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ハイエンドからローエンドまで,トータルなプリンティングソリューションを提供

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:ハイエンドからローエンドまで,トータルなプリンティングソリューションを提供

 
リコープリンティングシステムズ株式会社 取締役社長 片山利昭氏に聞く

 

--貴社設立の経緯並びに事業全般についてお聞かせ願います。

 当社の前身は,日立グループのプリンタ事業関連会社である「日立プリンティングソリューションズ(株)」でしたが,2004年10月に親会社の(株)日立製作所が(株)リコーに当社の株式全数を譲渡したのに伴い,リコーグループの関連会社として再出発しました。
 当社の事業の主力は,高速・高耐久の連続紙やカット紙の基幹系レーザプリンタとローエンド・カラーレーザプリンタにありますが,これらは従来の(株)リコーのプリンタ製品群とはほとんど重複することなく補完するものであり,両方の統合で業界でもあまり例を見ないフルラインナップが構築されました。また,要素技術の相互活用,リコーグループの強みであるオフィス・ソリューションと当社の強みであるITソリューションの融合などで大きなシナジーを発揮していくことも期待されています。ここに(株)リコーが当社を吸収した狙いがあり,今後の成長戦略の基盤も確立されたと理解しております。
さらに,当社の側から見ても,リコーグループのワールドワイドの強力な販売網を通じて当社の製品を拡販できるメリットも大きいと思います。

 --製品ラインナップについてお聞かせ願います。

 連続紙では,超高速機(最上位毎分3万1000行)から中速機までをそろえています。そして,カット紙の分野では,いずれも高耐久の高速機・中速機が各種あります。このなかには,モノクロのほかに赤,青,緑のいずれか1色を印字できるスポットカラーDDP184(黒のみ毎分184ページ,黒+カラー1色毎分92ページ)というユニークな機種もあります。また,最近,月400万ページのプリントアウトにも耐え得る超高耐久機のEMP156(毎分156ページ)を出し,注目を浴びております。これらの基幹系プリンタについても,WindowsやUNIX環境でも使用できるようオープン化をどんどん進めています。
もう一つ,当社のユニークな製品として,1回のプリントで最大8部の複写が取れる漢字ドット・インパクトプリンタKDシリーズがありますが,日本や中国などアジア市場で根強い需要が続いています。
 一方,ローエンド・カラーレーザプリンタでは,現在カラー毎分8ページ,モノクロ毎分31ページ機が主流で,OEM向けも含め出荷が急速に拡大しています。

 --印刷会社への販売戦略についてはいかがですか。

 印刷会社の業務では,まだまだ圧倒的にオフセット印刷が多いわけですが,デジタル印刷も着実に伸びていくことも確かでありますので,当社としましては今後もこの市場に積極的に力を入れていきたいと考えております。オフセット印刷とそん色ないコストと印刷品質を実現していくこともさることながら,ITシステムと連動したワンストップ・ソリューションの提供や大量印刷に対応できる高信頼・高耐久も極めて重要でありますので,その点でも当社の強みが生かせると考えております。 --リコープリンティングソリューションスクウェアについてご紹介願います。

 基幹システム製品を始め各種プリンタの展示だけではなく,お客様に対しデモもできる場として今年1月に開設し,当社と(株)リコーで共同運営しております。お客様ご自身のデータをおもちいただいて,実際にお使いいただく場面を想定したテストも可能ですし,セミナー室も用意しておりますので,システムトレーニングなどにもご活用いただけます。

 --今後の展開を教えてください。

これからも,リコーグループとのシナジーを高め,高品質・高信頼・高耐久を基本に,さまざまなニーズにこたえられるよう,製品ラインナップの拡充に努めてまいります。特に,今後はカラーが重要でありますので,ハイエンド,ローエンド含め,カラーレーザプリンタの開発に注力いたします。
また,お客様にとりましては,何と申しましても,業務に最適なソリューションが肝心でありますので,IT+オフィスを念頭に,ソフト/ソリューションメニューの一層の充実に取り組む所存です。

リコープリンティングシステムズ株式会社
本社所在地:東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟21F
電話:03-5783-0622

 ■リコープリンティングソリューションスクエア
所在地:東京都港区港南2-16-1 品川イーストワンタワー4F
電話:TEL 03-6716-7781

 

(2005年7月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)
 

プリプレス・デジタルワークフローで利益確保を実現

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:プリプレス・デジタルワークフローで利益確保を実現

 

コニカミノルタグラフィックイメージング株式会社 マーケティング部長 大貫満氏に聞く

 

DTPが登場し、DTPエキスパートも普及し、現在のグラフィックアーツ業界ではプリプレス部門のアナログ時代を知らない人も多くなった。こうした流れの中で、デジタル技術により、RGBワークフローからプリプレスワークフローまでのトータルソリューションを提供している同社の今後の展開と業界への貢献度を伺った。

 --コニカミノルタグループのアマチュアカメラおよびアマチュアフィルムからの撤退が発表されて、グラフィックアーツ業界では、印刷用フィルムの販売が今後も継続されるのかという心配の声はなかったでしょうか。製品開発動向なども含めて伺えればと思います。

大貫 オフセット印刷機を導入されているお客様には当然印刷用フィルムをご利用いただいておりますが、今後も印刷用フィルムの供給は続けていきます。デジタル機器や材料の開発までを手掛けておりますが、従来行っていたデジタルカメラのRGBからRGBへの変換を、他社との提携により「Imagehandler Pro(イメージハンドラープロ)」を共同開発しました。色変換の精度を高めるべく、テストマーケティングからモニタリングを重ねて製品化しました。デジタルカメラのほとんどのRAWデータを受け取りRGB変換ができるため、グラフィックアーツ業界におけるデジタルカメラの普及にマッチしています。川上から川下に至るワークフローにこのシステムの導入をお勧めしております。
さらには、高解像度カメラの「Phase One(フェーズ・ワン)」では、最高3900万画素のハイエンドコマーシャルフォトに用いられており、RGBワークフローと組み合わせて利用できます。また、DDCPにおいては、「Digital Konsensus Pro(デジタルコンセンサスプロ)」がトータルで700台を超え、お陰様でトップシェアとなっております。材料も今ではマットとグローに加えてハイマットもそろえ、上質紙の校正にも対応可能です。雑誌の電子送稿やデジタル技術が一般的になった今でも、校正作業はやはり紙に出力しなくてはという声が多く需要があります。今後、ますます、Digital Konsensus Proだけで校了という段にまで及ぶため、製品開発をさらに進めてまいります。

 --SOHOのようなところまで、カラーマネジメントを普及させるにはまだ少々難がありますし、印刷会社でもカラーマネジメントまで行っているところは少ないのが現状のようです。個々の工程でのカラーマネジメントだけでなく、プリプレス関係の開発を手掛けてきた御社ではトータルなソリューションを提供できることは大きなメリットでしょう。DTP導入後に入社された方には、画面上だけで色をイメージしてしまい、網点になった場合がイメージできない場合が多いため、そうしたことが起こらないように網点校正の意味が出てきたと言えるのではないでしょうか。

大貫 網点系DDCPのトップシェアNo.1のDigital Konsensusが威力を発揮します。さらに高品質DDCPであれば、「Color-Decision(カラーデシジョン)Ⅱ」を販売しており、大手化粧品会社や自動車会社などの色に大変厳しいお客様の要求にも対応できております。両システムともカラーマネジメントを有しており、色に関するお手伝いも実際行ってきています。

