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お客様の成功へのサポート

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:お客様の成功へのサポート 

 

ハイデルベルグ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 山本幸平氏に聞く

 

 ドイツ・ハイデルベルグ社は世界170カ国に20万社の顧客をもつグローバル企業である。
そのハイデルベルグの印刷機が初めて日本に上陸してから今年で80周年。そして、未来に向けて、ますます日本の印刷業界、お客様に対するサポートを強化しているハイデルベルグ・ジャパンに、印刷機器メーカー、またトータルソリューションプロバイダーとしての事業展開と顧客支援ついてお話を伺った。

――印刷産業市場とハイデルベルグ社の現況についてお聞かせください。

山本 まず、世界の印刷産業市場を見ますとヨーロッパは微増、北米はM&Aによる企業格差の増大が特徴的で、成長しているのは南米と中国・インドを中心としたアジアです。日本は企業格差が拡大しています。印刷の事業者数が減り、1事業所当たりの売り上げが伸びてきています。また、世界の製品別印刷媒体の生産割合では販促物のシェアが一番高く、パッケージ・出版・ビジネスが多いのですが、今後はパッケージ印刷が伸びていくと考えています。カラー化も進んでいて印刷物出荷量で4色以上の割合は1990年に35%だったものが、2005年には50%、これは予測ですが2020年には70%に達すると見ています。
ハイデルベルグの社員数は1万8700人(このうち日本法人は約500人)で、設備の活性化によって今年度は力強い成長を維持しています。ヨーロッパ、アメリカ、日本など印刷先進国での10、12色の両面兼用機、UVやコーティングなどの特殊機、生産性と高品質のためのXL105機の出荷増によっています。それから中国やインド、ラテンアメリカで4色機などの標準仕様を中心とした高成長です。

――開発と生産への取り組みはいかがでしょうか?

山本 ハイデルベルグはドイツを中心に世界に14の生産・開発拠点をもち、ソリューションプロバイダーとして印刷プロセスを取り囲むハード、ソフト、ブレインウエアを提供しています。印刷の将来を見据えた総合的な研究開発のために昨年は総売り上げの約6%を投資しています。約1500人が研究開発に携わっていて、そのうちの約350人がソフトウエア開発に従事しています。大学、研究所、サプライヤーなどとの国際的なネットワークを構築し、研究開発に活用していて年間5500件の特許を申請しています。
ウイスロッホの組み立て工場は87万3000m2あり、サッカー場の約120面に相当する広さで、従業員が6000人です。アムシュテッテンにある鋳造工場では、ギアやシリンダー、フレームなど印刷機の品質を実現するために重要な役割を果たす部品が鋳物から作られています。非常に優れた品質でハイデルベルグの機械が高精度に保たれている一つの理由です。

――どのような顧客支援をされていますか?

山本 今、お客様にとっての課題の解決を3つの観点からサポートさせていただいています。一つは「スピードアップ」を求められているということ。次に「コスト削減」、それから「付加価値(印刷価値)の向上」です。
スピードアップについてはプリネクトによるプロセスの最適化と全体生産性の向上を図っています。基本的にお客様にとっての理想的な生産工場、生産現場とはどういうものかということを考えています。いくらデジタル化や技術が進んでも、やはり印刷というのはアナログの感性が必ず必要になってきます、そういうことをアナログの感性を損なわずにデジタルネットワーク化への適合をご説明して提供させていただいています。営業、制作、工場がやはり共通の認識をもってお客様サイドでスキルアップに努められる環境作りのお手伝いさせていただく。それから、多種多様な仕事、非常に効率良く対応できる生産設備を提供・提案させていただく。これによって工場内での標準化、つまりだれが刷っても品質にムラがないように指導させていただくこと。無駄のないワークフローのご提供で環境に優しく、人に優しい工場を作っていきましょうということ。これが弊社の営業担当者のエッセンスです。お客様の必要に応じて提供できるソリューションがたくさんありますけれど、それを駆使して印刷の前から後ろまで製品完成品が納品できるまでのフローのお手伝いがワンソースでできますよ、ハイデルベルグ・ジャパンとお付き合いしていただければできます。そういうアプローチをさせていただいています。

――今後、どの分野で成長が期待できますか?

山本 高品質の印刷を正確に行うためには印刷機と連動するCTPが不可欠ですが、ハイデルベルグのCTP、特にサーマルのスープラセッターに対する評価が非常に高くなっています。印刷機も生産性向上に貢献しています。同じ菊全判の4色機でも2000年と比べて2004年では20%アップしていますし、2006年では50%アップしています。値段はほとんど変わっていません。
新しい技術の一つとしてアニカラーが、今年から日本に入って来るのですが、これが驚異的な機械です。従来機に比べて損紙が約80%削減でき、前準備時間も50%削減できるんです。100~1000部くらいのロットの仕事に最適です。この部数でしたらデジタル印刷機より高い利益率が得られます。
後加工の効率化では断裁機、折り機、中綴じ機の導入も進んでいて無線綴じ機も間もなく日本仕様で入ってきます。
パッケージ部門は非常に強化していてヤーゲンベルクを買収してから後工程の加工技術が急速に向上しました。

――ハイデルベルグだから提供できるさまざまなソリューションについてご紹介ください。

山本 まず、装置の先進性が挙げられます。生産性の高い装置は設備投資の額も高くなりますが、お客様にとってのメリットは非常に大きいのです。さらに、印刷の標準化を徹底的に追求するサービスと、PMAによる人材教育のサポート。そして保守メンテナンスプログラムの豊富さも弊社ならではの特徴です。幅広い人材が揃っており、彼らがプロセスを超えてコミュニケーションしサポートしますので、いい機械をきちんとメンテナンスさせていただくと同時に最高のレベルに保つことができます。こういった観点からも、お客様のトータルコストの削減に寄与できると思います。入り口から出口まで一気通貫でいかにコスト削減ができるか、いかに収益を確保できるかということが、今の印刷会社には大切なことだと思います。
また、リモートサービスと呼ばれる遠隔サービスも提供していますが、これはインターネット回線を使ってお客様の機械とつなぎ、状態を見ながら診断をするというものです。リモート点検でトラブル対策もできますし、リモート操作指導もできます。機械の状態を見ながら電話で担当者が適切なアドバイスをいたします。
昨年は、ジャパンロジスティックセンターも開設しました。今まで以上に、ハイデルベルグの機械に最適なパーツや消耗品を素早く確実にお届けできるようになっています。 プリント・メディア・アカデミーでは、印刷業界のお客様と従業員の方々のために豊富なトレーニングコースをご提供しています。また、ファイナンスサポートでは設備投資の資金調達だけでなく、財務コンサルティングといったこともお手伝いさせていただいています。

――付加価値向上についてはいかがでしょうか?

山本 付加価値向上という観点からスーパーファインカラー、ワイドカラー、UV特殊印刷、インライン加工など印刷に関する技術指導を行っています。有償でプリントコンサルタントという専門スタッフが印刷工場のオーディット(現地監査)を行って問題解決への提案をしています。印刷の高品位化・標準化、収益性の改善、経営効率の改善などです。また、会員数が約700社のハイデルフォーラム21もマネジメント、テクノロジーなどに関する最新情報の提供やお客様同士のネットワーク構築の場として活動を支援しています。

ハイデルベルグ・ジャパン株式会社
〒140-8541 東京都品川区東品川3-31-8
TEL:03-5715-7255 FAX:03-5715-7250

 

(2007年5月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ハイエンド・デジタル印刷機「imagePRESS」により印刷業界への本格参入

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:ハイエンド・デジタル印刷機「imagePRESS」により印刷業界への本格参入

 

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 ビジネスプロダクト企画本部
ビジネスドキュメント機器商品企画部 部長 岩屋 猛氏に聞く

 

デジタル印刷機は、既に小ロットやオンデマンドの市場を確立し、各社の技術開発はより高度化の傾向にある。プロユース向けに開発されたキヤノン「imagePRESS」も、高画質の印刷を提供できるハイエンド・デジタル印刷機として登場した。特に商業印刷市場を視野に入れて開発されてきたという製品開発の背景と業界参入に対する考えを、岩屋猛部長に伺った。

