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【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-1 印刷物

1-1-1 企画

印刷物を制作するにあたっては必ず目的と用途がある。
これらに基づいて制作のプロセスが進行する。

設計

  • レイアウトの基本設計は企画コンセプトによって決定される。コンセプトに基づいて全体の構成や写真の配置、色使い、見出しや文字の大きさ、書体などを決めていく。また、組版の禁則処理や校正など、印刷物を製作するにあたって必要なルールを知っておく必要がある。

1-1-2 原稿

  • 原稿には大きく分けて、写真などの階調原稿と、文字・図版などの原稿がある。

1-1-3 印刷物のサイズと用紙

  • 印刷用紙のサイズには、「原紙寸法」と「紙加工仕上り寸法」の2つがある。
  • 原紙は、印刷や製本を経た後に、仕上りサイズに加工される。
  • JISの規格となっている「原紙寸法」には、
    ・四六判(788×1,091mm)
    ・B列本判(765×1,085mm)
    ・菊判(636×939mm)
    ・A列本判(625×880mm)
    ・ハトロン判(900×1,200mm)
    の5つがあり、名称についてはJISにより規格化されている。

  • 原紙サイズを1/2(半裁:はんさい)、または、1/4(四裁:よんさい)に裁ってから印刷することもあるため、元のサイズを便宜上「全判」と呼ぶのが一般的である。
    ・A列本判=A全判
    ・B列本判=B全判
    ・菊判=菊全判
    ・四六判=四六全判
    また、JIS規格ではないが、A倍判やB倍判などといった、大きなサイズの原紙もある。

  • 仕上り寸法がA列の場合は、「A列本判」や「菊判」の原紙を使用することが多い。B列の場合も同様に、「B列本判」や「四六判」の原紙を使用することが多い。原紙サイズで印刷した後に仕上げ段階で余分な部分を断裁して仕上げるのが一般的である。
  • 印刷物のサイズは仕上り寸法であり、A1のサイズは841×594mm、B1のサイズは1,030×728mmである。一般的には印刷物の仕上りサイズは、倍判や全判の長辺を何度か2分割したものとするのが原則である。短辺と長辺の比率は、1:√2 ̄の関係である。A5は原紙を4回分割したもの(サイズは、210×148mm)であり、原紙から16枚とれる。
  • 規格外の仕上り寸法が使用されることも多く、新書のサイズは182×103mmであり、B列本判から40枚とれる。AB判のサイズが257×210mmであるように、特殊な寸法は紙の無駄となる考えから、変形サイズであっても原紙や印刷を考慮して定められたサイズが使用されることが多い。このほか、148×100mmのハガキや、他の規格、慣例的に定められたサイズに則り、印刷物は設計される。

1-1-4 印刷用紙の選択

  • 印刷物の品質は、印刷方式や用紙などの条件により、大きく左右される。
  • 発色については、紙質の影響を受ける。印刷面に光沢をもたせるときは、塗工紙であるアート系やコート系の用紙を使用する。アート系やコート系の用紙は、カラー印刷物の場合、濃度が高くなり、彩度が高く感じられる。表面が粗く、乱反射を起こす用紙は、濃度が低くなる可能性が高い。また印刷物の発色には、紙の白色度が大きな影響を与える。

上質紙

  • 上質紙は四六判で55〜90kg程度のものが本文用紙として使用される。
  • 紙質として淡いクリーム色の上質紙は、「裏ヌケ」が目立たず好まれる傾向がある。
  • 色上質紙は、「扉」や「見返し」に使用されることが多く、名称が同一であっても製造元によって色合いが異なる。
  • 色上質紙を分類する厚さの種類は、「特薄」や「特厚」といった名称で呼ばれ、連量表示とは異なる。

ファンシーペーパー

  • 表紙用として、装飾性のある「ファンシーペーパー」が使用されることがある。
  • 「ファンシーペーパー」は、四六判のみが提供されているものが多く、連量も限定されている。

1-1-5 印刷用紙と光源

  • 光源は種類により、含まれる波長とエネルギーが異なる。したがって、用紙上の色材の色の見え方に影響を与えることがある。印刷の色評価を行うためには標準光源の下で観察することが求められる。
  • 用紙上の色材の色は、用紙自体の色、平滑性、吸油度、蛍光物質などの塗工材特性の影響を受ける。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-2 工程設計