 --設備投資に関する調査によれば、MISが投資の上位に来ております。かつては、工程が複雑で、刷版でも面付けでも各工程で利益が出ていたが、今ではデジタル化によって、工程が短くなってきているため、利益の出せるところが少なくなっています。そのため、MISによって利益管理をしていきませんと経営のかじ取りが難しくなってくるため、利益の出せている間にMISを導入しておくべきでしょう。

大貫 プリプレス生産性向上支援システム「Neostream Pro(ネオストリームプロ)」を販売しています。MISのようなソフトの価格設定は難しいが、今後業界で必要不可欠となっていくでしょう。

 --今では、製版業が印刷機械を導入しているケースがあり、印刷会社よりも利益を出しているケースもありますね。

大貫 最近では、デジタル印刷機にも手を広げております。大日本スクリーン製造と共同で、「TruePress(トゥループレス)344」の販売を展開しており、ロール版材対応で刷り出しが速く、色精度も高く小ロットにも対応できます。またコニカミノルタ製品としては、複写機技術を生かした「Pagemaster Pro(ページマスタープロ)」があり、こちらもカンプに加えて小ロット・バリアブルプリントができ、さらに高速性も備え一般のデジタル印刷機に比べて安価です。

 --ただ印刷会社があまり凝ったバリアブルの仕事を受注するのはハードルが高く、最初はパソコンの差し込み印刷程度のところから始めて簡単なDMに使っていただくことから提案していくほうがよいかと思います。御社製品は、外国製のデジタル印刷機と比べて日本のオフィス・スペースも考慮してあり実用的と言えますね。

大貫 販売の際には実際にお客様のデータを頂いて色合わせを行い納得いただいてから、ショールームにお越しいただいておりますので、実用性は実感いただけております。また、大型のデジタル印刷機と違って気軽に購入決定いただけることは利点と思います。

 --かつてデジタル印刷機は、インキの紙への付着耐性が良くなかったため、はがれたりして後加工に展開しづらいという問題がありましたが、その辺りはいかがでしょうか。

大貫 後加工として、圧着DMなどさまざまなサンプルをそろえて提案しておりますので、そうした問題はなく、むしろ加工性の幅広さを感じていただけると思います。
 印刷会社にとって、こうしたデジタル印刷機を導入してランニングコストを下げ、バリアブルプリントの提案で営業の方々が仕事を増やしていけば、利益の拡大にもつながります。また、UVインキ開発とインクジェットプリンタヘッド開発も行っております。他社でもこうしたシステムの開発をしておりますが、サイズ、解像度、スピードなどの性能面の開発は各社とも試行錯誤です。コニカミノルタでは独自のノウハウをもっているので、市場のニーズに合ったIJシステムを提供していきたいと考えます。

 --今まで印刷会社では設備を入れれば仕事が付いてきましたが、今では仕事量が減ってきているわけですから、設備を入れたからといって仕事が増えるというわけではありません。御社では、MISも含め各製品によって印刷会社のコスト削減によって利益拡大を実現し、仕事を生み出すというソリューションまでも提供できるというわけですね。

コニカミノルタグラフィックイメージング株式会社
 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2
 TEL 03-5297-5602 / FAX 03-5294-0240

 

(2006年5月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「コスト・エフェクティブ」をスローガンに顧客満足を提供

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:「コスト・エフェクティブ」をスローガンに顧客満足を提供

 

ミューラー・マルティニ ジャパン株式会社 代表取締役専務 宮崎靖好氏に聞く

 

 ポストプレスのトップメーカーとしてスイスに本社を置くミューラー・マルティニ ジャパンでは、「IPEX2006」でも注目されたように、印刷後加工におけるJDF対応製品を用意し、印刷前工程から後工程に至るまで一貫したデータ共有が可能な機械を生産し印刷全工程のJDF化を進めている。2006年1月に代表取締役専務に就任した宮崎氏に、日本の印刷産業における後加工の生産性向上の方策などについて伺った。

 --印刷後加工の生産性向上についてのご提案は?

宮崎 期待すべきは自動化の進捗になります。製本作業に代表される印刷後加工作業は、今日でも人手に頼ることの多い、言わば「労働集約型」になっています。経営的には省力化を進めたいが、それに関わる投資コストが利益としてかえってくるのか。そうした不安があるようです。今年のIPEXでは弊社は展示したすべての機械がJDF対応となりました。また、自動セットAMRYS(アムリス)を採用した機械も多種、提案いたしました。このAMRYSとJDFの組み合わせが、今後、日本においても、印刷後工程の生産性を目に見える形で改善してくれるのではないか、と考えています。

 --JDFとAMRYSで全工程が透明化されれば、クライアントにとってもコストや製本仕様までが発注の範ちゅうに加えられるようになるというメリットも生まれるのではないでしょうか。

宮崎 日本市場の特殊性について指摘を受けることがあります。日本では製本品質に過剰なこだわりをもっていないか、というわけです。中綴じ製本を例に取れば、針金はページをしっかりと綴じて外れなくて、先端がページにちゃんと収まっていればPLの問題もクリアできているはず。しかし、日本の現場では数冊の中綴じ本を見比べて、針金の位置や形状の変化なども問題になる。そうした品質規定にパスするために、機械で作った製品を人間が手に取って一つひとつ検査をしたり、それでいて、納期や単価は極めてシビア。結果として生産性は上がらず、製品のコストがなかなか下がらないという状況になっています。

 --透明化でクライアントとのコミュニケーションが円滑になれば、改善されるのではないでしょうか。

宮崎 発注元(クライアント)との円滑なコミュニケーションは、印刷製本業にとって、これからも大きな課題でしょう。特に品質、コストそれから納期という3つの要求について、タイムリーな連携が重要なテーマになってくると思います。弊社では昨年より「コストエフェクティブ」を展示会のキーワードにしました。コストエフェクティブとは「対費用効果」ということで、つまりはより良いROI(投資に対する見返り)を提案しますという考え方です。機械の稼動速度を上げて、生産性を向上させることが第一なのですが、それに加えて、AMRYSによる自動セットにより、「非熟練のオペレーターにも使いやすい機械にする」「セット間違いを減らして損紙を節約する」「プリセットで準備時間を短くする」といった目に見える改善が期待できます。また、JDFにより、稼動情報をリアルタイムで取り出し、コスト分析や進捗管理に利用できます。経営的に工場の稼動状況を透明化して、いつでもどこからでも仕事の状況あるいは結果を確認できることになり、これが、発注元との円滑なコミュニケーションに大いに役立つと考えております。ちょっと極端な事例ですが、近未来の印刷製本工場とは、自動化とJDF化の進んだ印刷工程に、印刷後工程を一貫ラインとして直結してしまうようなイメージをもっています。そのためのツールがJDFをベースにしたデジタルワークフローであり、欧米の弊社ユーザー25社くらいですが、既にそうしたラインの実用を試みているとも聞いています。

