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DTPエキスパート・マイスターに求められるデザイン制作スキル

2段階制となった DTPエキスパート認証試験

DTPエキスパート認証試験は、2020年3月より学科試験だけの「DTPエキスパート」と、学科+実技試験の「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制となった。

例えば、最初に学科試験だけの「DTPエキスパート」を取得し、6ヶ月後、1年後に実技の能力を磨き、アップグレード試験を受験するという2段階の受験が可能になっている。
また、最初から「DTPエキスパート・マイスター」にチャレンジして、仮に実技試験をパスできなくても、学科試験に合格することで「DTPエキスパート」を取得することができる。

日常業務で実技に携わることが無い方は、印刷業務を幅広く勉強し、学科試験に臨むことで「DTPエキスパート」を取得すれば良いだろう。

つまり、受験する方たちの事情に応じて受験方法を選択することができるようになっている。

「DTPエキスパート・マイスター」 に求められるデザイン制作スキル

「DTPエキスパート・マイスター」に必要な実技試験の内容は、以前の実技試験から大幅に変更された。

従来の試験は、配布される課題に応じた「印刷データ」と、制作作業を分担するための「制作指示書」を提出するものであった。採点においては、印刷データとしての完成度が最重要であり、デザイン内容を重視しないとの不文律があった。

それに対して、新たな「DTPエキスパート・マイスター」は、印刷データ制作のエキスパートであることはもちろん、デザイン制作のエキスパートでもあることを想定している。クライアントや編集者の意図を正しく理解し、伝えたい内容やターゲットを整理すること、デザイン・レイアウトを通じて表現できることが求められている。

実技課題においては、そのプロセスを「制作コンセプト書」として記述し、「印刷データ」と併せて提出する。

読者にもっとも伝えたいことは何か、全体のバランスや優先度によって重点を置くところはどこか、それらを表現するために、どのようなデザイン・レイアウトを行うのか。コンセプト書では、「全体コンセプト」「レイアウト」「組版」「配色」などの項目ごとに、デザインの考え方、留意した点などを記述する。

誌面データは、印刷データとしての完成度は当然ながら、デザインの完成度が審査される。メインの画像や見出しの配置、書体の選択が適切かどうか、本文の設定や視線の流れに問題はないか、情報が整理されて理解されやすくなっているか、設定されたコンセプトに応じたデザインが実現されているか、など総合的な観点で採点される。

受験される方は、この機会にデザイン力・デザイン制作スキルとは何か、改めて見直すことをお勧めしたい。大学や専門学校などグラフィックデザインを学んだ方は復習を、そうでない方は関連書籍などで体系的に見直すと良いだろう。

「DTPエキスパート・マイスター」の学習を通じて、デザイン制作のエキスパートとしてスキルアップすることを目指してもらいたい。

JAGAT 研究調査部 千葉弘幸

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組版設計、画像の解像度・ファイルサイズの計算

DTPエキスパート認証試験の択一式(学科)試験では、「組版設計」、および「画像の解像度とファイルサイズ」を計算する問題が出題されている。これは、本試験が創設されて以来のことで、定番的な出題となっている。したがって、試験規定においても「電卓の持ち込み」が許されている。

DTPエキスパート試験への出題の意味は?

最近、印刷会社向けにDTP講座をおこなっている講師の方から、これらの計算問題に関して、受講生から以下のような質問を受けているという話を聞いた。

「InDesignで文字サイズや文字数・行数などの数値を入力すれば、それだけで版面サイズの結果が表示される。」

「Photoshopで画像を開くだけで、その画像の解像度や表示サイズ、ファイルサイズが表示される。」

つまり、「アプリケーションソフトが教えてくれるので、自分で計算する必要がない」、「このような計算問題には、意味がないのでは?」という考えのようだ。

この質問をされた方は、レイアウトフォーマットやテキスト原稿・画像データなどが支給され、DTPアプリケーションソフトを駆使して仕上げることを日常業務とされているのでないだろうか。また、画像の解像度や表示サイズは、社内の標準ルールに合わせるだけで済むため、自分自身で考える必要がないという立場なのであろうか。

そのような業務だけを想定すれば、「自分で計算する意味がない」という思考に陥るかもしれない。

計算スピードよりも大切なこと

DTPエキスパートに求められる知識や技能は、これらのDTPアプリケーションソフトの操作に長けているかどうかではない。
たとえば、これから発行する冊子やパンフレットのレイアウトフォーマットを設計することもある。その際には、発注者や関係者と詳細を検討することもあるだろう。
また、複数の関係者で作業を分担するために、割り振りや指示を行う立場となるかもしれない。

つまり、DTPエキスパートには、このようなレイアウトフォーマットや運営ルールや体制を検討し、設計、プランニングする能力を備えていることが求められている。

そのための基礎の基礎として、このような計算問題が出題されており、ある程度の時間内に回答することが必要である。

印刷物のデザイン・制作の基礎を身に付けている方なら、このような計算は頭の中でおおよその数値が浮かぶのではないだろうか。電卓があれば、容易に結果を出すことができるはずである。

筆者の体験上では、「仕事ができる人ほど、計算が速い」という法則がある。計算スピードが速いという意味ではない。基本パターンをいくつか覚えていれば、おおよその計算結果が類推できるためである。

例えば、A5サイズで350ppi、RGB 各色8bit 画像のファイルサイズを基本パターンとして覚えていれば、A6サイズはその半分で0.5倍だと類推できる。CMYK4色ならば、4/3で1.33倍と類推できるだろう。

