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活発な意見交換ができる営業会議をするために

上司と部下の意思疎通がスムーズになり、効果的な営業会議をして売上向上につなげるにはどうしたらいいか、こんなことで悩んでいる部課長の方いませんか。

 

よくある営業会議

営業会議のメインの議題は数字の達成に関することだ。多くの場合、営業が数字のことを問い詰められて何も話せなくなり暗い雰囲気になる。一人の営業が活動の改善策を追及されても、他の人たちは自分に関係ないからほとんど聞いていない。上司が怒ると、営業は次回怒られないためにどうしたらよいか、と後ろ向きの姿勢にしかならない。改善案や指示をだされても、営業は「わかりました。」と発言するだけで、自分の考えを言えない。つまり、上司と部下のコミュニケーションがとれていないことが多い。
そうではなく、営業会議をもっと活発は意見交換ができるようにするにはどうしたらいいかと悩んでいる管理職も多いだろう。そこで大切なのは、役職に関係なく、双方向に話し合いができる環境にすることだ。役職が高い人が自ら、「みんな遠慮なく発言してほしい」と言うだけでも雰囲気は変わるかもしれない。ある会社の部長は会議の前に「単なるイエスマンは不要。意見を出してください」と言って安易な返事を封じていた。
一方で営業としては、これは「そうはいってもまた何か言われるかも・・・」という心理的な不安がいつもつきまとい、どうしても壁ができてしまう。しかし、この不安を払拭できれば、発言や議論がしやすい営業会議の進行も期待できる。

 

心理的不安を払拭するための工夫

営業にとって心理的不安がなければ精神的に楽になり、発言も活性化すれば会議の内容も充実する。そのためのひとつの方法として、例えば普段の会議室とは別の場所を設けたり、珈琲やお菓子を食べながら進行するなど、リラックスしつつも真面目な話ができる雰囲気をつくるといったこともある。
会議の進行は、管理職が聞きたいことを聞くのではなく、営業メンバーに受容的・共感的な態度で傾聴することで自発性を促す。否定から入るのではなく発言したことやその内容について肯定できる点は褒めることで空気感は変わる。
例えば、「○○食品株式会社の新規メニュー制作をサポートしたい」という提案があったとする。ここでありがちなことは、管理職が「そもそも、その程度の考えだと受注できないぞ」、「もっと違う提案の仕方を考えろ」などと自分の意見を押し付けることだ。
そうではなく、「なぜそう思うようになったのか、どういうきっかけがあったのか」という事実を聴き、そして「そもそもその会社の新規メニュー制作」についてどういう活動をイメージしているかという解釈を聴くことだ。そこから、本当ならどうしたらいいと思うか、改革を進めるにあたっての問題点は何かなどの意見を管理職の解釈で聴くのではなく、営業メンバーの立場に立って聴くことが大事だ。ただし、受け入れるだけではなく、更に良くするために必要なアドバイスをすることで、双方の理解を深め建設的な判断ができる。 
そうした状況を構築できれば信頼関係も築きやすくなり心理的安全性が担保されれば会議で発言しやすくなる。そうすると営業部門の中で「この人はこういう前向きなことを考えている」ということを共有でき、一体感を増強することにもつながる。

 JAGATでは7月18日(土)に「部下のやる気を引き出す営業会議の進め方」と題して営業部門の活性化のためのセミナーを開催する。社内の雰囲気を盛り上げるのはまず営業部門からという視点から、営業のモチベーションをあげて新規開拓、新規分野へ挑戦することへの意識をもってもらうにはどうしたらいいかなどの課題について解説する。経営者や部課長の方々にお勧めしたい。              

(CS部 伊藤禎昭)

【関連セミナー】
「部下のやる気を引き出す営業会議の進め方」
開催日:2020年7月18日(土)13:00~18:00
場所:JAGATセミナールーム
    東京都杉並区和田1-29-11

オンラインでのコミュニケーションと課題

新型コロナウイルス感染拡大防止の影響でオンラインによるコミュニケーション活動への対応が加速している。例えば、Web会議システムを利用すれば、遠隔での会議や打合せは簡単にできるし、他にも、顧客との面談やプレゼンテーション、講習会などへの対応も可能だ。しかし、コミュニケーションの質となるとツールやシステムを使うだけの話ではない。コンテンツが大切だ。受け手側の欲求は、文字や言葉によるものだけではない。音の響き、声のトーンや映像、顔の表情などの感性に響くところが大きい。

