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クロスメディアエキスパートの資格を取得して

furukado_photoクロスメディアエキスパートの資格を取得したことで、

①他の取得者の紹介によって研究会に参加し、有意義な情報が得られるようになったこと
②顧客提案に対して方向性を持って提案できるようになったこと
③社内で他にも試験に挑戦する者が現れ、合格したこと

など資格取得前にはなかった動きがありました。

会社や私を含めた社員も変革が必要な時代、クロスメディアエキスパート取得をベースに会社の方向性の考察や、人材育成に活かしていきます。

株式会社デンショク
取締役 古門 正明 様

 

※本ページの内容は掲載当時のものです。

新たな取り組みに向けてクロスメディアエキスパートを取得

共同印刷 株式会社
出版商印製造事業部 製造技術部 主事 浅野 正裕 様

DTPエキスパートに続き受験を決意

エキスパート認証試験というとDTPエキスパートが有名ですが、自分は2000年3月に取得しました。当時は今ほどDTPが複雑ではありませんでしたが、 DTPの経験が半年間しかなく、学科試験や実技試験では四苦八苦した記憶があります。試験勉強によってDTPについてひと通り理解できたので、試験後の仕 事では勉強したことが役に立ちました。

近年ではWebを利用したDTPデータのデータベース化やCRM(Customer Relationship Management)を活用している得意先ではクロスメディア的な展開が増え、専門用語の理解や知識が必要だと日々感じていました。自己啓発として何か 仕事に役立つ資格を取ろうと思い、クロスメディアエキスパートのことをホームページで知り、取り組もうと決めました。 また、DTPエキスパートと同様に2年に1度の更新試験があるため、新しい内容を勉強するきっかけになるので良いことだと思います。自分の場合は、 「DTP」と「クロスメディア」の更新が交互にあるため毎年3月は勉強の月になりそうです。

幅広く調べながら勉強

試験対策ですが、受験を決めたのが試験の1ケ月前で、通信教育に間に合わず、クロスメディアエキスパート向けの参考書や過去問題集がないので、試験範囲の用語 を中心にネットと書籍で調べました。勉強方法は通勤時に調べた内容を覚えたり、日曜日は図書館でも勉強をやりました。幸い、インターネット検定や初級シス アド試験での経験があり、ネット関連の知識は下地があったのでXMLや経営概論に重点を置きました。

試験対策の書籍があれば要点のみ勉強 できるため効率的だったと思いますが、関連することを幅広く調べ考えながら勉強できたので、合格には遠回りですが良かったと思います。これから受験される 方で、参考書が発売された時は、参考書+ネットでの最新情報で勉強すると合格後の仕事に効果的なのではないでしょうか。 論述試験では、普段利用している通信販売やネットクーポンなどを思い出しながら勉強しました。自分が使っていて良いサービスを思い出し、回答に盛り込むよ うにしました。実際に存在するサービスのほうが話にリアリティが出てきます。

常に新しいことに触れることが重要

クロス メディアはコンピューターに関する知識が多いので、常に新しいことに触れることが重要だと思います。 インターネットの広告は漠然と見ていると単なる宣伝ですが、注意深く見ると動きや音でクリックを誘う広告が多いです。動く広告は十数年前では珍しく、今後 も凝った広告は増えていくでしょう。それに対して、検索サイトのグーグルで表示される広告は、テキストのシンプルな作りで大きな効果を発揮しています。人 の好みにもよりますが、人のクリックを誘導するための広告でも手法は異なり奥深く面白いところです。

あるネットの通販では欲しい物をリス ト化し、友人に公開しプレゼントしてもらえる機能があります。これは顧客ごとに高度なカスタマイズされた広告と言えるでしょう。このようにインターネット では常に新しいことが始まっているので意識して広告を見ると新たなヒントが得られ、実際の仕事に役立つものが見つかるはずです。

資格の説明を通じてアピール

資格を名刺に載せましたが、取得後の顧客からの反応は良いです。資格を知っている人以外にもDTPエキスパートと並べて記入してあるため、DTPエキス パートを知っていれば資格の雰囲気が分かり、話に説得力が出てきます。両方とも知らない人からは「これってどんな資格?」と聞かれ、資格の説明を通じてア ピールできるので、大きなメリットになると思います。

