DXを先取りしていた?JDFワークフロー

掲載日:2022年6月2日

JDF drupaと呼ばれたのが2004年に開催されたdrupa(4年ごとにドイツで開催される国際印刷展示会)である。今から15年以上前になる。

作業指示書をJDFという標準フォーマットで電子化し、人間を介すことなく設備に直接送信することで自動化を実現する。標準化されているのでメーカーを問わず、工程の上流から下流まで一気通貫でつなぐことができる。

当時は全体最適という言葉が盛んに使われた。設備単体での生産性向上(部分最適)には限界があるので生産管理など間接コストを含めたワークフロー全体で効率化を図ることを目指した。
そして、ワークフローをコントロールする役割を担うのがMISであるとJDFの仕様書のなかに記述されている。そこから印刷業界ではERPとか基幹システムにあたるものをMISと呼ぶようになった。
ちなみにMISとはManagement Information Systemの略称で、もともとは1960年代に提唱された概念である。コンピュータで処理するデータを経営管理や経営判断にも活用しようという考え方をもとに、それを実現するシステムをMISと名付けた。

印刷業界の「見える化」の取り組みは、作業実績データをもとに個別原価を把握し、経営管理や経営判断に活かそうというものなので、それを実現するシステムをMISと呼ぶのは、あながち的外れではないだろう。

華々しく印刷業界に登場したJDFであるが、特に日本では思うように普及は進まなかった。その理由は、①工場の設備は新旧あり、一気にすべての設備をJDF対応にできるわけではない。②メーカー互換と言いつつ、いざ実装するとなると制約が多くできることが限られている。③JDFインタフェースの価格が高く、費用対効果に疑問を呈されたなどである。

しかしながら、世の中全体のDX機運の盛り上がり、それとデジタル印刷の本格活用に備えて、小ロットで大量のジョブを効率的に流す仕組みの必要性からJDFを活用した自動化の取り組みや検討が行われつつある。

製造工程だけでなく工場全体の管理業務を含めたデジタル化は一般の製造業でも大きな課題となっている。工程管理にExcelを使ったり、局所最適されたサブシステムが混在しているからだ。製造業の工場をデジタル化するモデルとして、ISA-95という国際標準が存在する。
ISA-95では、複雑で多岐にわたる製造業の業務をレベル分けして階層表現している。 レベルは0から4まで定義されており、経営管理(ERP)がレベル4、製造オペレーション(生産管理)がレベル3、製造機器の制御がレベル1と2となっている。これらの3階層をベースにそれぞれの階層間でどのようなデータ交換をすべきかというモデルが提示されている。全体最適という視点でワークフローを検討するときに参考となるだろう。

参考:製造オペレーションマネジメント入門~ISA-95が製造業を変える

(研究調査部 花房 賢)