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【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-10 画像

連続的に濃度が変化する画像や線画などの図版のデータ形式や扱い方などについて理解する。

1-10-1 デジタル化

  • 連続的に濃度が変化する画像をデジタル化する場合、画像を一定の間隔で最小の単位(画素=pixel)に分割し、各画素に対する平均の濃度を求める。これをサンプリング(標本化)という。
  • 各画素あたりの濃度の情報は、本来連続的に変化しているものを、一定数の段階に分けて処理する。これを量子化という。10ビットなら1024段階、8ビットなら256段階で量子化が行われる。
  • dpiとはdot(s)per inchの略で、レーザープロッターなどラスターイメージをドット単位で出力する際の露光の密度を表す。
  • ppiとはpixel (pels)per inchの略で、スキャナーでアナログの画像をデジタル化する際の画素のサンプリング密度を表す。
  • lpiとはline(s)per inchの略で、アナログのfaxのようなラスター信号を扱う場合やスクリーン線数を表す。

1-10-2 ビットマップデータ

  • ビットマップデータとは、ピクセルの集まりで構成されたデータのことで、ソフトウェアによりビットマップを生成し、そのビットイメージをディスプレイや出力装置に送り、画面表示や出力を行う。

デジタルカメラ

  • 写真原稿の入稿はデジタルカメラ撮影によるデータ入稿が主流となっている。
  • デジタルカメラによる撮影では、事前に品質保証や要求品質にどのように応えるかなど、画像の要求仕様を整理しておくことが重要である。
  • デジタルカメラのデータ形式には、各メーカーの画像エンジンを経由して適切に補正・加工され、外部利用可能なフォーマットに書き出されたデータと、CCDやCMOSなどの撮像素子のデジタルデータを最小限の加工に留められたRAWデータがある。RAWデータはメーカーや機種ごとに異なっており、互換性はほとんどない。メーカーなどが提供する専用の読み込みソフトウェアなどを使って変換し、表示する必要がある。この変換処理は、「現像」と呼ばれている。

スキャニングデータ

  • 写真原稿などをDTPで扱う場合、スキャニングしてデジタルデータ化する。
  • スキャナーで入力する原稿は大きく分けて透過原稿と反射原稿がある。透過原稿の多くはリバーサルフィルムなどであるが、反射原稿はカラーの印画紙をはじめ各種イラスト原画、印刷物、プリンター出力物など多岐にわたる。

解像度

  • 画像システムがどれだけ詳細に画像を再生できるかを表すのが解像度である。解像度が高ければ、再生される画像は細密になる。
    デジタルシステムではピクセルの配置密度と同義に使われる。

  • デジタル画像は必要以上に精細にデータ化すると、作業効率が落ち、逆に出力に対して粗い設定になると、品質が著しく損なわれる。そのため一般に出力に必要な大きさや解像度から逆算してスキャニングする。カラー原稿をスキャニングする際に、仕上がりの画像で、解像度が300~350dpiあることが望まれる。

画像フォーマット

  • 濃度変化のある原稿をデータ化するには、濃度レベルの段階数とその表現方法、記録する方向、画像の大きさその他の形式を決定しておく。
  • 画像データをファイルに書き出す場合には、画像データの形式とファイルフォーマットを選定する。
  • 図形と画像のフォーマットは、PCのようなプラットフォーム側が定めたPICTや、アプリケーションソフトが定めたTIFF、出力側が定めたPostScript / EPS、情報規格であるJPEG、そのほかそれぞれの分野での主流のものなどが混在している。

レタッチ

  • 画像の調子や色調、ゴミやキズなど不要物の除去などを部分的に修正することをレタッチという。スキャナーで画像をデータ化するときに失われた情報やデジタルカメラで再現領域の狭い撮影モードで撮影して失われた領域外の情報は、後のレタッチでは回復できない。しかし、豊富に情報をもった画像データに対しては、色変更、シャープネス、ボケ、合成などの加工ができる。写真に対する基本的な調子や色調の修正と、絵柄ごとに常識的な色演出の方法があることを理解しておく。
  • よく見受けられる代表的な絵柄については、それらしい色や調子として認知されている記憶色(あるいはプリーズカラー)を意識してレタッチする。
    ― ガンマ補正:ガンマ曲線つまり入出力の関係を変化させて画像の濃淡を修正することにより、明るさ、調子、色のバランスなどを調整する。
    ― トーンカーブ:画像のどの濃度域に階調を豊富にもたせるか、どの濃度域を圧縮するかなどの調整をする。
    ― 濃度ヒストグラム:濃度域の最小から最大を軸として、サンプリングされた画素の数を棒グラフ上に示した濃度ヒストグラムを用い、画像タイプを把握し、レベル補正やハイライトポイント、シャドーポイントなどを調整する。
    ― フィルター処理:画像データを構成する個々の画素に、周辺の画素との間で演算を行って、画像にぼかしやシャープネスなどの特殊効果を与える。
    ― 合成:写真類や色面などを隣り合わせに配置するとき、境目がないようにぴったりくっつけてレイアウトすることを指す。

1-10-3 ベクターデータ

  • ベクターデータとは、座標値と直線・曲線を定義する式から構成されるデータである。自由曲線の定義方法にはスプライン、ベジェなどがある。図形データのフォーマットには、WMF、EPS、DXF、SVGなどがある。

スプライン曲線

  • スプライン曲線とは、指定した点をスプライン(自在定規の意味)関数を使って滑らかな曲線で結んで曲線を表現する。作図で用いられるものは、主に二次あるいは三次のスプライン曲線である。二次と三次は制御点を通らず、避けるようにして曲線を作り出すのを特徴とする。
  • ベジェ曲線ほど操作の自由度は高くないが、すべての点が曲線上に位置するため、ベジェ曲線よりはコンピューターの演算処理が簡単になる。

ベジェ曲線

  • 三次ベジェ曲線では、始点と終点およびその間に2つの制御点を指定する。制御点は曲線の外側にあり、これを移動させることにより曲線を変化させられる。任意の自由曲線が制御点の移動で描け、また一度描かれた曲線の変更が容易であるのが特徴である。
  • PostScriptでは、文字と図形の基本を直線と三次ベジェ曲線で表している。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-11 レイアウト

文字や図版などの各要素をレイアウトフォーマットに沿って配置し、最終出力の体裁に整える。また、出力に適したデータ処理を行う。

1-11-1 テキストデータ

  • 目に見える文字以外はスペースや改行、タブコードだけを使って構成されたファイルをプレーンテキストという。
  • プレーンテキストは異なるコンピューター環境や、異なるアプリケーションでも文字コンテンツが変わらないので、文章原稿データの整理の段階や原稿データの保存に使われているが、実質的にシフトJIS相当の字種しか扱えないという問題がある。

