制作・デザイン系」カテゴリーアーカイブ

工程で品質を作り込むセキュリティインシデント対策

情報管理は人の管理

ポストコロナで新しい生活様式「ニューノーマル」が社会に大きな変化をもたらしている中、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する一方でサイバー攻撃や情報漏洩などのセキュリティインシデントも重要視されている。日本郵便は12月15日、全国47都道府県の郵便局で延べ約29万人分の顧客の個人情報を記した書類を紛失したと発表した。紛失の内訳は、国債や投資信託の取引状況を記した書類が延べ約14万8千人分、公共料金などの払い込みを記載した書類が延べ約14万2千人分におよぶ。(2021年12月15日 日本経済新聞オンライン)原因は、職員が保存期間を間違って認識していたことや、保存用の箱の入れ間違いなどだという。工場管理でも課題となっているヒューマンエラーだ。

品質管理は人の“心” の管理

印刷ビジネスでも益々セキュリティインシデント対策は重要である。品質管理の上でも情報セキュリティは欠かせないものだ。管理の上で課題として上げられるのが人の意識だ。コンプライアンスを意識することが必要になる。そもそもコンプライアンスとは、法令遵守だけに止まらない。その概念や目的が重要で、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に業務をおこなうこととなっている。要するに人の“心”の問題を意味している。「良いこと」「悪いこと」の当たり前の判断力を持つことだ。その想像力を持った上で、法令を知り、順守すること、ルールを守ることが肝心だ。

工場マネジメントにおけるトヨタ生産方式では、「品質は工程でつくり込む」という考え方がある。勿論、セキュリティインシデントも含まれる。各工程での不良品を受け取らない、作らない、流さないという人の意識が土台となっている。ルール守ることは当たり前のことだが、それ以上に「顧客のために良いものを作る」「生命や安全を守る」といった目的や心が重要なのである。印刷ビジネスにおける品質管理は、時代の変化により管理する“もの”や“こと”は変わっても、人を育て、心を大切にすることは変わらないようだ。

CS部 古谷芸文

【オンライン】印刷工場の競争力を高めるための
       工場改善活動の進め方

収音とマイクの基本、オンラインセミナー配信のトラブル回避

理にかなったマイクを使おう

オンラインによるコミュニケーションは、アフターコロナでもデジタル化の潮流は加速し、様々な手法や手段が進化すると考えられる。ライブも含めた映像配信では、印刷メディアとは異なり、時間軸の概念や音声収録などの難しい部分がある。特に音声の品質は、充実したコミュニケーションを行うためには重要だ。例えば、Zoom等のオンライン配信や面談では映像はさておき、音声の乱れは、コミュニケーションが成り立たず、致命的でお手上げになった経験を持っている方もいるだろう。筆者も経験がある。音の収録で厄介なことは、取り込んだ音声データはデジタルでも音声の入口(入力)はアナログだということだ。思いがけないトラブルも多い。機材では、「マイク(マイクロフォン)」が大きな役割を担う。当JAGATでも配信内容に応じてマイクを使い分けている。例えば、オンラインセミナーでは、感度の高いコンデンサー型のマイクを使い、会場受講者もいるハイブリッド配信では、ダイナミックマイクやラベリアマイク(ピンマイク)を使うこともある。理にかなったマイクを使うことがトラブル回避にも繋がる。

コンデンサーマイクは、価格が高く品質が良いと覚えてはいけない!

