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2019年の印刷物の輸入額は813億円まで拡大

貿易統計で印刷物を見ると、2019年は輸入の大幅拡大で、9年連続の輸入超過となり、差引額はさらに拡大した。輸入先のトップは7年連続でシンガポール、輸出先は中国が不動の1位となっている。(数字で読み解く印刷産業2020その6)

印刷物は9年連続の輸入超過、シンガポールが牽引

財務省「貿易統計」によれば、2019年の印刷物の輸出額は289億24百万円(前年比10.1%減)、輸入額は813億21百万円(同37.2%増)となりました。

アジアが最大の取引先で、2019年の輸出額は194億95百万円(構成比67.4%)で、転写印刷とその他の印刷の割合が大きくなっています。輸入額は605億46百万円(同74.5%)で、その他の印刷が8割を占めています。

下図は1990~2019年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。1990~2004年の15年間は輸入超過でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の9年間は逆に輸入超過となっています。

2019年の輸入額が大幅に拡大したのは、シンガポールの輸入額が前年より194億円増加したことによるものです。シンガポールは2013年に輸入先のトップとなり、以来7年間連続トップで輸入総額の5割以上を占めるまでになりました。輸出額は2010年から2019年の10年間で半減しています。

ちなみに現在執筆準備を進めている『印刷白書2020』では、同じ期間の出版物の輸出入額とその差引額の推移も見ていますが、全期間輸入超過となっています。

また、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介する予定です。

限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2018年の印刷産業出荷額(4人以上の事業所)は4兆8281億円(確報値)

「2019年工業統計表 産業別統計表〔概要版〕」が5月29日に公表された。4人以上の印刷産業出荷額は4.9%減で5兆円割れが確定となった。(数字で読み解く印刷産業2020その5)

出荷額は4.9%減で5兆円割れ、事業所数も1万を切る

2019年6月1日現在で実施された「2019年工業統計調査(2018年実績)」の産業別統計表〔概要版〕が5月29日に公表されました。調査期日が年末から変更されて3回目の調査結果です。
従業者4人以上の事業所に関して、製造業の2018年の製造品出荷額等は331兆8094億円(前年比4.0%増)で速報値より0.1ポイント増、印刷産業は4兆8281億円(同4.9%減)で速報値より0.4ポイント改善されましたが、初めて5兆円割れとなりました。
2019年6月1日現在の製造業の事業所数は18万5116事業所(前年比1.7%減)、従業者数は777万8124人(同1.0%増)、印刷産業は9888事業所(同3.5%減)、従業者数は25万3665人(同1.8%減)で、こちらも速報値より改善されました。

工業統計調査の結果は、速報→概要版→確報の順で公表されます。今回の産業別統計表(概要版)は、産業別、都道府県別に主要項目を集計したもので、8月に公表予定の「産業別統計表」「地域別統計表」の数値が確定値になります。
製造業に属する4人以上の事業所を対象とし、2019年の調査対象数は19万5951事業所、回収率は95.2%となっています。現在、2020年6月1日を調査期日として、「2020年工業統計調査」が実施されています。

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計調査」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2019年の印刷業の生産金額は3704億円、包装印刷のみプラス成長

印刷統計によると、2019年の印刷業の生産金額は3704億円(前年比0.4%減)、商業印刷と出版印刷で5割以上を占め、特に商業印刷の動向が市場を左右しています。(数字で読み解く印刷産業2020その4)

JAGAT刊『印刷白書』では多くの公的統計データを利用して、印刷メディア産業の現状を捉えています。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、集計作業の遅れなどが心配されますが、今年度も例年どおり10月下旬の発刊に向けて、2020年版の準備を始めたところです。

印刷市場の規模を見るときには「工業統計」が使われますが、年に1度の工業統計調査に対して、毎月の「印刷統計」では製品別・印刷方式別の生産金額を知ることができます。
「工業統計」2019年調査は、2020年2月28日公表の速報版に続いて、産業別統計表〔概要版〕が本日公表される予定です。こちらは2018年実績ですが、1週間前(5月22日)に公表された「経済産業省生産動態統計」2019年年報には、2019年1~12月の「印刷統計」を集計した2019年実績が掲載されています。