――ハイエンド・デジタル印刷機「imagePRESS」には印刷業界でも大変関心が寄せられていますが、製品開発の背景からお話しください。

岩屋 キヤノンは、ここ数年オフィスカラーMFPを中心に製品ラインナップを充実してまいりましたが、振り返ってみますと、1987年に「CLC1」を発表した当時、高画質のデジタルカラー複写機ということで大変好評をいただきました。それから2年後に「CLC500」という商品を発表しました。初めて、パソコンやワークステーション、アプリケーションからの出力が可能になったデジタルカラー複合機の走りでした。その時以来、いわゆる「カラーはキヤノン」「高画質はキヤノン」ということで、商業印刷の皆様にもカンプ用としてたくさん利用いただき、高い評価をいただきました。今回のimagePRESSは、その商業印刷市場にフォーカスしながら、今までのCLC以上に「オフセットに迫る高画質」「オンデマンド出力」を追い求め、ようやく昨年、披露できるような段階まで仕上がってきたということです。

では、なぜこの業界にキヤノンが本格参入したかということについてですが、以前からキヤノンは、ワールドワイドでのオフセット市場の変化に大変注目しておりました。これらの市場では、電子写真がキーとなりプリント・オンデマンドの新しい世界が創造できる、という仮説の下、マーケティング調査をしてきたわけです。その後、電子写真に置き換わっていく市場があるという調査結果が得られました。さらには、3年間でプリント・オンデマンド市場が160%ぐらいは伸びるだろうという調査結果もあり、こうした目算の上で商品開発を手掛けてきたわけです。

一方、国内ですが、ワールドワイドに比べ約10分の1の6兆円から7兆円の市場規模がありますが、プリント・オンデマンドに置き替わる市場というのが、恐らく2009年には3000億円ぐらいになるだろうという調査会社の資料もあります。こうした市場のポテンシャルに大いに期待しております。

――コンペティターも参入している中、印刷業界においてはどのような方向性をもって取り組んでいかれるのでしょう。

岩屋 商業印刷市場に参入するということを、模索し続けてきましたが、この業界は商品をただ買っていただくだけではなくて、その先にやはりお客様があるということが重要です。そのため、「プロダクションの市場」で、プロダクションの商品を販売するにあたっては、専門の知識とサービス・スキルをもった陣容が必要であると考えています。また、お客様にご提供するワークフローなどもきちんと備えていかなければならないとも思います。

現在、約50名ほどの専任部隊を揃え、商業印刷のお客様だけでなく、企業内の集中コピーセンターやプリントセンター、また、複写産業などにも営業展開しています。まずはお客様のところに1軒でも多く足を運んで、お客様の抱える現状の課題や、あるいは業務フローの問題点などをお聞きして、それらを解決できるようなソリューションを行っていきたいと考えています。そのためにも、この度品川本社にプロダクションシステムセンターを新設し、予約制でお客様と1対1で接することができるようにしました。ご導入前の検証をお客様とともに行いながらビジネスをシミュレーションしたり、ご購入後のお問い合わせにも対応できるようにしていきたいと計画しています。

――imagePRESSというネーミングは、印刷業界に参入される意気込みというものを感じますが、そうした姿勢の表れと言えますでしょう。また、さまざまな媒体で展開されているプロモーションも、そうしたことの表れではないでしょうか。

岩屋 PRESSは印刷機のプレスでして、やはりそれなりのバックヤードがないといけません。あえて、PRESSという名前を付けることにしたのは、電子写真で最高画質、限りなくオフセットに近い品位とグロス感をうたい文句に開発したことにあり、ターゲットは、オフセット印刷の高画質ということで挑戦を進めていくということです。 また、プロモーションについては、今年はモーツァルト生誕250周年にあたるということで、JTBが企画するウィーンへのツアーに弊社も協力させていただくことになりました。

今、JTBとはカタログの電子化とPODを進めていることもあって、「JTBのお客様に対して新しい付加価値をどう生み出すか?」「JTBがお客様に何か付加価値を提供できないか?」というところからスタートしました。
ツアーにご参加いただいたお客様にプロのカメラマンがサポートし、ツアー中に写真を撮るわけです。モーツァルトのオペラ「魔笛」を鑑賞すると、そのチケットが存在します。その日付と個人の名前が入ったチケットを大切に保管したいというようなご要望におこたえして、そのチケットをウィーンのJTB事務所から、わたしどものColor imageRUNNERでスキャンして東京に送ります。東京では編集者が待ち構えていて、プロのカメラマンがデジタルカメラで撮った画像とチケットを東京の事務所で全部合成をしまして、思い出のメモリアルブックを製作し、最終的にはimagePRESS C1で製本して出力するわけです。

そして、宣伝にもありますとおり、成田空港にお客様が帰ってきた時にその場でお土産としてお渡しできるようにいたします。こうして、imagePRESSの画質や機能性を知っていただくだけでなく、印刷会社には、クライアントとの関係の中でこうした用途展開もあるという何かのヒントにしていただければと思います。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
本製品に関する問い合わせ先:
キヤノンお客様相談センター 050-555-90053

 

 

(2007年1月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

顧客とともに栄える~印刷機材の総合商社

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:顧客とともに栄える~印刷機材の総合商社

 

株式会社モトヤ 代表取締役 古門慶造氏に聞く

 

活字、組版メーカーとして創業85年の歴史をもつモトヤの三代目社長古門慶造氏に、同社の「昨日・今日・明日」を伺った。

――85年という長い歴史の中でエポックメーキングをお聞かせ下さい。

古門 もともとは印刷業を営んでおりましたが、3人兄弟のうち、2人が印刷業を継ぎ、私の祖父が「印刷のもとや」ということで活字の製造、印刷材料の販売を始めたのが「モトヤ」の始まりです。当時は姫路に拠点があり、戦争中は空襲の戦火から鋳造機を守るのに大変苦労しました。 戦後は1949年に株式会社に改め、本社を大阪に移し、第二の創業として出発しました。その後、経済の復興とともに全国主要都市に営業所や代理店を拡大していきました。 エポックな出会いとなったのが1963年の父親のアメリカ視察でした。IBMの工場見学をして大きなショックを受けてきたようです。『日本では活版全盛であるが、これからはコンピュータの時代だ』と父の頭の中はコンピュータ一色になったようです。でもコンピュータでどうやって印刷をすればいいのか…、それが後の電算植字(1969年)、とタイプレス(1970年)に発展することになりました。

――タイプレスはまさに時代を象徴するヒット商品ですね。

古門 活字を使わないコールドタイプシステムとして画期的な商品として迎えられました。タイプ印字を自動制御化して電動タイプレスEEを発売し、第3回発明大賞考案功労賞を受賞しました。この年(1978年)にワードプロセッサ(東芝JW-10)が発表されました。当初は価格面と品質面から賛否両論ありましたが、モトヤでは「これは敵ではない。どうやって使おうか」と開発に力を入れました。DTPの前進となる電子組版機「MT-5000」「WP-6000」の開発、誕生となりました。1984年に普通紙出力の「レーザー7」を発表しました。

――ハードを生かすにはソフト面の継承が重要ですね。

古門 ハードの自由度が高まればいろいろなことができますが、それをどう利用するかが難しくなってきます。タイプレスのころは活字組版をどう継承するかで自問自答しながら開発しました。ワープロからDTPとなりオープン化になったことで組版能力をもった機械(専用機)から自在性をもった安価なソフトで仕事がこなせるようになりました。つまり専用システムの時代ではないことから、メーカーから商社へと軸足を移動させました。そこで私たちは「お客様が一番困っていることは何だろう」と考えました。その一つが「人材派遣」でした。なぜかといいますと、印刷(プレス)の前工程(デザイン、組版、版下)はコンピュータの中で統合化され、印刷業界以外のところで制作されることが多くなりました。印刷業は刷るだけの下請けになってしまうのではないかと危機感を感じ、データ作りが他業界に流れないように教育をした人材を派遣をし、レベルを維持したいと考えたわけです。

――かなり大きな方向転換ということでしょうか。

古門 実は人材育成の歴史は古いんですよ。1970年にタイプレスという商品を出したわけですが、始めはオペレーターがいないわけです。そこでタイプレス学院という学校を作り、操作、組版ルールから印刷会社への受け入れ準備などを始めました。ワープロが登場し、DTPが普及しても組版のことを知る人は少なく、印刷業界内部での人材育成は難しいことから、機器開発と並行してオペレーター教育をずっとやってきた歴史があります。
ハードだけ売るのは簡単ですが、それだけでは魅力も夢もありません。お客さんが本当に使っていただけるものにするのが私たちのサービスであると思っております。新しいサービスのように見えますが、わが社の姿勢として以前からやっていることでもあるのです。「顧客とともに栄える」というのが社の理念です。それで85年ずっとやってきています。

