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新入社員研修は社会人へのマインドチェンジを担う

今年も印刷業界には多くの新入社員が入社してきた。JAGATで開催されている新人研修にも、印刷会社の新人たちが連日訪れ、賑わいを見せている。
入社後、会社が実施する新人教育は、仕事を進めていく上で必要な知識や技術の習得だけでなく、仕事や組織への理解を深め、社会人としての心構えやルールを身につけることによって、新しい環境に対する不安を減らすという意味でも大切だ。配属前の導入教育の期間は、新入社員にとって、学生から社会人への切り替えの期間でもある。

社会人へのマインドチェンジ
学生から社会人へのマインドチェンジを行う上で高めたい意識・スキルには以下の3つがある。
1.ビジネスマナー
2.コミュニケーション力
3.結果を出すための目的達成意識

学生時代と異なり、組織の中では、与えられた環境の中で、成果を出すことが求められる。良い人間関係を築き、スムーズに仕事を進めるために必要なのがマナーとコミュニケーションだ。組織のルールやマナーが実践でき、上司や先輩とスムーズにコミュニケーションがとれるようになれば、信頼関係が生まれ、成長を促すことにつながる。ビジネスマナーとコミュニケーションスキルを習得することは、社会人として最も基本のスキルだ。

結果を出せるようになるための意識を育てる
さらに、学生と社会人を分ける大きな差は、組織の一員として「結果」を出すことが求められることにある。インプットに多くの時間を費やした学生時代に比べ、会社の中ではどれだけアウトプットできたかが評価対象になる。仕事の進め方や姿勢、日々の行動の結果がそのまま仕事の質や量となってあらわれてくる。目的を達成するため、何をすればよいのかを意識することが、結果を出せるようになるために必要だ。

印刷会社の社員として、何を考え、どう行動すれば、社内外からの信頼を得ることができるのか。お客様が何を求めているのか。組織の一人として、何を与えることが出来るのか。
入社後の新人教育の期間はそのような社会人としての意識を育む時間でもある。
新入社員は会社の成長を支える財産である。これからの印刷ビジネスを広げてゆく人材として、自らの能力を伸ばし、自信をもって仕事に取り組んでいってほしい。

印刷新人教育に必要な体験型人材育成の重要性

新入社員のモチベーション向上、早期離職の防止、即戦力化を図る上で重要な体験型人材育成の重要性とは。

4月1日の朝、新調されたスーツに身を包まれた新社会人がいつもの満員電車に加わる。緊張、期待、挑戦、不安など様々な感情が車内を新鮮な風で彩り、また新たな1年が始まるなぁ~と実感し背筋もピンと張り直る時期が今年も訪れた。

■新人教育に力を入れる企業の増加

新卒採用市場は、依然として売り手(学生)優位市場が続いている。企業の人事担当者は、優秀な人材の確保、内定辞退、ミスマッチによる早期退職の防止に努める必要がある。
マイナビ調べ(2020年卒マイナビ学生就職モニター調査 2月の活動状況)では、企業を選ぶときに特に注目するポイントは「社員の人間関係が良い(43.7%)」が最も高く、次いで高いのが「自分が成長できる環境がある(39.2%)」だ。成長できる仕事やスキルアップのための人材育成の機会を与えることが、新入社員のモチベーション向上、早期離職の防止、即戦力化を図る上で重要なポイントとなる。

JAGATも4月より新入社員向けの研修を開催し、印刷業界の新たな仲間が多数訪れている。売り手市場のため、1社当たりの新入社員数は減っているが、ひとりに対する研修投資を増やしている企業が多い印象だ。中小印刷企業は、何年ぶりかの採用や、年間の採用数も数名であれば多い方であり、新入社員の入社は企業にとって特別であり育成に力を入れる企業が増えるのは当然である。

