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【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-3 グラフィックデザイン

  • グラフィックデザインとは、印刷物制作における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。
  • グラフィックデザインは、1つのページの紙面だけでなく、前後のページとのつながりを含めた表現を扱うものであり、Webページなど紙メディア以外のコンテンツ構成やデザインにもつながる基本技能である。

1-3-1 造本設計

  • 印刷物の仕様全般を計画し設計することを造本設計という。印刷物の意図や目的に基づき、印刷物の判型、色数、製本形式、つきものなどの仕様を設計する。
  • 印刷物の形状仕様とともに、版面やノンブル、柱、頭注、脚注など余白部分に組み込まれる要素とそのスタイルも決める。
  • 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。

1-3-2 紙面設計

  • 紙面設計とは、造本設計を基に各紙面(頁)を構成する要素をどのように配置(レイアウト)するかを定めることである。
  • 造本コンセプトに沿ったレイアウトデザインを決め、各ページが統一されたイメージを与えるように各要素のレイアウトフォーマットを定める。

版面

  • 読み手は視覚表現物を見るときに、同時にその周囲も目にしている。よってより読みやすく美しく見せるには、対象物とその周囲の比率についても考慮すべきである。紙面に占める版面の比率を版面率といい、版面率は読みやすさや読み手に与える印象に影響を及ぼす。
  • 小口の余白は製本のズレが目立ちやすいため、あまり小さくできないことに注意する。
  • 書籍の版面とは、1つのページの中で文字や図版などの印刷面が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、仕上がり判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
  • マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。

段組み

  • 複数段を設定して本文を分割することで、書体や文字サイズ、行間や行長、段間などの相関関係により紙面のイメージや読みやすさに効果をもたらす。

文字組み

  • 版面の内側で基本組体裁に必要な各種要素の値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
  • 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
  • 行と行の間は一般に文字サイズの25%〜100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。視線の移動を容易にするために、行長に従い相対的に行間を大きくとる。
  • 情報を伝えるための要素として可読性などに配慮するだけでなく、ビジュアルの要素として書体が持つ表現力による紙面イメージ作りにも配慮する。レイアウトフォーマットを作成するにあたっては、文字組の視覚効果や体裁を踏まえて、情報内容および表現力を考慮した一貫性のある文字スタイル設定が重要となる。

写真

  • 配置のしかたにより紙面の印象や表現力に影響するので、目的に応じた効果的な配置を考慮する。
  • 紙面構成によっては、写真の構図や印象がデザインを左右する場合もある。写真素材の扱い方に加えて基本的な撮影の知識まで把握し、配置したい写真の撮影絵柄について指示が出せるとより効果的なデザインが可能となる。

裁ち落とし

  • 写真を紙面の端いっぱいに配置することにより、裁ち落とされた外側の見えない部分までイメージを広げさせる効果がある。裁ち落とし写真を使用する際には、紙面の外側の塗り足し部分まで写真をのばしておく必要がある。

全面写真

  • 天地左右すべてを裁ち落とし、紙面全体に1枚の写真を配置することにより、大きなインパクトを与える効果がある。

図表

  • 情報を図表化することにより、時間の経過や数値をビジュアル化して直感的に伝えることができる。さらに、分類・整理して検索性を高めたり概念やつながりをよりわかりやすく表現することもできる。このような効果的な表現に加えて、紙面にアクセントをつける役割も果たす。
  • 製品マニュアルや技術情報に関するドキュメントにおいて、図版を用いて使い方や修理情報などを示すのがテクニカルイラストレーションである。技術的知識を持たない受け手にも伝わるように用いることが多い。立体図で示す場合、製図法や投影理論、作図技法等の知識が必要となる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-4 校正

1-4-1 原稿整理

  • 原稿表記の様式は、著者の思想および感情の表現の一部であり、また一冊の本の中での表記形式の不統一は、読者が内容を理解するときに混乱を起こす。よって原稿整理が必要となる。
  • 原稿整理においては、第一に著者の意向を尊重して執筆方針を読み取った上で作業を進め、その中で未整理の部分、不統一の部分を正す。表記については、あらかじめ著者との間の「執筆要項」および出版社における原稿表記ルールを明文化したハウスルールを作成するなどし、表記形式や組版原則、書籍体裁を決めておく。

