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アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック] 2. 文字原稿のチェック

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック]

 

2. 文字原稿のチェック

昔は,文字原稿は直筆による手書き原稿と決っていましたが,印刷物やプリントの切り貼り原稿もあります。またすでに電子化された原稿にも,フォーマット,文字コードなどいろいろなものがあります。

1. 手書き原稿

手書き原稿は,作家であれ,記者であれ,編集者であれ,広告・広報マンであれ,人それぞれいろいろなかきグセがあり,昔から編集担当者や活字の文選工,写植のオペレーターは原稿を読むこともひとつの熟練が必要でした。入力,DTPオペレーターの読解能力に甘えて,原稿状態をチェックしないで制作現場にわたすのは混乱のもとです。いくら優秀なオペレーターでも,一般的なルールを逸脱した原稿ではトラブルのもとになり,結果的にはムダな労力を費やすことになりかねません。

(1)手書き原稿は必ず原稿用紙に書くこと

原稿用紙は一般的には400字詰が標準となっています。実際の字詰めにあわせた100字,200字,250字,300字または端数でもかまいません。ただし,1枚の原稿用紙に入る文字量が多くなると文字のマス目が小さくなり読みづらくなります。400字詰が限度となるのはこうした理由に加えて行と行の間をできるだけ余白を多く取ることで,書き込みができるようにするためです。

原稿用紙がなければ方眼紙で代替品とする場合もあります。

(2)原稿用紙にノンブル(連番)をつける

冒頭で原稿の重要さにふれましたが、原稿管理は厳重に行なわなければなりません。何でもないようなことですが原稿枚数の確認・チェックは非常に大切なことです。1枚でも欠けることのないようにする最低限のチェックが原稿の連番づけです。
また原稿の最後のページには,朱書きで「トメ」の印をつけ,このページで原稿は終わりですという相互の確認をします。この印は,お互いが確認をするようにしてください。このルールを徹底することで,最後のページに印がないときや連番が不連続のときは,脱落があることを即座に発見できます。

(3)基本は指定字詰で書く

原稿用紙には必ず5字(または10字)ごとに数字や太いケイで印をつけます。とくに雑誌用原稿では複雑なレイアウトが多いですから,1行の字数がすぐわかるようになっていると便利です。

書籍などのように,1点ごとに基本体裁が事前に決まっているものは,できるだけ仕上りの字詰で原稿を書いてもらうようにしましょう。全体のページ数や決められたページ数分に対する多少が容易にわかることから,作業前に原稿量の調節が可能となりムダな校正を減らせる場合もあります。

ページ数が多い書籍や定期刊行物に対しては,専用の原稿用紙を印刷しておく場合が多くあります。専用の原稿用紙ですと,編集やオペレーターの作業能率が向上するだけでなく,一目で他の仕事との区別がつくため大変便利です。

2. 電子化された原稿

ワープロ・パソコンのFD(フロッピィディスク)や電子メールで文字原稿が入稿されるケースの方が多くなっています。

磁気ディスクはたいへんデリケートで磁力を極度に嫌います。また,FDはプラスチック円盤の盤面に磁性膜を塗布した薄ドーナツ盤レコードのようなものですから衝撃には弱いものです。よくマニュアルなどに取扱注意が書かれていますが、それらに沿った扱いをし、持ち運びは必ずケースに入れましょう。

磁気媒体は紙ほどの信頼性はありません。万一のことを考え,原稿のバックアップ・コピーを取る習慣を持ちましょう。

磁気媒体は手書き原稿のように外観から中身を判読することはできません。原稿の内容に間違いが起きないよう,必ずラベルに用途,名称,ファイル名,作成日時,作成者などが記入されているかどうかを確認しましょう。

FDは一般にはMS-DOSのテキストファイルが主ですが、特定機種・特定ソフトでしか読み書きできない場合は,コンバートをしないとDTP作業に使えないので,どのようなシステムで入力したのかを確認しておかなければなりません。

 電子メールなどオンラインでの電子原稿の授受は、リアルタイムで受け渡しができるというメリットの他に、FDなどのようにフォーマットの互換性を気にする必要がないので、利用されることが多くなっています。

 電子メールは途中いくつも中継されて最終的な宛先に届きます。電子メールで日本語のテキストを扱うときは,メールソフトが8ビットのシフトJISコードを、7ビットのJISコードに変換して送り出します。この変換に問題があったり,伝送途中でJISコードに必要な制御情報が抜け落ちたりすると,受け取ったメールが欧文と記号の混在した文字に化けて読めない場合があります。

 また,電子メールの添付ファイルとして文字原稿を送る場合も、データをいったん変換して送信し,受信側でそれを復元するのですが、その変換方法にはいろいろな形式があり、やはり伝送途中のエラーやメールソフトの誤認識によって文字化けが起こる可能性があります。
このほか、インターネットのファイル転送プロトコルFTPを使って、サーバ経由で電子化原稿を授受する場合があります。FTPサーバへアクセスしてファイルの授受する操作はコマンド形式もありますが、今はブラウザなど画面で操作できるFTPツールを使うのが一般的です。電子メールは企業によっては容量制限をしている場合がありますが、FTPでは大容量でも問題はありません。