他部門との連携がスムーズに

弊社の場合は、全社的な取り組みとし て、従来からDTPエキスパートの取得については、外部より講師を招き、定期的な勉強会を実施しています。クロスメディアエキスパートに関しては当初から 通信教育などでは推奨されており、特定の内容に関しての社員向けの教育はありました。 近年では印刷会社には、顧客から従来の受注を中心とした「印刷」以外にも、「最新の情報加工&活用知識と企画提案能力」が求められています。そこで昨年よ りクロスメディアを核とした、最新の情報加工と専門知識の習得+知識を生かすための、実践的企画書作成とプレゼンテーション能力を習得するために取り組み が行われています。

実践力を重視するために講義形式ではなくディスカッション形式が取られており、クロスメディアエキスパート取得者、ま たは詳しい人が説明を行います。例えば論述試験については、試験に沿った模擬的な内容について、各人が提案の企画を行って発表を行い、社内にいるプレゼン テーション名人が講評を行います。それによって、ほかのメンバーの良い点に取り入れていくことが可能になります。 これはプレゼンテーションがうまくなるだけではなく、学習を通じて交流の少なかった他部門との交流も生まれ、クロスメディアエキスパート認証試験を通じた ネットワークができつつあります。クロスメディアの展開ではさまざまな要素の複合のため、幅広い部門との関わり合いが必要になってきます。今後は、他部門 との連携がさらにスムーズになることが期待されます。

クロスメディアエキスパートに求められること

ネット上の仮想的な 空間で生活をするセカンドライフというサービスが2007年春夏ごろにテレビや雑誌で取り上げられました。それに伴い、今年に入ってセカンドライフの影響 を強く受けたようなネットサービスが複数出てきました。やれば面白いかと思いますが、自分の場合は、インターネットやテレビや読書など他人に気兼ねなく楽 しめるほうが気楽です。ネットの世界よりも現実の世界のほうが面白いです。仮想的な空間で新商品にいち早く触れるよりも、夜のビジネスニュース番組で見る か、ホームページで見たほうが詳しい説明が得られることは少なくないと思います。

クロスメディアの環境に当てはめてみると、同じことが言 えるもしれません。メールマガジンはいつの間にか迷惑メール扱いされ、カスタマイズされた情報は毎回同じような情報、個人情報保護の件でアンケートに対す る抵抗感などあるのではないでしょうか?そういった懸念を払しょくする必要がクロスメディアエキスパートには求められているとも思います。Web2.0以 降では革新的な仕組みはもちろんですが、内容が重要ではないかと思います。ほかでは得られない情報を、いち早く気軽に得られ、情報の流出のない強固なセ キュリティがあることがますます重視されると思います。

動画の広告というとCMなど多額の費用が掛かりますが、無料動画投稿サイトの Youtubeを使用したPRが増えています。動画を扱うサイトの場合は費用が多く掛かる傾向がありますが、無料で使用できるのでメリットは大きいです。 口コミによる効果も期待できるため、クロスメディアな展開には利用する価値があると思いますが、十分な注意が必要です。最近の事例では、自社の作業工程を PRのため公開したところ、一般的に危険な作業方法だったために動画の削除が余儀なくされることがありました。細心の注意を払わないとイメージダウンにな りかねませんが、こういった新しい取り組みを参考にしていく必要があると思います。

※本ページの内容は掲載当時のものです。

クロスメディアの活用でワンストップサービスを提供

株式会社 タカヨシ
情報開発部 システム課 桜井 剛 様

受験動機と試験対策

私は2007年度からホームページ関連の提案業務に携わるようになりました。それまでは、DTP・製版設備を含めたシステム構築・運用やデータ変換作業な どを主な業務として社内で作業を行っていました。今までの業務と違うホームページ関連の提案業務に携わるにあたって、DTP・製版設備やネットワークだけ ではなく、ホームページやその他媒体の知識が必要だと感じ、独自で勉強しながらホームページ関連の提案を行っていました。同時期に会社でもクロスメディア についての勉強をすることを方針としていましたので、自分のレベルアップのために目標が必要だと感じ、クロスメディアエキスパート認証試験を受験すること にしました。