――顧客とともに栄える、というもう一つの具体例がp-collaboでしょうか。

古門 そうです。だいぶ業界の中でもp-collaboの認知度が上がってきました。切っ掛けは1995年の阪神・淡路大震災です。印刷業界はどう復興すべきかを考えると、復興に向けて機械を買ってほしいけれど、一人で儲けようとか、そのために設備を全部自社で設置しようとか、そういう考えはやめましょう。互いに協力し合いましょう、下請け感覚はやめましょう、復興のために対等な立場で仕事の仲間作りをしましょう、ということを呼び掛け賛同をいただきました。それで「印刷作業のコラボレーション」という展示会がスタートしました。お客さん同士が新しい仕事仲間が増えた、今まで困っていた仕事ができるようになったと非常に喜んでいただいています。
「印刷作業のコラボレーション」のサポートサイトとして「p-collabo.com」を立ち上げて、ここに今現在で約400社の印刷会社に登録していただいています。31のカテゴリー(キーワード)に分けて、自社の強みの分野に登録しています。1社で3分野出せるようにしています。例えば、「会社案内/パンフレット」が得意、もしくは「大判の印刷」が得意というような分野カテゴリーが31あり、そこへ登録していただいて、そこから印刷会社が簡単に見つかるようになっています。自社の仕事に対して、身近なところあるいは逆にちょっと離れたところで仕事をやっていただける仲間を見つけるパートナー探しのサイトにしております。現在もう一段進めまして、一般企業からの問い合わせにお応えできるサイトにしたいと考え、お客さんのご要望を受け取り、自動的にメールを配信し、あとは直接やりとりができるようにしています。業界全部がしっかり儲かるような形にしていただきたいというのが一番の願いです。
私は1948年生まれですから団塊の世代の真っ只中です。団塊世代は、コンピュータ化されるプロセスを体験しており、昔の手作業とコンピュータ化の両方を知っている人間ですね。定年になった方々のノウハウを、業界のために生かしたいと考えて定年退職者の方々の派遣業務をやらせていただこうと考え「キャリア世代登録」を設けました。また最近始めたのは、生まれ故郷で仕事をしたい、そういう人には登録していただいたら定年までにお仕事を見つけますよ、というような「シニアUターン登録」も作りました。

――最後に文字というものをこれからのビジネスの中で、どういうふうに位置付けられてやっていかれるのでしょうか。

古門 ビジネスとしてはなかなか難しいですね。しかし、文字メーカーはとして、日本語というすばらしい財産をきちんと後世に継承していけるようにしたいと思います。どんなに電子化が進んでも、それぞれの国、民族の言語は文化であり、印刷物もパソコンでも携帯も全部日本語を使っていますからね。

株式会社モトヤ
東京本社:〒104-0032 東京都中央区八丁堀4-5-5
TEL 03-3523-8711 / FAX 03-3523-8712
大阪本社:〒542-0081 大阪市中央区南船場1-10-25
TEL 06-6261-1931 / FAX 06-6261-1930

 

 

(2007年6月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

紙は情報伝達素材の一つ~思いを伝えられる紙製品作りを目指して

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:紙は情報伝達素材の一つ~思いを伝えられる紙製品作りを目指して

 

株式会社竹尾 代表取締役社長 竹尾 稠氏に聞く

 

竹尾は1899年の創業以来、紙の専門商社として、特に紙自身に色や風合、そして模様を施した特殊紙の研究・開発・提供に注力し、多くのオリジナル商品が高い評価を得ている。 竹尾の歴史の中で培ってきた紙へのこだわりとまなざしは、全国主要都市で1965年以来毎年開催している「TAKEO PAPER SHOW」にその一端をうかがうことができる。「TAKEO PAPER SHOW 2007」を盛況のうちに終えた竹尾稠社長に、同展への思いを中心に今後の取り組みなどを伺った。

―「TAKEO PAPER SHOW」は’特殊紙の竹尾’と呼ばれる貴社ならではの充実した展示内容によって、業界唯一の、 そして最大規模の展示会として各界からも評価されています。「TAKEO PAPER SHOW 2007」は、 以前とは様変わりしたような印象を受けましたが。

竹尾 「TAKEO PAPER SHOW2007」は4月12日からの3日間、東京丸の内・丸ビルホールで開催しました。42回目を数える今回は、会場をこれまでの青山から丸の内へ移し、新たな「TAKEO PAPER SHOW」を展開しました。 「FINE PAPERS」をテーマとして、A~Zの頭文字の26銘柄のファインペーパーを使い、丸ビルおよび周辺のショップやカフェ、そして国内および世界で活躍するアーティストとのコラボレーションによる作品を展示し、展示作品は会場内展示と同時に開催期間のみ各ショップにて、数量限定で配布することもいたしました。 ファインペーパーは紙市場全体の2~3%程度と考えられますので、市場を拡大していくためには何か大きなプロモーションを行う必要があるというところから企画されました。今年も含めここ数年は毎回常に企画内容に変化を与えるようにしていますが、以前はお客様が使った紙製品そのものや紙を使った成果物などを並べて、「こういう使い方があるのか…」「他の人たちはこう使っているのか…」ということを感じていただく内容でした。それが段々と「この製品はこう使ってほしい」「こういう印刷加工技術を使うとこうなる」といった、われわれから新しい提案をしていく「TAKEO PAPER SHOW」に変わってきました。 竹尾の営業担当者が、来場されたお客様に印刷の周辺市場にある、例えば「グリーティングカードはどう使うのか」「カタログもここまでできるようになりましたよ」と、その周辺市場の技術がどこまで進んできているかをお話しすると、お客様がそれに刺激を受けて自分たちももっといい印刷物を作ろうと感じていただけます。これによって、紙と印刷加工技術とデザインそれぞれのレベルが上がってきますので、竹尾・印刷業界・お客様ともにメリットのあるイベントとなっています。 また、「TAKEO PAPER SHOW」にとって紙と印刷加工技術とデザインの3つはとても大事な要素です。どれが欠けてもいけません。デザイン性が前に出過ぎるとファッションショーのようになってしまいますし、技術が出過ぎてしまうとマニアックな感じになってしまいます。つまり、「TAKEO PAPER SHOW」が独り歩きしてしまうわけです。これでは見る方々にとって面白くないものになってしまうので、原点に戻りながらそれぞれがバランス良く感じられるイベントであるように定期的に軌道修正を行っています。

―過去の「TAKEO PAPER SHOW」を振り返ってみて、印象に残っていることなどをもう少しお聞かせ下さい。

竹尾 「TAKEO PAPER SHOW」では日本にないような海外のいろいろな市場を紹介することも随分やりました。例えば非常にニッチなものであった「アニュアルレポート」を紹介したこともありました。日本は機関投資家が多くて個人株主が少ないので、今でもあまり定着したとは言えないかもしれませんが、日本にはなかった紙に関わるアメリカの文化を紹介したことはとても印象に残っています。ただ、今後については「アニュアルレポート」よりも「環境報告書」のほうが重要となりニーズが高まってくるかもしれません。

―ニッチな市場も大切ということですね。

竹尾 印刷の定義・範囲が広がってきて、印刷技術が多様化しているように思います。コンピュータが個人のものとなって、当然限界はありますがデザインも印刷も個人でできてしまう。それに比例してニーズも多種多様になりますので、ニッチな市場が多くなってくる。これらの多種多様な少量生産ニーズに竹尾はこたえてきました。 私は、紙は情報伝達素材の一つと考えております。紙には、インキをのせてデザインで勝負するための土台というイメージが強いかもしれませんが、紙そのものにも勝負する力があると思っています。個人の感情や企業のイメージを伝えることができる紙があれば、ニッチな市場でのニーズにもこたえていくことができると思います。

―貴社はグラフィックデザイナーを中心としたクリエーターの方々とのお付き合いも長いかと思いますが…。

お客様とのつながりとして、二つの側面をもっています。一方は、紙を製品の素材として使っている紙文具や封筒、出版関係方々で、竹尾にとって直に接することの多いお客様となります。もう一方は、印刷業界を通じたお客様で、こちらは間に印刷会社が入りますので、エンドユーザーの方々はその先にいます。 それぞれ求められるニーズはさまざまですが、それらをしっかりと捉えることは非常に重要だと考えています。竹尾がこれまで提供してきた各種ファインペーパーも、こういったさまざまなニーズにこたえていく中で、研究・開発・販売へとつながってきたものです。常に良い紙製品をご提供していくためにも、今後もエンドユーザーの方々とのつながりはあらゆるチャネルを使って大事にしていきたいと思います。 お客様との接点としては、見本帖本店もあります。1Fでは、竹尾の常備在庫品のうち300銘柄(2700種類)の紙が色のグラデーション別に一覧できるシステムを用意し、2Fでは紙やデザイン関係書籍を閲覧いただけるほか、紙とデザインの作品をサンプルとして常時展示しています。年に何回かの、紙とデザインに関するさまざまな企画展やセミナーも開催しています。