一概にマイク(マクロフォン)といっても様々種類がある。マイク特性を理解する上での二つのポイントは、「感度」と「指向性」だ。カメラの設定にもISO(感度)と画角があるように各マイクにも感度と指向(収音角度、範囲)の特性がある。指向性は、マイクがどの方向から音を収音できるかという特性のことだ。その上で、ざっくりとダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類に分けられる。

・ダイナミックマイク:電源不必要、丈夫で比較的湿度に強い、感度が低い。

・コンデンサーマイク:電源必要、振動や湿気に特に弱い、感度が高い。

間違っても、「ダイナミックマイク→価格が安い→音質が悪い」、コンデンサーマイク→価格高い→音質が良い」と覚えてはいけない。基本として重要なことは、マイクの特性を覚えることだ。ダイナミックマイクは、感度は低いが音質が悪いわけではない。感度が低い分、高い音には弱いが、音源に近づけて使えばシッカリとした音を拾い、余計な音を拾わない。講演会やライブイベントに向いている。一方、コンデンサーマイク(ショットガンタイプなど)は、感度が高く、繊細な音を拾い、高音域にも強いが、ノイズも拾いやすく指向性にも注意を払う必要がある。特性を知っていれば、マイクから1メートル程度離れていても一定のレベルで収音できるので会場受講者のいないオンラインセミナーなどでは、反響音に注意を払いながら使えば、音質も良く、使い勝手も良い。意外と難しいのがコンデンサー型のラベリアマイク(ピンマイク)だ。付け方や使い方によってはノイズが入ることがある。付ける位置やケーブルの巻き方にコツがある。更に、無線タイプになると電波の乱れや長時間の収録になればバッテリー切れのリスクもある。ちなみに、ピンマイクにも指向性のあるもの(指向性タイプ)と無いもの(無指向性タイプ)があることを覚えておこう。一般的な使い方では、無指向性型が自然な音質で収録でき使い易い。

オンラインコミュニケーションは、場所を選ばない、時間や経費の削減につながるなどのメリットがある一方で、相手の感情や話の意図が伝わりづらい、対面時よりコミュニケーションのテンポが悪くなるなどの課題もある。円滑に進めるためには、伝える内容と伝える方法にも意識を向ける必要がある。音声の伝達も大切な要素になる。マイク選びや使い方を理解するには、複雑に知識を増やすことより、用途を考え、理にかなった使い方を覚えることだ。

(CS部 古谷芸文)

【オンライン】印刷機のメンテナンスと品質管理

【オンライン】紙媒体の成果アップ!SNSとの組み合わせでつくる売れる仕組構築

【オンラインセミナー】印刷見積り基礎講座(講義)

トヨタ生産方式と人が働く工場改善と多能工化

人を育てる、現場に寄り添う改善活動

業務改善で大事なことは、人を育てることである。トヨタイムズ(2020年5月27日トヨタ自動車株式会社)によれば、コロナウイルス感染拡大に自動車産業としての取り組みとして、老舗雨ガッパメーカーが医療用防護ガウンの生産に乗り出し、生産量を100倍にした改善活動の取り組みが紹介されている。大正10年に創業した名古屋の老舗雨ガッパメーカー、船橋株式会社は、これまで培ってきた雨ガッパの経験をいかして防護ガウンを作ることに挑戦していた。そんな中、経済産業省から想定をはるかに超える量の防護ガウン作りを依頼される。そこに、トヨタ自動車の改善の現場から生産調査部の高橋智和氏、グローバル生産推進センターのベスト技能推進室主査である鈴木浩氏と保全マネジメント室室長の古井一彦氏が駆けつけ、当初は1日500枚だった防護ガウンの生産量は、他の有志連合(防護ガウン受注する会社)を合わせて1日5万枚にまで増えたという。可能にしたのは、トヨタ生産方式による改善活動支援だった。トヨタスタッフの改善活動の指導は、TOYOTAロゴの入った作業服を脱ぎ、現場の生産工程に入り、現場の人々の声を聴き現場の人に寄り添うことから始まる。ここが、カイゼンの第一歩になるという。重要なことは、動くのは人であり、現場のやる気が鍵を握るということだ。

