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新型コロナ感染拡大を背景にオンラインセミナーに必要な動機づけ

新型コロナウィルスの感染拡大を背景に印刷業界にも多大な影響を与え、ビジネス環境も大きく変化している。例えば、営業活動は、在宅勤務や顧客との直接的な接点が難しい中、Web等を利用した非接触型のコミュニケーション活動への対応に迫られている。社員教育の在り方も同様だ。東京商工会議所2020年4月8日発表した会員企業に対するアンケート調査によれば、「新型コロナウィルス感染症への対応について」は、テレワークを実施している企業は全体で26%。そのうち従業員数300人以上では57.1%と実施率が高い反面、従業員数50人未満では実施率は14.4%と全体平均を大きく下回る結果となっている。緊急に対応すべき課題のひとつだ。政府(国)や自治体では、テレワークを新規で導入する中小企業に対して、助成金制度や補助金制度によるサポートをおこなっている。積極的に活用すべきだ。

主な3つ課題は、

①社内体制の整備(仕事の管理、労務管理・評価など)

②パソコンやスマホ等の機器やネットワーク環境(LAN等)の設備

③セキュリティ上の不安

一方、新入社員を受け入れた印刷会社の研修においては、新しい教育手段へのニーズが高まっている。2020年度JAGAT新入社員研修(セミナー)は、4月開催分はすべて6月開催へシフトし、遠隔での受講システムの運用も試みている。通信教育での受講者が増える一方でセミナーの遠隔受講についての問い合わせもあったからだ。

<オンラインセミナーでも欠かせない動機づけ>

セミナーに求められる重要な要素に気づきや動機づけが上げれる。心理学者エドワード・L・デシのモチベーション理論で「内発的動機づけ」の研究では、動機付けには、内発的動機づけと外発的動機づけがあるという。人材育成においては、内発的な動機付けが重要な鍵を握る。

<内発的動機づけとは>

怒られないためでもない、その活動がしたいからするという動機。例えば、一銭の得にもならない趣味の活動も含まれる。

<外発的動機づけとは>

活動それ自体を楽しむのではなく、何かのために活動する動機。組織のためや上司の顔色をうかがうなど。

内発的動機づけは、ご褒美を得るためのものでもなく、罰を避けるためのものでもない。自主性が重要で、有能感や関係性が大切な要素になる。セミナーの役割は、内発的動機づけのために心を掴むことが肝心だ。知識だけなら書籍や通信教育等だけでも十分だからだ。講師には、受講者に問いかけ、引き出し、腹落ちさせる能力が求められ、 感情にも訴えかけることでセミナーの魅力となる。オンラインセミナーでも欠かせない要素だ。ライブ感を大切に、感情に訴え、動機づけすることで学びの習慣をつくることがセミナー受講の大きな価値になるからだ。

(CS部 古谷芸文)

2020年度 JAGAT新入社員研修

アフターコロナのビジネスの変化に備えよう

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴って発出された政府の緊急事態宣言も全面解除された。緊急事態宣言によって経済活動は大きな打撃を受けたが、宣言が解除されたといはいえ、コロナウイルス感染が終息したわけではなく、通常の経済活動ができるようになるにはまだ時間がかかりそうだ。

感染対策の一つとして、新しい生活様式の定着が求められており、今後の生活で取り入れてほしいものとして、厚生労働省から実践例が公表されている。そのなかで、働き方の新しいスタイルとして、テレワークやローテーション勤務、時差勤務でゆったりと、オフィスはひろびろと、会議はオンライン、名刺交換はオンライン、対面での打ち合わせは換気とマスク、ということが挙げられている。

テレワークについては、働き方改革の取り組みの一つとして取り上げられることはあったが、このコロナ禍でにわかに注目度が上がった。JAGAT info6月号では印刷会社のリモートについて特集している。

印刷会社がテレワークに取り組む場合には、それに向く職種と向かない、そもそもできない職種があることは自明のことだろう。営業がノートパソコンを持ち出すことはできても、印刷オペレーターが印刷機を持ち出すことは不可能だし、リモートでオペレートできたとしても、実際の印刷物の仕上がりをモニターで確認することなど現実的ではない。