 いずれにせよ電子化原稿の中に、JISで定義されていない機種依存文字があると,異なる環境で再現できない場合があることには注意をしなければなりません。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [原稿チェック] 1. 原稿とは

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック]

 

1. 原稿とは

1. 原稿の性質

原稿は人間の頭の中にあった思考イメージを何らかの具体的な形で表現したものです。作成した本人の感性に基いた表現ニュアンスが含まれるという点で代替のきかないものですから,原稿すなわち貴重品という認識をもってください。

「優れた原稿は優れた印刷物」といわれるように,原稿の質と印刷物の質は連動しているものです。しかし,元原稿や生原稿のままでよい印刷物が出来るわけではありませんので,編集者やデザイナが整理・指定を行って印刷用原稿に整えることが必要です。

2. 原稿の種類

原稿といわれるものは、その処理形態によって文字原稿と写真・描画原稿,およびトレスを行う図表などの線画原稿の3つに大別されます。

一方で実際には階調原稿・版下原稿・透過原稿・白黒原稿…等々,○○原稿,と原稿の頭に名前をつける名称はたいへん多くあります!?

これは印刷の各工程ごとに処理方法の区分上で名称をつける必要にせまられたからです。つまり大きく3つに分けた名称以外は,非常に専門的・現場的用語といえます。

3. 原稿のチェック

元原稿のまま印刷・製版工程にのせても作業がスムーズにいかないばかりか、その後の修正の手間が多くかかることになるので、原稿作成者の意図や印刷物の対象・目的を理解して,製版または印刷用の原稿を仕上げなくてはなりません。製版・印刷用の原稿を作るための元原稿のチェックという作業は,後工程での仕事の流れ,仕上り品質,料金にも大きく影響する重要なポイントです。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [企画] 5. 造本設計の進め方

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]

 

5. 造本設計の進め方

5.1 造本設計の項目とポイント
企画段階での見積りに,最低限度必要な項目は決めておかないと,制作へ進むことができません。

 数値化して決定できるものもありますが,数値化できないものへの対応がポイントになります。
・数値化できるもの
(1)納期,(2)入稿日,(3)仕上りサイズ,(4)ページ数,(5)色数,(6)部数,(7)写真点数(モノクロ・カラー),(8)印刷方法,(9)イラスト・図版・表組・トレースなどのおよその点数,(10)総予算

・数値化できにくいもの
 (1)仕上り時のデザインイメージ(用紙,製本様式)
 (2)品質要求度

そのほかに,企画段階では不明確であるが,後の制作費用に大きく影響するものとして,次の項目があげられます。
 (1)文字原稿の状態
 (2)写真・イラスト原稿の状態
 (3)原稿訂正の可能性
 (4)編集上の処理形態,二次使用の可能性

企画の煮詰めは,明確な部分と不明確な部分を常に分けながら,とくに数値で表現できない部分を一つ一つ埋めていく作業をしなければなりません。出版社などの専門家の集団でなければ外部のアドバイザに社内情報や材料を提示して,専門知識の不足による不明確な部分を明らかにしていく努力をしなければなりません。この時点では個々の工程の単価が高いか安いかは無意味なことも多く,見積り先の単価提示に振りまわされないように気をつけましょう。

 〔あらゆる見本を作る〕
 企画段階は不確定要素が多いので,可能な限り実際に近い見本を作ることが大切な作業になります。
 例えば,
・イメージに近い本を集める
 ・見本組見本を作る
 ・イラスト見本を書く
 ・見本刷を作る
 ・束見本を作る
 ・原稿用紙や割付用紙の見本を作る
 ・予定進行表を作る
 ことなどです。
これによって,制作にかかわる内外の人々が仕上りイメージに近いものを見て役割分担できて,後工程でのトラブルを防ぎ,見積り金額と現場作業の整合性をもたせることができるものです。
また,このような努力をすることで,お互いの負担を軽減し,よいチームワークを保てることになります。

 〔企画の最終確認は上司と〕
 方針がある程度固まり,全体に作業開始と思われるところまでいったときは,最終決定権をもっている人の最終確認が必要です。印刷会社などに対しても営業マンが初級レベルの場合は,課長・部長に同席してもらって,各役割分担のキーマンと権限の流れについてお互いに確認しておくことは,トラブルが発生した場合に重要なポイントになるからです。

本づくりは編集プロダクションが介在することが多いのですが,編集プロダクションが得意先や印刷会社とうまくコミュニケーションができないケースがよくあります。そこを補完するためには節目節目で,作業の動きや了解状況を探っておくべきでしょう。
とくに一般企業の社史,会社案内・営業案内,商品カタログ,PR誌などの製作では,社長や事業本部長・取締役などの決定権者のチェックなどによって基本構想が変更になる可能性もあります。
さらに多くの場合,詳細部分は企画段階で決まらないまま動きはじめ,走りながら固めていきます。印刷物作りがビジネスと連動しているのでやむをえないことですが,それだけに最新の状況についてよく把握しておくことが,大変重要です。

