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2021年の印刷産業出荷額(全事業所)は4兆8555億円(「2022年製造業事業所調査」)

「2022年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によれば、印刷産業出荷額は4兆8555億円、事業所数は1万3536、従業者数は25万2593人。(数字で読み解く印刷産業2023その7)

「工業統計調査」に代わる「製造業事業所調査」を公表

製造業を対象とする「工業統計調査」は2020年まで毎年実施されてきました。ただし、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年(2012年、2016年、2021年)には工業統計調査は中止となり、活動調査の産業別集計(製造業)が公表されています。さらに2022年からは「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されることになりました。

経済構造実態調査は、5年ごとに実施する「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握することを目的に、2019年に創設されました。工業統計調査に代わる「製造業事業所調査」は今回が初の実施で、品目別・産業別・地域別の集計結果が7月31日に公表されました。

印刷産業の事業所数・従業者数・製造品出荷額等・付加価値額は下表のとおりです。

また、製造品出荷額等の都道府県別順位を見ると、東京都では輸送用機械器具製造業(構成比15.7%)に次いで、印刷・同関連業は2位で構成比10.3%を占めています。

品目別の産出事業所数を見ると、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」(8544 事業所)が最も多く、主な都道府県は東京、大阪、愛知の順です。品目別の出荷金額では、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」は9位(2兆6636億円)となっています。

また、同じ日に公表された「2022年経済構造実態調査」二次集計結果 産業横断調査(企業等に関する集計)によれば、印刷産業の企業等数・売上高・付加価値額は下表のとおりです。一次集計(速報値)より企業等数・売上高は少し減少しました。

「工業統計調査」と「製造業事業所調査」は厳密には連結しない

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。ただし、『印刷白書2022』では「経済センサス-活動調査」の公表時期の関係で、従業者4人以上の事業所のデータに限られたものでした。そのため、事業所数が2019年の2万から、2020年は9千に激減したのかという問い合わせもいただきましたが、全事業所の事業所数は13,335であることが昨年12月26日に公表されています。

現在準備中の『印刷白書2023』では、「令和3年経済センサス-活動調査 製造業(産業編)」と「2022年経済構造実態調査 製造業事業所調査」を利用して、過去の「工業統計調査」と連結させていきます。

ただし、「令和3年活動調査」と「2022年製造業事業所調査」は個人経営を含まない集計結果です。また、調査対象となる母集団も工業統計調査は独自のものですが、両調査は「事業所母集団データベース」を利用しています。そのため、過去の工業統計と単純に比較ができないことに留意する必要があります。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅し、わかりやすい図表にまとめています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

印刷産業の企業数は2.3万、従業者数は32.7万人(「令和3年経済センサス‐活動調査」)

「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計」によれば、印刷産業の売上高は7兆7803億円、純付加価値額は1兆6845億円、企業数は2万2705、従業者数は32万6677人。(数字で読み解く印刷産業2023その6)

産業横断的に経済構造を把握

「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」が6月27日に公表されました。
2020年の全産業の売上高は1693兆3126億円、純付加価値額は336兆2595億円となっています。2021年6月1日現在の企業等の数は368万4049企業、民営事業所数は515万6063事業所、従業者数は5795万人です。なお、国、地方公共団体を含む事業所数は528万8891事業所、従業者数は6242万8千人となっています。

「経済センサス‐活動調査」は全産業・全事業所を対象とした大規模調査で、産業横断的に経済構造を把握することを目的として、5年ごとに実施されています。
3回目となる「令和3年経済センサス‐活動調査」(2021年6月1日調査)は、2022年5月31日に速報が公表され、その後順次確報が公表されています。
製造業に関する産業別集計としては、9月30日に概要版、12月26日に品目編・産業編・地域編が公表されました。