クロスメディアエキスパート認証試験を受験することを決めた後、試験対策が必要だと思い、ホームページや雑誌などで試験情報 を集めましたが、なかなか試験情報は集まりませんでした。実際には、出題範囲(カリキュラム)に対して模擬試験問題や過去問題が少なく、実際の試験が想像 できない状態でした。何から手を着けるべきか分からない、出題範囲が広過ぎる。知らないキーワードはインターネットで検索して調べました。また、第2部試 験については、クロスメディアエキスパート認証試験関連講座を受講しました。これは、試験対策としても役に立ちましたが、普段の提案活動においても考え方 など非常に参考になったと思います。以上のような試験対策を行い、試験に臨みました。

クロスメディアエキスパートを取得して

クロスメディアエキスパート認証試験に合格し、自分のレベルアップという目的は果たすことができました。また、まだまだレベルは十分とは言えませんが、提 案活動においても本当にお客様の事業に対して効果があるか、お客様の事業を考えた提案をするようになったと思います。クロスメディアエキスパートの試験 は、単なる知識の向上だけではなく、お客様の立場に立って考えるという意識の向上につながりました。

しかし、試験に合格しただけでは、ス タートラインに立っただけです。クロスメディアエキスパート自体ができたばかりで、まだまだ世間一般に認知されているとは言い難いのが現状です。現在、ク ロスメディアエキスパートを取得している人たちは、クロスメディアエキスパートという資格を価値あるものにする義務があります。そのためには、自分自身も 常にレベルアップしていかなければなりません。また、会社にとって求められる人材になってこそ、クロスメディアエキスパートという資格の価値が上がると思 います。私もクロスメディアエキスパートの資格を少しでも認知向上させることができるように日々努力し、そして、会社に求められる人材に成長したいと思い ます。

クロスメディアとは何か

ワンユースマルチソース、マルチメディア、メディアミックスとさまざまな言葉(キーワー ド)がありますが、それらとクロスメディアの違いは何なのでしょうか。私は、利用者(お客様のターゲット)に合わせたメディアの選択を行うことだと思いま す。お客様の視点に立ったキーワードです。

これまでのマルチメディアやワンユースマルチソースなど複数のメディアを扱う総称としてのキー ワードは、どちらかと言うとメディアを制作する側でデータの扱いが便利になる、作業が簡単になるという考えで、実際に利用する側の立場・視点でのキーワー ドではありませんでした。お客様のターゲットに一番見てもらえる、利用してもらえるメディアを選択する。それは、ホームページかもしれませんし、DMやパ ンフレットなど紙媒体かもしれません。お客様の事業やターゲット層によって、一番メリットのあるメディアは違うものです。印刷会社は、当然ですが印刷を中 心に物事を考えがちです。しかし、お客様は印刷物中心ではなく自社のターゲットに効果のあるメディアを求めています。お客様の事業に本当に役に立つメディ アを提案することが、今後、印刷会社に求められるものではないでしょうか。

これからはホームページ制作会社やソフトメーカーなど他業種が 競合になる場合も多くなるのではないでしょうか。ホームページを中心に考えられているお客様も多くなってきています。そういったお客様へ他業種からの提案 に対抗できるようにする必要があります。また、そういった他業種の企業とアライアンスを取ることも必要になるかもしれません。クロスメディアという幅広い キーワードの中で、お客様により良い提案活動を行うためには、他業種の企業とお互いが有益になるアライアンスを取ることも必要になってくるのではないで しょうか。

当社のクロスメディアへの取り組み

当社のクロスメディアへの取り組みとしては、現在、当社で行っているクロ スメディアの仕事を体系化し、クロスメディア事業を本格化させるプロジェクトチームを発足させました。参加メンバー全員が、クロスメディア事業が今後、当 社が発展していくための核となる事業と位置付けて、「クロスメディアを活用して、ワンストップサービスを提供し、お客様の事業の成功に貢献する」をテーマ に取り組みを行っています。ひと言でクロスメディア事業と言っても、さまざまなビジネスがありますが、当社では、テーマにもあるとおり、「メディアに関し てワンストップサービスを提供すること」「お客様の事業の成功に貢献すること」を目的として事業内容・サービスメニューを考えています。