1-4-2 支援ツール

  • 情報がデジタル化され、情報発信媒体が多様化する中、精度やスピード、コスト面で有効とされている日本語変換のための専用辞書や文章校正支援ツール、また新聞社や出版社独自の表記ルールや用字用語規則データベースから入力時点での表記のゆれや用字用語の統一を可能とするツールなどが活用されている。

1-4-3 表記統一

  • 下記の項目について注意し、一定の基準を設けることが望ましい。
    ― 文体
    ― 漢字の使用範囲
    ― 漢字の字体
    ― 仮名づかい
    ― 数字の表記
    ― 単位の表記
    ― 記号の統一
    ― 句読点の使い方
    ― 学術用語、専門用語の表記
    ― 固有名詞と普通名詞の表記
    ― 外来語の表記
    ― 欧文表記

  • 表記統一の基準については、社会一般で慣用として使われている常識・ルール、内閣告示や文化審議会国語分科会報告、新聞社・出版社で独自に定めているルール(ハウスルール)などが参考に挙げられる。

1-4-4 校正記号

  • 組版されたページ(ゲラ)に対し、原稿整理の基準に照らし合わせてチェックをし、修正作業者に正しく簡潔に修正の指示が伝わるよう、JIS Z 8208:2007として定められている校正記号にしたがって修正の指示をする。

    1-4-5 校正と校閲

    • 文字の誤りや用語・表記の不統一などを正す校正に対し、書かれた内容が事実と合っているかを確認する作業を校閲という。

    1-4-6 色校正

    • 顧客に提出する色校正は、顧客にカラー画像の品質のチェックをしてもらい、本刷りの了承を得るためのものである。校正結果は、製版工程への修正の作業指示となり、印刷工程への本刷りの作業指示となる。

    手法

    • 色校正の方法には、大別すると印刷機を使うインキ校正とデジタルプルーフがある。
    • インキ校正は、印刷本紙と印刷用インキを使うことで、最終印刷物と同等の品質を得ることも可能である。しかし、版を作成して印刷する方法のため、コスト面、納期面の制約が大きい。
    • インキ校正には、平台校正機と呼ばれる校正専用印刷機を使用する場合と本機を使用する場合がある。平台校正機は印刷条件が安定しないことなどから、昨今ではめったに使用されなくなっている。
    • デジタルプルーフの場合、カラーマネジメントが組み込まれていることが一般的であり、色再現の精度も高くなっている。
  • 【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-5 コンテンツと法令

    各種メディア制作にあたり、関連する法令について把握しておく必要性を理解する。

    1-5-1 知的財産権

    • 知的財産権は大きく「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」の2つに分けられる。「知的創造物の権利」は主に著作権、営業秘密、特許権、実用新案権、意匠権があり、「営業標識の権利」は商標権、商号、商品表示・形態等がある。これらの権利には、対応するそれぞれの法律があり、印刷物と密接なのは「著作権」や「商標権」である。
    • 画像、イラストを含むDTP制作物はデジタル化され、簡単にコピーできる状態にあるため、デザイン会社、印刷会社とも著作権がどこに帰属しているのかを明確にして、トラブルを回避できるようにしておく必要がある。
    • 商標は商法で定める商号とは異なり、商品やサービスにつけられる。商標は特許庁に届け出て認可されることで、商標権者はその商標を独占的に使用することができる。
    • 著作権の発生する著作物を扱うメディア制作において、使用コンテンツが著作権に配慮すべきものである場合は適切な対応が必要となる。

    インターネットにおける著作権

    • インターネットにおける「公衆送信権」は、著作権法第23条の1項で、「1. 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有する。 2. 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する」と定められている。
    • 「送信可能化」とは、インターネットサーバーにデータを置いて、アクセスがあれば閲覧できる状態にあることを指す。
    • 「権利を専有する」とは、著作者の承諾なしに他人が勝手に人の著作物をインターネット上で公開してはならないことを指す。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-6 DTPの概要

    1-6-1 DTPの変遷

    • DTP登場以前のプリプレス工程においてはリライト原稿、レイアウト用紙、版下、フィルム、刷版といった中間生成物があった。これに対し1985年、DTPに必要な3つの要素Macintosh(コンピューター)、LaserWriter(プリンター)、PageMaker(レイアウトソフト)が登場した。これによりデザイナーや編集者、制作担当者など、印刷物作りに関わる人の間で、文書データが場所を問わず扱えるようになった。
    • DTPはデザイン、写植・版下、製版という3つの工程を結びつけた。AdobeのIllustratorというソフトウェアによりカラー処理が可能となり、1990年頃からカラー印刷物のDTP化が盛んになった。1992年頃からは生産性においても製版の専用システムに太刀打ちできるようになった。今日では、DTPは世界の印刷物制作の標準になっている。