今回の産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)は、全産業に関する集計の確報です。
産業大分類別に企業等数を見ると、「卸売業、小売業」が74万1239企業(全産業の20.1%)と最も多く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」が42万6575企業(同11.6%)、「建設業」が42万6155企業(同11.6%)で、上位3産業で全産業の4割以上を占め、第三次産業で全産業の8割弱を占めています。
売上高を見ると、「卸売業、小売業」が480兆1679億円(全産業の28.4%)と最も多く、次いで「製造業」が387兆606億円(同22.9%)、「医療、福祉」が173兆3369億円(同10.2%)となっていて、上位3産業で全産業の6割、第三次産業で全産業の7割を占めています。

2020年の印刷産業売上高は7兆7803億円

印刷産業について見ると、売上高は7兆7803億円(全産業の0.5%)、純付加価値額は1兆6845億円(同0.5%)です。2021年6月1日現在の企業数は2万2705企業(同0.6%)、従業者数は 32万6677 人(同0.6%)となっています。

JAGAT刊『印刷白書』では、「経済センサス」などのデータを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

持株会社化が進む上場印刷企業

2023年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち14社が増収、8社が増益を達成した。持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、事業領域の拡大や持株会社体制への移行などが加速している。(数字で読み解く印刷産業2023その5)

3月期決算の4社に1社が最高益、印刷企業は8社が増益達成

2023年3月期決算の上場企業のうち、純利益が過去最高だったのは全体の4社に1社となりました。

日本経済新聞が5月19日までに業績を発表した上場企業を対象に集計したもので、純利益が過去最高を更新したのは526社(集計対象の25%)、2022年3月期の615社(同29%)を下回るものの、新型コロナ禍以降では2番目の高水準となりました。なお、会計基準や連結・単独決算の変更は考慮せずに単純比較したものとなっています。

2023年3月期決算の上場印刷企業18社では、14社が増収、8社が増益を達成しています。

上場印刷企業の2022年度業績も堅調

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で前年6月期決算から当年5月期決算までを当年度としています。

『印刷白書2021』までは34社が対象でしたが、トッパン・フォームズが凸版印刷の完全子会社化により2022年2月25日付けで上場廃止となったことから、『印刷白書2022』では33社となっています。

上場印刷企業の2022年度業績を見ると、TAKARA&COMPANY(5月期決算、7月上旬決算短信発表予定)を除く32社の売上高合計が3.9兆円(前期比6.2%増)で、増収22社、増益14社と堅調です。

社名変更で「印刷」が消える

凸版印刷は2023年10月1日付けで持株会社に移行し、社名を「TOPPANホールディングス」に変更します。全体再編に先駆け、同社のセキュア事業とトッパン・フォームズの事業を統合した「TOPPANエッジ」を4月1日に設立しました。さらに凸版印刷の主要部門を母体とする「TOPPAN」と、トッパングループ全体でのDX 事業推進を牽引する「TOPPAN デジタル」を10月1日に設立します。

祖業である「印刷」を社名から外すことに関して、同社は「今後さらなる事業ポートフォリオ変革を推進していく意思を込めて、既存の事業領域を規定する『印刷』を含めない商号としました」としています。

このニュースは印刷業界のデジタルシフトの本格化を示すものとして受け止められましたが、社名から「印刷」が消えた印刷会社は、凸版印刷だけではありません。印刷事業からスタートして、事業領域の拡大を反映して、社名変更した印刷会社は少なくありません。

上場企業だけを見ても、1970年にナカバヤシ(旧:中林製本所)、1972年に総合商研(旧:総合印刷)、1976年にカワセコンピュータサプライ(旧:川瀬紙工)、1986年にセキ(旧:関洋紙店印刷所)、1987年にトーイン(旧:東京印刷紙器)、1989年にマツモト(旧:松本写真印刷社)、1990年にサンメッセ(旧:田中印刷興業ほか)、1991年に中本パックス(旧:中本グラビヤ印刷ほか)、2000年にウイル・コーポレーション(旧:わかさ屋情報印刷)、2006年にプロネクサス(旧:亜細亜証券印刷)、2017年にNISSHA(旧:日本写真印刷)が、それぞれ現社名に変更しています。