一般的には、ビジネスマナー、印刷基礎知識、自社の工場研修を4月中に行い、5月頃から現場に配属されるケースが多い。しかし中小印刷企業の現場は、ぎりぎりの人数で仕事をこなしているため現場での十分な新人教育の時間をとれないことや、毎年新卒社員を採用していない企業は教育慣れしていないなどの課題を持つ。そこで中小企業も外部の研修機関を利用しての新人教育を行うケースが増えている。また、大企業と違い採用人数が若干名のため、ひとり一人に集中して教育投資を行うことができる。4~6月を教育期間と捉えて、数カ月も外部の研修機関に新人を派遣するケースもあり、こうした新人向けの長期研修には厚労省の助成金「人材開発支援助成金」も活用しやすく利用ケースは増えている。

★人材開発支援助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

■体験学習×新人教育

ただし、長期研修に派遣する上で課題となるのが受講する新人のモチベーションの維持である。昔は講義を一方的に聞く知識習得型のスタイルが主流であったが、時代の流れとともに変わり、今の新入社員に適した研修スタイルは「体験型」である。財務研修であればゲーム性の高いマネジメントゲーム、新規事業立案であればグループワークショップによる仮想企画コンテストなど、体験型コンテンツの人気が高い。体験型研修は、ただ面白いからモチベーションを維持できるのではなく、講義で学んだことを実体験して活用することで知識を血肉にしやすいメリットがある。また、架空の事例による体験ではなく、より現実的な体験であれば教育効果は高くなる。

★アクティブ・ラーニング「リアル体験×学習プログラム」が織りなす高い学習効果
https://www.jagat.or.jp/archives/57962

印刷営業であれば、印刷営業のプロセスとしてヒアリングから企画、見積作成、プレゼンテーション、印刷物の仕様書作成、デザイン依頼、データ入稿、印刷出力、納品までの一連の流れがある。印刷営業のプロセスは複雑であり講義を受けただけでは、実感が湧かないことが多い。実際に印刷物を発注してくれているクライアント企業に協力を仰いで、このプロセスを実体験しながら研修を行うことで、よりリアルな体験学習をすることができる。

JAGATも印刷企業の新人向けの長期研修として、「印刷営業20日間集中ゼミ」を開催し5月で47期目の開講を迎える。(今年は既に例年を上回る人数の参加を予定しており、長期に渡る研修への新人派遣で即戦力化を狙う企業が増えている。)
今回は、カリキュラムを大幅にリニューアルし、「知識×実践で体系的に営業プロセスを学ぶ」をコンセプトに、リアル体験学習として中野区にあるワインダイニングバー「I‘m Chicken(アイムチキン)」の集客用印刷物の制作を題材に、ヒアリングから企画、見積作成、プレゼンテーション、印刷物の仕様書作成、デザイン依頼、データ入稿、印刷出力、納品までの一連の流れを実体験するプログラムを加えた。

<印刷営業プロセスのリアル体験学習題材>

山梨ワインと鳥料理が主力のワインダイニングバーに対する営業支援の体験
 ●店 名  :I‘m Chicken(アイムチキン)
 ●住 所  :東京都中野区本町5-41-8 (中野富士見町駅から徒歩3分)
 ●営業時間 :18:00~翌1:00(LO:24:00)
 ●座 数  :24席
 ●業 態  :居酒屋、イタリアン、鳥料理

★ 知識×実践で体系的に営業プロセスを学ぶ流れ

印刷技術、営業知識を学び、その知識を実際のワインダイニングバーのフィールドスタディで活用することで、印刷営業のプロセスを肌感覚で理解してもらうのが狙いである。新たに印刷業界へと入る新入社員は業界としても重要な資産である。そうした人材のモチベーションを高め少しでも早く戦力にするための側面支援をしていくのは、JAGATの役割の一つと考える。こうした体験型学習のアプローチも増やしていきたい。

教育サポートチーム 塚本 直樹

●第47期 印刷営業20日間集中ゼミ(リニューアル)5月開講

「知識から実践へ」体験を通して学ぶ印刷営業の育成

現在、印刷業は従来の「必要な印刷物を正確に顧客に届ける」だけでなく「顧客の販促支援や課題解決に役立つサービスを提供する」役割へとビジネスモデルを変化させつつある。
印刷物によって顧客のニーズをどのように満たしていくかが常に求められるようになった。生活者のコミュニケーション手段が多様化し、印刷以外のメディアを通じた情報発信やマーケティング活動が日常的となっている。印刷会社の仕事が広がりを見せる今、多様なニーズに応えられる知識とスキルを持った印刷営業をどう育成していくかが重要になっている。