    1-6-2 DTPの3要素

    • DTPにおける第1の要素は、WYSIWYG(What You See Is What You Get:見たままが得られる)である。当初からMacintoshは、ディスプレイ上で紙面と同様のイメージを表現することができるWYSIWYG機能を備えていた。
    • 第2の要素は、ページ記述言語であるPDL(Page Description Language)の標準化である。PostScriptは、1982年Adobeにより開発されたPDLである。AppleのLaserWriter NTXは、PostScript言語で記述されたデータを解析するインタープリターを備えた最初のプリンターであった。PostScriptは言語仕様が公開されており、対応したインタープリターを搭載する出力装置であれば、異なる機種であっても同一の紙面データからは同等の出力を可能にする。
    • 第3の要素は、PC上で文字や画像、図表が扱えるページレイアウトソフトである。PageMakerは、レイアウト(組版)機能によって文字や画像を画面上で統合してレイアウトし、PostScriptデータとしてプリンターに送信することを可能にしたソフトウェアである。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-7 DTP環境

    1-7-1 ハードウェア

    • DTPで最低限必要なハードウェアは、入力機器および編集機器、出力機器である。入力機器としてはキーボード、マウス、カメラ、スキャナー、編集機器としてはPC、出力機器としてはディスプレイやプリンターが挙げられる。作業環境により、さまざまな組み合わせが想定される。

    1-7-2 ソフトウェア

    • コンピューターでさまざまなアプリケーションを動作させるには、AppleのmacOSやMicrosoftのWindowsなど、OSが必要になる。
    • さらに、印刷物の素材である文字、写真や図表などの画像を処理するソフトウェアや、素材のレイアウトを行うソフトウェアが必要である。
    • 文字については、テキストデータ作成が基本となるため、OSに付属しているテキストエディットやメモ帳のほか、さまざまなテキストエディターやワードプロセッサーなどのソフトウェアが利用される。
    • 代表的なソフトウェアとして、画像処理(ビットマップデータの処理)ではAdobeのPhotoshop、イラストや図表といったベクターデータの作成や、端物のレイアウトでは、AdobeのIllustrator、頁物のレイアウトでは、AdobeのInDesignや、QuarkのQuarkXPressなどが挙げられる。

    1-7-3 システム構成

    DTPシステム

    • DTPは、オープンなシステムとして発展した。さまざまなハードウェアやソフトウェアを利用するため、操作方法やデータ交換方法、業務効率、品質などに配慮し、システム設計を行うことで、個々のハードウェアやソフトウェアが持つ機能を有効に活用できる。
    • DTPシステムでは、ハードウェアやソフトウェアの選定、周辺機器とのインタフェースやネットワークへの接続、データベースの構築などが行われることがある。さらに、他のシステムとの連係が必要になる場合もある。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-8 DTP環境と契約

    DTP環境の構築にあたり必要となる各種契約について理解する。

    1-8-1 ソフトウェア使用許諾契約

    • ソフトウェアが商品として流通するときには、「ソフトウェアの複製物の売買によるもの」「ソフトウェアの使用許諾契約によるもの」「ソフトウェアのリース契約によるもの」という3つの形態がある。
    • DTPソフトウェアを購入する場合は、ほとんどが「ソフトウェアの使用許諾契約によるもの」にあたる。一般にソフトウェアを購入するというが、実際にはインストール時に画面表示されるソフトウェア使用許諾契約書に同意して、初めて契約が成立し使用できるようになる。
    • 使用許諾契約はライセンス契約の一種であるが、売買、請負、賃貸借などの契約と根本的に異なる。バックアップコピーについても契約内容によって決まる。

    1-8-2 サブスクリプション契約

    • サブスクリプション契約とは、ソフトウェアのライセンス契約の一種で、売買ではなく特定期間内の使用権を販売する方式のことである。
    • 契約期間内におけるソフトウェアのアップデートなどは、追加料金を支払うことなく受けることができる場合が多い。契約期間を過ぎると使用権がなくなるため、再度契約を結ぶ必要がある。
    • DTP関連では、AdobeのCreative Cloud、多くの日本語フォント製品、MicrosoftのOffice 365などがあり、主流となりつつある。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-9 文字と文字コード

