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【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[色]2-1 光

2-1-1 可視光線

  • 可視光は、肉眼に入射して直接に視感覚を起こすことができる放射で、約400nmから700nmの波長をもつ。CIE(国際照明委員会)では下限波長380nm、上限波長780nmとしている。
  • 波長の違いは光がプリズムを通る際の屈折率の変化で知ることができる。プリズムに白色光を通すと虹のような連続的な色の変化が見られる。
  • 太陽光の白色光には可視光の波長が連続的に含まれている。波長によってレンズでの屈折率が異なるので色収差が出て、異なる色として認識できる。
  • 光の波長は短いほど大きく屈折する。屈折はプリズムやレンズの厚い方に向かって起こる。

2-1-2 光の性質

  • シャボン玉や油膜のように、薄膜表面で反射した光と裏面で反射した光が重なって特定の波長に強弱が起こり、色を生じる現象を干渉という。
  • 光が影の内側に回り込むので物体の影の輪郭がぼやけて見える。これは光の波動性の性質によるもので回折という。
  • 空が青く見えたり、夕方の太陽が赤・橙色に見えたりするのは、光が大気中の小さな粒子に当たって散乱することで起こる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[色]2-2 色

2-2-1 色の混合

  • 波長380〜780nmにわたる光の色相感覚には、単色光の色相に比べて複合光はあざやかでない感覚が生ずる。このあざやかさの程度を、飽和度 (saturation)という。
  • 人間はR(レッド)・G(グリーン)・B(ブルーバイオレット)の光の3原色のそれぞれの色光が目に入る強さの比率によってさまざまな色を認識する。
  • 2色を足して白(加法混色の場合)あるいは黒(減法混色の場合)になる関係を補色の関係という。R(レッド)とC(シアン)、G(グリーン)とM(マゼンダ)、B(ブルーバイオレット)とY(イエロー)がそれにあたる。印刷における補色インキのことではない。

2-2-2 色の認識

  • 色には、色感覚による色と色知覚による色がある。色感覚による色は、心理物理実験のデータに基づいて定量的に表示できる。色知覚による色は、物体からの反射光が大脳の視認中枢において判断される色であって、言語などで表現される定性的なものである。「色相」は知覚色に対応するものと考えられる。
  • 光の分光エネルギー分布と色感覚による心理物理色との間には対応関係があり、分光組成によって、心理物理色は一義的に定められる。しかし、心理物理色に対応する色刺激の分光組成は、一義的には定められず多様性がある。

色の見え(color appearance)

  • 色の見えは、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。そこで色を正しく判断するには、観察環境や条件の標準化が必要となる。
  • 色を正しく判断できる環境として最低限考慮すべき項目には、周囲の色、照明光の特性(分光エネルギー分布)、照度、モニターの輝度がある。
  • 色によっては対象物の背景の影響を受け、対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は無彩色であることが望ましい。

照明光の分光特性

  • 照明光の分光特性は、エネルギーの過不足がなく、分光エネルギー分布がフラットなものが望ましい。照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、自発光のモニターでも色の見えが変わる。
  • 例えば、モニターの観察環境において、フラットな照明下に比べ赤い照明下では赤成分が多いものは明るく見えるし、赤のエネルギーが少ない照明下では、赤い部分は暗く見える。

プルキンエ現象

  • プルキンエ現象は、色の見え方が変わる現象のひとつで、薄暗い時間には赤色が暗く見え、青が明るく見えるという現象である。1825年、チェコの学者であるプルキンエ氏が発見したため、この名前がついている。
  • 目の網膜には、外から入る光を受け取る錐体細胞と桿体細胞と呼ばれる細胞がある。錐体は主に昼間、明るい場所で働き、逆に桿体細胞は暗い場所で主に働いて光を感じている。
  • 明るい場所で働く細胞は、明るい光の下で色を識別する役割を持っているため、どのような色の光も鮮やかに見ることができるが、主に暗い場所で働く細胞は、波長の長い光は受け取ることができず、波長の比較的短い青色〜青緑色に感度のピークを迎える。したがって、明るい時間に赤は目立つが、辺りが薄暗くなってくると、網膜で主に働く細胞が次第に変化するため、青に近い色がはっきりと明るく見え、赤色の光が暗く見えにくいと感じるようになると言われている。そのため、薄暗い夕方でも青の標識は比較的はっきりと見える。

心理的影響

  • 人間の生理的および心理的特性によって色の見え方は影響を受ける。
  • 1つの色の知覚は、直前の色の知覚、周囲の色の知覚の影響なども受ける。生理的・心理的影響の代表的なものに色対比、同化効果、色順応、残像がある。
  • 訓練や色を観察する方法を工夫することによって、生理的・心理的要素の影響を小さくすることが可能である。知覚は脳が視覚情報を補正した結果起こるものなので、計測の値と異なる場合がある。

色彩配色

  • 紙面の印象は色の選択により変わる。明度の低い色は重厚な感じを与え、また明度が高く彩度が低中度の色は軽やかな感じを与える。これにより紙面の重心が影響を受ける。
  • 色はさまざまな感情を人に与える。寒色系、暖色系など、色相、明度、彩度の組み合わせにより、どのような効果が生まれるかについて非常識な配色にならないように典型的なケースは理解しておかなければならない。
  • 社会的な慣習として警告マークや交通標識のように目につきやすいものがどのような配色や明度差になっているかも理解しておく。
  • 印刷物の表現として、代表的な色をCMYK の網点パーセントの組み合わせに置き換えて考える能力も必要である。

2-2-3 色の表し方

色の「光としての物理量」と「心理量としての見え方」の対応関係を科学的に扱う方法があり、これがモニターの色と印刷物の色の問題の議論をする共通の土俵となることを理解する。

