業界初の白書として1994年に発刊以来、『印刷白書』は29年にわたり、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅・掲載する唯一の存在である。最新版の『印刷白書2023』は、Keynoteを“印刷業界の「創注」に向けた「連携」戦略”とし、10月下旬の発刊に向けて鋭意制作進行中である。 続きを読む
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2021年の印刷産業出荷額(全事業所)は4兆8555億円(「2022年製造業事業所調査」)
「2022年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によれば、印刷産業出荷額は4兆8555億円、事業所数は1万3536、従業者数は25万2593人。(数字で読み解く印刷産業2023その7)
「工業統計調査」に代わる「製造業事業所調査」を公表
製造業を対象とする「工業統計調査」は2020年まで毎年実施されてきました。ただし、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年(2012年、2016年、2021年)には工業統計調査は中止となり、活動調査の産業別集計(製造業)が公表されています。さらに2022年からは「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されることになりました。
経済構造実態調査は、5年ごとに実施する「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握することを目的に、2019年に創設されました。工業統計調査に代わる「製造業事業所調査」は今回が初の実施で、品目別・産業別・地域別の集計結果が7月31日に公表されました。
印刷産業の事業所数・従業者数・製造品出荷額等・付加価値額は下表のとおりです。

また、製造品出荷額等の都道府県別順位を見ると、東京都では輸送用機械器具製造業(構成比15.7%)に次いで、印刷・同関連業は2位で構成比10.3%を占めています。
品目別の産出事業所数を見ると、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」(8544 事業所)が最も多く、主な都道府県は東京、大阪、愛知の順です。品目別の出荷金額では、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」は9位(2兆6636億円)となっています。
また、同じ日に公表された「2022年経済構造実態調査」二次集計結果 産業横断調査(企業等に関する集計)によれば、印刷産業の企業等数・売上高・付加価値額は下表のとおりです。一次集計(速報値)より企業等数・売上高は少し減少しました。

「工業統計調査」と「製造業事業所調査」は厳密には連結しない
JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。ただし、『印刷白書2022』では「経済センサス-活動調査」の公表時期の関係で、従業者4人以上の事業所のデータに限られたものでした。そのため、事業所数が2019年の2万から、2020年は9千に激減したのかという問い合わせもいただきましたが、全事業所の事業所数は13,335であることが昨年12月26日に公表されています。
現在準備中の『印刷白書2023』では、「令和3年経済センサス-活動調査 製造業(産業編)」と「2022年経済構造実態調査 製造業事業所調査」を利用して、過去の「工業統計調査」と連結させていきます。
ただし、「令和3年活動調査」と「2022年製造業事業所調査」は個人経営を含まない集計結果です。また、調査対象となる母集団も工業統計調査は独自のものですが、両調査は「事業所母集団データベース」を利用しています。そのため、過去の工業統計と単純に比較ができないことに留意する必要があります。
JAGAT刊『印刷白書』では、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅し、わかりやすい図表にまとめています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)
印刷産業の企業数は2.3万、従業者数は32.7万人(「令和3年経済センサス‐活動調査」)
「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計」によれば、印刷産業の売上高は7兆7803億円、純付加価値額は1兆6845億円、企業数は2万2705、従業者数は32万6677人。(数字で読み解く印刷産業2023その6)
産業横断的に経済構造を把握
「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」が6月27日に公表されました。
2020年の全産業の売上高は1693兆3126億円、純付加価値額は336兆2595億円となっています。2021年6月1日現在の企業等の数は368万4049企業、民営事業所数は515万6063事業所、従業者数は5795万人です。なお、国、地方公共団体を含む事業所数は528万8891事業所、従業者数は6242万8千人となっています。
「経済センサス‐活動調査」は全産業・全事業所を対象とした大規模調査で、産業横断的に経済構造を把握することを目的として、5年ごとに実施されています。
3回目となる「令和3年経済センサス‐活動調査」(2021年6月1日調査)は、2022年5月31日に速報が公表され、その後順次確報が公表されています。
製造業に関する産業別集計としては、9月30日に概要版、12月26日に品目編・産業編・地域編が公表されました。
今回の産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)は、全産業に関する集計の確報です。
産業大分類別に企業等数を見ると、「卸売業、小売業」が74万1239企業(全産業の20.1%)と最も多く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」が42万6575企業(同11.6%)、「建設業」が42万6155企業(同11.6%)で、上位3産業で全産業の4割以上を占め、第三次産業で全産業の8割弱を占めています。
売上高を見ると、「卸売業、小売業」が480兆1679億円(全産業の28.4%)と最も多く、次いで「製造業」が387兆606億円(同22.9%)、「医療、福祉」が173兆3369億円(同10.2%)となっていて、上位3産業で全産業の6割、第三次産業で全産業の7割を占めています。
2020年の印刷産業売上高は7兆7803億円
印刷産業について見ると、売上高は7兆7803億円(全産業の0.5%)、純付加価値額は1兆6845億円(同0.5%)です。2021年6月1日現在の企業数は2万2705企業(同0.6%)、従業者数は 32万6677 人(同0.6%)となっています。