具体的には「メ ディア・コンサルティングサービス」「ドキュメントの管理・運用サービス」「独自コンテンツの保有」の3つの柱をクロスメディア事業展開の中心として、戦 略の立案・活動計画の作成を行っています。中心となるものは「メディア・コンサルティングサービス」で、今までの紙媒体のクリエイティブな提案は体系的に 行っていましたが、お客様のターゲットに効果のあるメディアの選定・コンサルティング、効果測定や集計など、今までは個々の案件にそれぞれ対応していたも のをメニュー化・体系化し、ワンストップで提供するサービスをより充実させていきます。

今年6月中に新事業基本計画を作成し、その計画を 元に今後のクロスメディア事業のさらなる充実を進めていく予定です。本格的な始動はこれからですが、今後の当社の核になる事業と位置付け、取り組んでいま す。 これからの印刷会社は、ただお客様から言われたものを印刷するだけでは、お客様からの要望・要求にこたえられないと思います。印刷を中心としたメディア選 定から商品キャンペーンの施策・効果測定など、印刷の枠を超えて、お客様と一緒になってお客様の事業を成功させる印刷会社にならなければならないのではな いでしょうか。当社もクロスメディア事業を充実させ、よりお客様の要望・要求にこたえられる会社を目指して、今後も取り組んでいきます。

※本ページの内容は掲載当時のものです。

クロスメディアはユーザー視点

株式会社 ビー・ユー・ジー
事業開発室 戦略マーケティングマネージャ 田崎 勇二 様

ネットに関わるすべての人に有用

クロスメディアエキスパート認証制度は、次世代の経営を担う企画・営業担当の方をターゲットに設定されているそうですが、実際に取り組んでみて、印刷・出 版のほか、IT関連から広告、情報サービスまで、さまざまな業界に従事する者が知っておくべき知識と必要な企画提案力を問う、素晴らしい試験だと思いました。
確かに、出題範囲はマクルーハンからSQL言語まで広範囲で、かつ各分野についての深く詳細な知識が問われ、それをいつものPCから離れて鉛筆と消しゴムで取り組まなければならないという、非常に厳しい試験であり、難易度も高いと思います。
笑いごとではなく、私はまず、鉛筆で漢字の練習をするところから始めなければなりませんでした。

きっかけはXMLコンソーシアム

まず、私のバックグラウンドをご紹介しておきます。 弊社はハード・ソフトの企画、設計、開発からシステム運用、BPOサービスに至るまで、広範囲な業務に取り組んでいるシステムハウスです。その中で、私は ソフトウエアの開発、システムの企画、設計を経て、現在は事業開発室で新規ビジネスを担当しており、業界動向を広く調査したり、ニーズの柔らかい客先に伺い、問題解決のための方向性を提案したりしております。
社外では、XMLコンソーシアムのクロスメディアパブリッシング部会にて、クロスメディアの事例研究や、XSLT/XSL-FOなど自動組版に関わる技術の研究に取り組んでおります。クロスメディアエキスパートに関しても、部会活動の一環として取得しようという話になり、部会の仲間と一緒に勉強を進めて受験しました。ご興味のある方はぜひ活動にご参加ください。

広範な試験範囲

Webサイトに示されているとおり、カリキュラムの範囲が広く、これらすべての分野に精通している人は非常に少ないと思います。私も経営などは系統立てて学んだことはなく、苦労しました。門外漢の分野について手っ取り早く知ることができるガイドが、参考図書となります。

特に自分の専門外の分野の書籍は、ぜ ひ一読することをお勧めします。時間がなければキーワードだけでも拾って、用語の定義を押さえておきましょう。私も鉛筆書きの練習も兼ねて、用語集を作りました。この時、一歩踏み込んだ定義を確認することが重要になります。

例えばSQLとは、RDB管理システムのための問い合わせ言語ですが、さらにSQL にはデータ定義言語(DDL)、データ操作言語(DML)、データ制御言語(DCL)の3種類があり、それぞれの代表的なコマンドは何かというレベルまで押さえておきたいところです。

系統立てた理解が不可欠

このように各分野の用語を深入りして調べていくと膨大な量になると感じるかもしれません。
しかし、例えばIT分野では、Web、BlogやSNSに代表されるネットワークサービスを支える技術基盤を、伝送路としてのネットワークを構成するTCP/IP、データをアプリケーションに伝えるインターフェイスとしてのHTTP、その上で動作するサービスであるWWW、Blog、SNSの系列と、データ表現の手段としてのXML、HTML/XHTML、Webアクセサビリティ、RDF/OWL、セマンティックWebの系列、データを格納する光ディスク論理フォーマットからRDB、コンテンツマネジメントの系列の3つの系列として体系的に理解していけば整理がしやすいと思います。

