広がる動画ビジネス
動画ビジネスは、デジタル化やWebメディアの広がりと共に印刷会社での受注も増加の傾向であたり前になりつつある。受注拡大には、一工夫も必要のようだ。国内の動画コンテンツビジネス市場(株式会社矢野経済研究所プレスリリースより)は、主要5市場での2024年度を事業者売上高ベースで前年度比 108.9 %の 9,880 億円と推計した。近年、市場が好調な要因としては、SNS上に静止画像から動画コンテンツが増えたことや、副業や趣味を目的とした動画編集ソフトの需要が高まっていること、ライブ配信アプリの認知・利用が広がっていることなどが挙げられるという。拡大傾向の中では、これまで視聴機会が少なかった若年層以外の世代でも動画コンテンツを視聴する機会が増加。特に、50代〜60代の年齢層でコネクテッドテレビ(インターネット接続して動画視聴が可能なテレビ)などの新たなサービスを通じ、視聴機会が増加したことで市場が活発化したという。
特に成長分野のサービスを整理すれば、
1. 動画配信プラットフォーム
NetflixやAmazon Prime Video、Disney+など
2. 短編動画の人気
YouTubeショートやTikTok、Instagram
3. 動画広告市場
動画広告市場も拡大。2023年には6,253億円に。スマホやコネクテッドテレビ向けの広告需要が増加している。
4. ライブ配信
特にゲーム実況やイベントのライブストリーミングが人気。リアルタイムな交流が可能。
5. 新しい技術
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などの新技術。入感のある体験が提供される。
一工夫するためのモーションデザイン
成長する動画ビジネスの中では、一工夫の動画コンテンツが必要になる。JAGATでは2024年5月に浅野桜(あさのさくら)氏(デザイナー・株式会社タガス代表取締役)を講師に招き、オンラインセミナー「デモで制作手法を学べる DTPスキルを活かしたモーションデザインの作り方」を開催した。
これは、印刷物のコンテンツを活かし、一工夫の動画を作成するものだ。講座では、印刷会社ではお馴染みのPhotoshop( フォトショップ )やIllustrator( イラストレーター )で作成した部品を動かして短いプロモーション動画を作る流れやWebサイトで活用するノウハウを解説した。使用するアプリケーションが同じAdobe( アドビ )のAfter Effects( アフターエフェクト )であることも面白い。Premiere Pro( プレミアプロ )と並び映像のデジタル合成やモーショングラフィックス制作、アニメーション制作における定番である。本格的に動画制作をステップアップする上でも使い勝手がよさそうだ。動画制作での効果と手法を理解する上では、意味を知ることが早道だ。モーションとは動きのことで、「エフェクト」は効果の意味である。つまり、動画に与える効果の種類を整理し理解すれば、制作やアプリケーションを使う上でもイメージが膨らみ効果的な作業に役立つ。
<主なエフェクト>※主な動画効果
【トランジション】
映像を切り替えるときに使う。動画と動画のつなぎ目をスムーズに印象的にする。
前のカットがフェードアウトするのに合わせて後のカットがフェードインする。「dissolve (溶ける)」という名前より
- フェードイン・フェードアウト(ホワイトアウト/ブラックアウト)
画面を徐々に明るくして、次の映像につなげる。逆の動きでフェードアウト(ブラックアウト)は、画面を徐々に暗くする。
前のカットの上に次のカットが重なる形で映像が切り替わる。
画面が拭き取られるように前のカットから次のカットへ切り替える。
【モーショングラフィックス】
写真やイラスト、文字などの素材に動きや音をつけるエフェクト。動画のオープニングを中心に使用される場合が多く、エフェクトの中で最も使用頻度が高いエフェクト。
アニメーションやエフェクトの値を変更するために使用するもの。変更できる値には、スケール、位置、回転、アンカーポイント、不透明度などがある。
動画の一部を早送りやスローモーションにするなど速度を変更する。動画編集ソフトごとに呼び名が異なる。「タイムリマップ」や「リタイミング」など
効果音のこと。笑い声や拍手などの人が発する音から雨や風などの自然の音まで様々。
動画の色に関する効果。 「モノクロ」「カラースプラッシュ」。動画内の色を一つだけ選択し、他の部分はモノクロに見せるなど。
映像や画像内にある特定の色を透明にして切り抜く。テレビの天気予報や映画、ゲーム実況などで使用。
動画の素材を変形。タイトルやロゴの強調や場面転換時に挿入するコメントを目立たせるなど。
これらは、動画編集の経験のない人でも聞いたことがあるかもしれない。マイクロソフトoffice、パワーポイントのアニメーション機能にも搭載されているものも多い。一工夫のヒラメキは、身近にあることも多い。何を作りたいか、どんな風にどんな効果で作りたいのか、そのゴールをイメージすることが肝心である。イメージが広げれば、想像力を働かせ見渡せばひと手間かけるだけで高いコミュニケーション効果を生み出すアイデアが浮かぶことも増えるだろう。
(研究教育部 古谷芸文)
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