工業統計の出荷額4.8兆円に対して、印刷統計の2019年年計では生産金額は3703億87百万円です。この差はどこからくるかというと、印刷統計は100人以上の印刷業を対象とした標本調査で、印刷前工程(企画・編集・製版など)と印刷後工程(製本・加工など)、用紙代などを除いた、印刷工程の生産金額に限定された数字だからです。
印刷製品別生産金額の構成比を見ると、商業印刷と出版印刷で5割以上を占めています。印刷方式別では平版印刷(オフセット印刷)が圧倒的ですが、その他の印刷方式(デジタル印刷など)が毎年少しずつ増えています。

「印刷統計」の2004年調査開始以来の製品別シェアを見ると、この15年間で大きく減少したのは出版印刷(30.0%→16.3%)と証券印刷(2.0%→1.3%)で、包装印刷は逆に13.0%→22.3%と大きくシェアを伸ばし、建装材印刷も3.2%→4.7%と着実に増加しています。出版不況の長期化、証券印刷物関連の電子化、包装材や建装材の多様化などを反映した数字となっています。
同じく2004年調査開始以来の印刷方式別シェアを見ると、平版印刷は2011年までは70%を超えていましたが、2019年は65.8%となっています。その他の印刷(デジタル印刷など)は逆に3.9%→6.8%と着実に増加しています。

時系列表で過去61カ月分の推移を見ると、商業印刷の動向がそのまま印刷業全体の動向となっていることがよくわかります。商業印刷の動向はクライアント産業の動向によって決まるわけで、また違う統計データを見る必要があります。

『印刷白書2019』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

インターネット広告費が初めてテレビ広告費を上回る

「2019年日本の広告費」によれば、インターネット広告費が6年連続の2桁成長で、2兆円を超え、テレビメディア広告費を初めて上回った。(数字で読み解く印刷産業2020その3)

新型コロナウイルスの影響で発表が3月にずれ込む

電通「2019年日本の広告費」が3月11日に発表されました。
「日本の広告費」は毎年2月末に発表されていて、今年も27日に発表予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていました。
同社では本社ビルに勤務する男性従業員1名が「陽性」であることが2月24日に判明し、同ビルに勤務する全従業員を対象に同26日から在宅リモートワークを実施しています。現在のところ新たな感染者は出ていませんが、3月15日までリモートワークを継続することと、関西支社・中部支社ならびに国内電通グループ各社においても、同10日から順次リモートワークに移行していくことを同9日に発表していいます。

総広告費は2012年から8年連続で増加

「日本の広告費」は、日本国内で1年間に使われた広告費(広告媒体料と広告制作費)を推計したもので、「マスコミ四媒体広告費」「インターネット広告費」「プロモーションメディア広告費」の3つに分類されています。
2019年(1~12月)の総広告費は前年比6.2%増の6兆9381億円で、2012年から8年連続で増加しています。「不透明な世界経済や相次ぐ自然災害、消費税率変更に伴う個人消費の減退や弱含みのインバウンド消費など厳しい風向きの中、成長を続けるインターネット広告領域やイベント関連が総広告費全体を押し上げる結果となった」としています。
今回から「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント」が推定対象に追加されましたが、これらを含まない前年同様の推定方法では、総広告費は同1.9%増の6兆6514億円となります。

6年連続2桁成長の「インターネット広告費」は2兆円超え

「マスコミ四媒体広告費」は2兆6094億円(前年比3.4%減)で5年連続の減少に対して、6年連続で2桁成長の「インターネット広告費」は2兆1048億円(同19.7%増)、「プロモーションメディア広告費」は2兆2239億円(同7.5%増)となりました。総広告費における構成比は、マスコミ四媒体37.6%(テレビメディア26.8%)、インターネット30.3%、プロモーションメディア32.1%となり、インターネット広告がテレビメディアを初めて上回りました。
「インターネット広告費は、テレビメディア広告費を超え、初めて2兆円超えとなった。デジタルトランスフォーメーションがさらに進み、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化、広告業界の転換点となった」と分析しています。

矢野経済研究所「2019インターネット広告市場の実態と展望」(調査期間2019年3~7月)では、「インターネット広告市場を2023年度には約2.8兆円まで拡大」と予測しています。

『印刷白書2019』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2018年の印刷産業出荷額(4人以上の事業所)は4兆8061億円(速報値)

