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印刷ビジネスとDX、そして創注へ(JAGAT大会2022オンライン&page2023開催のお知らせ)
ようやくアフターコロナが見え始めたが、価値観は大きく変わった。それでは、デジタルとリアルの両方を組み合わせて顧客満足を得るにするには、どうすればよいのだろうか。
2022年11月30日に開催する「JAGAT大会2022オンライン」では、さまざまな見方があるDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り上げる。既に各社が取り組んできたIT化やデジタル化とDXとは、何が違うのか。多種多様な解釈ができるDXを、登壇者それぞれのテーマから論じ、議論全体を通じて自社なりの印刷会社経営の方向感をつかむためのプログラムをご用意した。そして来年2月1日〜3日に開催する「page2023」では、印刷会社の「創注」を生み出すための新たな企画を提案する。
「DX」は目的ではなく手段
少子高齢化・人口減少の局面に加えて、デジタル社会の伸長で印刷市場の縮小は加速していると言わざるを得ない。だが、業界・企業ともに事業ポートフォリオの変革やDXを声高に掲げるも、なかなか結果につながらないと感じることが多いのではないだろうか。
「JAGAT大会2022オンライン」の基調講演では、凸版印刷出身で現在はHabitat株式会社社外取締役であり、情報経営イノベーション専門職大学客員教授の亀卦川篤(ルビ:きけがわ あつし)氏にご登壇いただく。亀卦川氏は、電子チラシサービス「Shufoo!」のリテールデジタルメディア事業統括や、日本初のインターネット地図情報サービス「Mapion」の執行取締役などを歴任され、印刷会社におけるデジタルビジネスについて豊富な経験をお持ちである。基調講演のテーマ「印刷ビジネスとDX」に関しては、まさに適任の登壇者であるといえる。
「DX」という言葉だけが独り歩きし、自社のDXを言語化できていないケースが散見されるなか、そもそもDXとは何か? DXで印刷メディアの役割はどう変わるのか? 受注から創注へとどのようにつなげていくのか? DXを目的ではなく手段として捉え、自社のビジネスをトランスフォーメーションしていくことの重要性をご講演いただく。貴重なお話の中には、これからの印刷ビジネスを考えるうえでのヒントが多数ちりばめられているはずである。ぜひご期待いただきたい。
page2023のテーマは「創注」
JAGAT大会2022オンラインの開催を弾みとして、印刷・メディアビジネスの総合イベント「page2023」では、「創注」を全体テーマとして、東京・池袋のサンシャインシティで2023年2月1日から3日にかけて開催する。現在、リアル展示会の出展申し込み状況は、前回の「page2022」と比べて、社数・小間数ともに増加する見込みであり、来場者数も増えることが予想される。
page2023では、page2022で実施した「オンラインスポンサーズセミナー・製品紹介」を今回も開催する。オンラインスポンサーズセミナーは、協賛企業が主催するセミナーをpage2023の特設ウェブサイトから配信するもので、ライブ配信ではなくオンデマンド配信の形式を採用する。配信期間は、page2023リアル展示会の開催直前からJAGAT主催のオンラインカンファレンス・セミナーが実施される間、すなわち1月31日から2月10日までの12日間を予定している。
■リアル展示会のPR動画をウェブでも配信
また、page2022と同様に、自社の製品やサービスの紹介動画をオンライン配信する「オンライン製品紹介」も用意している。オンライン製品紹介は、IPアドレスの獲得だけにとどまる自社ウェブサイトでの配信とは異なり、動画を視聴した人の名刺レベルの情報を得ることができるものだ。また、参加者側でも、60分前後のセミナーに比べて5分前後の製品紹介動画であれば、視聴に際しての諸々のハードルは低くなることが想定される。実際、page2022の視聴者の大半が、セミナー動画と併せてこの製品紹介動画を視聴していた。
動画の提供に関しては、そこまで手の込んだコンテンツをご用意いただく必要はない。例えばテストマーケティングの一環として、1分程度の短尺の動画をご用意いただいても構わない。また、リアル展示会にご出展いただく企業であれば、展示会場で放映する動画コンテンツを配信することで、リアル展示会には来場できなかった人のリードも得ることができる。
印刷会社もpage2023に出展して、自社のDXのきっかけに
