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生産性向上は、改善活動と働き方改革のセットで効果を生み出す page2020セミナー「印刷工場の生産性向上」

生産性の向上における改善活動と多能工化は、印刷業においても重要な課題解決のテーマとして考えられる。page2020セミナーにおいても生産性向上は柱のひとつになっている。

日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較」によると、経済協力開発機構(OECD、2018年)のデータに基づく日本の労働生産性は、就業1時間当たり46.8ドル(購買力平価換算4744円)でOECD加盟36カ国中21位だった。政府は「働き方改革」を重要課題として掲げ、生産性向上を目指すが、調査記録が残る1970年以降、先進7カ国(G7)諸国で断トツ最下位の状態が続いている。一方、働き方改革については、「働き方改革関連法」が2019年4月に施行されたが、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が2019年に発表した調査結果によれば、現在「働き方改革が経営目標としてあげられている」と回答した企業の割合は、全体の42%で、働き方改革に伴うITシステムについては、300名未満の企業では導入済回答が10%に留まるなど、企業の規模が小さいほど導入に踏み切れない現状が浮き彫りになっている。

働き方改革は、利益と直結する工場改善と一体化で考える。

働き方改革は、「長時間労働の是正」、「同一労働同一賃金」、「柔軟な働き方」の実現が掲げている。これらが進まないのは、業績に対する懸念があるからだ。印刷会社がこれらの課題に取り組むとすれば業績も共に改善されなければ難しい。印刷工場では、生産効率アップによる利益を生み出すことが課題となる。企業が合理的に改善活動に取り組むにあたって課題となるのが「品質管理における標準化」と「多能工化」である。

印刷業における多能工化のメリットとデメリット

<メリット>

  • 作業の標準化が進む→品質の安定化と仕事量が平準化し、業務負荷が均等になる。
  • 幅広い印刷工程をカバーできる→変化に強い組織づくりにつながる
    • 柔軟性が高い組織、業務対応ができるようになる。
  • 各工程の理解者、品質管理が共有できる→チームワークが向上する。相互理解が進む

<デメリット>

  • 人員の育成に時間がかかる→業績にどうつながるのかを検討する必要がある。
  • 人事評価制度の整備が必要→社員のモチベーション管理をどうするか

※組織としての目標設定の仕方などの見直しが必要になることもがある

page2020セミナー「印刷工場の生産性向上実践」では、多能化と改善活動の2つテーマを開催する。

多能工化編では、印刷工場における働き方改革の視点で、改善活動をベースに生産効率を向上させる中で、品質管理における標準化や多能工化が如何に進んだかを2つ事例を通じて紹介する。水上印刷株式会社の事例では、「きれいな工場でしか良い印刷物は作れない」をスローガンに「4S」「機械設備の保全」「品質」「多能化」のー連の活動を通じて改善活動の中での多能工化と働き方改革への取り組みを紹介する。また、大東印刷工業株式会社の事例では、徹底した「見える化」への取り組み、業務管理システムの構築を通じて、徹底したコスト管理で利益を生み出し、複数の工程をカバーした多能工化について紹介する。一概に多能工化といってもそれぞれのビズネス形態や規模によっても様々であることが分かる。改善活動や多能工化、働き方改革に至っては、事例や型はありそうだ。しかし、実践としての在り方は、それぞれの会社の葛藤の中で個性的なものの様だ。page2020セミナーでは、実践することを念頭に参加するとより響くと思われる。

CS部 古谷芸文

関連情報 page2020セミナーhttps://page.jagat.or.jp/sessionList/seminar.html


【S2】印刷工場の生産性向上実践 ①~多能工化編~

 

【S4】印刷工場の生産性向上実践② ~品質管理と改善活動編~

 

【S7】トラブルを未然に防ぐ入稿データのチエックポイント~最新のAdobe CCにおける注意点~

 

 

【S14】印刷学会共催「色評価用LEDガイドライン」とカラマネ・照明の基本 ~LEDガイドラインセミナー~

 