「2019年工業統計速報」が2月28日に公表された。4人以上の印刷産業出荷額は5.3%の大幅減で、初めて5兆円割れとなった。(数字で読み解く印刷産業2020その2)

製造業の出荷額は3.9%増、印刷産業など4業種は減少

2019年6月1日現在で実施された「2019年工業統計速報」(製造業に属する従業者4人以上の事業所対象)が2月28日に公表されました。
2019年6月1日現在の事業所数は18万4839事業所(前年比1.8%減)で減少傾向が続きますが、従業者数は776万3431人(同0.9%増)となりました。
2018年の製造品出荷額等は331兆3548億円(同3.9%増)、前年の5.6%増に比較すると増加幅は1.7ポイント減ですが、全24業種のうち減少となったのは4業種(前年は6業種)だけでした。

印刷産業出荷額は5.3%の大幅減、確報値では改善されるか

印刷産業に関して見ると、事業所数は9862事業所( 前年比 3.7%減)、従業者数は25万2470人(同2.3%減)、製造品出荷額等は4兆8061億円(同5.3%減)となりました。

工業統計は、毎年2月末に速報、5月末に概要版、8月上旬に確報が公表されますが、速報では数値は小さく出る傾向があります。印刷産業出荷額は2017年の速報値では前年比1.7%減でしたが、確報値では0.6%減となり、500億円ほど増加しました。今回も減少幅が4.3%程度となれば、3人以下の事業所の推計値を含む全事業所では5兆円をぎりぎり確保できることになります。

印刷産業の出荷額・事業所数は東京が1位

製造品出荷額等が最も大きい産業は、輸送用機械器具製造業(構成比21.1%)で、化学工業(同9.0%)、食料品製造業(同9.0%)の順となっています。
製造品出荷額等が最も大きい都道府県は、愛知(同14.7%)で、神奈川(同5.6%)、大阪(同5.3%)、静岡(同5.3%)、兵庫(同5.0%)と続きます。都道府県別第1位産業をみると、輸送用機械器具製造業が12都県、食料品製造業が9道県、化学工業が8府県、電子部品・デバイス・電子回路製造業が6県です。

印刷産業では、製造品出荷額等は東京(構成比15.2%)が最も大きく、埼玉(同14.9%)、大阪(同9.2%)、愛知(同6.3%)の順、事業所数も東京(同17.1%)が最も多く、大阪(同11.0%)、埼玉(同8.7%)、愛知(同6.4%)の順です。
東京の主要産業を見ると、輸送用機械器具製造業、電気機械器具製造業に次いで、印刷産業は第3位産業に入っていて、東京の地場産業といえます。

『印刷白書2019』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

コンビニ、スーパー、百貨店の動向は印刷産業にどう影響するか

コンビニ店舗数は減少したが売上高は過去最高を更新、競争激化でビジネスモデルの転換期を迎えている。大手小売業の業績は、印刷会社の需要にどう影響するのか。(数字で読み解く印刷産業2020その1)

コンビニ店舗数は初の減少、スーパー店舗数は過去最高を更新

日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は1月20日、2019年末の全国のコンビニエンスストア店舗数を5万5620店と発表しました。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど、JFA正会員7社の店舗数を集計したもので、前年末に比べ123店減少しました。2005年以降初めてのマイナスで、コンビニは飽和状態にあることから今後も店舗数は頭打ち状態が続くとみられます。

一方、大手スーパーなどを会員とする日本チェーンストア協会(JCA)が1月23日に発表した、2019年末のJCA会員企業55社の店舗数は1万550店と過去最高を更新しました。100円ショップなどスーパー以外の業種増加が主な理由ですが、2012年の57社7895店から7年連続で増加しています。

百貨店は最近では地方の不採算店の閉店が続き、2019年末の店舗数は76社208店と、ピークだった1999年(140社311店)から約3割減少しています。

コンビニ売上高は過去最高を更新、百貨店はインバウンドが好調

次に3業態の2019年売上高を見てみましょう。
最も売上規模の大きいスーパーは12兆4325億円、天候不順や消費税増税などの影響もあって、既存店ベースで前年を1.8%下回り、4年連続の減少となりました。
前年からの変化を見る場合、過去1年間に開・廃業した店舗の販売額を除いた「既存店ベース」が主に利用されますが、印刷需要に関して言えば、新規出店の告知チラシなどが考えられることから、「全店ベース」で比較したほうがいいかもしれません。ちなみにスーパーは全店ベースで見ると4.3%減となりました。