柔軟な発想のための土台つくり
印刷会社の営業は、顧客の課題や困りごとを聞き出し、最適な支援策を印刷物を軸に提案する役割を担う。新人の営業はどうすればその要求に、柔軟に応えられるようになるのであろうか。 
多岐にわたる選択肢の中から適切な対応がとれるようになるためには、まずは印刷営業として仕事をするためのベースづくりが必要になる。印刷物の製作についてトータルな知識を習得し、それを営業の実務プロセスに落とし込む。印刷の業務知識は広範囲にわたり、かなりのボリュームになる。営業未経験者に対しては、先輩社員や上司から業務の進行に合わせて直接指導を受ける場合が多いが、最初は基礎知識を体系的に習得した方が、印刷工程全体をイメージしやすく効率的である。印刷知識に加え、メディア知識やマーケティング理論、コミュニケーション能力など、新たな発想で「印刷」の価値を高めるために知るべき項目は多い。必須知識を押さえ、土台をしっかり築くことが育成のためのスタートだ。

知識を実践に活かす
体系的に積み上げた知識は、ひと通り学んだだけでは、実際の仕事にどのように適用させれば成果が出るのか、なかなかイメージがつかみにくい。実践に生かしてこそ、身に付くといえるのではないだろうか。
現場で顧客の要望を聞き、印刷会社として何ができるかを考える段階になって初めて、蓄積された知識と経験がつなぎ合わされ、実を結ぶ。顧客によって求めるニーズは異なり、提案が受け入れられるための定式が確実に用意されているわけではない。経験の少ない営業にとって、実践を重ねる機会を通して体得することが求められる。インプットされた知識と実践へのアウトプットを交互に繰り返すことによって、吸収した知識が血肉になっていくはずである。

自ら考え、提案を形にする
印刷営業の実務には、「情報収集」「顧客とのヒアリング」から「課題抽出」「解決策プランニング」「シナリオ設計」「提案書作成」など、さまざまなプロセスがある。印刷物を制作するために必要な見積もりや仕様書などのように、実際に携わってみて初めて理解できることも多い。
JAGATが新人営業の育成を目的として毎年開催している「印刷営業20日間集中ゼミ」は、実践力の強化に重点をおき、今年大幅にリニューアルした。印刷の基礎知識習得とともに、20日間を通して具体的な課題案件に取り組むことによって、営業プロセスを学ぶ実践ワークを柱にしている。
実際のクライアントに対し、「ヒアリングから企画~販促物の制作・印刷~プレゼンまで」を体験するグループワークを通して、習得した知識をもとに、自ら考え、解決する力を養成する。例えば「見積り講座」では、概論を学んだあと、実際に提案する販促ツールの見積書を事例演習の中で作成する。「印刷実習」では、オフセット印刷機に触れながら印刷工程を体験すると同時に、作成した販促ツールを実際に出力する。身に付けた知識をすぐに実践に生かすことで応用力を高め、即戦力として活躍できる印刷営業の育成を目指す。
研修自体は、営業職の育成を目的としているが、職種を問わず、印刷業界で働く上で必須のカリキュラムを総合的に網羅している。新人営業の他、後継者や中途入社社員の参加も多く、体系的な即戦力強化プログラムとしてぜひ活用していただきたい。
                            (CS部 原淳子)

■関連情報
印刷営業20日間集中ゼミ(5/13~6/7開催)

アクティブ・ラーニング「リアル体験×学習プログラム」が織りなす高い学習効果

学習効果を高める新たな手法として注目を集めるアクティブ・ラーニングは、学習プロセスの質(学び方)を重視したものである。今後の企業における社員教育にも導入が進むといわれている。

