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【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-6 データベース

  • データベースの操作は、実際の処理手続きとは異なるコンピューター言語で行われ、操作とデータは独立している。
  • SQL(Structured Query Language)はデータベース言語として規格化されたものであり、データベースの定義と、データベース操作と、トランザクション処理の機能を有している。
  • データベース定義は、データをテーブルとして定義すること、テーブル間での関連付けや権限の設定などをスキーマ定義として行う。
  • データベースとはこのように定義されたすべてのデータの集合を指す。
  • データベース操作とは、テーブルに新しいデータを追加し、データの一部を変更や削除し、データの並べ替えを行うことを指す。
  • データベースは多数の利用者から同時に処理が要求されることもあり、異常を回避するために、処理単位をトランザクションとして、秩序立てた処理を行う。
  • SQLにより直接データベースを操作することが可能であるが、他のプログラム言語を介して使用されることが多い。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-7 バーコード

  • バーコードは、線とスペースの組み合わせ配列で情報を表現する技術であり、読み取りの速さと正確さ、操作性の高さなどの特長から広く普及してきた。
  • バーコードの利便性が広く認識されるに伴い、より省スペースで、より多くの情報を表現できるコードへの要望が高まり、二次元コードが登場した。
  • 二次元コードにはおよそ14種類があり、大別するとスタックバーコード方式とマトリックス方式の二つがある。
  • スタックドバーコード方式は、単純に一次元コードを縦に積み重ねたものであり、マトリックス方式は白黒のセルをモザイク状にしたデザインを持つ。
  • QR(Quick Response)コードは、マトリックス方式に分類される二次元コードの一種である。リーダーでの読み取りやすさに主眼を置き開発され1994年に発表された。
  • バーコードが一方向に情報を保持していることに対し、QRコードは縦、横の2方向に情報を持つことで記録できる情報量を飛躍的に増加させた。
  • 従来のバーコードは、約20桁程度の情報量であったが、QRコードはバーコードの数十〜数百倍の情報量を取り扱うことができる。また、数字、英字、漢字、ひらがな、カタカナ、記号、バイナリー、制御コード等あらゆるデータの取り扱いが可能であり、データ量は数字で最大約7000文字まで表現できる。
  • QRコードは、バーコードと同じ情報量を、約10分の1の大きさで表現でき、360度の方向から読み取りが可能である。
  • バーコードや二次元コードがこれほどまでに普及した背景のひとつには、仕様が明確に定義および公開され、利用者が自由に使用できたことが挙げられる。
  • QRコードは、仕様が公開され特許の権利行使を行わないことが宣言された、オープンなコードである。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-8 コンテンツ管理

Webや電子書籍への転用など、印刷物で使用するコンテンツの複数メディアへの展開を当初より想定したデータ管理やワークフロー設計の重要性が増している。今後は、さらに動画、音声などの要素も含めて一元的に扱うマルチメディア対応などが想定される。

4-8-1 ワンソースマルチユース

  • 印刷用データを基に、各種記録メディアやインターネットメディアといった異なるメディアへのコンテンツ展開が行われる。
  • 印刷用に加工されたデータを他媒体へ展開するには、データの再加工を行わなければならず、工数の増大につながる。
  • 印刷用データにおけるサイズや書体指定のような情報を保持せず、印刷メディアやインターネットメディア向けといった、複数メディアへの出力を想定した共有または共通データの作成を求められることがある。
  • 最終的に出力されるメディアを構成する情報をデータベース化し、出力メディアに合わせた検索を行い、データ抽出後に自動的にレイアウトするマルチメディア対応のデータベースが活用されている。
  • 共有または共通データのデータベース化は、情報のメディアミックス展開の際にも有効な資産となる。

4-8-2 CMS(Contents Management System)

  • CMSとは、コンテンツを管理するシステムを指す。
  • 広義では、組織で使用する文書を効率的に管理するためのシステムやソフトウェアを指す。
  • 狭義では、Webコンテンツを構成するテキストや画像、音声、動画などのデジタル素材を体系的に管理し、配信処理などを行うシステムの総称を指す。
  • コンテンツのテンプレートをデータベースに登録し、条件に従いXMLやCSS、XSLなどを用い、テキストデータや画像とともにWebサイトや紙メディアのページを自動生成する仕組みを構築することが可能である。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-9 デジタルデバイス