5.2 造本設計の実際
企画イメージを具体的に造本設計をしていくためには,次のような項目内容について具体的に決定する必要があります。
 (1)判型
 (2)本文(基本体裁・写真・イラスト・グラフ・表組など)
 (3)表紙など(表紙・扉・口絵・カバーなど)
 (4)広告の量(広告のページ数,広告制作の有無)
 (5)ページ数・部数
 (6)製版(色数・アミ処理・ダイレクト刷版など)
 (7)印刷(軽印刷・枚葉機・輪転機)
 (8)製本(中トジ・無線トジ・上製本)
 (9)用紙
 (10)梱包・納品・搬入方法
 (11))納期

 〔造本設計の決定〕
 第一に編集方針に合った造本のかたちを検討することです。そのためにはいろいろな出版しようとするものの類似書や企画イメージに近い印刷物を集めて誌面イメージを検討します。
 検討の方法としては,予想される編集企画内容のページを,既存の印刷物データを利用して見本(ダミー)を作ってみることです。このようにして作った見本それぞれについて,品質,コストや作業性を検討します。

ときによってこの見本づくりは,数回,数十回と繰り返され,企画・編集会議での検討と同時に,実際にテスト版・パイロット版として見本を本格的に印刷する場合もあります。
 雑誌のテスト版・パイロット版は,広告主へのPRや書店・取次店へのデモンストレーションも兼ねており,創刊号発行までの間に数回発行されることもあります。このような準備は書籍でも辞書や百科事典・全集本・シリーズ本などの場合には,よくあることです。

このような実作業を通じて,出版の計画が決定されますが,この段階で,印刷関係のスタッフとして営業マンをはじめ,技術者やプリンティングディレクターが加わり,造本コストの合理化の方法や原稿の作り方を話し合えば,編集・造本の仕事がうまく進められ,安くて早く,よいものが作れます。そのためには,印刷会社が企画段階から編集の参考になるような各種の資料を提出してくれて,編集側の希望を具体的に考えやすいようにサポートを依頼することが大切です。

 〔企画・制作の総合管理〕
 企画イメージがしだいに固まり,具体的な編集方針(ポリシー)が決りますと,その編集方針に基づいて造本計画から編集内容,制作・進行・納品までをすべて管理するディレクターが必要です。
 一般に企画・編集内容は,出版社であれば出版部長や編集長であり,誌面構成上のデザインについてはアートディレクターや制作部長,印刷会社のプリンティングディレクターとよばれる人々によって管理されます。
 一般企業や非専門家である場合は,窓口担当者や編集プロダクションの編集者などと上手に連係しながら,印刷会社の営業マンがかなりの部分をリード・管理することもあります。

ディレクタの主要な仕事である総合管理とは段取りと手配です。

3. 見積り準備
 一般企業のPR誌や会社案内・商品カタログ・社内報などでは,企画・デザインから印刷・製本までが外注で,それらの見積りが必要になります。仕事の質やかかるコストはもちろん,会社の力量,信頼にも大きく影響します。企画・デザイン分野の料金は,デザイナの知名度や実績,内容の特殊度・難易度などによって大きく変ってきますので,外注先は内容別・キャリア別などできるだけバラエティーに富んだ協力会社を確保しておいて,いろいろなレベルの要望に応えられるようにする必要があります。

 〔見積り項目〕
 企画・デザインの見積り項目として大きく分けますと,次のようなものがあげられます。
 (1)調査
 (2)企画
 (3)ディレクション
 (4)コピー
 (5)イラスト
 (6)デザイン
 (7)撮影
 以上の詳細な内容は別記事を参照してください。このような仕事がどの印刷にもあてはまるというわけではありませんが,作業は各々の専門家が分担して行います。ディレクタはこれらの専門家および企業に依頼手配を行い,印刷物依頼側との仲介役を果たさなければなりません。広告業界では,企画を総合的に管理できる能力をもったAE(Account Executive)という人がいますが,印刷業界ではプリンティングディレクタがまさにAE的存在です。

5.4 原稿と制作環境
 印刷物の固定費コストの多くは,前工程(プリプレス,DTP)でかかりますので,手早く仕上げる必要があります。そのための工夫が大切で,専門の制作環境を作ったり,専用のレイアウト用紙を用意したりすることによって,あとでの訂正を減らすことができ,コストや納期を改善することができます。例えば表組のために表組用原稿用紙とかエクセルのテンプレートを作って,表組の体裁を考えながら原稿を作れば,編集担当者もDTP現場のオペレーターも手間が大幅に省けますし,レイアウト上の表組のスペース取りもしやすくなるわけです。

 〔原稿ルール〕
・基本組と同じ字詰のテキスト入力をする。
・本文用と図表類やキャプション用のマーカやタグを決める。
 以上のような原稿ルールを作り、関係者に合理的ワークフローを準備してもらいます。