印刷物の制作工程は、プリプレス工程のデジタル化によりシームレスになっている。全体工程を見渡した工程設計と、各工程での責任範囲を決める必要がある。
プリプレス工程では、造本、印刷・後加工の仕様に適合するように、作業の設計を行う必要がある。

1-2-1 全体工程

  • 印刷物の制作工程および役割分担は、おおよそ下記のようになる。(制作物の特性によっては、下記のほかにアートディレクターやクリエイティブディレクターという立場の人が関わる場合もある。)
    制作物内容の企画(編集者・ディレクター)
    誰に向けたどのような情報を伝える制作物かを決めるとともに、その目的に即した情報の表現と演出を検討する。
    制作工程確定(編集者・ディレクター)
    全体工程と進行の管理をする。
    企画に沿った制作物の仕様設計(エディトリアルデザイナー、グラフィックデザイナー:造本設計・紙面設計)
    制作物の形状からレイアウトデザインフォーマットまで確定する。
    各要素の作成(原稿執筆:ライター、撮影:カメラマン、描画:イラストレーターなど)
    DTP制作環境の準備(編集者・ディレクター・システム担当者)
    使用するアプリケーション(ソフトウェア)やデータ受け渡し方法などの環境を整える。
    レイアウトデータの作成(DTPオペレーター)
    ページの基本デザインフォーマットに従って、各ページに要素をレイアウトする。
    校正(編集者・各要素作成者)
    校正紙を確認し、修正を的確に指示する。
    印刷出力用データの準備(DTPオペレーター)
    データの印刷適性を確認し、出力環境に沿ったデータ形式で準備する。
    色校正(編集者・各要素作成者)
    校了
    印刷仕様とともにデータを出力側に渡す。
    面付け(出力オペレーター)
    印刷機にかける版のサイズに合わせて各ページを面付けする。頁物の面付けは、製本の綴じ方や折り方などの仕様によって変わる。
    CTPまたは無版印刷へ(出力オペレーター)
    印刷(印刷機オペーレーター)
    折り(折加工機オペレーター)
    丁合・製本・断裁(製本機オペレーター)
    その他

  • 端物の制作工程では、端物独自の特殊な折り加工(巻三つ折りや経本折り、観音折りなど)を必要とする場合があるので、最終加工を想定したレイアウトデザインをする。

1-2-2 企画と制作工程管理

  • 制作の前提条件は、発注者の意向を確かめ、よく吟味して確認することが重要である。
  • 制作物は、その内容と目的に沿って設計されることが重要であるため、下記の前提条件の確認が必須となる。
    目的:制作物が何のために用いられるものであるかを明確にする。
    ターゲット:誰に向けたものであるかを明確にする。
    内容:どんな情報を発信するのかを明確にする。
    場所:どのような状況で使用するのかを明確にする。
    時期:いつ使用するのかを明確にする。
    値段:プロジェクト予算や制作物の費用対効果を考慮する。
    数量:制作物の発行部数、露出量を明確にする。
    方法:どのようなメディアを使用するのかを明確にする。

制作工程の計画

工程の計画・費用

  • 企画に沿った制作物を具現化するための工程を計画する。
  • 計画に際しては、実作業者が計画を継承して制作を進めるために必要な仕様設計や制作手法、作業工程、詳細設定などを制作工程表などとしてまとめる。
  • 制作工程表には一般に下記の項目が必要となる。
    ― 制作コンセプト(企画意図)
    ― 費用(各種費用および作業工数に基づく制作工程の数値化)
    ― 制作環境(ハードウェア、ソフトウェア、環境設定、データの授受方法など)
    ― 制作工程(全体のワークフローとスケジュール、各種役割分担など)
    ― 制作物の仕様(造本設計や紙面設計、納品形態、必要に応じて各コンテンツの詳細指定など)
    ― その他制作上の注意点(制作工程の標準化や効率化など)

工程の進行・管理

  • 制作工程の進行・管理にあたっては、指示書をわかりやすく、用語を正しく用いることにより、作業者がスムーズに業務にとりかかれることが望ましい。
  • 一連の作業管理のために、作業予定を時系列に記した進行表に基づき、各工程の制作を進行する。
  • 書籍制作においては、編集企画段階ではどのページに何が入るかを確認するためのページ割表を作成し、印刷段階ではページ順とノンブルの関係、折りと表裏の関係を明確にするために別途台割表を作成する。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-3 グラフィックデザイン