第2部試験は事実に基づいて論理的に

記述試験に関しては、書籍『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』 で示される論理的な思考の手順に沿って、手を使いながら企画を練り上げる練習をする必要があります。

普段の業務で企画提案に関わっている方は、慣れもあっ ていきなり企画を書き始めることも多いと思いますが、試験においては、与件に示されている事実は何で、それを解決する手段として何が考えられ、そのうち、 どの手段を使って何を解決するのかを明らかに示す必要があります。

そのためには普段、頭の中で同時並行的に起こっていることを、ステップに分けて取り出す練習が欠かせません。また、既存のソリューションを単に当てはめるのではなく、ユーザーの立場に立って解決策を模索する必要があります。

これが意外と難し いところで、ITならば何かを開発しなければならないとか、印刷業では紙を増やさなければならないという考えに陥りがちです。私はJAGATのクロスメ ディアエキスパート認証試験の関連講座に参加させていただきましたが、そこでの演習が大変参考になりました。

マスメディアを猛追するインターネット

IT産業のトップ企業の一つであるgoogleの富の源泉が広告費と販売促進費であり、テレビCFからチラシまで、これまでITは制作技術の一つ程度に考えていた多くの業界が脅威にさらされています。これを、印刷・出版業界にとって競合が一つ増えたという程度に考えている方はもう少ないと思います。

電通によると、インターネット広告はマスコミ4媒体のうちラジオを抜き、雑誌に手が届くレベルに成長しています。しかし、一媒体としての力と同時に、多様化するライフスタイルやメディア接触に応じたコミュニケーションチャンネルを用意して、既存メディアと顧客を結ぶ接着剤のような機能にも注目しなければなりません。

クロスメディアはユーザー視点

クロスメディアはワンソースマルチユースやメディアミックスの同義語として用いられるケースがよく見られます。
しかし、ワンソースマルチユースは制作者の視点で効率的なコンテンツ制作を、メディアミックスは売る側の視点で複数メディアのパッケージングを目指すものであるのに対して、クロスメディアはユーザーの視点に立って、シームレスにコンテンツに接触、利用できる環境の提供を目指すものと考えることもできるのではないでしょうか。

そのように視点を変えてみると、これまで顧客とはなり得なかった新しい顧客や、既存の顧客の新しいニーズに気づくことができると思います。またそれらのニーズに対応するための、新たな協業相手も必要になってくるでしょう。

最後にお願いがあります。
クロスメディアエキスパートは広範な領域での活躍が期待できると思いますが、まだまだ発展途上であり、悩みも多いと思います。また、必要とされる知識領域の広さからそこに関連する人々も多種多様でしょう。
ぜひ、相互に交流して情報交換や連携を進めていきましょう。

※本ページの内容は掲載当時のものです。

クロスメディアの中心で印刷を叫ぶ

オンライン印刷のフデビン
取締役 伊藤 健太郎 様

印刷会社のディレクション機能を高める

充実した社内教育カリキュラムを独自に整備したり、定期的に専門講師を招いたりすることが難しい中小企業にとっては、DTPエキスパートやクロスメディアエキスパートのような資格制度は、個人や企業の目標設定や啓発にもなります。
クロスメディアエキスパートを力試しのつもりで受験してみて、DTPエキスパート認証試験でも感じたことですが、とにかく時間に追われる試験だなと思いました。印刷業界の資格だけに、これは納期に追われる焦燥感を体感させるのが目的なのかなと思ってしまうほどでした。
特に論述試験では、事例に対して企画書を作るという内容でしたが、普段はパワーポイントやアクロバットなどで企画書を作成しているため、コピー&ペーストのできない手書きでの文書作成に、消しゴムが予想以上に減ってしまうほど大変苦労しました。