 〔レイアウト用紙〕
アナログの時代からお互いに合理的に作業を進めていくためにはレイアウト用紙が必要不可欠でした。最近は,DTPでマスタページ,テンプレートなどの段取りができるので、いろいろワークフローに連動した専用のレイアウト用紙を用意することが作業効率を改善させます。
レイアウト用紙の条件は次のようなものです。

・基本組の位置表示が正しくしめされていること。
・仕上り線・製版線が表示されていること(裁ち落し分は3~5ミリ)。
・見開き2ページ建てであること。
・グリッドは淡くて見やすい色(セピア・青・緑・グレーなど)であること。スミなど濃い色は製版指定・レイアウト指定とまぎらわしく,誤解のもとになります。
・用紙は厚からず薄からず(四六判70kg前後)
・上質紙などで,書き込みしやすい紙質であること。(コート紙・アート紙は不可)
・平トジ,無線トジなどでノドが裁ち落されるものは,ノド部に6ミリの落し分を見込む。
・中トジでかなりのページ数になる場合は,外側の仕上りと最も内側の仕上りでは最終仕上りの左右の大きさに数ミリの差が生じます。内側へいくにしたがって小口の仕上り線を少しずつ内側へずらしていくための基準線を束見本によって計算しておきます。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画] 4. 見積りの考え方

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]

 

4. 見積りの考え方

いろいろな基本的な見積りの考え方はひととおりではなく,以下のような方式があります。どのような考え方で見積もり計算をするのかは,各々の印刷会社によっても,印刷物によっても違ってきます。

4.1 総額方式
出版計画全体のなかから総予算をあらかじめ決めておく方式です,その範囲内ですべての費用を割り振り,各費用項目の積み重ねで総額がオーバーするときは,造本内容を変えます。
この方式の場合は,得意先も印刷会社も総額が変らないという安心がある一方で,造本作業の途中で何回か総額見積りをしながら造本仕様を決めていくため手間がかかります。組版や製版の段階で文字訂正などが予想以上に多くなると,印刷以降の仕様に大きな変更をきたすことにもなります。
 出版の経験があまりない場合や,自費出版などの場合は,このような見積り方式になることが多いものです。また,出版物自体が商品でない場合などで,全体の予算枠を絶対にはずせないケースなどでもこの方式をとらざるをえません。

4.2 ページ数×部数×単価方式
報告書などのように,編集内容や判型・製本様式などがいつも固定化している文章中心の簡単な組体裁のページ物については,「ページ数×部数」で総額を概算することができます。過去の経験によって,印刷会社と相談して単価を決めておけば,印刷物の企画の段階で,毎回詳細に見積りをしなくても概略費用を知ることができます。
とくに部数が1,000部以下の場合,印刷料金や製本料金が最低料金として固定的な金額になりますので,総額はページ数に比例するようになり,即時に計算できる利点があります。研究所・大学・団体などの報告書・紀要・名簿などに活用できます。

4.3 工程段階別総額方式
一般に最も多く使われる印刷物の見積りの形式で,下記のような各工程別の料金を積みあげる方式です。
1.編集・レイアウト料金
2.版下・写植料金
3.製版料金
4.印刷料金
5.用紙料金
6.製本・加工料金
7.営業費
この場合は各工程内の明細はなしにして,各工程別での総額だけを把握するもので,どのような振り分けになっているかを理解すればよいというものです。

4.4 工程明細別単価×数量方式
常時各種の印刷物を発注し,その内容も多彩である場合に使われます。印刷会社でも受注金額は常時社内の基準料金と対応して決めるものですから,得意先に提出するしないは別として,各工程別の明細見積書は必ず作られています。
 見積り項目は,各印刷団体などの資料や経済調査会調べの「積算資料」,また業界出版社・新聞社などで発行している資料を参考にするとよいでしょう。一般的な見積り明細項目は次のようになります。

[製作概要]
1.製作部数
2.判型
3.ページ数(色数別)
4.用紙
5.製本・加工様式
[造本内容別見積り]
1.レイアウト料金:ページ数×単価
2.トレスなど版下料金:点数×単価
3.文字処理料金:ページ数×単価(文字数×単価),+特殊組版代
4.製版料金:版数×単価,+レタッチ・合成などの料金
5.校正料金:色数×単価
6.刷版料金:版数×単価
7.印刷料金:(通し単価×通し数)×版数(台数×単価)
8.製本料金:部数×単価(場合により丁合い・折数などの明細)
9.用紙料金:用紙種類(質・寸法)×数量(連量)×単価
10.運賃・発送費:実費
11.営業費・消費税など
以上のような見積り明細が一般的ですが,実際の計算ではもっと細かくなります。

4.5 総製作費とコスト変動要因

 印刷物を作る場合の総予算額はいろいろな要素で変ってきますが,ページ物の場合,次のような項目がコストの変動要因となります。
 (1)ページの内容によるもの
 ・組体裁(表組,文字の書体,級数の多様性)
・カラー製版の複雑さ,カラー点数
・写真の点数や切り抜きなど
 (2)判型
 (3)ページ数
 (4)部数
 (5)用紙の種類
 (6)製本・加工の様式
 以上の項目のうち(1)・(2)・(3)は部数に関係のない固定費ですので,1,000部程度の場合は部数を少し減らしても総額はほとんど変わらないことになります。しかし,ページ数を減らせば総額がはっきりと減ることになります。