  • グラフィックデザインとは、印刷物制作における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。
  • グラフィックデザインは、1つのページの紙面だけでなく、前後のページとのつながりを含めた表現を扱うものであり、Webページなど紙メディア以外のコンテンツ構成やデザインにもつながる基本技能である。

1-3-1 造本設計

  • 印刷物の仕様全般を計画し設計することを造本設計という。印刷物の意図や目的に基づき、印刷物の判型、色数、製本形式、つきものなどの仕様を設計する。
  • 印刷物の形状仕様とともに、版面やノンブル、柱、頭注、脚注など余白部分に組み込まれる要素とそのスタイルも決める。
  • 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。

1-3-2 紙面設計

  • 紙面設計とは、造本設計を基に各紙面(頁)を構成する要素をどのように配置(レイアウト)するかを定めることである。
  • 造本コンセプトに沿ったレイアウトデザインを決め、各ページが統一されたイメージを与えるように各要素のレイアウトフォーマットを定める。

版面

  • 読み手は視覚表現物を見るときに、同時にその周囲も目にしている。よってより読みやすく美しく見せるには、対象物とその周囲の比率についても考慮すべきである。紙面に占める版面の比率を版面率といい、版面率は読みやすさや読み手に与える印象に影響を及ぼす。
  • 小口の余白は製本のズレが目立ちやすいため、あまり小さくできないことに注意する。
  • 書籍の版面とは、1つのページの中で文字や図版などの印刷面が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、仕上がり判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
  • マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。

段組み

  • 複数段を設定して本文を分割することで、書体や文字サイズ、行間や行長、段間などの相関関係により紙面のイメージや読みやすさに効果をもたらす。

文字組み

  • 版面の内側で基本組体裁に必要な各種要素の値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
  • 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
  • 行と行の間は一般に文字サイズの25%〜100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。視線の移動を容易にするために、行長に従い相対的に行間を大きくとる。
  • 情報を伝えるための要素として可読性などに配慮するだけでなく、ビジュアルの要素として書体が持つ表現力による紙面イメージ作りにも配慮する。レイアウトフォーマットを作成するにあたっては、文字組の視覚効果や体裁を踏まえて、情報内容および表現力を考慮した一貫性のある文字スタイル設定が重要となる。

写真

  • 配置のしかたにより紙面の印象や表現力に影響するので、目的に応じた効果的な配置を考慮する。
  • 紙面構成によっては、写真の構図や印象がデザインを左右する場合もある。写真素材の扱い方に加えて基本的な撮影の知識まで把握し、配置したい写真の撮影絵柄について指示が出せるとより効果的なデザインが可能となる。

裁ち落とし

  • 写真を紙面の端いっぱいに配置することにより、裁ち落とされた外側の見えない部分までイメージを広げさせる効果がある。裁ち落とし写真を使用する際には、紙面の外側の塗り足し部分まで写真をのばしておく必要がある。

全面写真

  • 天地左右すべてを裁ち落とし、紙面全体に1枚の写真を配置することにより、大きなインパクトを与える効果がある。

図表

  • 情報を図表化することにより、時間の経過や数値をビジュアル化して直感的に伝えることができる。さらに、分類・整理して検索性を高めたり概念やつながりをよりわかりやすく表現することもできる。このような効果的な表現に加えて、紙面にアクセントをつける役割も果たす。
  • 製品マニュアルや技術情報に関するドキュメントにおいて、図版を用いて使い方や修理情報などを示すのがテクニカルイラストレーションである。技術的知識を持たない受け手にも伝わるように用いることが多い。立体図で示す場合、製図法や投影理論、作図技法等の知識が必要となる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-4 校正

1-4-1 原稿整理

  • 原稿表記の様式は、著者の思想および感情の表現の一部であり、また一冊の本の中での表記形式の不統一は、読者が内容を理解するときに混乱を起こす。よって原稿整理が必要となる。
  • 原稿整理においては、第一に著者の意向を尊重して執筆方針を読み取った上で作業を進め、その中で未整理の部分、不統一の部分を正す。表記については、あらかじめ著者との間の「執筆要項」および出版社における原稿表記ルールを明文化したハウスルールを作成するなどし、表記形式や組版原則、書籍体裁を決めておく。

1-4-2 支援ツール

  • 情報がデジタル化され、情報発信媒体が多様化する中、精度やスピード、コスト面で有効とされている日本語変換のための専用辞書や文章校正支援ツール、また新聞社や出版社独自の表記ルールや用字用語規則データベースから入力時点での表記のゆれや用字用語の統一を可能とするツールなどが活用されている。