視聴者の関心度合いとメラビアンの法則

1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則では、話し手が聞き手に与える影響は「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3つから構成され、それぞれの情報の影響力は下記の割合になっている。「3Vの法則」や「7・38・55ルール」と呼ばれる事もある。

【言語情報】

言葉そのものの意味や、言葉で構成される話の内容

【聴覚情報】

話し手が発する声のトーンや大きさ、また、話し方(口調)や話すテンポなど

【視覚情報】

話し手の表情や目線、そして態度や仕草、また見た目など。

※身体言語(ボディーランゲージ)

•言語情報(Verbal)…7%

•聴覚情報(Vocal)…38%

•視覚情報(Visual)…55%

つまり、言語以外の行動である「非言語的コミュニケーション」による影響が大きいとされる。例えば、面談においては、身振りや手振り、表情、声の出し方や間の取り方などの言語情報以外の対応がより重要だということだ。これは、オンラインでも同様だ。新型コロナウイルス感染拡大防止の中、オフラインでの面談が難しくなり、電話やメールだけでは事足らずで、急速にWeb(動画)会議システムの利用が広がった。聴覚情報に加え視覚情報へのニーズが高いことが伺える。システムやツールを効果的に使うには、非言語的コミュニケーションを意識することが肝心だ。単にツールの機能を覚えるのではなく、感性に訴えるためにどう使いこなすかがポイントになる。

ただし、メラビアンの法則に触れると「話す内容より演出が大事」と誤った解釈をする場合がある。そもそも元となる言語情報がおろそかであれば信頼性が失われ、コンテンツが成り立たない。誤解のないように注意したい。

CS部 古谷芸文

JAGATのセミナー<オンライン化推進中>https://www.jagat.or.jp/cat3

新型コロナ感染拡大を背景にオンラインセミナーに必要な動機づけ

新型コロナウィルスの感染拡大を背景に印刷業界にも多大な影響を与え、ビジネス環境も大きく変化している。例えば、営業活動は、在宅勤務や顧客との直接的な接点が難しい中、Web等を利用した非接触型のコミュニケーション活動への対応に迫られている。社員教育の在り方も同様だ。東京商工会議所2020年4月8日発表した会員企業に対するアンケート調査によれば、「新型コロナウィルス感染症への対応について」は、テレワークを実施している企業は全体で26%。そのうち従業員数300人以上では57.1%と実施率が高い反面、従業員数50人未満では実施率は14.4%と全体平均を大きく下回る結果となっている。緊急に対応すべき課題のひとつだ。政府(国)や自治体では、テレワークを新規で導入する中小企業に対して、助成金制度や補助金制度によるサポートをおこなっている。積極的に活用すべきだ。

主な3つ課題は、

①社内体制の整備(仕事の管理、労務管理・評価など)

②パソコンやスマホ等の機器やネットワーク環境(LAN等)の設備

③セキュリティ上の不安

一方、新入社員を受け入れた印刷会社の研修においては、新しい教育手段へのニーズが高まっている。2020年度JAGAT新入社員研修(セミナー)は、4月開催分はすべて6月開催へシフトし、遠隔での受講システムの運用も試みている。通信教育での受講者が増える一方でセミナーの遠隔受講についての問い合わせもあったからだ。

<オンラインセミナーでも欠かせない動機づけ>

セミナーに求められる重要な要素に気づきや動機づけが上げれる。心理学者エドワード・L・デシのモチベーション理論で「内発的動機づけ」の研究では、動機付けには、内発的動機づけと外発的動機づけがあるという。人材育成においては、内発的な動機付けが重要な鍵を握る。

<内発的動機づけとは>

怒られないためでもない、その活動がしたいからするという動機。例えば、一銭の得にもならない趣味の活動も含まれる。

<外発的動機づけとは>

活動それ自体を楽しむのではなく、何かのために活動する動機。組織のためや上司の顔色をうかがうなど。

内発的動機づけは、ご褒美を得るためのものでもなく、罰を避けるためのものでもない。自主性が重要で、有能感や関係性が大切な要素になる。セミナーの役割は、内発的動機づけのために心を掴むことが肝心だ。知識だけなら書籍や通信教育等だけでも十分だからだ。講師には、受講者に問いかけ、引き出し、腹落ちさせる能力が求められ、 感情にも訴えかけることでセミナーの魅力となる。オンラインセミナーでも欠かせない要素だ。ライブ感を大切に、感情に訴え、動機づけすることで学びの習慣をつくることがセミナー受講の大きな価値になるからだ。

