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アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

 6. 偏光眼鏡立体

印刷物で反射時に偏光を発する物質が研究されているが,シルク印刷でインキ粒子が粗く実用化にはなっておらず,今後の研究課題として残されている。
 映像分野では,映画,3DハイビジョンプロジェクターTV,ハーフミラー利用2台CRT合成TVが実用化されておりテーマパークなどで鑑賞することができる。ここで使用する偏光眼鏡は右眼,左眼の偏光角度を90度位相をずらしたもの。
 偏光角度は水平に対して45度を取るため,両眼の偏光はハの字またはV字のどちらかとなり,投影装置の右レンズ,左レンズも合わせたフィルタを装着する。
 上記の方式では投影装置の偏光角度と,眼鏡の偏光角度を一致させることが立体視の見やすさになっており,顔を10度以上傾けると見にくくなる。
しかしながら立体度が一番表現できる方式でありテーマパーク,文化センターなどの立体シアターでは10~30mも飛び出させることができ,利用度が高くなっている。
 偏光フィルムは古くはセルロースにヨウ素液を浸積させて延伸し黄味がかっていた。現在は酢酸セルロース層の間にPVAを延伸した偏光膜を入れたものが主流。一般眼鏡では透明で,立体視眼鏡では濃度を出すためややグレーのものが主流となる。
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▲(株)NHKテクニカルサービス・立体ハイビジョン

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▲ハーフミラー利用・2台CRT合成TV

7. 液晶シャッター方式

電子的に偏光を変えることのできる液晶と偏光フィルタの組み合わせで,片目ずつ透明・不透明にすべく同期を合わせる回路をとおして,CRT画像の右眼,左眼を同期させて見る方式の眼鏡である。
 一般のTV画面,ビデオ画面ではチラつきが大きいため,画面のフィールド周波数を2倍,4倍にしたものが実用化され,DVD画像として映画,科学の表現で使われている。

終わりに

第5回の裸眼視立体で入れられなかったモアレ模様を利用した技術について紹介する。
これは明和グラビア(株)の特許,特許番号3131771,平成9年出願に関するもので,印刷方式としてオフセットの特殊網点,シルクの特殊網点(模様)にこの使用線数よりややずれた線数の拡大凸微細レンズ配列を並べることで,レンズ効果とモアレ効果の相乗効果で一つひとつの網点が大きくなり,奥行き,飛び出し画像を形成する。
 明和グラビアが印刷各社に実施権を与えたことにより,オフセット印刷物ははがき,ポスター他。シルク印刷は厚レンズで奥行きが出るので,POPに使われる。

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▲モアレ効果を利用した立体印刷

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔2〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔2〕
3. クロマデプス立体

米国のクロマデプス社が開発した右図のプリズム溝フィルムで見るもので,青の寒色系は奥行き画像に,赤の暖色系は飛び出し画像となる。
・色視感度差を利用しているので片目でも立体視できる。
・自然の絵柄は赤系の花が飛び出し画像に適する。
・CGではサイケデリック表現ができ,雑誌もある。
・コンピュータでの映像分野では化学式の立体構造を説明する時に使う。
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▲クロマデプス社のフィルム構造

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▲クロマデプス眼鏡の実施例

4. フーリエ眼鏡

1947年に東レ(株)によって出願された特許によると,文字,画像をフーリエ積分して2次元ホログラム,つまり干渉稿の文字,画像をレーザ光でフィルムに焼き付ける。これを点光源で見ると,光学的逆フーリエ変換が生じ光で文字,画像が復元される。

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▲特許原理

用途としては花火大会,クリスマスツリー,夜景などを見て,そこにハート絵柄などが浮き出すファンシー商品に用いられるほか,お菓子のおまけ,雑誌の付録に使用されている。最近,品質向上したEB回折格子ホログラムタイプフーリエ眼鏡が開発されている。
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▲フーリエ眼鏡 ファンシー商品

