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印刷白書2022

印刷白書2022
印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2022』
第1章 Keynote 印刷会社の造注・創注戦略
第2章 印刷産業の動向
第3章 印刷トレンド
第4章 関連産業の動向
第5章 印刷産業の経営課題
ご注文はこちら発行日:2022年10月21日
ページ数:128ページ
判型:A4判
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:9,900円(9,000円+税10%)
JAGAT会員特別定価:8,300円(7,545円+税10%)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2022』

あらゆる産業を顧客とする印刷産業は、さまざまな産業と密接に関わりを持っています。「印刷白書」では、印刷産業の現状分析から印刷ビジネスの今後まで幅広く取り上げています。

印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。

印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2022年版では海外動向、労務管理、営業戦略などの項目を追加しました。

印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

「第1章 Keynote」では「印刷会社の造注・創注戦略」をテーマに、印刷ビジネスの課題解決に取り組んでいます。「第2章 印刷産業の動向」では印刷産業の現状と課題を俯瞰的に捉え、「第3章 印刷トレンド」では技術課題を整理しました。「第4章 関連産業の動向」ではクライアント産業の動向を探りました。「第5章 印刷産業の経営課題」ではSDGs/ESGから人材まで印刷産業が取り組むべき課題を整理しました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られないオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1章 Keynote 印刷会社の造注・創注戦略
いま印刷業界に必要なのは「創注」

第2章 印刷産業の動向
[産業構造]付加価値創出と事業領域拡大で印刷ビジネスの可能性を広げる
[産業連関表]あらゆる産業を顧客とする印刷産業の取引を見る
[市場規模]共創による課題解決型産業へビジネスモデルの転換を
[上場企業]新しい価値の創出に向けて歩みを止めない上場印刷企業
[海外動向]社会経済視点で価値につなげる印刷ビジネス
*関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]自社の強みをブランド化し、新たな顧客と出会う
[ワークフロー]オンデマンドビジネスを成功させる3要素
[オフセット印刷/デジタル印刷]紙への回帰と、さらに求められる小ロット化と環境への対応
[用紙]資源価格の高騰に揺れる製紙業界、環境対応への取り組みも続く
[後加工]デジタル化と加飾技術は進展するも製本業界への逆風はやまず
*関連資料 デジタル印刷/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]異業種連携で活発化する出版構造改革
[電子出版]成長が続く電子出版ビジネスと電子図書館サービス
[新聞業界]外部環境変化に戸惑いを隠せない新聞業界
[広告業界]インターネット広告がさらに拡大し、広告市場は大きく回復
[DM業界]デジタルマーケティングで量から質へと進化するDMメディア
[折込広告他]コロナ禍が変える購買行動と地域のイノベーション
[通信販売業界]”通販・EC市場、11.4兆円市場へ拡大 コロナ禍特需の反動でカタログやテレビは伸び悩む
*関連資料 出版市場/電子出版市場/新聞市場/広告市場/通販市場

第5章 印刷産業の経営課題
[SDGs/ESG]サステナビリティをいかに事業活動と結び付けるか
[地域活性化]地方創生戦略からデジタル田園都市構想へ
[経営管理]守りの「見える化」と攻めの「営業改革」
[デジタルマーケティング]「受注」「印刷」「配送」など業務視点から印刷会社を最適化
[労務管理]多様性を重視した働き方を実現するための労務管理の在り方
[営業戦略]「付加価値を高める営業」へ進化させるためのデジタル化推進
[人材]動画ビジネス成功のカギは人材育成・人材確保
*関連資料 クロスメディア/デジタルマーケティング/人材

●巻末資料
DTP・デジタル年表/年表/『印刷白書』年表/印刷産業&関連団体アドレス

上場印刷企業33社のうち、21社が増収、22社が増益を達成

2021年度の法人企業統計調査で全産業の経常利益は過去最高となり、印刷産業も大きな伸びを達成した。上場企業の2022年3月期決算は3社に1社が最高益となり、上場印刷企業33社のうち22社が増益となった。(数字で読み解く印刷産業2022その6)

2021年度の経常利益は過去最高を更新~法人企業統計

9月1日発表の財務省「法人企業統計調査」によると、2021年度の全産業(金融業、保険業を除く)の経常利益は、前年度比33.5%増の83兆9247億円で、3期ぶりに増益に転じ、比較可能な1960年度以降で過去最高を更新しました。