―環境への取り組みを非常に熱心ですが。

竹尾 竹尾では、「『環境対応紙GA(グリーンエイド)商品』の積極的な開発を展開し、地球環境への負荷がより少ない製品を提供していく」をスローガンに、環境対応を行っています。「GA(グリ-ンエイド)商品」は、竹尾の非木材紙・再生紙・ 無塩素漂白パルプ紙、およびその他の方法で環境保護に貢献する紙の総称で、効率的な材料確保のための森林管理、印刷適性に合うような製品・技術の開発、原料問題への対応など、多面的に考えております。 ただ、今は原料価格が上昇してきており、数年単位で「竹尾に求められること」「竹尾ができること」が変わってくるかもしれませんので、今後も環境への対応には力を注いでいきたいと思います。

株式会社竹尾
本社:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-12-6
TEL 03-3292-3611 / FAX 03-3292-9202
見本帖本店:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-18-3
TEL 03-3292-3669 / FAX 03-3292-3668

 

 

(2007年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「第二の創業」に向けて

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:「第二の創業」に向けて 

 

富士フイルム株式会社 グラフィックシステム事業部 商品技術戦略グループ 技術担当部長 森本恭史氏に聞く

 

「第二の創業期」と位置付け新たなグループ経営体制に移行し、グループ全体の戦略立案機能の強化、経営資源の全体最適配分、コラボレーション領域の拡大などさらなる連結経営の強化を進める富士フイルムに今後の展開を伺った。

--第二の創業期とは?

森本 グラフィックシステム事業も富士フイルム全体の第二の創業に従い変わっていくということだ。本年2月、持ち株会社の富士フイルムホールディングス、事業会社の富士フイルム・富士ゼロックスの本社機能を東京ミッドタウン(以下、TMT)に集結させた。そして、現在、施策展開の質とスピードを向上させて、より高度なシナジー効果を追求しているとともに、戦略的なグループ経営を強力に推進している。その全社的な動きをブレークダウンし、グラフィックシステム事業でもデジタル印刷分野などで富士ゼロックスとのコラボレーションを本格的に開始した。

--基本的な戦略と事業展開は?

森本 中期経営計画を2004年2月に策定し、2006年4月に再策定した。その中に3つの基本戦略がある。それが、「経営全般にわたる徹底的な構造改革」「新たな成長戦略の構築」「連結経営の強化」だ。富士フイルムグループには3つのセグメントがあり、1つ目はカラーフィルムやデジタルカメラなどのイメージングソリューション部門、2つ目は印刷システム機材や医療画像機材、フラットパネルディスプレイ材料などのインフォメーションソリューション部門、そして3つ目は富士ゼロックスが担うドキュメントソリューション部門である。

--構造改革について

森本 イメージング分野を中心に2005~2006年度で集中的に実施した。デジタルカメラとカメラ付き携帯電話の普及により、カラーフィルムの需要が減少していく中で、既に需要に見合った事業体制の最適化を完了させた。他社がカラーフィルム事業から撤退している状況だが、当社はきちんと写真文化を守っていくということを力強く申し上げたい。写真の価値、その素晴らしさを引き続き伝えていくことが使命と考えている。

--新たな成長戦略について

森本 5つの重点事業がある。それは、[1]液晶ディスプレイ用の偏光板保護フイルム「フジタック」などの高機能材料、[2]メディカル/ライフサイエンス、[3]グラフィックシステム、[4]ドキュメント、[5]関連会社のフジノンが中核となる光学デバイスである。これらの事業に対して、積極的な設備投資、研究開発、M&Aを実施している。設備投資に関しては、九州に「フジタック」の新しい生産工場が稼動し、さらに今後、第2、第3の工場が立ち上がる。M&Aに関しては、グラフィックシステムやメディカル/ライフサイエンスの事業分野などを中心に、スクリーン印刷用インクや産業用インクジェット用インクメーカーのセリコール社(英国)やインクジェットプリンタ向けインク染料メーカーであるアビシア社(英国)、産業用インクジェットプリンタ用ヘッドメーカーのダイマティックス社(米国)、放射性医薬品メーカーの第一ラジオアイソトープ研究所(日本)などを買収した。富士フイルムの強みや技術を生かせ、シナジー効果が発揮できるM&Aを行っている。研究開発に関しては、2006年4月に「富士フイルム先進研究所」をオープンさせ、先端基礎研究、新規事業や新製品の基盤となる要素の研究開発をさらに強化している。

--連結経営の強化について

森本 2006年10月に、社名を変更するとともに、富士フイルムホールディングスを中心に、富士フイルムおよび富士ゼロックスの2大事業会社を傘下に束ねた新たなグループ経営体制に移行し、本年2月には、別々にあった本社機能をここ(TMT)に集結させて、連結経営の強化をさらに加速させている。この新体制の下で、富士ゼロックスとのコラボレーションを推進し、グループの技術力の強化も図っていく。

--グラフィックシステム事業の展開は?

森本 富士フイルムグループの売上高は約2兆7千億円で、グラフィックシステム事業はその約10分の1を占めている。現在の主な製品はCTPで、ワールドワイドに展開している。販売戦略はエリアごとに異なるが、全体の傾向として言えるのは、省力化、環境対応などを考慮したCTPのプロセスレスやケミカルレスという商品の開発、販売に注力している。国内では、既にET-Sというサーマルプロセスレスの商品を販売中。さらにバイオレットのケミカルフリーを来年投入することを発表した。その先には、デジタルプリンティングの市場が拡大してくる。M&Aでインクやヘッドのメーカーを買収したのはそういう背景もある。もちろん、この分野での研究開発にも注力している。特にdrupa2008では、デジタルプリンティングに重きをおいたコンセプトを強く打ち出していく予定。

--オフセットの置き換えと新たな市場は?

森本 近年、書店などの陳列でお気づきだと思うが、雑誌など印刷物の種類が増え、動向としては少量多品種化の傾向であり、高耐刷を必要としないデジタル印刷には有利な環境になってきている。その中で、デジタル印刷のキーとなる高画質化などが達成されれば、オフセット印刷からの置き換えも進んでくると予測される。また、デジタル印刷は必ずしも雑誌といったメディアだけでなく、新たな市場として商業印刷以外の産業用印刷分野、いわゆる、サイングラフィック、スクリーン印刷などにも拡大していくと思われる。

--デジタル化でグラフィックシステム全体はどう変わるか?

森本 あるアンケート調査結果ではコストダウン、環境対応、省スペース化の観点で印刷会社は中間材料が少ないほうがよいという意見が多く出ている。その意見に対する提案の一つがデジタル化(廃棄物削減、スペース減などのメリットがある)である。この影響により従来の印刷方式は徐々に減少する可能性がある。ただ、新聞印刷などのオフ輪分野は高耐刷が必要であるため、デジタル化には課題が多い状況である。従って、今後のグラフィックシステムの市場ではこれまでのアナログ・コンベンショナル対応とデジタル化対応の両方が必要とされるだろう。今後、グラフィックシステム事業は富士ゼロックスとのコラボレーションを拡大していくとともに、市場の将来予測と日常の市場動向をよく注視しながら、市場への最善的なサービスを目指していくことを考えている。

--これからのグラフィックシステム事業の使命は?