 --今後の日本国内での展望をお聞かせください。

宮崎 日本の印刷製本市場は過去約15年にわたり、あまり良い状況ではありませんでした。しかし、昨年からチラシや通販関係の商業印刷を中心に、しっかりとした回復基調にあるように感じています。出版においても、フリーマガジンの台頭、女性誌の厚本化やタイトル増加など新しい傾向が見られます。特にフリーマガジンは、そのターゲットが有料雑誌と異なり、年齢や性別、配布地域やコンテンツなどが非常に細分化されていますので、まだまだ増える余地があると考えています。また、フリーマガジンはそのタイムリーな発行と無料誌という特質から、印刷製本工程への要求は短納期と低コストが最優先されていると聞きます。素早く、安くというわけです。品質要求が低いということではないのでしょうが、すべてで最高のものを、という従来の常識を打ち破るものとしては、注目されていいのではないでしょうか。
 弊社の中綴じ機にスープラという高速機があります。毎時3万回転のスープラは、4m超という広幅のグラビア輪転機とセットで欧米で導入されており、印刷機の1回転でそのまま中綴じして冊子を製本してしまおうというラインになっています。究極の印刷製本直結構想ですが、こうした高生産性の印刷製本加工ラインが日本でも検討される日は意外と早いかもしれません。
 景気は上向き加減ですが、一方で、弊社顧客の共通のご意見として、印刷製本単価は下げ止まらないだろうというマイナスファクターが存在します。仕事量はある程度期待できるが、利益はちゃんと確保できるだろうかというのが、今年の最大のテーマとなるようです。そうした業界の現状にこたえるためには、「コストエフェクティブ」な機械を提供することに尽きると考えています。具体的には3つのポイントを提案しています。1つ目は、JDFとAMRYSの組み合わせです。日本においても印刷製本工場内のワークフローをデジタル化して透明性を上げ、コストの削減を図ろうという動きはますます進むでしょう。弊社の機械は今後すべてJDF対応となります。AMRYS機能もすべての機種で標準装備もしくは選択オプションとなる予定です。2つ目は、付加価値を作り出すことです。書籍、雑誌、カタログ、取扱説明書などといった紙メディアは今後ますます他メディアとの競合や共生が求められます。世界市場を対象に開発された弊社機械は先行する欧米などでの付加価値ノウハウが詰まっており、それらを積極的に日本で紹介していきたいと考えています。特に「環境に優しい本作り」というエコロジー精神は尊重されないといけないですし、それにこたえるための製本方法も提案していきます。例えば、PUR製本があります。反応型のPUR糊を使った製本ですが、繊維の短いリサイクル紙でも丈夫な本が作れ、また再生工程での糊の完全除去が可能なため、リサイクル性にも優れている製本方法です。3つ目は保守セミナーの日本開催です。従来はスイスにあるトレーニングセンターで定期的に開催されていましたが、昨年から日本国内でも始めました。事前保守を励行していただくことで、機械の故障を未然に防ぐことを目的にしています。見過ごされやすいのですが、機械の予期せぬ停止時間を減らすというのは、生産性向上のためにはとても安価で有効な対策なのです。

ミューラー・マルティニ ジャパン株式会社
 〒174-0042 東京都板橋区東坂下2-5-14
 TEL 03-3558-3131

 

(2006年7月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「世界が私を追いかける」~印刷技術をリードするローランド

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:「世界が私を追いかける」~印刷技術をリードするローランド

 

ディック・マンローランド株式会社 代表取締役社長 吉原正志氏に聞く

 

現在注目されている付加価値印刷は、オフセット印刷の後工程にオフラインで加工を施すケースが一般的である。しかし、最近では、オフセット印刷に加工技術を内製化させ、さまざまな加工を施して印刷物に新たな価値を付加する動きがある。加工のインライン化によって、工程簡略による合理化とコストパフォーマンスの向上を目指している。そのことによって、会社経営の合理化という付加価値も生まれる。ディック・マンローランドでは、この度世界初となるインライン方式による箔押しを可能とする最新鋭機「ローランド707LV」を発表した。本稿では同機械の可能性と今後の構想について伺った。

 --ローランドは、数多くの最新技術を開発されていることでも知られております。今回発表のインラインフォイラーについてご紹介願えますか。

吉原 最近付加価値印刷が注目されていますが、弊社では、印刷物への付加価値だけでなく「顧客に付加価値を創造してもらえるような」製品開発を目指しています。そして、この度、オフセット枚葉機では世界初となる箔装置のインライン化を実現しました。インライン箔装置は、インキの代わりに糊を置き、箔が通常の印刷ユニットの中で付けられるということが特徴です。それにより、非常に精緻な光り物、きらきら光る印刷物ができ上がります。従来の箔押しの工程は、オフラインで行っているため時間もコストも掛かっています。インライン化によるアプリケーションの広がりとしては非常に大きな可能性を秘めていると言えましょう。そして、こうしたインラインで箔の上に印刷できることが弊社の特許で、アジアでは日本でいち早く導入されています。

 --オフライン製品の代替としてだけでなく、印刷機での加工装置の応用は、貼り合わせるとか糊で付着させることで、箔だけでなくほかにも加工方法に展開がありそうですね。

吉原 どういうものに使えるかということはこれからの検討となりますが、オフライン製品の代替え用途としてはアドバンテージがあるものと思います。また、従来のアルミ蒸着に匹敵するものに仕上がるので、コストメリットを発揮できます。例えば、同じ平米単価で4分の1くらいになり、経済的にも非常にメリットがあります。今までは、ラベル関係をメイン用途として開発してきましたが、これからは出版物やパッケージなどにも展開していきたいと思います。箔は現在欧州のメーカーより供給されていますが、国内メーカーも開発中です。

 --箔そのものがフィルム状で、いろいろな絵柄や図柄を形成することが可能でしょうから、簡易な偽造防止のような意味にも使えるのではないでしょうか。また、箔押しのような物理的に押した形跡が残らないということは、ある意味で従来の箔押しとの住み分けになるようで、デザイン的には工夫の幅がかなり広がるようですが。

吉原 紙の表面加工に自由度がありますので、箔とアートとは異質分野ですが、セキュリティにも活用できるでしょう。それだけ、波及する範囲が広く、箔という考え方でいくのか、あるいは、出版物のインキと同じように考えるのかは顧客次第といったところでしょう。絵柄の一部に使うなど効果的なデザインが非常に重要になります。

 --デザイナーにはきっとアピールできるでしょうが、印刷会社と一緒に用途開発を行うという形が理想でしょう。また、最近では、パワープリンターズ・セミナーを開始されたようで、印刷会社を元気づけるような名前で興味深いですが、そちらについて伺えますか。

吉原 お陰様で、弊社では昨年以来非常に受注は堅調ですが、このパワープリンターズ・セミナーは、全国行脚で開催し、さらなる販売力アップを狙っております。3月から福岡、岡山、仙台、大阪、名古屋、東京と、縦断キャラバンセミナーを実施しました。一つには会社の元気なところを見てもらって顧客との交流を深めようということを狙っております。しかし、スポット的なアクションだけでなく、全国レベルのストラクチャル(構造的な)ものにしていくことを狙いとしております。そのために、既存の顧客に満足してもらい、さらに、新規の顧客に対して本当に付加価値を生み出せるということや、ローランドの機械を使えばもうかるということを分かってもらうことも重要なのです。
 今回、弊社のスローガンに採用した「世界が私を追いかける」というのも、内容的には、ローランドで十何年前から採用されていたいろいろな機構が、世界の最新の製品で使われ、世界の先駆け的存在であることを皆様に知っていただきたいという思いもあります。
また、以前より、弊社が提唱してきた付加価値印刷に対して、経営マネジメントの人がいろいろなアイデアを求めておいでになるので、弊社が提唱してきたことが、需要にかなった現象かもしれません。
また、メンテナンスを適切に施せば弊社の機械は耐久性も高く、生産力も高いため、機械の生産性という付加価値も含めて、経営的な面なども含めたソフトウェアの付加価値もあるということも知っていただきたいとの思いです。

 注:パワープリンターズ
本年より同社ではすべのイベントに「パワープリンターズ」というブランドを冠して活動を行っている。その第1弾が、この春に行った全国縦断型のパワープリンターズ・セミナー。印刷スクールのパワープリンターズ・アカデミーは随時開催している。直近のイベントが、インラインフォイラーを披露したパワープリンターズ・フォーラムである。