製造業は同52.1%増の33兆1940億円、半導体関連の需要が増えた「情報通信機械」や「化学」が増益に寄与しました。非製造業は同23.7%増の50兆7307億円、原油価格の上昇で利益が拡大した「卸売業、小売業」や、前年度に大きく落ち込んだ反動で「サービス業」が好調でした。

売上高は同6.3%増の1447兆8878億円と、4期ぶりの増収でした。設備投資額(ソフトウエアを含む)も同9.2%増の45兆6613億円となり、3期ぶりにプラスに転じました。

印刷・同関連業について見てみると、売上高は同3.2%減の7兆6652億円で、2期連続の減少だが、経常利益は同49.6%増の2779億円で4期ぶりに増益に転じました。設備投資額(ソフトウエアを含む)は同16.8%減の1660億円で、6期連続のマイナスで減少幅は拡大しています。

上場企業は3社に1社が最高益、上場印刷企業22社が増益を達成

2022年3月期決算の上場企業約1890社(金融など除く)のうち、最高益となった企業の比率は30%と約30年ぶりの高水準になりました。日本経済新聞が5月13日までに業績を発表した上場企業を対象に集計したところ、7割の企業の純利益が前期より増え、最高益となった企業の割合も1991年3月期以来の多さでした。

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業33社を、上場印刷企業としています。前回までは34社で分析してきましたが、トッパン・フォームズが凸版印刷の完全子会社化により2022年2月25日付けで上場廃止となったことから、現在編集中の『印刷白書2022』では33社となっています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2021年6月期決算から2022年5月期決算までを2021年度としています。

ちなみに、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」が、上場企業や大会社に適用されるようになりました。収益認識基準の導入は、既にIFRS(国際財務報告基準)を適用している企業にとって影響はありませんが、日本基準の企業にとっては売上高が減少して見えるほどの大きな影響があります。

2022年8月現在IFRSを適用している上場企業は251社、印刷会社ではNISSHAとプロネクサスの2社が適用しています。

上場印刷企業33社のうち、IFRS適用の2社を除き、2022年3月期~5月期が決算の19社が、収益認識基準を適用していて、そのうち12社が売上高が適用前と比べて減少したとしています。

33社の2021年度売上高合計は3.8兆円(前期比3.4%増)ですが、適用前の数字ならもっと大幅な増収だったことになります。

コロナ禍が続く中で、個人消費や企業活動の停滞、紙メディアの需要減少、原材料価格の高騰など、印刷業界にとって厳しい経営環境にありますが、増収21社、増益22社となりました。

『印刷白書2022』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業33社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

印刷物は11年連続の輸入超過、アジアがシェア7割

貿易統計で印刷物を見ると、2021年は輸出が拡大、輸入が減少したが、11年連続の輸入超過となった。輸出先は中国が不動の1位で、輸入先はシンガポールが9年連続トップである。(数字で読み解く印刷産業2022その5)

輸出は中国が不動の1位、輸入はシンガポールが9年連続1位

財務省「貿易統計」によれば、2021年の印刷物の輸出額は286億円(前年比24.1%増)で4年ぶりの増加、輸入額は684億円(同10.9%減)で2年連続の減少となりました。

アジアが最大の取引先で、2021年の輸出額は197億36百万円(構成比68.9%)、輸入額は502億19百万円(同73.4%)で、輸出入ともに7割を占めます。北米は輸出38億84百万円(同13.6%)、輸入81億42百万円(同11.9%)、西欧が輸出28億59百万円(同10.0%)、輸入75億80百万円(同11.1%)となりました。

輸出先のトップ10は、中国、アメリカ合衆国、香港、大韓民国、ベトナム、メキシコ、タイ、台湾、ドイツ、フィリピンです。中国は不動の1位ですが10年間で半減し、シェアは2015年以来3割を切っています。台湾は4年連続の減少ですが、その他の9カ国は増加し、特に韓国、香港、アメリカ、中国が増加しました。

輸入先のトップ10は、シンガポール、中国、アメリカ、韓国、ドイツ、プエルトリコ(米)、フランス、マレーシア、イタリア、アイルランドです。9年連続1位のシンガポールからの輸入額は前年より157億円減少しましたが、輸入総額の4割を占めています。8カ国でプラスで、特に韓国が2.2倍、前年11位のフランスと12位のイタリアは約2倍に増加してランクインしました。

