たなビジネス展開も視野に入れてきた。

DTP化はバブル経済崩壊と時期が重なり、価格は下落し、小ロット化、短納期の上に高品質が社会全体の要求するところとなった。結果として、DTPは省力化、コスト削減はもたらしたが、新たなビジネスへの発展や利益の源泉とはならなかった。決して印刷業界がサボっていたわけではないが、取り巻く経済環境や業界の体質などさまざまな要因により、残念ながら人材投資が進まなく、育成の方向も新たなベクトルへとは踏み出せなかったと言わざるを得ない。

そして、現在進行系のコロナ禍である。JAGATではアフターコロナの印刷ビジネスを考察し、page展印刷白書などを通じさまざまな議論と展望を行ってきたが、そもそもインターネット、メディアの多様化、モバイル端末の普及により生活者の行動も激変してきたこともあり、コロナが収束し経済が好転したとしても、印刷物そのものの需要は回復しない。これまで印刷内で収まっていた顧客ニーズが多メディア展開に変わる、いよいよそのギャップを埋める人材が必要になってきたということである。

変化する顧客のビジネスニーズに呼応して、新たな印刷ビジネスを展開するためには、顧客志向でソフト・サービス化への対応、川上指向、知力・感性、マーケティングのノウハウ、そしてなにより信頼を得るためのコミュニケーション能力が必要となる。

顧客ニーズの多様化に応える能力とその人材育成が求められる中。今後の印刷ビジネスは「もの造り」から「こと創り」へと向かっている。「もの」は設備でできるが「こと」は人から生まれるもの。そして、「印刷物を造る」ということと「ビジネスを創る」ということでは教育の質も違ってくる。

4月には多くの新たな人材を迎える。彼らに対する基礎教育は、業界の将来を担うべく新たな価値を生み出していくための知識習得や、実践の最初のステップとして位置づけられなくてはならない。そのためには、これまで以上に印刷のみならず、多メディアに関する知識・技術に裏付けられたコミュニケーション能力が求められる。

しかし、技術に関する専門用語やビジネスパーソンとしてのコミュニケーションは、新人には難しくハードルが高い。そこでJAGATでは例年実施している新入社員セミナーを、2022年度リニューアルし「学び放題サービス」として展開する。社会人としてのビジネスの基本・マナーはもちろん、印刷技術の基礎知識やコニュニケーションに関する講座が、オンラインで一定期間はいつでもどこでも何度でも聴講ができることが最大の特長だ。復習を重ねることで理解を深め、新入社員の早期戦力化をめざすものである。
興味のある向きは、HPの「学び放題サービス」特設サイトにて詳細を確認できるので、参照いただきたい。

(JAGAT CS部 橋本 和弥)

 

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 DTPエキスパート/DTPエキスパート・マイスター