森本 お客様に最大、最善のメリットを与えることであり、われわれは、業界の数年後がどんな状況になっているかを想定し、その時々にお客様が何を考え、何を求めているかを的確に判断していく。そして、求められている価値を創造する商品化を進め、提供していくことこそが、われわれの使命だと考えている。 既にお話ししたとおり、この使命を全うするためには、市場の将来予測(仮説)とその検証を1歩ずつ行う(日常の市場動向の注視)ことが大事だと考えている。

<<関連情報:印刷物製作工程の大幅な省力化・効率化を実現した 【FUJIFLM WORKFLOW XMFの概要】

富士フイルム株式会社
東京ミッドタウン本社
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3
TEL 03-6271-3111(大代表)

 

 

(2007年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

拡大するデジタルプリント市場

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:拡大するデジタルプリント市場

 

富士ゼロックス株式会社 執行役員 プロダクションサービス事業本部 事業本部長 栗原博氏に聞く

 

 ここへきて急速に拡がってきたデジタルプリントの分野で、PODとマーケティングを連動させたビジネスなど新しい事業を展開する、富士ゼロックスに現在の市場と今後の取り組みを伺った。

--現在のデジタルプリント市場について。

栗原 日本の市場は欧米に比べ、市場規模のわりに立ち上がりが遅い。アジア、特に中国などが大きく成長し、日本をはるかに超える台数のPOD機器が中国へ出荷され、一部の市場では中国が上回っている。日本が段階的にデジタル化しているのに対し、中国では輪転機からいきなりPODを導入したり、輪転機よりも先にPODを導入して新規参入したりする会社もある。ビジネスモデル自体が日本とはかなり違う。
日本もようやく市場が拡大してきた。品質も向上し、新しいアプリケーションもできている。さらに印刷会社のお客様のビジネスにどう紐付けるかだ。そのメリットをエンドユーザー側が認識してきたことも大きい。印刷会社のお客様でのニーズがかなり上がってきた。

--現在の販売展開は。

栗原 一般企業では、社内で印刷部門をもつ会社だ。印刷会社に対しては、事務用ではたくさん導入しているが、生産財としては、ようやく数年前に参入したところだ。ちょうどこのタイミングで、富士フイルムの資本が少し増えた。
富士フイルムは印刷市場を熟知している。弊社の商品を印刷市場に投入して、チャネルの一つとして一緒にビジネスを展開するのは、相乗効果としてプラスだ。富士フイルムグラフィックシステムズに印刷に強い販売チャネルとしてかなり注力してもらっている。日本国内、アジアパシフィックエリアでは直接に活動している。欧米には、アメリカのゼロックスを通して参入している。国内では富士フイルムグラフィックシステムズと協業し、海外ではゼロックスというチャネルを通して商品を出す。メーカーとしては、そういうグローバルな戦略を位置付けている。

--マーケティングと販促、印刷、PODの連携は。

栗原 一つはエリアを絞った、エリアマーケティングで、その地域でのデータを層別し、そこに合ったマーケティングを展開するためのツールとしてPODを使う。
もう一つは、企業がもつデータベースの属性を分析し、PODをつなげて、個の点でアプローチをする手法だ。郵政公社と協業し、新しいビジネスモデルが立ち上がってきた。お客様のビジネスを一緒に考え、どういう層のお客様を拡大したいのか、分析をする。結果として、そこに弊社の機械が入るケースもあれば、同じことを印刷会社に依頼することもある。その印刷会社は、ビジネスとしては弊社の機械を使っているところを紹介するが、それでも基本的には使える、役に立つということをまず実感してもらう。

--そういうコンサルティングのビジネスをされているのか。

栗原 お金はいただいていない。ただし、後者のほうは、企業のもつデータベースを全部分析するようなことをする。例えば、保険会社がある層に保険を販売したい場合に、どういう内容に一番反応するのか、属性を細分化して、数回に分けて勧誘のDMを打つ。そういう手の込んだことをやる場合には、コンサルティングフィーをいただく。あるいは、いただかなくてもPODをフルカラーで1枚100円という値段を付けて買っていただく。そこにはマーケティングのノウハウが全部詰まっているので、100円を高いとは言われない。リターンがあれば、「次はどういうキャンペーンを打とうか」という相談が逆に弊社に持ち込まれる。そういう効果が表れなければ、継続できない。マス広告より、費用対効果が明確だ。

--PODが先行しているアメリカのモデルは参考になるのか。

栗原 日本の商習慣、考え方にカスタマイズして導入するほうが、うまくいく。ヒントはたくさんあるが、そのままでは良くない。アメリカは印刷の注文に対して24時間以内に全部納品しろと言われる。そうなるとPODしかない。ロジスティクスまで全部含めての提案が必要だ。今後、日本でもそうなると考えたとき、ビジネスモデルも大きく変わる。印刷会社でもそれに対応するのであれば、従来の印刷機とPODは何の違和感もなく同居し、要求に応じて、これはPOD、これは印刷と決めることになる。近い将来、日本もそれが印刷会社のスタンダードな設備になると思っている。そのきっかけは、エンドユーザーがそういうニーズを喚起し、印刷会社もそれに合わせて業態変革をしていくということだ。

--インライン化については。

栗原 従来は単体の機械があって、きれいに出れば良かったが、今はインプットをいかに自動化するか、アウトプットをいかにインライン化して、いかに簡単に処理ができるのか。それは自社でやるケースと、ホリゾンなどといった専門メーカーと協業しながらやるケースとで、上流から下流まで一貫してやる。そこに新しいワークフローを入れて、標準化し、効率を上げる取り組みだ。画質の向上と品質の安定にプラスして、いかにしてソフトウエアで、後処理機で印刷機並みの効率を上げられるかというのは、本当に大きなチャレンジだ。これから出す機械はすべてそうなる。

--前処理について。

栗原 前処理は非常に重要だ。いくら真ん中が速いといっても、本当の意味での生産性は上がらない。結局、上流工程が何であっても、印刷がいいのか、PODで出すのがいいのか、どちらでも選べるようなワークフローを流して、あとは自動的に判別して、これはPOD、こういう原稿でこの枚数でこの画質を要求するならオフセットということで、ワークフロー自体を統合して一元化する。これは弊社としては、FreeFlowというオンデマンド用と、富士フイルムの印刷用のワークフローをもっているので、統合して、印刷とPOD、どちらでも使えるようなワークフローを提供していくことに注力している。drupa2008には、それをもっと分かりやすく、使いやすいものにしたいと考えている。

--今後の市場について。

栗原 日本の印刷会社は極めて丁寧な仕事をし、品質に非常にこだわる。そのことが多少PODの発展を妨げている面はあると思う。海外は、国にもよるが、そこまでやらない。とにかくぱっと見て同じならいいのではないか、PODでも問題ないという判断に立てば、そこまで施設を揃えずに処理してしまおうということだ。「むしろ印刷会社としては仕事の幅がもっと広がる」という発想になるには、その辺が多少バリアとして、ほんの少し残っているのではないか。
印刷会社の場合にはビジネスライクに商品を納品して、「あとはちゃんとメンテナンスやりますから」というだけではなく、少しウェットな関係の構築も、ビジネスとして必要ではないかというのは、一方では感じている。

富士ゼロックス株式会社
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン
TEL 03-6271-5111(代表)

 

 

(2007年8月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

 

日本アグフア・ゲバルト株式会社 代表取締役社長 松石浩行氏に聞く

印刷業にとって、環境問題と生産性の両立は最も関心の高いテーマである。アグフア・ゲバルトは「高品質、最大の経済性、トータルな環境保護。これらの課題は、等しく重要である」ことを企業理念に掲げ、現像処理が不要で、高品質と利便性、高耐刷力を兼ね備えた革新的サーマルプレートの分野でリーダー的役割を果たしている。

この4月に日本アグフア・ゲバルト初の日本人社長となった松石浩行氏に、環境問題を中心に日本国内のニーズをどう捉えるかを伺った。

――現在特に力を入れている分野を伺いたい。

松石 基本的なスタンスとしてはワークフローとプレートに力を入れている。 CTPのプレートセッタは技術的には差別化が困難になって、JDFを中心としたワークフローシステムが重要になっている。次世代JDFベースデジタルワークフローシステム「:ApogeeX(アポジーエックス)」では、Adobe PDF Print Engine搭載の次期バージョンを今夏発売する。CIMとの連携をキーワードに開発を進めている。

また、Webベースのプロジェクトマネジメントシステム「:Delano(デラノ)」は顧客からの入稿データをページ校了まで進行させるWeb承認機能と、ページ承認終了後:ApogeeXにページが送信され自動的にプレート出力まで実行する自動製版機能をもつ。顧客とWebを介してやり取りすることで入稿プロセスを効率化し、顧客とのコミュニケーションを向上させ、かつ校了後の自動製版機能により生産の自動化を実現できるという2つのメリットにユーザーの関心が高まっている。

CTPの登場によって、印刷業界は可能性が広がった。オフセット印刷のオンデマンド化が可能になり、4色機や8色機が使いやすくなって、小ロットなどの分野も活気づいた。プレートの需要は今後さらに拡大が予想され、特にケミカルレスプレート市場は急速に拡大するだろう。プレート工場は全世界に8つあって、中国工場が最大規模だ。韓国に建設する新工場は、ケミカルレスプレート「:Azura(アズーラ)」の専門工場とする予定だ。

――:Azuraの特長は?