マルチデバイスの時代では、PCやスマートフォン、タブレット端末などスクリーンデバイスの数が増え、複数のメディアを同時に利用するマルチスクリーン利用者が増えている。テレビやスマートフォン、タブレット端末などを複数併用しているため、同じコンテンツをさまざまなデバイスで見る機会が増えている。表示解像度がデバイスごとに異なるため、ブラウザーの横幅に対応して、表示レイアウトが変わる「レスポンシブWebデザイン」という考え方がある。

4-9-1 スマートフォン

  • インターネットとの親和性が高く、パソコンの機能を併せ持つ携帯電話はスマートフォンと呼ばれている。
  • 2018年時点の代表的な機種には、iOSやAndroidなどのモバイルOSが搭載されている。利用者自身がソフトウェア(アプリ)を追加することで、自由にカスタマイズできることが特長である。
  • 一般的なスマートフォンでは、通信回線や無線LAN(Wi-Fi)を通じてインターネットに容易にアクセスすることができ、また比較的大きな画面やカメラ、ソフトウェアキーボードなどを搭載しており、電子メールの送受信、Webブラウザー、写真・ビデオ・音楽の撮影や再生、ゲームや電子書籍などさまざまな機能を利用することができる。また、GPSを搭載した機種では、地図ソフトや経路案内などの位置情報サービスを利用することもできる。
  • 2018年時点において、国内では幅広く普及しており、携帯端末の大半を占めるようになっている。
  • スマートフォンの普及によって、誰もが、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境が成立した。そのため、ネットショッピングの拡大やSNSやソーシャルゲームの流行、電子書籍の普及、ビジネスでの活用など社会生活全般への影響も大きくなっている。

4-9-2 タブレットPC

  • タブレットPC(タブレット端末)とは、板状のオールインワン・コンピューターを表す名称である。スレートPCと呼ばれることもある。
  • 2010年、AppleはモバイルOSであるiOSを搭載したiPadを発売した。スマートフォンのように小型画面ではなく10インチ前後の画面を持っていること、スマートフォンから電話機能を取り外したものとなっている。PCと違い起動が早いこと、通常のPCより低価格で通信まで可能な一体型であること、さらにタッチパネルを搭載し、直感的なUIを持つことから、幼児や高齢者にも簡単に利用できることが特長である。
  • Webブラウザーや動画などデジタルメディアプレーヤーとしての位置付け、ネットブックなどの小型PCに置き換わるもの、ゲーム端末、電子書籍(雑誌)リーダーなどの利用が進んでいる。ビジネス用途でも携帯可能な電子カタログやプレゼン端末、電子マニュアルなどの利用が急速に普及している。電子教科書や通信教育などの教育分野でも注目されており、さまざまな利用方法が模索されている。
  • 電子カタログやプレゼン端末、電子マニュアルなどを目的に企業内で一括導入されるケースも増えている。
  • 世界のPC出荷台数は2012年頃から減少傾向となっており、主な要因としてタブレットやスマートフォンとの競合の影響と指摘されることが多い。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-10 デジタルサイネージ

  • デジタルサイネージとは、ディスプレイやプロジェクターなどの装置を使用して表示や通信を行う電子看板システムの総称である。用途によって電子ポスターや電子POP、デジタル掲示板と呼ばれることもある。
  • 従来の看板やポスターとの最大の違いは、文字や静止画像だけでなく音声や動画を使用できること、また秒単位で表示内容を切り替えられることである。そのため、場所や時間に応じて、対象を絞った広告や告知、またリアルタイムの情報発信も可能であり、高い広告効果が期待できる。紙などの広告物やポスターと違い、貼り替えなどのコストや手間も発生しないというメリットもある。
  • ビルの壁面やショッピングセンター、駅、空港など、さまざまな場所に設置され活用されている。また、JR東日本のトレインチャンネルのような電車内広告ディスプレイとしての使用例もある。列車の運行情報を表示する画面と広告画面を並べ、認知度を高めている。時間帯に応じて広告内容を変更することや特定の駅に関する情報を発信することが可能であり、電車内広告はデジタルサイネージの適性が高いと言える。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-11 デジタルメディア環境とビジネスモデル