 写真(PICT0278.JPG) 代表取締役社長 吉原正志氏 インラインフォイラーを装備した枚葉菊全機ROLAND700を背景に撮影 写真 第1候補(01Customers.jpg) 第2候補(01Faces.jpg) 6月9~10日に行われたローランドインラインフォイラーについてのパワープリンターズ・フォーラムの様子。当日は、ローランド700シリーズへの関心の高さから、両日合わせて約500人の参加者が集まり大変盛況であった。

ディック・マンローランド株式会社
 東京本社 〒135-0051 東京都江東区枝川2-24-12
 TEL 03-3647-5411(営業)03-3647-5410(サービス)
マーケティング活動に関する問い合わせ先 TEL 03-3647-5418 / FAX 03-3647-8355

 

(2006年10月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

さまざまな環境変化に対応し、DICグループのシナジー効果でユーザーニーズにこたえる

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:さまざまな環境変化に対応し、DICグループのシナジー効果でユーザーニーズにこたえる  

 

大日本インキ化学工業株式会社 インキ機材事業部 事業部長 住田和海氏に聞く

 

大日本インキ化学工業は、世界のリーディングポジションをもつ印刷インキ、有機顔料をコア事業とし、4事業部門により幅広く事業活動を展開している。今回は、ヒートセットオフ輪プロセスインキの新製品「ニューアドバン・プレミア」の開発背景を含め、世界最大手のインキメーカーとしての考えを、ユーザー企業の声などを紹介いただきながら伺った。

 

――新しいオフ輪インキを8月に発表されましたが、背景などをお聞かせください。

住田 8月に弊社のメイン製品「ニューアドバン」の後継新製品として、「ニューアドバン・プレミア」を上市しました。
このインキは、弊社と子会社であるサンケミカルのシナジー効果を最大限に発揮して開発しました。
インキというのは非常にローカルな製品です。これまでは例えば日本に通用するインキが欧米では通用しない、逆に欧米で通用するものが日本へもってきても通用しないというような環境にありました。弊社は世界シェア約30%を誇る世界最大手のインキメーカーであり、同時に世界シェア25%を占める顔料メーカーでもあります。ワールドワイドに通用する技術力・インキ製造力を有しております。DICグループの総合技術力によって、業界初のノンVOCインキ「ナチュラリス100」やハイブリッドインキ「ハイブライト」など革新的なインキを提供してきました。今回はシナジー効果を主力のスタンダードオフ輪インキに大きく採用しました。

――「ニューアドバン・プレミア」の特徴をお聞かせください。

住田 一言で言いますと、『オフ輪印刷の品質をワンランク上げるような紙面品質を実現しましょう』ということになります。
具体的に申し上げますと、スミで言えば漆黒性を大幅に高めることにより、非常に紙面にメリハリが出て、その印刷物を見たお客様に対してアピールができる。それから、カラーのインキに関しても、光沢をアップして紙面全体の品質を上げたことが一番のポイントです。

――確かにオフ輪も枚葉も、印刷物としては実際はあまり変わらないような使われ方をされてきていますね。

住田 オフ輪印刷の高級化は時代の流れだと思っています。当然、インキとしては、生産性の向上に寄与する・安定性に寄与する部分、そういう点についても以前の「ニューアドバン」よりもさらにワンランクアップしております。

――インキを設計する上で、苦労されている点や工夫された点などはございますか。

住田 私たちというより印刷会社が今最も苦労しているのは、いろいろな用紙が出てきているということです。品質のあまり良くない紙もあれば、輸入紙などもだいぶ入ってきて、紙の表面が相当変わってきました。これまではさまざまな用紙にインキを使い分けしなければなりませんでしたが、「ニューアドバン」の時から『一つのインキでかなり幅広い紙に対応しよう』ということを追い掛け、現在かなり幅広い用紙に対応できるようになりました。

――インキを替えるのはそれほど効率が悪いということでしょうか?

住田 用紙を替えたらインキも替えなければいけないということは印刷作業上、大変なロスになりますので、その点を解消することは大きな生産性向上につながると思います。

また、一つのインキですべての用紙に対応できれば、廃インキの削減にもつながりますので、環境面からのメリットも大きいと思います。

――環境への配慮についても積極的に対応されていますね。

住田 インキの環境保全策は石油系溶剤の削減が一つの方向性です。ノンVOC化はその先端になりますが、主力製品では大豆油インキ化を図りました。昨年秋に枚葉プロセスの「フュージョンG」に続き、この9月には中間色インキ「Fグロス」もリニューアルし、大豆油化を実現しました。これで弊社のほとんどの主力ブランドが大豆油インキとなりました。お客様には安心してご使用していただきたいと思っております。

――ユーザーから求められることで最近多いのはどのようなことでしょうか。

住田 具体的なところでは、FMスクリーンをやりたいという要望が多くなってきました。FMスクリーンでは非常に網点のサイズが小さく、小さい点を安定して打たなければならない。しかもオフ輪の高速回転の中でキッチリ微小点を印刷していかなければなりませんので、それを実現できる着肉性や印刷の安定性が高いインキの提供も重要なテーマとして取り組んでいます。FMスクリーンのほかにも、お客様からはさまざまな技術的な要求があります。そういったユーザー企業の多様なニーズにこたえて、これからもより質の高いインキ製品の提供を行っていきたいと考えております。

――最後に、印刷業界についてのご要望などをお聞かせください。

住田 常々思っているのですが、インキについての規格を決めて、その規格の中に入ったら承認していただく、そういう業界挙げての標準化を進めていくべきではないかと感じております。インキを標準化することによって、’どこででも、だれにでも質の良いインキを提供できるようになる’、これはムダを省けるという点から考えて非常に大きなコストダウンにつながると思います。一企業の力ではなかなか難しいことですが、業界団体などで標準化のために旗を振っていただければ、メーカー側もその方向に進んでいくのではないでしょうか。
ただし、標準化のみに目を向けていればよいというわけではありません。各インキメーカーでオリジナル製品の研究・開発・販売は必要ですし、それによってインキの質の向上、ひいては技術革新が進められるのも事実です。標準化されたインキと新しい革新的なインキが併存して、どちらを選ぶか、それはお客様のご判断です。われわれインキメーカーにとって最も重要なのは、あらゆるニーズにこたえられる体制を確保することではないでしょうか。
現在インキ原料事情は価格の高騰など非常に厳しい状況にあります。弊社としては値上げをお願いしたいところですが、弊社単独では実現できない状況です。一企業だけの努力でコストダウンをすることは、もう限界に来ているような気がします。そのような状況からも、標準化を行うことでのコストダウンを業界全体で真剣に考えていくべきではないでしょうか。

大日本インキ化学工業株式会社
本社〒103-8233 東京都中央区日本橋3-7-20
TEL 03-3272-4511 / FAX 03-3278-8558

 

(2006年11月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「印刷がもっと元気になってくる」~世界の印刷業界にMADE IN JAPAN「アキヤマ」をブランド展開

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:「印刷がもっと元気になってくる」~世界の印刷業界にMADE IN JAPAN「アキヤマ」をブランド展開

 

アキヤマインターナショナル株式会社
副社長 延原 雅三氏に聞く

 

同社は、中国上海電気グループの一員として2001年に誕生し、代表取締役として中国より胡 雄卿氏が就任し、営業を開始した。設立当初は、世界的な技術を持つ印刷機メーカが、日本と中国という異文化の中での動向に注目が集まったが、業績は依然として堅調で、数年の間に従業員も増員を目指すなど当初の懸念は払拭されたようである。こうした新体制のもと更なる躍進を目指すに至るまでの背景と今後の指針について、副社長 延原雅三氏にお話を伺った。

