営業・企画系」カテゴリーアーカイブ

印刷工場における属人化対策と標準化改善

ニューノーマル時代に課題となる属人化

働き方改革をはじめとするニューノーマル時代への対応に向けて短時間労働や在宅勤務などの多様な就業形態・勤務形態を採用する企業の動きが加速する中、企業の働き方改革に関する実態調査2021年版(株式会社ワーク・ライフバランス2022年2月17日)より男性社員の育児休業取得に賛成する人の割合が71%に上るということが報じられた。2022年度4月から改正育児・介護休業法が段階的に施行される中、男性の育児休業者がいない職場からは「仕事を任せられる仕組みがない」、「仕事の属人化」の解消が課題の要因とみているようだ。page2022では、印刷工場の改善活動と多能工化をテーマしたセミナーが注目された。工程や個人のスキルによるムリ、ムダ、ムラによる生産性の低下を課題に改善活動とその延長線にある多能工化への取り組みを学ぶ講座だ。印刷会社における人員確保と属人化は大きな課題として取り上げられ開催された。

属人化に対応する標準化改善とSDCAサイクル

働き方の転換のために取り組むべきことは2つあるという。1つは、長時間労働・残業などを助長する「仕事のブラックボックス化=属人化」を無くし、一人ひとりの仕事を適切に管理し、協業力を高めることと言われている。もう1つは、「価値で仕事を選り好みするスタイル」へ転換し、価値のない仕事をやめて生産性を高めることという。(株式会社コンサルソーシング2018年7月16日blogより)

改善活動から多能化へ繋げるためには、標準化改善が必須の活動となる。標準化改善に効果的な手法ではSDCAサイクルが上げられる。

SDCAサイクルとは、Standerdize(標準化)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)→S…のサイクルを回すことで、品質の向上などを目的とした生産現場における改善手法の一つだ。それぞれの頭文字をとってSDCAサイクルという。

<Standerdize>

まずは標準化。

属人化を無くすための表標準(おもてひょうじゅん)への取り組みが重要になる。ここが、大きなポイントだ。

例えば、生産性の高いオペレーター作業手順を表に出し、見える化し、手順を標準としてきめる。場合によっては、抵抗感を持つ社員もいるかもしれない。

<Do>

次に実行。

標準が決まれば、他のオペレーターにも同じ手順で実行させる。

<Check>

標準化したことをチェックシートなどを用いて管理する。

標準を作っても守られていなければ意味がない。Actionのステップで改善する。

<Action>

標準を守って行くためにより良くするための方策などを考える。

このように標準をつくり、それを維持管理していくサイクルを回すことがSDCAサイクルだ。改善活動を推進するリーダーは、守らせることが肝心だ。時には叱ることも必要になる。最近では、部下を叱れない管理者が増えていることも耳にする。パワハラ等への心配もあるかもしれないが、時には叱ることも必要だ。ただし、「叱る」と「怒る」は違う。「叱る」では、熱くなりすぎずポイントを絞り込んで指摘することで、部下に問題の重大性を認識させ、同じ失敗を繰り返さないように考えさせることだ。根本的な違いは、部下に反省や気付きを促すという目的を意識して指導できるかどうかである。慣れていなければ訓練も必要であろう。SDCAサイクルの推進にもリーダシップ持った人材(リーダー)が鍵を握ることは間違いない。

(CS部 古谷芸文)

第2期 オンライン 印刷工場長養成講座

マーケティングとどう向き合うか?~組織、新事業、営業強化~

pageセミナーは、「今こそマーケティング」の流れを汲み、印刷会社がマーケティングとどう向き合うべきかに焦点を当て、組織体制の構築、新事業開発、営業強化をテーマに取り上げる。

 

印刷経営とマーケティング
マーケティングの重要性については十分過ぎるほど議論されているが、印刷会社がビジネスに導入していくには多くの障壁がある。「マーケティングの知識、ノウハウ、経験が少なく、実務に活かせない」との声を聞くが、実際にはそれが一番の原因ではない。その前提である、経営者のマーケティングへの本気度と社員へその思いが浸透しているか否かが大きく左右する。そのためには、会社方針、事業計画、組織・人材の体制構築とマーケティング戦略をつなげ、全体最適化を図る必要がある。今回のpage2022セッションでは「今こそマーケティング!(基礎解説編)」で印刷会社になぜマーケティングが必要なのか海外事例を交えながら基礎から解説する。そして「リセット・ザ・印刷ビジネス(結論編)」では、印刷会社がどのようにマーケティングに取り組むべきかについて議論していく。そして「勝ち残る印刷会社のマーケティング戦略」では、その戦略策定及び具体的な構築方法から、現実的に印刷会社が乗り越えるべきハードルについても、提示していく。マーケティングと印刷ビジネスをあらためて考える機会にしていだきたい。