1-4-3 表記統一

  • 下記の項目について注意し、一定の基準を設けることが望ましい。
    ― 文体
    ― 漢字の使用範囲
    ― 漢字の字体
    ― 仮名づかい
    ― 数字の表記
    ― 単位の表記
    ― 記号の統一
    ― 句読点の使い方
    ― 学術用語、専門用語の表記
    ― 固有名詞と普通名詞の表記
    ― 外来語の表記
    ― 欧文表記

  • 表記統一の基準については、社会一般で慣用として使われている常識・ルール、内閣告示や文化審議会国語分科会報告、新聞社・出版社で独自に定めているルール(ハウスルール)などが参考に挙げられる。

1-4-4 校正記号

  • 組版されたページ(ゲラ)に対し、原稿整理の基準に照らし合わせてチェックをし、修正作業者に正しく簡潔に修正の指示が伝わるよう、JIS Z 8208:2007として定められている校正記号にしたがって修正の指示をする。

    1-4-5 校正と校閲

    • 文字の誤りや用語・表記の不統一などを正す校正に対し、書かれた内容が事実と合っているかを確認する作業を校閲という。

    1-4-6 色校正

    • 顧客に提出する色校正は、顧客にカラー画像の品質のチェックをしてもらい、本刷りの了承を得るためのものである。校正結果は、製版工程への修正の作業指示となり、印刷工程への本刷りの作業指示となる。

    手法

    • 色校正の方法には、大別すると印刷機を使うインキ校正とデジタルプルーフがある。
    • インキ校正は、印刷本紙と印刷用インキを使うことで、最終印刷物と同等の品質を得ることも可能である。しかし、版を作成して印刷する方法のため、コスト面、納期面の制約が大きい。
    • インキ校正には、平台校正機と呼ばれる校正専用印刷機を使用する場合と本機を使用する場合がある。平台校正機は印刷条件が安定しないことなどから、昨今ではめったに使用されなくなっている。
    • デジタルプルーフの場合、カラーマネジメントが組み込まれていることが一般的であり、色再現の精度も高くなっている。
  • 【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-5 コンテンツと法令

    各種メディア制作にあたり、関連する法令について把握しておく必要性を理解する。

    1-5-1 知的財産権

    • 知的財産権は大きく「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」の2つに分けられる。「知的創造物の権利」は主に著作権、営業秘密、特許権、実用新案権、意匠権があり、「営業標識の権利」は商標権、商号、商品表示・形態等がある。これらの権利には、対応するそれぞれの法律があり、印刷物と密接なのは「著作権」や「商標権」である。
    • 画像、イラストを含むDTP制作物はデジタル化され、簡単にコピーできる状態にあるため、デザイン会社、印刷会社とも著作権がどこに帰属しているのかを明確にして、トラブルを回避できるようにしておく必要がある。
    • 商標は商法で定める商号とは異なり、商品やサービスにつけられる。商標は特許庁に届け出て認可されることで、商標権者はその商標を独占的に使用することができる。
    • 著作権の発生する著作物を扱うメディア制作において、使用コンテンツが著作権に配慮すべきものである場合は適切な対応が必要となる。

    インターネットにおける著作権

    • インターネットにおける「公衆送信権」は、著作権法第23条の1項で、「1. 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有する。 2. 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する」と定められている。
    • 「送信可能化」とは、インターネットサーバーにデータを置いて、アクセスがあれば閲覧できる状態にあることを指す。
    • 「権利を専有する」とは、著作者の承諾なしに他人が勝手に人の著作物をインターネット上で公開してはならないことを指す。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-6 DTPの概要

    1-6-1 DTPの変遷

    • DTP登場以前のプリプレス工程においてはリライト原稿、レイアウト用紙、版下、フィルム、刷版といった中間生成物があった。これに対し1985年、DTPに必要な3つの要素Macintosh(コンピューター)、LaserWriter(プリンター)、PageMaker(レイアウトソフト)が登場した。これによりデザイナーや編集者、制作担当者など、印刷物作りに関わる人の間で、文書データが場所を問わず扱えるようになった。
    • DTPはデザイン、写植・版下、製版という3つの工程を結びつけた。AdobeのIllustratorというソフトウェアによりカラー処理が可能となり、1990年頃からカラー印刷物のDTP化が盛んになった。1992年頃からは生産性においても製版の専用システムに太刀打ちできるようになった。今日では、DTPは世界の印刷物制作の標準になっている。