--御社は、技術力の「アキヤマ」というイメージが根強いですが、中国資本の新会社になり変わったことはありませんでしょうか

延原  当初は、私共もアキヤマのブランドイメージが残せるだろうかという心配はありましたが、発足当初より、日本ブランドの「アキヤマ」を世界に送り続ける姿勢をとっています。そのために、生産拠点もここ茨城県常総市に確立し、お客様にもご納得いただき、信頼を得られるまでに至っております。中国企業の上海電気が親会社ということで、文化の違いについても社内的に理解を得るまでには約1年を要しましたが、今では発展的な機運が生じ、事業もグローバル化してきました。現在、海外シェアが約60%と、国内市場40%と逆転しています。海外では欧州、北米、南米、中国、豪州、台湾、アジアなどが中心です。今では、各国に代理店も擁し、日本工場で研修した技術者を派遣するなどサービス体制も整ってきました。

--上海電気は非常に大きなグループ企業と伺っておりますが、その中での御社の位置づけを教えてください。

延原  上海電気グループは、300のグループ会社から成り、昨年の年商は1兆150億円、従業員24万人で構成されています。その傘下に、8社の印刷機製造メーカのコンソーシアム、上海電気集団印刷包装機械有限公司があり、アキヤマインターナショナルはその1社というわけです。2005年4月に香港市場で上場しましたが、現地でも、日本の代表的印刷機械メーカ一の一つとして成長性を期待されています。

--世界進出も果たし、欧州での展開を中心にされているとのことですが、現地での評価はいかがでしょう。

延原  やはり、12年前に世界に先駆けて開発した、両面印刷機Jprint(ジェイプリント)の評価が高いです。欧米では両面印刷は、反転機という認識でしたが日本発Jprint独自の反転を要しないシステムが好評です。日本では8色機が中心ですが、欧州では特に10色機を中心に、車や高級家具類など品質要求の高い印刷物の需要があります。日本市場は、片面印刷用の枚葉機を使っていたお客様には、両面が一度に刷れることによるコストダウンや、広いスペースを必要としないことなどが好評の理由です。 
新世代の多色両面印刷機「Jprint」

今後も中国へのアウトソーシングを含めて、お互いに協力し合いながら事業展開して行きます。従業員も5年前の設立当初は60名でしたが、現在では200名にまで増やし体制も整ってきましたが、今後は250名までの体制拡大を予定しています。

--他社の買収劇を見るように、中国は世界市場を見据えて投資をしているということでしょう。胡社長の人となりやお考えなどうかがえますか。

延原  ある日を境に中国の会社になったことで、グローバルな視点が養われていると感じます。今まで日本の印刷業は、国内での仕事が中心で外国に目を向けることがなかったのでしょう。中国人の生活の向上や経済の発展に対する意欲とパワーは大いに見習うところがあり、社員もそうしたパワーを吸収しています。

日本企業としての立場を崩さずに生産拠点を日本に定めたのは、現地法人の要求でもあり、そのため、新しい印刷技術も生まれそれを供与しお互いに良いものを作っていくという関係ができております。

一般的には、外国の方が社長ですと、合理的な経営手法を実施されるケースが多いですが、胡社長はこれまでの企業風土を生かして、その当時の待遇を維持しています。給与などの待遇はもとより、定年制の延長や再雇用など雇用条件も却って今までよりも整えており、大変従業員を大切にしています。中国資本でありながら、日本企業の特質を活かした経営をしています。やはり、社員が元気であれば、企業風土にも影響してひいては対外的にも元気が与えられるのではないでしょうか。
 
董(トウ)副工場長 プラント内、製造中のJprintを背景に撮影

問い合わせ先:
アキヤマインターナショナル株式会社
東京 東京都葛飾区宝町2-34-11 TEL03-3693-5191
名古屋 名古屋市西区清里町130  TEL052-505-2951
大阪 大阪市北区中津6-8-10   TEL06-4796-8753

 

         
(2006年12月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

お客様にとって、最も信頼できる液晶モニタ作りを目指して

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:お客様にとって、最も信頼できる液晶モニタ作りを目指して

 

株式会社ナナオ 企画部マーケティング担当部長 山口省一氏に聞く

 

ナナオは、国内だけにとどまらず「EIZO」ブランドとして世界的にも広く事業展開をしている液晶モニタメーカーである。今回は、「EIZO」ブランドの立ち上げから先日発表された新製品、カラーマネジメント液晶モニタ「ColorEdge CG211」のご紹介まで、幅広くお話を伺った。

――始めに、パソコンの世界を中心に、「EIZO」「ナナオ」というのは非常に大きなブランドとして確立されていますが、ここに至るまでの経緯などお聞かせください。
山口 自社ブランドでパソコン用モニタの開発・製造・販売を始めたのが1985年です。この時「EIZOブランド」を立ち上げ、まずはヨーロッパを中心に海外からスタートすることにしました。
ちょうどそのころパソコンのモニタ表示能力はどんどん高まっている時期で、特にヨーロッパでは解像度の高いモニタが求められていました。そのため、高品質で解像度の高い特性をもった「EIZO」ブランドはすぐに受け入れられました。
ヨーロッパ市場で受け入れられた数年後、いよいよ国内販売を始めました。国内向けには当初会社名の「NANAO」ブランドで展開いたしましたが、事業展開を進めていくにつれ、「EIZO」と「NANAO」は別ブランドだというイメージが広がってきてしまい、このままではお客様が混乱してしまうということで1996年にブランド名を「EIZO」に統一いたしました。

――DTPの世界との関わりについてお聞かせください。
山口 当初モニタ解像度を高めたり画面を大きくするなどの性能を上げていっても、国内ではまだそれに対応できる性能をもったパソコンがほとんどありませんでした。それに対応できる性能をもっていたのはアメリカから入ってきたMacぐらいで、その当時国内製大画面モニタでMacの性能を十分に発揮できるものをわれわれがもっていたために、この分野で多くご導入いただいたということがDTPとの関わりのスタートです。
1990年代の初めごろはCRTモニタを取り扱っておりました。CRTモニタは最終的な工場の調整がその製品の見やすさなどの品質を左右しますので、工場ではかなり厳しい調整を行っておりました。これがヨーロッパでも高い評価を得られた信頼性の高さにつながっていると思います。
その後、1996年・97年ごろから液晶モニタがだんだんと出始めるようになってきて、他社に先駆けて液晶モニタ「FlexScan」シリーズの開発・生産を開始しました。当時の市場では15インチ以下の製品がほとんどでしたが、当社では18インチの高解像度、大画面の製品で市場をリードし、これが2002年に発売になったプロフェッショナル向けの「ColorEdge」シリーズにつながっています。

――「ColorEdge」シリーズについてもう少しお聞かせください。
山口 ある時期からブラウン管の生産がだんだん減ってきて、CRTモニタを提供することができなくなってきました。グラフィックアーツの世界でCRTがなくなるということになると、やはり代替えになる液晶モニタを開発しなければいけないということで「ColorEdge」シリーズの開発が始まったわけです。
開発当初は、視野角はまだCRTモニタには若干劣りましたが、IPS方式という視野角による色の変化や階調特性の変化が非常に少ないパネルが出てきましたので、「ColorEdge」シリーズはその技術を利用し、デメリットを克服しました。
また、液晶というのは階調特性がCRTのようにアナログで出しておりませんので、滑らか感が若干弱いですが、われわれはそれを工場で1台1台調整して正確で滑らかな階調特性をもたせて出荷しております。