下図は1992~2021年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。1992~2004年の13年間は輸入超過でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の11年間は逆に輸入超過となっています。2011年は輸出は増加、輸入は減少したことから、差引額は398億円まで縮小しました。

『印刷白書2021』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2021年の印刷業の生産金額は3500億円、前年比1.0%増

「経済産業省生産動態統計」によると、2021年の印刷業の生産金額は3500億円(前年比1.0%増)と、2015年以来のプラスとなった。(数字で読み解く印刷産業2022その4)

経済産業省生産動態統計の「印刷月報」では、従事者100人以上の事業所を対象に、印刷業の「生産金額」を毎月調査し、製品別・印刷方式別に集計しています。「生産金額」とは契約価格または生産者販売価格(消費税を含む)により評価した金額です。ただし、印刷前工程(企画・編集・製版など)と印刷後工程(製本・加工など)、用紙代などを除いた、印刷工程の生産金額に限定されます。

6月24日公表の2021年年報では、印刷業の生産金額は3500億27百万円(前年比1.0%増)で、2015年以来のプラスとなりました。

印刷製品別に見ると、包装印刷、商業印刷、建装材印刷などがプラスに寄与しました。

生産動態統計の「紙月報」によると、2021年の印刷・情報用紙の販売数量は前年比4.1%増で2013年以来のプラス、「塗料及び印刷インキ月報」によると印刷インキの販売数量は同1.3%増で2016年以来のプラスです。印刷業の生産金額だけでなく、生産量も増加したことが見て取れます。

印刷製品別の構成比を見ると、商業印刷と出版印刷で5割以上を占めています。印刷方式別では平版印刷(オフセット印刷)が圧倒的ですが、凹版印刷(グラビア印刷)、凸版印刷(活版印刷)などの拡大で2012年に7割を切り、2021年は62.7%まで縮小しています。

「印刷統計」の2004年調査開始以来の製品別シェアを見ると、この17年間で大きく減少したのは出版印刷(30.0%→15.6%)で、包装印刷は逆に13.0%→24.2%と大きくシェアを伸ばし、建装材印刷は3.2%からこの9年間は4%台で推移しています。出版不況の長期化、包装材や建装材の多様化などを反映した数字となっています。

『印刷白書2021』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2020年の印刷産業出荷額は9月公表予定

全産業・全事業所を対象とする「令和3年経済センサス‐活動調査」の速報が、5月31日に公表された。さらに、9月には工業統計の概要版に該当する集計結果が公表される。(数字で読み解く印刷産業2022その3)

2020年の売上金額、2021年6月1日現在の事業所数・従業者数を発表

「経済センサス‐活動調査」は、全国すべての事業所・企業を対象として、全産業分野の売上(収入)金額や費用等の経理事項を同一時点で網羅的に把握する統計調査です。「センサス」とは全数調査を意味し、2012年実施、2016年実施に続いて、今回の調査(2021年6月実施)が3回目となります。

速報では産業大分類別に、企業数、売上高、事業所数、従業者数などが集計され、印刷産業は大分類の「製造業」に含まれています。

2020年の全産業の売上(収入)金額は1702兆201億円、純付加価値額は337兆1437億円となっています。
産業大分類別に売上高を見ると、「卸売業、小売業」が全産業の28.3%と最も多く、次いで「製造業」が23.0%、「医療、福祉」が10.2%などとなっています。また、第三次産業で全産業の69.5%を占めています。

2021年6月1日現在の企業等の数は367万4千企業、民営事業所数は507万9千事業所、従業者数は5745万8千人となっています。
産業大分類別に従業者数を見ると、「卸売業、小売業」が全産業の20.0%と最も多く、次いで「製造業」が15.4%、「医療、福祉」が14.2%などとなっています。また、第三次産業で全産業の77.2%を占めています。

製造業関連集計(概要版)は9月公表予定

2022年9月に製造業に関する業種別(中分類24業種)、従業者規模別、都道府県別に事業所数、製造品出荷額等、純付加価値額などの集計結果が公表される予定です。この集計結果が「工業統計調査」の概要版に当たるものです。
また、2022年12月に、業種別(細分類546業種)、品目別(約1,800品目)、都道府県・市区町村別などのより詳細な集計結果が公表される予定です。この集計結果が「工業統計調査」の確報に当たるものです。