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▲フーリエ眼鏡 お菓子のおまけ

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▲フーリエ眼鏡 本の付録

5. プルフリッヒ立体

左右の異なる濃度フィルタを入れた眼鏡で動画(スキー,ボート,飛行機など)のビデオCRT画像を見ると,両眼に時間刺激差が生じて立体視できる。この眼鏡は片方を素通し,片方を赤茶系フィルタを入れたものが,スキーなど青系画像に対して反応しやすく,用いられている。動きの方向で時間差が逆になるため,眼鏡を逆にする必要があるということが難点になる。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

古くからある立体写真

2眼レンズ立体は1800年初頭に英国ブリュースターとホルムスが考案し,明治維新の時には2眼カメラが日本に入ってきた。1896~1903年の立体写真は,小学館より1994年に発刊された『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』のほか,日本ステレオ写真の所蔵写真などがある。『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』には、米国の立体写真販売会社「アンダーウッド&アンダーウッド社」から49点が抜粋されている。
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▲立体印刷を利用した本

1. 2眼レンズ立体

レンズで拡大して見るため,印刷技術として高精細印刷で網点が見えないよう,右の写真本は600線で印刷している。最近ではCG画像を視差角30~45度で出力後,製版するものも増加している。撮影の基本として,仕上がりサイズでの奥行き,一番前の飛び出しズレを±3mm以内にすると視距離30cmで見ることができる。マクロ撮影ではこれが難しいため,1台のカメラを固定しておき被写体を移動し撮影する方法もある。

●原理

下図のようにレンズの半分を使い見るものであり,レンズのプリズム効果で左右の2枚の絵を重ね合わせ,さらにレンズの丸味によりややボカすことで自然な合成をする。大事なことは人間の両眼平均間隔65mmよりも両眼レンズ間隔を広げて,レンズ中心とレンズ内側端の中央間距離を約65mmに設定する。さらに,レンズの焦点距離と大きくしたい印刷絵柄の寸法を計算してレンズ立体を作る。絵柄を大きくしたい場合は,レンズの焦点距離を長くレンズ径を大きく取る。
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2. 余色立体

赤と青の余色である2色のメガネで見ると立体的に見える。赤フィルムで見ると赤刷色は白く,画像が消えて青刷色が黒く見え,青フィルムで見ると青刷色は白く,画像が消え赤刷色が黒く見え左右が重なる。
・写真,CGは2角度からの2枚の写真が必要。
・イラストは印刷製版工程で左にずらすと奥行き画像,右にずらすと飛び出し画像となり,変形左右拡大すると斜め飛び出し画像ができる。入稿時には飛び出し順序をトレーシングペーパーに書き指定する。
 最近Macintoshコンピュータの普及で,従来の余色立体の赤青フィルムの画像に対する減衰量を4色画像に演算させることで,赤青フィルタで4色の2枚画像を重ね合わせて見ると4色再現できるようになった。
・印刷方式はオフセット,グラビア,シルク,インクジェットで可能。
・大きさは「カードサイズ」から「たれ幕サイズ」まで可能で,2眼レンズ立体より優れるが,フィルタを通さず肉眼で見ると見当ズレ印刷物に見えるのが欠点。ずらし量は雑誌±3mm,ポスター10~15mm。
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▲従来タイプ2色・赤青立体印刷
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▲新4色再現・4色刷立体印刷(プロセスインキ)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 2.立体視印刷〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 2.立体視印刷〔2〕

立体視印刷〔2〕

2. レンチキュラー立体視および変化印刷

レンチキュラーレンズというのは20世紀初めに考案された。日本語で「かまぼこ」の意味で,つまり長体レンズのことである。横幅は0.15mmから6mmのレンズが一般的である。
 人の標準目間隔は約65mmとされており,標準視距離で約30cmの場合,レンズの視差角度を約13度に設定すると,図2の左画像1,2,センター画像3,右画像4,5が重なって3次元画像となる。 ここでレンズの視差角度を20度以上に広げ1~5まで全く異なる絵柄を入れると,レンズの傾斜により順次1~5の絵柄が見えて変化タイプレンチキュラー印刷となる。
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▲図2