――液晶モニタの特長をお聞かせください。
山口 グラフィックアーツの世界で申し上げますと、やはり色の安定性はぶれる要素が少ないので、CRTモニタよりも高いです。また、完全フラットなので幾何学的なゆがみがないのも、デザイン系では非常にメリットが大きいと思います。写真などを扱う場合、写真画像自体にゆがみがありますので、モニタがゆがんでいるのか、データがゆがんでいるのかCRTモニタでは分からないということがありますが、液晶モニタではそれがありません。

――先日発表された新製品「ColorEdge CG211」についてお聞かせください。
山口 「ColorEdge CG211」はグラフィックアーツ業界で求められる正確な色再現を実現する、ハードウエア・キャリブレーションへの対応や高精度な演算処理、工場で1台1台調整した正確な階調表現などに加え、1番大きい特長は、新たに独自開発した「デジタルユニフォミニティ補正回路」という、画面全体の輝度ムラや色ムラをモニタ側で補正するという機能です。これにより、従来の液晶モニタでは実現の難しかった、画面全域の輝度および色度の均一性を向上させ、さらなる高性能化を実現しました。

――御社がお客様に製品を提供する際のセールスポイントをお聞かせください。
山口 お客様にとって信頼できるモニタを提供し続けている、ということです。もちろん画質には徹底的にこだわっておりますし、技術レベルの向上は常に行っております。先ほどご紹介しました「デジタルユニフォミニティ補正回路」技術などが、その好例です。また、5年間の製品保証や、アフターサービスにも力を入れています。特にColorEdgeでは、定期的にモニタを調整し直すなど、お客様に長く使っていただけるようなアフターサービスメニューもご用意しています。

――今後の事業展開・業界への要望などお聞かせください。
山口 「ColorEdge」シリーズでは、今のところ静止画に対する性能のブラッシュアップは行っておりますが、動画についてはまだまだです。動画については、静止画とは違った性能の要求が出てくると思いますので、それらをクリアしながらお客様に信頼される製品を開発していきます。
業界への要望としては、現在色校正は紙での校正が主流ですが、海外では既にモニタ校正システムが導入されつつあるという段階です。
海外では確かに地理的条件もあり、モニタで校正のほうが効率が良いという事情はありますが、モニタの色再現精度がますます高くなっていけば、日本の市場でもモニタで校正をしてもよいというお客様は出てくると思います。おのずとそうなっていくかもしれませんが、われわれとしましてもそういった方向に進んでくれることを望んでおります。

 株式会社ナナオ
〒924-8566 石川県白山市下柏野町153
TEL 0120-956812(EIZOコンタクトセンター)
URL http://www.eizo.co.jp/

 

(2007年1月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

グラフィックス業界の良きパートナー企業を目指して

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:グラフィックス業界の良きパートナー企業を目指して

 

株式会社きもと 営業本部 グラフィックス部門長 福岡 康氏に聞く

 

機能性フィルムの総合メーカー、きもとのグラフィックス部門では、「製版を中心としたプリプレス」と「サイングラフィックス向け大判インクジェットプリントソリューション提供」の2本柱で事業展開し、特にCMSに重点を置いている。中国でのDTPの受託サービスも展開している。

 

――始めに、貴社のグラフィックス業界との関わりについてお聞かせください。

福岡 きもとはもともとコーティングメーカーですので、グラフィックス業界向けにはマスキングフィルムなどのアナログ製版用の消耗品を中心に製造・販売をしておりましたが、ここ7~8年ほどはインクジェット関連製品のシェアが年々大きくなってきました。具体的には、サインディスプレイ向けに開発された「キモアート」「スーパーキモアート」といったインクジェット出力用フィルムで、用途としてはポスターや看板などです。
一方、「キモセッター」というデスクトップ簡易型CTPを販売しておりますが、専用のフィルムプレートとして、「キモプレート」があり、当社のオリジナルコーティング製品となります。 現在、グラフィックス向けのコーティング品として製造しているのは、この2つが中心となっております。
グラフィックス事業全体に対する当社としてのポジションを考えますと、メーカーというよりも、商社的な位置付けが大きくなっており、事業規模では国内で約50億円弱の販売実績を上げています。基本的にはさまざまなソリューションをアウトソースし、独自のオリジナリティを付加して印刷業界にご提案を続けております。

――グラフィックス部門についてもう少しお聞かせください。

福岡 グラフィックス部門は、「製版を中心としたプリプレス」、および「サイングラフィックス向け大判インクジェットプリントソリューション提供」の2本柱で事業展開をしております。現状あらゆる部分でデジタル化が進んできたので、それへの対応ということも含んで、当社は品質の説得力としてCMS(カラーマネジメントシステム)に重点を置いております。
現在はエックスライト社に統合されましたが、旧グレタグマクベス社の国内正規代理店として同社の測定機器、ソフトウエアを中核とし、インクジェットDDCPの「ORIS ColorTuner」および出力用メディア、これらを特にグラフィックス業界向けに「CMSソリューション」として提供しております。
さらに、ハードやソフトだけではなく、人的なテクニカルサポートの充実も重要との認識から人材育成には重点を置いており、 大きな商品価値としてお客様にご提供させていただいております。

――お客様のCMSに対する関心はいかがですか。

福岡 当社は大判インクジェットとの関わりが大きいのですが、例えば看板・ポスターなどのサインの用途では、「締まった黒」「ビビッドな赤」などが好まれますが、最終成果としてのグラフィックスの色品質に基準値と言いますか、製作プロセスにおける標準化がなされていないのが実情です。
従来、この分野でもインクジェットで任意の色を出したいという需要は常にあり、ここに当社のCMSの考えや技術、ソリューション提供を行うようになりました。今では業界全体がCMSを求める傾向にあり、CMSソリューションが、サイン・看板・ディスプレイといった分野にも受け入れられつつある状況です。

――デジタル化が進めば、グラフィックス業界の会社は事業の幅が広がりますよね。

福岡 ええ、当社としてもその部分にはこれからも重点を置いて、提案を強化していきたいと感じております。
もともと当社が提供しているサイングラフィックス向けのソリューションは、ハイエンドのアプリケーション向け、つまりコマーシャルラボ、サービスビューローといったお客様を主体に始まりました。印刷会社の高い技術力を、大判オンデマンドプリントでも生かせるよう、それにこたえられるシステム、部材を当社が提供し、最終的にはクライアントが満足する「品質」を実現する、これが理想的な形だと思います。
実は、印刷業界にもこういった提案を7~8年前より行っておりますが、当初サイングラフィックスの出力サービス業務は、枚葉印刷のおまけのような位置付けとして見られていました。ところがここ2年ぐらいの動きで、一部の会社が社内に独自のプロジェクトを立ち上げられたりして新たな設備投資をし、事業を展開するケースを多く見かけるようになりました。 この動きは当社としても歓迎できる方向ではありますが、この動きを加速するためには、経営者が事業展開をどう考えているかがポイントになりますので、今後は経営者に対し当社がもっているノウハウを提供しながら啓蒙活動を続けていこうと考えております。

――この分野に関して、印刷会社でこれからのことをいろいろと考えた時、良き相談相手がなかなかいないという状況がありましたが。

福岡 当社は、その’良き相談相手’としてのポジションを得たいと思っております。
高い投資金額で導入したシステムが、当初の見込みに反して、段々と価格競争の渦に巻き込まれたり、成果品のスペックに融通性を求められたりして、身動きが取れなくなることがよくあります。ですが、そういった点では当社の場合、これまで蓄積した豊富な経験を元に、お客様に不安のない提案が可能と信じております。最新技術の導入および品質的な差別化はもちろんですが、それをサポートする事細かな面倒見の良いメンテナンス、これが非常に重要で、この点に関しては、お客様のお役に立てる自信があります。