(CS部 古谷芸文)

2020年度 JAGAT新入社員研修

自衛隊の活動に見る感染症対策と工場管理

この4月に入り、大手印刷会社の工場においても新型コロナウイルス感染者が発生し、従業員の出勤停止や一部閉鎖のニュースも流れ、印刷業界へも深刻な影響が出ている。新型コロナに感染した従業員が発覚した場合、企業はその対応で大きな負担を強いられる。第一に、最寄りの保健所に連絡し、同所の指導に従う。感染者本人はもとより、社内の濃厚接触者を見つけ出し、2週間の自宅待機を指示する。感染者が従事した職場を閉鎖し、消毒を行う。職場以外に感染者が訪れたり触れたりした場所や箇所があれば、それも消毒する。その後、保健所から要請される再発防止策(感染予防・拡大防止策)を講じ、十分な安全性が確認されるまで工場や事業所の操業を停止しなければならないのが現状だ。

工場ではテレワークは存在しない

日本経済新聞電子版4月14日号によれば、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業は事業継続に知恵を絞っている。「社長100人アンケート」で緊急事態宣言の期間中の工場稼働について聞いたところ、8割近くが「通常通り稼働」と答えたという。テレワークをはじめとする対応策が、オフィスワークに比べれば工場での対策は難しく、シビアなものであるかが伺える。工場は仕事がある限り生産活動を止めることはできない。感染者の発生は大きな痛手になる。

管理徹底された自衛隊の活動に学ぶ

感染症対策で注目を浴びたのが自衛隊の活動だ。集団感染が発生したクルーズ船『ダイヤモンド・プリンセス号』の船内対応、チャーター便帰国者の一時宿泊施設への物資搬送など、新型コロナの感染拡大を受けて様々な任務に従事する自衛隊員では、感染事例は海外からの帰国者1人のみでいまだ任務中の接触を原因とする感染者は出ていない。後の統合幕僚長の会見では「しっかりした防護基準を定め、現場で指揮官が徹底し、隊員が実行した。訓練の成果だと思う」と振り返ったとうことだ。印刷会社の工場管理においても参考になるの事案だと感じる。生産性向上、改善活動では、見える化された基準を定め、管理を徹底し、社員が日々の活動で前向きに取り組むことが重要だ。このピンチに改めて生産現場での標準化やQC七つ道具を参考に振り替えることも大切だと感じる。

(CS部 古谷芸文)

第6期 工場マネージャー養成講座

働き方改革と生産性向上における印刷工場の課題

働き方改革という言葉が定着してきた昨今だが、印刷工場での働き方改革への対応には頭を痛めている経営者やマネージャーも多いようだ。2019年4月から『働き方改革関連法案』が実施され、企業は対応することが義務付けられている。その関連法案で注視しなければならない規定が、労働基準法とパート有限雇用法になる。

労働基準法とパート有限雇用法

労働基準法の改定では、

  • 5日間以上の年次有給休暇の取得義務化
  • 時間外労働の上限規制導入
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の猶予措置、(50%→25%)の廃止

パート有期雇用法(パート労働法)では、

  • 均等待遇について、個々の待遇ごとに不合理性を判断することを 明確化
  • 有期契約労働者に係る均等待遇規定の創設
  • 待遇差の理由等に関する説明の義務化