製造業を対象とする「工業統計調査」は、全産業を調査する「経済センサス-活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年については中止となってきましたが、「2020年工業統計調査(2019年実績)」を最後に廃止となり、「経済構造実態調査」における製造業事業所調査として実施されることになりました。

JAGATが毎年10月に発行している『印刷白書』では、毎年8月公表の工業統計調査の確報値を最新データとして利用してきましたが、今回は12月の確報値を待つわけにもいかないので、9月公表の概要版を利用することになります。

活動調査の概要版では、従業者4人以上の事業所に関する統計表が公表されます。印刷白書では全事業所のデータを利用してきましたが、今回は4人以上に限られます。産業中分類「15印刷・同関連業」の数値はわかりますが、その内訳になる細分類まではわかりません。また、それぞれの事業所の製造品・加工品を品目別に集計した「品目別統計表」から、産出事業所数などを見てきましたが、こちらも今回は利用できません。

『印刷白書2022』(2022年10月刊行予定)の最新データが2020年というと、データが古いように思えるかもしれません。大規模調査における公表時期の遅れは大きなデメリットですが、経済センサスは全産業を対象に同一時点で網羅的に把握することを目的とする統計調査で、データの信頼性を高めるためには仕方ない面もあります。

JAGAT刊『印刷白書』では、 「経済センサス‐活動調査」 「工業統計調査」「経済構造実態調査」 などから、印刷産業の現状を分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

「工業統計調査」は廃止、「経済構造実態調査」の一部となる

経済産業省「工業統計調査」は2020年調査(2019年実績)で廃止となり、「経済構造実態調査」における製造業事業所調査として実施されることが4月1日に発表された。 (数字で読み解く印刷産業2022その2)

「工業統計調査」と「経済センサス‐活動調査」

製造業を対象とする「工業統計調査」の歴史は非常に古く、1909年(明治42年)に「工場統計調査」として開始されました。1939年(昭和14年)から「工業統計調査」となり、1953年(昭和28年)から各統計編に分割され、産業編に品目編が加わりました。
1955年(昭和30年)には全事業所での調査を開始し、以降1980年(昭和55年)まで毎年全事業所での調査を実施してきました。1981年(昭和56年)以降は西暦末尾3、5、8 、0 年は全事業所、それ以外の年は従業者4人以上の事業所が対象となり、2009年(平成21年)以降は標本調査(従業者4人以上の事業所対象)となりました。

「工業統計調査」が全数調査を実施しなくなったのは、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」が2012年(平成24年)にスタートしたことによるものです。全事業所・企業を対象に5年に1回実施され、産業横断的集計と産業別集計が公表されます。製造業に限った調査ではないので、同一時点での全産業の比較が可能で、既存の統計調査では把握できなかったサービス業の実態もわかるようになりました。
「経済センサス‐活動調査」の実施年には「工業統計調査」は中止となり、製造業に関する産業別集計によって、工業統計の該当項目を把握することになりました。また、「工業統計調査」は毎年12月31日に実施されてきましたが、「経済センサス‐活動調査」に合わせて、2017年(平成29年)調査から6月1日に変更になりました。

「工業統計調査」との時系列比較を可能とするために、「経済センサス‐活動調査」の製造業についての産業別集計では、以下のすべてに該当する製造事業所について集計しています。
・管理、補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと
・製造品目別に出荷額が得られた事業所であること
ただし、「工業統計調査」は前年の調査名簿を母集団として、準備調査を行い整備した独自名簿による調査です。これに対して、「経済センサス‐活動調査」は事業所母集団データベースを母集団としていて、両者には明らかな断層があります。
ちなみに事業所母集団データベースは、経済センサスなどの大規模な統計調査の結果や行政記録情報から情報を収集し、総務省でデータ突合・審査の上記録するもので、毎年更新されています。

「経済構造実態調査」 の一部になる「工業統計調査」

「経済構造実態調査」は、国民経済計算の精度向上等に資するとともに、5年ごとの「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握することを目的に毎年6月1日現在で実施されています(活動調査の実施年を除く)。
これまで実施されていた3つの統計調査(サービス産業動向調査の拡大調査、商業統計調査、特定サービス産業実態調査)を統合・再編し、2019年に調査を開始しました。
さらに2022年調査から、全産業に属する一定規模以上の法人企業が対象になるとともに、これまでの「工業統計調査」を「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施することになりました。