合格して今度はこれをいかに社内にフィードバックするのかを検討しました。印刷営業はホームページなどの受注にあまり積極的ではありません。それは、単に得意・不得意だけではなく、長時間にわたる打ち合わせや企画書の作成、お客様業界情報の調査などに掛かる時間が、なかなか確保できないところにあると思いました。また、制作側もWebデザイナーやSEなど各専門技術はあっても、プロジェクト全体を企画し推進していく機能が弱いと感じました。それには営業と制作の間にディレクターという役割をはっきりと位置付け、印刷やWebだけでなくク ロスメディア的な発想でプロジェクトを進めていけるようにすることが重要だと思い、この役割の職能自体がまさにこの資格に重なることから、社内の推奨資格としてクロスメディアエキスパートを認定しました。

工場視点はDTPエキスパート、顧客視点はクロスメディアエキスパート

弊社では、特にDTPエキスパートを工程管理やデザイナーなど工場視点で働くスタッフに、クロスメディアエキスパートを営業やディレクターなど顧客視点で働くスタッフに取得を推奨しています。
DTPエキスパートは、取得することによってプリプレスを始めとした印刷工程全体の幅広い技術知識が習得できますので、新人教育はもちろん管理職の教育にも大変有用だと思います。

特に、最近増えてきているインターネットでのオンライン印刷注文では、サポート窓口のスタッフがお客様と直接お会いできない中で、ネットや電話を通じて入稿データの不備がないかチェックし、的確なアドバイスを伝えなくてはなりません。
このようにお客様との技術的なコミュニケーションを行いながら、工場内での横断的で密な連携を取るためには、DTPエキスパートレベルの知識が必須であると思います。これによって、工場全体の工程を把握しながら、営業にもお客様にも頼りにされる工場窓口ができると思います。 また、クロスメディアエキスパートは先述のディレクション機能だけでなく、印刷会社が扱うデジタル資産を印刷物以外のホームページなど新たな事業展開に導く市場開拓者としても大変有用だと思います。

最近では客先での商談やプレゼンテーションにおいても、何か一つクロスメディア的な提案がないと物足りないと感じるほどになりました。しかし、ただ目新しいメディア商品を押し売りするのではなく、お客様の仕事をよく理解してマーケティングストーリーを組み立て、AIDMAなどの購買段階で見込み客の離脱が少なくなるようコンバージョンを高めていくことが大切だと思います。

お客様からも競合会社のバリアブルDMをサンプルとして持って来ていただいたり、セカンドライフのSIMデザインのお話があったりとさまざまなお問い合わせをいただきますが、クロスメディアエキスパートは、それらを精査してマーケティングストーリーに落とし込めるか、お客様のブランド構築に効果的であるかを判断して、常に顧客視点であることが重要であると思います。そして、その活動の中で新たな技術や商品展開が生まれ、結果的に印刷会社の事業ドメインも広がってくると思います。

クロスメディア戦略はバーガーショップと同じ?

印刷会社のクロスメディア販売戦略はハンバーガーショップを参考にすると分かりやすいのではないかと思います。カウンターで「ご一緒にポテトもいかがですか? セットだとお得になっております」と言われ ると思わず追加オーダーしてしまうように、一緒にホームページやバリアブルDMもセットで売れるようなクロスメディアエキスパートが今後は社内に必要だと 思います。

また、ハンバーガーショップは子供向けセットやランチセット、さまざまなドリンク、季節モノなど、個別オーダーにもセット販売にも、ニーズの多様化に柔軟に合わせつつ内部に無駄の出ないメニュー構成を持っています。 印刷業界もメディアの多様化はさらに進み、クロスメディアの選択肢は今後さらに細分化されると予測されますが、すべてに対応することは非常に難しいことですし、お客様には高度な最新技術や細かい職人技は重要でない場合が多分にあります。
クロスメディア提案がお客様にとって本当に最適な状態になるためには、 クロスメディアエキスパートがお客様の状況をよく調査・理解し提案していくのも重要ですが、その前に必要なのは、それを一番理解しているお客様自身が自社 のマーケティングに最適なメディアを選択できるようなクロスメディアメニューを印刷会社側であらかじめ用意しておくことではないかと思います。

何と言ってもお客様のマーケティングについて一番理解しているのはお客様自身ですし、過去の経緯や失敗事例などは担当者とのヒアリングをいくら詰めても外部の人間では計り知れない部分があります。
まずは印刷会社自身が提供できるクロスメディアの選択肢を外注も含めてメニュー化し、その上にクロスメディア提案がされることで、より最適なクロスメディアマーケティングが行われるのではないかと思い、弊社ではホームページでお客様分類ごとのおすすめメニューを表示して、お客様自身にメディアを組み合わせ ていただく試みを一部始めています。