デジタル技術とネットワークを組み合わせて、顧客に新たな利便性を提供する動きが活発化している。小ロット多品種化が急速に進む中、営業効率を上げるための手法としても有効である。例えば、Webを活用した入稿、プリフライト、画面校正、修正前後のデータ比較、などの機能を備えたWeb校正システムが普及しつつある。こうしたツールを利用しつつ、独自のサービスやビジネスモデルが生まれてきている。

4-11-1 Web to Print

  • Web to Printとは、Webブラウザーからデータエントリーや印刷指示を行い、印刷物を制作・納入するシステムや仕組み、およびビジネスの総称である。Web to Print を活用したさまざまなビジネスは世界各国で成長しているほか、国内でも急増している。
  • 代表的なモデルとして次のようなものがある。
    1) 印刷発注者がWebブラウザーからデータ入稿と印刷発注を行い、印刷物を制作するという形式のもの。
    印刷通販やデジタル印刷ビジネスの基盤として普及している。
    名刺や製造マニュアルなどのリピート発注において、発注側、受注側双方で大きな効率化が実現できる。
    2) 印刷発注者が、あらかじめ用意されたデザインテンプレートの中から気に入ったものを選択し、テキストや画像など自分の情報をオンラインで編集し、オーダーするというもの。はがき・年賀状、フォトアルバム、ブログ出版など対象はさまざまである。自動組版の機能を提供するサービスもある。

  • 印刷書籍と電子書籍を同時に刊行するサイマル出版が求められる中、コンテンツの一元化とワンソース・マルチユースを実現するのがクラウド型の出版支援サービスである。Webブラウザー環境で原稿入力・編集、プレビュー確認が可能であり、アプリケーションやOS環境に依存しないという利点がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-12 情報システムとセキュリティー

情報セキュリティー対策の必要性

  • 現代では、企業や組織の運営に情報システムやインターネットは欠かせないものとなっている。そのため、情報セキュリティーに対するリスクマネジメントは重要な経営課題となっている。
  • ウイルス感染や社員の不正行為による情報漏洩、個人情報の流出、Webサイト(Webページ)の改ざんなどの防止、万一の場合の対応策などが重要になっている。
  • ネットワーク環境でのデータの流出対策としては、流出させない技術、データの暗号化、情報の流れを制御する、ユーザー権限の設定などが考えられる。

マルウェア

  • マルウェア(Malware)とは、不正かつ有害な動作を行う意図で作成された悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称である。
  • 主なマルウェアには、他のプログラムに寄生して有害な作用を与えるウイルス、独立のファイルで有害な作用を与えるワーム、侵入先のコンピューターで秘密裏に攻撃を行うトロイの木馬、スパイウェアなどがある。
  • 現在では、コンピューターウイルスをマルウェアの総称として使用することもある。
  • 会員制サイトなどのメールを装い、ID・パスワード・個人情報などを不正に入手する手口をフィッシング詐欺と言う。
  • ランサムウエアとは、ウイルス等で感染したパソコンをロックしたり、ファイルを暗号化して使用不能にしたのち、元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求する不正プログラムである。

PC向けセキュリティー対策ソフト

  • PC向けセキュリティー対策ソフトには、ウイルス対策(アンチウイルス)、ファイアウォール、個人情報保護、迷惑メール対策、有害サイト規制などの機能が含まれている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[情報システム]4-13 個人情報保護法

  • 個人情報保護法は、個人情報の有用性を配慮しつつ、個人の権利、利益を保護することを目的としている。
  • 個人情報保護法の対象となる個人情報とは、下位から個人情報(氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの)、個人データ(個人情報データベース等を構成する個人情報)、保有個人データ(個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データ)の3つに分類され、上位にいくに従ってそれぞれ個人情報取扱事業者の義務が追加されていく。
  • 印刷会社では、クライアントから名簿を受注するなどして、個人データを預かる場合も多いので、個人情報の取り扱いに関するマニュアルを作り、個人情報が外部に漏れないように厳重な管理と従業員教育をしておかなければならない。また、苦情や問題が発生した場合の窓口と責任者を明確にしておく必要がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[コミュニケーション]5-1 情報デザイン

人と人とのコミュニケーションでは、情報をわかりやすくデザインし伝えることが重要である。情報をあるコンテクストの中に置くことにより、価値のあるかたちへと可視化し再構築することが情報デザインである。
情報デザインプロセスには、以下の6段階がある。