●立体画像の撮影方法
 図3の5眼カメラのような近距離簡易撮影のものがあり,一度に5枚の写真が撮れる。印刷物では5枚では不自然さが見える場合があり,カメラを並べて同調装置を付け,8~12枚で作る。
なお,風景遠距離では各カメラの間隔を約2m以上必要とするため,1本のレールの上をカメラ架台を走らせて撮影する。
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▲図3 3DS-EXP 645 コンポーネント

●画像処理
 (中間デジタル処理)コンピュータの発展に伴い画像1~5までの横幅をあらかじめ5分の1に圧縮したものをコンピュータのクロップ・プレス処理でレンチキュラー・1レンズ幅の5分1で順次並べて画像6の立体画像を作る(図4)。
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▲図4 レンチキュラー処理概要

3. ステレオドットグラフ

1996年ごろに目の焦点を画面より後ろにして見る「平行法」と画面より前にして見る「交差法」が開発された。絵柄を立体情報に合わせて微妙にズラす専用ソフトを使用して作成する。人の視力のほかに副奏力(ふくそうりょく:目を寄せる力)を必要とするため見えない人もいる。

終わりに

レンチキュラーレンズの代替として,黒線スリットを使用する方式・パララックスバリア(ラスターバンド)は,前者より画像が暗くなるためバック照明が必要であり,ディスプレイ,携帯電話本体画面に用いられる。原理はレンチキュラーとほぼ同じである。
このほか裸眼視立体についてはプロジェクターレンチキュラーテレビ,鏡を使用する可変焦点光学系印刷があり,実用化されている。より立体視の発展を望みたい。 
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▲3Dカレンダー

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 2.立体視印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術  2.立体視印刷〔1〕

 

立体視印刷〔1〕

裸眼視と特殊メガネ視に大きく2つに分かれる。今回は,前者を重点的に解説する。

さまざまに活用される裸眼視技術
 立体視の裸眼視技術は,その機能にとどまらず,さらなる分野として偽造防止,本,カタログ,プレミアムの装填で実用化されたほか,化学分子構造の発表資料,携帯電話モックの表現(変化画像)へと拡大している。携帯電話本体ではパララックスも実用化されている。

1. ホログラム印刷技術の概要

ホログラムは廉価大量複製を可能とするレインボーホログラムと,感光材料にそのつど露光して作成するリップマンホログラムに分かれる。さらに透光用途と反射用途がある。1948年イギリスのDennis Gaborが光の干渉現象を利用した記録原理を考案,1960年に実用化された。
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●ホログラムの撮影原理(図1参照)
 被写体の表面から反射した光を,光の干渉現象を利用することでそのままフィルム全面で受け,それぞれの部分から来る光の方向をフィルム面全体に,元の被写体から送られてきた光と同じ光の状態をそのまま忠実に記録し再現させる。
 下図のように2光束のレーザを用い,被写体を照明すると,この2つの光線が干渉し合って,フィルム面には干渉縞が記録される。被写体から反射した光は,被写体の形状によってレーザ光線の位相が少しずつズレており,このズレがこの被写体の3次元情報をもっている。でき上がったホログラムは,ただの干渉縞が写っているだけであり,これに光を当てると,元あった場所に本物と見間違えるような立体画像が再生される。
この撮影フィルムをレーザ3原色で3回露光するとリップマンカラーホログラムができる。 このフィルムを金型に直しCD作成のようにプレスしたフィルムがレインボーホログラムとなる。

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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 1.インクジェット印刷〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 1.インクジェット印刷〔2〕

 

インクジェット印刷〔2〕

3. 各種インクジェット印刷

〔1〕一般用インクジェット
【概要】汎用型のインクジェットプリンタ。水溶性染料インキの使用が一般的で,用紙は各種専用紙が用意されている。
 【利点】上述のとおり,コストパフォーマンスと可搬性から一般家庭では最も普及している。業務用としてもその特徴を生かした実例がある。