また逆に部数が10万部以上のような場合には,部数を減らせば総額が目に見えて減ります。判型を変えれば,当然総予算は大きく変ってくることになります。
1部当たりの原価でみれば,当然大量に作れば総額は大きくなりますが,1部当たりの原価は大幅に下がります。
この辺のバランスをどう考えるかは,印刷物の使い方,生かし方とあわせてよく考えなければなりません。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [企画] 3. 発行元と「本づくり」

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]

 

3. 発行元と「本づくり」

企画内容でどのような内容を盛り込むのかというコンセプトが決まると,次はその中身にふさわしい容姿である「造本」設計の企画に取りかかります。
 造本について,岩波書店で造本担当を長く勤められた経験のある造本家藤森善貢氏は,「一口でいうならば〝本づくり〟のこと」であると述べています。少し狭義にとらえると広辞苑には,「印刷・製版・製本および用紙・材料などの製作技術面に関する設計・作業」とでています。

3.1 発行元
ページ物)を発行するところは,次のように分けることができます。
 (1)出版社・新聞社・企画宣伝会社(マスコミ)
 (2)一般企業
 (3)官公庁・各種団体(社団法人,財団法人,政治・宗教団体)
 (4)大学・研究所,その他教育機関
 (5)その他(個人・ミニコミ・自治会・市民グループなど)

 一般的にプロ集団といわれるのは,(1)の出版社・新聞社・企画宣伝会社のいわゆるマスコミグループです。大手企業ではかなり分業化が進み,外部の製作スタッフの力が大きいですが,本づくりの専門のスタッフが居ます。

 (2)~(5)のグループの一部には,専門の出版社や出版部門,スタッフを設置しているところもあります。しかし多くは,非専門家集団と考えてよいでしょう。そのようなところでは,編集制作を専門に請け負うプロダクションが代行することが多くあります。編集プロダクションは,出版社・新聞社の仕事はもちろん一般企業・各種団体など幅広く活動しており,編集制作の現場では大きな役割をはたしています。
 出版物の種類・バラエティーは,出版社・新聞社グループよりも,むしろ(2)~(5)の非専門家グループの方がより多彩で,かつ質的レベルも多様であるといえます。

 高度な専門知識は各々の専門化(デザイナ・エディター・校正者・アートディレクターなど)にまかせればよいのですが,ベースになる印刷技術の知識をもっていなければ,全体の制作進行がうまくいきません。その役割は,窓口となる印刷営業マンの専門知識に負うところが多いのです。の制作スタッフとして印刷営業マンがかかわるこもありますが,印刷会社のどこでもが,すべての印刷が得意だということはほとんどありません。総合的名判断が必要な場合はプリンティングディレクターという立場簿人が全体の指揮をすることがあります。

3.1.1 出版社・新聞社・企画宣伝会社の場合
(1)単行本
 中堅の出版社でも,単行本と雑誌では社内体制が違うのが普通です。単行本は企画から執筆・造本・編集制作・発売までに時間がかかり,造本途中の変更がある場合が多いものです。編集作業にはその本を担当する専任の人があたり,文字校正やレイアウトなどはそれぞれの専門の人が,編集者の指示にしたがって仕事を進めていく分業体制になっています。

 見積りを把握するには,造本上の細かい項目の単価を基準を知っておくことです。企画内容によっていろいろ造本体裁が変っても事前に概算できますし,造本完了後の金額も印刷会社の双方ですぐ納得できる額を算出できます。しかし,辞典・データブックなど特殊な処理が必要な本の場合は,見積りの仕方は等価基準にはなりません。

(2)雑誌
レイアウト上,雑誌は単行本よりも複雑な造本内容になります。しかし一方で,雑誌は定期発行されるものが多く,造本内容がある程度パターン化されていることが多いですから,見積りがしやすいという面もあります。

 雑誌は,執筆者,編集者,レイアウター,校正マン,造本・進行担当,用紙などの資材担当,広告・販売担当など,多くの担当者によって作られていますが,出版社によってその組織体制はまちまちです。編集局・制作局・広告局・販売局・校閲局というように分業化されているところもあれば,ひとつの部門でいくつもの仕事を担当しているところもあります。最近では雑誌別に,編集・制作・広告・販売とタテ割のトータルマネジメント方式を採用するところが増えているようです。

 造本料金の見積りを担当する窓口には,一般に制作部門の造本・進行担当の人があたり,編集長と社長が加わり決定することになります。
 印刷会社に対して品質を求めるのは当然ですが,見積もり金額のほかに,制作進行のスムーズさ,納期の安定も重要な要素となります。出版社にとっては見積り金額以上に,印刷会社のシステムと実績が大きな決定要因となるのです。ですから印刷会社と出版社の協力によって,お互いに合理的なシステムとなるよう努めることが必要です。

