株式会社 ビー・ユー・ジー
事業開発室 戦略マーケティングマネージャ 田崎 勇二 様
ネットに関わるすべての人に有用
クロスメディアエキスパート認証制度は、次世代の経営を担う企画・営業担当の方をターゲットに設定されているそうですが、実際に取り組んでみて、印刷・出 版のほか、IT関連から広告、情報サービスまで、さまざまな業界に従事する者が知っておくべき知識と必要な企画提案力を問う、素晴らしい試験だと思いました。
確かに、出題範囲はマクルーハンからSQL言語まで広範囲で、かつ各分野についての深く詳細な知識が問われ、それをいつものPCから離れて鉛筆と消しゴムで取り組まなければならないという、非常に厳しい試験であり、難易度も高いと思います。
笑いごとではなく、私はまず、鉛筆で漢字の練習をするところから始めなければなりませんでした。
きっかけはXMLコンソーシアム
まず、私のバックグラウンドをご紹介しておきます。 弊社はハード・ソフトの企画、設計、開発からシステム運用、BPOサービスに至るまで、広範囲な業務に取り組んでいるシステムハウスです。その中で、私は ソフトウエアの開発、システムの企画、設計を経て、現在は事業開発室で新規ビジネスを担当しており、業界動向を広く調査したり、ニーズの柔らかい客先に伺い、問題解決のための方向性を提案したりしております。
社外では、XMLコンソーシアムのクロスメディアパブリッシング部会にて、クロスメディアの事例研究や、XSLT/XSL-FOなど自動組版に関わる技術の研究に取り組んでおります。クロスメディアエキスパートに関しても、部会活動の一環として取得しようという話になり、部会の仲間と一緒に勉強を進めて受験しました。ご興味のある方はぜひ活動にご参加ください。
広範な試験範囲
Webサイトに示されているとおり、カリキュラムの範囲が広く、これらすべての分野に精通している人は非常に少ないと思います。私も経営などは系統立てて学んだことはなく、苦労しました。門外漢の分野について手っ取り早く知ることができるガイドが、参考図書となります。
特に自分の専門外の分野の書籍は、ぜ ひ一読することをお勧めします。時間がなければキーワードだけでも拾って、用語の定義を押さえておきましょう。私も鉛筆書きの練習も兼ねて、用語集を作りました。この時、一歩踏み込んだ定義を確認することが重要になります。
例えばSQLとは、RDB管理システムのための問い合わせ言語ですが、さらにSQL にはデータ定義言語(DDL)、データ操作言語(DML)、データ制御言語(DCL)の3種類があり、それぞれの代表的なコマンドは何かというレベルまで押さえておきたいところです。
系統立てた理解が不可欠
このように各分野の用語を深入りして調べていくと膨大な量になると感じるかもしれません。
しかし、例えばIT分野では、Web、BlogやSNSに代表されるネットワークサービスを支える技術基盤を、伝送路としてのネットワークを構成するTCP/IP、データをアプリケーションに伝えるインターフェイスとしてのHTTP、その上で動作するサービスであるWWW、Blog、SNSの系列と、データ表現の手段としてのXML、HTML/XHTML、Webアクセサビリティ、RDF/OWL、セマンティックWebの系列、データを格納する光ディスク論理フォーマットからRDB、コンテンツマネジメントの系列の3つの系列として体系的に理解していけば整理がしやすいと思います。
第2部試験は事実に基づいて論理的に
記述試験に関しては、書籍『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』 で示される論理的な思考の手順に沿って、手を使いながら企画を練り上げる練習をする必要があります。
普段の業務で企画提案に関わっている方は、慣れもあっ ていきなり企画を書き始めることも多いと思いますが、試験においては、与件に示されている事実は何で、それを解決する手段として何が考えられ、そのうち、 どの手段を使って何を解決するのかを明らかに示す必要があります。
そのためには普段、頭の中で同時並行的に起こっていることを、ステップに分けて取り出す練習が欠かせません。また、既存のソリューションを単に当てはめるのではなく、ユーザーの立場に立って解決策を模索する必要があります。
これが意外と難し いところで、ITならば何かを開発しなければならないとか、印刷業では紙を増やさなければならないという考えに陥りがちです。私はJAGATのクロスメ ディアエキスパート認証試験の関連講座に参加させていただきましたが、そこでの演習が大変参考になりました。
マスメディアを猛追するインターネット
IT産業のトップ企業の一つであるgoogleの富の源泉が広告費と販売促進費であり、テレビCFからチラシまで、これまでITは制作技術の一つ程度に考えていた多くの業界が脅威にさらされています。これを、印刷・出版業界にとって競合が一つ増えたという程度に考えている方はもう少ないと思います。
電通によると、インターネット広告はマスコミ4媒体のうちラジオを抜き、雑誌に手が届くレベルに成長しています。しかし、一媒体としての力と同時に、多様化するライフスタイルやメディア接触に応じたコミュニケーションチャンネルを用意して、既存メディアと顧客を結ぶ接着剤のような機能にも注目しなければなりません。
クロスメディアはユーザー視点
クロスメディアはワンソースマルチユースやメディアミックスの同義語として用いられるケースがよく見られます。
しかし、ワンソースマルチユースは制作者の視点で効率的なコンテンツ制作を、メディアミックスは売る側の視点で複数メディアのパッケージングを目指すものであるのに対して、クロスメディアはユーザーの視点に立って、シームレスにコンテンツに接触、利用できる環境の提供を目指すものと考えることもできるのではないでしょうか。
そのように視点を変えてみると、これまで顧客とはなり得なかった新しい顧客や、既存の顧客の新しいニーズに気づくことができると思います。またそれらのニーズに対応するための、新たな協業相手も必要になってくるでしょう。
最後にお願いがあります。
クロスメディアエキスパートは広範な領域での活躍が期待できると思いますが、まだまだ発展途上であり、悩みも多いと思います。また、必要とされる知識領域の広さからそこに関連する人々も多種多様でしょう。
ぜひ、相互に交流して情報交換や連携を進めていきましょう。
※本ページの内容は掲載当時のものです。