 

デザインの重度が増す印刷ビジネスと求められるアイデア

 印刷業を取り巻くビジネス環境では、デザインの重度が増している。ニーズが複雑化し課題がわかりにくい今日においては、課題探索・発掘、コンセプト設計においてのデザイナーの発想に期待が大きいようだ。印刷会社がマーケティングや製品においてデザイン能力を重要視しているように顧客側の企業もデザインノウハウを重要視している。経済産業省の「デザインの活用によるイノベーション創出環境整備に向けたデザイン業の実態調査研究によれば、デザインが事業運営や売上計上に貢献しているとの回答は8割超となっている。アンケート調査の主な内容としては、「デザインが事業そのものに直結しており売上げと緊密な相関がある」、 「デザインが事業の柱として技術やその他の要素をバランスよくまとめ、売上げに貢献している」及び「デザインは事業の一要素として、企業の総合力の一部として売上げに貢献している」との回答を合わせたものになっている。産業界全体としてもデザインが重要な課題となっている。企業がデザインに期待する役割は多岐にわたる。例えば、経営においてデザインに期待する事項としては、ブランドの構築、外観での付加価値の向上、オリジナリティの表現等が多く挙げられている。これらに続いて品質や技術力の表現やコンセプトの提案等への期待が高まっている。このことは、印刷業でもビジネスチャンスとして捉えるべきであろう。

 デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーがデザインを行う上で行っている思考方法のことである。「デザイン」とは、例えば、建築や服飾、美術、広告などの様々な分野で、設計や表現するクリエイティブな行為の事を示すが、一方、デザインのプロセスや考え方をビジネスに転用したものがデザイン思考とも言える。商品・サービス開発においてのポイントは、「ユーザー目線で物事を考える」ことがビジネスパーソンに求められる。デザイン思考のプロセスは、前例のない問題などに対して新たな解決策を見出す際に役立つと言われている。

<商品開発の決め手はアイデア>

 印刷ビジネスにおいても商品開発の決め手は、アイデアだ。モノや情報が溢れた時代では、ユーザーの想定を超えた製品やサービスが必要になる。過去のパターンに捕らわれた単なるモノを作ることではない。例えば、デザイン思考的な見方をすれば、人々が気づいていないニーズを明らかにすることで「洞察」「観察」「共感」という三つの要素の相乗効果によって製品やサービスを生み出すことのようだ。プロセスは、マーケティングも含めたしくみづくりにも及ぶ。page2020でも、加藤隆之氏(加藤製本株式会社/代表取締役)と山田明良氏(福永紙工株式会社/代表取締役 かみの工作所/代表)を講師に「アイデアを形にする紙加工の製品開発」をテーマにセミナーを開催する。紙加工のノウハウをコアに〝今までにない”紙製品を創り〟で販路開拓し、ブランディングを展開している。従来の受注型ビジネスから市場提案型ビジネスへ舵を切った事例だ。ビジネスの原動力は、アイデアを生み出すしくみとデザイン的な発想だ。アイデアやデザイン的な発想は、簡単に出せるものではない。指示や命令だけで良いアイデアを出すことは難しい。経営判断で、実際にアイデアを生み出すために取り組むべきことは何かを知ることから始めることが求められる。

CS部 古谷芸文

関連情報 page2020セミナーhttps://page.jagat.or.jp/sessionList/seminar.html

【S9】アイディアを形にする 紙加工の製品開発 イディアを形にすhttps://page.jagat.or.jp/session/detail_30.html

【S12】デザイン設計の基本セオリー https://page.jagat.or.jp/session/detail_33.html

【S13】効果の高いパーソナライズDMの実際 ~データ分析からプロモーション戦略、メディアプランニングの手法を学ぶ~ https://page.jagat.or.jp/session/detail_34.html

【S15】デジタルと紙メディアで表現するブランディング実践 ~印刷物、Web、CG、VR、AR、動画、リアルを組み合わせる~ https://page.jagat.or.jp/session/detail_36.html