カラースペース

  • どのような方法であれ、色を表現するには3つの属性が必要になるので、三次元の空間(立体)で色を数値化したモデルが考えられた。
  • 「色」をあるカラーモデルの規則に従って表示することで、意図した色を情報として正確に伝達できる。
  • コンピューターのカラーモニターやスキャナー、テレビの画面などは、RGBカラーモデルを使い、光を直接コントロールして色の情報を作る。
  • 印刷ではCMYK インキを1枚の紙の上に刷り重ね、各色のインキが特定波長光を吸収したり反射したりした光によって色の認識をする。
  • 規格化されたカラースペースの代表はCIE表色系であるが、色相、彩度、明度という感覚をベースにしたカラースペースもある。
  • 色相、彩度、明度の3属性で客観的に数値化して表す、感覚をベースにした体系にマンセル表色系、オストワルド表色系などがある。
  • マンセル表色系は、色の知覚を段階分けしてHV/Cで表現するもので、光の物理量との関係付けが難しいが、人間の感覚には近いとされている。

色名法

  • JIS Z 8102「物体色の色」では、系統色名と慣用色名の2つを規定している。
  • 赤・橙・黄・緑・青・紫・白・黒など世界共通の色名法を基本色名といい、これに明度と彩度に関する修飾語と色みを表す修飾語をつけたものを系統色という。
  • さまざまな動植物や鉱物の特有の色から付けられた色名を固有色名という。
  • 普遍化し一般に使われるようになった色名を慣用色名という。
  • 国ごとの歴史的文化的背景によってつけられた色名のことを伝統色名という。

慣用色名

  • 古代から使われてきた色名は、情報としてあるいは意思伝達の手段としての不完全さにもかかわらず、今日でも多く用いられる。
  • 特定の色を表現する名称を固有色名といい、一般に広く使われているものを慣用色名という。JISでは慣用色名として約269色が定められている。
  • 慣用色名や日本の伝統色の代表的な色は、赤系や青系など色系統や、色相など属性との関係を覚えておくとよい。
  • 慣用色名の由来や顔料・染料の種類などを知ることは、色再現の理解につながる。

CIE表色系

  • 色を光の物理量として、また人間の視覚神経刺激の心理量の問題として、科学的に扱った表色系にCIEの表色系がある。
  • CIEは色や光に関する取り決めを行う国際照明委員会の略称である。CIE表色系は、当初CIEで定めた特定波長のRGB単色光の比率で色を表すRGB系であったが、負の値を含んでいたので、1931年にRGB系を線形変換したXYZ表色系に改めた。
  • CIEのXYZ表色系では、与えられた色と同じ色感覚を起こさせるために混合すべき3原色の刺激の量X、Y、Z(3刺激値)で表す。Yは明度曲線と同一であるので、輝度を示す。XYZ表色系を平面図に表すと、光のスペクトル軌跡を包む三角形で表現される。
  • XYZ表色系のひとつであるCIExy色度図は、平面で表示したものである。色再現域を単純化して三角形に内接する馬蹄形の図で表す。CIExy色度図では、中心W(白)に近づくほど彩度が低くなり、周辺に向かうほど高くなる。また、色度図の左下はBv、右下はR、色度図の頂部はGである。
  • 印刷物とカラーモニターの色再現域を比べると、カラーモニターはプロセス印刷の再現域よりも大きな鋭角の三角形となる。
  • 印刷ではRGBはCMYの混合によって作り出すため、RGBの頂に向かう領域は大きくおさえられ、一般に印刷の方が色の再現範囲が狭い。また、印刷物は可視光の中間域のGで表現レンジの制約が大きい。

CIE 1976(L*, a*, b*)色空間(CIELAB)

  • CIE 1976(L*, a*, b*)とは、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつである。
  • L*a*b*表色系ではL*で明度を表し、色相と彩度を示す色度をa*とb*で表す。a*とb*は色の方向を示し、+a*は赤、-a*は緑、+b*は黄、-b*は青のそれぞれの方向を示している。数値が大きくなるに従って色が鮮やかになる。
  • L*a*b*はシステムやデバイスに依存しないこと、またRGBやCMYK に比べて色再現領域が広いことなどから、カラーマネジメントシステムやソフトウェアの標準カラースペースとして用いられている。

色差の表現

  • 各工業分野で色の管理に色差(⊿E)が用いられている。均等色空間であるCIELAB色空間に基準色と評価色をポイントし、それらの三次元空間内での直線距離(ユークリッド距離)を色差として表す。この色差を求める式をCIE 1976色差計算式といい、⊿(デルタ)Eと表記し、数値が大きいほど違う色になる。
    数値が3程度なら一般人が色票を並べると認識できる差になり、⊿E6.5を越えると違いが分かるようになる。
  • CIE 1976色差計算式による色差判定結果と人の感覚には少し違いがあると言われていた。より人の感覚に近づけるための最新の色差式がCIE DE2000であり、⊿E00と表記する。

2-2-4 色の評価

色を評価するには、光源や観察条件などを整える必要があることを理解する。

色温度

  • 色温度とはある光源の色を絶対温度Kで示したもので、JIS「色に関する用語」には「完全放射体の色度と一致する試料放射の色度の表示で、その完全放射体の絶対温度であらわしたもの」とある。
  • 色温度は、白色蛍光灯はおよそ4300K、快晴の青空はおよそ20000Kとなる。数値が低いほど赤色光の量が多く、高いほど青色光が多い。
  • 一般的な光源の色温度は、印刷の標準光源に比べると高めのため、作業内容によってはカラーモニターでの色温度を印刷用に設定して使う。

演色性

  • 演色とは、照明される光源の違いによって色の見え方が異なる現象をいう。その特性を演色性と呼ぶが、一般に演色性とは自然光と対比させた光源の性質を表わすものである。
  • 演色性は、ある光源のもとでの色の見え方が、同じ色温度の基準光源での見え方にどれだけ近いかをRa(演色評価数)で示す。
  • モニターや蛍光灯などを選ぶときは、まず色温度によって区別し、演色性の数値を見て評価する。Raが100に近いほど高演色性の照明光といえる。

標準光源

  • 日本印刷学会により印刷物色評価用標準光源が次のように決められている。相関色温度:D50(5000K ±250K)、平均演色評価数:Ra 95以上。
  • 印刷物の色を評価するにあたっては、色評価用蛍光灯として演色AAA昼白色(5000K)の使用が望ましい。
  • CIEの標準光源A、C、D65などのうち、印刷以外で一般によく使われる照明光源はD65であり、その色温度は約6500Kである。