印刷会社の皆様も、page2023には来場だけでなく、こうしたオンライン製品紹介を含めた「出展」という形のご参加をぜひご検討いただきたい。pageイベントでは、印刷会社の出展ゾーンである「印刷パートナーゾーン」を設けており、これまでこの印刷パートナーゾーンにご出展いただいた印刷会社の評価は高く、リピート出展の割合は高い傾向にある。
出展においては、必ずしも広いスペースや多くのスタッフは必要ない。キャッチコピーや装飾の演出などにより来場者の多くを占める印刷会社関係者の興味を引き付け、自社ブースに来場者が自然と入ってくるような設計ができれば、十分に集客は可能である。一方、来場者は1ブースに(強制的に)長時間滞在せざるを得ない状況は望んでいない。展示会の出展をリード獲得の場と割り切り、出展ブース内での説明を最小限に抑えることをお勧めしたい。また、先に述べたオンラインでの展開と組み合わせて獲得したリードを、デジタルツールを活用して、商談や案件にできるだけ多くつなげていっていただきたい。
デジタルな道具を入れてもDXにはならないし、ITやデジタルマーケティングの知識だけでもDXは達成できない。しかし、身近にできるデジタル施策として、展示会への出展企画からその後のフォローまでを若い人材に任せてみてはいかがだろうか。それが自社のビジネストランスフォーメーションにつながれば幸いだ。
JAGAT大会2022オンライン
開催日時:2022年11月30日(水)14:00~17:10
※Zoomによるオンライン形式
定員:300名(先着順)
参加費:
日本印刷技術協会会員 無料(無料枠は1社3名まで)
印刷総合研究会メンバー 無料(無料枠は1社3名まで)
一般 1名につき15,400円(税込)
お申し込みはこちらからどうぞ。
(CS部 堀 雄亮)
【マスター郡司のキーワード解説2022】メタバース(その弐)
ヒューマンエラー対応、ヒヤリハットに目を向ける
〝0〟にできないヒューマンエラーと事故回避
人的要因、ヒューマンエラーによるトラブルは、印刷会社においても関心度の高い課題だ。今年の重大事故の中で、静岡県で起きた幼稚園での送迎バスの中に置き去りにされた3歳の子どもが死亡した事件は、うっかりミスでは済まされない事案だ。厚生労働省の「2020年教育・保育施設等における事故報告集計の公表」の資料では、認定こども園・幼稚園・保育所等における事故報告数を1586件と発表している。前年の報告数と比べ287件増加しており、そのうちの1281件が骨折の事故であることも明らになっている。原因と大半がヒューマンエラーとして捉えられ、そのための防止策が重要視されている。
ただし、ヒューマンエラーはゼロにはできないことが前提だ。できるだけミスを起こさない対策を講じることを考えることだ。ミスに繋がる要因をできる限り潰していくことだとされている。要因となる「ヒヤリハット」の事案を記録して対応していくことが効果的とされている。ヒヤリハットとは、一歩間違えれば重大な事故に繋がるかもしれない「ヒヤリ」としたり、ハッとする事柄である。ヒューマンエラーを防ぐには、事故に注目するのではなく、事故になりそうなことに目を向けることが肝心だ。
ハインリッヒの法則にみる対応策
事故を未然に防ぐにはヒヤリハットの段階で対処することが有効される。「ハインリッヒの法則」がヒントになる。1件の重大事故の背景には、軽微な事故が29件、さらにその背後には300件のヒヤリハットが潜んでいるという法則だ。「1:29:300の法則」とも呼ばれる。「当社の事故はゼロ!」などと事故の件数に一喜一憂するのではなく、1件の事故に対する300のヒヤリハットの数に目を向けることが肝心である。例えば、事故がゼロでもヒヤリハット数が100件あれば、ヒューマンエラーに繋がる100の課題が存在することになる。印刷製作工程での文字の誤植や訂正ミスでは、DTPから次工程や印刷前に見つかったとしても些細なことでも記録して対応することになる。
ヒューマンエラーへの対応は、事故に繋がりそうなヒヤリハットを如何に現場から吸い上げ、記録し対応できるかが鍵を握っている。それには、職場の雰囲気としくみづくりが必要だ。例えば、事故に対しては犯人を捜し、責任を追及するだけの対応では根本的な解決に繋がらない。組織を上げて、原因を把握し、解決策を講じることが求められる。ヒューマンエラーが起きやすい職場の雰囲気には、共通点があるともいわれる。ひとつには、管理者のヒューマンエラーへの認識が低いこともあるが、他にも、マニュアルが整備されていないことや業務上のルールが決められていないような場合もある。一方、日常の業務に追われ余裕がないよう職場では、ダブルチェックする余裕もなく、疲労で判断力が鈍り、トラブルに繋がることもあれば、部門内や部門間のコミュニケーションが不足し、伝達ミスなどによることも見受けられる。これらの要因は、会社や工場の改善活動とも直結した課題でもある。仕事の中に潜むミスを気づかせる見える化改善に繋げることにもなってくる。ヒューマンエラーは改善活動とセットで考えることで相乗効果も期待できる。