1-11-2 文字組版

  • 文章読解の妨げにならないように文字を配列する技術が組版である。DTPでは、紙面設計の自在さや使用フォントの使い分けなどにより多様な組み方ができるため、紙面に表情をつけることができる。
  • 文字組版の要素には、組み(縦組み・横組み)、文字サイズ、書体、字送り、字詰、行間があり、それに加えて禁則処理、約物処理などを考慮して行う。
  • 日本語組版の基本的アルゴリズムは、JIS X 4051:2004「日本語文書の組版方法」に規定されている。W3C(World Wide Web Consortium)は、2012年4月Requirements for Japanese Text Layout(日本語組版の要件)という技術ノートを英文、および日本語で発行した。JIS X 4051:2004の平易で実用的なガイドとして、世界的に参考にされている。

欧文組版

  • 欧文文字は、文字によって高さや幅が異なる。高さはいくつかの基準線に揃えられているが、各文字の幅は異なる。そのため、一定の字間で組むだけで、プロポーショナルな組版ができる。
  • 欧文では、文字はベースラインに揃うように設計され、また、アセンダライン、キャピタル(キャップ)ライン、ミーンライン、ディセンダラインという基準線をもつ。
  • 欧文組版では、ジャスティフィケーションは、①単語と単語の間のスペースを1行中で調整する、②1つの単語の字間をベタ組みではなく少し空けて調節する、③ハイフネーション処理をする、の順序で行う。ハイフンの位置はどこでもよいわけでなく、各国語別に異なるので各国語の辞書を参照する。
  • 欧文組版形式のひとつに、ジャスティフィケーションを行わないラグ組みがあり、一般的に本文組みの場合は、左揃えまたは右揃えの形式がある。

和欧混植

  • 和文ではフォントはセンターラインしか基準線がなく、一方欧文フォントはxハイトやディセンダが一定しないので、バランスのとれた書体選択に留意する必要がある。
  • 和文と欧文の間が接近しすぎるとき、また欧文のセット幅が異なるため行長に端数が生じる。

1-11-3 ページレイアウト

  • ページレイアウトソフトウェアとは、文字データ・線画データ・画像データを1ページにレイアウトしてまとめるソフトウェアを指す。レイアウトだけでなく、カラーの指定や画像の入出力、印刷、分版出力などの機能まで備えているものが多い。
  • レイアウトデータと配置されたデータを個別に管理し入稿するとリンク切れや先祖返りなどのミスが生じることや、受け取る側も管理が煩雑になるため、PDFとしてすべてのコンテンツを1ファイル内に埋め込み、完全データとして入稿する形式が一般化している。
  • ページの基本デザインに従って、各ページを組み上げていくページネーションは、自動レイアウトをするバッチ方式と、画面に対して貼り付けの指示を個別にしていく対話方式がある。
  • あらかじめ一括した指示(スクリプト)を作成して所定の場所に文字や図版を自動的に割り付けるバッチ処理は、文章量の多いマニュアルなどの制作が効率的に行える。
  • DTPによるページネーションの主体は、オペレーターが画面を見ながら文字を流し込んで割り付けるWYSIWYGによる方法である。これはレイアウトの細部のコントロールが行いやすい。
  • 大量ページ処理に向いているのはバッチ処理であり、ビジュアル中心の端物制作や修正作業に向いているのはWYSIWYGである。

1-11-4 透明

透明の概念

  • IllustratorやInDesignではオブジェクトに透明の概念を持たせることができる。通常(デフォルト)の塗りつぶしのオブジェクトは不透明度100%であり、不透明度を0%にすると下のオブジェクトが完全に見えるようになる。オブジェクトごとに不透明度や下のオブジェクトとのブレンド方法(描画モード)を設定することができる。「ドロップシャドウ」「ぼかし」なども透明の機能を利用したものである。

透明と出力の関係、分割・統合

  • PostScript-RIP、およびPDF/X-1には透明の概念がないため、IllustratorやInDesign上で設定した透明をそのままでは出力することができない。その場合は「透明効果の分割・統合」という方法で、透明オブジェクトを不透明化する必要がある。
  • Adobe PDF Print Engine(APPE)などのPDF-RIPでは、透明を含むPDF(PDF/X-4)をそのまま解釈し、出力することができる。

1-11-5 出力用データ処理

  • 印刷データを生成する際には、トンボや塗り足し(ブリード)、ノセ(オーバープリント設定)やヌキ、また場合によってはトラッピング、カラーパッチ(カラーバー)を設定、または配置することがある。
  • 色の上に文字や別の図形を重ねるときには、画面とCMYK 出力の間で、ノセ(オーバープリント)やヌキの関係に食い違いがないことを確認しておく。
  • CTP出力の際に、RIP上でKを一律にオーバープリントに設定すると、制作者の意図しないところまでノセにしてしまう場合があるので注意する。
  • 品質管理用のカラーパッチなどの管理スケールや印刷製本用のトンボは、レイアウトソフトウェア、面付けソフトウェア上、RIP上などで付加することができる。
  • ダブルトーンや2色分解をする場合は、出力前工程で各版への分解・分版やトーンカーブ調整などを行う必要がある。

ノセとヌキ

  • 写真や平網、ベタ刷り部分の上に、文字や線画などを刷り重ねることをノセという。写真や平網・ベタ刷り部分の中で、文字や線画などを白く抜き、紙白で表現することを白ヌキ、色をつけることを色ヌキという。
  • 掛け合わせや特色のノセは下色の影響を受けて、ノセたインキとは違う色で仕上がるため注意する。色ヌキは抜いた部分にピッタリの色版を必要とするため、トラッピングを行う必要がある。

トンボ

  • トンボは位置の基準という意味では、英語のregister markに相当し、その役割はセンタートンボと角(コーナー)トンボの2種類で異なる。
  • 角トンボは2本の平行線で構成され、1本は製本の段階で化粧断ちをするための仕上り線を表し、もう1本は化粧断ち線の少し外側で製版処理に必要な面を示す製版寸法線を表す。
  • 写真を仕上り寸法いっぱいに入れる場合、画像部分が仕上り線までしかないと、断裁時のズレなどで写真の回りに白い部分が出てくることがあるため、データ作成時にあらかじめ断ち落としの処理をしておく。
  • 一般に仕上り線と製版寸法線の間は3mm程の隔たりがあるが、この間の断ち落とし部分は、印刷会社や印刷物の種類によって5mm程度まで差があり、あらかじめ確認してからデータ作成作業をする必要がある。
  • リーフレットでは折トンボが用いられる。これはアプリケーションで自動的にトンボを入れることができないので、制作者が制作の前に自作する必要がある。

