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インフォグラフィックスをビジネスに活かす

インフォグラフィックスとは、情報、データ、知識を視覚的にわかりやすく表現することである。ビジネスに活かすには、顧客視点で情報を洗い出す「捨てる技術」も重要になる。

インフォグラフィックスとは何か

インフォグラフィックス(infographics)は、information(情報)+graphics(グラフィック)を掛け合わせた造語で、「情報のデザイン化」を意味する。最大の特徴は、言葉だけでは伝えることが難しいものを図にしてわかりやすく伝えることである。例えば、データや数値などの情報は、単に数字の羅列では理解するのに時間がかかる。それを一目で理解できるようにする。

もともとインフォグラフィックスは、新聞や雑誌などのニュースメディアが、それぞれの媒体に掲載するために作るダイアグラムのことだった。ダイアグラムの解釈は諸説あるが、ここでは「わかりやすさ」を追求するための視覚情報の表現手段として考えたい。

身の回りにもインフォグラフィックスの実例はたくさんある。有名なものは、地下鉄の路線図だが、資料におけるチャート、グラフ、データや、案内図、サイン、ピクトグラム、ポスター、サイネージなどにも応用されている。最近では、企業の「サービスマップ」「年表」などにはインフォグラフィックスの観点から作成しているものが多い。

その一方で、生活者にとって「わかりづらい」「使いにくい」「迷ってしまう」サインボードやサイネージなどが、街中のいたるところにある。もちろん、インフォグラフィックスを応用した理解しやすいものもあるが、見た目の美しさを追求するあまり、見る人にとって不親切なものも散見する。今一度そのような視点で心がけるようにして見ると、きっと街中のデザインが違ったように見えてくるはずだ。

ビジネスに活かす

日本におけるインフォグラフィックスの第一人者である木村博之氏(株式会社チューブグラフィックス)は、自著『インフォグラフィックス―情報をデザインする視点と表現』の中で、インフォグラフィックスを作るときの要素として以下の5点をあげている。

1.見る人の目と心を引き付ける「Attractive」

2.伝えたい情報を明確にする「Clear」

3.必要な情報だけ簡略化する「Simple」

4.目の流れに沿う「Flow」

5.文字がなくても理解させる「Wordless」

なかでも「Simple」については、顧客視点で情報を洗い出し、何でもかんでも詰め込みすぎない「捨てる技術」が重要になる。コンセプトをはっきりさせて、本当に必要なものだけを絞り込み、あとは見る人の知識や情報を引き出すことである。「一瞬で何を伝えたいのかが分かるような、最小限のもので最大限の効果をもたらす情報だけを残すべき」とのことである。

自社のパンフレットや会社案内などの印刷物が理解しにくいことはないだろうか。特に営業ツールがわかりにくいと営業活動がうまくいかないし、何より顧客が迷惑する。デザインを考えるのは何もデザイナーだけではない。企画や提案営業の人にもデザインを考える意味は十分にある。

企業の製品情報を表現するのにインフォグラフィックスを使うのであれば、顧客の理解力が深まるだろう。インフォグラフィックスは人々の役に立ち、生活に溶け込んでいくことを目的としている。それをビジネスパーソンが応用できるとコミュニケーション力をアップする上で有効な手段となる。

さらに企画の段階でインフォグラフィックスを応用できないものだろうか。営業パーソンが自社の商品説明や企画書にインフォグラフィックスの発想を落とし込むことができれば、より威力を発揮するだろう。考え方を理解することでビジネスの幅は確実に拡がるはずである。

(CS部 上野寿)

関連セミナー
「インフォグラフィックスを活用した企画書制作」

チューブグラフィックス 木村博之氏を講師に迎え、インフォグラフィックスを顧客へのプレゼンに役立てるためのワークショップを開催します。

開催日時
2019年3月8日(金)13:00~18:00

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●インフォグラフィックス・ワークショップ 開催レポート

2018年6月22日に木村博之氏を講師に迎えて開催した、座学、個人ワーク、グループワークを組み合わせたワークショップのレポートです。

●図で語れる人になろう―インフォグラフィックスのすすめ

page2019御礼 及び 次回page2020について

皆様のおかげをもちまして、page2019が終了することができました。本当にありがとうございました。来場者報告と次回page2020についてお知らせいたします。

page2019の来場者数です。

2/6(水)17,520名(前回19,250名 前年比91.0%)