CS部 古谷芸文
JAGATオンラインセミナー
現場改善の基本と実務
プリプレス・印刷業務の再点検
印刷、後加工の仕事に役立つ 製本加工の基礎知識
page2023出展を自社のDX施策のきっかけに
コロナ禍の2年半を経て、リアル展示会に対する風向きは明らかに変わってきた。
展示会はかつての姿に戻っている
「page2023」(2023年2月1日(水)~3日(金)@サンシャインシティ)リアル展示会の出展申込み状況は、前回page2022に比べて、社数・小間数ともに増加の見込である。新規の出展企業もさることながら、page2021、page2022では出展を見送った、あるいは小間数を減らしての出展であった企業が、コロナ禍前のpage2020の出展規模に戻してお申し込みいただくケースが増えている。リアル展示会に対する明らかに前向きな雰囲気を感じる。 9月以降に東京ビッグサイトなどで実施されたいくつかのリアル展示会に参加してきたが、どの展示会も盛況で、活気に満ち溢れており、かつての景色を取り戻しつつある。来月開催のIGAS2022もぜひ盛り上がってほしい。そしてその勢いがpage2023に繋がってほしいと切に願う。
展示会をリード獲得の場と割り切る
展示会へ出展する企業としては、来場者が増えれば、それだけビジネスチャンスは広がる。しかし昨今、初めてブースを訪れた来場者が、その企業の製品を購入する事はないだろう。出展企業としては、あくまで展示会出展をリード(見込顧客)獲得の場と割り切り、獲得したリードを出来るだけ多く案件に繋げていくことを重視すべきである。 一方、来場者は1つのブースに(強制的に)長時間滞在せざるを得ない状況は望んでいない。したがって多くのリードを獲得しようと、自社ブース全体をセミナー会場のようにしてしまうと、あまり効果が得られない上、デモを行っていない時間帯は来場者に素通りされてしまい、安定した集客が出来ない傾向にある。来場者を惹き付けるキャッチコピーや装飾などの演出で、自社ブースに来場者が自然と入ってくるような形が理想である。
顧客情報を属人化させない工夫を
リードを案件に繋げるためにMA(マーケティング・オートメーション)ツールの導入している企業もあるだろう。MAを導入することで、自社のリードの見極めや育成活動がデジタル化され、営業担当者が営業活動を効率的に行うことができる。しかしその前に、まずリードを集める集客活動が必要である。中小企業においては、営業担当者がこの集客活動から商談、受注後のフォローまでを一人で担当しているケースが多い。その結果、担当者が疲弊し、顧客リストを放置して失注となるケースが散見される。中小企業がMAツールを導入してもうまく使いこなすことができない要因は、ここにある。したがってまずは、展示会で獲得したリードを全社で共有することからスタートしてみてはいかがだろうか。
筆者は前職においてBtoB営業の経験があるが、「自らの足で稼いだ名刺を社内で一括管理する」ことには正直抵抗がある(というか、当時であれば考えられない)。しかしその結果、有力見込みとなる会社に別々の営業担当者がそれぞれ営業をかけるという、非効率な状況が数多くあった。時代は変わり、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)などの概念も出てきている。マーケティングからセールスまで一気通貫、かつ全社一丸で実施することが求められてきており、そのためにも名刺の一括管理はもはや必須だといえよう。
■DXは、まずは身近な施策のデジタル化から
DX(デジタル・トランスフォーメーション)という概念が生まれて久しいが、多くの中小企業が「自社で実施している『DX施策』は何か?」と問われた際に、書類の電子データ保管や工場内へのロボット導入、または訪問営業からオンライン営業への切り替えなどを挙げている。しかし、これらは「デジタイゼーション(アナログ情報のデジタル化)」または「デジタライゼーション(プロセス全体のデジタル化)」であり、DXの本質である「ビジネスモデルの変革」ではない。とはいえ、まずは小さなことからデジタル化施策を行うことが重要であり、労働生産性を高めていくことに注力すべきである。展示会出展が身近なDX施策の第一歩となれば幸いだ。
(CS部 堀 雄亮)
11/9 『印刷白書2022』発刊記念セミナー
【マスター郡司のキーワード解説2022】メタバース(その壱)
新卒採用活動の次はフォローアップが重要!