経験や知識を積み重ねると、基本パターンに相当するものが何か判ってくる。そのため、ほぼ即答に近いタイミングで答えることができる。

DTPエキスパートを受験されるかどうかはともかく、自分なりに組版設計や画像解像度とファイルサイズの基本パターンを覚えておくと良いだろう。

(研究調査部 千葉 弘幸)

事務局代表メール復旧しました

下記ご案内しました事務局メールアドレス障害につきまして、復旧しましたのでお知らせします。
JAGAT資格制度事務局
2022.3.18 9:00

————————————————————-
ただいま下記メールアドレス宛のメール送受信に障害が発生しています。
復旧まで今しばらくお待ちください。

JAGAT資格制度事務局
2022.3.17 10:00

2022年4月実施更新試験申請受付延長(~3/10まで)

2022年4月実施更新試験対象者のみなさま

3/3を一次締め切りとしてご案内していますが、
諸般の状況を鑑み、申請受付期間を延長します。

最終締め切り:3/10 23:59まで

申請方法は、当初ご案内している通り有資格者マイページ上で行ってください。

3月13日試験受験票発送

2022年3月13日(日)開催
藍57期DTPエキスパート認証試験
会場受験者の受験票を本日発送しました。
(申請時に入力した主連絡先ご住所あて普通郵便発送)

3/10までに届かない場合は、JAGAT資格制度事務局までご一報ください。

なお、アップグレード受験者(実技のみ)の受験票は、
3/7以降に発送する予定です。

JAGAT資格制度事務局
e-mail: expert@jagat.or.jp
tel: 03-3384-3115

PDF/X-4はPDF入稿のスタンダードとなったか

JAGATは、1月27日、DTPエキスパート・マイスター認証制度の課題提出方式を変更し、PDF/X-4に限定することを発表した。

DTPエキスパート試験の実技課題がPDF/X-4に移行

DTPエキスパート試験は、学科(択一式)試験だけの「DTPエキスパート」と、実技課題を伴う「DTPエキスパート・マイスター」の2種類から構成されている。また、DTPエキスパート合格者が、実技課題のみのアップグレード試験に合格すると、DTPエキスパート・マイスターとして認証される2段階制となっている。

これらのうち、DTPエキスパート・マイスター、およびアップグレード試験の実技課題の提出方式が、次回の第57期試験から変更される。すなわち、従来の「PDF/X-1a、PDF/X-4のいずれか」の方式が、「PDF/X-4とすること」となる。現在の実技課題の提出状況は、既にPDF/X-4が主流となっており、大きな混乱はないと見ている。

PDF入稿、普及の推移

2000年代半ば頃まで、印刷入稿と言えばアプリケーションネイティブ、つまりQuarkXpressやAdobe Illusutrator、Adobe InDesignの保存データを入稿する方法が普及していた。戻ってきた校正刷りを発注側でチェックし、印刷会社側でデータ修正する作業フローが一般的だったためである。この場合、データ制作環境(OSやアプリケーションのバージョン、フォント環境など)が、印刷会社にも必要という制約がある。実際には、アプリケーションのバージョンやフォント環境の不整合に起因するトラブルも多発していた。

発注側で完全データのPDFを制作し、入稿するのであれば、印刷会社の環境に依存せずに出力できる。そうして、PDFワークフローが普及したのである。PDF入稿に限定した印刷通販の普及も、この傾向を後押しした。その際に利用されたのは、PDF/X-1aである。その当時、普及していたPostScript RIPのほとんどで安定した出力が可能だった。

PDF/X-4採用の背景

しかし、PDF/X-1aは、「透明効果」に未対応という問題があった。「透明効果」とは、2000年前後からAdobe IllustratorやAdobe InDesignに搭載された機能である。複数のオブジェクトを重ねた際、上のオブジェクトを透かして、下になっているオブジェクトが見える。不透明度を指定すると薄く透けて見えるなど、デザイン効果の高い機能である。文字や図形に影を付けるドロップシャドウやぼかし処理なども、この機能が使用されている。
PDF/X-1aとそれを出力するPostScript RIPでは、この機能に未対応のため、「分割統合」という前処理が必要だった。RIPに送る前に透明部分をラスタライズ(画像化)することで、出力が可能になる。ただし、この操作が複雑なため、トラブルの原因となることもあった。

PDF/X-4は、この透明効果に対応しているため、分割統合は不要となり、より信頼性の高いワークフローを実現できる。また、出力するRIPとして、APPE (Adobe PDF Print Engine)ベースのRIPが必要である。
現在では、ほとんどの印刷会社がAPPE搭載のワークフローRIPを導入しており、PDF/X-4入稿の受け入れが浸透している。

ただし、一部の印刷通販(ネット印刷)などでは、 PDF/X-1a入稿を必須としている。どちらが正解ということではなく、受け入れ体制や方針の問題と言えるだろう。

DTPエキスパート実技課題、作成上の注意

近年のAdobe InDesignやAdobe Illustrator、Adobe Acrobatなどのアプリケーションには、標準でPDF/X-4書き出しプリセットが装備されており、手軽に利用することができる。さらに、Adobe InDesignやAdobe Illustratorの関連サイト、印刷会社や印刷関連メーカーが公開しているサイトでも、PDF入稿の詳細が公開されているので、参考にすると良いだろう。

(研究調査部 千葉 弘幸)

DTPエキスパート認証試験 実技課題をPDF/X-4に移行