また、持株会社化で社名が変更になったのは、2012年のウイルコホールディングス(旧:ウイルコ)、2015年の日本創発グループ(旧:東京リスマチック)、2019年のTAKARA & COMPANY(旧:宝印刷)、2021年の広済堂ホールディングス(旧:廣済堂印刷+関西廣済堂→廣済堂)、2022年10月のKYORITSU(旧:共立印刷)、2023年 4月の竹田iPホールディングス(旧:竹田印刷)の6社です。それぞれの子会社として、ウイル・コーポレーション、東京リスマチック、宝印刷、広済堂ネクスト、共立印刷、竹田印刷が情報ソリューション事業を継続しています。

『印刷白書2023』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業33社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

印刷物は12年連続の輸入超過、アジアがシェア7割

貿易統計で印刷物を見ると、2022年は輸出入ともに拡大し、12年連続の輸入超過となった。輸出先は中国が不動の1位で、輸入先はシンガポールが10年連続トップである。(数字で読み解く印刷産業2023その4)

輸出は中国が不動の1位、輸入はシンガポールが10年連続1位

財務省「貿易統計」によれば、2022年の印刷物の輸出額は320億円(前年比11.9%増)で2年連続の増加、輸入額は686億円(同0.5%増)で3年ぶりの増加となりました。

アジアが最大の取引先で、2022年の輸出額は220億27百万円(構成比68.8%)、輸入額は495億50百万円(同72.2%)で、輸出入ともに約7割を占めます。北米は輸出52億70百万円(同16.5%)、輸入85億72百万円(同12.5%)、西欧が輸出27億70百万円(同8.6%)、輸入93億92百万円(同13.7%)となりました。

輸出先のトップ10は、中国、アメリカ、韓国、香港、ベトナム、台湾、タイ、メキシコ、ドイツ、シンガポールです。中国は不動の1位で、シェアは8年ぶりに30%台となりました。香港とメキシコ以外の8カ国は増加し、韓国、アメリカが大きく増加したほか、シンガポールは大幅増で5年ぶりにランクインしました。

輸入先のトップ10は、シンガポール、中国、アメリカ、韓国、ドイツ、マレーシア、フランス、イタリア、アイルランド、プエルトリコ(米)です。10年連続1位のシンガポールからの輸入額は前年より52億円減少しましたが、輸入総額の33.7%を占めています。トップ10の顔ぶれは前年と同じですが、6位以下の順位は変動がありました。

下図は1993~2022年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。1993~2004年の12年間は輸入超過でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の12年間は逆に輸入超過となっています。2022年の差引額は366億円まで縮小しました。

『印刷白書2022』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2021年の印刷産業売上高は7兆7155億円(「2022年経済構造実態調査」一次集計)

「2022年経済構造実態調査」によれば、印刷産業は1万6883企業、売上高は7兆7155億円となった。 (数字で読み解く印刷産業2023その3)

2年ぶり3回目の「経済構造実態調査」

総務省・経済産業省は、「2022年経済構造実態調査」一次集計結果を3月31日に公表しました。国民経済計算の精度向上等に資するとともに、5年ごとの「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握するために、毎年6月1日に実施される調査です(活動調査実施年を除く)。

2019年に創設された同調査は、これまで実施されていた3つの統計調査(サービス産業動向調査の拡大調査、商業統計調査、特定サービス産業実態調査)を統合・再編しました。
さらに2022年調査から、全産業に属する一定規模以上の法人企業が対象になるとともに、これまでの「工業統計調査」は「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されています。

前年(2021年)が活動調査実施年だったために、今回が2年ぶり3回目の実施となりました。「工業統計調査」に該当する「製造業事業所調査」(品目別・産業別・地域別)のデータは2023年7月に公表予定です。