カイゼン活動は、驚くほどシンプルである。

改善は、現場をよく観察し、働く人の意見を抽出し、「誰でも同じ作業ができるようにする」とうことの取り組みだ。例えば、防護ガウンの素材生地を広げてカットするための延反台では、素材をカットするラインに紙管を設置し、誰もがわかりやすく同じ位置でカットする手順を決めたり、机の表面を黒に変更し、透明な素材が目視し易くするなど数々の細かい改善が進められていく。さらに、ハサミの置き場も作り、常に同じ場所にハサミを戻すことを徹底したという。誰もが同じようにできる、標準を作るということになっていく。カイゼンは、こうした一見地味で小さな工夫の積み重ねで成り立っているのだ。

標準をつくる印刷工場の多能工化と改善活動

作業標準をつくることは、印刷工場でも重要なことだ。受注生産で多品種少量化が進む中、計画的な製造管理や受注管理が難しく、工程や個人のスキルによるムリ、ムダ、ムラによる生産性の低下は、働き方改革への妨げにもなっている。その課題解決策のひとつが多能化だ。多能工化は、トヨタ生産方式から生まれたアイデアともいわれている。複数の異なる作業や工程に従事する技術や業務を身に付けた社員を育てることが必要になる。例えば、印刷工程では、一人の社員が印刷機と断裁機にまたがり従事することや複数の印刷機を操ることなども考えられる。実は、トヨタ生産方式のジャストインタイムと人偏のついた「自働化」に欠かせないことが多能工化である。何故かと言えば、製造ラインにおいてのボトルネックは、各工程での仕事量のバラツキだからだ。部門や工程ごとの平準化をしなければ生産性は上がらない。例えば印刷工程では、印刷が早くできても断裁や後加工で詰まってしまえば納品はできない。特に単能工のラインでは、担当者が病欠などの急な事情で製造ラインがストップしまう場合がある。さらには、外注先を使うことにより利益を圧迫することにも繋がる。

多能工化と改善活動はセットで取り組むことで効果が上がる。

多能工化への課題は何か。 過去の感や経験での製造工程や現場教育では難しいことを再認識しなければならない。 改善活動には付きものの抵抗勢力が現れることもあるだろう。 肝心なことは、改善活動や人材育成をしくみ化する意識を強く持つことだ。改善活動は個人的なことではない。組織としての意思である。改善をマネジメントするリーダーを決めたら徹底的に支援、信頼し、リーダー自身は、現場や人に寄り添うことだ。人財育成がカギを握る。

CS部 古谷芸文

【先行案内】 2022年6月開講 、オンライン印刷工場長養成講座

印刷工場のムダな在庫とお金の目

自動車メーカーの変化と在庫のムダ

印刷工場の改善活動では、ムリ・ムダ・ムラの3Mを無くすことは課題である。中でも過剰な在庫を減らすことは重要だ。最近の在庫管理では、少し違う見方もある。日本経済新聞オンライン(2021年9月15日 18:00)の記事によれば自動車メーカーの在庫管理に対する変化を伝えている。自動車メーカーの間では、できるだけ部品の在庫を持たない効率重視の調達戦略を見直す動きが広がってきた。トヨタ自動車や日産自動車、スズキは半導体の在庫を積み増す。レアメタル(希少金属)権益を自ら確保するメーカーもある。電動車シフトという構造変化を受けて半導体などは戦略部品として重要性が高まっており、国際情勢も勘案しながら安定調達する必要が出てきた。「持たざる経営」は転機を迎えた。と報じている。つまり在庫を増やすということだ。そもそも自動車業界の成長は、受注生産方式で在庫を持たないということで競争力を付けてきた。従来、メーカーの多くは、売り上げを予測して、見込生産により商品を売り切ることを目指す。売り切れずに過剰在庫となり利益に悪影響を及ぼすことがある。

トヨタ自動車のトヨタ生産方式「ジャストインタイム」は、受注生産方式のボトルネックであるリードタイムやコスト、仕様変更へ対応を改善活動により極力向上させた代表的な取り組みだ。その受注生産体制の中で、在庫を持つ方針を打ち出している。勘違いしてはいけないことは、単純な従来のリードタイム短縮や急な需要への対応などではないところだ。危機管理によるマクロ環境対応を考えた経営判断によることを理解しなければならない。

基本は、在庫は持たないほうが良い。なぜか?