【仙台開催】印刷・製本・加工を起点としたアイデアとその発想法 ~新たな価値、ビジネスモデルで顧客満足を超える~


受講者のブレークスルーへとつながる実践的内容!
いまや、印刷・製本・加工において顧客要求を満足させることは当たり前のことであり、顧客満足の先を行くことが課題となっています。そのために、これまでとは異なるアプローチで新たな価値を提供することが求められており、そこで必要となるのはアイデアです。
本講座ではアイデアを中心として、印刷・製本・加工が顧客に与える新たな価値とそれに続く数々のビジネスモデルを紹介します。過去の成功事例を紹介するだけのありがちな講座と異なり、未来志向で、受講者自身が考え、創造し、ブレークスルーへ至る道をナビゲートします。

 

主な講義内容

●顧客に与える価値とは
 ・価値なくしてビジネスなし
 ・神様の問いかけ
 ・4つの価値をベースに

アイデアについて知る
 ・アイデアをだすのが下手な日本人
 ・才能は二の次
 ・ひらめきの正体
 ・アイデア脳をつくる
ビジネスモデルを知る
 ・多様なビジネスモデルの存在
 ・自社との相性を考える
 ・ビジネスモデルのケーススタディ

アイデアを生み出す
 ・アイデアのケーススタディ
 ・アイデア出しの方法
 ・組み合わせは重要
 ・ドラえもん思考で取り組む

 

開催日程・開催時間

2020年2月21日(金)  13:00~15:00

対象

経営者、各部門管理者、企画・営業部門リーダー・担当者、
デザイン・制作部門リーダー・担当者 など

定員

40名(最少催行人数10名)
※開催1週間前で申込が10名に満たない場合は、中止とさせていただく場合がございます。

講師

加藤 隆之 (加藤製本(株) 代表取締役)

早大卒業後に産経新聞入社し支局にてオウム真理教などを取材した後、本社で紙面編集を担当、その際に新聞組版をDTPオペレータの後ろで見て覚えてしまう。その後、社会部に移り、大学で心理学を専攻した経験から人々の消費行動に焦点を当てた取材を精力的に行う。平成10年に加藤製本入社、17年にPUR製本で世界初の無線綴丸背上製本の開発に成功したのを皮切りに製本・加工分野で新たな取組みを行い、数々の特許や実用新案を取得。29年にはステーショナリーを中心としたライフスタイルブランド「CRU-CIAL」を設立する。日本文学振興会理事など外部の役職も務める。

会場

宮城県印刷会館 (仙台市宮城野区扇町3-9-12 TEL:022-284-7586)

参加費(税込)

JAGAT会員・東北地区印刷協議会傘下組合員 7,700円 / 一般 11,000円

お申込み

お申込書に必要事項をご記入のうえ、 (022)232-9249までFAXにてお送りください。

参加費振込先
参加費は、下記口座に開催日の前日までに振り込み願います。
なお、お申し込み後の取り消しはお受けできません。代理の方のご出席をお願いします。
七十七銀行 東卸町支店(当座) No.5013968 ミヤギケンインサツコウギョウクミアイ

内容に関して問い合わせ先
内容に関するお問い合わせはお気軽に下記までお寄せください。
CS部 セミナー担当 電話:03-3384-3112

お申し込み及びお支払に関して
宮城県印刷工業組合 電話:(022)284-7586

主催:公益社団法人 日本印刷技術協会 協力:東北地区印刷協議会

印刷工場の改善活動と人材育成を多能工化の視点で考える

多能工化は、改善活動や人材育成をしくみ化することで効果的に

印刷業の多くは受注型で多品種少量の傾向にある中、計画的な製造管理や受注管理が難しく、工程や個人のスキルによるムリ、ムダ、ムラによる生産性の低下が課題になっている。印刷工場における生産効率アップと働き方改革の課題解決策のひとつに多能工化がある。多能工とは、複数の異なる作業や工程に従事する技術や業務を身に付けたワーカーのことである。多能工化は、その多能工が組織の人材を教育・訓練する仕組みのことは周知のことであろう。肝心なことは、改善活動や人材育成をしくみ化する意識を持つことだ。