    文字データを異なるプラットフォームで出力すると、文字化けではないが文字の形状が一致しない場合がある。「書体」「フォント」「字種」「字体」「字形(グリフ)」の区別など、文字の同異判定の基準を理解する。

    1-9-1 書体

    • 書体とは、統一的な理念に基づいて制作された1組の文字、または記号のデザインであり、タイプフェース(typeface)と同義である。ある書体における文字の太さ、字幅、傾きなどのバリエーションの集合を書体ファミリーという。
    • 欧文書体は、中世後期のグーテンベルクの活字から、その後ローマ時代に作られたローマン体を活字に置き換えた書体を経て、今に至っている。印刷技術や出版の発展に伴って、また印刷物の用途に合わせて可読性、美術性、新規性などを工夫し、多くの書体が開発されている。
    • 和文書体は、中国の伝統的「書」に由来する筆書系、伝統的活字書体、庶民文化に由来する江戸文字、写植以降非常に増えたディスプレイ書体、日本独特の仮名書体など、多様な起源を持つ。

    1-9-2 字体

    • 文字は、何らかの意味を表すものであり、その意味によって字種に分類される。異なる字種は、原則としてそれぞれ異なる字体を有する。しかし、異なる字種が同一の字体を有する場合も稀にある。これらは同形異字と呼ばれ、視覚的には区別することができない。
    • 1つの字種に複数の字体が併存していることがある。それらの字体はそれぞれ異なる字源から成立している場合もあるし、同じ字源から発生しながらその表現が歴史的・地理的に変化していった場合もある。字義、字音が等しい同一の字種でありながら、互いに異なる字体を有する文字を異体字と呼ぶ。異体字のなかで、規範として選ばれている字体を正字体と呼ぶ。

    1-9-3 字形(グリフ)

    • 字形とは文字の具体的な形状であり、書体やデザインの違いなど文字の視覚的な差異はすべて字形の違いとして捉えられる。図形文字、グリフ(glyph)と呼ばれることもある。

    1-9-4 タイポグラフィー

    • タイポグラフィーは、古くは活版術のことであるが、広く印刷における文字組の視覚効果や体裁の総称として用いられている。
    • タイポグラフィーは、グラフィック素材としてテレビや映像メディアにも活きる技法である。欧米では、タイポグラフィーには書体の歴史的な発達や書体デザインの知識も含む。日本でも、縦/横組、和欧混植、かな混植など伝統的慣習的なスタイルが確立している。もともと正方形の漢字書体を縦にも横にも組むものとして日本のタイポグラフィーは発展した。

    1-9-5 符号化文字集合

    • コンピューターは、文字をコード(符号)化して、その値で識別している。文字コードとは、たとえば日本語のある文字の範囲(文字セットという)の文字の1つずつに識別番号を割り振ったものであり、その一式を符号化文字集合という。
    • 異なるコンピューターシステム間での文字データの交換を可能にするために、基本となる文字セットの文字コードは標準化が行われている。文字コード系が異なれば、コード化している範囲もコード番号も異なる。
    • 入力や編集の各段階で、文字データを受け渡しする場合は、どのような文字コードを使用して作成されているかを慎重に確認する。
    • 標準化された主な文字コードには、ASCIIコード、JISコード、Unicodeなどがある。
    • JIS X 0208は情報交換用の2バイト符号化文字集合を規定する日本工業規格で、6,879図形文字を含んでいる。1978年にJIS C 6226として制定され、1983年、1990年および1997年に改正された。
    • JIS X 0213は、JIS X 0208を拡張した規格でJIS X 0208の6,879字の図形文字の集合に4,354字が追加され、計11,233字の図形文字を規定している。JIS X 0208を包含し、第三・第四水準漢字などを加えた上位集合である。2000年に制定、2004年、2012年に改正された。

    フォント

    • フォント(font)は、本来「同じサイズ、同じ書体デザインの一揃いの活字」を指す言葉であったが、現在ではコンピューター画面に表示したり、紙面に印刷するために利用される字形データの一式を意味している。金属活字と区別して、デジタルフォントと呼ばれることもある。
    • 書体という言葉は、現在ではフォント(の使用ライセンス数)を数える単位としても用いられている。
    • フォントフォーマットの代表的なものにTrueTypeとOpenTypeがある。TrueTypeは、AppleとMicrosoftが共同で開発したフォントフォーマットで、画面表示やプリント出力を行う。その後、AdobeとMicrosoftが共同で開発したのがOpenTypeである。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-10 画像