トラッピング

  • プロセスカラー印刷ではCMYK の各色の版が別々にあり、これらの色が隣り合って接している部分は、印刷時のわずかな見当ズレによって紙の白地が出ることがある。それを防ぐために、プリプレス側でトラッピングという補正が必要になる。
  • トラッピングの刷り重ね部分の作成は、その方向や幅、印刷条件、隣り合う色の色合いや網点パーセントの大小によって異なる。輪郭線のどちらか一方、または輪郭線を中心に重なり合う部分を形成し、輪郭領域に前面と背面の色が重なった細い帯が形成される。
  • トラッピングにはチョークとスプレッドの2つの処理がある。前面のオブジェクトの色の領域を拡大することをスプレッドといい、背面からオブジェクトを抜いた領域を縮小することをチョークという。
  • 本文文字のように太らせるわけにはいかないオブジェクトには背面のヌキを縮小するチョークが適用される。トラッピングの幅は印刷機の種類や精度に依存し、太過ぎると擬似輪郭となり不自然となる。一般に薄い色の領域を拡大する。

プリフライトチェック

  • ページレイアウトソフトには出力前のプリフライトチェック機能があり、フォントや色、貼り込みデータのファイル形式などの内容をチェックすることができる。

出力処理の流れ

  • かつてはPostScript出力・PostScript-RIP方式が主流であったが、現在ではPDF出力・PDF-RIP方式が一般的となっている。
  • PostScript出力では、出力データとRIP搭載フォントの不整合によるトラブルが多発していた。PDF出力ではフォントエンベッド方式が一般的となり、このようなトラブルはほとんど解消された。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-12 PDF

  • PDFはPortable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)の略称で、電子上の文書に関するファイルフォーマットである。特定の環境に左右されず、表現の再現性を確保しつつデジタル化された文書データとして広く普及している。
  • PDFはフォントの埋め込み(エンベッド)やICCプロファイルの埋め込みを行うことができる。
  • PDFには、電子署名機能、コメント記入などが行える注釈(annotation)機能、パスワードと128ビット暗号化によるセキュリティ機能などが装備されている。
  • 1990年代初め頃よりAdobeが開発・提唱したPDF仕様は、1993年より無償公開していた。その後、Adobeは仕様のほとんどに関する権利を放棄することで、国際標準化機構によってISO 32000-1として標準化された。

PDFの特徴

  • PDFは、アドビシステムズが開発し印刷業界の標準として普及していたページ記述言語、PostScriptを元に策定された。PostScriptのようなプログラミング言語としての機能はなく、データ記述言語となっている。
  • PostScriptとの大きな違いの1つにページ単位の独立性があり、必要なページをすばやく表示することができる。
  • 文書、グラフィック、添付ファイルを単一ファイルにまとめて圧縮する構造を持っている。
  • 異なる環境で表示するためのフォントの埋め込み、代替の仕組みを備えている。
  • 本文以外の文書情報として、しおり・リンク・注釈などを追加して付加することができる。
  • バージョン1.4以降では、「透明」の概念を保持することができる。
  • PDF/Aは、電子文書を長期保管用に作成、表示、および印刷するための仕様をISO規格として標準化したものである。またインタラクティブな交換に使用されるPDF/Eがある。

PDFと印刷

  • Adobe PDF Print Engine(APPE)は、PDFベースのRIPエンジンである。PostScriptでは対応不可となっていた「透明」にも対応している。
  • 面付けなどの作業をPDFデータで行うことにより、出力機器への負担が軽くなり、より高速な出力が可能になる。
  • PDF/X(ISO15930)は、国際標準化機構によって規定されたグラフィックデータ交換を目的としたPDFのサブセットである。PDF/Xによるデータ入稿の利点は、カラースペース、フォントや画像に関する規定が明確になり、出力トラブルの回避や信頼度が向上することである。
  • PDF/Xには、PDF/X-1a、PDF/X-3、PDF/X-4など複数のバージョンがある。各バージョンの規格内容を把握し、印刷用データ受け渡しの際にどのバージョンに準拠したデータであるのかを確認する必要がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[色]2-1 光

2-1-1 可視光線

  • 可視光は、肉眼に入射して直接に視感覚を起こすことができる放射で、約400nmから700nmの波長をもつ。CIE(国際照明委員会)では下限波長380nm、上限波長780nmとしている。
  • 波長の違いは光がプリズムを通る際の屈折率の変化で知ることができる。プリズムに白色光を通すと虹のような連続的な色の変化が見られる。
  • 太陽光の白色光には可視光の波長が連続的に含まれている。波長によってレンズでの屈折率が異なるので色収差が出て、異なる色として認識できる。
  • 光の波長は短いほど大きく屈折する。屈折はプリズムやレンズの厚い方に向かって起こる。

2-1-2 光の性質

  • シャボン玉や油膜のように、薄膜表面で反射した光と裏面で反射した光が重なって特定の波長に強弱が起こり、色を生じる現象を干渉という。
  • 光が影の内側に回り込むので物体の影の輪郭がぼやけて見える。これは光の波動性の性質によるもので回折という。
  • 空が青く見えたり、夕方の太陽が赤・橙色に見えたりするのは、光が大気中の小さな粒子に当たって散乱することで起こる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[色]2-2 色

2-2-1 色の混合

  • 波長380〜780nmにわたる光の色相感覚には、単色光の色相に比べて複合光はあざやかでない感覚が生ずる。このあざやかさの程度を、飽和度 (saturation)という。
  • 人間はR(レッド)・G(グリーン)・B(ブルーバイオレット)の光の3原色のそれぞれの色光が目に入る強さの比率によってさまざまな色を認識する。
  • 2色を足して白(加法混色の場合)あるいは黒(減法混色の場合)になる関係を補色の関係という。R(レッド)とC(シアン)、G(グリーン)とM(マゼンダ)、B(ブルーバイオレット)とY(イエロー)がそれにあたる。印刷における補色インキのことではない。

2-2-2 色の認識

  • 色には、色感覚による色と色知覚による色がある。色感覚による色は、心理物理実験のデータに基づいて定量的に表示できる。色知覚による色は、物体からの反射光が大脳の視認中枢において判断される色であって、言語などで表現される定性的なものである。「色相」は知覚色に対応するものと考えられる。
  • 光の分光エネルギー分布と色感覚による心理物理色との間には対応関係があり、分光組成によって、心理物理色は一義的に定められる。しかし、心理物理色に対応する色刺激の分光組成は、一義的には定められず多様性がある。

色の見え(color appearance)

  • 色の見えは、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。そこで色を正しく判断するには、観察環境や条件の標準化が必要となる。
  • 色を正しく判断できる環境として最低限考慮すべき項目には、周囲の色、照明光の特性(分光エネルギー分布)、照度、モニターの輝度がある。
  • 色によっては対象物の背景の影響を受け、対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は無彩色であることが望ましい。

照明光の分光特性

  • 照明光の分光特性は、エネルギーの過不足がなく、分光エネルギー分布がフラットなものが望ましい。照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、自発光のモニターでも色の見えが変わる。
  • 例えば、モニターの観察環境において、フラットな照明下に比べ赤い照明下では赤成分が多いものは明るく見えるし、赤のエネルギーが少ない照明下では、赤い部分は暗く見える。