コンビニの全店売上高は11兆1608億円(前年比1.7%増)で過去最高を更新しました。既存店ベースでは10兆3421億円(同0.4%増)で、初めて10兆円を超えました。カウンター商材、冷凍食品、調理麺、おにぎり、デザートなどの中食の好調、たばこの売り上げ増加、キャッシュレス還元の効果により、客単価が上昇したものとみられます。

日本百貨店協会が1月22日に発表した、2019年の全国百貨店売上高は5兆7547億円(前年比:全店2.2%減、既存店1.4%減)で6年連続のマイナスです。マイナス要因として、天候不順や消費税増税、さらに若年層の百貨店離れや地方経済低迷などの構造的要因が考えられます。ただし、インバウンド(訪日外国人)は客数減を購買単価でカバーし、3461億円(同2.0%増)で3年連続で過去最高を更新しました。

1月売上高はマスク特需でコンビニはプラス、スーパーと百貨店はマイナス

新型コロナウイルスの影響が心配される中、2月下旬には2020年1月の販売統計が相次いで発表されました。
スーパーの総販売額はマイナス(前年同月比:全店7.7%減、既存店2.0%減)ですが、コンビニ売上高は中食の好調とキャッシュレス還元に加え、マスクなどの需要増加によりプラス(同:全店1.0%増、既存店0.4%増)となりました。

一方、全国百貨店売上高は4カ月連続のマイナスです(同:全店4.5%減、既存店3.1%減)。記録的な暖冬で季節需要が減退し、インバウンドは春節の月ズレ(昨年2月5日→本年1月25日)で2桁増ですが、下旬からは新型コロナウイルスの影響で国内外の集客・売り上げともに厳しい商況となりました。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

■関連情報『印刷白書2019』(2019年10月23日発刊)
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『印刷白書2019』発刊記念特別セミナー

印刷業界動向、産業連関表、上場企業分析、産業構造、ワークフロー、マーケティングオートメーションと印刷など『印刷白書2019』から主要なトピックを解説します。「デジタル×紙×マーケティング」で印刷ビジネスがどのように変わるのかを探ります。 続きを読む

経済効果も含めて大成功のラグビーワールドカップ

日本初開催のラグビーワールドカップは、9月20日から11月2日の決勝までの44日間、日本各地で計48試合が行われました。その経済効果は4372億円、訪日外国人客は40万人とされます。(数字で読み解く印刷産業2019その8)

数字で読み解くラグビーワールドカップ2019

大型台風の影響で48試合中3試合が中止となりましたが、日本代表はロシア、アイルランド、サモア、スコットランドを次々に破って、予選グループを全勝で1位通過し、準々決勝で南アフリカに敗れたものの、1試合ごとにラグビーファンを増やしていきました。

今年話題になった言葉に贈られる「新語・流行語大賞」のノミネート30語のうち、ラグビーワールドカップ(W杯)2019に関連する言葉として、「ジャッカル」「にわかファン」「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」「笑わない男」「ONE TEAM(ワンチーム)」の5つが選ばれています。

タックルされて倒れた相手のボールを奪うプレーが「ジャッカル」と言われても、「にわかファン」には何のことかわかりませんが、「一生に一度」の体験を求めて大勢の観客が会場へと足を運び、「笑わない男」の顔も広く知られるようになりました。

「ONE TEAM」で初のベスト8進出を決めた日本対スコットランド戦の観客動員数は6万7666人、全試合の観客動員数は延べ170万4443人(1試合平均3万7877人)で、チケット販売枚数は184万枚(販売率99.3%、中止の3試合を含む)に達しました。

経済効果は4372億円

「ラグビーワールドカップ2019大会前経済効果分析レポート」では、大会開催による経済効果を4372億円と試算しています。

この試算は2017年9月現在における情報や想定に基づくもので、スタジアム等のインフラ整備、大会運営、観客による消費需要増加額を積み上げ、次に産業連関分析を用いて第一次・第二次間接効果を含めた経済効果を試算しています。

2015イングランド大会の247万人、2007フランス大会の219万人に次いで、日本大会の入場者数は150万~180万人の予測でしたが、台風で中止となった3試合が開催されていれば、180万人は確実に超えていたことになります。