答えはシンプルで、在庫はお金ではないからだ

印刷工場の在庫では、材料となる用紙やインキ、刷版などが上げられる。これらは、経営資源「お金」として都合よく運用できるものではない。コスト判断の上でも誤ることがある。例えば、財務諸表の損益計算書では、見せかけの利益となり判断を誤る。在庫は、売れないかぎり原価には計上されないからだ。例えば、年間100万円の利益を稼いだとしても、期首からの在庫残高が100万円増えれば、利益が在庫に形を変えただけでお金は全く増えていないことになる。また、会社の懐具合(ふところぐあい)である貸借対照表、資産の部「棚卸資産」に計上されるが、お金ではないことを認識しなければならい。

ムダな在庫は、生産コストにも悪影響を及ぼす。ムダな在庫は、スペースを取り、倉庫管理というムダな仕事も増やすことになる。

印刷工場のマネジメントでは、それらをお金で計ることが求められる。財務知識は必須だ。だからといって、簿記の資格を取得しなければならないということでもない。管理会計やマクロ会計的な見識が土台となる。工場に纏わる原価の科目を理解し、お金の動きと生産現場の業務を繋げ把握することが必要だ。ムダな在庫を会社のお金と結び付けて考える習慣ができれば、改善活動への意識も高まるはずだ。

オンライン印刷工場長養成講座(JAGAT主催)第1回目は、トヨタ生産方式を基本に「経営と工場マネジメント」をテーマにスタートする。

CS部 古谷芸文

【オンライン】印刷工場長養成講座 https://www.jagat.or.jp/archives/87828

トヨタ生産方式に学ぶ、印刷工場の改善活動とムダとり

改善活動における「ムダとり」

印刷工場の生産効率を上げることは、印刷会社の利益に直結する。特に「ムダ取り」は多くの生産現場で課題となっている。TPS(トヨタ生産方式)ベースの人づくりを中心に実践活動を行うコンサルティングファームのコンサルソーシング株式会社では、YouTubeにおいて工場改善についての動画ラーニングチャンネルが公開されている。トヨタ生産方式をベースに工場の改善活動を様々な視点で解説してある。カイゼンとは、工場の生産現場の作業効率や安全性の確保を見直す活動のことだ。現場の作業者が知恵を出し合うことで問題を解決する点に特徴があり、中でもムダな作業を無くす「ムダとり」は、大きなテーマだ。

ムダとりは、正味作業と非正味作業の仕分けからはじめる

改善活動は、課題を分類することからはじまるとも言われる。トヨタ方式でのムダ取り改善は、正味作業の割合を高めて仕事の付加価値を高めるとされている。

正味作業は、一言でいうと付加価値のある仕事で、非正味作業は、一言でいうと付加価値のない仕事だ。例えば、印刷業でいえば、顧客に対して、直接的に価値を提供している本業としての仕事、印刷製品の品質・コスト・納期を直接左右する影響力の大きい支援的な仕事、遵法性、社会性に関わる仕事にあたる。例えば、印刷現場の品質基準、数値管理、営業での顧客へのヒアリング、提案書作成、プレゼンテーション、契約書作成、締結、請求、支払いなどがある。

非正味作業は、顧客にとって価値の無い、または、価値の低い作業である。無くても顧客に何かしらの損害を与えてしまうリスクが低いものだ。印刷業では、社内都合での会議、打合せ、監視、管理の仕事、トラブル発生に付帯するフォロー仕事、具体的には、刷り直し、製本、加工ミスでの再納品、クレーム処理、値引き、再契約等が考えられる。非効率な会議やトラブル対策は大きな要因のようだ。