プルキンエ現象

  • プルキンエ現象は、色の見え方が変わる現象のひとつで、薄暗い時間には赤色が暗く見え、青が明るく見えるという現象である。1825年、チェコの学者であるプルキンエ氏が発見したため、この名前がついている。
  • 目の網膜には、外から入る光を受け取る錐体細胞と桿体細胞と呼ばれる細胞がある。錐体は主に昼間、明るい場所で働き、逆に桿体細胞は暗い場所で主に働いて光を感じている。
  • 明るい場所で働く細胞は、明るい光の下で色を識別する役割を持っているため、どのような色の光も鮮やかに見ることができるが、主に暗い場所で働く細胞は、波長の長い光は受け取ることができず、波長の比較的短い青色〜青緑色に感度のピークを迎える。したがって、明るい時間に赤は目立つが、辺りが薄暗くなってくると、網膜で主に働く細胞が次第に変化するため、青に近い色がはっきりと明るく見え、赤色の光が暗く見えにくいと感じるようになると言われている。そのため、薄暗い夕方でも青の標識は比較的はっきりと見える。

心理的影響

  • 人間の生理的および心理的特性によって色の見え方は影響を受ける。
  • 1つの色の知覚は、直前の色の知覚、周囲の色の知覚の影響なども受ける。生理的・心理的影響の代表的なものに色対比、同化効果、色順応、残像がある。
  • 訓練や色を観察する方法を工夫することによって、生理的・心理的要素の影響を小さくすることが可能である。知覚は脳が視覚情報を補正した結果起こるものなので、計測の値と異なる場合がある。

色彩配色

  • 紙面の印象は色の選択により変わる。明度の低い色は重厚な感じを与え、また明度が高く彩度が低中度の色は軽やかな感じを与える。これにより紙面の重心が影響を受ける。
  • 色はさまざまな感情を人に与える。寒色系、暖色系など、色相、明度、彩度の組み合わせにより、どのような効果が生まれるかについて非常識な配色にならないように典型的なケースは理解しておかなければならない。
  • 社会的な慣習として警告マークや交通標識のように目につきやすいものがどのような配色や明度差になっているかも理解しておく。
  • 印刷物の表現として、代表的な色をCMYK の網点パーセントの組み合わせに置き換えて考える能力も必要である。

2-2-3 色の表し方

色の「光としての物理量」と「心理量としての見え方」の対応関係を科学的に扱う方法があり、これがモニターの色と印刷物の色の問題の議論をする共通の土俵となることを理解する。

カラースペース

  • どのような方法であれ、色を表現するには3つの属性が必要になるので、三次元の空間(立体)で色を数値化したモデルが考えられた。
  • 「色」をあるカラーモデルの規則に従って表示することで、意図した色を情報として正確に伝達できる。
  • コンピューターのカラーモニターやスキャナー、テレビの画面などは、RGBカラーモデルを使い、光を直接コントロールして色の情報を作る。
  • 印刷ではCMYK インキを1枚の紙の上に刷り重ね、各色のインキが特定波長光を吸収したり反射したりした光によって色の認識をする。
  • 規格化されたカラースペースの代表はCIE表色系であるが、色相、彩度、明度という感覚をベースにしたカラースペースもある。
  • 色相、彩度、明度の3属性で客観的に数値化して表す、感覚をベースにした体系にマンセル表色系、オストワルド表色系などがある。
  • マンセル表色系は、色の知覚を段階分けしてHV/Cで表現するもので、光の物理量との関係付けが難しいが、人間の感覚には近いとされている。

色名法

  • JIS Z 8102「物体色の色」では、系統色名と慣用色名の2つを規定している。
  • 赤・橙・黄・緑・青・紫・白・黒など世界共通の色名法を基本色名といい、これに明度と彩度に関する修飾語と色みを表す修飾語をつけたものを系統色という。
  • さまざまな動植物や鉱物の特有の色から付けられた色名を固有色名という。
  • 普遍化し一般に使われるようになった色名を慣用色名という。
  • 国ごとの歴史的文化的背景によってつけられた色名のことを伝統色名という。

慣用色名

  • 古代から使われてきた色名は、情報としてあるいは意思伝達の手段としての不完全さにもかかわらず、今日でも多く用いられる。
  • 特定の色を表現する名称を固有色名といい、一般に広く使われているものを慣用色名という。JISでは慣用色名として約269色が定められている。
  • 慣用色名や日本の伝統色の代表的な色は、赤系や青系など色系統や、色相など属性との関係を覚えておくとよい。
  • 慣用色名の由来や顔料・染料の種類などを知ることは、色再現の理解につながる。

CIE表色系

  • 色を光の物理量として、また人間の視覚神経刺激の心理量の問題として、科学的に扱った表色系にCIEの表色系がある。
  • CIEは色や光に関する取り決めを行う国際照明委員会の略称である。CIE表色系は、当初CIEで定めた特定波長のRGB単色光の比率で色を表すRGB系であったが、負の値を含んでいたので、1931年にRGB系を線形変換したXYZ表色系に改めた。
  • CIEのXYZ表色系では、与えられた色と同じ色感覚を起こさせるために混合すべき3原色の刺激の量X、Y、Z(3刺激値)で表す。Yは明度曲線と同一であるので、輝度を示す。XYZ表色系を平面図に表すと、光のスペクトル軌跡を包む三角形で表現される。
  • XYZ表色系のひとつであるCIExy色度図は、平面で表示したものである。色再現域を単純化して三角形に内接する馬蹄形の図で表す。CIExy色度図では、中心W(白)に近づくほど彩度が低くなり、周辺に向かうほど高くなる。また、色度図の左下はBv、右下はR、色度図の頂部はGである。
  • 印刷物とカラーモニターの色再現域を比べると、カラーモニターはプロセス印刷の再現域よりも大きな鋭角の三角形となる。
  • 印刷ではRGBはCMYの混合によって作り出すため、RGBの頂に向かう領域は大きくおさえられ、一般に印刷の方が色の再現範囲が狭い。また、印刷物は可視光の中間域のGで表現レンジの制約が大きい。

CIE 1976(L*, a*, b*)色空間(CIELAB)

  • CIE 1976(L*, a*, b*)とは、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつである。
  • L*a*b*表色系ではL*で明度を表し、色相と彩度を示す色度をa*とb*で表す。a*とb*は色の方向を示し、+a*は赤、-a*は緑、+b*は黄、-b*は青のそれぞれの方向を示している。数値が大きくなるに従って色が鮮やかになる。
  • L*a*b*はシステムやデバイスに依存しないこと、またRGBやCMYK に比べて色再現領域が広いことなどから、カラーマネジメントシステムやソフトウェアの標準カラースペースとして用いられている。

色差の表現

  • 各工業分野で色の管理に色差(⊿E)が用いられている。均等色空間であるCIELAB色空間に基準色と評価色をポイントし、それらの三次元空間内での直線距離(ユークリッド距離)を色差として表す。この色差を求める式をCIE 1976色差計算式といい、⊿(デルタ)Eと表記し、数値が大きいほど違う色になる。
    数値が3程度なら一般人が色票を並べると認識できる差になり、⊿E6.5を越えると違いが分かるようになる。
  • CIE 1976色差計算式による色差判定結果と人の感覚には少し違いがあると言われていた。より人の感覚に近づけるための最新の色差式がCIE DE2000であり、⊿E00と表記する。