経済構造実態調査実施事務局ホームページ より

調査名簿が事業所母集団データベースに切り替わることで、 これまでの「工業統計調査」 に比べて、対象事業所数は増加しますが、増加する事業所は従業者4~9人の事業所が大半を占め、出荷額ベースでの影響は小さいものとなります。
また、これまで別の時期に実施されていた「経済産業省企業活動基本調査」と同時実施し、両調査に共通する項目については、片方の調査票への回答は不要とする処理等を行っています。

なお、「令和3年経済センサス‐活動調査」(2021年6月1日実施)は、2022年5月31日に速報が公表されます。
「2022年経済構造実態調査」(2022年6月1日実施)の製造業事業所調査は、2023年7月に公表される予定です。

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計調査」 「経済センサス‐活動調査」 「経済構造実態調査」 「経済産業省企業活動基本調査」などから、印刷産業の現状を分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

インターネット広告費が初めてマスコミ四媒体を上回る

「2021年日本の広告費」によれば、インターネット広告費が前年比21.4%の大幅増の2.7兆円で、マスコミ四媒体広告費を初めて上回った。(数字で読み解く印刷産業2022その1)

コロナ禍で大幅に落ち込んだ2020年比で10.4%増まで回復

電通「2021年日本の広告費」が2月24日に発表されました。
「日本の広告費」は、日本国内で1年間に使われた広告費(広告媒体料と広告制作費)を推計したもので、「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つに分類されています。
2021年(1~12月)の総広告費は前年比10.4%増の6兆7998億円と、11.2%減となった2020年から大幅に回復しました。下半期にコロナ禍の影響が緩和し、テレビメディア広告費が回復したことと、インターネット広告費の大幅増によるものです。
「10月以降は、音楽・スポーツイベントやテーマパークなどで徐々に入場制限が解除され、人流や経済が戻ってきたことを受け、多くの広告媒体で回復が鮮明になった」としています。

「インターネット広告費」が「マスコミ四媒体広告費」を初めて上回る

「マスコミ四媒体広告費」は2兆4538億円(前年比8.9%増)で、7年ぶりのプラス成長となりました。新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのすべてが増加し、特にテレビメディア広告費は、巣ごもり・在宅需要なども影響し2桁増です。

「インターネット広告費」は1996年の推定開始以来、一貫して高い成長を続け、2019年には6年連続の2桁成長でテレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超えとなりました。2020年にはコロナ禍でも唯一プラス成長(前年比5.9%増)を達成しています。2021年には 2兆7052億円 (同21.4%増) で、2桁成長に戻り、「マスコミ四媒体広告費」を初めて超えました。

また、マスコミ四媒体の事業者が主体となって提供するインターネット広告媒体費を意味する「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は、3年連続の2桁成長で、初めて1000億円を超えました。「媒体社が持つ高い編集力や制作力でリッチなコンテンツが提供されるようになり、オンラインイベントや動画・音声配信など各種サービスが拡大した」と分析しています。

「プロモーションメディア広告費」は1兆6408億円(前年比2.1%減)ですが、 巣ごもり・在宅需要を後押しする媒体として「DM」(同4.7%増)と「折込」(同4.2%増)が健闘し、繁華街における大型サイネージなどが目立った「屋外広告」もプラスとなりました。

なお、矢野経済研究所「2021インターネット広告市場の実態と展望」(調査期間2021年7~9月)では、「ソーシャルメディア広告や動画広告などの運用型広告の拡大などにより、2024年度の国内インターネット広告の市場規模は約3.3兆円にまで拡大」と予測しています。

JAGAT刊『印刷白書』 では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は 「数字で読み解く印刷産業」 で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

『印刷白書2021』を読み解くことで見えてくるもの

『印刷白書』では印刷産業の全体像を理解してもらうために、社会、技術、産業全体、周辺産業に関する幅広いテーマを取り上げ、今後の印刷メディア産業の方向性を探っています。図表点数は毎年140点以上ですが、資料的意味だけでなく、読み物としての面白さも追及しています。