2/7(木)21,920名(前回21,700名 前年比101.0%)

2/8(金)27,120名(前年25,260名、前年比107.4%)

合計 66,560名(前年66,210名、前年比100.5%)

尚、次回page2020は、

2020年2月5日(水)~7日(金)の3日間、池袋サンシャインシティで行います。

何卒よろしくお願いいたします。

page事務局

page2019が開幕! 出展社数は史上最多を更新

2月5日10時、32回目となるpage2019が史上最多の出展社数で開幕した。2月8日金曜まで3日間にわたり、サンシャインシティでカンファレンス・セミナー、技術展示、オープンイベント、フリーペーパー展示など、多彩なイベントが繰り広げられる。

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出版にも広がるデジタル×紙の連携

出版の世界で、本作りの常識が変わろうとしている。

デジタルの世界でマーケティングを進め、紙の書籍の売上を伸ばす。そんな流れが大きな市場を形成している分野がある。

今回は小説投稿サイト大手の一つである「エブリスタ」を紹介し、出版業界の進化の方向性を探っていく。

Web小説がなぜ売れるのか

『恋空』などに代表されるケータイ小説のブームを覚えている方も多いのではないだろうか。2005年にWeb上で発表された小説が書籍化され200万部を超えるヒットとなった。こういった、ケータイ小説ブームは一時の流行で終わってしまったが、Web上で小説を発表し、書籍化に繋げる流れは現在も続いている。

今回紹介するエブリスタは2010年に始まった小説投稿サイトである。DeNAとNTTドコモとの共同出資によって生まれ、誰でも小説やコミックを投稿できる。「王様ゲーム」や「奴隷区」といった作品がベストセラーとなり、アニメ化や映画化なども行われている。

どちらも、小説版に関してはWeb上で無料閲覧することができる。だというのに、お金を出して書籍を買う人間がおり、次々とメディアミックス化されていったのだ。これは、一体どういうことだろうか?

ケータイ小説のブームの際には、コアなファンが自分の感動を形にする宝物として書籍を買い求めているのだろうと分析されていた。勿論、そういった需要があることも間違いないが、現在は無料のWeb小説で市場を調査し、そこで反応のあったものに予算を投下することでヒットに繋げているという考え方が主流になっている。

Web上で人気といっても、そこで読む人間はまだコアな層である。しかし、そういったコアな層の中で人気の出たものが書籍化され、書店に並べばそこで初めて目に触れる人間も出てくる。コア層の中で人気を勝ち得た作品は書店でも読者を掴みやすい。さらに言えば、編集者はその作品のどこに読者が付いているのか知っている。その反応に合わせて、パッケージングや宣伝戦略を考えることができる。言ってみれば、Web発の小説はある程度マーケティングが済んだ状態で書店に並んでくるのである。この差は大きい。

書籍の中で人気を得た作品はコミカライズされ、さらにはアニメ化、ドラマ化、映画化へと様々な展開へ繋がっていく。このWeb→書籍→コミカライズ→アニメ化、ドラマ化といった流れは、必要な予算や関わる人間が段階的に増えていっていることも重要である。半ば自動的に、人気の度合いに従って適切な予算投下が行われるようになっているのである。この仕組みは、個々の出版社やアニメ制作会社を超えたコンテンツ業界全体のビジネスモデルになりつつある。

無料のWebと有料の紙

コンテンツ業界では「0を1に、1を100に」という言葉がある。「0を1に」とは新作発掘のことであり、「1を100」にとはメディアミックスや宣伝、グッズ展開などで作品の利益を最大化する仕事のことである。これまで小説は初期投資の少なさから、コンテンツ業界では原作の提供側にいることが多かった。しかし、Web小説の登場で、より0に近い場所が生まれたのである。一方で、基本無料のWeb小説をマネタイズするために紙は有効という事実もある。これら市場の変化は印刷業界にいる人間も知っておきたい情報である。変化の傍には常にビジネスチャンスが眠っている。

では、その小説投稿サイトとはどのような場所なのだろうか? 小説投稿サイトに作品を掲載する作者の多くは、自分の作品を読んでくれる読者を求め、コミュニケーションを期待している。ポジティブな関係が築かれ、作品が生まれるコミュニティを如何に作り、運営していくのか。実際、そこではどのようなやり取りが行われているのか。

page2019のカンファレンスでは、エブリスタのエース級編集者である松田氏が登壇し、市場の変化や小説投稿サイトの実際の様子、未来像などを講演して頂く。他にも、今後の出版の行く末を占う新しい展開を議論するカンファレンスになっている。