従って、印刷会社のリモートワークは営業や企画制作、一部のDTP制作部門が現実的なところだろう。JAGATが行ったアンケート結果でも、そういう傾向が出ている。また、リモートワークに取り組んだ部門でも通常業務がこなせているところと、現実にはあまりうまく機能せずにかたちだけになっているところがある。これは新型コロナ感染が問題になってからの準備では、十分な検討時間や環境整備が難しかったということがあるだろう。

これから求められるのは、一時的な取り組みで終わりにすることなく、本格的にリモートワークや新しい働き方を真剣に検討し、対応していくことだろう。もともと働き方改革が推進され、いかにワークライフバランスを実現していくかという課題があったわけで、これをきっかにして環境を整備していくことが必要だ。

大手企業の一部にはリモートワークへ本格的に取り組み、常態化していこうという動きが出ている。この傾向が広がると印刷業のお客様の働き方が変わるわけで、企画を提案したり、商談したりしようとオフィスを訪問しても、担当者がリモートワークで不在ということも出てくるかもしれない。さらに社会の仕組みも変化するわけで、そうなればマーケティング施策の戦略にも変化が出てくるだろう。

こういった取り組みを行うときに課題になるのが、JAGATが行ったアンケートの回答にも散見されたが、在宅勤務する社員と出社する社員で不公平にならないか、社員間の不平不満への対応ということと、社員間のコミュケーションをどうするかということだ。

後者に関してはうまくリモートワークツールを活用できれば、それほど問題にならないだろう。前者はある意味難しい問題ではあるが、社員評価の方法や旧来の「仕事は共同空間としてのオフィスで行うもの」というある種の仕事観の転換を促していくことしかないだろう。

こういった変化や状況に応じた新たな営業戦略や組織のあり方を構築していく必要があるわけで、それに対応できる人材活用や教育がますます重要になる。コロナ禍で経営的に大変な状況ではあるが、この苦難を乗り切って次の成長につなげていきたい。

JAGATinfo6月号(6月15日発行予定)では全国印刷会社82社から回答を得たリモートワークへの取り組みについてのアンケート結果と考察を特集している。印刷会社に緊急調査した5月号「コロナショックが与える印刷業界への影響と対応」とともに有料となるが会員以外にも特別に頒布するので、ぜひお読みいただきたい。

JAGAT info の目次はこちら

※JAGAT info 5月号の緊急一般販売についてはこちら

ハイブリッド方式(過去のセミナー)

0.参加人数

■参加人数
■2020/6/23 『クロスメディアエキスパート論述対策講座』
JAGAT会員またはDTPエキスパート有資格者のかたは、「優待」にてお申込みください。
・一般(14,300円) 
・優待(9,900円) 

 

■受講料お振込み予定日

1.会社の情報

■社名(例:公益社団法人日本印刷技術協会) ※必須

■シャメイ(例:ニホンインサツギジュツキョウカイ)

郵便番号(例:166-8539) ※必須

■住所1(例:東京都杉並区和田1-29-11) ※必須

■住所2(例:印刷技術協会ビル3F)

2.申込みする方の情報

申込む方と参加される方が異なる場合は、請求書をお送りする方の情報をご登録ください。

■部署名(例:総務部)

■役職名(例:課長)

■お名前(例:印刷 太郎) ※必須

申込者は参加しない

■メールアドレス(例:taro_insatsu@jagat.or.jp) ※必須

このメールアドレスに登録完了メールが送られます。

■TEL (例:03-3384-3115) ※必須

■FAX(例:03-3384-3168)

FAX受講証をご希望の場合は、この番号に受講証が送られます。

2.参加者情報

【参加者1】

■部署名(例:企画営業部)

■役職名(例:主任)

■お名前(例:印刷 花子)

■メールアドレス(例:hana_insatsu@jagat.or.jp) 

■受講形態 
会場受講オンライン受講

【参加者2】

■部署名(例:企画営業部)

■役職名(例:主任)

■お名前(例:印刷 次郎)

■メールアドレス(例:jiro_insatsu@jagat.or.jp)

■受講形態 
会場受講オンライン受講

【参加者3】

■部署名(例:企画営業部)

■役職名(例:主任)

■お名前(例:印刷 次郎)