デザイン計画

デザインの目的を明確にし、そのプロセスと体制、スケジュールなどについて検討する。デザインの質と実施に関する全体的なディレクションが求められる。

デザイン情報の収集と整理・分析

ユーザー、対象物、ビジネス環境等の情報を収集し、各種集計・分析手法を用いて情報を整理するとともに、デザインにあたって何にフォーカスすべきかを決める。

ペルソナ・シナリオと目標の設定

デザインの目的やコンセプトを明確にするために、調査で示された典型的なターゲットユーザーであるペルソナを設定する。また、その生活行動や利用パターン、思考、感情等をシミュレーションしストーリー化するシナリオを設定する。これにより、異なる立場の関係者間でイメージやビジョンを共有するとともに、効率的で精度の高い検討を進めることができる。目標の設定にあたっては、各種発想法とともに論理的に課題解決策を導き出す。

コンセプトの検討と視覚化

調査により明らかとなったユーザーニーズの構造を元に、ニーズを満たすためのデザインはどのようにあるべきかを検討し、視覚化する。構造の明確化(フレーミング)からニーズを満たすためのリフレーミングを行う。

詳細デザイン仕様

実装可能な詳細デザイン仕様を策定する。技術的な実現性を含めて検討する必要がある。

デザイン評価とフィードバック

実用化したデザインがどのように市場に受け入れられているのかをユーザー調査等で明らかにし、その評価とともに今後の対応への提案に結び付ける。

印刷物をはじめとしたメディア制作業務では、「コンセプトの検討と視覚化」および「詳細デザイン仕様」にあたるプロセスが主な業務領域となる。

5-1-1 情報の構造

1つの要素(単体)では価値は低いが、関連するものを1つにまとめたり、まとまった情報の関連性を見出したりすることで、新たな価値を生むことができる。また、既にまとめられた情報を新たな視点で再構築することで、当初とは異なる価値を生むこともある。
情報の構造化とは、複雑な事象を体系的に捉えることで理解可能なかたちに再構築することをいう。

情報の組織化

  • 情報の組織化とは、何らかの軸や基準に沿って情報を分けたりまとめたりすることであり、情報の塊としての働き・意味を見出すように再構築することにつながる。
  • 米国の建築家リチャード・ソール・ワーマン(Wurman, Richard Saul)がLATCH(5つの帽子掛け)という情報の組織化を提唱した。
  • LATCHは次の5つである。
    ― Location(位置):地図やエリア等でまとめる。
    ― Alphabet(アルファベット):順番や順序等でまとめる。
    ― Time(時間):時系列や時間軸等でまとめる。
    ― Category(分野):科目や範囲、関連等でまとめる。
    ― Hierarchy(階層・連続量):大小、重要度等でまとめる。

情報構造の種類

  • 情報の一要素は他の要素と何らかの関係性を持たせることができる。
  • この関係性は7つの種類に分けることができる。
    ― 線形構造 順序があり直線的な流れを表す。
    ― 階層構造 カテゴリ等の上下の関係を表す。
    ― 並列構造 時間軸や空間軸等において別々の情報が並行に並ぶ関係を表す。
    ― 行列構造 縦横2方向の直線的な情報を表す。
    ― 放射状構造 情報同士がさまざまな関係を表す。
    ― 重ね合わせ構造 情報同士を重ね合わせる関係を表す。
    ― 拡大構造 元の情報から一部を拡大して詳細な情報を表す。

5-1-2 エディトリアルデザイン

情報やメッセージを他者に伝えるには、視覚に訴えることが有効である。情報をより正確かつ効果的に伝えるために、さまざまな素材や手法を駆使して紙面をはじめとしたメディア上で情報の視覚化を図ることがエディトリアルデザインである。