観察条件

  • 色の見えは観察環境によって異なる。観察者や対象物が置かれている環境や、照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。
  • 観察条件には大きく分けて3つの要素がある。
    1) 照明の特性(光源の色温度、演色性、照度・輝度)
    2) 照明の配置
    観察するときに照明が直接目に入らないようにする。なるべく鏡面反射が気にならないようにする。
    3) 観察するための周囲の環境
    観察対象の周囲には、鮮やかな色や暗い色を置かないようにする。グレーが望ましい。
  • 印刷物の色の厳密な比較や評価にあたっては、用紙、インキ、印刷条件、光源という条件をすべて同一にする必要がある。

メタメリズム

  • 分光反射率の異なる2つの色が、特定の光源下で同じ色に見えることをメタメリズム(条件等色)という。メタメリズムにより、ある条件下で等しく見えた色が別の条件下では異なった色に見えてしまうことが起こる。例えば、標準光D50で2つのものが同じ色に見えても、D65では違って見えることもある。メタメリズムには、湿潤・温度・光源などがあるが、一般にメタメリズムというと光源間メタメリズムを指すことが多い。
  • 光源が変わって色が変化しても、メタメリズムがなく等色に見える場合がある。逆に演色性がないが、メタメリズムがある場合もある。

モニターと反射物の観察環境

  • モニターと印刷物などの反射物の色を比較する場合、モニターの輝度と照度とは、それぞれ別個に決めればよいというものではなく、両者の関係を考慮して設定しなければならない。
  • モニターの輝度と反射物の照度の適正値は、モニターの基準白色輝度、周囲の状況などにより変化すると考えられるので、①モニターの設置・調整、②反射物(サンプル:未印刷の用紙など)の設置、③モニター側照度の調整(モニターの基準白色は、白に認識され、シャドウ部の階調再現が確認できる照度に調整する)、④反射物側の照度の調整(印刷用紙などの明るさ感がモニター基準白色の明るさ感と同じになる範囲に設定する。照度が高すぎると用紙の明るさ感が増し、モニターの再現範囲を超えてしまう)、という手順で設定することが望ましい。
  • 一般的なDTP環境では、印刷物をチェックする校正環境はアナログ時代とは異なり、5000Kで500〜600luxくらいの部屋でモニター管面の輝度80cd以下(できれば60〜70cd)が望ましい。この環境下ならモニターの色と校正刷りが近似するはずである。
  • 色を正しく判断するには、作業する現場の背景や壁などの色の整備から行うことが理想的であるが、第一ステップとして、照明光、照度によるモニター環境を整備することは比較的容易にできる。
  • モニターの観察環境の整備や標準化によって、色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニター上で色修正をしたり、現場やクライアント側にも同様の環境を構築することによって、作業効率アップや品質向上になる。

2-2-5 カラーマネジメント

  • DTPにおけるカラーマネジメントの目的のひとつは、印刷再現の予測である。
  • ディスプレイに対しては、紙で再現できる範囲の色のみの表示が求められる。
  • DTPデータの出力先がデジタルメディアの場合には、ディスプレイ間でも色が相似になる仕組みとしてカラーマネジメントが必要になる。
  • ガモットは、ディスプレイやプリンターなどの物理的なデバイス(装置)が理論的なカラースペース内で再現できる色の領域であり、各デバイス固有のものである。
  • カラーの入出力デバイスは、利用目的や発色の仕組み、設置環境などがそれぞれ異なり、管理されていないデバイス間では、相似の色再現ができない。
  • デバイスインデペンデントカラーは、カラーデータの入力から出力までの工程で、個々のデバイスに依存しない色再現を目指している。
  • デバイスインデペンデントカラーを実現するため、CIE(Commission Internationale de L’eclairage:国際照明委員会)が発表したカラースペースをデータの基準にすることが多い。
  • この基準値を各デバイスのカラースペースにマッピングし、デバイスごとに補正値を用い、色の再現を行う。
  • キャラクタリゼーションにより各デバイスの発色の特性を捉え、色変換用のパラメータを記述したデバイスプロファイルを作成する。
  • デバイスの発色は日常的に変動するため、各デバイスの特性をデータ化したときの値を基準にし、使用中のデータを計測した上で、基準値に合わせるキャリブレーションを行う。
  • 色の評価を行う環境は、外部からの色の映り込みを排し、標準光源を用いて、評価条件を一定に保つことが求められる。

デバイスプロファイル

  • DTP環境でカラーマネジメントを容易に行うために、OSレベルで色変換エンジンの使用を可能にすることや、デバイス特性を示すデバイスプロファイルデータのフォーマットに対する標準化が行われている。
  • カラーマネジメントシステム(CMS)は、アプリケーション間やデバイス間の色調整を行う仕組みでOSの機能の一部として提供されている。Appleが提供しているCMSがColor Syncであり、Microsoftが提供しているのがWCS(Windows Color System)である。Color SyncやWCSは、インターナショナル・カラー・コンソーシアム(International Color Consortium:ICC)の公表したデバイスプロファイルフォーマットの仕様であるICCプロファイルに対応している。
  • デバイスインデペンデントカラーでは、異なる色再現領域をもつデバイス間でのカラーマッチングを行うために、汎用のカラースペースに変換する。CIEのXYZや、L*a*b*が共通のカラースペースとして使用される。
  • デバイスプロファイルには、各デバイスの色再現能力を共通のカラースペース上で表した情報が記述されている。DTP環境では複数のデバイスを使用するため、各デバイスのデバイスプロファイルを参照し、異なるカラースペース間で相似した色が表現できるようにデータ変換を行う必要がある。
  • アプリケーションがOSにRGB/CMYK変換を要求すると、OSはCMSを呼び出し、内蔵された色変換エンジン(CMM:Color Metrics Match / Color Management Module)に対してデバイスプロファイルを利用した色変換を依頼し、結果をアプリケーションに応答する。再現不可能な色については、最も近い色に変換される。色再現の品質は、デバイスプロファイルとCMMの精度に左右される。
  • デバイスが異なると色再現域が異なることが多い。そこで事前に変換方針を決定してから変換を行う。この方針をレンダリングインテントという。再現不可能な色を置換する場合についても、レンダリングインテントに従い適した色に変換する。

