コロナ禍の影響で普及
2020年以降のコロナ禍によって思うように出社も訪問もできない状況となり、企業やオフィスではリモートワークやリモート会議が浸透した。
また、小中学校では、児童・生徒1人1台にタブレットなどのデジタル端末を配布するGIGAスクール構想が前倒しで実施された。
学校教育以外の検定・試験などでも、デジタル化が進展している。
多くの検定・試験ではCBT(Computer Based Testing)の導入が拡がっている。CBTとは、各地のテストセンターに設置されたパソコンを利用して、試験を受ける形態のことである。
受験者がテストセンターに出向くと、受付で本人確認が行われ、スマートフォンや時計、筆記用具など私物をロッカーに保管した上で入室が許される。室内は1人ずつパーティションで仕切られており、パソコンが備え付けられている。
隣の人が何の試験を受けているか一律ではなく、開始・終了時刻も一斉ではない。つまり、テストセンターとは、試験会場シェアリングの一形態だといえる。
それに対して、自宅やオフィスなどから受験者のパソコンやタブレットを用いてWebにアクセスし、オンラインで受験する方式をIBT(Internet Based Testing)、またはWBT(Web Based Testing)などと呼ぶことがある。日時を限定せず、24時間受験可能な場合もある。
これらは受験場所を特定しないため、なりすましやカンニングなどの不正行為を完全に排除することが難しい。検定・試験によっては、顔認証システムを使用して、なりすまし防止を図ることや、カンニング防止のために試験中のカメラ撮影を必須にすることもある。
CBT、およびIBTは採点事務を簡略化できること、動画・音声を使用した試験ができること、専用の会場を準備する必要がないため随時試験が可能など、メリットが多い。
コロナ禍をきっかけに一斉試験の実施を見送り、CBTへ移行した検定もあるようだ。
受験者にとって最大のメリットとしては、受験会場や日時の選択肢が広がることである。高額な交通費や何時間もかけて受験会場に向かうという制約を解消することができる。従来方式より短期間で受験結果が判明することも多い。
主催者側のメリットには、ヒアリングやタイピング、動画・音声の再生など試験方法の多様化や、採点・集計などを迅速・正確におこない効率化すること、専用の会場を用意しなくてよいことなどが挙げられる。
CBT実施・検討中の検定・試験
ITパスポート試験は、2011年、国家試験として初めてパソコンを使って受検する会場型CBTを導入した。現在は、テストセンターを予約すれば、いつでも受験できる随時試験となっている。
漢検(日本漢字能力検定)は、年に200万人前後が受験している。年3回の公開会場で行われる筆記試験と並行して、会場型CBTでも受験できる(2~7級)。いつでも受験できる随時試験である。漢字の書き取り問題は、テストセンターに用意されたペンタブレットで回答する。
日商簿記検定は、年3回の統一試験と並行して、2020年の2級・3級試験より会場型CBTが導入された。いつでも受験できる随時試験である。東京など1部地域の2級・3級試験は、2023年よりCBT方式のみとなっている。
国家試験である司法試験は、2026年よりCBT導入が予定されている。論文形式の試験において、制限時間内に長文の回答を手書きすることは、受験者や採点者への負担が大きく、現実との乖離も大きいことなどから、CBT導入が決定されたようだ。
DTPエキスパートのCBT方式
JAGATは、2024年3月より「DTPエキスパート認証試験」の択一式(学科)試験を会場型CBT方式に移行する。
従来は全国6会場での一斉試験であったため、6大都市以外の在住者にとって受験のハードルは高かったといえる。今後は全国で300ヶ所以上に設置されたテストセンターが利用できる。全都道府県での受験が可能であり、遠方に出向くこともかなり少なくなるだろう。
また、試験日は金曜日・土曜日の2日間となり、複数の設定時間の中から都合の良い開始時刻を選択できる。試験時間は、これまでの2部方式(120分×2、トータル240分)から、休憩なしの120分に変更される。
CBT方式ではランダム出題が可能であり、受験者ごとに出題内容が変更されるため、問題漏洩や不正受験のリスクもほとんどない。
5カテゴリー(DTP、色、印刷技術、情報システム、コミュニケーションと印刷ビジネス)からの出題、合格基準(全カテゴリーとも80%以上の正解率)などに変更はない。
DTPエキスパート・マイスターを対象とした実技課題にも変更はない。実技課題は、自宅やオフィスなどで実作業を行い、完成したデータを期間内に提出(送信)する「宿題型」であるため、影響はない。
これまで受験会場が遠方であることから受験を控えていた方々・企業にとって、グッドニュースとなれば幸いである。
(研究調査部 千葉 弘幸)