松石 :Azuraは環境に優しいだけでなく、欠点が一つもないプレートとして、アグフアとしても自信をもっている。機上現像ではないのでヤレ通しが不要で、オフ輪でも使用できることが最大の特長である。独自のケミカルレスCTP技術により、サーマルレーザー露光後、版面を保護するための専用のクリーニングユニットでガム洗浄するだけで完成し、現像液を全く使用しない環境に優しいプレートになっている。画像コントラストの高い高品質の刷版を得られるので、印刷前検版が可能である。プレートの取り扱いやすさはPS版と同等で、オペレーターに負担を掛けることもない。

環境保護印刷推進協議会(E3PA)によるE3PAゴールドステータスに適合し、国内では商業印刷はもちろんチラシ専業者や食品関係のパッケージ印刷などにも導入されている。

drupa2004で発表以来、ワールドワイドで高い評価を得て、導入ユーザー数は世界一となっている。4月に大阪のダイコロに導入された:Azuraが世界2000台目、日本国内ユーザー50社の記念すべきもので、現在の国内ユーザーは60社に達している。

――デジタル印刷分野はどうだろうか。

松石 デジタル印刷の分野では、産業用印刷向けのUVインクジェットプリンタに力を入れている。サインボードや建材印刷、パッケージ市場向けの「:Dotrix(ドットリックス)」は、既にヨーロッパではコンスタントに売れていて、日本でも来年ごろから販売を開始する準備を進めている。:Dotrixが特殊グラビア、フレキソのオンデマンド化を可能にするのに対して、世界初の完全自動ハイブリッドインクジェット出力機「M-Press(M-プレス)」はスクリーン印刷のオンデマンド化を可能にする。ヘッドはザール社との共同開発によるもので、アグフア製のUVインクを使用する。M-Pressの日本国内発売は未定だ。商業印刷・出版印刷向けのPOD分野に参入する予定はない。

――アグフア本社の体制は?

松石 フィルムメーカーとしてスタートして、その技術に関連する事業領域に拡大し、現在はグラフィックシステム事業、ヘルスケア事業、マテリアル事業の3つが柱となっている。しかし、全分野でフィルムが消え、部門共通の開発テーマがなくなって、部門間のシナジーもなくなった。そこで、2008年1月から資本関係のない3つの会社に分かれ、グラフィックシステム事業はAgfa Graphicsとして分社化される。日本ではどのような体制になるかはまだ未定である。

――ユーザー会が盛んだが。

松石 年に2回東京と大阪で「:Apogeeユーザー会」を開催し、合計で300人ほど集まる。ユーザー同士のフェイスtoフェイスの場として、会の中では情報をオープンにして情報交流を促進している。仕事のやり取りまで発展できればと考えている。

IGAS2007には本社から社長または副社長クラスを呼んで、日本のユーザーの声を直接聞く機会として、ユーザー会でコミュニケーションを図る予定である。 アグフア全体の売上比率では、ヨーロッパが半分を占め、残りの半分を北米とアジアが2分している。アジアの中でも日本が最重要国の一つであることは言うまでもない。

――IGAS2007は環境が切り口になるのか。

松石 「Stay Ahead. With Agfa. アグフアと共に一歩先に」をテーマに、「:Azura」および対応CTP「:Avalon(アバロン)LF」「:Acento(アセント)Ⅱ」の実演と導入ユーザーの声とともに紹介する。先行している成功事例として、オフ輪によるチラシ印刷のニシカワや、A倍判の食品関係のパッケージ印刷のクラウンパッケージを紹介する予定だ。また、JDFインテグレーションをキーに、「:ApogeeX」の最新バージョンと「:Delano」をWeb承認機能、Web入稿機能と自動製版機能を中心に紹介する。さらに「だれにでも刷れる高精細印刷」として高い評価を得ているXMスクリーニング「:Sublima(スブリマ)」の展示を行う。

IGASでは印刷機メーカーは「小ロット対応」を売りにしていることから、メイクレディを短縮化しヤレ紙を削減する観点から、複数のメーカーから:Azuraを使ったデモの申し込みもある。

ケミカルレスで一番メリットが大きいのは印刷会社だ。フィルムからCTPに切り替わって、オープン化に逆行してCTPプレートについては現像装置に縛られることになった。しかし、ケミカルレスなら現像装置が不要なので、CTP、プレート選択の自由度が高まることを強調しておきたい。

世界の中でも日本の市場は業種を問わず、最も顧客の要求度の高い国であると言われている。反面、日本市場で受け入れられた商品・サービスのほとんどが、日本以外の多くの国でも評価されている。1950年の設立以来、日本人初の社長として行うべき最大の目標は、日本の顧客に高く評価される商品・サービスを具現化し、お届けすることだと信じている。日本人の「商品・サービスに対する厳しくかつユニークな感覚」を大切にし、顧客と直接接して得た情報・要望を最大限に商品開発・サービスに反映させるべく努力していきたい。

日本アグフア・ゲバルト株式会社
グラフィックシステム事業部
〒153-0043 東京都目黒区東山3-8-1
TEL 03-5704-3140 / FAX 03-5704-3089

 

 

(2007年9月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

製品開発は確かな方向性を常に意識した視点で

※本記事の内容は掲載当時のものです。
 
事業紹介インタビュー:製品開発は確かな方向性を常に意識した視点で

 

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 副事業部長 吉川俊郎氏に聞く

 

三菱重工業は、色合わせを短時間に完全自動化できる「MAX DIAMOND EYE」を搭載した商業輪転機を「IGAS2007」で発表し、ブランド名を「DIAMOND」に変えた新型枚葉機を市場に投入した。活発な事業を展開している紙・印刷機械事業部の副事業部長の吉川俊郎氏に、印刷業界の市場動向と同社の戦略を伺った。

――印刷市場をどのように捉えているか。

吉川 大手新聞社は紙面のカラー化に力を入れていて、地方紙でも設備投資が進む。地方紙ではページ数は少ないがオールページカラーもある。今後は、地方での新聞印刷の競争は一段と激しくなるだろう。
印刷物そのものの絶対量は、統計的に見てもあまり減っていない。しかし日本国内でも徐々に電子印刷、オンデマンド印刷が増えてきた。一方、グラビア印刷など有機溶剤を使う印刷が減っている。オフセット印刷は、ほぼ横ばいで推移していくのではないか。 フリーペーパーの需要が増え始めた2003年ごろから商業輪転機の出荷台数が増え、国内で年間70台前後だったものが、100台超で推移した。A系列が増えB系列も後から少し増えたが、今年は以前のレベルに戻った。また、新聞輪転機でも、資材や紙の白色度、平滑度を選べばかなりのレベルのカラー印刷ができるため、一部の新聞印刷工場ではフリーペーパーを新聞輪転機で印刷している。

――アジアなど海外の動きはどうか。

吉川 急成長しているBRICsの中でも、中国の印刷物の伸びは大きく、枚葉機の数が急増している。欧州通貨が高いため、ドイツより日本メーカーが有利で、距離的にも近いことから好機だと思う。
中国は紙の生産量と消費量が非常に増えたが、新聞の発行部数は意外に伸びていない。従って、新聞輪転機もそれほど急激には納入されていない。また輪転機の設備計画の動きが遅いので、当面は枚葉機ではないか。インドは、まだ圧倒的に枚葉機だが、輪転機も増えていく時期が近々来て、今の中国より伸びるのではないか。

最近、日本では商業輪転機の小ロット化に対抗する差別化の狙いもあって、枚葉機では両面印刷、厚紙や特殊原反(プラスチックのフィルム)への印刷、さらにニスや箔押しなどの高付加価値印刷をワンパスで行う機械が増えている。従来の枚葉機のような標準仕様で販売しているのは中国くらいで、インドもコーター付きの機械が多い。アメリカ、ヨーロッパでは、いろいろな自動化装置の付いたものが標準的になっている。
昨年、北京に合弁会社を作り、菊半裁枚葉機の現地生産を始めているが、仕様は標準仕様の中国向けの機械だ。昨年は12月までに3台出荷し、今年は年末までに45台出荷する予定である。来年はもう少し増やす計画にしており、自動化や高機能化のオプションも付けていく予定だ。