ICCプロファイル

  • ICCプロファイルは、デバイスのカラースペースや色再現特性が記述されたデータファイルである。RGBとCMYKの変換を行う際や、ディスプレイやプリンターで出力する色を調整する際に参照し、正確な色の再現を実現する。
  • ICCプロファイルは、デジタルカメラやスキャナーなどの入力デバイス(Input Profile)、ディスプレイといった表示デバイス(Display Profile)、プリンターといった出力デバイス(Output Profile)に対応した3つのタイプがある。
  • 標準的なプロファイルは、デバイスの製造元により提供されることが多い。
  • プロファイルは色の変換テーブルを含んでおり、RGBまたはCMYKとL*a*b*値の双方が定義されている。変換テーブルを編集することで、独自のプロファイルを作成することができる。
  • カラーマネジメントの運用では、各デバイスプロファイルの設定や、画像データに埋め込まれたプロファイルの設定などを適切に行うことが重要である。デバイス間のカラーマネジメントを理解することで、プロファイルを二重に適用したことによる品質劣化の様なトラブルを防ぐことができる。

ディスプレイ

  • ディスプレイ表示と印刷結果を一致させるためには、色温度や発色範囲を管理するカラーマネジメントが必要である。
  • ディスプレイは、加法混色型の装置であり、「白」を基準として色の調整を行う。印刷物の色を再現するために、「白」を調整できるキャリブレーション機能を搭載したディスプレイを使用することが望まれる。
  • 家庭用のTVディスプレイの多くは、初期設定の色温度が9300Kである。PC用ディスプレイは、標準光源の昼光(6500K)と近似値ではあるが、いずれもDTPデータを表示させると色合いは実際の印刷物よりも青味を帯びる。
  • 環境光はディスプレイの発色に影響する大きな要因のひとつである。一般的にDTP環境では、印刷物の色を評価する光源を使用し、ディスプレイの色温度は、5000Kに設定する。
  • ディスプレイの色は、ディスプレイの蛍光体による発光と照明や太陽などの反射光による混合色となる。反射光は、色の再現に影響を与え、コントラスト比の低下をもたらすため、遮光フードを使用し、光の映り込みを防ぐ必要がある。

キャリブレーション

  • ディスプレイのキャリブレーション方法には、ディスプレイ本体のRGB表示を制御、調整するハードウェアキャリブレーションとPCのビデオカードから出力されるRGB信号を調整するソフトウェアキャリブレーションがある。
  • キャリブレーション機能のないディスプレイのコントラスト調整では、コントラストを最大にし、明部(白地)の調整を行い、続いてブライトネス調整で、明部の明るさと暗部(黒地)の調整を行う。

アプリケーション

  • デスクトップ上で作業を行うDTPでは、出力デバイスに合わせたアプリケーション環境のカラーマネジメントを行う必要がある。アプリケーション上のワークスペース(作業スペース)に関する概念は、異なるデバイスやデータ交換に対応するために登場した。ワークスペースとして、RGBやCMYK、グレースケールなど、カラーモード毎にICCプロファイルを設定する。
  • 各デバイス用のデータに変換する場合は、ICCプロファイルを都度設定することで対応する。「Japan Color 2011」といった標準規格に基づいたICCプロファイルを指定することもできる。データに標準的なICCプロファイルを埋め込むことで、デバイスに依存しないカラーデータの交換が実現できる。
  • RGBからCMYKへ変換するといった、あるカラースペースから別のカラースペースに変換する場合は、レンダリングインテントを指定する。Adobe製アプリケーションでは、レンダリングインテントとして「知覚的」「彩度」「絶対的な色域を維持」「相対的な色域を維持」という4つの選択肢がある。デジタルカメラ時代になってPhotoshopのデフォルトは「知覚的」に設定されているが、モニターに関しては「相対的な色域を維持」に設定されている。
  • 入力デバイスから得たRGBデータや、RGBプロファイルの設定が異なるデータを扱う場合、共通のワークスペースを指定し、デバイス間のカラースペースを共有することが可能である。印刷用データへの変換は、データがもつ共通のワークスペースにおけるカラースペースとCMYKの設定が大きく影響するため、印刷条件に合わせたインキの色特性、ドットゲイン、インキの総使用量の制限、墨版の設定などを行う。
  • 印刷条件ごとにプロファイルでテーブルを用意することも可能であり、目標値となる印刷物の測色結果により作成したプロファイルを設定できる。

アイソメリックマッチ

  • 対象物の正確な色再現、色合わせを行う方法にアイソメリックマッチと呼ばれるものがある。これは分光反射率を近似させて目標色に合わせようとするものである。これに対応した色再現システムを分光的色再現システムやナチュラルビジョンと呼ぶこともある。
  • アイソメリックマッチは、分光反射率が完全に合致した場合、メタメリズムによる色変化を完全に取り去ることができ、理想的な色合わせの方法である。この方法は、デジタルカメラ入力では撮像システムの技術革新により実運用も可能であるが、インキなどを用いて色を合わせる場合は目標色と同じ色材・下地の場合でないと、反射率を合致させることは難しく、手持ち色材を利用する着色業では利用範囲が限られる。
  • スペクトルを一致させるアイソメリックマッチに対して三刺激値を目標色に合わせようとするカラーマッチングをメタメリックマッチと呼ぶこともある。
  • メタメリックマッチでは、視覚色を三刺激値で一致させようとするため、計算する光源下では一致しても、他の光源では色が合わないリスクつまりメタメリズムを持つが、手持ち色材を利用してほとんどの色を出すことができるメリットがある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[コミュニケーション]

印刷物などのメディア制作ビジネスは、顧客企業におけるマーケティング活動に活用されるなど、コミュニケーションを目的とした手段として実施される。したがって、情報の効果的な展開や視覚化を検討し、適切なコミュニケーションデザインを行うことが求められる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-1 概要