■メールアドレス(例:jiro_insatsu@jagat.or.jp)

■受講形態 
会場受講オンライン受講

■その他備考

3.受講証の受け取り

受講証について、ご希望の受け取り方法をお選びください。
複数名で有料セミナー申込み:「FAXで受け取る」を選択すると、参加者ごとに参加証を受け取れます。
無料参加イベント申込み:「メールで受け取る(受領メールを印刷する)」を選択お願いします。
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4.JAGATからのご案内について

よろしければJAGATからセミナー開催案内や関連のご案内を送付させていただきます。
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印刷工程を内製化。「デジタル印刷愛」でブックオブワンを実現したブランドオーナー

JAGAT info 4月号ではキヤノンメディカルシステムズ株式会社(以降、キヤノンメディカル)が取り組む、ブランドオーナーによる印刷・製本工程内製化の現状について報告した。
今回はその一部を抜粋して紹介する。

自社製品マニュアル内製化プロジェクトが始動
 キヤノンメディカルは、東芝グループに属していた東芝メディカルシステムズが2016年にキヤノンの子会社になった企業である。医療機器事業としては100年以上の歴史を持ち、世界の医療機器をリードしている企業である。
 各装置には一つの製品につき10〜15種類ほどの冊子が必要になることもある。印刷物は量、種類ともに膨大な数に上っていた。そんな中、印刷物の大部分を内製化するプロジェクトが立ち上がる。ブランドオーナー自らが印刷を内製化した場合のメリットや課題、そして今後の印刷会社の役割について、ドキュメンテーション部 印刷・製本センター主任の兵藤伊織氏にお話を伺った。

 

省人化された設備でコンパクトに運用
 印刷・製本センターでは、本文印刷用にはインクジェットロールプリンターでCanon Production Printing(旧Océ。以降、CPP)のColorStream 6700 Chroma、表紙用には電子写真カットシートタイプのimagePRESS C10000VPを使用している。製本ラインでは、ホリゾンとフンケラーの製本機がSmart Binding Systemでつながっている。
 マニュアルはブックオブワンになっており、厚さの違う印刷物が次々に吐き出されていた。トラブルさえなければ最小2名で運用可能である。必要なものを適時に印刷し、各部署に配送。印刷機の稼働時間は一日平均4時間ほどで、毎日20万ページ、多いときには50万ページ以上を印刷している。

 

徹底した標準化でトラブル回避
 では、このセンターはどのように運営されているのだろうか。印刷が分かっている人は兵藤氏だけだった。印刷業務をこなしていくために、トラブルが起きにくい環境を整備している。
 例えば使用している紙は三菱製紙のインクジェット専用紙一種類だけである。サイズはA4とA5に絞っている。徹底的に標準化して同じ仕事が続くようにデザインされている。
 合理化はプリプレスの領域でも行われている。現在は作成されたマスターデータをWorkspace ProというソフトのAsuraという機能に投げ込むと、閲覧用PDFと印刷用PDFが吐き出される仕組みになっている。Asuraで19時から翌日の3時までの間に2000以上のデータを作成し、朝から印刷ができる準備をしておくという流れになっている。
 ポストプレスではジクス社の自動検査装置が完備されている。不良品はリジェクトされ、再印刷の指示が出される。再印刷や、至急の印刷物に関してはキヤノンのimagePRESS C850、C800といった機種で対応している。この部分は近日中にCPPのVarioPrint i300を増設し、より生産性を高めていく。
 一連のシステムによって、リードタイムは 2日短縮、生産コストは従来比約30%削減。生産工数は従来の半分になった。印刷内製化のプロジェクトは無事成功を収めたのである。

 