〔2〕高精細インクジェット(Giclee/ColorSpan社)
 【概要】プリンタ本体内のドラムに用紙を巻き付ける安定した用紙搬送機構をもち,サーマル方式を採用している。インキは透明性,輝度の高い,高耐候染料系を使用し,8色印刷(Y,M,C,K,薄赤,薄藍,オレンジ,グリーン)で,1800dpi相当の高品質を実現している。
 【利点】完全なフルデジタルを駆使し,複雑な表現技法の再現が容易で,水彩画の微妙なにじみ,油絵のタッチなどの微妙な表現が可能である。当然小ロット対応も可能で,現在,複製画の製造で最も多く利用されている。
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▲ジークレ出力

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〔3〕大型インクジェット
【概要】B0~A2サイズまでの出力が可能で,多くの機種がそろっている。産業用インクジェットの代表格で,印刷品質,生産性は年々進歩している。耐候性インキ,速乾性インキの登場で用途幅も広がり,さまざまな場所で目にすることができる。
 【利点】大型ポスターを例に取ると,1~50枚の小ロットでは,オフセット印刷に比べ,コスト・納期・品質の面で有利になる。ラミネート,スタンド,バックライト式など,後加工と合わせて商品化の提案が有効。

〔4〕インクジェット捺染印刷
 【概要】インクジェット捺染印刷は,生地,布へ,基準4色による色分解で,調子再現の印刷が可能なため,近年発展傾向にある。現時点では,生産性は低いものの,高付加価値商品,または小ロットでサイクルの早いアパレル系商品などでは,十分メリットを出ている。
 【利点】オートスクリーン印刷の捺染方式との比較を表3にまとめた。
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▲捺染

〔5〕平面式インクジェット印刷(EagleH/Inca)
 【概要】平面にバキュームで固定された原反が往復運動し,定位置移動のヘッドで印刷するユニークな方式である。
 【特徴】最大印刷サイズは2.4m×1.6mで,厚さ4cmまでの原反を設置することが可能。平面式のため,凹凸のある原反,曲げ適正のない原反にも対応でき,耐候性UVインキの採用により,屋外3年の耐久性も備えている。
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▲Inca 平面式インクジェット印刷

〔6〕加工機インライン用インクジェット
【概要】DMを代表とする多形態加工機に設置されたインクジェット印刷。事前に,個々のパーソナルデータを情報加工し,印字データを作成する必要がある。印字速度,印字解像度,印字範囲などが重要な仕様となる。
 【利点】オンデマンド印刷では,レーザ方式,電子写真方式などもあるが,印刷~加工までのインラインフィニッシュの分野では,設置が容易で,機能が単純なインクジェットが有利である。
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▲DM加工機インライン用インクジェット
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▲インクジェットプリンタによる製品サンプル

おわりに

インクジェット印刷は高品質・高生産性を追求し発展し続けており,上述の内容も数年で更新されていくことになるだろう。常に最新の動向をつかむことで,潜在的な需要を掘り起こすとことができると考える。特に,小ロット,パーソナルな分野は,裾野が広く,さまざまなソリューションが可能なので ,今回の講座が受注拡大のお役に立てれば幸いである。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術

※本記事の内容は掲載当時のものです。

こんなこともできる!! アイデア印刷術

 

印刷物は,さまざまな加工や工夫を行うことによって,メディアとしての可能性を広げているのです。印刷物に付加価値を付けることによって,新たな市場の開拓,デジタルメディアなどとの差別化,あるいはインパクトを与えることが可能です。

具体的には絵柄を盛り上げる,音が出る,さまざまな香りがする,色が変わる,ラメを散りばめた印刷,立体印刷,ホログラム印刷,光る印刷,サンプルを添付など多種多様な印刷が可能です。