3.1.2 一般企業の場合
本を作ることがその会社の本業ではなく,基本的にはあくまで本業を発展させるための道具としの印刷物になります。したがって本づくりのために,社内に専門の人を養成しようという考えは少ないのが普通です。むしろ造本の元材料だけを編集プロダクションや印刷会社に渡して,あとは専門家である企画会社・編集プロダクションや印刷会社にまかせるという方向になっています。
また最近ではDTPの普及で,社内でも手軽に作業できるようになりました。ここをうまく自力でこなせば固定費が安くて早い印刷物を作ることができます。
しかし,本当にどれだけ安くできるのかが判断できる知識がないと,かえって,「やはり印刷会社に頼んだ方が,早くて,品質が高い」というようなとも起こります。内製化をするにも専門家からアドバイスをもらって計画作りをする必要があります。

3.1.3 官公庁・各種団体の場合
あらかじめ予算の決められていてその範囲内での,最も安い本づくりを原則としていますので,原則的には競争入札(コンペティション)が行われます。競争入札では,見積りをするための造本内容が,詳細に示されることが多く,本の誌面内容によっては,ほぼ同内容の見本が用意されている場合があります。内容がかなりグラフィカルでクリエイティブな要素の多い場合は,企画・デザインと印刷は別の会社の作業となることもあります。

 印刷の費用は,その造本仕様にマッチした設備のところと,そうでないところでは大きく変わる場合があり,個別に入札が行われます。
 各種団体でも大組織の場合は,出版社と同じような組織になっていることもありますが(出版部門が組織として独立しているようなところもあります),一般的には,出版社のように細かく専門別の担当には分かれないで,少ない人数で兼任担当しているところが多いようです。

3.1.4 その他,個人出版などの場合
最近は自分史ブームで,自分の足跡や,書きためた俳句・和歌・詩を1冊の本にしたいという,いわゆる自費出版が盛んです。
 自費出版物を,発注する人は,造本知識の少ない素人がほとんどですから,編集・レイアウトから製本,ときには販売までの相談にのれる印刷会社に相談するのがよいでしょう。
 当然費用が十分にあれば,編集・デザインなどを編集プロダクションにまかせれば造本上は立派なものを作ることは容易です。ワープロ・パソコンの普及や印刷関係の機器類が進歩しても,企画編集面のノウハウが不足していると,制作上のトラブルは多くなりがちです。

〔自費出版で多いトラブル〕
・修整・訂正にお金がかることを知らない 。
・できあがり後の,自分のイメージと違うことへの不満。
・製作費の支払条件の変更。
・販売に関する認識の違い(製作者側が販売ルートを開拓してくれる約束で発注したと主張する)。
・文字校正のミスに関する責任の認識の違い(最終チェック者が発注者本人であっても字を誤ったのは印刷会社であると主張する)。
 以上のようなトラブルは自費出版だけのことではありませんが,印刷発注の商習慣をお互い よく把握に努めるのが円滑な作業の基本です。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画 [企画] 2. ページ物の費用

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]

 

2. ページ物の費用

ほとんどのページ物は多種少量商品ですから,内容も費用も一点一点違ってくるのは当然ですが,共通した項目もあります。

2.1 内容と体裁

企画を大きく分けると,中身に当たる情報内容と,容姿にあたる造本・体裁とがあります。情報内容は,目次,著者,印税,原稿料,企画目的,内容レベル,読者,原稿枚数,脱稿日,発刊日,定価などです。一方造本・体裁として決めるべきは,組体裁,版型,部数,写真,頁数,表紙デザイン,印刷方式,製本方式,図版,表組などのスタイルです。

本そのものにも箔押し・製函・しおり・表面加工などいろいろな工夫・装飾があり,当然それなりの費用がかかります。

2.2 制作にかかる費用について

ページ物の製作にかかる費用を大雑把にあげると,次のようになります。

 (1)企画・編集・デザインにかかるにかかる費用→用紙(材料)料金
 (2)原稿(文字・イラスト・写真)を依頼したときにかかる費用→原稿料
 (3)レイアウトや文字の組版にかかる費用
 (4)写真・イラストを仕上げる費用
 (5)刷版・印刷にかかる費用
 (6)製本にかかる費用→用紙(材料)料金
 (7)印刷するための紙や材料にかかる費用

以上が大雑把な費用項目ですが,実際にはもっと細かい経費項目・見積り項目があります。つまり各々の工程の費用の積算で全費用は決るわけです。つまり,どのような工程を経るかということと費用が対なので,工程を知って,企画内容に最もフィットした造本設計をしなければなりません。

以上の各費用項目のうち,(1)企画・編集・デザイン,(2)原稿料,(3)レイアウト組版,(4)製版のグループは固定費で(5)印刷,(6)製本,(7)用紙・材料のグループは,変動費であり両者の性格は大きく異なります。

印刷の目的は大量複製ですが制作工程のなかで刷版以前は一品生産になるので,原稿準備からオリジナル原版のための固定費になります。この部分を誰がどのように行うかで,小部数印刷の費用は大きくかわります。それに対して大量印刷をする場合は変動費の印刷・製本代によって総費用が大きく変ってきます。