クロスメディアの中心で印刷を叫ぶ

印刷業界にいると印刷物がメディアの中心にある ような感覚がありますが、お客様のマーケティングにおいて最近Webが優先されるケースが増えてきているように思います。これまでのケースとしてホームページ制作を依頼されるお客様は「カタログのデータをホームページでも使いたい」という要望がほとんどでしたが、最近では逆に「ホームページのデータをカタログでも使いたい」というケースが増えています。これはデジタルデータのスタート地点が印刷用ではなく、Web用になってきていることを意味しますし、お客様の発注先も印刷会社ではなく、ホームページ作成会社になってしまう可能性を意味します。それでも、ほかのメディアに比べて高解像度が要求される印刷メディアは「元データ」という威厳がありますが、デジカメやケータイカメラの普及、お客様によるホームページやブログの更新 作業の簡易化などによって、最新のデータはホームページに集中していくという傾向は変わらないように思います。

クロスメディアの中心が印刷からWebに移ってしまう前に、印刷会社はクロスメディアカンパニーを目指し確固たる地位を築けるよう、今まさに行動を始める時だと思います。

※本ページの内容は掲載当時のものです。

「クロスメディアエキスパート認証試験」を受験して

豊嶋 隆 様

認証試験の受験動機

自分ではクロスメディアの企画提案らしき業務を担当しているつもりだが、果たしてクロスメディアに関してどれほどの知識をもっているのか大いに疑問であった。そもそも「クロスメディア」というものを意識して仕事をしていないので、分かったつもりでクロスメディアの企画提案をしていたのかもしれない。ならば クロスメディアエキスパート認証試験に挑戦し、自分の知識レベルやら適性を客観的に評価してみよう。これが受験の動機である。結果の合否は別として、自分に何が足りないかを知る上では格好の試験となった。足りないところは補っていけばよい。不合格になったからと言って今の担当業務をやめるわけにもいかな い。例えて言えば定期健康診断を受診する程度の軽い気持ちであった。合格したこと自体はうれしいが、自分に不足するものが見えたことに意義があった。

試験対策はほとんどしなかった。否、できなかったと言うほうが正しい。初めて実施される試験のため、DTPエキスパート認証試験の受験対策になるような参 考図書もなく、その上出題範囲も広いので何から手を着ければよいのかも分からない。私にとってはクロスメディアエキスパートの健康診断であると割り切る。 普段の健康状態で受診する。受診日前日にお酒を控える程度のことは必要だ。展示会会場で配布された試験資料は熟読した。あえて言うならこれが唯一の対策であり、多くの受験者も同じだったのではないだろうか。

求められる「T型人間」「π型人間」

クロスメディアの提案業務に携わる上で幅広い知識は必要だ。だから学科問題の出題範囲は妥当なところだろう。基本的には広く浅く知識を得ることが試験対策となる。だが知識だけでは実際の業務はできない。そこには深い知識や経験に裏付けされた専門性も要求される。

 知人のコンサルタントの言葉を借りると「T型人間」というのを次のように説明している。「T」という文字は縦に長い1本の直線「Ⅰ」と横長の直線「-」でできている。縦棒は「専門性」を表し、2時間以上話ができる分野を一つもっているということである。横棒は30分以上話ができる分野の幅を表している。つまり「T型人間」とは、「誰にも負けない一つの分野と、どんな人にも話を合わせられるくらいの幅広い知識を兼ね備えた人間」ということである。縦棒を1本増やして2本にしたのが「π型人間」である。
横棒(知識分野)は提案の幅であり、広いほど提案の切り口も増え柔軟な発想で考えることができる。縦棒(専門性)は提案の柱である。長いほど柱は太くなり、より専門性に富んだ提案となる。クロスメディア提案には、こうした縦棒と横棒の長さのバランスが取れた「T型人間」や「π型人間」が求められていると感じる。

認証試験に当てはめて考えると、第1部試験は横棒、第2部試験は縦棒、それぞれの長さを測定するものと勝手に解釈している。今回 の試験結果を見ると、私は縦棒と横棒の長さのバランスが極めて悪い「T型人間」だった。日常業務を通じて、横棒と縦棒の長さを伸ばしたり縦棒の本数を増やす努力を続けなければならない。