レイアウトデザイン

  • レイアウトデザインの役目は、文字や図版など要素の配置、組み合わせによってある印象を演出することである。
  • レイアウトデザインは、誰に向けてどのような情報を伝えるためにどのように視線を誘導するかという意図をベースに行い、偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。
【代表的レイアウト手法】
  • シンメトリー:左右対称な構図はバランスのとれた安定感のある印象を与える。
  • アシンメトリー:非対称の構図をあえて採用することにより、斬新な印象になる。
  • ムーブマン:静止している平面の中に動きを感じさせる表現のことであり、方向性が備わっている要素を用いたり、遠近や時間経過をイメージさせる配置をしたりすることで効果を演出する。
  • 整列:複数の要素をある基準線を設けて揃えて配置することにより、視線を誘導し情報を認識しやすくするとともに、統一感・安心感を与える。
  • バランス:要素の大きさ、配置、色などにより、紙面上の均衡を保つ。
  • リズム:要素の連続・繰り返しにより軽やかで心地よいテンポを感じさせる。
  • 破調:一定のリズムやバランスがとれている状態の一部をあえて破壊する、またはアクセントをつけることにより、メリハリや深みを演出し、視線を惹きつける。
  • 量感:色や写真、字形や書体などの複合的要素により、体積や容積、重さから実在感、立体感などを感じさせる。
  • 黄金比:約1対1.618の比率で描かれた長方形は、そこから正方形を除いても常に同じ縦横比となる。この比率は最も安定した形状を作るとされる。
  • ルート比率・白銀比:辺の長さが1対√2の比率の長方形は、長辺を半分に分割しても常に同じ縦横比になる。A判、B判の用紙はルート比率になっている。
  • ホワイトスペース:デザイン的必然性を持って設けられる紙面上の何もコンテンツの置かれていない部分をいう。
  • ジャンプ率:紙面を構成する要素の大小差のことをいい、メリハリや訴求効果、平易で落ち着いた印象などをコントロールする。
  • 配色:目的に合わせて色を配置することであり、紙面デザインにおいては、ターゲットと内容を理解し、色のもつ心理的効果なども踏まえて効果的に用いる。色合いを示す「色相」、鮮やかさを表す「彩度」、明るさを表す「明度」の三属性を人間の感覚で等間隔に分割し表現したマンセル表色系などを用いて調整を検討する。
  • 視線誘導:情報を効果的に伝えるためには、読み手の「目の流れ」を意識する。目の流れの原則は、横組みの場合は左上から右下へ、縦組みの場合は右上から左下へという流れが大原則となる。
  • アイキャッチ:誘目性の高い素材により読み手に興味を持たせる。またどの素材から視線を誘導したいか、情報の優先順位をつける役割として用いる場合もある。

グリッドレイアウト

  • 活版印刷時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナーが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。
  • グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なったりしていても複数の紙面を同じように見せることができる。
  • 同じ考えのグリッドをベースにすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、例えば1つの会社の「コーポレートアイデンティティー」といった様式や意匠を維持させることができる。
  • グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に一部を強調することで読者の理解の一助となる。

5-1-3 インフォグラフィックス

  • インフォグラフィックスとは、複雑な内容や物事の仕組みなどを把握整理し、見る人の立場に立って視覚的な表現でわかりやすく伝えることである。
  • ある事象を読み解き、その理解のプロセスをビジュアルで示す、「理解のデザイン」ともいわれる。代表的な例としては、ダイアグラム、チャート、グラフ、地図、ピクトグラムなどがある。
  • 新聞や雑誌などのニュースメディアにおいて、これらを図解説明する必要性から発生した視覚表現手法であり、現在では、ユーザー視点でのGUI設計などプロダクトデザインに関する分野、バリアフリーなどの場のデザイン、サインディスプレイなどを通して、わかりやすさ、使いやすさを追求する手法の一つとしても活用されている。また、ネットワークによる情報量が増大する時代において、ビッグデータを意味のある情報として読み解き、表れる事象を視覚的に表現するデータビジュアライゼーションなどにも応用の幅を拡げている。

5-1-4 ユニバーサルデザイン

  • ユニバーサルデザインとは、すべての人のためのデザインを意味し、国籍や年齢、障害・能力の如何にかかわらず利用できるようなデザインを目指すものである。
  • ユニバーサルデザインは、(1)公平性(2)自由度(3)単純性(4)わかりやすさ(5)安全性(6)省体力(7)スペースの確保、などの考え方が基本となっている。
  • ユニバーサルデザインで特に重要なのは、視認性や判読性、デザイン性、可読性である。
  • 年齢による視覚感度の低下や色弱者に配慮したカラーユニバーサルデザイン、言語に依存せずに情報や注意を示すピクトグラム(「絵文字」「絵単語」)などの視覚記号、読みやすさやシンプルさを考慮したUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)の使用なども有用である。

