DTPエキスパート認証試験は、『DTPエキスパート・カリキュラム』で規定された範囲に基づいて出題されている。このカリキュラムは、認証制度の創設時に第1版を発行して以来、2年ごとに改訂を重ねてきた。
このたび、最新版として DTPエキスパート・カリキュラム 第16版が公開された。
カリキュラム改訂は、 主 にこの2年間に新たに出題された項目や内容の反映である。つまり、新たな技術・サービスやビジネス環境、社会情勢などに応じた内容となっている。そのほか、カリキュラムの全体構成・内容について、随時、見直しを図っている。
今回は、以下の項目が追加されており、これらのポイントと背景について触れてみたい。
和文書体
国内で日常的に使用されているもっとも代表的な和文書体の明朝体とゴシック体、各々の由来と特徴、用途。
書体選択手法
書体は、どのような基準で選択すべきか。媒体の特性や想定される読み手にとって適切な書体とは何か。同じ書体ファミリーでもウエイトによってどのような差異があるか。
合成フォント機能
InDesignやIllustratorに搭載されている「合成フォント」の機能や用途。和欧文フォントのバランス調整が容易で、効率よくフォント設定ができる。
元々は電算写植において、和欧混植の作業効率化のために搭載されていた機能。後にユーザーの声を反映してInDesignに搭載された。
特色印刷と2色印刷
特色印刷・2色印刷(ダブルトーン)とは何か。プロセスインキ・プロセス印刷との違い。どのような用途で使われ、どのような効果があるか。
紙幣の印刷と偽造防止技術
国内では年間約30兆枚の紙幣が発行されており、紙幣はもっとも身近な印刷物だといえる。2024年、20年ぶりに新紙幣が発行された。世界有数の高度な印刷技術が取り入れられ、偽造防止が図られている。
生成AI
生成AIによって、さまざまな分野の高度なコンテンツ生成が実現できる。デザイン・印刷分野でも、活用が広がっている。
ISMS認証とプライバシーマーク制度
ISMS認証とプライバシーマーク制度は、ともに情報セキュリティ分野の公的認証制度であり、さまざまな分野、業界で定着している。これらの概要と特徴、印刷業界における意義・活用方法など。
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試験を受験しようとする方々は、過去の問題集や受験参考書を購入して勉強を始めるケースが多いようだ。しかし、最も参考になるのは、実はカリキュラムを熟読することである。
DTPエキスパート・カリキュラムでは、出題範囲やレベルが、平易、かつ簡潔に記述されている。
DTPや印刷の技術的な解説だけでなく、印刷を取り巻く環境、現在の印刷ビジネスに求められる要素や今後の方向性を理解することができる。
このカリキュラムを熟読することで、エキスパート試験の出題傾向やレベルが総合的に理解できる。例えば、情報デザインやマーケティングなどの新しい分野では何が重要なのか把握することもできる。その後に、さらに細かい分野を掘り下げて勉強すると良いだろう。
DTPエキスパート・カリキュラム第16版は、Webページでも全文を公開している。
エキスパート試験を受験する際は一読することをお薦めしたい。
(資格制度事務局 千葉 弘幸)