時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金

労働基準法改定では、5日以上の年次休暇取得義務については、昨年2019年4月より施行された。週40時間を超えて労働可能となる時間外労働の上限を原則として「月45時間」かつ「年360 時間」とする規定については、繁忙期でも単月100時間未満、複数月(2~6か月)平均80時間(休日労働含む)に抑えという上限が加わった。法案の発表当時の2017年3月の日経ビズネスオンラインの記事よれば、経営者側と従業者側では受け方が違うようだ。従業者側では、「100時間迫る時間外労働を許すのか」や「過労死に繋がる」という時間外労働を促進するような見受け方もあったようだ。page2020セミナー「印刷工場の生産性向上実践 ~多能工化編~」講師で中小企業診断士の寶積氏(株式会社GIMS代表取締役)によれば、上限が無かったものに上限が付いたことが大きいという。経営者にとっては難しい対応が迫られ、業績への影響も心配される。一方、社会保険労務士側では、やらない会社は淘汰されるという見方もある。政策が掲げる指標は労働生産性だ。単に仕事を増やして従業員の賃上げを目指すものではない。生産効率、付加価値率を高めることで少ない従業員で大きな成果を上げる企業体質を目指すものだ。旨くいけば中小企業には追い風のようにも思える。しかし、取り組む課題は簡単ではない。

経営資源に限りがある中小の印刷業においては、特に、業績アップのための施策と働き方改革は同じ土俵で進めるべきだ。印刷工場では、生産効率を高めるための改善活動やマネジメントを促進し、生産性を高くする体質改善する仕組みづくりが重要になる。小手先の対処療法では、課題は解決されない。特に印刷業の多くは、受注型で多品種少量の傾向にある中、計画的な生産管理は難しい。全社を上げて改善活動を推進し、具体的に見える化や多能工化へ取り組むことが益々重要になってくる。活動を推進する上で欠かせないのがリーダーの存在だ。印刷工場でのマネージャー育成は益々急務なってくる。

(CS部 古谷芸文)

第6期 工場マネージャー養成講座

印刷業における働き方改革と多能工化の推進について

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための対応は、安倍首相が小中高の休校要請を出したことで、その必要性はさらに高まっている。突然の対応に企業の戸惑いも見受けられる。緊急対応とも言える中で、テレワークや時差出勤など働き方に関わる話題も注目されている。

 働き方改革法案が2019年4月より順次施行され印刷産業界でも働き方改革は、対応すべき重要な課題だ。その目的は、厚労省によれば、誰もが職場・家庭・地域で活躍できる「一億総活躍社会」の実現にあるとされている。具体的内容は、長時間労働の是正やフレックスタイム制の導入、非正規雇用者の処遇改善などを通じて、多様な働き方ができる職場づくりをはかることされている。経営視点では、業務効率や生産性を高めることで労働時間を短縮し、従業員のモチベーション向上により企業価値を高めることになっている。

働き方改革に効果的な多能工化

 働き方改革で効果的な対応策のひとつに多能工化である。「多能工」はトヨタ方式として注目を浴びた方式で生産ラインに人を置き、作業内容が決められた中、手の空く人間と忙しい人間を平準化するために始まったとされている。言葉だけだと簡単に聞こえるが、実践するにはなかなかハードルが高いのが「多能工化」だ。解決すべき課題は、作業量の平準化であるが、取り組むべき課題は、作業の標準化となる。

 印刷業の多くは、受注型で多品種少量の傾向にある中、計画的な生産管理は、難しい場面が多い。印刷会社の多能工化への取り組みは、JAGAT主催のpage2020セミナーにおいても取り上げられた。一概に多能工化といってもそれぞれのビズネス形態や規模によっても様々である。水上印刷株式会社、取締役生産本部長の松崎氏によれば、工場における改善活動により多能工化が進むとされる。多能化が進むと標準化も進むようだ。複数の社員による平準化には、標準化への取り組みは必須になる。

例えば、多能工化を進めると、

・作業員の標準化が出来る

・人による違い(癖)がなくなる

・機械も標準化される

・故障減少・機械の特異性(癖)がなくなる 

・視野が広がり、協調性UP

・残業の平準化が出来る

裏を返せばこれらの改善活動としての取り組みにより多能工化が進むことになる。これらの実践は、組織的にも強い製造体質ができるとされる。大東印刷工業株式会社の中島氏の事例では、徹底した見える化による多能工化の推進が紹介された。多能工化でも工程間、職場間を超えたダイナミックな取り組みだ。ポイントは、改善活動と徹底した見える化への取り組みにあった。自社にあった業務管理システムを開発し、作業時間と生産コストを徹底的に「見える化」することで成果を上げている。見える化の推進は、価値を共有し、強力なリーダーシップで社員全員が取り組むことが重要だ。例えば、社員によっては、仕事がブラックボックスで評価が曖昧な状況が都合がいい場合がある。抵抗感があるかもしれない。反面、地味でも価値を生んでいる社員にとっては、成果が見えることにより評価される機会となる。目標管理においては評価制度が構築されていることは必須だ。モチベーションを上げることに繋がる。印刷工場の管理者視点では、社員の能力や成果が把握し、改善活動、作業の標準化を促進し、多能工化への取り組みも加速することになる。多能工化が進めば社員の作業の平準化により働き方も変わる。