印刷産業の出荷額4.7兆円に対して、売上高は7.7兆円

2022年12月26日公表の「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(製造業)」では、2020年の「製造業」の製造品出荷額等(全事業所)は303兆5547億円、「印刷・同関連業」は4兆6630億円です。

これに対して、「2022年経済構造実態調査」一次集計(企業等に関する集計)では、「製造業」の売上高は415兆7489億円、「印刷・同関連業」は7兆7155億円となっています。

印刷産業の出荷額は4.7兆円なのに、売上高は7.7兆円、この差はどこからきているのでしょうか。

「3年活動調査 産業別集計(製造業)」の出荷額は事業所単位の集計なので、主要製品が「印刷・同関連品」なら印刷産業の出荷額になります。一方、「経済構造実態調査」の売上高は企業単位の集計なので、主業が「印刷・同関連業」なら印刷産業の売上高になるのです。
また、出荷額は工場出荷金額(積み込み料、運賃、保険料、その他費用を除いた金額)なので、その分売上高より金額は小さくなります。

『印刷白書2022』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

日本の広告費は過去最高の7.1兆円、インターネット広告は3兆円を突破

2022年の日本の総広告費は、3兆円超えのインターネット広告費が市場を押し上げ、過去最高の7.1兆円となった。(数字で読み解く印刷産業2023その2)

広告市場は15年ぶりの7兆円超え

電通「2022年日本の広告費」が2月24日に発表されました。

「日本の広告費」は、日本国内で1年間に使われた広告費(広告媒体料と広告制作費)を推計したもので、「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つに分類されています。

2022年(1~12月)の総広告費は7兆1021億円(前年比4.4%増)と、コロナ禍で大幅に落ち込んだ2020年から2年連続の増加となりました。新型コロナウイルスの感染再拡大、ウクライナ情勢、物価高騰などの影響はありましたが、社会・経済活動の緩やかな回復に伴い「外食・各種サービス」「交通・レジャー」を中心に広告需要が高まりました。特に、成長が続く「インターネット広告費」によって広告市場全体が拡大し、15年ぶりの7兆円超えとなりました。

「インターネット広告費」は2年連続の2桁成長で3兆円規模に

「マスコミ四媒体広告費」は 2兆3985億円(前年比2.3%減)で、ラジオは2.1%増となりましたが、新聞、雑誌、テレビメディアは減少しました。

「インターネット広告費」(インターネット広告媒体費、インターネット広告制作費、物販系ECプラットフォーム広告費の合算)は3兆912億円(前年比14.3%増)で、初めて3兆円超えとなりました。2019年に2兆円を突破した「インターネット広告費」は、2020年にはコロナ禍でも唯一プラス成長(同5.9%増)を達成し、2021年には2桁成長(同21.4%増)に戻り、「マスコミ四媒体広告費」を初めて超えました。そして、2022年には総広告費に占める構成比は43.5%となり、3兆円規模の市場となりました。

また、マスコミ四媒体の事業者が主体となって提供するインターネット広告媒体費を意味する「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は、4年連続の2桁成長(前年比14.1%増)で、1211億円となりました。特にテレビ番組の見逃し配信などが急拡大したことで、「テレビメディア関連動画広告費」が350億円(同40.6%増)と前年に続き大きく増加しました。また、radikoやPodcastなどの好調により、「ラジオデジタル」が22億円(同57.1%増)と大きく伸びました。

「プロモーションメディア広告費」は1兆6124億円(同1.7%減)ですが、人流回復に伴い「屋外広告」「交通広告」「折込広告」は前年を上回りました。

「DM」は3381億円(同1.9%減)となったが、前年に続きデータマーケティングを活用したパーソナライズDMやデジタル施策と連動したDMが多く利用されました。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