    連続的に濃度が変化する画像や線画などの図版のデータ形式や扱い方などについて理解する。

    1-10-1 デジタル化

    • 連続的に濃度が変化する画像をデジタル化する場合、画像を一定の間隔で最小の単位(画素=pixel)に分割し、各画素に対する平均の濃度を求める。これをサンプリング(標本化)という。
    • 各画素あたりの濃度の情報は、本来連続的に変化しているものを、一定数の段階に分けて処理する。これを量子化という。10ビットなら1024段階、8ビットなら256段階で量子化が行われる。
    • dpiとはdot(s)per inchの略で、レーザープロッターなどラスターイメージをドット単位で出力する際の露光の密度を表す。
    • ppiとはpixel (pels)per inchの略で、スキャナーでアナログの画像をデジタル化する際の画素のサンプリング密度を表す。
    • lpiとはline(s)per inchの略で、アナログのfaxのようなラスター信号を扱う場合やスクリーン線数を表す。

    1-10-2 ビットマップデータ

    • ビットマップデータとは、ピクセルの集まりで構成されたデータのことで、ソフトウェアによりビットマップを生成し、そのビットイメージをディスプレイや出力装置に送り、画面表示や出力を行う。

    デジタルカメラ

    • 写真原稿の入稿はデジタルカメラ撮影によるデータ入稿が主流となっている。
    • デジタルカメラによる撮影では、事前に品質保証や要求品質にどのように応えるかなど、画像の要求仕様を整理しておくことが重要である。
    • デジタルカメラのデータ形式には、各メーカーの画像エンジンを経由して適切に補正・加工され、外部利用可能なフォーマットに書き出されたデータと、CCDやCMOSなどの撮像素子のデジタルデータを最小限の加工に留められたRAWデータがある。RAWデータはメーカーや機種ごとに異なっており、互換性はほとんどない。メーカーなどが提供する専用の読み込みソフトウェアなどを使って変換し、表示する必要がある。この変換処理は、「現像」と呼ばれている。

    スキャニングデータ

    • 写真原稿などをDTPで扱う場合、スキャニングしてデジタルデータ化する。
    • スキャナーで入力する原稿は大きく分けて透過原稿と反射原稿がある。透過原稿の多くはリバーサルフィルムなどであるが、反射原稿はカラーの印画紙をはじめ各種イラスト原画、印刷物、プリンター出力物など多岐にわたる。

    解像度

    • 画像システムがどれだけ詳細に画像を再生できるかを表すのが解像度である。解像度が高ければ、再生される画像は細密になる。
      デジタルシステムではピクセルの配置密度と同義に使われる。

    • デジタル画像は必要以上に精細にデータ化すると、作業効率が落ち、逆に出力に対して粗い設定になると、品質が著しく損なわれる。そのため一般に出力に必要な大きさや解像度から逆算してスキャニングする。カラー原稿をスキャニングする際に、仕上がりの画像で、解像度が300~350dpiあることが望まれる。

    画像フォーマット

    • 濃度変化のある原稿をデータ化するには、濃度レベルの段階数とその表現方法、記録する方向、画像の大きさその他の形式を決定しておく。
    • 画像データをファイルに書き出す場合には、画像データの形式とファイルフォーマットを選定する。
    • 図形と画像のフォーマットは、PCのようなプラットフォーム側が定めたPICTや、アプリケーションソフトが定めたTIFF、出力側が定めたPostScript / EPS、情報規格であるJPEG、そのほかそれぞれの分野での主流のものなどが混在している。

    レタッチ

    • 画像の調子や色調、ゴミやキズなど不要物の除去などを部分的に修正することをレタッチという。スキャナーで画像をデータ化するときに失われた情報やデジタルカメラで再現領域の狭い撮影モードで撮影して失われた領域外の情報は、後のレタッチでは回復できない。しかし、豊富に情報をもった画像データに対しては、色変更、シャープネス、ボケ、合成などの加工ができる。写真に対する基本的な調子や色調の修正と、絵柄ごとに常識的な色演出の方法があることを理解しておく。
    • よく見受けられる代表的な絵柄については、それらしい色や調子として認知されている記憶色(あるいはプリーズカラー)を意識してレタッチする。
      ― ガンマ補正:ガンマ曲線つまり入出力の関係を変化させて画像の濃淡を修正することにより、明るさ、調子、色のバランスなどを調整する。
      ― トーンカーブ:画像のどの濃度域に階調を豊富にもたせるか、どの濃度域を圧縮するかなどの調整をする。
      ― 濃度ヒストグラム:濃度域の最小から最大を軸として、サンプリングされた画素の数を棒グラフ上に示した濃度ヒストグラムを用い、画像タイプを把握し、レベル補正やハイライトポイント、シャドーポイントなどを調整する。
      ― フィルター処理:画像データを構成する個々の画素に、周辺の画素との間で演算を行って、画像にぼかしやシャープネスなどの特殊効果を与える。
      ― 合成:写真類や色面などを隣り合わせに配置するとき、境目がないようにぴったりくっつけてレイアウトすることを指す。