このコーナーでは,これらのいろいろな技術によりPOPやDMなど販促ツールや,雑誌および雑誌の付録など対して,企画提案の枠を広げるためのヒントを紹介します。

執筆は,下記の方々が担当しています。
大日本印刷株式会社 冠 文隆
大日本印刷株式会社 飯原 岳志
大日本印刷株式会社 大立目 恭生

※項目は随時追加していきます。

1.インクジェット印刷 〔1〕〔2〕
2.立体視印刷 〔1〕〔2〕
3.眼鏡を用いた立体印刷 〔1〕〔2〕〔3〕
4.隆起印刷関連について 〔1〕〔2〕
5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」 〔1〕〔2〕
6.光る印刷 〔1〕〔2〕
7.マット調印刷 〔1〕〔2〕
8.フィルム印刷 〔1〕〔2〕
9.転写印刷 〔1〕〔2〕〔3〕
10.布印刷 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕
11.シール企画 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕/〔5〕
12.貼り付け企画 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕/〔5〕
13.表面加工 〔1〕〔2〕〔3〕〔4〕〔5〕

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 1.インクジェット印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 1.インクジェット印刷〔1〕

 

インクジェット印刷〔1〕

はじめに

今回はインクジェット印刷全般の講座ということで,基本的な構造,特徴・利点,各種事例を紹介する。一般家庭のPC,オンデマンド印刷の発展とともに,少ロット対応のプリンタはさまざま出現しているが,その中でインクジェット印刷は最も普及しており,最も注目されている分野だと言える。これらの全体像を理解することを念頭にまとめてみた。
 比較分類表を利用した記述もあるが,これは一般論的な内容になっており,個別製品単位ではないことを断っておきたい。

1. インクジェット印刷の概要

インクジェット方式は,現在最も普及しているプリンタであり,最も進歩の早いプリンタでもある。そのためモデルサイクルが短く,すぐに新機種が登場する。
 民生用(パーソナルユース)のレーザビームプリンタやコピー機の場合,プリントのための主要パーツは,「メディア=紙」を走行させるための給紙機構のほかに,トナー(インク)の供給機構,加熱定着機構が必要であり,非常に複雑な機構になっている。それに比べインクジェット方式は,大まかに言えば,インクを射出する機構「プリンタヘッド」と給紙機構の2つで構成され,非常にシンプルにできている。
そのため本体価格が非常に安価であり,広く普及されている。また,機構がシンプルなため,展開の幅も広く,多種多様な用途へ向けた,さまざまなインクジェット方式がある。

2. インクジェット印刷の分類

〔1〕インクジェット印刷の位置付け
 インクジェット印刷を広義のプリンタとして見ると,その特徴については表1のような比較分類表となる。これを見ると,インクジェット方式は,大きな欠点がなく,ほかのプリンタに比べ,優等生的な位置にあることが分かる。
また,プリンタにはページ単位で印刷する「ページプリンタ」と,ドット単位で印刷する「シリアルプリンタ」に分かれ,インクジェット方式は後者に当たり,大判も対応可能という特徴がある。
※以下の表は一般的な分類で,個々の方式の中でも優位差の幅がある。

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01ink_01▲インクジェット出力

〔2〕インクジェット印刷の基本機構
 以下に代表的な2つのインクジェット方式について特徴をまとめた。どちらも一長一短がある。
 【ピエゾ方式】ピエゾ素子(電圧素子)に電圧を加えることで収縮し,タンクにインキが吸入される。
ピエゾ素子に逆の電圧を加え,変形の圧力を利用してインキを吐き出す。
 〈特徴〉
・電圧変化をコントロールすることで,サイズの異なるインキ滴の打ち分けが可能である。
・ヘッドに熱が加わらないため,幅広いインキ適性がある。
・コスト面,印刷速度面では若干不利である。
 【サーマルジェット方式】ヘッド内のヒーターでインキを急激に加熱し,発生させた気泡の圧力でインキを吐き出す。
ヒーターの加熱を止め気泡を消すことでインキ射出量をコントロールする。
 〈特徴〉
・構造が単純なので,印刷速度が速く,コストダウンしやすい。
・加熱方式のため,水系溶媒のインキに限定される。