デジタル印刷でビジネスモデルを構築する
 兵藤氏は東芝時代から印刷と関わる部門で働いており、デジタル印刷の仕事を始めてから16年目のベテランである。JAGATのDTPエキスパートも10年ほど前に取得しており、理解できない設問があれば、JAGATの講師に問い合わせをして一つ一つ学んでいった。 デジタル印刷機は動かすだけならスキルレスで稼働できるが、何かあったときには知識の土台が必要である。今後は職場全体でレベルアップし、日本のデジタル印刷といえばここ、という場所に育てていきたいとのだと兵藤氏は語った。
 デジタル印刷の場合、上流でデータを奇麗にまとめることが重要である。この点ではブランド自身が内製化する方がやりやすいのは事実である。しかし、Asuraのような入稿データを自動で整形するシステムを使えば、ある程度はカバーできる。
 紙やサイズを統一することは、印刷会社の側から提案するのは難しい。しかし、コストダウンや納期短縮と合わせて提案すれば、ブランド側にとってもメリットのある話である。
 デジタル印刷の大きな魅力はビジネスモデルをつくれる点にある。小ロット化やブックオブワンで部数自体は減少し、売上高は減るかもしれない。しかし、人件費の削減などで結果的に利益が増えるような形に変えていくことができる。ビジネスモデルを組み替えて、売り上げが減っても利益が出るような構造に変えていくことは、印刷会社が成長性を担保していく上で有効な方法ではないだろうか。その具体的な方法として、キヤノンメディカルの取組は注目すべき事例であると言えるだろう。

(「JAGAT info」2020年4月号より抜粋)

(研究調査部 松永 寛和)

新型コロナウイルス流行終息後のビジネスを見据えて

新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るっており、世界経済、日本経済に多大な影響を及ぼしている。4月7日、7都府県に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されたことで、小売り、サービス業の営業自粛に加え、全国的に有名なお祭り等を含め、各種イベントや行事の中止発表が相次いでいる。さらに4月16日には緊急事態宣言が全国に拡大され、状況は深刻化している。

このような事態で各種商品やイベントなどのプロモーションや関連グッズなどの発注が見直され、商業印刷の分野では受注減少に直結する。感染流行の早期の終息が望まれるが、現状では先行きが全く不透明であるということで、印刷市場への影響は計り知れない。

現状では営業を行うにしても、得意先の事情もあり、印刷会社独自でやれる努力は限られる。したがって、まずは経営維持のための運転資金確保と従業員の安全対策が優先されるだろう。とにかく、この厳しい状況をなんとか乗り切って感染流行が終息したあかつきには、いち早く通常の経済活動に戻れるような準備が望まれる。

一方で、BCPの観点から新たな事業のあり方、経営のあり方を考えることも必要になるであろう。働き方改革でテレワーク等が注目されていたが、現実にはほとんどの企業で真剣に取り組まれていなかったり、そもそも考慮されていなかったりしたことが明らかになった。

非常事態の時といえるが、この時期を利用して印刷会社は自社の業務状況を洗い出し、どの業務でテレワークが可能で、どの業務が対応できないのか、テレワークを導入した場合に予想される課題等を検証し、社内でテレワークのインフラ整備やルール作りをすることが求められる。また、顧客対応や営業のあり方も見直すことが必要になる。今後は新型コロナ流行以前のままの経営を踏襲することはビジネスリスクが高くなるのは明らかだろう。

JAGAT info4月号では、急遽、コロナショックが印刷経営に与える影響と対応について、研究調査部部長の藤井建人が考察している。
さらに売り上げへ影響、自社の対応策など、「印刷会社へのコロナショックの影響と対応に関するアンケート」を行った。このアンケート結果など、印刷業におけるコロナ対策関連の記事を5月号に掲載する予定である。

JAGAT info 4月号の目次はこちら

※JAGAT info 5月号の緊急一般販売についてはこちら

過度に恐れず、やるべきことをやる

新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、イベントの自粛要請は継続されているが、JAGATのセミナーにおいては、感染予防の対策を講じた上で、受講者及び講師からの了解があれば、実施をしている。


page2020は感染防止対策を施していた

弊会主催イベントpage2020が行われた2月5日(水)~7日(金)の時点では、こうした自粛要請は行われてはいなかった。しかし、日本国内での感染が発見されており、また海外からの渡航者の入国制限も行われていない状況であったため、page2020の実施に際しては、展示ホールの各フロアの入り口にマスクと手指消毒液を設置する対応策を施した。その結果、出展企業を対象にしたアンケートでは、こうした対策に対し、一定の評価を得ることが出来た。