    1-10-3 ベクターデータ

    • ベクターデータとは、座標値と直線・曲線を定義する式から構成されるデータである。自由曲線の定義方法にはスプライン、ベジェなどがある。図形データのフォーマットには、WMF、EPS、DXF、SVGなどがある。

    スプライン曲線

    • スプライン曲線とは、指定した点をスプライン(自在定規の意味)関数を使って滑らかな曲線で結んで曲線を表現する。作図で用いられるものは、主に二次あるいは三次のスプライン曲線である。二次と三次は制御点を通らず、避けるようにして曲線を作り出すのを特徴とする。
    • ベジェ曲線ほど操作の自由度は高くないが、すべての点が曲線上に位置するため、ベジェ曲線よりはコンピューターの演算処理が簡単になる。

    ベジェ曲線

    • 三次ベジェ曲線では、始点と終点およびその間に2つの制御点を指定する。制御点は曲線の外側にあり、これを移動させることにより曲線を変化させられる。任意の自由曲線が制御点の移動で描け、また一度描かれた曲線の変更が容易であるのが特徴である。
    • PostScriptでは、文字と図形の基本を直線と三次ベジェ曲線で表している。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-11 レイアウト

    文字や図版などの各要素をレイアウトフォーマットに沿って配置し、最終出力の体裁に整える。また、出力に適したデータ処理を行う。

    1-11-1 テキストデータ

    • 目に見える文字以外はスペースや改行、タブコードだけを使って構成されたファイルをプレーンテキストという。
    • プレーンテキストは異なるコンピューター環境や、異なるアプリケーションでも文字コンテンツが変わらないので、文章原稿データの整理の段階や原稿データの保存に使われているが、実質的にシフトJIS相当の字種しか扱えないという問題がある。

    1-11-2 文字組版

    • 文章読解の妨げにならないように文字を配列する技術が組版である。DTPでは、紙面設計の自在さや使用フォントの使い分けなどにより多様な組み方ができるため、紙面に表情をつけることができる。
    • 文字組版の要素には、組み(縦組み・横組み)、文字サイズ、書体、字送り、字詰、行間があり、それに加えて禁則処理、約物処理などを考慮して行う。
    • 日本語組版の基本的アルゴリズムは、JIS X 4051:2004「日本語文書の組版方法」に規定されている。W3C(World Wide Web Consortium)は、2012年4月Requirements for Japanese Text Layout(日本語組版の要件)という技術ノートを英文、および日本語で発行した。JIS X 4051:2004の平易で実用的なガイドとして、世界的に参考にされている。

    欧文組版

    • 欧文文字は、文字によって高さや幅が異なる。高さはいくつかの基準線に揃えられているが、各文字の幅は異なる。そのため、一定の字間で組むだけで、プロポーショナルな組版ができる。
    • 欧文では、文字はベースラインに揃うように設計され、また、アセンダライン、キャピタル(キャップ)ライン、ミーンライン、ディセンダラインという基準線をもつ。
    • 欧文組版では、ジャスティフィケーションは、①単語と単語の間のスペースを1行中で調整する、②1つの単語の字間をベタ組みではなく少し空けて調節する、③ハイフネーション処理をする、の順序で行う。ハイフンの位置はどこでもよいわけでなく、各国語別に異なるので各国語の辞書を参照する。
    • 欧文組版形式のひとつに、ジャスティフィケーションを行わないラグ組みがあり、一般的に本文組みの場合は、左揃えまたは右揃えの形式がある。

    和欧混植

    • 和文ではフォントはセンターラインしか基準線がなく、一方欧文フォントはxハイトやディセンダが一定しないので、バランスのとれた書体選択に留意する必要がある。
    • 和文と欧文の間が接近しすぎるとき、また欧文のセット幅が異なるため行長に端数が生じる。