    1-6-2 DTPの3要素

    • DTPにおける第1の要素は、WYSIWYG(What You See Is What You Get:見たままが得られる)である。当初からMacintoshは、ディスプレイ上で紙面と同様のイメージを表現することができるWYSIWYG機能を備えていた。
    • 第2の要素は、ページ記述言語であるPDL(Page Description Language)の標準化である。PostScriptは、1982年Adobeにより開発されたPDLである。AppleのLaserWriter NTXは、PostScript言語で記述されたデータを解析するインタープリターを備えた最初のプリンターであった。PostScriptは言語仕様が公開されており、対応したインタープリターを搭載する出力装置であれば、異なる機種であっても同一の紙面データからは同等の出力を可能にする。
    • 第3の要素は、PC上で文字や画像、図表が扱えるページレイアウトソフトである。PageMakerは、レイアウト(組版)機能によって文字や画像を画面上で統合してレイアウトし、PostScriptデータとしてプリンターに送信することを可能にしたソフトウェアである。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-7 DTP環境

    1-7-1 ハードウェア

    • DTPで最低限必要なハードウェアは、入力機器および編集機器、出力機器である。入力機器としてはキーボード、マウス、カメラ、スキャナー、編集機器としてはPC、出力機器としてはディスプレイやプリンターが挙げられる。作業環境により、さまざまな組み合わせが想定される。

    1-7-2 ソフトウェア

    • コンピューターでさまざまなアプリケーションを動作させるには、AppleのmacOSやMicrosoftのWindowsなど、OSが必要になる。
    • さらに、印刷物の素材である文字、写真や図表などの画像を処理するソフトウェアや、素材のレイアウトを行うソフトウェアが必要である。
    • 文字については、テキストデータ作成が基本となるため、OSに付属しているテキストエディットやメモ帳のほか、さまざまなテキストエディターやワードプロセッサーなどのソフトウェアが利用される。
    • 代表的なソフトウェアとして、画像処理(ビットマップデータの処理)ではAdobeのPhotoshop、イラストや図表といったベクターデータの作成や、端物のレイアウトでは、AdobeのIllustrator、頁物のレイアウトでは、AdobeのInDesignや、QuarkのQuarkXPressなどが挙げられる。

    1-7-3 システム構成

    DTPシステム

    • DTPは、オープンなシステムとして発展した。さまざまなハードウェアやソフトウェアを利用するため、操作方法やデータ交換方法、業務効率、品質などに配慮し、システム設計を行うことで、個々のハードウェアやソフトウェアが持つ機能を有効に活用できる。
    • DTPシステムでは、ハードウェアやソフトウェアの選定、周辺機器とのインタフェースやネットワークへの接続、データベースの構築などが行われることがある。さらに、他のシステムとの連係が必要になる場合もある。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-8 DTP環境と契約

    DTP環境の構築にあたり必要となる各種契約について理解する。

    1-8-1 ソフトウェア使用許諾契約

    • ソフトウェアが商品として流通するときには、「ソフトウェアの複製物の売買によるもの」「ソフトウェアの使用許諾契約によるもの」「ソフトウェアのリース契約によるもの」という3つの形態がある。
    • DTPソフトウェアを購入する場合は、ほとんどが「ソフトウェアの使用許諾契約によるもの」にあたる。一般にソフトウェアを購入するというが、実際にはインストール時に画面表示されるソフトウェア使用許諾契約書に同意して、初めて契約が成立し使用できるようになる。
    • 使用許諾契約はライセンス契約の一種であるが、売買、請負、賃貸借などの契約と根本的に異なる。バックアップコピーについても契約内容によって決まる。

    1-8-2 サブスクリプション契約

    • サブスクリプション契約とは、ソフトウェアのライセンス契約の一種で、売買ではなく特定期間内の使用権を販売する方式のことである。
    • 契約期間内におけるソフトウェアのアップデートなどは、追加料金を支払うことなく受けることができる場合が多い。契約期間を過ぎると使用権がなくなるため、再度契約を結ぶ必要がある。
    • DTP関連では、AdobeのCreative Cloud、多くの日本語フォント製品、MicrosoftのOffice 365などがあり、主流となりつつある。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-9 文字と文字コード