3-1-1 印刷技術の起源

  • 印刷は情報を伝達するための重要な手段のひとつである。太古、人類は言葉や身振り手振りでお互いの意思を伝達していた。音声という聴覚だけに頼っていたコミュニケーションでは、交わされると同時に消えてしまうが、文字を発明することによって時間と距離の克服を果たし、より正確に意思を伝達できるようになった。
  • 文字を記しておく「物」を媒体(メディア)という。石や粘土、羊皮紙、パピルスなどを経て、中国で105年に蔡倫により樹皮、麻くずなどの植物繊維を原料にして紙が発明された。
  • 一枚一枚手書きで写すのでは一度に多くの人に情報を伝達するには不便なので、複製手段が求められた。現在のかたちの源流となる印刷が始まったのは中国である。唐の時代に木版印刷が始まったといわれている。現存する当時の印刷物としては868年につくられた「金剛般若波羅蜜経」がある。
  • 日本には奈良時代に製紙技術とともに伝来したと言われ、奈良・法隆寺には現存する最古の印刷物とされている「百万塔陀羅尼経」が残されている。
  • 中国で生まれた製紙法と木版印刷がヨーロッパに伝わり印刷が行われるようになったのは14世紀末といわれる。そしてドイツ人のグーテンベルクが現在の印刷術の基礎といえる活版印刷術を完成させた。彼の発明した活字は鉛を主原料とした合金で鋳造しやすく精度が高い上に再利用もでき、量産を可能とした。彼が印刷した「42行聖書」は世界最古の活字本として残されている。
  • 日本においては明治に入り本木昌造が和文の活字鋳造を行い、1870年(明治3年)創刊の「横浜毎日新聞」が印刷されている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-2 五大要素

印刷をするために必要な要素は、1)原稿、2)版、3)インキ、4)被印刷物、5)印刷機の5つである。

3-2-1 原稿

  • 印刷物として複製される元となる素材。かつては原稿用紙に書かれた文字や、写真の紙焼あるいはポジフィルム、手書きの図版やイラストなど目でみて触れることのできる形であったが、現在はデジタルデータとしてやり取りされることが多い。

3-2-2 版

  • 複製用の印刷原版。インキが着く画線部とインキが着かない非画線部を持つ。断面の形状によって凸版、平版、凹版、孔版などに分けられる。

3-2-3 被印刷物

  • 版とインキにより、原稿の画像を再現する紙などの材料。印刷媒体の大きな特長は、空気と水以外に何にでも刷れるというほど被印刷物の多様性にある。紙以外にプラスチック、ガラス、金属、布など印刷物は広く使われている。

3-2-4 インキ

  • 版の画像を被印刷物に転写するための材料。印刷インキは被印刷物や版式、印刷物の用途などによって適した性質のものが選ばれる。

3-2-5 印刷機

  • 版を取り付け被印刷物にインキを転写する機械。圧力のかけ方によって平圧、円圧、輪転の3種類がある。これらの従来型印刷機に対して、デジタルデータを直接出力する無版式のデジタル印刷機がある。

オフセット印刷機

  • 版と紙が直接、接触せずにいったんブランケット胴などを介してから転写する印刷方式をオフセット印刷方式という。現在は平版の版式が一般的になっている。平版は、版に少量の水を加えることで画線部は水をはじき非画線部に水がつく。版胴に巻きつけられた版にローラーでインキをつけると水をはじいた画線部だけにインキが着く。

グラビア印刷機

  • グラビア印刷の版は画線部を凹部で表す。凹部に深い浅いの差をつくり、インキの付着量の多少によって濃淡を表現する。グラビア印刷機の機構はインキ漕のなかに版胴が接していて、版胴が回転すると版全面にインキが着くので、ドクターと呼ばれるヘラで非画線部のインキを拭い取る。凹部に残った画線部のインキはそのまま残り、用紙に転移される。

フレキソ印刷機

  • 凸版印刷方式の一種。版に感光性樹脂やゴムなどの弾力性のある(フレキシブルな)素材を用いることからフレキソ印刷という。段ボールなどの表面の粗い素材への印刷に適している。

スクリーン印刷機

  • 孔版印刷の一種。版として網目状の布(メッシュ)を用いる。印刷する素材を選ばない、曲面への印刷が可能、インキが厚盛りできるなどの特長がある。

デジタル印刷機

  • コンピューター上で製作されたデータを、版を使わずに、直接インキやトナーにより印刷する。印刷方式は、電子(静電)写真方式やインクジェット方式が主流である。デジタルデータを使用した無版方式であるため、大量印刷から少量印刷、可変印刷にも対応することが出来る。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-3 網点

  • 平版・凸版印刷などでは、画像の階調表現を網点面積率の大小で表現する。
  • 網点のような周期的パターンの画像を2つ以上重ねると、そこに別の規則的な模様(モアレ)が発生する。各色版を重ねて印刷した際にできるモアレのひとつに、網点が小さな環状あるいは花状につらなったロゼットモアレがある。
  • 各色版を重ねて印刷するときのスクリーン角度が不適切であると、モアレが目立ち絵柄の再現を損なう。モアレを目立たなくするために、各色版の角度をコントロールしている。
  • かつて網点の形成は光学的スクリーンを用いて行われていた。デジタル出力では、従来の網点形状を電子回路でシミュレートしている。網点形状によって画像の滑らかさやシャープさが変わる。

3-3-1 スクリーン線数

  • 網点は1インチに並ぶ網点の数によって、粗密を表現する。これをスクリーン線数という。
  • 平滑度の低い紙では、インキ皮膜厚をより厚くして印刷しなければならないので、網点が太りやすくなる。したがって、紙質に応じて適切なスクリーン線数を選ぶことが必要である。
  • アート・コート紙を使うカラー印刷では175線〜230線くらいが使われ、中・上質紙を使う書籍、雑誌や新聞では85線〜133線くらいが使われることが多い。
  • 250〜300線以上は高精細印刷とも呼ばれ、刷版製版から印刷にいたる品質管理は厳密なものとなる。
  • 巨大な看板などは、いったん網点出力したフィルムを拡大して意図的に粗い線数にして(目伸ばし)、インキを多く乗せて濃度を高く印刷することもある。