    1-11-3 ページレイアウト

    • ページレイアウトソフトウェアとは、文字データ・線画データ・画像データを1ページにレイアウトしてまとめるソフトウェアを指す。レイアウトだけでなく、カラーの指定や画像の入出力、印刷、分版出力などの機能まで備えているものが多い。
    • レイアウトデータと配置されたデータを個別に管理し入稿するとリンク切れや先祖返りなどのミスが生じることや、受け取る側も管理が煩雑になるため、PDFとしてすべてのコンテンツを1ファイル内に埋め込み、完全データとして入稿する形式が一般化している。
    • ページの基本デザインに従って、各ページを組み上げていくページネーションは、自動レイアウトをするバッチ方式と、画面に対して貼り付けの指示を個別にしていく対話方式がある。
    • あらかじめ一括した指示(スクリプト)を作成して所定の場所に文字や図版を自動的に割り付けるバッチ処理は、文章量の多いマニュアルなどの制作が効率的に行える。
    • DTPによるページネーションの主体は、オペレーターが画面を見ながら文字を流し込んで割り付けるWYSIWYGによる方法である。これはレイアウトの細部のコントロールが行いやすい。
    • 大量ページ処理に向いているのはバッチ処理であり、ビジュアル中心の端物制作や修正作業に向いているのはWYSIWYGである。

    1-11-4 透明

    透明の概念

    • IllustratorやInDesignではオブジェクトに透明の概念を持たせることができる。通常(デフォルト)の塗りつぶしのオブジェクトは不透明度100%であり、不透明度を0%にすると下のオブジェクトが完全に見えるようになる。オブジェクトごとに不透明度や下のオブジェクトとのブレンド方法(描画モード)を設定することができる。「ドロップシャドウ」「ぼかし」なども透明の機能を利用したものである。

    透明と出力の関係、分割・統合

    • PostScript-RIP、およびPDF/X-1には透明の概念がないため、IllustratorやInDesign上で設定した透明をそのままでは出力することができない。その場合は「透明効果の分割・統合」という方法で、透明オブジェクトを不透明化する必要がある。
    • Adobe PDF Print Engine(APPE)などのPDF-RIPでは、透明を含むPDF(PDF/X-4)をそのまま解釈し、出力することができる。

    1-11-5 出力用データ処理

    • 印刷データを生成する際には、トンボや塗り足し(ブリード)、ノセ(オーバープリント設定)やヌキ、また場合によってはトラッピング、カラーパッチ(カラーバー)を設定、または配置することがある。
    • 色の上に文字や別の図形を重ねるときには、画面とCMYK 出力の間で、ノセ(オーバープリント)やヌキの関係に食い違いがないことを確認しておく。
    • CTP出力の際に、RIP上でKを一律にオーバープリントに設定すると、制作者の意図しないところまでノセにしてしまう場合があるので注意する。
    • 品質管理用のカラーパッチなどの管理スケールや印刷製本用のトンボは、レイアウトソフトウェア、面付けソフトウェア上、RIP上などで付加することができる。
    • ダブルトーンや2色分解をする場合は、出力前工程で各版への分解・分版やトーンカーブ調整などを行う必要がある。

    ノセとヌキ

    • 写真や平網、ベタ刷り部分の上に、文字や線画などを刷り重ねることをノセという。写真や平網・ベタ刷り部分の中で、文字や線画などを白く抜き、紙白で表現することを白ヌキ、色をつけることを色ヌキという。
    • 掛け合わせや特色のノセは下色の影響を受けて、ノセたインキとは違う色で仕上がるため注意する。色ヌキは抜いた部分にピッタリの色版を必要とするため、トラッピングを行う必要がある。

    トンボ

    • トンボは位置の基準という意味では、英語のregister markに相当し、その役割はセンタートンボと角(コーナー)トンボの2種類で異なる。
    • 角トンボは2本の平行線で構成され、1本は製本の段階で化粧断ちをするための仕上り線を表し、もう1本は化粧断ち線の少し外側で製版処理に必要な面を示す製版寸法線を表す。
    • 写真を仕上り寸法いっぱいに入れる場合、画像部分が仕上り線までしかないと、断裁時のズレなどで写真の回りに白い部分が出てくることがあるため、データ作成時にあらかじめ断ち落としの処理をしておく。
    • 一般に仕上り線と製版寸法線の間は3mm程の隔たりがあるが、この間の断ち落とし部分は、印刷会社や印刷物の種類によって5mm程度まで差があり、あらかじめ確認してからデータ作成作業をする必要がある。
    • リーフレットでは折トンボが用いられる。これはアプリケーションで自動的にトンボを入れることができないので、制作者が制作の前に自作する必要がある。