 働き方改革の実現は、多くの中小印刷業でも難しい課題だ。取り組み方を誤れば、経営の圧迫にも繋がる。印刷工場においての働き方改革は、生産効率アップのための改善活動と社員個人のモチベーションを高めることが肝心だ。 多能工化は、生産効率をアップし、働き方改革を実現する可能性が高い。 それぞれの働き方の質の向上に繋がることが望まれる。

CS部 古谷芸文

関連情報 

第6期 工場マネージャー養成講座

紙加工製品の商品開発に欠かせない、デザインとブランディング

経営者が自ら取り組む商品開発とデザインへの取り組み

 印刷業を取り巻くビジネス環境では、デザインの重度が増している。販売促進ツールをはじめとするBtoBや生活者を豊かにするBtoCの商品開発を手掛ける印刷、紙加工業の事例も増えてきている。商品開発に欠かせないのが、アイデアとそれを形にするデザインだ。   

page2020セミナー「アイデアを形にする紙加工の製品開発」では、紙加工製品の商品開発に取り組む2社に実践でのプロセスとブランド展開について解説する。

 加藤製本株式会社では、ブランド「クルーシャル」を立ち上げている。クルーシャルは、文具、朱印帳などの紙加工商品を開発し、提供する会社だ。プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、CADエンジニア、一級技能士の資格を持つ社員によりものづくりに取り組む。社員がアイデアを出すこととデザイナーを採用や育成することに力を入れている。同時に、大手文具量販店や文具店、女子博、販促アイデアグランプリ展など業界の枠を超えた販路開拓にも力を入れている。マーケティングとアイデアとそれを形にするデザインの相乗効果で成果を上げている。紙加工技術、レーザーダイカットシステムを活かした微細な細工の朱印帳やマカロン(付箋)などは記事や話題として取り上げられことも多い。

 福永紙工株式会社では、この2020年1月29日までの期間で昨年11月にオープンした渋谷スクランブルスクエア10Fの東急ハンズが運営する「208HANDS」で販売会を実施している。ブランディングへの取り組みだ。クリエイターと共にこの12年間でつくりあげた紙製品の22日間限定販売会だ。同社は、印刷から加工までのパッケージの印刷加工会社として1963年に創設された。転機は、アパレル商社勤務経験とノウハウを持つ現在の山田社長を中心とした2006年の「かみの工作所」プロジェクトスタートだった。多くのクリエイターと恊働して工場の技術を活かしたオリジナル製品の企画、開発、製造、販売への挑戦をはじめたことだ。第一線のクリエイターとの人脈も広い。他にも1/100スケールの模型ブランド「テラダモケイ」の製造販売など、新たな紙の価値を模索する取り組みを様々な形で行っている。海外の美術館でも取り上げられるような「空気の器」「MABATAKI NOTE」などの製品は、ブランド価値をさらに高めている。

デザインがビジネスチャンスへ

 印刷会社がマーケティングや製品においてデザイン能力を重要視しているように顧客側の企業もデザインノウハウを重要視している。印刷業でもビジネスチャンスとして捉えるべきだ。また、消費者ニーズが複雑化し課題がわかりにくい市場においては、デザイン的な発想やデザイナーが重要になってきている。商品開発の決め手はアイデアだ。モノや情報が溢れた時代では、ユーザーの想定を超えた製品やサービスが必要なる。〝今までにない”紙製品を創り〟で販路開拓し、ブランディングを展開するポイントを紹介する。また、アイデアやデザイン的な発想は、簡単に出せるものではない。アイデアを生み出すために取り組むべきことは何か、そのためのポイントも解説する。

CS部 古谷芸文

関連情報 page2020セミナーhttps://page.jagat.or.jp/sessionList/seminar.html

【S9】アイデアを形にする紙加工の製品開発

 