会社の痛手となる新入社員の離職
人事採用と入社後人材育成は、印刷会社の成長においても重要な取り組みだ。中小企業の新卒採用担当者の中には、「会社を知名度で決める」「採用競争力」など大企業に比較しての悩みを抱えてことを聞くことがある。リクルートワークス研究所によれば、過去10年5,000人以上の大手企業の求人倍率は1倍以下と採用がしやすい状況があるが、一方、300人未満の有効求人倍率は、常に3倍以上を推移している。コロナ禍により超売り手市場であった2021年卒の3.40倍よりも上がり、22年卒採用においても「5.28倍」と依然として採用難であることが分かる。
一方、苦労して採用に結びつけても、昨年令和3年10月の厚生労働省のプレスリリースによれば、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%ということである。新卒者本人だけでなく企業側にとっても大きな痛手だ。更に、毎年1割近くが1年以内で離職している。新卒者が1年以内に離職することは珍しくない状況だ。
理想と現実とのギャップを埋めるフォローアップ
離職の理由のひとつに「理想と現実とのギャップ」が挙げられるがことが多い。入社3カ月~半年が過ぎたあたりから、現実との壁が生じる。そのギャップを埋めることが重要だ。現実的な仕事に対するやりがいや働き方に起因する事柄を共に解決していくことが必要になる。採用活動の次の課題はフォローアップである。教育をはじめとする社員が成長するための計画的な施策と環境は不可欠だ。フォローアップは、新入社員研修からある程度時間が経ってから繰り返し行うことを意味する。「会社での帰属意識を高め、生産性を向上させる」「研修効果の定着や離職率を低下させる」などの狙いがある。手段としては、フォローアップ教育研修などもあるが目的が重要だ。仕事に直面した新入社員の不安や疑問を解決することが目的だ。単に専門知識を詰め込むことでないことを認識し、寄り添うことが肝心なところだ。一般的に用いられる方法では、「人事面談で意見を聴く」「上司によるフォローアップ」、年齢や社歴の近い先輩社員が助言する制度「メンターをつける」「フォローアップ研修」などがあるが、会社全体として取り組むことが必要になる。
(CS部 古谷芸文)
2022年度秋期
【オンライン】フォローアップ総合研修
「まるまる学ぶサービス」
【オンライン】印刷技術の基礎知識
【オンライン】印刷営業の基本
10/18 ポストプレスのデジタル印刷対応の動向
光村グラフィック・ギャラリー企画展開催のご案内
美術家、曽谷朝絵の絵画とインスタレーションによる展覧会
曽谷朝絵展 “Topia”
Asae Soya Exhibition “Topia”
美術家、曽谷朝絵の展覧会を2022年10月7日(金)~11月5日(土)の期間、
光村グラフィック・ギャラリー(以下、MGG)にて開催いたします。
千変万化の色と光の空間が、今秋MGGに出現
包み込まれるような光と色彩とダイナミックな造形感覚を併せ持つ美術家、曽谷朝絵。その活動は平面作品のみならず、色彩と空間が共鳴し合うインスタレーションや映像作品など幅広いジャンルに及んでいます。
会場では、日常の中に非日常を見出すような、洗面器や海などをモチーフとした長さ4mの大作を含む油彩画やパステル画、コロナ禍で都市に生い茂った雑草を描いた水彩画などの絵画群約30点に加え、曽谷のアイディアの源となっている色鉛筆によるドローイング約70点も展示します。
またギャラリーを取り囲む長さ約35mのガラス壁を使った、フィルムによるインスタレーションとその夜間ライトアップも行うなど、曽谷の多面的な作品世界を紹介します。
雑草の森や洗面器の中に見る海など、小さなものと大きなものをイマジネーションの力で繋ぐような作品群を通して、日常の輝きや人間の創造する力を感じ、光と色彩を浴びるような体験をしていただければと思います。