勘違いしてはいけないことは、ムダは、正味作業にも非正味作業にも存在しているということだ。ただし、非正味作業のムダを優先してムダとりを行うことになる。顧客にとって価値がない又は低い作業なので損害を与えるリスクが低いからだ。その点、正味作業は顧客に直接価値を提供しているので、その作業をやめたときに問題が発生する可能性が大きい。例えば印刷受注でのプレゼンテーションは、受注する印刷会社にとって必ずしも必要なものでもない。しかし、顧客にとっては、発注する印刷製品価値の理解度を高めるものだ。顧客にとっては重要な作業になる。一概にムダと判断するにはリスク伴う。ムダの性質を知る必要があるのだ。トヨタのムダとり改善は、効率化改善のように仕事を速く処理するという考え方をしない。ムダをみつけて取り除く改善ではあるが、最大との特徴は「やめる改善」で、「価値を探求する改善」だ。顧客満足に向けて、価値を探求し、仕事の付加価値を高めることで成果を上げて余裕ある仕事ができる工場くりに取り組んでいる。

ムダをとっても顧客に選ばれることにはならない

ムダを取っても、顧客に選んでもらうことはできない。顧客に選んでもらうためには、顧客にとって価値の高い魅力的な商品やサービスを提案・提供しなければならないことを認識することだ。正味作業の中にも、顧客にとって価値のない、或いは、低いものがある。価値のない作業を、価値のある作業に変えていく必要がある。変えるためには、価値のない作業をやめて、新たに価値のある作業を始めるか、価値を生み出すようにしなければならい。ムダの認識は、実は、顧客と接する営業や経営方針にも関係する全社あげての取り組む要因でもある。印刷工場においても生産効率を高めるために非正味作業を優先して取り除く活動が必要とされるが、正味作業の中に一見ムダとも思える作業の中の価値を見落としてはいけない。例えば、印刷工場の現場では、印刷におけるカラーバー(印刷品質管理スケール)が紙のムダだと耳にすることがあった。顧客には関係ないことのように思えるが意味を知ったらどうであろうか。品質保証という顧客にとって安心、信頼という価値に繋がる可能性が出てくる。ムダとり改善は、経営やマーケティング感覚も必要な生産現場活動なのだ。

2021年10月20日開講のオンライン印刷工場長養成講座(JAGAT主催)は、第1回目にトヨタ生産方式を取り上げ、経営と工場マネジメントをテーマにスタートする。

CS部 古谷芸文

コンサルソーシング株式会社 動画ラーニングチャンネルhttps://www.youtube.com/c/ConsultsourcingJp/videos

【オンライン】 印刷工場長養成講座 https://www.jagat.or.jp/archives/87828

印刷工場における品質優先の考え方

共感と理解を重要視するトヨタ自動車

今週開会される東京オリンピックの「TOPスポンサー(ワールドワイドパートナー)」であるトヨタ自動車は、国内では五輪に関するテレビCMを放送しない方針を明らかにした。(読売新聞 オンライン7月19日11:58)。一方、大会運営への支援では、関係者を運ぶ車両など計3340台を提供し、このうち、燃料電池車(FCV)の「ミライ」や自動運転機能を持つ電気自動車(EV)「イー・パレット」などの電動車が9割を占め、二酸化炭素(CO2)排出量の低減につなげるという。企業として市場での共感や理解を如何に重要視しているかという表れだ。