関連情報
【セミナー】広告と通販、印刷メディアの最新動向
2023年3月28日(火) 14:00-16:50

【コンサルティング型研修】第2期 DM企画制作実践講座
2023年7月11日(火)~10月5日(木)



コンビニ売上高は過去最高、スーパーは3年連続増、百貨店はコロナ禍前の9割まで回復

2022年の大手小売業売上高は、スーパーが3年連続増、百貨店とコンビニは2年連続増と回復基調にある。クライアント産業の業績は、印刷会社の需要にどの程度影響するのか。(数字で読み解く印刷産業2023その1)

コンビニ店舗数は横ばい、スーパー・百貨店は減少

印刷産業の得意先産業は、出版、小売、金融、広告などが大きな割合を占めています。
2022年の紙の出版市場は、前年比6.5%減の1兆1292億円(全国出版協会・出版科学研究所推定)にとどまり、2020年、2021年と続いたコロナ特需が終息し、物価高の影響で書籍・雑誌を買い控えたものと思われます。
この間の印刷業の生産金額を見ると、出版印刷は減少傾向が続いていますが、商業印刷は2020年の大幅減から、2021年は増加に転じ、2022年上期は微増となっています(経済産業省生産動態統計)。

2022年の小売業界については、1月下旬に発表された大手小売業の販売概況を見てみましょう。

日本フランチャイズチェーン協会は1月20日、2022年末の全国のコンビニエンスストア店舗数を5万5838店(2021年末は5万5950店)と発表しました。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど、正会員7社の店舗数を集計したもので、2019年2月末の5万5979店をピークに店舗数はほぼ横ばいです。

一方、大手スーパーなどを会員とする日本チェーンストア協会が1月25日に発表した、2022年末の会員企業56社の店舗数は1万683店で、過去最高となった前年の1万1897店から1214店減少しました。

日本百貨店協会が1月24日に発表した2022年末の百貨店店舗数は71社185店(2021年末は73社189店)、地方の不採算店の閉店が続き、ピークだった1999年(140社311店)から4割減少しています。

スーパー売上高は堅調、コンビニは過去最高に

次に2022年売上高を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆2656億円(前年比0.4%増)、2008年以来の高水準で、3年連続で前年を上回りました。
全体の約7割を占める食料品は、4月以降の行動制限緩和で、内食需要が減少傾向となったが、10月の値上げラッシュの影響で堅調に推移しました。また、消費者の行動範囲が広がったことで旅行グッズなどの住居関連品が好調でした。

コンビニの全店売上高は11兆1775億円(前年比3.7%増)で、コロナ禍前の2019年を上回り、過去最高となりました。人流回復に対応した商品開発や品ぞろえにより、おにぎり、弁当、冷凍食品などの売れ行きが好調で、客単価も711.5円(同2.8%増)と8年連続で増えました。値上げラッシュとまとめ買いが客単価を押し上げましたが、来店客数は0.9%増にとどまりました。

百貨店売上高はコロナ禍前の9割まで回復

全国百貨店売上高は4兆9812億円(前年比12.7%増)で2年連続で増加しました。行動制限と水際対策の緩和で客足が増え、コロナ禍前の2019年の9割近くまで回復しました。昨年10月の水際対策の大幅緩和を受け、インバウンド(訪日外国人客)による消費も拡大し、免税売上高は前年比2.5倍の1142億円となりました。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、どちらも1991年と1997年をピークとするM字カーブを描き、2009年に大きく減少しました。その後は、印刷産業出荷額が2011年に6兆円割れ、2018年に5兆円割れとなったのに対して、百貨店売上高は2015年まで6兆円台で、インバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でした。しかし、百貨店業界は新型コロナウイルス感染症の影響を最も強く受けた業界の一つで、2020年には前年比26.7%の大幅減で、印刷産業出荷額を初めて下回りました。