経験こそ最大の財産

私自身、もともとは前勤務先[嗜好品(しこうひん)メーカー]で営業、販売促進、広告宣伝、ブランドマネージャーなどの業務に従事していた。1993年に人事異動で印刷事業部門に配属になり、本業から見れば異業種部門への異動は社内転職みたいなものである。発注側から受注側に立場が変わり、大きな戸惑いと不安を伴ったが気持ちを切り替え、当時はまだそれほど普及していなかったDTPに着目した。「印刷」で先人たちに追いつくのは難しいが、DTPなら皆同じスタートラインとの考えがあってのことだ。実際には「印刷」の難しさを思い知らされたが、1995年にDTPエキスパートを取得した。

DTP業務では主にデータベースパブリッシングに取り組み、カタログや情報誌の自動組版システムを開発してきた。「DTPは従来の写植・製版の単なる代替設備ではない」との信念というか思い込みの下、DTPによる制作プロセスの構築に没頭したことは今でも忘れない。

自動組版に取り組む一方で、カタログや情報誌以外へのデータベースの活用を模索し始めた。自動組版で使用する商品情報データベースは、基本的な商品情報項目以外に、商品画像や商品コメント、場合によってはブランドコンセプトやターゲットなどの情報項目も整備されている必要がある。商品情報データベースの整備から請け負うことがほとんどだが、裏を返せば得意先に存在しないデータベースと言える。商品画像や商品コメントなどは、販売管理や在庫管理のための基幹システムでは不要なのだ。こうした商品情報データベースをカタログや情報誌だけにしか使わないのは実にもったいないことである。

メディアが違っても商品情報の内容が変わることはない。商品名や品番、スペックなどの情報がメディアごとに違うなんてあり得ない。厳密に言えば、商品画像や商品コメントなどはメディアごとに最適化しなければならないし、特定のターゲットには特別な価格を提示するケースもあるが、あらかじめ想定されるメディア用に情報内容を準備したり、条件分岐によって情報内容を動的に変えることができる。Webやイントラネットへの展開を始め、顧客接点における営業活動支援ツールの作製システムなどにデータベース活用を企画してきた。これが契機となってクロスメディア業務に携わるようになった。それ以来、データベースをネタにした仕事をやっている。

幸いなことに過去の業務経験から、自分が発注側だった時にこういうものがあったら便利だったに相違ない、あの時はこういうことで困っていた、というクライアントの気持ちで考えられる素地がある。発注者の立場はだれもが経験できることではない。だからこそ、その経験は今でも自分の大きな財産となっている。

得意先ビジネスの把握

得意先にクロスメディア提案する際、まずは上位概念のコミュニ ケーションからアプローチしている。コミュニケーションの具体的手段としてのクロスメディアである以上、得意先で行われているコミュニケーションの実態を把握することが第1歩である。換言すれば得意先のビジネスを知ることであり、その業界についても学習する必要がある。市場環境、競合状況、取引慣習、流通機構、法的規制等々、把握すべき項目は列挙し切れない。なかでも業界VANの実態や得意先におけるその活用状況の把握は欠かせない。そうして得意先のコ ミュニケーション課題を明確にした上でのクロスメディア提案となる。

ある得意先にデータベース自動組版を切り口に営業活動支援ツール作製システムを提案した。得意先の状況にもよるが、営業活動をサポートする具体的ツールをもっていない得意先は、こうした提案に強く反応する。企画書は営業活 動支援システムの提案として、コミュニケーションプロセスの改善というスタンスでまとめ、得意先の共感を得られるようなデモを用意した。「こういうのが欲 しかった」「これなら使える」という感触を抱かせることが重要になる。この感触は得意先ビジネスの現状をどれだけ把握しているかで決まる。これは簡単にできることではない。毎度のことだが営業活動の実態が把握し切れず、デモ作成にはとても苦労している。

得意先ビジネスについてどれだけ知っているかは、企画提案業務の基本である。この分野はクロスメディアエキスパート認証試験(第1部試験)では出題範囲外だが、実務においては最重要分野だ。

※本ページの内容は掲載当時のものです。