印刷工場に必要なマーケットインの考えた方と品質優先

印刷製品の品質も同様に市場に受け入れられなければならない。製品の良し悪しは、工場だけで決まるものではない。判断するのは市場であり顧客だ。マーケットインの考え方が必要になる。印刷工場においても他人ごとではない。言うまでもなく、印刷工場で生産される印刷製品も市場のニーズを捉え、顧客満足を満たした品質でなければならない。企業としてのその品質方針が重要になる。品質方針は、特定の部門だけではなく全社を挙げて共有し取り組まなければならい。カイゼンベース株式会社のカイゼン講座、品質優先の考え方【品質管理と品質改善活動:第1章】によれば、「品質を優先すること」について解説している。第一歩としては、品質を優先するという方針を関係者全員が納得し一致して取り組むことが重要になる。品質優先ということは、短期的なコストやリードタイムによる利益だけを考えるのではなく、しっかりと良い製品やサービスを提供することにより、結果的に顧客の信頼を獲得し売り上げ拡大や利益増加に繋げるものである。品質優先を土台にコスト削減やリードタイムの短縮を考えるということになる。「品質を疎かにしてはいけない」ということを全体で肝に銘じなければならいということだ。

マーケットインでの品質管理は下記の項目だ。

  • 顧客が求める品質基準
  • 顧客が求める量と納期
  • 顧客が求める価格
  • 顧客にとっての生産性
  • 地球環境の保全
  • 顧客を含む関係者全員の安全と健康

顧客に印刷品質の価値を伝えるマネジメント

印刷製品における品質管理や品質保証もマーケットインが土台となる。過去の印刷工場に見られたような勘と経験による工場の事情を優先するもではない。例えば、オフセット印刷の品質は、決定づける要因として、ドットゲイン、濃度、カラーバランス、コントラスト、トラッピング、ドライダウン等があるが、このことが顧客にとって価値として伝わらなければ意味がない。そこで、印刷工場は、品質安定のための標準化や数値管理、カラーマネジメント等のしくみづくりの必要性になる。また、営業活動では、品質基準を満たした印刷製品を納品することは勿論であるが顧客にその信頼と安心という価値を伝えることが重要になる。品質優先の考え方は、経営視点で戦略的なものだ。品質を上位に置いた品質(Q)・コスト(C)・納期(D)であるQCDのバランスでのフォーメーションである。組織力がカギを握る。組織力を発揮するためには、工場におけるリーダー育成が不可欠だ。オンライン印刷工場長養成講座(JAGAT主催)は、この10月20日(水)に開講する。

(CS部 古谷芸文)

オンライン 印刷工場長養成講座 

2021年10月20日(水)開講

価値を高める印刷工場のマネジメントを考える

ブランド価値を高める生産工程の見える化から魅せる化へ

印刷会社における工場は、重要な収益の源泉だ。工場のマネジメントにより営業戦略にも大きな影響を及ぼす。伝統的な工場管理では、改善活動をベースに如何に生産効率を高め利益を絞り出すかがテーマとなっている。一方、その改善活動は、工場内の課題解決にとどまらずマーケティングにも大きな影響を及ぼすことになる。印刷工場においても重要な視点だ。日本のものづくりにおける改善活動は、世界的に見ても「カイゼン」とカタカナ表記を用いるあるいは「Kaizen」と表記されるなど、国外でも通用する言葉になっている。メイド inジャパンが高いブランド価値を高めている要因にもなっている。

愛知県豊田市 集団接種会場の運営に「トヨタ生産方式」活用

新型コロナウイルスのワクチンの集団接種普及が心配される中、改善活動が注目を浴びている。去るテレ朝ニュース(2021年5月30日)トヨタ“産業医” 派遣「生産方式」を生かした集団接種記事によれば、愛知県豊田市では、75歳以上の高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチン集団接種が30日から始まり、トヨタ自動車などと連携し、効率的な会場運営に取り組んでいる。同様に福岡県宮若市では、同市内に本社を置くトヨタ自動車九州と連携協定を結んで同社の体育館を集団接種会場として、短時間でスムーズに接種を進めるため、「トヨタ生産方式」を取りいれているという。