――国内向けの取り組みは。

吉川 「IGAS2007」に出展した商業輪転機で、デモのプレゼンテーションを担当した女性が、自分でアナウンスしながら「私が運転します」とやったくらい、簡単に操作ができることを披露した。それができるのは、「MAX DIAMOND EYE」という全自動色調管理装置で、製版の画像データを基準に濃度を合わせてしまう。新聞輪転機用に開発した装置で、既に各新聞社に相当数納めているが、それを商業輪転機用にバージョンアップした。製版の画像データを基準に、その画像データの画線率に基づいて各インキキーがインキ量を自動的に調整するので、刷り出しの起動ボタンを押すだけで正紙が出てくる。カラーパッチが不要のオンライン全自動色調制御は、世界初の画期的な装置だ。

――枚葉機に掲げた究極の目標値に対して、今、どのくらいのところまで来ているのか。

吉川 「IGAS2007」で披露した枚葉機「DIAMOND300」の開発では、印刷スピードをどうするかを一番議論した。枚葉印刷は小ロット化がさらに進み、生産性向上にスピードが寄与する効果は少ないと判断、スピードより機械が止まる時間を短くすることで、生産性を向上しようという発想で開発した。

1号機を導入した印刷会社では、従来1時間に2ジョブだったものが、DIAMOND300では3ジョブ入れられる。全色同時全自動版交換装置を搭載しているので、ユニット数が4色でも8色でも12色でも、最短75秒で全色版交換できる。
印刷機開発で一番基本的なところは、絶対に印刷品質を落とさないことだ。印刷物の網点のツキや再現性、見当精度、ダブリが出ない、そういう基本的な性能は、従来機より上げても下げないことが基本だ。コストを絞りたいからといって、そのへんの手を抜くことは絶対にやらない。

――これから実現していきたいことは。

吉川 商業印刷の場合は特に顧客が儲かる機械でないといけない。用紙代が印刷コストの中でかなりの部分を占めるので、紙を無駄にしないことが重要だ。それには、例えば輪転機では刷り出し時間が早いことが大切で、MAX DIAMOND EYEのように、全自動かつ短時間で色が合うことや断裁寸法も合うことが、当面の目標になる。その結果、オペレーターの数を減らせるので、商業輪転機で2~2.5人必要なところをワンマンでオペレーションできるものを開発していて、ほとんど完成している。

一番の関心事は環境保護だ。三菱重工には、さまざまな環境対策の技術やノウハウが蓄積されているので、これらの技術を応用することで、印刷産業の環境保護の動きに適した、優れた機械を開発して提供していきたい。

――新聞印刷はビジネスモデルが変わっていくだろうか。

吉川 日本でも、これからの新聞はセクション分けして、その人が必要とするセクションだけを配っていくパターンや、細かい区分の地域版などが出てくるのではないか。現状では、チラシの配布を含めた宅配制度が日本の新聞業界を支えているが、新聞輪転機で印刷していると思われるタブロイド版のフリーペーパーもあることから、この宅配システムをさらに有効活用する方法が開発されるのではないかと思う。

後は、やはり紙である。通常の新聞用紙では線数を上げてもにじんでしまうので、最近の新聞には白色度の高い、厚い紙で見開きカラー広告が入っている。これなら新聞輪転機でもカラー品質はそこそこであり、新聞社はそれによる広告量の確保を考えていると思われる。

――強調していただくところがあれば。

吉川 印刷機の将来の姿を考える中で、MAX DIAMOND EYEのように、メーカーが勝手に考えて開発してヒットする商品も時々ある。 しかし、そういうのはまれで、やはりお客さんである印刷会社、新聞社、あるいは周辺装置の業界の人といろいろな話をしながら、ヒントや方向性を見いだしていくことが大半である。そういう意味では、顧客と良い関係を保ちつつ、実際に設計や開発を担当する者の視点だけではなく、われわれもそうした機会を持ちながら、確かな方向性を常に意識していくことが、絶対に必要であると思っている。

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部
〒729-0393 広島県三原市糸崎南1-1-1
TEL 0848-67-2054 / FAX 0848-63-4463

 

 

(2007年12月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

未来志向のマーケットリーダー

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 事業紹介インタビュー:未来志向のマーケットリーダー 

 

株式会社メディアテクノロジー ジャパン 代表取締役社長 田丸邦夫氏に聞く

 

大日本スクリーン製造の国内販売部門から分社独立したメディアテクノロジー ジャパンは、柔軟な発想と機動力で、マーケット主導型の事業を展開している。印刷生産工程の効率化を実現するCTPワークフロー、生産・営業・業務・経営を統合するJDFワークフローからデジタル印刷までトータルに顧客満足の実現を目指している。

――まずIGASの反響からお聞きしたい。

田丸 当社はこの6~7年CTPとワークフローに集中してアピールしてきた。「IGAS2007」では、インクジェットによるPODで対応が可能になったサインディスプレイや、新聞業界に求められるトータルソリューションを提案し、今後の展開として、「Truepress Jet(トゥループレス ジェット)520」によるインクジェット新聞についても紹介した。
品質、納期、コストを総合して、封入・封緘まで一気通貫のシステムを構築するニーズがあって、生命保険会社などもかなり内制化が進んでいる。製品単品ではなく、ワークフローやソリューションをセットで考える傾向にある。
CTPやワークフローをある程度整備した印刷会社は次は何をしたらいいか、設備投資や方向性に悩んでいる。そこで、クライアントの課題と技術動向を合わせて次のステップでは何をやるかを、マーケティングの視点から見ている。
従来型の印刷業の売上高は縮小傾向にあって、収益も下がっている。そこで、もう少し付加価値の高い事業分野を模索しているクライアントが多い。産業用インクジェット印刷市場は業容拡大になる。業態変革と言うと、従来の印刷に対して脱印刷のような方向性が必要になる。

――CTP化から新しいワークフローの構築によって、デジタルプリンタにつながるのは、印刷業界としても移行しやすいモデルに思える。

田丸 他社もハイブリッドワークフローを提案しているが、大日本スクリーンのソリューションとして言い換えると、入稿データをRGB/PDFに移行し、一つのオリジナルPDFから「製版印刷側で印刷方式やデバイスに対してそれぞれに最適なデータを出力するワークフローの構築」となる。これを’One Source Multi Print’と表現し、「IGAS2007」のテーマとして位置付けた。
営業スタイルも違ってくるので、ハイブリッドワークフローだけでなく、POD専用ワークフローが必要になる。昨年、帳票などを高速に印刷できるインクジェット印刷装置「Truepress Jet520」を開発し、商業印刷市場では既に多くの実績を残し高い評価を得ている。

――トランザクション系の場合、検査などがあるので、従来型の印刷とは少しイメージが違う。

田丸 トランザクション系だけではないが、クライアントから個人情報を預かる、場合によっては自分のところで管理するとなると、セキュリティの問題だけでなく、個人情報も含めたデータの保存、管理が重要な責任範囲になってくる。ソフトと出力機を購入して、検査装置を付けて封入・封緘装置を整えるだけでなく、セキュリティ管理が非常に重要になってくる。

――ページの発生から全体のセキュリティを含めてトータルにサポートしていくのか。

田丸 そうだ。もちろん個人情報保護は各社でしっかり管理していただかないと難しい。印刷の検査装置は必須だからインクジェットプリントシステムにも標準で付けてある。その先にまた違った管理が必要になってくる。

――情報管理などの責任範囲を業界できちんと考えて新しいビジネスに取り組む必要がある。

田丸 トランザクション系の仕事が一般の印刷会社に普及していくことは考えにくい。設備も高いし、セキュリティ能力、管理能力が非常に問われる。印刷会社もセキュリティの意識は高まって、資格を取ったり、全社的にやっているが、それでもやはりデータベース管理はかなり重い仕事になる。

――印刷会社も単なる印刷だけではだめで、それなりにいろいろな工夫をしている。

田丸 請求書、学習塾、通信教育系などの目的で導入しているクライアントが、カラー化や品質向上のために、「Truepress Jet」のような機械に入れ替えている。今のところかなり限定されたクライアント、印刷会社だけだが、バリアブルプリントの需要はさらに拡大が予想され、従来型の印刷機を補助する形でPODシステムを導入する印刷会社は増えるだろう。
もちろん、生産性、品質、コストの3点で従来型の印刷方式と比較して、効率が良く採算も取れないと広がってはいかない。現時点では、ヘッドが高い、コスト面やヘッドとインクの兼ね合いで品質の安定性などの課題がある。

――オンデマンド関係以外で御社が今取り組んでいるポイントは?