2-2-4 色の評価

色を評価するには、光源や観察条件などを整える必要があることを理解する。

色温度

  • 色温度とはある光源の色を絶対温度Kで示したもので、JIS「色に関する用語」には「完全放射体の色度と一致する試料放射の色度の表示で、その完全放射体の絶対温度であらわしたもの」とある。
  • 色温度は、白色蛍光灯はおよそ4300K、快晴の青空はおよそ20000Kとなる。数値が低いほど赤色光の量が多く、高いほど青色光が多い。
  • 一般的な光源の色温度は、印刷の標準光源に比べると高めのため、作業内容によってはカラーモニターでの色温度を印刷用に設定して使う。

演色性

  • 演色とは、照明される光源の違いによって色の見え方が異なる現象をいう。その特性を演色性と呼ぶが、一般に演色性とは自然光と対比させた光源の性質を表わすものである。
  • 演色性は、ある光源のもとでの色の見え方が、同じ色温度の基準光源での見え方にどれだけ近いかをRa(演色評価数)で示す。
  • モニターや蛍光灯などを選ぶときは、まず色温度によって区別し、演色性の数値を見て評価する。Raが100に近いほど高演色性の照明光といえる。

標準光源

  • 日本印刷学会により印刷物色評価用標準光源が次のように決められている。相関色温度:D50(5000K ±250K)、平均演色評価数:Ra 95以上。
  • 印刷物の色を評価するにあたっては、色評価用蛍光灯として演色AAA昼白色(5000K)の使用が望ましい。
  • CIEの標準光源A、C、D65などのうち、印刷以外で一般によく使われる照明光源はD65であり、その色温度は約6500Kである。

観察条件

  • 色の見えは観察環境によって異なる。観察者や対象物が置かれている環境や、照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。
  • 観察条件には大きく分けて3つの要素がある。
    1) 照明の特性(光源の色温度、演色性、照度・輝度)
    2) 照明の配置
    観察するときに照明が直接目に入らないようにする。なるべく鏡面反射が気にならないようにする。
    3) 観察するための周囲の環境
    観察対象の周囲には、鮮やかな色や暗い色を置かないようにする。グレーが望ましい。
  • 印刷物の色の厳密な比較や評価にあたっては、用紙、インキ、印刷条件、光源という条件をすべて同一にする必要がある。

メタメリズム

  • 分光反射率の異なる2つの色が、特定の光源下で同じ色に見えることをメタメリズム(条件等色)という。メタメリズムにより、ある条件下で等しく見えた色が別の条件下では異なった色に見えてしまうことが起こる。例えば、標準光D50で2つのものが同じ色に見えても、D65では違って見えることもある。メタメリズムには、湿潤・温度・光源などがあるが、一般にメタメリズムというと光源間メタメリズムを指すことが多い。
  • 光源が変わって色が変化しても、メタメリズムがなく等色に見える場合がある。逆に演色性がないが、メタメリズムがある場合もある。

モニターと反射物の観察環境

  • モニターと印刷物などの反射物の色を比較する場合、モニターの輝度と照度とは、それぞれ別個に決めればよいというものではなく、両者の関係を考慮して設定しなければならない。
  • モニターの輝度と反射物の照度の適正値は、モニターの基準白色輝度、周囲の状況などにより変化すると考えられるので、①モニターの設置・調整、②反射物(サンプル:未印刷の用紙など)の設置、③モニター側照度の調整(モニターの基準白色は、白に認識され、シャドウ部の階調再現が確認できる照度に調整する)、④反射物側の照度の調整(印刷用紙などの明るさ感がモニター基準白色の明るさ感と同じになる範囲に設定する。照度が高すぎると用紙の明るさ感が増し、モニターの再現範囲を超えてしまう)、という手順で設定することが望ましい。
  • 一般的なDTP環境では、印刷物をチェックする校正環境はアナログ時代とは異なり、5000Kで500〜600luxくらいの部屋でモニター管面の輝度80cd以下(できれば60〜70cd)が望ましい。この環境下ならモニターの色と校正刷りが近似するはずである。
  • 色を正しく判断するには、作業する現場の背景や壁などの色の整備から行うことが理想的であるが、第一ステップとして、照明光、照度によるモニター環境を整備することは比較的容易にできる。
  • モニターの観察環境の整備や標準化によって、色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニター上で色修正をしたり、現場やクライアント側にも同様の環境を構築することによって、作業効率アップや品質向上になる。

2-2-5 カラーマネジメント

  • DTPにおけるカラーマネジメントの目的のひとつは、印刷再現の予測である。
  • ディスプレイに対しては、紙で再現できる範囲の色のみの表示が求められる。
  • DTPデータの出力先がデジタルメディアの場合には、ディスプレイ間でも色が相似になる仕組みとしてカラーマネジメントが必要になる。
  • ガモットは、ディスプレイやプリンターなどの物理的なデバイス(装置)が理論的なカラースペース内で再現できる色の領域であり、各デバイス固有のものである。
  • カラーの入出力デバイスは、利用目的や発色の仕組み、設置環境などがそれぞれ異なり、管理されていないデバイス間では、相似の色再現ができない。
  • デバイスインデペンデントカラーは、カラーデータの入力から出力までの工程で、個々のデバイスに依存しない色再現を目指している。
  • デバイスインデペンデントカラーを実現するため、CIE(Commission Internationale de L’eclairage:国際照明委員会)が発表したカラースペースをデータの基準にすることが多い。
  • この基準値を各デバイスのカラースペースにマッピングし、デバイスごとに補正値を用い、色の再現を行う。
  • キャラクタリゼーションにより各デバイスの発色の特性を捉え、色変換用のパラメータを記述したデバイスプロファイルを作成する。
  • デバイスの発色は日常的に変動するため、各デバイスの特性をデータ化したときの値を基準にし、使用中のデータを計測した上で、基準値に合わせるキャリブレーションを行う。
  • 色の評価を行う環境は、外部からの色の映り込みを排し、標準光源を用いて、評価条件を一定に保つことが求められる。