ムダの排除と動線の確保という改善活動がブランドになる。

そもそも、トヨタ生産方式とは、工場における生産活動の運用方式の一つで、ムダを徹底的に排除するために確立された生産方式だ。様々な多くの企業がトヨタ生産方式を取り入れ、「ジャストインタイム」や「見える化」或いは「なぜ」を5回繰り返すなどの方法や考え方は多くの印刷工場にも取り入れられている。ちなみに、良く耳にする「かんばん方式」は、トヨタ生産システムの「必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給する」ジャストインタイムを実現する上での情報の流れの仕組みの総称だ。生産現場の各工程において、後工程が前工程に対して必要な部品などをどのように生産するかを発注する発注書の役割を指すものが通称「かんばん」と称されている。これらの呼び名はその意味を超えて価値の高いものになっている。工場の改善活動のノウハウは、企業や製品、サービスのブランド価値形成に大切な役割を果たしているのだ。

オンライン・新工場マネージャー養成講座は10月開講する

印刷工場のマネジメントは、印刷会社のマーケティング戦略おいても益々重要な役割になっている。特にコロナ禍で変わった環境は大きい。営業パーソンに頼った「営業は仕事取ってこい!」の時代は、とっくに終わっている。印刷工場マネージャーも自社のマーケティング戦略を意識し、売れるしくみの中での印刷工場づくりに取り組む時代だ。10月開講予定の「オンライン・新工場マネージャー養成講座」は、改善活動をはじめとする基本的な知識は学びながら売れる、稼ぐマネジメントを学ぶ講座として開講する。

(CS部 古谷芸文)

オンライン・新工場マネージャー養成講座

オンライン工場見学、印刷工場のファンづくり

~顧客に価値を伝える工場のマネジメント~

工場の価値を伝える、ユーザー視点

印刷会社における工場見学は、有効なPRの手段だ。勿論、魅力ある工場を顧客に見せれば、大きなエビデンスとしてのPR効果が期待でき、見られる工場も5S活動が活発化し、社員のコミュニケーション力の向上も見込まれる。

コロナ禍においては、バーチャルやオンラインによる工場見学会も活発化している。日本経済新聞電子版のトラベルクローズアップ(2021/4/19)では、ものづくりの専門家が選んだ「オンラインで見学できる工場10選」を紹介している。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO70985240U1A410C2W01001/

記事中の土屋鞄(かばん)製造所では、「匠の技、わかりやすく」をテーマに、コロナ禍で中止なっていた見学会を動画で開催している。「クイズ」「ランドセルの作り方」「職人の想い」の3つで構成され、各3~4分。リアルの工場見学では公開されていない革を裁断する場面も動画だと見られるようになっている。職人の想い編では、現場の社員が登場し、ランドセルづくりにおいての肝やエピソードを語っている。クオリティーも高く見ごたえのあるコンテンツになっている。サイトにアクセスされればブランド価値は高まりそうだ。

https://tsuchiya-randoseru.jp/pages/kengaku

映像で自社の強みを伝えるファンづくり

売れる印刷工場のマネジメントは、売れるための物語が重要になる。ここで言う物語とは、架空のものではなく製品を作る過程での拘りや想いを表現することだ。印刷工場では、品質を保証するしくみや設備と社員の創意工夫、想いを語ることなどが一例になる。それがファンづくりでは、視聴者へのエビデンスとなりブランディングに繋がっていく。魅せるものづくりでコミュニケーションを取ることが肝心だ。

工場における製造工程や製品の特長は、文章では感性には伝わりづらい。エビデンスとしては、現場を見て伝えることが必要な場面がある。リアルが不可能であれば映像やオンラインを活用するというも選択肢も浮かんでくる。コロナ禍では、映像や配信方法を駆使してオンライン配信する企業の増加が加速している。如何にアクセスさせるかも大きな課題となる。

<オンラインのメリット>

  • 視聴する時間と場所を選ばない
  • リアルでは不可能な工場現場も見学できる
  • 申し込み制限、受け入れ人数限度がない
  • 見たい場面、見たいペースで見学できる