5-1-5 メディア特性

  • コミュニケーションは、メディアの特性を捉えてその特性に沿った情報発信をすることにより効果を増す。多様化する各メディアの特性を捉えた上で、対象や状況に応じたメディアの選定とコンテンツ展開を計画するコミュニケーションデザインの観点が不可欠となる。

クロスメディア

  • クロスメディアとは、ある情報について、文字や音、映像などのさまざまな素材と、印刷やインターネットなど、複数のメディアを用いて効果的な伝達を行う手法である。インターネットとそれに対応したモバイル端末が普及するに従い、複数のメディアを横断的に使用する手法が一般化している。

紙メディア

  • IT技術の進歩に伴って情報伝達の手段が多様化しているが、紙メディア(印刷物)には、さまざまな利点があり、重要な媒体として位置づけられる。
  • 紙メディアは、サイズをさまざまに変えることができるのでB全ポスターからチラシやペットボトルなどに貼る小さいシールまで幅広い用途に対応できる。形状も多様に変えることが可能で、多角形、円、不定形、折ることで立体的にすることもできる。また、使われる場ごとで要求される大きさに応じて折る、丸める、などが可能で、携帯性に優れている。
  • 紙メディアは、インタフェースに関しては、使うために特別な道具を必要とせず、子供から大人まで、いつでもどこでも利用できるメディアである。
  • 紙メディアは、文字や写真、イラストはもとより、他の方法でも情報伝達、配信ができる。例えばJANコードに代表される一次元バーコードを印字すれば、商品管理機能の一端を担わせることもできる。
  • 携帯電話やスマートフォンなどモバイルのリーダーからも読み取りが可能になったことで、紙メディアは情報収集のツールとしても考えることができる。二次元コードを印字すれば、インターネット経由でサーバー上のコンテンツや各種の仕掛けにアクセスさせることができる。
  • 個別ニーズの把握・分析が要求されている現在、商品ごとや個人ごとの紐づけを紙メディアへ付加することで、その分析端末とも考えられる。このように、紙メディアは先端技術との連係も可能である。マスメディアだけでなく新しい情報媒体が現れている中、「紙メディア」がネットワークの中心になることも可能である。
  • 新聞折り込みのスーパーマーケットのチラシは、読み手の第一印象や視線を測って設計され、多くの情報が載っている。このようなものをWeb上へ置いた場合、掲載できる情報量は半無限であるが、読み手が一瞥できる範囲は比較的小さい。折り込みのチラシはテレビ、ラジオのマス広告とは異なり、対象地域を絞り込んで重点的に宣伝できる。またチラシからWebページに誘導するためにWebページのアドレスを印刷して紙メディアと電子メディアのそれぞれの利点を活かそうとする方法もある。
  • 環境問題が叫ばれる現在では紙の素材も多様になってきている。CO2削減に向けた動きとともにCSRと密接に関わった環境配慮の姿勢からエコに通じる紙の選択が増えている。代表的なエコ用紙には、リサイクル用紙(再生紙)があるが、最近は環境対応用紙としてケナフやバガスなどの非木材系の紙を使うことも多くなってきた。
  • カーボン・オフセットとは、企業活動や商品製造等によって排出してしまう温室効果ガス排出量(二酸化炭素)のうち、どうしても削減できない量の全部または一部を、他の場所での排出削減・吸収量で埋め合わせする仕組みである。発生してしまった二酸化炭素の量を何らかの方法で相殺し排出を実質ゼロに近づけようという発想である。