製造業に留まらない多能工化

多能工化の代表的な事例では、開発したのはトヨタ自動車と言われている。また、製造業にとどまらず、流通業やホテル業界でも取り入れられている。

<事例1>

多能工を生み出したトヨタ自動車では、複数の生産ラインで様々な工業用機械を扱うことに取り組む。作業員の少人数化に成功し、低コストで良質な自動車生産に成功した。

<事例2>

星野リゾートでは、社員は一人でフロント、客室、レストランサービス、調理(補助業務)の4つの業務を一日の中で担当している。業務にムラが無くなり、社員全体のチームワークの向上に繋がっている。

<事例3>

流通業のヤオコーやクイーンズ伊勢丹では、レジ担当、惣菜担当、品出し担当を業務の標準化により多能工化に取り組んで、効率アップと業績アップに繋げている。

多能工化のメリットとデメリット

<メリット>

  • 仕事量を平準化し、従業員への負荷を下げる業務負荷が均等になる。
  • 変化に強い組織づくりにつながる
  • 柔軟性が高い組織、業務対応ができるようになる。
  • チームワークが向上する。相互理解が進む

<デメリット>

  • 人員の育成に時間がかかる

→業績にどうつながるのかを検討する必要がある。

  • 人事評価制度の整備が必要。

→社員のモチベーション管理をどうするか

  • 組織としての目標設定の仕方などの見直しが必要になることもがある

<印刷技能者より印刷技術者育成を>

印刷工場における多能工化に取り組むことは、工場管理のPDCA(管理サークル)に取り組むことにもなる。なぜならば、個人ではなく組織での活動だからだ。組織力を活かすためには、作業の標準化や数値管理を含めた「みえる化」が必要になる。技能も必要だが技術を養う意識が重要だ。技能と技術の区別は曖昧な部分もあるが、同じものではない。技術と技能の違いは、広辞苑によれば「技術」は、科学を応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てる技と記述してあり科学的思考がベースになっている。一方、「技能」は、技芸を行なう腕前で技量となっており勘や経験がベースとなってようだ。

例えば、過去の印刷技能者の育成では、経験や勘が中心で定性的な表現が多かったが、現在の印刷技術者の育成では、見た目は、濃度や色差を数値化するといったことで定量的な表現が必要になる。つまり、多能工化と品質管理・改善活動は、セットで効果が出せるのである。印刷工場の改善活動も多能工化に取り組むことで進むこともありそうだ。page2020セミナーでも印刷工場の改善活動と多能工化をテーマにした講座を開催予定。

CS部 古谷芸文

印刷製品開発、マーケットインとプロダクトアウト

印刷製品は多種多様だ。市場規模の縮小傾向の中、新しい印刷製品やビジネスチャンスをつくり出すことは大きな課題である。現在、JAGATのセミナーでも「印刷製品のアイデア道場」を企画している。印刷加工製品の価値を広げるためのセミナーだ。製品の価値やビジネスチャンスを広げる上では、マーケティングが重要だ。捉え方としては、サービス(商品)としてのマーケティングと経営戦略での自社のマーケティングでの二つの視点を意識する必要がある。。
周知のとおり、サービス商品としては、顧客のプロモーションやマーケティング支援などが上げられる。一方、自社のマーケティングは、自社の経営理念、自社の強み、市場ドメインなどを確立し、組織的にビジネスに取り組むである。印刷会社のビジネス展開では、その業態も様々である。