田丸 一つはインクジェット出力機だ。英国のグループ会社、インカデジタルプリンターズでも、産業用UVインクジェットプリンタ「SP320」を中心に売り上げを伸ばした。自社ブランドの大判インクジェットプリンタ「Truepress Jet2500UV」は、サイン・ディスプレイ業界向けで、パネルや建装材など、さまざまなメディアに対応する。
まだ出品はしていないが、産業用カードなどの出力機を、ニッチな分野になるが、PODと少し違った産業分野へのインクジェット出力機と考えている。また、グラビアからフレキソへの展開が徐々に進む中、フレキソCTPや新聞用CTPも出品した。単発のソリューションでシステムとしてはまだ対応していないが、オフセットの印刷機からフレキソ印刷へ、また新聞印刷機も揃えたい。

田丸 –フリーペーパーやイベント関係など、クライアントがいろいろとアイデアを出してくれるかもしれない。 印刷会社のニーズをわれわれ販売会社がキャッチして、商品化のアイデアにすることが必要になってくる。

――御社の優れた画像処理技術はいろいろなチャンスがあると思う。

田丸 画像処理技術、生産技術はかなりのレベルと自負している。時代のニーズに合った商品化を進めたい。毎年一つずつ画期的な製品を出せると、差別化やコストダウンなど、クライアントのお役に立てると思うが、なかなか実現は難しい。

――最後に今後の方向性を伺いたい。

田丸 社員には「アンテナを高く、姿勢(目線) は低く」という姿勢を求めている。アンテナをなるべく高くしてクライアントのニーズをキャッチする一方で、考える姿勢や目線はクライアントと同じ高さでなくてはならないという意味だ。かつてはプロダクトアウトの考え方が主流だったが、今はマーケットドリブンで製造も販売もやっていくべきだ。クライアントが入った協議会や意見交換会、情報交換会は非常に有益だ。今後はレディーバードクラブなどのユーザー会などの場も活用しながら、できるだけ多くの提案を行っていきたい。

「PAGE2007」では「PDFブレイク元年」をテーマに、PDFワークフローのアドバンテージを具現化するソリューションを中心に、ユーザー事例を交えながら具体的に提案した。「PAGE2008」ではPDFワークフローとPOD導入期のワンストップサービスの新しい考え方をアピールしたい。

株式会社メディアテクノロジー ジャパン
〒102-0074 東京都千代田区九段南2-3-14 靖国九段南ビル
TEL 03-3237-3101 / FAX 03-3237-3187

 

(2008年1月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

本格化するデジタルプリント市場をリードする

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:本格化するデジタルプリント市場をリードする

 

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社 プロダクションプリント事業部 事業部長 深沢哲也氏に聞く

 

デジタルプリントが、いよいよ本格的なビジネスになってきた。中小印刷業にも数多くの導入実績を持つ、コニカミノルタビジネスソリューションズに、デジタルプリントの現状と今後の展開を伺った。

――最近のビジネス展開は?

深沢 弊社の親会社が、ワールドワイドでデジタルプリントビジネスを開拓し、今後も拡大していく。弊社は2008年度で1000億円の売り上げ目標としている。 顧客の8割が商業印刷の印刷企業で、メインは中小規模、あるいは大手でオンデマンドの事業を運営している会社だ。後、2割は企業内印刷だ。
オンデマンドへの関心は非常に高い。導入先には、いろいろな事例がある。商業印刷でもマーケティングを重視している企業は、クライアントに対して提案の仕方を持っている。営業開拓も強い。

そうでない場合、商談の中で、導入事例を紹介して、一緒に考えている。具現化する場所として、2007年10月にオープンした、品川の「コニカミノルタ デジタルイメージングスクエア(DIS)」を活用している。2008年から販売店向けの会議で、カラーの勉強会の計画もある。モノクロは堅調だ。

――モノクロの出荷割合と、見通しは?

深沢 台数は、モノクロが堅調である。カラーの伸び率は非常に高い。前年から135~140%くらいに伸びた。プリプレスからポストプレスまでの一貫で販売しているため、純粋にオンデマンドのケースが多い。モノクロとの比較では3対7だ。 単価の問題もある。カラーになると単価が大きく変わる。これは一般のオフィス系も全く同じで、モノクロをカラーに変えて売り上げを確保している。

――印刷会社に導入しやすいモデルは?

深沢 基本的にはショートランの仕事向けだ。最近は納期がかなり厳しく、午前中に入稿したものを昼ごろに納品というケースもある。納期を最優先するケースでは、圧倒的にオンデマンドだ。

――品質に対する印刷会社の理解は?

深沢 オンデマンドの仕上がりを見ると、当然分かるが、そこまで要求しているクライアントか、どうかという見極めは必要だと思う。 絵柄によっては、オイル系のトナーは、光ったコピー系の色になってしまう。弊社の場合、比較的オフに近い色合いが出るという評価を得ている。弊社はトナーの研究が非常に進んでおり、デジタルトナーと言って、微粒子の小粒径化で高画質を実現している。耐光性はオフより高い。

――日本の市場に合う用途は?

深沢 一番分かりやい販売モデルは、年賀はがきである。ほかのオンデマンドプリントではほとんど扱っていなかった。全体の成長がない中で伸びたということで、4、5年前から全面的にコニカミノルタの機械にオフから切り替えるところが出てきた。11月、12月は、フル活動だ。しかし、季節産業のようなもので、後は全然動かない。日本の場合は、カードは欧米などと違って年賀状くらいしかない。確固としたモデルというのが見つけづらい。今後は、バリアブルをもう少しアピールしていく。

――中小規模のトランザクションは?

深沢 そのあたりがポジション的には扱えると思う。圧着はがきなどもDISで販売していく。 企業も、フルライン印刷をやり始めている。中小印刷はそこに提案をしていかないといけない。セキュリティやコンプライアンスのことなど、強いパートナーと手を組んで提案していく。DISには圧着の機械も置いてあるので、いろいろやってみようと思う。

――印刷会社の意識については?

深沢 大手の製造会社で、カタログを作り置きすると、大量に余って捨てざるを得ないということで、ここを何とかしたい。大手だと、その金額が億という単位になるので、そこをオンデマンドの機械でやれないだろうか。
セキュリティの問題もある。中堅では自社のセキュリティもきちんとやろうという動きも確かにある。データが入ってきたら、あまり人が関与しない形で、プリントと後加工の間に検査装置があったり、枚数、納期などの条件でオンデマンドかオフに振り分ける、というものがアメリカでは稼動している。そのソフトは来年くらいに日本語版で入ってくる。面白そうなので、ぜひやっていきたい。

――IT化とオンデマンド印刷の関係では?

深沢 オンデマンドが増えてくると、前工程を極力縮めていくという方向に行く。今はオフでもそういう方向に行っている。 過去からずっとデータを作って持っている印刷会社は、内部の重要な部分に対応しているところはある。そういうところはデータの厳重なセキュリティをやっている。非常にレベルの高いことをやってお客さんの信用を得ているのはある。

――デジタル印刷もだんだん本物になってきた。

深沢 そういう意味では、今売っているメインの製品の、一つ上の部分をやっていきたい。 フルカラー・オンデマンド高速印刷システム「ON DEMAND PUBLISHER C65」にくるみ製本出力処理がインラインでできるオプション「くるみ製本機」を組み合わせた、印刷から製本までを一貫して行えるシステムを訴求している。製本機械はなくてもいいという印刷会社もあるが、用途によっては十分使える。

他メーカーとは違い、オプション的なものも全部内製で、その機械に合わせて一番最適なものを設計している。外から持ってくると、基本設計と合わないとか、エンジンの速度とポストのほうの出が合わない。あるいはメンテナンスの人がそこだけは触れない、違うメーカーのものだとできないなど、不都合があってあまりインライン化されていなかった。 コニカミノルタは開発部も同じチームで、かなり完成度は高い。全体としてコンパクトにまとまり、デザインも同じ形が取れる。

――今後について。

深沢 今は、DISをどういうふうに進化させていこうかと。単に箱を置いているだけではなく、どんどん進化させていきたいと思っている。販売店やクライアントと話しながら、進化させたい。「品川に来て何社か見たが、コニカミノルタが一番良かった」と言ってもらえるような、発信基地のようなところにしたい。プロダクション能力もあり、ここでいろいろな研修などもやっている。ADSLで機械のリモートメンテナンスも入れている。主要な部分はかなり充実している。セミナールームには80名くらいは入れる。11月からはフル活用している。年間280~290件くらいのデモンストレーション、セミナーを行っていく。

 

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(2008年2月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)