同レポートでは、W杯を目的とした訪日外国人客40万人、その消費による経済効果を1057億円と予想し、「大会後の経済効果を見据えた取組みの実施により、本大会による経済効果はさらに増大する」としています。

日本政府観光局(JNTO)によれば、9~10月のW杯出場国からの外国人旅行者数は76万4100人で前年同期比29.4%増となりました。このうち、優勝した南アフリカからの旅行者は9500人で5倍近くに増え、日本と1次リーグで対戦したアイルランドからも2万1200人と約5.5倍に増加しました。また、イギリスからは11万8000人と、85.1%の大幅な増加となりました。

ラグビー観戦にビールは欠かせないといわれますが、W杯のワールドワイドパートナー「ハイネケン」の9~10月の国内販売量は、試合会場での販売や大会ロゴを使用した販促などが功を奏し、前年同期比2.8倍と大幅増を達成しました。

また、英国式パブHUBを展開するハブの10月度の月次速報によれば、全店舗の売上高(前年同月比)125.6%、客数(同)117.7%と好調でしたが、9月度より売上高で1ポイント、客数で3.6ポイント縮小した要因を「台風19号による、売上指数の最も高い土曜日であり且つラグビーイベントの複数試合が予定されていた10月12日(土)の休業(関西および九州の15店舗を除く96店舗が休業)の影響」とみています。

全国各地が会場となり、地方に長期滞在する人も多かったため、ビールだけでなく、宿泊施設など各方面に大きな経済効果を及ぼしたようです。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

■関連情報『印刷白書2019』発刊記念特別セミナー
2019年11月27日(水)14:00~17:10予定
印刷業界動向、産業連関表、上場企業分析、産業構造、ワークフロー、マーケティングオートメーションと印刷など『印刷白書2019』から主要なトピックを解説します。「デジタル×紙×マーケティング」で印刷ビジネスがどのように変わるのかを探ります。

■関連情報『印刷白書2019』
『印刷白書2019』(10月23日発刊)では産業連関表を使って、イベント開催による印刷産業への経済波及効果を考察しています。





『印刷白書2019』発刊のご挨拶

2019年10月23日発刊の『印刷白書2019』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。

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今年は、国内では年初の製紙メーカーの生産工場での事故と、その後の機械停止を伴う生産調整による用紙の値上げに始まり、輸入原材料のコスト上昇によるインキの値上げなど、主要な資材コストの上昇があり、紙メディアに関連するビジネスは難しくなってきました。また、世界では米中間の貿易戦争、悪化する日韓関係、目前に迫っているイギリスのEU からの離脱など、不安定な状況はますますエスカレートしています。経済面では、各国の利下げ競争が強まり、わが国においても日銀がこれ以上マイナス金利を深掘りするのかなどの議論が盛んですが、一方では資金の貸し手である銀行の自己資本規制の心配もあり、やがて融資に影響するのではないかとの懸念も生まれつつあります。10月からは消費増税も実施されました。

この10 年で印刷産業の企業数は1 万社減って2万2000社となりました。産業のピークだった30年前の半数です。リーマンショック後の世界では企業は製品やサービスのプロモーションにROIを重視するようになり、スマートフォンの登場以降は、デジタルメディアは年々進化して、人々がそうしたメディアに接触する時間が増え、結果として紙メディアは減少してきました。現代では、DMのような紙メディアからQRコードでスマホやPCのサイトに導き、ユーザーとコミュニケーションを取る企業が増えてきました。こうしたニーズにはマーケティングに対する理解も不可欠ですが、それとともにバリアブルプリントの技術で印刷物のパーソナライゼーションを可能にしなければなりません。JAGATでもそれを「デジタル×紙×マーケティング」と称して、昨年に引き続き研究し、事例の紹介に努めてきました。

時代の変化、デジタル技術の変化とともに、単に紙にインクを乗せていた姿からビジネスの目的や業態も変わっていきます。もちろん、オフセット印刷の生産性向上についても継続し努力しなければなりませんが、コモディティプリントは減少しているので、デジタルメディアとつながり、紙メディアの価値を高めることにも留意する必要があります。変化する社会のニーズに対して適応できる人材の育成は重要な経営課題の一つです。今年の印刷白書が各企業の皆様にとって、変化の方向性について考える際の参考となることを願っています。

2019年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2019』2019年10月23日発刊