<プロダクトアウトが古いわけではない>

少し前までは、印刷会社は自社の設備に合わせたプロダクトアウトではダメで、顧客志向のマーケットインの発想が重要との議論もあった。そもそも二元論が無意味ということもある。両方の視点を持つことが大切だ。例えば、「ロボット掃除機」「iPhone」「ウォークマン」「電子レンジ」などの革新的な商品は、プロダクトアウトで開発されたものだ。印刷業でも自社の設備を活かした商品開発でのプロモーションツールや建材、文具などの様々事例がある。
・マーケットイン:「ニーズ志向」
※顧客に価値を合わせる
・プロダクトアウト:「シーズ志向」
※顧客に価値を気づかせる
モノづくりに強み持つ印刷業では、マーケットインとプロダクトアウトの両方を取り入れた発想も重要だ。

<商品開発の決め手はアイデア>

決め手は、アイデアだ。モノや情報が溢れた時代では、ユーザーの想定を超えた製品やサービスが必要になる。一方、自社の強みを理解し、新鮮なアイデアは簡単に出せるものでもない。指示や命令だけで良いアイデアを出すことは難しい。教育や訓練が必要だ。知識のバリエーションを「型」として学びつつ、実際にアイデアを生むために取り組むべきことは何かを知る必要がある。近々にセミナー「印刷製品のアイデア道場」として開講する。

(CS部 古谷芸文)

第3期 見える化実践塾

2020年4月スタート予定(期間は1年全5回)
限定5社!

短期間での「見える化」を実現!
”やり切る”サポートと取り組む企業の相互交流と
自己研鑚の場をつくります。

「見える化」という言葉は印刷業界にかなり浸透していますが、実践できている会社はまだ多くはありません。

その原因、ハードルとしては、

  1. 徹底できない(リーダーシップ不足)
  2. システムがうまく活用できない
  3. どこから手をつけてよいかわからない
  4. 社内原価(時間コスト)の調べ方がわからない

などが挙げられます。

本研究会では、座学と見学会、実践と発表を繰り返し、「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、課題解決に向けて後押しします。

概要
日時 2020年5月スタート(1年間)。全5回(8日間)
受講対象 JAGAT会員企業様限定
従業員数 20名から200名程度
MISをすでに導入していること (自社開発でもパッケージソフトでもかまいません)
定員限定5社。1社4名まで参加可能
受講料1社 800,000円
※料金は税別、宿泊費、交通費、懇親会費別。
※社内での実践を推進するために1社4名様まで参加できます。
※4名を超える場合は、1名増えるごとに5万円をいただきます。
会場大東印刷工業株式会社(東京)
株式会社アサプリホールディングス(三重)
作道印刷株式会社(大阪)
公益社団法人日本印刷技術協会 セミナールーム

本研究会では、寄り添うトレーナーの役割をJAGATが、そして、時には厳しい叱咤激励を行うご意見番として先進企業3社の社長が担当します。

成果発表日を最初に設定
実現の期限を決めて必ずやり切る

というスタイルをとります。
座学と見学会、実践と発表を繰り返しながら 「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、「できない理由」ではなく「どうしたらできるか」をとことん追求していきます。

パンフレット(カリキュラムつき)はこちらから
まずはお問い合わせください。
研究調査部 花房(はなふさ) TEL:03-3384-3113、Email:pri「@」jagat.or.jp

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印刷製品開発、マーケットインとプロダクトアウト

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周知のとおり、サービス商品としては、顧客のプロモーションやマーケティング支援などが上げられる。一方、自社のマーケティングは、自社の経営理念、自社の強み、市場ドメインなどを確立し、組織的にビジネスに取り組むである。印刷会社のビジネス展開では、その業態も様々である。

<プロダクトアウトが古いわけではない>

少し前までは、印刷会社は自社の設備に合わせたプロダクトアウトではダメで、顧客志向のマーケットインの発想が重要との議論もあった。そもそも二元論が無意味ということもある。両方の視点を持つことが大切だ。例えば、「ロボット掃除機」「iPhone」「ウォークマン」「電子レンジ」などの革新的な商品は、プロダクトアウトで開発されたものだ。印刷業でも自社の設備を活かした商品開発でのプロモーションツールや建材、文具などの様々事例がある。
・マーケットイン:「ニーズ志向」
※顧客に価値を合わせる
・プロダクトアウト:「シーズ志向」
※顧客に価値を気づかせる
モノづくりに強み持つ印刷業では、マーケットインとプロダクトアウトの両方を取り入れた発想も重要だ。