デジタルメディア

  • デジタルメディアの特長として、1)双方向性、2)速報性、リアルタイム性、3)検索性の高さ、4)再利用、再編集の容易さ、5)情報量の制約が少ない(大容量のデータが扱える)、6)配信コストが安い、などが挙げられる。
  • SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は、インターネット上で提供される、利用者を限定したコミュニティー型の情報サービスで、代表的なものにFacebookやmixi、Twitterなどがある。こうしたサービスの総称をソーシャルメディアという。マスメディアに匹敵するほどのユーザー数を持つようになり、広告・販促活動やECへの影響力が増している。
  • 無料で誰でも始められるという手軽さもあり、商品の情報をFacebookで写真付きで紹介したり、セール情報をTwitterでツイートして誘客する店舗も多い。
  • O2O(オー・ツー・オー)とは「Online to Offline」を略した言葉である。オンラインからオフラインへ、とはすなわちインターネット上での集客を実店舗へ誘導することを指している。このキーワードを耳にする機会が近年増えた背景には、スマートフォンの普及とそこで動作するアプリ、ソーシャルメディアを組み合わせやすくなったことがある。
  • オムニチャネルのオムニ(OMNI-)は「すべて」とか「広く、あまねく」という意味があり、インターネットや実店舗など、あらゆる顧客との接点を連係させて拡販するマーケティング戦略を指している。具体的には、小売業などで実店舗とテレビショッピング、テレビCM、カタログ通販、Eコマースや商品の情報ページ、SNSなど、あらゆる顧客接点を連係させて販売につなげようとする考え方や施策をいう。
  • 顧客が商品を認知して、購入を検討し、実際に購入するまでのプロセスで、どのチャネルを経由して販売店側にアプローチしても、不利益を感じることなく買い物ができる環境を提供するというのが基本コンセプトである。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[コミュニケーション]5-2 マーケティング活動と印刷メディア

マーケティングとは、本来は顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、プロセスを指す言葉である。日本マーケティング協会は「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合活動である。」と定義している。
このような幅広いマーケティング活動の中でも、特に広告、PR・パブリシティ、SP(セールスプロモーション)、パッケージング、ダイレクトマーケティングなどの分野においては、印刷メディアとの関連が深いことは明らかである。また、コーポレートコミュニケーションやブランド戦略といった側面でも、印刷メディアを通じたコミュニケーション活動が重要な位置を占めている。公的機関や教育機関などの非営利組織におけるソーシャルマーケティングにおいても同様である。
したがって、現代の印刷ビジネスは、顧客の目的であるマーケティング活動を理解した上で取り組むことが必要となる。つまり、顧客が何のために印刷物を製作するのかを正しく理解することなしに、顧客の満足を得ることは不可能だと言える。

5-2-1 マーケティングミックス

  • マーケティングミックスとは、マーケティング戦略においてマーケティング・ツールを組み合わせて、望ましい反応を市場から引き出すことである。代表的なものとして、製品(Product)、価格(Price)、販促(Promotion)、流通(Place)からなる4P理論がある。また、買い手側の視点から、顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客とのコミュニケーション(Communication)、顧客利便性(Convenience)を4C理論とする考え方もある。

5-2-2 デジタルマーケティングの進展

インターネットマーケティング

  • インターネットマーケティングとは、インターネット上での商品やサービスのマーケティングである。Webマーケティング、オンラインマーケティング、ネットマーケティングと呼ばれることもある。狭義にはインターネットや電子メールなどを利用したマーケティングを指すが、広義にはデジタル化された顧客データ管理システムや電子的な顧客関係管理システムを含む。

デジタルマーケティング

  • デジタルマーケティングとは、顧客にリーチし、顧客をリードし、顧客に購入を促し、顧客を保持するために、デジタルテクノロジーを用いた測定可能でインタラクティブな手法である。インターネットマーケティング、またはWebマーケティングに留まらず、オフラインを含むあらゆるチャネルのマーケティングを総括的に管理するものである。

マーケティングオートメーション

  • マーケティングオートメーションは、メールやソーシャルメディア、Webなどを活用したマーケティング活動を効率化し、効果的にすることであり、またはそれを目的としたソフトウェアである。一般に、メール配信や登録フォーム、キャンペーン管理、リード(見込客)管理・リードナーチャリング、マーケティング分析、Web解析、リードの行動分析などの機能を実装し、それらのワークフローを自動化することができる。また、これらの一連の活動の1つとして、重要顧客に対してDMやパーソナライズされた紙メディアを制作・送付することもある。

5-2-3 マーケティングとデジタル印刷の連係

パーソナライズDMの進化

  • オンラインショッピングサイトなどでは、会員(ユーザー)の購買履歴やアクセス状況に応じて、個別に内容を編集するパーソナライズDM(カタログ)を送付する動きが増えている。
  • パーソナライズDMは、オンラインサイトで多用されているレコメンド機能を紙メディアに応用したものとも言える。
  • パーソナライズDMは、CRMシステムによる顧客管理、マーケティングオートメーション、パーソナライズDMの自動編集システム、デジタル印刷システムの連係によって実現している。
  • メールなどのデジタル施策だけではなく、紙メディアを併用することによって、より効果的なダイレクトマーケティングを実現した例だと言える。