3-3-2 スクリーン角度

  • 各色版を印刷で刷り重ねる際にモアレが目立たないようにするために、刷版上で各色版のスクリーン角度を変える。
  • 網点は水平、垂直に並べるよりも45度に傾けた方が目立たなくなるので、単色印刷では45度のスクリーン角度を使う。
  • プロセス4色のうち、C、M、K版が干渉するとモアレの原因となり易い。そのため、45度にこの1つを置き、他の版をそれぞれ30度ずつ離して置く。そして、これらのいずれか2色の中間にモアレが発生しても目立ちにくいY版を置く。

3-3-3 AMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)

  • アナログ製版の時代から現在に至るまで、最も一般的に使用されている。等間隔に配置された網点の大きさを変化させることで色の濃淡を表現するスクリーニング技術である。網点の再現性、印刷時のインキ転写精度に優れており、オフセット印刷における標準的なスクリーニング方式とされている。網点の形状はスクエアドットの他にラウンドドット、チェーンドットなどがある。

3-3-4 FMスクリーン(Frequency Modulated Screening)

  • FMスクリーンでは、網点(実際はドットというべき小さな点)の直径を一定にして、点と点の間隔を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は、明るく表現する部分では少なくなり、暗く表現する部分では多くなる。
  • FMスクリーンの特長としては、1)従来のスクリーニングでは網点が規則的に並び、スクリーン角度に起因するモアレがあったが、それがないこと、2)点が非常に小さいので布地や木目などの表現に優れていること、3)スクリーン線数による制限がないので豊かな階調表現ができること、などである。
  • FMスクリーンでは、絵柄中の平網部分、中間的な明るさのフラットな部分やハイライト部で、画質が荒れた感じになりやすいが、さまざまな対処法がある。
  • 4色プロセスインキセットだけではなく6〜7色を使った印刷方式など、将来のカラー印刷への展望を開いた画期的な技術である。

3-3-5 高精細印刷

  • 標準的なオフセット印刷の場合、175線程度のAMスクリーニングを用いることが多い。それに対して、より精細な線数で刷版を製作し、印刷することを高精細印刷と呼ぶ。一般的には250〜300線以上のスクリーン線数を指すことが多い。250線を越えると、網点は肉眼で確認できないほど微細となり、階調もなめらかとなる。画像が鮮明で高彩度の表現が可能となるため、写真集や美術印刷などに用いられる。一方で印刷条件が厳密となるため、管理面の制約もある。

3-3-6 平網と網点の管理

  • 2色以上のインキを刷り重ねて、色を出すことを掛け合わせという。
  • かつては、ベタ印刷以外の一定の階調を表す部分を平網と呼び、図形や罫線に平網を設定することを「網フセする」「網ガケする」と言っていた。
  • 一般に、平網は10%単位で設定し、10%単位で印刷品質を管理することが多かった。色見本として、10%単位の網の組み合わせを印刷したものを参考にすることもあった。
  • プロセスインキを「M70%+Y100%」で掛け合わせると、オレンジになるが、オレンジ、黄緑、青紫のような色は、プロセスインキを掛け合わせるより特色を使った方が鮮やかである。
  • 「C50+M50+Y50」など等量のCMYの掛け合わせたグレーは赤みを帯びるため、Kに置き換えた方が安定する。
  • 特定のプロセスインキ用に分解したCMYKデータを別のインキセットで印刷すると、仕上がりが全く異なる可能性がある。つまりCMYKデータは、インキに依存するデバイスデペンドバリューである。
  • CMYKの値がどのような色として印刷されるか、インキ自体の分光反射率や紙、湿し水管理、刷り順、印刷機本体の調整、また温度・湿度等の印刷工場の環境といった複数の条件が積み重なって影響する。
  • CMYK値は「面積率」という絶対値であるため、印刷工場内の管理上は有効でも、色を表現する情報としては万能でない。インキや紙や印刷条件が標準化されたものとして、日本ではJapan Color、アメリカではG7(SWOPやGRACol)、ヨーロッパではPSOなどの指標がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-4 プリプレス

プリプレス工程は、より短い時間で作業を遂行しなければならないので、新たなワークフローの設計や分業体制の改善や、そのコントロールが必要であることを理解する。

3-4-1 ワークフロー

  • デジタル化してシームレスなワークフローになると、文字、イラスト作成、画像処理、ページレイアウトなどの諸作業の分担に合わせて、責任範囲を決めておくのがよい。
  • 出版印刷の場合、編集者は出版物の設計に責任をもち、全体の進行・管理を行って、編集作業を通して印刷物を統一感のあるイメージに仕上げる。
  • 編集者は、文章量のバランス、文体、用字用語、表現が適切であるか、図版類や写真原稿が揃っているかなどのチェックをして必要な修正の指示をする。
  • 完成したページのデータを出力する前には、ページに貼り付ける画像データや線画データ等がすべて揃っているか、また、データの解像度やデータ形式が適切なものとして保存されているかをチェックしなければならない。

3-4-2 製版

カラー印刷における色分解から刷版焼付用の分版フィルムの大貼り、刷版製版までの工程をプロセス製版と呼んでいた。DTPによってこの工程は統合された。作業手順は変わっても、その機能・目的および原稿の再現のためにどのようなコントロールがなされているかは同じである。

デジタルプリプレス

  • DTPソフトウェアによりページ内における文字、図形、画像の配置や、どのように表示するかが指定される。
  • DTPソフトウェアが出力処理をする段階でPostScript様式、またはPDF様式のファイルを生成し、あるいはプリンタードライバーを経由して出力機に送る。
  • PostScriptファイル、またはPDFファイルは、文字オブジェクト・図形オブジェクト・ビットマップのオブジェクトを位置の脈絡なく混在させて記述できる。

PDFワークフロー

  • Adobe PDF Print EngineはPDFベースのRIPエンジンである。PostScriptでは対応していない「透明」などを含むPDFに対応している。
  • 面付けなどの作業をPDFデータで行うことにより、出力機器への負担が軽くなり、より高速な出力が可能になる。