<商品開発の決め手はアイデア>

決め手は、アイデアだ。モノや情報が溢れた時代では、ユーザーの想定を超えた製品やサービスが必要になる。一方、自社の強みを理解し、新鮮なアイデアは簡単に出せるものでもない。指示や命令だけで良いアイデアを出すことは難しい。教育や訓練が必要だ。知識のバリエーションを「型」として学びつつ、実際にアイデアを生むために取り組むべきことは何かを知る必要がある。近々にセミナー「印刷製品のアイデア道場」として開講する。

(CS部 古谷芸文)J

新入社員の意欲を引き出すミドルマネージャーの育成が急務

文部科学省と厚生労働省によると、2019年春に卒業した大学生の就職率は97.6%だった(4月1日時点)。1997年の調査開始以来2番目の高水準となった。景気拡大と企業の採用意欲を背景に売り手市場が続いており、2020年春卒の就職戦線も学生優位で進んでいるようだ。人材確保が難しい環境の中で、印刷業界を志望してきた新入社員はどのようなことを考えて入社したのだろうか。

 

■出世欲が少ない新入社員
「伸ばしたい能力・スキルは何か」の問いには「コミュニケーション能力」が31%でダントツであった。次に「技術力」「企画力・発想力」がそれぞれ19%となった。しかし、「リーダーシップ」と答えた人がわずか5%ということだ。これと関連した問いで「将来、経営幹部、管理職へ昇進したいか」では62%の人が「いいえ」と答えている。その理由は「昇進に関心がない」「責任ある立場を望まない」「専門分野のエキスパートを目指す」という回答だった。
印刷会社に第一志望で入社し、学生時代に身に付けた知識を生かし、残業も会社の命令であれば受け入れ、長く勤めたいという真面目な人が多いが、入社後は責任を持って周りと協調して仕事をしても、先頭に立って組織を引っ張っていこうという意欲を持つ人が少ないという実態が調査から浮かんでくる。

■企業は優秀な幹部及びミドル層の育成が急務
一方、リクルートマネジメントソリューションズの人材マネジメント実態調査によると、組織・人材マネジメントの問題として、「次世代の経営を担う人材が育っていない(82.7%)」が8割を超えた。次いで「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている(78.4%)」が続き、若手人材の早期戦力化によるミドルマネジメントの負担減とミドルマネージャーを経営幹部へ育成することが課題となる。

つまり、企業は経営幹部、ミドルマネージャーの育成が急務の課題であるが、若手社員がマネジメント層への昇進意欲が低い乖離が生じている。会社として採用した新入社員が真面目に協調性を持って長く働いてもらうことはもちろんだが、そのなかで将来組織を背負って立てる人材を育成しなければ将来は無い。そのためには、マネジメント層へ進むことの意義や面白さ憧れを見せていく必要があり、マネジメント層と一般の待遇面の差はもちろん、仕事の範囲、権限があることでできる、新たな挑戦やイノベーションによる遣り甲斐を、マネジメント層自らが感じて部下や後輩へ伝えていく必要がある。

働き方改革の名の元、企業は残業削減、ワークライフバランスを推進していく必要があり、マネジメント層の負荷は益々高まる。その一方、マネジメント層の役割は益々高まり、企業内における重要度は高まる。企業は経営幹部、ミドルマネージャーの育成し、やりがいを与えることでモチベーションを高めることが急務である。結果として、その背中を見た若手社員が成長意欲を持つことで、「将来、経営幹部、管理職へ昇進したいか」では62%の人が「いいえ」と答えたアンケートを「はい」に変わる時代になれば良い。

CS部 塚本 直樹

●JAGATは次世代の印刷経営幹部の育成機会として、ミドルマネージャーを対象にした経営幹部ゼミナールを9月にリニューアル開講
第36期印刷経営幹部ゼミナール