〔3〕インキの種類
さまざまな特性のインキがあるが,上述のヘッド部の機構によって,使用できるインキ物性は制約を受ける。ヘッド機構・用紙の開発に加え,インキの発展は,印刷品質の向上に大きく貢献している。表2にインキを構成する要素と特徴をまとめた。
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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [原稿チェック] 4. 文字原稿の内容チェック

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック]

 

4. 文字原稿の内容チェック

 

[組版指定]

組版とは文字を並べる時のテクニックであり,それは一定の規則に基いて行われます。だいたいどのDTPソフトも似たような組版指定のメニューがあります。何も指定しないとワープロと同じような単調な紙面にしかならず,文字ブロックにどのような雰囲気をもたせるかを 設計しなければ読みやすい本にはなりません。

文字をどのようなスタイルで組んでいくかの組版指定がないとDTP作業は始まりません。基本的な組方はすでに決定していても,さらに見出しの大きさ,挿入の仕方,字割・字下げなどを細かく決める必要があります。組版指定の主な項目は次のようになります。

[本文の指定項目]

本文部分は基本組とも呼び最低限次のような項目を指定します。

(1)タテ組・ヨコ組

本の企画内容に合った選択をしますが,新聞雑誌など一般の目に触れるものは圧倒的にタテ組が主流です。ヨコ組は教科書やマニュアルでは主流ですが一般書では特殊組版ともいえます。編集・校正の分野でも,ヨコ組はタテ組より難度・料金とも高いとされています。 一般的にタテ組の本を右開き本,ヨコ組を左開き本といい,面付・折りがまったく違ってきます。

(2)文字の大きさ・書体

文字の大きさの基準は,用いる文字組版装置により以下のような違いがありました。
・活字=号数とポイント制
・手動写植=級数制
・電算写植=級数とポイント制
・ワープロ・電子組版機=ポイント制(級数対応もある)

DTPは基本的にはポイント制ですが,メニュー・ダイアログで級数指定できるものもあります。
コンピュータでは単位の換算は容易ですが,慣例的な級数とポイントの換算表はあくまで近似値であることから,例えば字詰が長くなると行長にズレが生じることがあります。そのため寸法を確認するには実際に文字を流して検討して下さい。とりわけ組版とレイアウト指定を級数指定でしたものを,あとでポイント換算して,近似値として作業を進めるようなことはやめましょう。また同様に,レイアウト用紙が活版や写植,ワープロ組版用に作られたものであれば,流用するのは問題です。

書体についても,あらかじめ出力をする印刷会社側で保有している書体・フォントを知っておき,それ以外の書体と区別しておきましょう。

印刷会社側にフォントがなくても,文書に埋め込み(エンベット)をして印刷会社に渡せるフォントがありますので,新書体情報はデザイン以外に使い方をつかんでおくことが,大切です。自社が新書体を導入するときなどは,関連しているところにマメに情報提供をすることも忘れないで下さい。

(3)1行の文字数

日本の組版は,文字ブロックを「何字詰×何行」というとらえ方をしていましたが,DTPは任意のボックスに任意の文字サイズで指定するやり方ではじまり,今日は両方が混在した指定方法があります。
つまりDTPでは必ずしも1行の文字数を考慮しなくても作業できますが,読みやすさという点では字詰は最初に考えておかなければなりません。
字詰は多すぎても,少なすぎても文章が読みにくくなります。最大字数をタテ組では45~50字程度,ヨコでは35~40字までにすると良いといわれています。新聞などに使われる最小字詰は15~18字程度とされていますが,これらは本の大きさ,文字の大きさ,写真と文字の関係や人の好みの問題もあり,一応の目安ということで理解してください。

(4)行と行の間

行間といいますが,写植では文字の大きさに行間を足した行送りという言葉と指定方法がとられていました。行送りと行間の違いが混同されていないかをチェックしなければなりません。またDTPでは文字の大きさの何%の行間をとるかという指定もあります。