 


新規事業で印刷ビジネスを加速
印刷会社がマーケティング戦略を展開していく上で、新たな収益モデルを構築すべく、新規事業について真剣に考えている印刷会社が増えている。しかし、既存業務との掛け持ちによるジレンマや、新しいことに対するアレルギーから社内理解を得られずに先延ばしになっているケースは多い。今回は、そうした課題に正面からぶつかるために「新事業開発でぶち当たる壁をいかに乗り越えたか~社内報で切り開いた変革事例から学ぶ~」と題したセミナーを行う。印刷会社の実践事例として、自社の強みを再定義し、「社内報」事業で専門特化したglassy株式会社の工藤氏が登壇する。大手航空会社の社内報の受注を皮切りに、多くの企業からオファーを受け、グループ会社5社へと事業拡大を成し遂げている。そこに至るまでには社内間の新規事業に対する思いや組織の壁があり、経営者としてどう乗り越えたのか。実践事例をもとにその苦悩や打開のきっかけなど語っていただく。また、多くの印刷会社の新規事業開発を支援している河島氏からは、新規事業の具体的な進め方、社内外の協力体制の構築について、豊富な事例を交えながらわかりやすく解説する。

 

組織+個人力の向上が不可欠
これまでマーケティングと組織の重要性について説いてきたが、次に必要なのは個人の力を高めることである。先日も印刷会社の経営者と情報交換をしたが、企画営業パーソンのコミュニケーション力が低下しているのが課題だという。顧客ビジネスのマーケティング支援、自社の新事業開発を行うにしても、コミュニケーションや営業力が高いかどうかでは大きな差が出る。今回は、印刷営業の個の力量アップに焦点にあてたベーシックセミナーを展開する。また、営業とは?といった広く抽象的な話ではなく、JAGAT大会2021からpage2022にかけて議題のひとつにあげている、DMに絞った仕事を獲れる営業人材の育成をテーマにしていきたい(DMを受注するために必要な営業の極意)。顧客からのニーズヒアリング、コンテンツ企画、グラフィックデザイン・印刷加工によるクリエイティブ表現から、顧客データの分析、MA、CRMツールの理解やWebサイト、動画など、デジタルメディアの連携等、豊富な事例を交えながら紹介していく。DM営業に必要なスキルや手法は勿論、その幹となる営業マインドのポイントを学ぶ機会にしていただきたい。

JAGAT 塚本 直樹

page2022イベント一覧
展示会(2月2日~4日)
プレセミナー・基調講演(2セッション)
カンファレンス・セミナー(10セッション)

工程で品質を作り込むセキュリティインシデント対策

情報管理は人の管理

ポストコロナで新しい生活様式「ニューノーマル」が社会に大きな変化をもたらしている中、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する一方でサイバー攻撃や情報漏洩などのセキュリティインシデントも重要視されている。日本郵便は12月15日、全国47都道府県の郵便局で延べ約29万人分の顧客の個人情報を記した書類を紛失したと発表した。紛失の内訳は、国債や投資信託の取引状況を記した書類が延べ約14万8千人分、公共料金などの払い込みを記載した書類が延べ約14万2千人分におよぶ。(2021年12月15日 日本経済新聞オンライン)原因は、職員が保存期間を間違って認識していたことや、保存用の箱の入れ間違いなどだという。工場管理でも課題となっているヒューマンエラーだ。

品質管理は人の“心” の管理

印刷ビジネスでも益々セキュリティインシデント対策は重要である。品質管理の上でも情報セキュリティは欠かせないものだ。管理の上で課題として上げられるのが人の意識だ。コンプライアンスを意識することが必要になる。そもそもコンプライアンスとは、法令遵守だけに止まらない。その概念や目的が重要で、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務をおこなうこととなっている。要するに人の“心”の問題を意味している。「良いこと」「悪いこと」の当たり前の判断力を持つことだ。その想像力を持った上で、法令を知り、順守すること、ルールを守ることが肝心だ。

工場マネジメントにおけるトヨタ生産方式では、「品質は工程でつくり込む」という考え方がある。勿論、セキュリティインシデントも含まれる。各工程での不良品を受け取らない、作らない、流さないという人の意識が土台となっている。ルール守ることは当たり前のことだが、それ以上に「顧客のために良いものを作る」「生命や安全を守る」といった目的や心が重要なのである。印刷ビジネスにおける品質管理は、時代の変化により管理する“もの”や“こと”は変わっても、人を育て、心を大切にすることは変わらないようだ。