印刷の製作総費用が決まっている場合の費用と内容のバランスのとり方は,(1)変動費を下げる(つまり部数を減らす)か,(2)固定費を圧縮するか,の二者択一なわけですが,(2)の固定費の圧縮は内容(情報内容と造本)に大きく影響し,出版企画に変更をきたすものです。よくわからない時には印刷会社に,プロセスと費用の的確な提示,アドバイスを求めることが必要です。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ページ物印刷物企画[企画] 1. ページ物

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]

 

1. ページ物

一般的に「本」のような印刷物はページ物と呼ばれ,その内容・目的・形態によってさまざまに分類されています。

企業企画物
  PR誌,社内誌 
 
社内営業
 
  マニュアル,取説
  カタログ,パンフレット
商業出版物
  雑誌
  ムック
  書籍

さて,これらのページ物を製作するには,さまざまな工程がありますが,一般的には次のような流れになります。

(1)企画:どんな内容で,誰に対して,いつ,どのように,といった出版計画全体を決める作業。

(2)編集:企画方針にしたがって,取材・原稿依頼・執筆・写真収集・原稿整理・組版指定など印刷物に対する内容づくりのための諸作業。

(3)レイアウト・デザイン:誌面を構成する文字と写真(イラスト)の配置を決め,表紙から扉・奥付までの全体の流れを作る。

(4)文字組版:決められた文字組の指定(組版総括指定)にしたがい,組版作業をする。

(5)校正:組版作業を終えた文字は,文字校正(初校・再校・著者校・責了など)を行ない,誤字・脱字等をチェックする。また写真・イラストは色分解の後に色校正が行われる。

(6)フィルムと出力する場合は1色ものでは青焼き校正,4色(多色)ものでは刷りを校正し,最終チェックをする。

(7)刷版・印刷:校了となったフィルムを印刷用の版に焼き付ける(オフセット)か,校了データから直接CTPで刷版の出力をして,印刷機に取り付け,印刷する。

(8)製本・加工:刷り終った(刷了)印刷用紙(刷本)をページ順になるように折り,重ね合せて表紙を取り付け,指定の大きさに断裁,仕上げる。

ページ物を製作する場合の基本にして最大の作業は,本の「内容と費用」を決めることです。内容と費用の関係は表裏一体のものですが,内容先行型か費用先行型かはケースバイケースで企画途中でもしばしば変更があるものです。しかし実際に製作にかかって,支払うべき費用が発生してから変更するよりも,なるべく前段階で十分な検討を行ったほうが,最終的には速く安く印刷物を作ることがが出来ます。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

5.その他の鋳造機を理解する

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:鋳造機の機能と特徴

 

5.その他の鋳造機を理解する

大きな活字やジョスまたはマルトのような大形を鋳込むには,手動機には大台と称する大物鋳造機がある。各自動鋳造機においても,付属設備をつけて大きな込めものを鋳込むことができる。しかし,そのためには機構が大きくなるか,特別の装置をしなければならない。鋳造にあたっては鉛の温度を下げて(320℃)回転をおそくし,たとえば28ポ(約1号)の場合には1分間20本くらい,42ポ(初号)は10本くらいまで下げなければならない。

 また,特殊な機械として数表モノタイプが発表されている。この機械は数字専用のさん孔機と鋳造機の2基から成り立っており,さん孔されたテープを鋳造機にかけると49の母型を選出して数表を組み版する。1分間120本以上の鋳造が可能といわれる。おもに新聞社で利用している。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

 

4.インテル鋳造機を理解する

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:鋳造機の機能と特徴

 

4.インテル鋳造機を理解する

インテルの鋳造は,細長い鋳型にいちいち鉛を流し込んでつくるか,または鉛を1枚の板に流して断裁し,それを仕上げるかであったが,昭和24年12月に小池製作所がラドローのエルロドをスケッチしてつくったストリップキャスター(▼図4-10)を発表している。

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鋳造範囲の厚さは1ポイントから42ポイントまで,長さは無限であるが,切断装置がついていて,指定の寸法に仕上げることができる。また,長尺のものを自動的に切断する付属器も発表されているから便利である。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

3.自動鋳植機を理解する

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:鋳造機の機能と特徴

 

3.自動鋳植機を理解する

活字を自動的に鋳造すると同時に植字をも行なう機械を自動鋳植機という。英米では1822年ごろから植字の機械化を研究していて,鋳造を同時に行なうようになったのは1900年末ごろからである。

1)モノタイプ
今からおよそ70年前,アメリカ人トルバート=ランストン(1844-1913)が1885-97年に発明,完成した。原理は自動ピアノからヒントを得たものと伝えられる。巻き紙に穴をあけたものをピアノにかけると,自動的に音楽が演奏されるのと同じ形式である。今日一般に普及している型は,その後の後継者の研究と努力によって完成されたもので,原理は当時とはまったく変わっていない。現在の形式はすでに50年を経ているといわれ,機械の精度・強度は驚くべきものがある。機械はキーボード(▼図4-2)