(5)字と字の間

日本の組版では基本的にはですが,行間・行送りと同じ考え方で,字間・字送りという指定もあります。字と字の間をあけないで組むベタ組とツメ組は,字と字が重ならない程度にツメて組むことで、パンフレット・カタログなどの販促用ツールの印刷物ではツメ組は常識となっているようですが,書籍・雑誌では本文をツメ組することは少ないようです。(リード文などはツメ組が多い)。

ツメ組の方法はさまざまあり,DTPソフト単体でできるものの他に,専用ソフトを使うものもあり,それぞれ結果が異なります。ツメ組の指定はテストをふまえた上で行なうのがよいでしょう。

(6)句読点

一般的にはタテ組はテンとマル,ヨコ組はコンマとピリオドという組み合せになるでしょう。しかし最近はヨコ組でコンマとマルという組み合せも多くみられます。

(7)1ページの行数と段落・段間

基本組・基本レイアウトが決まっているということは,行数・段数・段間 がすでに決まっているということですが,実際には,入稿する各ページごとにレイアウト指定紙が必要です。文字原稿と同時にレイアウト指定紙があるものについては,行数・段間・段数にしたがってページ・メイクアップをできますが,基本組は決まっているものの,レイアウトが未指定である場合には,基本組にしたがって棒組をし,初校と同時にレイアウト指定を完成してもらい,再校時にページ・マイクアップをする方法をとります。

(8)ブラ下げ

タテ組で句点や読点(「。」や「,」)が行末にきた場合,版面の下に飛び出して組むことをブラ下ゲ組といいます。活版時代の行末処理の方法が写植組版にも形式的に踏襲されているものですが,得意先によってはブラ下ゲ組を基本にしていることもあり,確認が必要です。ただし,1行の字詰の少ないものや段組は,ブラ下ゲにしないものです。横組でブラ下げをする場合もみうけますが,やはり段組や字詰の少ない場合は不細工な仕上りになります。

[その他]

本文中にはいろいろな約物・記号・数字・欧文が混在してきます。それぞれの種類や書体・大きさ(全角もの・二分もの)などが統一的に指定されているかどうか確認してください。

その他,図表類の指定,写真のキャプション(写真・イラストの説明文/Captions)の指定,ノンブル・柱の指定などについても統一がなされているか確認しましょう。図表類については図表の大きさと中に入る文字の書体・大きさとともにケイ線の太さの確認も必要です。

[禁則処置]

文字組で,約物や記号などが行の頭や行の終り(行頭・行末)にきたり,行末から行頭にまたがったりすると,読みやすさを損なったり誤解を生じたりします。また組体裁上も好ましくないものになります。このほか,約物や記号が連続して出現する時には字送りを調整する必要が生じます。
これら特定の文字を「禁則文字」といいますが,禁則文字が行頭・行末にこないよう,また行頭・行末にまたがらないように調整することを「禁則処置」といいます。
DTPでは禁則ルールをプログラム上で制御できますので,どのように自動的にさせるかを指定しなければなりません。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [原稿チェック] 3. 原稿整理

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック]

 

3. 原稿整理

まず著者と編集者の間では情報内容の吟味といった意味でのチェックがあり,その後組版レイアウト作業を進めていくうえで,障害や問題点がないかどうかのチェックを行ないます。ここでは後者が対象で,その中のチェックポイントは原稿の組版指定に関するものと,原稿整理に関するものとの2つに分けることができます。

[原稿整理]

わかりやすく,読みやすい原稿にするために,組版レイアウト作業に入る前に原稿整理をする必要があります。原稿が未整理のままで入稿した場合は必ず校正での赤字が多くなります。たとえ不十分であっても最低限の整理をしたうえで作業に取りかかりましょう。

原稿整理は印刷物にするための文章の整理整頓作業のことで,これは刊行される本に,読者に対する誤解や難解さ・読みづらさ,また本としての欠陥があってはけないという考えに基づいています。