CS部 古谷芸文

【オンライン】印刷工場の競争力を高めるための
       工場改善活動の進め方

収音とマイクの基本、オンラインセミナー配信のトラブル回避

理にかなったマイクを使おう

オンラインによるコミュニケーションは、アフターコロナでもデジタル化の潮流は加速し、様々な手法や手段が進化すると考えられる。ライブも含めた映像配信では、印刷メディアとは異なり、時間軸の概念や音声収録などの難しい部分がある。特に音声の品質は、充実したコミュニケーションを行うためには重要だ。例えば、Zoom等のオンライン配信や面談では映像はさておき、音声の乱れは、コミュニケーションが成り立たず、致命的でお手上げになった経験を持っている方もいるだろう。筆者も経験がある。音の収録で厄介なことは、取り込んだ音声データはデジタルでも音声の入口(入力)はアナログだということだ。思いがけないトラブルも多い。機材では、「マイク(マイクロフォン)」が大きな役割を担う。当JAGATでも配信内容に応じてマイクを使い分けている。例えば、オンラインセミナーでは、感度の高いコンデンサー型のマイクを使い、会場受講者もいるハイブリッド配信では、ダイナミックマイクやラベリアマイク(ピンマイク)を使うこともある。理にかなったマイクを使うことがトラブル回避にも繋がる。

コンデンサーマイクは、価格が高く品質が良いと覚えてはいけない!

一概にマイク(マクロフォン)といっても様々種類がある。マイク特性を理解する上での二つのポイントは、「感度」と「指向性」だ。カメラの設定にもISO(感度)と画角があるように各マイクにも感度と指向(収音角度、範囲)の特性がある。指向性は、マイクがどの方向から音を収音できるかという特性のことだ。その上で、ざっくりとダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類に分けられる。

・ダイナミックマイク:電源不必要、丈夫で比較的湿度に強い、感度が低い。

・コンデンサーマイク:電源必要、振動や湿気に特に弱い、感度が高い。

間違っても、「ダイナミックマイク→価格が安い→音質が悪い」、コンデンサーマイク→価格高い→音質が良い」と覚えてはいけない。基本として重要なことは、マイクの特性を覚えることだ。ダイナミックマイクは、感度は低いが音質が悪いわけではない。感度が低い分、高い音には弱いが、音源に近づけて使えばシッカリとした音を拾い、余計な音を拾わない。講演会やライブイベントに向いている。一方、コンデンサーマイク(ショットガンタイプなど)は、感度が高く、繊細な音を拾い、高音域にも強いが、ノイズも拾いやすく指向性にも注意を払う必要がある。特性を知っていれば、マイクから1メートル程度離れていても一定のレベルで収音できるので会場受講者のいないオンラインセミナーなどでは、反響音に注意を払いながら使えば、音質も良く、使い勝手も良い。意外と難しいのがコンデンサー型のラベリアマイク(ピンマイク)だ。付け方や使い方によってはノイズが入ることがある。付ける位置やケーブルの巻き方にコツがある。更に、無線タイプになると電波の乱れや長時間の収録になればバッテリー切れのリスクもある。ちなみに、ピンマイクにも指向性のあるもの(指向性タイプ)と無いもの(無指向性タイプ)があることを覚えておこう。一般的な使い方では、無指向性型が自然な音質で収録でき使い易い。

オンラインコミュニケーションは、場所を選ばない、時間や経費の削減につながるなどのメリットがある一方で、相手の感情や話の意図が伝わりづらい、対面時よりコミュニケーションのテンポが悪くなるなどの課題もある。円滑に進めるためには、伝える内容と伝える方法にも意識を向ける必要がある。音声の伝達も大切な要素になる。マイク選びや使い方を理解するには、複雑に知識を増やすことより、用途を考え、理にかなった使い方を覚えることだ。

(CS部 古谷芸文)

【オンライン】印刷機のメンテナンスと品質管理

【オンライン】紙媒体の成果アップ!SNSとの組み合わせでつくる売れる仕組構築

【オンラインセミナー】印刷見積り基礎講座(講義)