(JAGAT 研究調査部 松永寛和)

■関連イベント

2月6日~8日に開催するイベント「page2019」では、2019年の印刷マーケティングを知るためのカンファレンスを開催します。同人誌、自費出版、デジタル印刷、地域活性などの情報をビジネスに活かしたい方はぜひご参加ください。

【PM3】WEB と地方で広がるデジタル出版の可能性~プラットフォーマーと同人誌新規参入会社の視点から~
出版市場が縮小する外側で、投稿小説サイトや同人誌即売会ではコンテンツが増え続けている。投稿小説サイトは既存の出版では埋もれていた作品をヒット作へと繋げ、文学フリマは百都市構想を掲げて地方での開催を模索する。デジタル印刷で小ロットのマネタイズを支援して新たな市場を創出できないか。プラットフォーマーと印刷会社、新興市場に精通するシンクタンクを交えて出版の新しい成長可能性を議論する。

【PM1】地域活性ビジネス①地域の課題解決による新たな価値の創り方
【PM2】地域活性ビジネス②産業観光による地場産業活性の可能性
【PM4】印刷ビジネスとメディアの展望2019

印刷業定点調査 各地の声(2018年9月度)

9月の売上高は△3.9%。2016年10月以来22カ月ぶりの落ち込み幅となって4カ月ぶりのマイナスに転じた。9月は平日が昨年より2日少ない18日だったカレンダー要因と、西日本で相次いだ台風・豪雨災害と北海道地震が影響した。 続きを読む

平成の終わりに考える印刷の新しい価値

平成の印刷を振り返ると、昭和末期に登場したDTPという概念と技術、それを実現させたデジタル技術によって印刷がコモディティ化してしまった時代なのではないだろうか。パソコンとプリンターの普及は、印刷物の製造を印刷業だけのものから、(質はともかく)誰でも製造できるものにしたと言える。

印刷がコモディティ化してしまったとすると、単に印刷物を製造するだけでは印刷業としての優位性を保つのが難しい。加えて、インターネットを介したデジタルメディアの隆盛が、情報を伝えるという紙メディアそのものの相対的な価値低下につながっている。従って、例えば紙メディアvs.デジタルメディアと捉えてしまうと、従来の手ごろな価格で大量に同じものを複製できるという印刷物の強みだけでは、より安価に情報伝達が可能なインターネットを介したデジタルメディアとの競争では不利である。

また、デジタルメディアの普及によって顧客の顧客となるエンドユーザーや、いわゆる生活者の意識や行動も大きく変わってきた。となると、手ごろな価格で大量に同じものを複製できる価値だけでは、もはや顧客の抱える課題の解決を支援することは、相当困難な仕事になっている。今、印刷は新しい価値を生み出さないと、顧客から必要とされる存在が危うくなるのは目に見えているのではないだろうか。

では、どのようにして印刷の新しい価値を生み出すのか。それは印刷で培ってきたノウハウと、長く印刷を通して顧客を支えてきた信頼をもとに、ICT活用によって印刷がマーケティングを取り込み、One to One対応、オンデマンド対応、スピード対応、デジタル印刷活用、種々の加工などを組み合わせることであろう。まさに「デジタル×紙×マーケティング」の組み合わせによって発揮される相乗効果によって生み出される。デジタル(メディア、ツール)は競争相手となる敵ではなく、シナジーを生み出す味方である。

JAGAT info1月号では、特集で印刷会社の経営者でもある塚田司郎JAGAT会長と、網野勝彦JAGAT副会長、メーカー・ベンダーの社長としてさまざまな印刷会社を知る森澤彰彦副会長が、これからの印刷業がどのようにして、どのような価値を提供するべきかを議論している。

また、2月6~8日に開催されるpage2019では、「デジタル×紙×マーケティング」のテーマのもとに各社展示、基調講演、各種カンファンス、セミナーでは、新しい時代にふさわしい印刷ビジネスのあり方を探るので、ぜひ来場し、その目で確かめていただきたい。

JAGAT info2019年1月号の目次はこちら