デバイスプロファイル

  • DTP環境でカラーマネジメントを容易に行うために、OSレベルで色変換エンジンの使用を可能にすることや、デバイス特性を示すデバイスプロファイルデータのフォーマットに対する標準化が行われている。
  • カラーマネジメントシステム(CMS)は、アプリケーション間やデバイス間の色調整を行う仕組みでOSの機能の一部として提供されている。Appleが提供しているCMSがColor Syncであり、Microsoftが提供しているのがWCS(Windows Color System)である。Color SyncやWCSは、インターナショナル・カラー・コンソーシアム(International Color Consortium:ICC)の公表したデバイスプロファイルフォーマットの仕様であるICCプロファイルに対応している。
  • デバイスインデペンデントカラーでは、異なる色再現領域をもつデバイス間でのカラーマッチングを行うために、汎用のカラースペースに変換する。CIEのXYZや、L*a*b*が共通のカラースペースとして使用される。
  • デバイスプロファイルには、各デバイスの色再現能力を共通のカラースペース上で表した情報が記述されている。DTP環境では複数のデバイスを使用するため、各デバイスのデバイスプロファイルを参照し、異なるカラースペース間で相似した色が表現できるようにデータ変換を行う必要がある。
  • アプリケーションがOSにRGB/CMYK変換を要求すると、OSはCMSを呼び出し、内蔵された色変換エンジン(CMM:Color Metrics Match / Color Management Module)に対してデバイスプロファイルを利用した色変換を依頼し、結果をアプリケーションに応答する。再現不可能な色については、最も近い色に変換される。色再現の品質は、デバイスプロファイルとCMMの精度に左右される。
  • デバイスが異なると色再現域が異なることが多い。そこで事前に変換方針を決定してから変換を行う。この方針をレンダリングインテントという。再現不可能な色を置換する場合についても、レンダリングインテントに従い適した色に変換する。

ICCプロファイル

  • ICCプロファイルは、デバイスのカラースペースや色再現特性が記述されたデータファイルである。RGBとCMYKの変換を行う際や、ディスプレイやプリンターで出力する色を調整する際に参照し、正確な色の再現を実現する。
  • ICCプロファイルは、デジタルカメラやスキャナーなどの入力デバイス(Input Profile)、ディスプレイといった表示デバイス(Display Profile)、プリンターといった出力デバイス(Output Profile)に対応した3つのタイプがある。
  • 標準的なプロファイルは、デバイスの製造元により提供されることが多い。
  • プロファイルは色の変換テーブルを含んでおり、RGBまたはCMYKとL*a*b*値の双方が定義されている。変換テーブルを編集することで、独自のプロファイルを作成することができる。
  • カラーマネジメントの運用では、各デバイスプロファイルの設定や、画像データに埋め込まれたプロファイルの設定などを適切に行うことが重要である。デバイス間のカラーマネジメントを理解することで、プロファイルを二重に適用したことによる品質劣化の様なトラブルを防ぐことができる。

ディスプレイ

  • ディスプレイ表示と印刷結果を一致させるためには、色温度や発色範囲を管理するカラーマネジメントが必要である。
  • ディスプレイは、加法混色型の装置であり、「白」を基準として色の調整を行う。印刷物の色を再現するために、「白」を調整できるキャリブレーション機能を搭載したディスプレイを使用することが望まれる。
  • 家庭用のTVディスプレイの多くは、初期設定の色温度が9300Kである。PC用ディスプレイは、標準光源の昼光(6500K)と近似値ではあるが、いずれもDTPデータを表示させると色合いは実際の印刷物よりも青味を帯びる。
  • 環境光はディスプレイの発色に影響する大きな要因のひとつである。一般的にDTP環境では、印刷物の色を評価する光源を使用し、ディスプレイの色温度は、5000Kに設定する。
  • ディスプレイの色は、ディスプレイの蛍光体による発光と照明や太陽などの反射光による混合色となる。反射光は、色の再現に影響を与え、コントラスト比の低下をもたらすため、遮光フードを使用し、光の映り込みを防ぐ必要がある。

キャリブレーション

  • ディスプレイのキャリブレーション方法には、ディスプレイ本体のRGB表示を制御、調整するハードウェアキャリブレーションとPCのビデオカードから出力されるRGB信号を調整するソフトウェアキャリブレーションがある。
  • キャリブレーション機能のないディスプレイのコントラスト調整では、コントラストを最大にし、明部(白地)の調整を行い、続いてブライトネス調整で、明部の明るさと暗部(黒地)の調整を行う。

アプリケーション

  • デスクトップ上で作業を行うDTPでは、出力デバイスに合わせたアプリケーション環境のカラーマネジメントを行う必要がある。アプリケーション上のワークスペース(作業スペース)に関する概念は、異なるデバイスやデータ交換に対応するために登場した。ワークスペースとして、RGBやCMYK、グレースケールなど、カラーモード毎にICCプロファイルを設定する。
  • 各デバイス用のデータに変換する場合は、ICCプロファイルを都度設定することで対応する。「Japan Color 2011」といった標準規格に基づいたICCプロファイルを指定することもできる。データに標準的なICCプロファイルを埋め込むことで、デバイスに依存しないカラーデータの交換が実現できる。
  • RGBからCMYKへ変換するといった、あるカラースペースから別のカラースペースに変換する場合は、レンダリングインテントを指定する。Adobe製アプリケーションでは、レンダリングインテントとして「知覚的」「彩度」「絶対的な色域を維持」「相対的な色域を維持」という4つの選択肢がある。デジタルカメラ時代になってPhotoshopのデフォルトは「知覚的」に設定されているが、モニターに関しては「相対的な色域を維持」に設定されている。
  • 入力デバイスから得たRGBデータや、RGBプロファイルの設定が異なるデータを扱う場合、共通のワークスペースを指定し、デバイス間のカラースペースを共有することが可能である。印刷用データへの変換は、データがもつ共通のワークスペースにおけるカラースペースとCMYKの設定が大きく影響するため、印刷条件に合わせたインキの色特性、ドットゲイン、インキの総使用量の制限、墨版の設定などを行う。
  • 印刷条件ごとにプロファイルでテーブルを用意することも可能であり、目標値となる印刷物の測色結果により作成したプロファイルを設定できる。

アイソメリックマッチ

  • 対象物の正確な色再現、色合わせを行う方法にアイソメリックマッチと呼ばれるものがある。これは分光反射率を近似させて目標色に合わせようとするものである。これに対応した色再現システムを分光的色再現システムやナチュラルビジョンと呼ぶこともある。
  • アイソメリックマッチは、分光反射率が完全に合致した場合、メタメリズムによる色変化を完全に取り去ることができ、理想的な色合わせの方法である。この方法は、デジタルカメラ入力では撮像システムの技術革新により実運用も可能であるが、インキなどを用いて色を合わせる場合は目標色と同じ色材・下地の場合でないと、反射率を合致させることは難しく、手持ち色材を利用する着色業では利用範囲が限られる。
  • スペクトルを一致させるアイソメリックマッチに対して三刺激値を目標色に合わせようとするカラーマッチングをメタメリックマッチと呼ぶこともある。
  • メタメリックマッチでは、視覚色を三刺激値で一致させようとするため、計算する光源下では一致しても、他の光源では色が合わないリスクつまりメタメリズムを持つが、手持ち色材を利用してほとんどの色を出すことができるメリットがある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[コミュニケーション]

印刷物などのメディア制作ビジネスは、顧客企業におけるマーケティング活動に活用されるなど、コミュニケーションを目的とした手段として実施される。したがって、情報の効果的な展開や視覚化を検討し、適切なコミュニケーションデザインを行うことが求められる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-1 概要