トヨタ生産方式に学ぶ、印刷工場の改善活動とムダとり

改善活動における「ムダとり」

印刷工場の生産効率を上げることは、印刷会社の利益に直結する。特に「ムダ取り」は多くの生産現場で課題となっている。TPS(トヨタ生産方式)ベースの人づくりを中心に実践活動を行うコンサルティングファームのコンサルソーシング株式会社では、YouTubeにおいて工場改善についての動画ラーニングチャンネルが公開されている。トヨタ生産方式をベースに工場の改善活動を様々な視点で解説してある。カイゼンとは、工場の生産現場の作業効率や安全性の確保を見直す活動のことだ。現場の作業者が知恵を出し合うことで問題を解決する点に特徴があり、中でもムダな作業を無くす「ムダとり」は、大きなテーマだ。

ムダとりは、正味作業と非正味作業の仕分けからはじめる

改善活動は、課題を分類することからはじまるとも言われる。トヨタ方式でのムダ取り改善は、正味作業の割合を高めて仕事の付加価値を高めるとされている。

正味作業は、一言でいうと付加価値のある仕事で、非正味作業は、一言でいうと付加価値のない仕事だ。例えば、印刷業でいえば、顧客に対して、直接的に価値を提供している本業としての仕事、印刷製品の品質・コスト・納期を直接左右する影響力の大きい支援的な仕事、遵法性、社会性に関わる仕事にあたる。例えば、印刷現場の品質基準、数値管理、営業での顧客へのヒアリング、提案書作成、プレゼンテーション、契約書作成、締結、請求、支払いなどがある。

非正味作業は、顧客にとって価値の無い、または、価値の低い作業である。無くても顧客に何かしらの損害を与えてしまうリスクが低いものだ。印刷業では、社内都合での会議、打合せ、監視、管理の仕事、トラブル発生に付帯するフォロー仕事、具体的には、刷り直し、製本、加工ミスでの再納品、クレーム処理、値引き、再契約等が考えられる。非効率な会議やトラブル対策は大きな要因のようだ。

勘違いしてはいけないことは、ムダは、正味作業にも非正味作業にも存在しているということだ。ただし、非正味作業のムダを優先してムダとりを行うことになる。顧客にとって価値がない又は低い作業なので損害を与えるリスクが低いからだ。その点、正味作業は顧客に直接価値を提供しているので、その作業をやめたときに問題が発生する可能性が大きい。例えば印刷受注でのプレゼンテーションは、受注する印刷会社にとって必ずしも必要なものでもない。しかし、顧客にとっては、発注する印刷製品価値の理解度を高めるものだ。顧客にとっては重要な作業になる。一概にムダと判断するにはリスク伴う。ムダの性質を知る必要があるのだ。トヨタのムダとり改善は、効率化改善のように仕事を速く処理するという考え方をしない。ムダをみつけて取り除く改善ではあるが、最大との特徴は「やめる改善」で、「価値を探求する改善」だ。顧客満足に向けて、価値を探求し、仕事の付加価値を高めることで成果を上げて余裕ある仕事ができる工場くりに取り組んでいる。

ムダをとっても顧客に選ばれることにはならない

ムダを取っても、顧客に選んでもらうことはできない。顧客に選んでもらうためには、顧客にとって価値の高い魅力的な商品やサービスを提案・提供しなければならないことを認識することだ。正味作業の中にも、顧客にとって価値のない、或いは、低いものがある。価値のない作業を、価値のある作業に変えていく必要がある。変えるためには、価値のない作業をやめて、新たに価値のある作業を始めるか、価値を生み出すようにしなければならい。ムダの認識は、実は、顧客と接する営業や経営方針にも関係する全社あげての取り組む要因でもある。印刷工場においても生産効率を高めるために非正味作業を優先して取り除く活動が必要とされるが、正味作業の中に一見ムダとも思える作業の中の価値を見落としてはいけない。例えば、印刷工場の現場では、印刷におけるカラーバー(印刷品質管理スケール)が紙のムダだと耳にすることがあった。顧客には関係ないことのように思えるが意味を知ったらどうであろうか。品質保証という顧客にとって安心、信頼という価値に繋がる可能性が出てくる。ムダとり改善は、経営やマーケティング感覚も必要な生産現場活動なのだ。

2021年10月20日開講のオンライン印刷工場長養成講座(JAGAT主催)は、第1回目にトヨタ生産方式を取り上げ、経営と工場マネジメントをテーマにスタートする。

CS部 古谷芸文

コンサルソーシング株式会社 動画ラーニングチャンネルhttps://www.youtube.com/c/ConsultsourcingJp/videos

【オンライン】 印刷工場長養成講座 https://www.jagat.or.jp/archives/87828