――最近、屋外広告の分野が伸びているように思いますが、貴社の取り組みなどお聞かせください。

福岡 当社では、屋外看板を中心に媒体の付加価値を上げるという意味で、2年前に「セルフクリーニングフィルム」を開発いたしました。用途としては長期の屋外媒体の保護材料として使用しますが、表面に光触媒技術を使っており、紫外光を照射した状態で雨が降れば、その雨で自動的に汚れを落としていくというフィルムです。当社としては「セルフクリーニングフィルム」を自然界の力だけで表面洗浄を行えるという特長から、環境にも優しい製品の一つと考えております。

――最後に、中国での事業展開をご紹介ください。

福岡 規模的にまだまだ小さいですが、2年ほど前に中国東北部の瀋陽にある現地法人(SKI=瀋陽木本実業有限公司)で、DTPの受託サービスを開始いたしました。
人件費が安いというところに着目し、GIS関連の受託処理業務を行う会社として、地図関係の入力など、人海戦術的な作業を請け負うことが多かったのですが、事業展開を進めるうちに閑忙期がはっきりしていることが分かってきました。その状態を解消する意味で、通年仕事の見込めるDTPサービスを手掛けるようになりました。具体的には、一部レタッチを含んだ画像の切り抜き業務です。今後も中国での事業展開は拡大していく予定です。

株式会社 きもと
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-19-1
TEL 03-3350-0304 / FAX 03-3350-4900
URL http://www.kimoto.co.jp/

 

 
(2007年2月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ブラウザを超えて進むインターネット

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:ブラウザを超えて進むインターネット 

 

イースト株式会社 代表取締役社長 下川和男氏に聞く 

 

1985年設立以来「パーソナルコンピュータとともに」をテーマに、Windows系ソフト開発において、高い技術力と信頼を得てきたイースト株式会社は、常に新しい技術に基づく製品を提供し続けている。
Vista技術の普及啓蒙に力を入れている、イースト株式会社の下川和男社長に、ブラウザの制約から解放されて、アプリケーション開発の自由度が増した技術の特長と、Web2.0の動向を伺った。

 ――今最も力を入れておられることは?

下川 マイクロソフトの最新OS Vistaはすごい仕組みをもっているのに、あまり認知されていません。例えばWPF(Windows Presentation Foundation)機能を使うと、インターネットに接続しているのに、ブラウザがない世界が作れます。Flashを使ったWebサイトでは、ブラウザのメニューと枠の中でFlashアプリが動きます。それがブラウザのメニューがなくてアプリケーションだけが動くようなプログラミングが可能になります。利用者はブラウザを抜きにしてアプリケーションに集中できます。
Vistaではドキュメントも大きく進化しました。WPFドキュメントの一番の特徴は自動段組み機能で、ウィンドウを広げると自動的に段組み数が増えて、縮めたら少なくなるし、文字サイズも自由に変えることができます。

マイクロソフトのXAMLというXMLのアプリケーション言語体系は、膨大な機能をもっていて、HTMLの機能も包含し、その上に新しいテクノロジーが入っています。例えばFlash的なスクリプトをXAMLで書くことができます。それを再生すればFlash以上に、きれいに動くアプリケーションが作れるし、ドキュメント用の構造も定義されているので、T-Timeのような電子書籍風の表示も行えます。
今まではブラウザで印刷すると右側が欠けて出ていましたが、WPFの印刷機能では、A4と指定すればA4判で一番きれいなレイアウトで印刷します。 現在、XAML関連のソフトを開発していますが、1月4日に次世代Windows技術を使った、Web2.0実証実験サイト「est.jp」を公開しました。Vista技術の普及啓蒙を図りたいと考えています。

――入り口はWebで、そこから先はシームレスに開発ができるようになるということでしょうか。

下川 Webからリンクしてアプリケーション起動もできるし、Vistaのサイドバーにいろいろなアプリケーションのランチャーを置くこともできます。
例えばVistaを起動すると「ニューヨークタイムズ」というメニューがサイドバーに表示され、クリックするとアプリケーションとしてそれが動き、「ニューヨークタイムズ」の最新ニュースが見られるという形になります。
今回のVistaやOfficeの特徴は、「インターネットへの接続方法として、なぜみんなブラウザばかりを使うのか。アプリケーションを作れば、Web側のSOAPを使ったサービスを使ってやり取りするだけでよいではないか」という考え方です。今でもWebサービスをOfficeから呼ぶことができますが、もっとやりやすくなり、さらにOffice製品のデータ構造がXMLになったことで、アプリケーションからOfficeドキュメントを生成することもできるようになります。アプリケーションがOfficeのXMLドキュメントを読むという世界が作れ、アプリケーションの自由度が高まります。

――XPからVistaへ移行の問題がありますが。

下川 マイクロソフトが危惧(きぐ)しているのは、「今のままでいい」と言われることでしょう。次のもっと良い世界に入ってしまえば古いものの不便さが分かりますが、「これでいい」と思っていると、変われません。

――企業のITシステムのグランドデザインがしっかりできていると、新しいテクノロジーを取り込みやすくなります。しかし、会社としてのグランドデザインがパソコンに移り切っていないところもまだ日本にはあります。

下川 マイクロソフトもインフォメーションアーキテクトという言い方で、アーキテクトを育成して、グランドデザインができるようにと考えています。顧客からのさまざまな案件に対して「基本構想はこうしよう」という提案をする人をイースト社内でも育成しようとしているし、デザイン会社と組んでWebデザインの向上にも注力しています。

Vistaの普及が今のXPと同じレベルになるには、5年くらい掛かるのではないかと見ています。XPへの.NET Framework3.0の追加で、WPFは動くので、数年後には、「ニューヨークタイムズ」のTimes Readerなどの有用なWPFアプリケーションが普及すると思います。

――最近はSNS(ソーシャルネットワークシステム)に力を入れられているようですが。

下川 3年越しでBizPalというサービスに取り組んでいます。SNSを根幹としてWeb2.0技術で会社のコミュニケーションを向上させようという顧客も現れています。 さまざまな会社から、いろいろなAPIをもったサービスが出てきます。例えばOffice Liveというサービスは、スケジュール管理、顧客管理など豊富な機能があるのですが、それとBizPalを連携させたり、Grooveという、共同作業の仕組みともBizPalを連携させたいと考えています。
何かシステムを作る時、私たちはインターネット上のサービスとして提供するわけですから、他社のさまざまなサービスとも連携して、多展開していこうということです。

――Webも単に情報提供したら終わりではなくなって、受発注や広告など、いろいろなものが絡んできて、拡張性が求められています。トランザクションやレポーティングなどの機能も必要です。

下川 RSSやWeb APIなどをうまく組み込んでおくと拡張性がもてるようになります。

デザイン系の人はWebの見えるところだけに特化して、バックオフィス部分は全然気にしていないので、イーストのような会社とデザイン会社が組めば良いサイトできると思います。
VistaにしてもOffice2007にしても、今までのいろいろな課題に対応した知恵を盛り込んだ製品に仕上がっているので、その辺に着目すると解決策のヒントになり、そういう技術を組み合わせて作ったほうが、早くソリューションが提供できます。
イーストのMyDictionaryという仕組みはWeb APIを公開していますので、それを使って、W-ZERO3でウィキペディアの検索サービスを作りました。もちろん無料です。イーストの辞書プロジェクトは10年以上の歴史があるので、これからは辞書検索の広告連動ビジネスなども手掛けたいと思っています。また、IE7のOpen Searchにも対応させますので、IE7の検索窓で辞書が引けるようになります。