4月の新入社員養成講座も開催予定

3月下旬になり、JAGATセミナーの受講キャンセルの依頼は後を絶たない。しかしJAGATでは、page2020以降、一部セミナーを除き、pageイベントと同様の対策を施し、実施をしている。そして4月2日からの新入社員養成講座は、通信教育コースへの代替プランを用意しつつ、講座そのものの中止あるいは延期の予定はない(←6月以降に延期となりました)。 「自粛要請」があるからといって、新入社員に対しての貴重な教育の機会を奪ってよいのか、という思いがあるからだ。


大事な事は正しく恐れること

もちろん人命が最優先である。しかし新型コロナウイルスの収束時期が見えない中、現時点で講座の延期時期を確定することは難しい。ましてオリンピックのように1年というわけにはいかないであろう。受講申し込み企業の中には「何とか実施してほしい」という声もある。会場の換気を行い、参加者間の座席の距離を保ち、ディスカッションなどのも実施しないため、「3密(密接・密閉、密着)」の要件は回避しており、開催に支障はない。(JAGATにおける新型コロナウィルス感染症に関する対応策はこちらです。)

余談だが、先日、小学校の卒業式に参列した。参列者は制限され、いくつかのプログラムは削除される1時間弱の短い式だったが、子供たちが直前まで装着していたマスクを外し、校長先生から卒業証書を受け取る姿を見ることが出来た。過度に恐れることなく、リスクを背負い、最重要目的を見誤らず、適切な処置を施し、冷静に対応する姿勢に深い感銘を受けた。

(cs部 堀雄亮)

働き方改革と生産性向上における印刷工場の課題

働き方改革という言葉が定着してきた昨今だが、印刷工場での働き方改革への対応には頭を痛めている経営者やマネージャーも多いようだ。2019年4月から『働き方改革関連法案』が実施され、企業は対応することが義務付けられている。その関連法案で注視しなければならない規定が、労働基準法とパート有限雇用法になる。

労働基準法とパート有限雇用法

労働基準法の改定では、

  • 5日間以上の年次有給休暇の取得義務化
  • 時間外労働の上限規制導入
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の猶予措置、(50%→25%)の廃止

パート有期雇用法(パート労働法)では、

  • 均等待遇について、個々の待遇ごとに不合理性を判断することを 明確化
  • 有期契約労働者に係る均等待遇規定の創設
  • 待遇差の理由等に関する説明の義務化

時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金

労働基準法改定では、5日以上の年次休暇取得義務については、昨年2019年4月より施行された。週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の上限を原則として「月45時間」かつ「年360 時間」とする規定については、繁忙期でも単月100時間未満、複数月(2~6か月)平均80時間(休日労働含む)に抑えという上限が加わった。法案の発表当時の2017年3月の日経ビズネスオンラインの記事よれば、経営者側と従業者側では受け方が違うようだ。従業者側では、「100時間迫る時間外労働を許すのか」や「過労死に繋がる」という時間外労働を促進するような見受け方もあったようだ。page2020セミナー「印刷工場の生産性向上実践 ~多能工化編~」講師で中小企業診断士の寶積氏(株式会社GIMS代表取締役)によれば、上限が無かったものに上限が付いたことが大きいという。経営者にとっては難しい対応が迫られ、業績への影響も心配される。一方、社会保険労務士側では、やらない会社は淘汰されるという見方もある。政策が掲げる指標は労働生産性だ。単に仕事を増やして従業員の賃上げを目指すものではない。生産効率、付加価値率を高めることで少ない従業員で大きな成果を上げる企業体質を目指すものだ。旨くいけば中小企業には追い風のようにも思える。しかし、取り組む課題は簡単ではない。

経営資源に限りがある中小の印刷業においては、特に、業績アップのための施策と働き方改革は同じ土俵で進めるべきだ。印刷工場では、生産効率を高めるための改善活動やマネジメントを促進し、生産性を高くする体質改善する仕組みづくりが重要になる。小手先の対処療法では、課題は解決されない。特に印刷業の多くは、受注型で多品種少量の傾向にある中、計画的な生産管理は難しい。全社を上げて改善活動を推進し、具体的に見える化や多能工化へ取り組むことが益々重要になってくる。活動を推進する上で欠かせないのがリーダーの存在だ。印刷工場でのマネージャー育成は益々急務なってくる。

(CS部 古谷芸文)

第6期 工場マネージャー養成講座