ラスター出力

  • デジタル方式の画像システムでは、画像を構成する要素の中でいちばん細かいものをピクセル(pixel)と呼ぶ。RIPなど画像プロセッサーは、ピクセルの場所を処理空間のアドレスで管理し、画像に従って、どれをオンにして、どれをオフにするかを指定していく。
  • RIPは画像のピクセルを、x軸あるいはy軸に沿って取り出し、ラスターデータ化する。
  • レーザープリンターのようにラスターデータを受け取って、光の点の点滅するビームにして出力(露光)するものをラスター出力装置という。

3-4-3 刷版

CTP

  • RIP処理したデータから直接オフセット印刷用の刷版を出力することをCTP(コンピューター・トゥ・プレート)という。
  • CTPは、中間工程がなくなり、デジタル化されたことにより画質の劣化が起こらず、高品質が得られる。刷版製版で行っていた焼き度調整や印刷機に合わせた調整は、前工程と連係しデータに対して処理しなければならない。
  • 現像処理を行わず印刷機の機上もしくは前処理で行う環境に考慮した現像レスのタイプのCTP版が普及しつつある。

水なし平版

  • 湿し水を必要としない水なし平版は、インキ反発層としてシリコン層を刷版の最上部に作り、画線部はその下に感光性樹脂層として作られている。フィルムの焼付け後の現像処理により画線部のシリコン層が剥離し、その下の樹脂層が露出する。インキを受理する画線部は凹状になっているので、ドットゲインが少ない。
  • 水を使用しないので版上に砂目が不要で、PS版に比較すると網点再現性がよく、水によるインキ乳化がないので光沢のあるボリューム感のある印刷物が得られる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術] 3-5 プレス

3-5-1 有版印刷

  • 印刷には4つの版式があるが、今日の商業印刷や出版印刷では、オフセット(平版)印刷が主流になっている。出版の一部および軟包装印刷ではグラビア(凹版)が使われる。凸版印刷の一種であるフレキソ印刷は、包装材料の印刷に使われる。
  • 扱う用紙が長巻の印刷機を輪転方式、カット紙のものを枚葉方式という。
  • 平版は解像性・価格・生産性において、他の版式に比べて優れている点が多く、印刷版式の中で最も多く使われている。

平版

  • 水と油の反発作用を利用し平面の版を用いて印刷する。版の画線部は親油性でインキが着き、非画線部は親水性で水の皮膜で覆われることによりインキが弾かれる。
  • 水の代わりに、シリコンを用いてインキを反発させる版を使った水なし平版もある。

凸版

  • 版の凸部が画線部で、そこにインキをつける。もっとも古くから利用された版式で、活字、活版印刷のほか、シール、ラベル、段ボール、ビジネスフォームなどの分野で用いられている。

凹版

  • 版の凹部が画線部で、版面全体にインキを付けた後、版の表面をぬぐい凹部に残ったインキが転写される。
  • 凹部にあたるセルの深さによって階調を表現しているコンベンショナルグラビアに対して、最近ではセルの大きさによって階調を表現する網グラビアが主流になりつつある。

孔版

  • 画線部が孔状になっており、その孔をインキが通過して被印刷物に転写される。

3-5-2 品質管理

品質管理では、印刷物製作における入力から出力までの工程をトータルに考えなければならない。

オフセット印刷と品質

  • オフセット印刷で適切なカラーバランスが得られるのは、印刷紙面上でインキ膜厚が1ミクロン前後で刷られている時である。
  • インキ膜厚が大きくなると裏つきなどのトラブルの原因となる。反対に膜厚が小さいと印刷物の色調にボリューム感が不足し、ベタのつぶれが悪くなる。
  • インキ膜厚は濃度と一定の関係がある。膜厚が増すにつれてカラー濃度も高くなる。印刷工場の実作業ではカラー濃度を測定してインキ膜厚の適正量を管理する。
  • 実際の印刷インキはCMYの色相が理想値とは少しずれているのでCMYの等量混合ではニュートラルグレーとはならず、少し赤みのグレーとなる。そのため50%付近の平網でCに対してMとYを10%程度少なくしたカーブで色分解をしておく。
  • カラー印刷物のシャドウ部は墨インキだけではつぶれが悪いので、墨ベタの下には色版の平網を入れることが行われる。通常はC60%程度の墨下を入れるが、黒の色味の調整のために必要に応じてMYを入れることもある。これをリッチブラックと呼ぶ。

印刷標準とJapan Color

  • ISOはオフセット印刷の標準として12647-2を規定している。ここでは印刷条件、用紙の種類、CMYKベタ部の基準、許容誤差、ドットゲイン量などが規定されている。
  • 各国では、12647-2に準じた上で、さらにその国の事情に応じた標準を作成している。米国ではG7(以前のSWOP/オフ輪、GRACoL/枚葉を統合)、ヨーロッパではPSO(Process Standard Offset)、日本ではJapan Colorがある。
  • これらの標準に基づく認証制度が実施されている。米国ではIDEAlliance、ヨーロッパではFOGRA、日本ではJPMA(日本印刷産業機械工業会)が実施している。
  • Japan Colorは、ISO/TC130国内委員会が中心になり、日本印刷学会の協力のもとに作られた印刷の標準である。1993年に設定されてから何度か改訂され、最新版は「ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011(略称:Japan Color 2011)」である。
  • Japan Color認証制度には、安定した品質の印刷物を作成できる工程管理能力について認証する標準印刷認証の他、デジタル印刷機で安定的に高品質の印刷物を作成する能力について認証するデジタル印刷認証などがある。

品質確認

  • DTPからCTP出力する際には、製版印刷の品質管理のために日付・担当・JOB名・刷り色・改版情報(バージョン名など)やカラーパッチ(カラーバー)、テストチャートなど必要な情報をトンボの外側に入れる。
  • 本機校正の品質管理にはカラーパッチを濃度計や色彩計などで計測する。
  • 品質管理上のカラーパッチの役割は、一般にインキの濃度をベタパッチで測り、ドットゲインが正常かどうかを平網でチェックし、CMYの色の偏りをグレーでチェックする。
  • 各版単独の色校正を分色刷りと言う。特に特色や補色が間違いなく印刷されているかどうかを確認できる。