「リアル以上に負担が大きい」という課題

一方、実際の工場見学とは違い、リモートでは参加者の反応や状況が把握しづらい。スタッフの数も、現場の映像、撮影担当に加え、スイッチング等のスタジオ担当を用意するなどの手間と時間がかかる。一見、オンラインの方が手軽のようにも思えるが、実際はその逆だ。リアルでの工場見学にはない労力や気苦労が発生することも想定しておく必要がある。デメリットもあるが様々なオンライン化の波は、コロナ終息後も変わらないであろう。リアルも有り、オンラインも有りとなるだろう。重要なことは、手段に振り回されず目的を忘れないことだ。マーケティング視点で伝えたいメッセージを映像表現やオンラインの特徴を生かして活用すればこれからますます可能性が広がる。ただし、みんながやり始めていることを忘れてはいけない。

(CS部 古谷芸文)

オンライン印刷ビジネス開発実践講座2021

印刷製品、イメージで伝える鳥瞰図

正確さを極めた伊能図と鳥瞰図の違い

印刷メディアにおける情報は、正確さが求められる一方でイメージを伝えることも重要だ。毎年4月19日は、地図の日となっている。同日に放送されたTBSラジオ番組「檀れい、今日の1ページ」でも話題になっていた。地図の日は、寛政12(1800)年の旧暦4月19日、日本全土の実測地図を作製した江戸時代後期の測量家・伊能忠敬が蝦夷地(北海道)の測量に出発した日によるとされる。足かけ17年にも及び、完成した「大日本沿海輿地全図」(通称「伊能図」)は、その正確・緻密さが特徴であった。国防上の観点からも流出を恐れられ長らく秘蔵されていたほどだという。

一方、正確・緻密さとは性格が異なるのが鳥瞰図(ちょうかんず)だ。一般的には意外と知られていないようだが、鳥瞰図とは、高い視点位置からの透視図だ。例えれば、鳥が高いところから地上を見おろすように、人が高い視点から見おろしたように描いた図をいう。(出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)。鳥瞰図のポイントはイメージだ。見て楽しく、感情にも訴え、特徴を表したものが鳥瞰図になる。京都府ホームページで文化・スポーツ・教育「京都府立京都学・歴彩館 Kyoto Institute, Library and Archives」では、デジタル展覧会「京の鳥瞰図絵師 吉田初三郎」が公開されている。鳥瞰図は、大正時代から昭和時代のはじめ、鉄道網の発達に伴い空前の行楽ブームが到来すると、鳥の目で見下ろしたように描いた案内図として各地の宣伝と集客のために多数作成されていた。中でも有名なのが大正から昭和にかけて活躍した吉田初三郎が描いた鳥瞰図ということだ。大胆な構図や鮮やかな色彩で人気を博したとされている。

イメージによって伝える情報

鳥瞰図の肝は、印象的な場所や情景、ランドマークなどをデフォルメして高い技術で描写されているところにある。メッセージをイメージによって、情報を人の心や感情に訴えかけることによって効果的に伝えている。イメージとは、心に思い浮かべる像や情景。ある物事についていだく全体的な感じ。心像。形象。印象。また、心の中に思い描くこととある(デジタル大辞泉より引用)。大正時代から昭和初期の行楽ブームで広まった観光案内としての鳥瞰図の表現技法は、現在でも広く受け継がれている。コロナ禍でなければゴールデンウイークは旅行シーズンでもある。今年は、巣籠もりで大正ロマンを感じられる鳥瞰図を眺め、印刷製品のイメージ価値を感じるには良い機会かもしれない。

(CS部 古谷芸文)

印刷営業20日間集中ゼミ(2021/5/10~6/4)https://www.jagat.or.jp/archives/81764

オンライン印刷ビジネス開発実践講座 https://www.jagat.or.jp/archives/85259

【オンライン】情報の活かし方とアイデア発想法https://www.jagat.or.jp/archives/85395