『印刷白書』表紙の細野さんが「造本装幀コンクール」入賞

『印刷白書』の表紙と装丁が細野綾子さんに代わって今回が4回目です。

細野さんの装丁作品は、今年度の「造本装幀コンクール」で日本印刷産業連合会会長賞を受賞しています。

川上不白茶会記集 川上 宗雪(監修) - 中央公論新社
『川上不白茶会記集』
出版:中央公論新社、装幀者:細野綾子、印刷:大日本印刷、製本:大口製本印刷

『印刷白書』の表紙とはまた違ったイメージですが、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒業後、活版印刷を学んだ細野さんの作品世界の広さが感じられます。

page会場などで『印刷白書』を販売していると、表紙に魅かれて手に取って、パラパラめくって思ったものと違うと元に戻していく来場者も少なくありません。そこも狙いというか、いわゆる白書のイメージとは少し違う、読み物としての性格を反映した結果がこの表紙、装丁になっています。

どこまで読者の皆様の期待に応えられているか心もとないのですが、電話やメールでお礼や労いの言葉をいただくこともあって、何とか役目を果たせているかと思っています。

2021年版の特集は「with/afterコロナの印刷ビジネスを考える」

第1部「特集」では、前回に続き新型コロナウイルスに関連する論点を取り上げ、業界識者に執筆していただきました。afterコロナで印刷業界が生き残るためには、「印刷業はサービス産業にならなければ、マス時代と同等の利益額を稼ぐのは難しい」という提言となりました。

第2部「印刷・関連産業の動向」、第3部「印刷産業の経営課題」では、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探っています。なお今回は、「印刷産業の経営課題」に「SDGs/ESG」の項目を追加しています。

『印刷白書』では毎年データを更新するだけでなく、内容や切り口を変えて、より役立つ誌面になることを模索しています。

また、「数字で読み解く印刷産業」では、限られた誌面では伝えきれなかったことなどを順次発信しています。例えば『印刷白書』で産業連関表を取り上げる理由の説明や、延長産業連関表の最新データを加えたグラフの解説などを行っています。

なお、経済産業省Webサイトの統計ページでは、延長産業連関表の利活用事例として『印刷白書2021』が紹介されています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

「2018年延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。2015年から2018年の推移を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2021その9)

取引額は年々縮小、印刷インキのみ増加傾向

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。

日本全国を対象とした「産業連関表(基本表)」は、10府省庁が共同で5年ごとに作成していて、「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この「産業連関表(基本表)」をベンチマークとして、「延長産業連関表」を毎年作成していますが、2021年は1月27日に「平成29年(2017年)延長産業連関表」を、8月19日に「平成30年(2018年)延長産業連関表」を公表しました。

『印刷白書2021』では、2017年延長表を中心に、印刷産業の産業構造を見ています。今回は2018年延長表の公表を受けて、印刷産業の主要な取引先と販売先を見てみましょう。

延長産業連関表(96部門表)の「013印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります

そこで、「013印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の大きい産業を「原材料等の調達先上位10産業」「販売先上位10産業」としてグラフにしました。2018年の上位10産業に関して、2015年からの推移を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質表で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占め、順位に変動はありません。上位10産業で取引額全体の9割を占めています。

印刷市場の縮小を反映して2015年から2018年に取引額はトータルで11.5%減となりました。特に「物品賃貸サービス」(産業用機械器具賃貸業、貸自動車業、電子計算機・同関連機器賃貸業、事務用機械器具賃貸業など)が2015年比29.0%減、「印刷・製版・製本」が同17.2%減と大幅に減少しました。「化学最終製品」(印刷インキなど)は唯一プラスで6.6%増となりました。

得意先は「商業」「映像・音声・文字情報制作」「金融・保険」まで同規模

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、「映像・音声・文字情報制作」(出版、新聞など)が長年首位を占めていましたが、2017年は「金融・保険」、2018年は「商業」が1位となり、上位3産業は同じ規模となっています。上位10産業で取引額全体の7割を占めています。

2015年から2018年に取引額はトータルで12.4%減となり、特に減少幅が大きいのは、「映像・音声・文字情報制作」22.5%減、次いで「印刷・製版・製本」17.2%減、「金融・保険」「研究」「他に分類されない会員制団体」(宗教団体、労働団体、政治団体、協同組合、商工会議所など)も大きく減少しました。

『印刷白書2021』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)