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とキャスター(▲図4-3)の2基に分かれ,機械の磨耗箇所の部品を交換することによって,すぐれた性能は少しも衰えず,長期の使用に耐える。モノタイプは1本(mono-,ひとつの)ずつ活字を鋳込んで(▼図4-4)組み版する(▼図4-5)。

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その点,1行ずつ鋳植するライノタイプ(Linotype,1行のタイプ)とはおのずから性能が異なる。ライノタイプはおもに新聞雑誌に利用され,モノタイプは書籍の組み版が主である。わが国には現在30台近くが輸入されている。(▼図4-6)

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(▼図4-7)
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2)邦文モノタイプ
大正9年ごろ,杉本京太氏が発明したといわれる。初めは縦形で,前面に大きな母型盤があって,母型盤を手で前後左右に動かして,所要文字を鋳造部の鋳口のところへもっていき,圧着させると文字が1本ずつ鋳込まれ,搬送されて組み版ができる。一時は大量に生産されたが,文字のよりひきの不安定,母型損耗などの欠陥が顕著なため,一般的に普及するに至らなかった。しかし,昭和22-23年ごろになって,ふたたびモノタイプの研究が盛んになり,製造業者も2-3を数え,今日の邦文モノタイプの基礎を築いた。この風潮を刺激したのは,いうまでもなくベントン型彫刻機のわが国における製造である。この彫刻機の原型は,終戦まで3台しか輸入されていなかった。大蔵省印刷局・三省堂・築地活版製造所(後に凸版印刷に移る)の3者で所有していたものを終戦後スケッチして製造したのが最初で,津上製作所が本格的に開発して今日の普及をみた。
  手動式邦文モノタイプは,母型盤も円筒式と平盤式とがある。現在,全自動式の機械が新聞社専用の域から一般印刷業者の工場へ普及されつつあるが,機構的な弱点や製品の精度など,まだまだ研究の余地があり,特に活字地金の検討が不十分のように思われる。
  また,新聞社以外,一般印刷工場用の全自動組み版機は,昭和41年6月小池製作所が開発した。ランストンのモノタイプの圧搾空気機構が電気的な処理に変更されている。キーボードで指定の文字をさん孔すると,同時に外字の不足文字が挿入符号によって記録され,別に用意されたケースから文字を選別しておく。このテープをキャスターにかけると,文字が選別されて鋳造,組み版を行なう。別に拾われた外字は,挿入チャックに並べることによって解決する。収容字母数は,使用度の高いゴシックや約ものなど480字,明朝1120字,合計1600字で,これ以外に外字として2520字を用意している。

3)ライノタイプ
 ライノタイプの構想は,1870年ごろ解版の機械化からヒントを得たといわれる。マーゲンターラー(Ottomar Mergenthaler,1854-99)が現在のような型を完成したのは1890年と記録される。ライノタイプは,上部に母型庫があり,鍵盤のキーを押すと母型が1本ずつ落下してきて手元に並ぶ。1字を打ち1語がそろうとスペースバンドを打ち,1行いっぱいになるとスペースバンドを突き上げて行をそろえ,鋳型に接着して1行を鋳込む。スペースバンドはくさび形の薄い板で,これを語間に入れて下から突き上げるから,語間が平均に開いて行の左右をそろえる。鋳込みを終えた母型は上部の母型庫に搬送され,母型につけられた溝によって分類されながらそれぞれの母型庫に戻される。これを繰り返して組み版する(▼図4-8)。

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鋳込まれた文章は1行の塊(スラッグ)になっているため,訂正がある場合には,1行を打ちかえなければならず,モノタイプのように1本ずつ差しかえることができない。しかし,モノタイプのように2基が1セットになって鋳植されるのとちがい,1基ですべて植字と鋳造を行なうので,スピードの点からも新聞雑誌むきの鋳植機といわれている。
  ライノタイプがわが国にはいったのは明治36年印刷局がはじめてである。英字新聞社には随時はいっていたが,一般の印刷所にはいったのは三秀舎に英国製がはいったのがはじめてである。

4)インタータイプ
 ライノタイプと同型同機構で,インタータイプ機がある。これは1912年アメリカのリッダー(H.Ridder)がライノタイプの特徴と自己の主張を採り入れて設計したもので,その性能はほとんど同じといってよい。

5)ラドロー鋳植機
アメリカのラドロー(Ludlow)会社の製造する欧文の見出し語の鋳植機である。特に英字新聞社にはなくてはならない機械である。母型を母型ダンスから手で拾ってステッキに並べ,鋳込み機にかけてスラッグに鋳込むので,操作が簡単で,大きな活字(96ポイントまで)が鋳込める。特別な措置をすれば128ポイントから240ポイントの特大活字も鋳込める。また,斜めの母型を用いればイタリック体(斜体)の見出しも鋳込むことができる。わが国でも,小池製作所が新聞見出し用の和文鋳植機を製造しているが,ラドローの形式を踏襲したものである。

 
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)