3-1-1 印刷技術の起源

  • 印刷は情報を伝達するための重要な手段のひとつである。太古、人類は言葉や身振り手振りでお互いの意思を伝達していた。音声という聴覚だけに頼っていたコミュニケーションでは、交わされると同時に消えてしまうが、文字を発明することによって時間と距離の克服を果たし、より正確に意思を伝達できるようになった。
  • 文字を記しておく「物」を媒体(メディア)という。石や粘土、羊皮紙、パピルスなどを経て、中国で105年に蔡倫により樹皮、麻くずなどの植物繊維を原料にして紙が発明された。
  • 一枚一枚手書きで写すのでは一度に多くの人に情報を伝達するには不便なので、複製手段が求められた。現在のかたちの源流となる印刷が始まったのは中国である。唐の時代に木版印刷が始まったといわれている。現存する当時の印刷物としては868年につくられた「金剛般若波羅蜜経」がある。
  • 日本には奈良時代に製紙技術とともに伝来したと言われ、奈良・法隆寺には現存する最古の印刷物とされている「百万塔陀羅尼経」が残されている。
  • 中国で生まれた製紙法と木版印刷がヨーロッパに伝わり印刷が行われるようになったのは14世紀末といわれる。そしてドイツ人のグーテンベルクが現在の印刷術の基礎といえる活版印刷術を完成させた。彼の発明した活字は鉛を主原料とした合金で鋳造しやすく精度が高い上に再利用もでき、量産を可能とした。彼が印刷した「42行聖書」は世界最古の活字本として残されている。
  • 日本においては明治に入り本木昌造が和文の活字鋳造を行い、1870年(明治3年)創刊の「横浜毎日新聞」が印刷されている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-2 五大要素

印刷をするために必要な要素は、1)原稿、2)版、3)インキ、4)被印刷物、5)印刷機の5つである。

3-2-1 原稿

  • 印刷物として複製される元となる素材。かつては原稿用紙に書かれた文字や、写真の紙焼あるいはポジフィルム、手書きの図版やイラストなど目でみて触れることのできる形であったが、現在はデジタルデータとしてやり取りされることが多い。

3-2-2 版

  • 複製用の印刷原版。インキが着く画線部とインキが着かない非画線部を持つ。断面の形状によって凸版、平版、凹版、孔版などに分けられる。

3-2-3 被印刷物

  • 版とインキにより、原稿の画像を再現する紙などの材料。印刷媒体の大きな特長は、空気と水以外に何にでも刷れるというほど被印刷物の多様性にある。紙以外にプラスチック、ガラス、金属、布など印刷物は広く使われている。

3-2-4 インキ

  • 版の画像を被印刷物に転写するための材料。印刷インキは被印刷物や版式、印刷物の用途などによって適した性質のものが選ばれる。

3-2-5 印刷機

  • 版を取り付け被印刷物にインキを転写する機械。圧力のかけ方によって平圧、円圧、輪転の3種類がある。これらの従来型印刷機に対して、デジタルデータを直接出力する無版式のデジタル印刷機がある。

オフセット印刷機

  • 版と紙が直接、接触せずにいったんブランケット胴などを介してから転写する印刷方式をオフセット印刷方式という。現在は平版の版式が一般的になっている。平版は、版に少量の水を加えることで画線部は水をはじき非画線部に水がつく。版胴に巻きつけられた版にローラーでインキをつけると水をはじいた画線部だけにインキが着く。

グラビア印刷機

  • グラビア印刷の版は画線部を凹部で表す。凹部に深い浅いの差をつくり、インキの付着量の多少によって濃淡を表現する。グラビア印刷機の機構はインキ漕のなかに版胴が接していて、版胴が回転すると版全面にインキが着くので、ドクターと呼ばれるヘラで非画線部のインキを拭い取る。凹部に残った画線部のインキはそのまま残り、用紙に転移される。

フレキソ印刷機

  • 凸版印刷方式の一種。版に感光性樹脂やゴムなどの弾力性のある(フレキシブルな)素材を用いることからフレキソ印刷という。段ボールなどの表面の粗い素材への印刷に適している。

スクリーン印刷機

  • 孔版印刷の一種。版として網目状の布(メッシュ)を用いる。印刷する素材を選ばない、曲面への印刷が可能、インキが厚盛りできるなどの特長がある。

デジタル印刷機

  • コンピューター上で製作されたデータを、版を使わずに、直接インキやトナーにより印刷する。印刷方式は、電子(静電)写真方式やインクジェット方式が主流である。デジタルデータを使用した無版方式であるため、大量印刷から少量印刷、可変印刷にも対応することが出来る。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-3 網点

  • 平版・凸版印刷などでは、画像の階調表現を網点面積率の大小で表現する。
  • 網点のような周期的パターンの画像を2つ以上重ねると、そこに別の規則的な模様(モアレ)が発生する。各色版を重ねて印刷した際にできるモアレのひとつに、網点が小さな環状あるいは花状につらなったロゼットモアレがある。
  • 各色版を重ねて印刷するときのスクリーン角度が不適切であると、モアレが目立ち絵柄の再現を損なう。モアレを目立たなくするために、各色版の角度をコントロールしている。
  • かつて網点の形成は光学的スクリーンを用いて行われていた。デジタル出力では、従来の網点形状を電子回路でシミュレートしている。網点形状によって画像の滑らかさやシャープさが変わる。

3-3-1 スクリーン線数

  • 網点は1インチに並ぶ網点の数によって、粗密を表現する。これをスクリーン線数という。
  • 平滑度の低い紙では、インキ皮膜厚をより厚くして印刷しなければならないので、網点が太りやすくなる。したがって、紙質に応じて適切なスクリーン線数を選ぶことが必要である。
  • アート・コート紙を使うカラー印刷では175線〜230線くらいが使われ、中・上質紙を使う書籍、雑誌や新聞では85線〜133線くらいが使われることが多い。
  • 250〜300線以上は高精細印刷とも呼ばれ、刷版製版から印刷にいたる品質管理は厳密なものとなる。
  • 巨大な看板などは、いったん網点出力したフィルムを拡大して意図的に粗い線数にして(目伸ばし)、インキを多く乗せて濃度を高く印刷することもある。

3-3-2 スクリーン角度

  • 各色版を印刷で刷り重ねる際にモアレが目立たないようにするために、刷版上で各色版のスクリーン角度を変える。
  • 網点は水平、垂直に並べるよりも45度に傾けた方が目立たなくなるので、単色印刷では45度のスクリーン角度を使う。
  • プロセス4色のうち、C、M、K版が干渉するとモアレの原因となり易い。そのため、45度にこの1つを置き、他の版をそれぞれ30度ずつ離して置く。そして、これらのいずれか2色の中間にモアレが発生しても目立ちにくいY版を置く。

3-3-3 AMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)

