印刷物を提供するのではなく、顧客の成果を提供し自社の価値を高める。そのためのブランディングとデザインの戦略が注目されている。
印刷業を取り巻く環境が厳しさを増すなか、非価格競争力の確保は印刷会社にとって大きなテーマとなりつつある。考え方の方向性は顧客が求める印刷物をただ提供するのではなく、顧客が印刷物を作成する目的、課題を解決するという発想を持つことである。その手法の一つとして印刷会社と相性のよいブランディングが注目されている。
ブランディングは明確な定義が難しく、様々なところで曖昧な捉えられ方をされているので「ブランディングとは何か?」と疑問に思っている方も多いであろう。また印刷業界でどのようにブランディングを活用していけばよいのかわからないという声も聞く。そこで、これから印刷業界として、どのようにブランディングを取り入れて顧客のビジネス支援をしていけばよいかを探ってみたい。
ブランディングは、「ブランド」という言葉からきている。このブランドとは、企業、もしくは商品・サービスそのものであり、なおかつ顧客が「他とは何か違うもの」と認識している状態である。それは、顧客自身が何らかのメリットを感じていることの裏返しでもある。そのため顧客にニーズが発生した時に、自社を想起してもらえる力がブランドにはある。ではブランディングとは何かというと、商品・サービスを含め企業側が提供する全てにおいて、顧客に企業側が意図したメリットを正しく認識してもらうための活動である。そして、結果として競合他社との差別化につながる。キーワードは顧客にとってのメリットを伝えることである。
ここでいうメリットというのは顧客が抱える問題を解決するための価値であり、商品・サービスそのものでないことを意識しておきたい。
これを印刷会社に置き換えると、クライアントに提供するものは印刷物ではなく、クライアントが抱える問題を解決するために印刷物を提供するということである。
印刷会社とブランディングの関係でいうと、広告や販促物の印刷に付随するデザインが取り入れやすく成果も期待できるものであろう。ただし、デザインはただ見た目よくレイアウトすればよいわけではなく、マーケティングや集客・販促の戦略の一貫として企画・制作されなければならない。そうやって企画・制作された印刷物によって、クライアントの売上や集客・販促の成果等、さらに広い範囲でのクライアントの問題解決を支援することができる。そのために有効なのがブランディングの手法であり、それを取り入れることによって、クライアントに対してのソリューション力を高めるだけでなく、結果的に自社のブランディングにも結びつき、印刷会社としての価値が高まることになる。
次回以降は、印刷会社がブランディングやデザイン、そしてそれらを取り巻く戦略や活動をどのように取り入れ、活動すればよいのかという、具体的な考え方や手法について触れていきたい。
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/
目次 | ||
第1回 | 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング [2015/10/23] | |
第2回 | 印刷会社がクライアントに提供すべきもの [2015/11/27] |
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第3回 | 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ [2015/12/01] |
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第4回 | 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは [2016/01/05] |
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第5回 | 顧客の心の中で自社を占めるポジショニング [2016/02/05] |
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第6回 | 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 [2016/03/08] |
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第7回 | ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる [2016/03/11] |
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第8回 | デザインを統一するトーン&マナーのつくり方 [2016/04/8] |
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第9回 | ブランド・イメージをユーザーに届けるためのデザイン表現方法とは? [2016/05/12] |
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第10回 | ユーザーの購買意欲を喚起する写真、イラストの選定方法 [2016/07/15] |
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第11回 | ユーザーの購買行動を促す広告・販促物に必要な視点とは [2016/08/19] |
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