JAGAT刊『印刷白書』では、「経済センサス」などのデータを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)
DTPエキスパート最新受験参考書発刊
DTPエキスパート認証試験は第1期試験から30年が経過し、第60期試験が8月27日(日)に実施されます。受験申請受付はすでに開始しており、8月3日が締切ですが、試験対策参考書『DTPエキスパート受験サポートガイド(10版)』を7月1日に発刊しました。最新カリキュラムに対応した改訂版で、本試験だけでなく更新試験にも役立つ受験者必携の書です。 続きを読む
DTPエキスパート受験サポートガイド 10版
DTPエキスパート受験サポートガイド 10版
発行日 :2023年7月1日
編著 : DTPエキスパート認証委員会
定価 : 2,700円+税 ※税込価格2,970円
判型 : B5判
ページ数 : 本文168ページ
発行 : 公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)
ISBN :978-4-88983-174-0
本書は、JAGAT主催DTPエキスパート認証試験の最新カリキュラムに準拠し、最新の出題傾向を反映した例題と、その解説を中心にした受験参考書です。
オールカラーで豊富な図版を用い、出題の背景や意図、重要ポイントを理解したうえで、正解を得られるような解説をしています。
また、DTP、印刷技術、それらの周辺環境の知識、最新のデジタル印刷テクノロジーについても取り上げています。
CONTENTS
持株会社化が進む上場印刷企業
2023年3月期決算では、上場印刷企業18社のうち14社が増収、8社が増益を達成した。持続可能な社会の実現と企業価値向上に向けて、事業領域の拡大や持株会社体制への移行などが加速している。(数字で読み解く印刷産業2023その5)
3月期決算の4社に1社が最高益、印刷企業は8社が増益達成
2023年3月期決算の上場企業のうち、純利益が過去最高だったのは全体の4社に1社となりました。
日本経済新聞が5月19日までに業績を発表した上場企業を対象に集計したもので、純利益が過去最高を更新したのは526社(集計対象の25%)、2022年3月期の615社(同29%)を下回るものの、新型コロナ禍以降では2番目の高水準となりました。なお、会計基準や連結・単独決算の変更は考慮せずに単純比較したものとなっています。
2023年3月期決算の上場印刷企業18社では、14社が増収、8社が増益を達成しています。
上場印刷企業の2022年度業績も堅調
JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業を、上場印刷企業としています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で前年6月期決算から当年5月期決算までを当年度としています。
『印刷白書2021』までは34社が対象でしたが、トッパン・フォームズが凸版印刷の完全子会社化により2022年2月25日付けで上場廃止となったことから、『印刷白書2022』では33社となっています。
上場印刷企業の2022年度業績を見ると、TAKARA&COMPANY(5月期決算、7月上旬決算短信発表予定)を除く32社の売上高合計が3.9兆円(前期比6.2%増)で、増収22社、増益14社と堅調です。
社名変更で「印刷」が消える
凸版印刷は2023年10月1日付けで持株会社に移行し、社名を「TOPPANホールディングス」に変更します。全体再編に先駆け、同社のセキュア事業とトッパン・フォームズの事業を統合した「TOPPANエッジ」を4月1日に設立しました。さらに凸版印刷の主要部門を母体とする「TOPPAN」と、トッパングループ全体でのDX 事業推進を牽引する「TOPPAN デジタル」を10月1日に設立します。
祖業である「印刷」を社名から外すことに関して、同社は「今後さらなる事業ポートフォリオ変革を推進していく意思を込めて、既存の事業領域を規定する『印刷』を含めない商号としました」としています。
このニュースは印刷業界のデジタルシフトの本格化を示すものとして受け止められましたが、社名から「印刷」が消えた印刷会社は、凸版印刷だけではありません。印刷事業からスタートして、事業領域の拡大を反映して、社名変更した印刷会社は少なくありません。
上場企業だけを見ても、1970年にナカバヤシ(旧:中林製本所)、1972年に総合商研(旧:総合印刷)、1976年にカワセコンピュータサプライ(旧:川瀬紙工)、1986年にセキ(旧:関洋紙店印刷所)、1987年にトーイン(旧:東京印刷紙器)、1989年にマツモト(旧:松本写真印刷社)、1990年にサンメッセ(旧:田中印刷興業ほか)、1991年に中本パックス(旧:中本グラビヤ印刷ほか)、2000年にウイル・コーポレーション(旧:わかさ屋情報印刷)、2006年にプロネクサス(旧:亜細亜証券印刷)、2017年にNISSHA(旧:日本写真印刷)が、それぞれ現社名に変更しています。
また、持株会社化で社名が変更になったのは、2012年のウイルコホールディングス(旧:ウイルコ)、2015年の日本創発グループ(旧:東京リスマチック)、2019年のTAKARA & COMPANY(旧:宝印刷)、2021年の広済堂ホールディングス(旧:廣済堂印刷+関西廣済堂→廣済堂)、2022年10月のKYORITSU(旧:共立印刷)、2023年 4月の竹田iPホールディングス(旧:竹田印刷)の6社です。それぞれの子会社として、ウイル・コーポレーション、東京リスマチック、宝印刷、広済堂ネクスト、共立印刷、竹田印刷が情報ソリューション事業を継続しています。
『印刷白書2023』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業33社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較します。
限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)
『みんなの印刷入門』発刊4年目にして第10版に
「印刷」のことを知りたいすべての人に向けた必携の一冊として、JAGATが発行する入門書『みんなの印刷入門』は発刊以来、新入社員向けの参考書やセミナー・通信教育のテキストとして好評を博して版を重ねてきた。このたび、節目となる第10版を、内容を大幅にブラッシュアップして発行した。 続きを読む
印刷物は12年連続の輸入超過、アジアがシェア7割
貿易統計で印刷物を見ると、2022年は輸出入ともに拡大し、12年連続の輸入超過となった。輸出先は中国が不動の1位で、輸入先はシンガポールが10年連続トップである。(数字で読み解く印刷産業2023その4)
輸出は中国が不動の1位、輸入はシンガポールが10年連続1位
財務省「貿易統計」によれば、2022年の印刷物の輸出額は320億円(前年比11.9%増)で2年連続の増加、輸入額は686億円(同0.5%増)で3年ぶりの増加となりました。
アジアが最大の取引先で、2022年の輸出額は220億27百万円(構成比68.8%)、輸入額は495億50百万円(同72.2%)で、輸出入ともに約7割を占めます。北米は輸出52億70百万円(同16.5%)、輸入85億72百万円(同12.5%)、西欧が輸出27億70百万円(同8.6%)、輸入93億92百万円(同13.7%)となりました。
輸出先のトップ10は、中国、アメリカ、韓国、香港、ベトナム、台湾、タイ、メキシコ、ドイツ、シンガポールです。中国は不動の1位で、シェアは8年ぶりに30%台となりました。香港とメキシコ以外の8カ国は増加し、韓国、アメリカが大きく増加したほか、シンガポールは大幅増で5年ぶりにランクインしました。
輸入先のトップ10は、シンガポール、中国、アメリカ、韓国、ドイツ、マレーシア、フランス、イタリア、アイルランド、プエルトリコ(米)です。10年連続1位のシンガポールからの輸入額は前年より52億円減少しましたが、輸入総額の33.7%を占めています。トップ10の顔ぶれは前年と同じですが、6位以下の順位は変動がありました。
下図は1993~2022年の印刷物の輸出入額とその差引額の推移です。1993~2004年の12年間は輸入超過でしたが、2005~2010年の6年間は輸出超過となり、2011年以降の12年間は逆に輸入超過となっています。2022年の差引額は366億円まで縮小しました。