現在のテクノロジーで、これから4~5年はいろいろな新しいサービスが出現し、インターネット上も伸びる企業と伸びない企業が振り分けられ、2010年ごろには企業の隆盛に決着が着くと考えています。

イースト株式会社
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-22-8 代々木かえつビル
TEL 03-3374-1980 / FAX 03-3374-2998

 

(2007年3月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

顧客とともに印刷ビジネスを考える

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:顧客とともに印刷ビジネスを考える

 

株式会社光文堂
代表取締役社長 小澤久隼氏に聞く

 

光文堂は1946年の設立以来、印刷機器・資材の販売を中心とした総合商社の立場から全国の印刷業界をサポートしてきたが、創業60周年を機に、新たな事業体系の一貫として「クロスメディアソリューション開発本部」を立ち上げた。印刷業界とともに発展してきた同社の小澤久隼社長に、さらなる飛躍に向けたキーワードを伺った。

――全国の印刷業界を長年サポートしてきた立場から、現状と問題点をどうお考えですか。

小澤 印刷業界を取り巻く環境は、デジタル化の進展によってネットワーク環境が充実してきましたが、一方ではグローバル化を始め、短納期化・小ロット化・低価格化といった課題を抱えています。速いスピードで大きな変革が起こっている中で、この変化に対応し切れていない印刷会社は伸び悩んでいて、伸びている会社とはっきりと差が出てきています。
アナログの時代はある程度自社の仕事を想像してその範囲で設備を選択してやってこれましたが、デジタルになって、何をやっていいのかさえ分からなくなっている会社もあります。
99%エンドユーザーとの取引ですが、大半の地域で新しい事業の柱を見いだせないで悩んでいる顧客に直面しました。そこで、2006年11月に「クロスメディアソリューション開発本部」を立ち上げました。発注者のマーケティングの状況も含め、顧客のビジネスまでをサポートすることを目指したものです。顧客と一緒に考えていく中で、最適な設備やソリューションを提供したいと考えています。

北は北海道から南は沖縄まで、25店舗で地域に密着したサービスを行っていますが、そこで問題になるのはやはり人材の育成です。本店には技術も含めて幅広い人材がいますが、各拠点でマーケティングを含む幅広いサポートを行うのは困難です。また、拠点ごとのばらつきも問題になります。そこで、拠点の教育や地域のサポートを行うことができる人材を育てるための研修を行っているところです。新部門は9名でスタートし、スタッフを常時各拠点に派遣できる体制を整える予定です。
KBDブランドのソフトを自社開発してきましたが、社内ですべてを行えばノウハウは蓄積できますが、かなりのマンパワーが必要で、販売機会を逸する恐れもありました。アウトソーシングや専業者との提携によって開発期間を短縮し、顧客に最適なソリューションをいち早く提供できる体制に切り替えました。さらに、この人材を新部門のスタッフに振り分けることで、ソフト開発のノウハウを生かしたいと考えています。

――クロスメディアに着目したのはどうしてですか。

小澤 今までは、規模なりの仕事をもっている顧客に対して、品質向上や納期短縮、コストダウンを実現するソリューションを提供すれば、顧客の収益につながり、当社のビジネスにもなっていました。しかし、デジタル化や他産業の参入によって、今までの設備ややり方では規模に合った仕事を確保できない状況になっています。
当社は自社ブランド商品はもっていますが、あらゆるメーカーのハードからソフトまで取引していることから、本当に顧客の仕事に合ったソリューションを提供することができます。もちろん、品質向上や納期短縮、コストダウンに対応することが今後も基本になりますが、業界の変化にどれだけパワーを掛けられるかが大きな課題です。
PAGE展の移り変わりを見ても、アメリカの市場動向を見ても、短納期、少部数、デジタル化の方向にさらに進むことは間違いありません。印刷機械を動かせばもうかった時代から、ノウハウやソフトが企業の柱になってきました。印刷機と違って、オンデマンド機ではカウント料金が収益となるビジネスモデルになります。印刷会社も紙媒体だけではビジネスが成立しなくなっています。

このような状況から、当社が培ってきた最新の技術・情報を印刷業界の発展に活用できないかと考え、クロスメディアに着目しました。従来、生産部門に偏りがちだった当社の業務に営業部門の視野も入れることで、多様な環境変化にも対応する体制を整えました。 例えば、電子ブック作成アプリケーション「e-Book II」などの自社商品を活用してデータの資産性を高めるなど、顧客とともに印刷ビジネスを考え、顧客自身の問題解決を図っていきたいと考えています。また、カラージップジャパンの提供する次世代バーコード「カラーコード」の販売も開始しました。クロスメディアソリューションの重要なツールとして、既存の販売チャネルに加え、顧客を通じて顧客の顧客である企業や官公庁などへの拡販も図っていきたいと考えています。

――中小や地方は特に厳しい状況で、連携も必要になるのではないでしょうか。

小澤 現在の売上構成比は、材料関係が52%、自社開発製品やOEMを含む機械が48%です。事業所数の減少とデジタル化によって、材料関係の売り上げは減少傾向にあります。10年ほど前はMacintoshの導入やサポートがかなりの売り上げになりましたが、現在はEビジネスサイト「K-bazaar」に移行しています。このような変化に対応して新しい分野にシフトしていかないと、収益を確保できないだけでなく、顧客とのパートナーシップも築けません。
現在全国で100名近い営業担当者がいますが、制作からプレス、ポストプレスまで全部担当していて、これだけ変化の激しい状況で、あらゆる知識を覚えさせるのは無理があります。新しい分野に対応できるスタッフを本部で教育して、拠点のサポートをしていく必要があると考えています。

全印工連の業態変革推進プランに「原点回帰」がありますが、当社も61年目に入り、もう一度原点に戻って、見直すべきものは見直して、適正な利益を確保することで、体力を付けて次の手を打てる体制を整えたいと考えています。新しいことにリスクは付きものですが、リスクを最小限にするためにもやはり人、社内の人材が一番のカギになります。
東京、大阪、名古屋などと比べて、地方ほど厳しい状況にあります。そこで、顧客と一緒にマーケットをリサーチして、具体的なアドバイスや最適な提案ができれば、信頼・安心していただけるパートナーとして、取引にもつながるでしょう。
今までは、印刷物の品質管理を実現する「KBD Quality Reporter」や、紙粉による印刷トラブルを解消する「KBDペーパークリーナー」、インキカラーコントロールシステム「KBDマイクロカラー」、既存システムをCIP3化する「KBD EPLEX」などの自社ブランド製品によって、高品質・短納期・低価格を実現できました。しかし、今後は顧客にとって最適なシステムを提案するだけでなく、システムに合った仕事を確保していくための提案が必要になってくるでしょう。
1月25~26日に開催した「第43回新春機材展」では、「変革と飛躍」をテーマに、昨今の印刷業界が直面する「デジタル」「ネットワーク」「クロスメディア」という3つの課題に対して、新鋭の機器・最新情報を披露しました。また、前回に引き続き「コラボレーション展」を併催しました。全国から21社の印刷会社がそれぞれの強みを披露し、共創ネットワーク作りやビジネスチャンスの拡大にお役立ちできたのではないかと思います。

株式会社光文堂
〒460-0022 愛知県名古屋市中区金山2-15-18
TEL 052-331-4111 / FAX 052-331-4691

 

(2007年4月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)