百貨店売上高は、2021年以降2年連続の増加で回復基調にあり、水際対策が続く中国からの訪日客が本格的に戻ってこれば、コロナ禍前を上回ることが期待されます。ただし、専門店の台頭やネット通販の拡大でコロナ禍前から低迷は続いており、百貨店ならではの魅力を強化することが重要な課題となっています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2020年の印刷産業出荷額(全事業所)は4兆6630億円(確報値)

「工業統計表 産業編」に該当する「令和3年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」が12月26日に公表された。全事業所の印刷産業出荷額は6.7%減となった。(数字で読み解く印刷産業2022その8)

従業者1~3人も含めた全事業所のデータを公表

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅し、わかりやすい図表にまとめています。

印刷市場を把握する上で最も重要な統計データとして、長年「工業統計調査」が利用されてきました。工業統計調査と経済センサスの関係については、当欄でも何度か取り上げてきましたが、改めて整理すると以下のようになります。

製造業を対象とする「工業統計調査」は2020年(2019年実績)まで毎年実施されてきました。ただし、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年には工業統計調査は中止となり、産業別集計(製造業)として集計結果が公表されます。さらに2022年からは「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されることになりました。

『印刷白書』では毎年8月公表の「工業統計調査」の確報値を最新データとしてきましたが、『印刷白書2022』では「経済センサス‐活動調査(製造業・概要版)」を利用しています。そのため、最新の2020年は、従業者4人以上の事業所のデータに限られたものでした。事業所数が2019年の2万から、2020年は9千に激減したのかという問い合わせもいただきましたが、9306事業所は4人以上の事業所の数字で、前年比3.7%減も4人以上の事業所同士の比較です。

12月26日に公表されたばかりの総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」では、従業者1~3人も含めた全事業所における集計が行われています。

印刷産業の市場規模の推移は下表のようになります。

2016~2019年は「工業統計調査」、2015年と2020年は「経済センサス‐活動調査」の数値で、両調査は厳密には連結しない部分があることから、2016年と2020年の前年比は斜体にしてあります。

特に「令和3年経済センサス‐活動調査」は個人経営を含まない集計結果であることから、3人以下の比較が特に困難になっています。

「工業統計調査」は「経済センサス‐活動調査」に合わせて実施時期を12月から6月に変更し、活動調査の産業別集計(製造業)は工業統計調査の項目に合わせて集計されています。ただし、調査対象となる母集団が違っています。

「工業統計調査」では調査実施前に「準備調査」を実施し、整備した独自名簿に基づき調査が行われてきました。これに対して、「経済センサス」は、経済統計を正確に作成するための名簿情報の提供・管理のための重要なインフラとして整備されてきた「事業所母集団データベース」を母集団としています。
「経済構造実態調査」も同じく事業所母集団DBによる調査であることから、2021年以降は経済センサスとのシームレスな接続が可能になるものと思われます。

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2020年の印刷産業出荷額(4人以上の事業所)は4兆5756億円(確報値)

経済センサス‐活動調査の「産業別集計(製造業・概要版)」によれば、2020年の印刷産業の出荷額等は4兆5756億円、付加価値額は2兆999億円となった。(数字で読み解く印刷産業2022その7)

4人以上の事業所に関する2020年の出荷額・付加価値額を発表

「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(製造業・概要版)」が9月30日に公表されました。従業者4人以上の製造事業所について、2021年6月1日現在の事業所数・従業者数、2020年の製造品出荷額等・付加価値額について、中分類24業種別に集計したものです。

この集計結果は、全産業・全事業所を対象とする「活動調査」の調査結果のうち、以下のすべてに該当する製造業の事業所について集計したものです。

・個人経営を除く事業所であること
・従業者4人以上の事業所であること
・管理、補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと
・製造品目別に出荷額が得られた事業所であること