-曽谷朝絵展 “Topia”に寄せて-
ここ数年の災厄のなかで、あと少し、あと少しでこのトンネルを抜けると思いながら皆が過ごしてきたと思うけれど、8月になった今も世界のざわざわは鳴り止まず、むしろ巨大になってきている。
だけど、実はそこかしこで日常は光を放っている。例えばコロナ禍で開発が止まった空き地に出現した雑草の森。洗面器の窪みの中の光と影の劇場。それらは別に私達のためにあるのではなく、私達がいなくなっても(というより植物なんかはむしろ人間がいなくなったほうが)生き生きと、平然とそこにあり続けるだろう。
でも一方で、その輝きは私達の心が作り出したものでもあるし、表現されないと永遠に忘れ去られてしまうものでもある。辺りかまわず輝いている彼らは忘れられたって別に気にしないだろうけど、私は作品に捕えたいと思う。
ユートピアにもディストピアにもなり得るこの場所を、少しでも良い場所にするために。
—————————————— 曽谷 朝絵
本展の見どころ |
〈絵画〉
-日常の中に非日常を見出すような油彩やパステル画-
ギャラリーに入ると、まず2.4 x 4mの巨大な油彩作品《fuwari》が目に飛び込んできます。本作は曽谷のこれまで最大の作品で「コロナ禍での散歩中に出会った横浜の海」と「洗面器の中の水たまりの中に見出した海」が合わさって出来上がったものと言います。光のかたまりが波打ち、解体しながら浮かんでいるようなその作品は、最大のものを象徴する「海」と最小の日常を象徴する「洗面器」を繋ぐものとして、観るものを包み込むような光を放っています。その横には夜から朝までの様々な光の状態で描かれた洗面器をモチーフとしたパステル画《Washbowl》シリーズがまるで《fuwari》の衛星のように展示されます。他、窓から投影された光をモチーフとした油彩画なども展示され、宇宙や海という巨大なものと日常の物事が光と色彩でつながるような空間が出現します。
-コロナ禍で都市に生い茂るようになった雑草を描いたシリーズ
そこを抜けると、植物を色鮮やかな水彩で描いた作品群が展示されています。これらはすべて、コロナ禍で出現した都市の空き地に生い茂った雑草を描いたものです。
かねてより植物の構造や生命力の強さに「人間の創造力」との共通点を感じて描いてきた曽谷は、その雑草たちに「ひとたび人間の力が弱まれば、すぐにでも都市を征服してしまいそうな脅威的なパワー」を改めて感じたと言います。
つまりこれらの作品は、どんな状況でも消えない人間の創造力を、都市の伱を突いて生い茂る植物に準えて描いたものでもあります。
まるでスターの全身写真のように、人間の等身大ほどの画面に描かれた作品《Blow》《Shower》や、まるで宇宙を漂う色彩の森を覗き込んだような円形の作品《Spring Burst》、そして新たな展開である風が吹き抜ける森を描いた作品などが展示され、光と色彩に満ちた植物の楽園のような空間が出現します。
-曽谷のアイディアの源となっている、
色鉛筆によるドローイング作品約70枚
今回、曽谷のアイディアの源となっている色鉛筆によるドローイング作品約70枚も展示し、その創作のプロセスを楽しんでいただけます。
〈インスタレーション〉
-ギャラリーの外壁を囲むガラスウィンドウにカッティングシート作品-
長さ約35メートルのガラスウィンドウを彩るのは、曽谷の持つ色と音の共感覚をモチーフにした作品です。光により色が変わる虹色のフィルムで作った水の波紋の形のオブジェクトを貼って、光と水の光景をつくり出します。昼は太陽光の変化で刻々と表情が変わり、夜は照明演出でギャラリーの外にまで光の形が溢れ出します。昼と夜とで表情が変わる、光の反射や透過が映し出す色彩豊かな波紋の中で遊ぶような体験をしていただけます。
アクセス
光村グラフィック・ギャラリー(MGG)
東京都品川区大崎1-15-9 光村ビル1F
企画・運営:光村印刷株式会社http://www.mitsumura.co.jp/