『印刷白書2022』では、印刷物の輸出入相手国上位10カ国の推移表や、アジア・西欧・北米などの地域別の構成比の推移なども、わかりやすいグラフで紹介しています。
限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)
2021年の印刷産業売上高は7兆7155億円(「2022年経済構造実態調査」一次集計)
「2022年経済構造実態調査」によれば、印刷産業は1万6883企業、売上高は7兆7155億円となった。 (数字で読み解く印刷産業2023その3)
2年ぶり3回目の「経済構造実態調査」
総務省・経済産業省は、「2022年経済構造実態調査」一次集計結果を3月31日に公表しました。国民経済計算の精度向上等に資するとともに、5年ごとの「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握するために、毎年6月1日に実施される調査です(活動調査実施年を除く)。
2019年に創設された同調査は、これまで実施されていた3つの統計調査(サービス産業動向調査の拡大調査、商業統計調査、特定サービス産業実態調査)を統合・再編しました。
さらに2022年調査から、全産業に属する一定規模以上の法人企業が対象になるとともに、これまでの「工業統計調査」は「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されています。
前年(2021年)が活動調査実施年だったために、今回が2年ぶり3回目の実施となりました。「工業統計調査」に該当する「製造業事業所調査」(品目別・産業別・地域別)のデータは2023年7月に公表予定です。
印刷産業の出荷額4.7兆円に対して、売上高は7.7兆円
2022年12月26日公表の「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(製造業)」では、2020年の「製造業」の製造品出荷額等(全事業所)は303兆5547億円、「印刷・同関連業」は4兆6630億円です。
これに対して、「2022年経済構造実態調査」一次集計(企業等に関する集計)では、「製造業」の売上高は415兆7489億円、「印刷・同関連業」は7兆7155億円となっています。

印刷産業の出荷額は4.7兆円なのに、売上高は7.7兆円、この差はどこからきているのでしょうか。
「3年活動調査 産業別集計(製造業)」の出荷額は事業所単位の集計なので、主要製品が「印刷・同関連品」なら印刷産業の出荷額になります。一方、「経済構造実態調査」の売上高は企業単位の集計なので、主業が「印刷・同関連業」なら印刷産業の売上高になるのです。
また、出荷額は工場出荷金額(積み込み料、運賃、保険料、その他費用を除いた金額)なので、その分売上高より金額は小さくなります。
『印刷白書2022』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)