印刷工場の生産性向上、改善活動における多能工化

長い労働時間は、日本の産業界の体質

生産性向上は、印刷産業界に限らず日本の産業界全体で解決すべき課題だ。日本の労働生産性が先進諸外国と比較して著しく低いことは、周知の通りだ。日本生産性本部がまとめた2017年における日本の労働生産性(時間あたり)は47.5ドルで、主要先進国では最下位だ。この数字は、1位の米国は72ドル、2位のドイツ69.8ドルに対して3分の2の生産性ということになる。生産性を決める要素は、付加価値、労働者数、労働時間の3つである。生産性は、「付加価値」を「労働者数」×「労働時間」で割ったものだ。つまり、先進国の中で、一番長く働いていても儲からない仕事の仕方をしていることになる。苦労しても報われない、貧乏暇なしの状態かもしれない。一方、印刷業での労働力不足、人材不足も深刻な課題だ。政府が掲げる働き方改革では、「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金」、「柔軟な働き方」があるが、印刷会社がこれらの課題に取り組むためには、企業の業績や環境が共に改善されなければ元も子もない。印刷会社が利益を生み出すことは、経営者に限らず社員全員で意識を高め取り組まなければならない。印刷会社は、効率よく利益を生み出すことが重要だ。ビジネスのしくみにより利益を生み出すことがマーケティングであるならば、印刷工場の利益の源泉は、生産効率である。これらの改題解決のひとつに多能工化がある。

多能工化への壁は、品質管理における作業の標準化と見える化

多能工とは、生産・施工の現場において、1人が一つの職務だけを受け持つ単能工に対し、1人で複数の異なる作業や工程を遂行する技能を身につけた作業者のことだ。多くの印刷工場の課題である多品種少量生産や品種・数量の変動に対して生産体制を柔軟に維持し、生産性の向上に効果的に取り組むことができる。一方、組織的に多能工化を進めるには、教育・訓練するしくみをつくる必要がある。多能工化へのボトルネックは、教育への手間暇と評価制度が上げられる。従来の勘や経験、徒弟制度的な教育では困難だ。標準化や見える化への取り組みは必須なのだ。

一概に印刷工場の多能化といっても、印刷会社の規模や事業領域によって、取り組み方も様々なようだ。page2020セミナー「印刷工場の生産性向上実践 ①~多能工化編~」では、二つの違った多能工化への取り組みを紹介し、生産性、働き改革の視点からも検証する。水上印刷株式会社の事例では、「きれいな工場でしか良い印刷物は作れない」をスローガンに最先端の設備と環境を備えた工場で「4S」「機械設備の保全」「品質」「多能化」のー連の活動の中、多能工化を位置づけしている。工場内の整理整頓はもとより、セキュリティや安全管理がゆきとどいた環境で社員の働きやすさにも繋がっている。「スピード」「フレキシビリティ」「クオリティ」の3つの要素を達成する道筋になっている。職場環境が人材育成と製品の品質にも結びついていることがポイントだ。

また、大東印刷工業株式会社の事例では、徹底した「見える化」への取り組みがポイントだ。同社では「印刷タクシーメーター」と呼ばれるその仕事の原価が、今どのくらいかかっているのかがリアルタイムに「見える」ことでコスト意識を高め、目標管理を行い、効率的に仕事を進めるしくみづくりに特徴がある。その業務管理システムの構築を通じ、生産性向上の中での複数の工程をカバーした多能工化について紹介する。

一概に多能工化といってもそれぞれのビズネス形態や規模によっても様々であることが分かる。重要なことは、単なる真似や知識だけでは、多能化や改善活動は上手くいかないことだ。如何に考え、葛藤し、モチベーションを高めたかを学ぶことが重要になる。

CS部 古谷芸文

関連情報 page2020セミナーhttps://page.jagat.or.jp/sessionList/seminar.html

【S2】印刷工場の生産性向上実践 ①~多能工化編~

【S4】印刷工場の生産性向上実践② ~品質管理と改善活動編~

【S7】トラブルを未然に防ぐ入稿データのチエックポイント~最新のAdobe CCにおける注意点~

【S9】アイデアを形にする紙加工の製品開発

【S14】印刷学会共催「色評価用LEDガイドライン」とカラマネ・照明の基本 ~LEDガイドラインセミナー~