  • アナログ製版の時代から現在に至るまで、最も一般的に使用されている。等間隔に配置された網点の大きさを変化させることで色の濃淡を表現するスクリーニング技術である。網点の再現性、印刷時のインキ転写精度に優れており、オフセット印刷における標準的なスクリーニング方式とされている。網点の形状はスクエアドットの他にラウンドドット、チェーンドットなどがある。

3-3-4 FMスクリーン(Frequency Modulated Screening)

  • FMスクリーンでは、網点(実際はドットというべき小さな点)の直径を一定にして、点と点の間隔を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は、明るく表現する部分では少なくなり、暗く表現する部分では多くなる。
  • FMスクリーンの特長としては、1)従来のスクリーニングでは網点が規則的に並び、スクリーン角度に起因するモアレがあったが、それがないこと、2)点が非常に小さいので布地や木目などの表現に優れていること、3)スクリーン線数による制限がないので豊かな階調表現ができること、などである。
  • FMスクリーンでは、絵柄中の平網部分、中間的な明るさのフラットな部分やハイライト部で、画質が荒れた感じになりやすいが、さまざまな対処法がある。
  • 4色プロセスインキセットだけではなく6〜7色を使った印刷方式など、将来のカラー印刷への展望を開いた画期的な技術である。

3-3-5 高精細印刷

  • 標準的なオフセット印刷の場合、175線程度のAMスクリーニングを用いることが多い。それに対して、より精細な線数で刷版を製作し、印刷することを高精細印刷と呼ぶ。一般的には250〜300線以上のスクリーン線数を指すことが多い。250線を越えると、網点は肉眼で確認できないほど微細となり、階調もなめらかとなる。画像が鮮明で高彩度の表現が可能となるため、写真集や美術印刷などに用いられる。一方で印刷条件が厳密となるため、管理面の制約もある。

3-3-6 平網と網点の管理

  • 2色以上のインキを刷り重ねて、色を出すことを掛け合わせという。
  • かつては、ベタ印刷以外の一定の階調を表す部分を平網と呼び、図形や罫線に平網を設定することを「網フセする」「網ガケする」と言っていた。
  • 一般に、平網は10%単位で設定し、10%単位で印刷品質を管理することが多かった。色見本として、10%単位の網の組み合わせを印刷したものを参考にすることもあった。
  • プロセスインキを「M70%+Y100%」で掛け合わせると、オレンジになるが、オレンジ、黄緑、青紫のような色は、プロセスインキを掛け合わせるより特色を使った方が鮮やかである。
  • 「C50+M50+Y50」など等量のCMYの掛け合わせたグレーは赤みを帯びるため、Kに置き換えた方が安定する。
  • 特定のプロセスインキ用に分解したCMYKデータを別のインキセットで印刷すると、仕上がりが全く異なる可能性がある。つまりCMYKデータは、インキに依存するデバイスデペンドバリューである。
  • CMYKの値がどのような色として印刷されるか、インキ自体の分光反射率や紙、湿し水管理、刷り順、印刷機本体の調整、また温度・湿度等の印刷工場の環境といった複数の条件が積み重なって影響する。
  • CMYK値は「面積率」という絶対値であるため、印刷工場内の管理上は有効でも、色を表現する情報としては万能でない。インキや紙や印刷条件が標準化されたものとして、日本ではJapan Color、アメリカではG7(SWOPやGRACol)、ヨーロッパではPSOなどの指標がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-4 プリプレス

プリプレス工程は、より短い時間で作業を遂行しなければならないので、新たなワークフローの設計や分業体制の改善や、そのコントロールが必要であることを理解する。

3-4-1 ワークフロー

  • デジタル化してシームレスなワークフローになると、文字、イラスト作成、画像処理、ページレイアウトなどの諸作業の分担に合わせて、責任範囲を決めておくのがよい。
  • 出版印刷の場合、編集者は出版物の設計に責任をもち、全体の進行・管理を行って、編集作業を通して印刷物を統一感のあるイメージに仕上げる。
  • 編集者は、文章量のバランス、文体、用字用語、表現が適切であるか、図版類や写真原稿が揃っているかなどのチェックをして必要な修正の指示をする。
  • 完成したページのデータを出力する前には、ページに貼り付ける画像データや線画データ等がすべて揃っているか、また、データの解像度やデータ形式が適切なものとして保存されているかをチェックしなければならない。

3-4-2 製版

カラー印刷における色分解から刷版焼付用の分版フィルムの大貼り、刷版製版までの工程をプロセス製版と呼んでいた。DTPによってこの工程は統合された。作業手順は変わっても、その機能・目的および原稿の再現のためにどのようなコントロールがなされているかは同じである。

デジタルプリプレス

  • DTPソフトウェアによりページ内における文字、図形、画像の配置や、どのように表示するかが指定される。
  • DTPソフトウェアが出力処理をする段階でPostScript様式、またはPDF様式のファイルを生成し、あるいはプリンタードライバーを経由して出力機に送る。
  • PostScriptファイル、またはPDFファイルは、文字オブジェクト・図形オブジェクト・ビットマップのオブジェクトを位置の脈絡なく混在させて記述できる。

PDFワークフロー

  • Adobe PDF Print EngineはPDFベースのRIPエンジンである。PostScriptでは対応していない「透明」などを含むPDFに対応している。
  • 面付けなどの作業をPDFデータで行うことにより、出力機器への負担が軽くなり、より高速な出力が可能になる。

ラスター出力

  • デジタル方式の画像システムでは、画像を構成する要素の中でいちばん細かいものをピクセル(pixel)と呼ぶ。RIPなど画像プロセッサーは、ピクセルの場所を処理空間のアドレスで管理し、画像に従って、どれをオンにして、どれをオフにするかを指定していく。
  • RIPは画像のピクセルを、x軸あるいはy軸に沿って取り出し、ラスターデータ化する。
  • レーザープリンターのようにラスターデータを受け取って、光の点の点滅するビームにして出力(露光)するものをラスター出力装置という。

3-4-3 刷版

CTP

  • RIP処理したデータから直接オフセット印刷用の刷版を出力することをCTP(コンピューター・トゥ・プレート)という。
  • CTPは、中間工程がなくなり、デジタル化されたことにより画質の劣化が起こらず、高品質が得られる。刷版製版で行っていた焼き度調整や印刷機に合わせた調整は、前工程と連係しデータに対して処理しなければならない。
  • 現像処理を行わず印刷機の機上もしくは前処理で行う環境に考慮した現像レスのタイプのCTP版が普及しつつある。

水なし平版

  • 湿し水を必要としない水なし平版は、インキ反発層としてシリコン層を刷版の最上部に作り、画線部はその下に感光性樹脂層として作られている。フィルムの焼付け後の現像処理により画線部のシリコン層が剥離し、その下の樹脂層が露出する。インキを受理する画線部は凹状になっているので、ドットゲインが少ない。
  • 水を使用しないので版上に砂目が不要で、PS版に比較すると網点再現性がよく、水によるインキ乳化がないので光沢のあるボリューム感のある印刷物が得られる。