    トラッピング

    • プロセスカラー印刷ではCMYK の各色の版が別々にあり、これらの色が隣り合って接している部分は、印刷時のわずかな見当ズレによって紙の白地が出ることがある。それを防ぐために、プリプレス側でトラッピングという補正が必要になる。
    • トラッピングの刷り重ね部分の作成は、その方向や幅、印刷条件、隣り合う色の色合いや網点パーセントの大小によって異なる。輪郭線のどちらか一方、または輪郭線を中心に重なり合う部分を形成し、輪郭領域に前面と背面の色が重なった細い帯が形成される。
    • トラッピングにはチョークとスプレッドの2つの処理がある。前面のオブジェクトの色の領域を拡大することをスプレッドといい、背面からオブジェクトを抜いた領域を縮小することをチョークという。
    • 本文文字のように太らせるわけにはいかないオブジェクトには背面のヌキを縮小するチョークが適用される。トラッピングの幅は印刷機の種類や精度に依存し、太過ぎると擬似輪郭となり不自然となる。一般に薄い色の領域を拡大する。

    プリフライトチェック

    • ページレイアウトソフトには出力前のプリフライトチェック機能があり、フォントや色、貼り込みデータのファイル形式などの内容をチェックすることができる。

    出力処理の流れ

    • かつてはPostScript出力・PostScript-RIP方式が主流であったが、現在ではPDF出力・PDF-RIP方式が一般的となっている。
    • PostScript出力では、出力データとRIP搭載フォントの不整合によるトラブルが多発していた。PDF出力ではフォントエンベッド方式が一般的となり、このようなトラブルはほとんど解消された。

    【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[DTP]1-12 PDF

    • PDFはPortable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)の略称で、電子上の文書に関するファイルフォーマットである。特定の環境に左右されず、表現の再現性を確保しつつデジタル化された文書データとして広く普及している。
    • PDFはフォントの埋め込み(エンベッド)やICCプロファイルの埋め込みを行うことができる。
    • PDFには、電子署名機能、コメント記入などが行える注釈(annotation)機能、パスワードと128ビット暗号化によるセキュリティ機能などが装備されている。
    • 1990年代初め頃よりAdobeが開発・提唱したPDF仕様は、1993年より無償公開していた。その後、Adobeは仕様のほとんどに関する権利を放棄することで、国際標準化機構によってISO 32000-1として標準化された。

    PDFの特徴

    • PDFは、アドビシステムズが開発し印刷業界の標準として普及していたページ記述言語、PostScriptを元に策定された。PostScriptのようなプログラミング言語としての機能はなく、データ記述言語となっている。
    • PostScriptとの大きな違いの1つにページ単位の独立性があり、必要なページをすばやく表示することができる。
    • 文書、グラフィック、添付ファイルを単一ファイルにまとめて圧縮する構造を持っている。
    • 異なる環境で表示するためのフォントの埋め込み、代替の仕組みを備えている。
    • 本文以外の文書情報として、しおり・リンク・注釈などを追加して付加することができる。
    • バージョン1.4以降では、「透明」の概念を保持することができる。
    • PDF/Aは、電子文書を長期保管用に作成、表示、および印刷するための仕様をISO規格として標準化したものである。またインタラクティブな交換に使用されるPDF/Eがある。

    PDFと印刷

    • Adobe PDF Print Engine(APPE)は、PDFベースのRIPエンジンである。PostScriptでは対応不可となっていた「透明」にも対応している。
    • 面付けなどの作業をPDFデータで行うことにより、出力機器への負担が軽くなり、より高速な出力が可能になる。
    • PDF/X(ISO15930)は、国際標準化機構によって規定されたグラフィックデータ交換を目的としたPDFのサブセットである。PDF/Xによるデータ入稿の利点は、カラースペース、フォントや画像に関する規定が明確になり、出力トラブルの回避や信頼度が向上することである。
    • PDF/Xには、PDF/X-1a、PDF/X-3、PDF/X-4など複数のバージョンがある。各バージョンの規格内容を把握し、印刷用データ受け渡しの際にどのバージョンに準拠したデータであるのかを確認する必要がある。