文部科学省が告示する新学習指導要領は2020年より順次実施され、小学校から高等学校までの教育課程が変わる。今回の改訂により、新たに取り組むこととこれから重視するカリキュラムとして、プログラミング教育、小学校の英語教育の教科化などがある。「何を学ぶか」も重要だが、それ以上に重視されているのが「学び方」であり、その手法として注目されているのが「アクティブ・ラーニング」である。

■学習プロセスを重視したアクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングとは、学習プロセスの質を改善し主体的・対話的で深い学びの機会をつくることである。知識・技能の習得、それを応用し主体的に考え活用できる人材を育成することを目的とする。つまり、講師から受講者への一方的な授業(受動的)だけではなく、ディスカッションやフィールドワークの体験授業を通して、受講者が主体的に参加する学習手法のことである。

National Training Laboratories(アメリカ国立訓練研究所)が発表した研究結果に学習の定着率と学習過程の相関関係を示した「ラーニングピラミッド」の考え方がある。オリジナルは正三角形だが、能動的な姿勢と学習の定着率がよくわかるように、ここでは以下のような逆三角形を作図してみた。

上図からわかる通り、受講者が教育プログラムへ能動的に参加する度合いが高いほど学習の定着率は大きく高まる。アクティブ・ラーニングは、「教える」「体験学習」「ディスカッション」を取り入れたものになり、高い学習効果を見込める。

■印刷企業の事例~「新卒採用プロジェクト×LP制作プログラム」~

アクティブ・ラーニングを社内教育に取り入れる場合、取り組みやすいのは、グループワーク・討議などのディスカッション形式である。座学や課題図書で受講者全員が知識やノウハウを共有した上で、その講義に則した題目を与えグループディスカッションを行う。

マーケティング研修であれば、居酒屋、美容室の集客をどうするか、誰でもわかりやすい題目にすれば、受講者も取り組みやすく議論も活性化する。企業内研修であれば、自社が抱えている課題を題材にすれば、よりリアリティが増すため学習効果も高まるし、受講した社員から広く有益な意見を拾い上げることもできる。

印刷企業のアクティブ・ラーニング事例を紹介する。「新卒採用向けランディングページ制作」プロジェクトとして、現管理職をオブザーバー、管理職候補をリーダー、1~3年目の若手社員をメンバーとし、部署も印刷、営業、制作、総務と全部門による混合チームを結成した。

半年間かけて、コンテンツ制作の考え方やランディングページの制作手法を学びながら、自社の新卒採用を共通題目にディスカッションを繰り返した。「自社にとって採用とは何か?」「自社の魅力は何か?」「どのような学生が自社に必要か?」など、自社について改めて考えることでランディングページの制作手法やコンテンツの作り方の習熟度が増した。さらに、普段仕事では交わらないメンバー同士が意見を交わすことで、経営的な視点をはじめ、新たな考え方や価値観を得ることができた。

■「リアル体験×学習プログラム」で生まれる相乗効果

新入社員や中途社員の育成計画にも、アクティブ・ラーニングを取り入れることで、早期戦力化を図ることができる。営業職の新人育成であれば、印刷営業のプロセスとしてヒアリングから企画、見積作成、プレゼンテーション、印刷物の仕様書作成、デザイン依頼、データ入稿、印刷出力、納品までの一連の流れがある。この一つひとつの要素を社内外の講師から理論やノウハウを座学で学ぶだけでなく、印刷営業のプロセスを実際に体験しながら学ぶことで学習効果は高まる。

例えば、身近にある企業や住んでいる地域の実在する店舗を“リアルな教材”と捉え、学びの題材として店舗のオーナーに協力を仰ぎながら、「店舗の集客アップを図るための販促用印刷物の制作」を新人教育の題材にするのもよい。こうしたリアルな体験に近い学習内容をフィールドスタディプログラムと呼び、大学のカリキュラムや社会人教育にも導入され始めている。

ぜひ、社員教育の一環として、アクティブ・ラーニングの考え方を取り入れてみてはどうだろうか。

教育サポートチーム 塚本 直樹

<フィールドスタディプログラムを取り入れた新人向け講座>
●印刷営業20日間集中ゼミ(リニューアル

https://www.jagat.or.jp/archives/922