原稿整理をする場合に、どのように著者の意向・表現をくみとって尊重するかということです。著者個人の思想・信条を文字で表現したものが原稿ですので,意図的にうそ字・当て字を使ったようなものに要注意しなければならない場合もあります。

(1)誤字・脱字のチェック

誤字・脱字といっても常識だけでは判断できない面もあるので慎重に行ってください。著者が意図的にうそ字・当て字を使用する場合以外は,編集・校正の本に従って作業するのがよいでしょう。

(2)用字・用語の統一

同じ内容のことを表現する場合に,いろいろな用字・用語を用いることで読者が誤解をしないようにするものです。複数の人が執筆したり,書き始めと書き終りまでの間にかなり時間がかかっている場合は,用字用語のバラツキが出やすくなります。読者が理解しやすくするための統一方法を検討しておくとよいでしょう。

(3)文体の統一

基本は「です・ます」調,「である」調が混在しないようにするものですが,画一的に統一すればよいというものではありません。例えば箇条書き部分だけはその意図から「です・ます」調をやめ,「である」調に変更すると言ったような,使いわけの基準が必要になる場合もあります。

(4)漢字の使用範囲の設定

 用字用語と似た問題ですが、漢字表現の範囲は文章の性格にかかわるものなので,慎重に対応しなければりません。教育書やハウツーもの,啓蒙書などではその発刊の目的から漢字の範囲を,教育漢字(996字),当用漢字〔1850字),常用漢字(1945字)といった基準に沿って決めるのが普通です。これらの範囲内であれば新字体使用が原則となります。

 漢字に関しては,その他にも人名用漢字の新字体・旧字体・拡張新字体の採用・不採用・正字と俗字の区別など内容と関連して難しい問題がありますので,専門書または専門家に相談するのがよいでしょう。

(5)漢字の多様は避ける

 副詞・接続詞など一般的には漢字を使用しない方がよいものは,できるだけひらがなで表現します。

 例:度々→たびたび,概ね→おおむね

(6)旧かな遣いか,新かな遣いか

 いまでは旧かな遣いはめったになく,だいたい新かな遣いと考えてよいでしょう。総括指定中にも新かな・旧かなの区別をすることが少なくなってきています。高齢の方の原稿でも新かな遣いにおきかえるのが一般的です。

(7)数字表記の統一

 数字はタテ組とヨコ組では組み方が違ってきますし,本の内容・性質によってもアラビア数字・ローマ数字・漢数字を使い分けなければなりません。

また,同じ漢数字であっても一方式と十方式(例:「二一六」と「二百十六」)の区別などあります。これらの表記方法については,朝日新聞社や共同通信社,また日本エディタースクール出版部などから用字・用語や校正に関する本が発刊されています。これらは編集者にとっては必須アイテムです。

(8)単位記号の統一

 キログラムとするかkgとするか,ミリメートルとするかmmとするかといったことです。これも用字用語と同様に一貫性が必要です。本の性格(文芸書か理工学書か経済書か)によって最も適した表現を選ぶことが大切です。

(9)人名・国名・外来語・学術用語の統一

 日本人であれば旧字体にするか新字体にするか(澁澤榮一→渋沢栄一),外国人である場合は,日本語読みの表記にするか現地音によるカタカナ表記にするか(ベートーべン→ベートーヴェン)などを最初に決めておくと,あとは機械的に選択できるので楽です。

 外来語・専門学術用語などは,信頼ある専門辞典をみつけて参照をしましょう。また,どのような辞典が信頼されているのかを含めて専門家の意見も必要でしょう。

(10)原稿を読みやすくする

 手書き原稿では文字が一字一字マス目に記入されているか,促音・拗音(促音=っ・ッ,拗音=ゃ・ャ・ゅ・ュ・ょ・ョ)がハッキリしているか,挿入文章が明確であるか,改行箇所が明確か。改行の頭は1字下げになっているか,などのチェックを入力の前に行い,原稿に補助的に赤字を記入し表記を明確にしておきましょう。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)