「円安人民元高」と中国の印刷動向

掲載日:2015年5月28日

世界の印刷業界の中でも、中国の存在感はますます大きなものとなっている。

昨今、中国人観光客の「爆買い」がニュースになることが多い。中国の富裕層などが銀座のデパートや秋葉原の電気街、都内の家電量販店、地方のアウトレットモールなどで大量に買い物をしていく姿や、地方の名所や観光地を巡る姿をテレビで見ることは珍しくなくなっている。

高度成長を続け、好景気を享受していることが一番の理由だろうが、もう1つの大きな要因が「円安人民元高」である。輸出産業にとって「円安」は追い風になることも多いが、輸入の比率が高い産業の場合かなり厳しい状況となることもある。

2010~2011年頃の平均は1元=12円台だったが、今や1元=約19~20円となっている。最近では、食料品や衣料品を始めとして中国で製造して日本で販売する製品の値上げも続いている。中国関連のビジネスに関わっている方々にとっては、大きな影響があるだろう。

2013年の中国の印刷出荷額は、旺盛な経済成長を背景に約1.04兆元(約20兆円、1元=20円)、企業数は10万5000社、従業員は約340万人となっている。
2013年の日本の印刷出荷額は約5.5兆円であった。中国の出荷額は、1元=20円とすると日本の3.6倍の規模ということになる。
中国は、今や世界トップクラスの印刷大国となったと言える。

一方、急成長を続けてきたオフセット印刷機の販売も、最近では鈍化傾向にあると言われている。一時的な現象と見るべきか、転換期を迎えたと見るべきか、注目されるところである。

今後の世界の印刷動向は、世界で最も多くの印刷物を生産し、最も印刷物を消費する中国を中心に進んでいくことは間違いないだろう。日本への影響も年々大きくなっていくだろう。

(JAGAT 研究調査部   千葉 弘幸)


印刷総合研究会では、プリントチャイナ2015に見る中国の印刷技術動向を報告する。世界で最もオフセット印刷機が販売されている国の動向が、どのように進んでいるかを考察する。
また、日本方正の一員として3年半の広州駐在員生活を終えた芦野氏に、現地の印刷・出版事情、さらにネットワーク、電子書籍、SNSなどメディア関連事情を伺う。

<関連セミナー> 6月8日(月)「中国の印刷・出版市場とプリントチャイナ2015」