「産業別集計(製造業・概要版)」から印刷・同関連業(印刷産業)に関して見ると、事業所数は9306事業所(前年比3.7%減)で5年連続の減少、従業者数は23万5105人(同6.6%減)で13年連続の減少となりました。製造品出荷額等は4兆5756億円(同5.6%減)、付加価値額は2兆999億円(同1.4%減)で、どちらも前年の微増から反転しました。ただし、「令和3年活動調査」は個人経営を含まない集計結果なので「工業統計調査」と単純に比較ができないことに注意が必要です。

「産業別集計(製造業)」では、概要版に続いて2022年12月に、品目編・産業編・地域編が公表されます。この集計結果が「工業統計調査」の確報に当たるもので、全事業所のデータや産業中分類「15印刷・同関連業」の内訳までがわかるようになります。

JAGATが毎年10月に発行している『印刷白書』では、毎年8月公表の「工業統計調査」の確報値を最新データとして利用してきましたが、今回は12月の産業編を待つわけにもいかないので、9月公表の「産業別集計(製造業・概要版)」を利用しています。そのため、最新の2020年は、従業者4人以上の事業所のデータであることにもご注意ください。

『印刷白書2022』発刊記念セミナー(2022年11月9日)より

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

『印刷白書2022』発刊のご挨拶

2022年10月21日発刊の『印刷白書2022』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。

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コロナ禍での生活も2年間が過ぎ、今年は3年目となりました。年初の感染拡大も一段落して春になると、経済活動も徐々に戻ってきてアフターコロナの世界を考えた企業も多かったと思います。しかし、夏からは再び変異株が猛威をふるい、それも9月になってようやく収まってきましたが、一方で後遺症に悩まされる人も多くなっている状況です。

2月にはロシアがウクライナに侵攻し、世界中を震撼させました。コロナ禍にありながらも回復基調であった世界経済ですが、各国がロシアに対して制裁を課した影響で原油の高騰を招きインフレ圧力が高まりました。

アメリカ経済は個人消費が回復し、旺盛な労働需要を背景に人材確保のための賃上げの動きが顕著であり、FRBはハイテンポで政策金利を上げています。一方、日銀はゼロ金利政策を継続しているため、金利差により急速な円安となり輸入価格が上昇、食料品や日用品の相次ぐ値上げが家計を圧迫しています。

こうした状況下、企業にとって目下の課題は戦争と円安によるエネルギー価格の急激な上昇です。わが国の経常収支の黒字幅は減少を続け、東京では東京電力が8月に決定した燃料費調整額により、10月からの電気料金が大幅に上昇して企業の活動にかなりの影響を与えることになりそうです。

日本印刷産業連合会は9月14日の日本経済新聞に広告を打ち、高付加価値コミュニケーション産業へと業態を転換させるべく、新たな取り組みにチャレンジしていることにも触れながら、需要家に対しエネルギーや原材料の価格高騰の現状と価格転嫁への理解を求めました。プレーヤーの多い印刷業界においては、積極的に業態を転換させる努力をしている企業も多くある一方で、残念ながらそうでない企業もあって、後者の場合は変化し続ける現代社会のニーズに適合できずにやがて業界周辺の限界的存在となって融資も滞ることが予想されます。今後は業界の再編がさらに進むのかもしれません。

SDGsの観点から現代の自動車を見ると、CO2排出抑制のためハイブリッドカーやEVが増えて、またドライバーの負担を軽減し事故を防ぐためにも自動運転の機能が導入されています。印刷機もこれに似ていて自動運転すればオペレーターの負担が軽減され、高齢者や女性でも扱いやすくなり、小ロット化している印刷物には、何万枚もの耐刷力のあるPS版を使用するオフセット印刷ではなく、デジタル印刷機で生産できれば資源効率が高まることになります。今年のIGASではそのような現実的なインクジェット機が見られるでしょうか。

VUCAの時代と呼ばれる現代の経営には他にもさまざまな課題があります。今年もこの白書が企業の皆様にとって何らかのお役に立つようにと願っております。

2022年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2022』2022年10月21日発刊