    文字データを異なるプラットフォームで出力すると、文字化けではないが文字の形状が一致しない場合がある。「書体」「フォント」「字種」「字体」「字形(グリフ)」の区別など、文字の同異判定の基準を理解する。

    1-9-1 書体

    • 書体とは、統一的な理念に基づいて制作された1組の文字、または記号のデザインであり、タイプフェース(typeface)と同義である。ある書体における文字の太さ、字幅、傾きなどのバリエーションの集合を書体ファミリーという。
    • 欧文書体は、中世後期のグーテンベルクの活字から、その後ローマ時代に作られたローマン体を活字に置き換えた書体を経て、今に至っている。印刷技術や出版の発展に伴って、また印刷物の用途に合わせて可読性、美術性、新規性などを工夫し、多くの書体が開発されている。
    • 和文書体は、中国の伝統的「書」に由来する筆書系、伝統的活字書体、庶民文化に由来する江戸文字、写植以降非常に増えたディスプレイ書体、日本独特の仮名書体など、多様な起源を持つ。

    1-9-2 字体

    • 文字は、何らかの意味を表すものであり、その意味によって字種に分類される。異なる字種は、原則としてそれぞれ異なる字体を有する。しかし、異なる字種が同一の字体を有する場合も稀にある。これらは同形異字と呼ばれ、視覚的には区別することができない。
    • 1つの字種に複数の字体が併存していることがある。それらの字体はそれぞれ異なる字源から成立している場合もあるし、同じ字源から発生しながらその表現が歴史的・地理的に変化していった場合もある。字義、字音が等しい同一の字種でありながら、互いに異なる字体を有する文字を異体字と呼ぶ。異体字のなかで、規範として選ばれている字体を正字体と呼ぶ。

    1-9-3 字形(グリフ)

    • 字形とは文字の具体的な形状であり、書体やデザインの違いなど文字の視覚的な差異はすべて字形の違いとして捉えられる。図形文字、グリフ(glyph)と呼ばれることもある。

    1-9-4 タイポグラフィー

    • タイポグラフィーは、古くは活版術のことであるが、広く印刷における文字組の視覚効果や体裁の総称として用いられている。
    • タイポグラフィーは、グラフィック素材としてテレビや映像メディアにも活きる技法である。欧米では、タイポグラフィーには書体の歴史的な発達や書体デザインの知識も含む。日本でも、縦/横組、和欧混植、かな混植など伝統的慣習的なスタイルが確立している。もともと正方形の漢字書体を縦にも横にも組むものとして日本のタイポグラフィーは発展した。

    1-9-5 符号化文字集合

    • コンピューターは、文字をコード(符号)化して、その値で識別している。文字コードとは、たとえば日本語のある文字の範囲(文字セットという)の文字の1つずつに識別番号を割り振ったものであり、その一式を符号化文字集合という。
    • 異なるコンピューターシステム間での文字データの交換を可能にするために、基本となる文字セットの文字コードは標準化が行われている。文字コード系が異なれば、コード化している範囲もコード番号も異なる。
    • 入力や編集の各段階で、文字データを受け渡しする場合は、どのような文字コードを使用して作成されているかを慎重に確認する。
    • 標準化された主な文字コードには、ASCIIコード、JISコード、Unicodeなどがある。
    • JIS X 0208は情報交換用の2バイト符号化文字集合を規定する日本工業規格で、6,879図形文字を含んでいる。1978年にJIS C 6226として制定され、1983年、1990年および1997年に改正された。
    • JIS X 0213は、JIS X 0208を拡張した規格でJIS X 0208の6,879字の図形文字の集合に4,354字が追加され、計11,233字の図形文字を規定している。JIS X 0208を包含し、第三・第四水準漢字などを加えた上位集合である。2000年に制定、2004年、2012年に改正された。

    フォント

    • フォント(font)は、本来「同じサイズ、同じ書体デザインの一揃いの活字」を指す言葉であったが、現在ではコンピューター画面に表示したり、紙面に印刷するために利用される字形データの一式を意味している。金属活字と区別して、デジタルフォントと呼ばれることもある。
    • 書体という言葉は、現在ではフォント(の使用ライセンス数)を数える単位としても用いられている。
    • フォントフォーマットの代表的なものにTrueTypeとOpenTypeがある。TrueTypeは、AppleとMicrosoftが共同で開発したフォントフォーマットで、画面表示やプリント出力を行う。その後、AdobeとMicrosoftが共同で開発したのがOpenTypeである。