検版

  • 検版目的は、企画デザイン制作時の修正箇所や修正ミスの確認、クライアントやデザイナーからのゲラ(プリント出力)と入稿データの比較、製版の面付け違いの確認、出力時の初版または一つ前の版との比較確認、印刷のためのプレートの出力状態または版面設計の確認などである。
  • プレート出力やデジタル印刷の前に、デジタルデータ同士を比較するデジタル検版システムがある。同システムでは、同一RIPによるRIP済みデータを使用して修正前後のデータを比較し、修正ミスや相違を識別する。
  • 検版結果は例えば初校と再校の差分は、ディスプレイで表示し確認するかプリンター出力して確認するのが一般的である。

3-5-3  プライマリー処理

  • プラスチックフィルムへの印刷やラミネート加工時の接着性を改善するプライマリー(下地)処理に注目が集まっている。
  • コロナ処理とは、コロナ放電のエネルギーで基材表面の分子構造を破壊することにより、接着性の改善を図る技術である。フィルムやラベルシールなどの軟包装材を扱う分野や、グラビア印刷やオフセット印刷、スクリーン印刷などでも広く利用される。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術]3-6 ポストプレス

3-6-1 製本

製本様式には、中綴じ・平綴じ・無線綴じ・あじろ綴じ・糸かがり綴じなどがある。綴じ方が変われば、企画・デザイン・レイアウトの段階で配慮が必要になる。各製本様式で版面や面付けに関してどのような調整が必要であるかを知っておく。

  • 用紙は、書籍が仕上がった状態で紙の目がヨコ目であると、ページがめくりにくくなるので避けねばならない。
  • 用紙サイズを決めるときには、印刷上必要なくわえ代や、製本の裁ち代、無線綴じの場合のミーリング部分などを考慮する必要がある。
  • 綴じが終わった印刷物の天、地、小口を裁断することを三方仕上げ裁ちという。

並製本

  • 雑誌や簡易な冊子は、一般に表紙の用紙が薄く、表紙と本文のサイズは同一であり、このような製本方式を並製本という。
  • 並製本の綴じ方には週刊誌のような針金中綴じや平綴じ、あるいは接着剤を使って表紙をくるむ無線綴じがある。いずれも製本後に仕上げ裁ちをする。一般に雑誌では表紙を1ページ目(あるいは表1)とすることが多い。

上製本

  • 上製本では、表紙は本文よりもひと回り大きく、三方裁ちの背固めのあとで表紙をつける。表紙をページ数には入れない。
  • 上製本では書籍の用途や耐久性に合わせて、多様な背や表紙の方式がある。本文の綴じられる部分と表紙の背が一体になっているものと、表紙の背と本文の綴じの部分に空隙を作って開きやすくしたホロー・バックがある。

面付けと折丁

文字組方向によって綴じ方式が右開き・左開きであるか、また平綴じ・中綴じであるか、また印刷サイズによって面付けや製版寸法が異なる。縦組、横組の典型例を覚えておく。

  • 折ったときに正しいページ順になるよう、印刷版のサイズに合わせて各ページを配置することを面付けという。
  • 面付けの際の数・順序・位置は、本の綴じ方、折り方など製本仕様によって決まる。
  • 台割は、片面8ページ、両面(裏表)で16ページを1台としている場合が多い。
  • 面付けで縦組の場合、本は右綴じ・右開きになり、折丁の袋が地になるように折る。横組の場合、本は左綴じ・左開きで折丁の袋が天になるように折る。
  • 面付けを行うときは、背丁・背標を入れる。背丁には書籍名・折数などが入る。背標は折丁の順番を示す標識で、1折から順に縦長の四角ベタを上から下へずらして入れていく。
  • 背丁・背標は、あじろ綴じや無線綴じでは、背に入れる。中綴じはノドまで開くので背丁・背標を背に入れることができないため、天袋や地袋に入れる。
  • 面付け計算は、仕上り寸法に裁ち落とし分(3mm)を加えた製版寸法で、見開き2ページ単位で行う。
  • A列本判(625×880mm)にA5判(天地210×左右148mm)の面付けをする場合は、天地の製版寸法は216mmで、左右の寸法は302mmとなる。その結果、左右の面付け寸法の合計は604mmとなる。
  • 印刷方向にはくわえ先・くわえ尻を加え、印刷の左右方向には針先・針尻を加えて用紙を決める。

3-6-2 折り

  • 商業印刷物で仕上げに折りの入るものは一般にはリーフレットと呼ばれる。
  • 二つ折り、巻き三つ折り、外三つ折り、経本折り、観音折りなどがある。
  • 巻き三つ折りは折った内側の短辺の寸法を2〜3mm小さくする必要がある。
  • 外三つ折りの場合は正確に1/3ずつになるように入れる。
  • 観音折りは左右対称に内側へ折り、内側の寸法は外側より2mm程度小さくする。見開きのページに絵柄がまたがる場合は裁ち代部分の絵柄は重複させる。

3-6-3 表面加工

  • 雑誌の表紙や商品パッケージなどは、印刷終了後に印刷物の保護、艶、堅牢性という機能面や、デザインの差別化のために表面加工をする場合がある。その方法を大きく分類すると、1)ニス等を塗布する光沢コート、2)ニス等を塗布し熱と圧を加えるプレスコート、3)フィルム類を熱圧着するラミネートの3つに分けられる。
  • 光沢コート加工は、水性ニスや溶剤系のニスを塗布し熱風で乾燥する方法や、UVニスを塗布し紫外線照射で硬化させる方法がある。オフセット印刷機にニスコーターを取り付け、4色印刷と同時にニスを塗布するインライン方式やニス引き機やグラビア印刷機を使用した方式がある。またニスを印刷面全面に引く方法と、部分的に行うスポットコーティングがある。
  • プレスコート加工は、熱硬化性のニスを塗布した後に鏡面板に熱プレスをする。表面を鏡面光沢の仕上げにできる。
  • ラミネート加工は、通常PP貼りと呼ばれる。印刷物の表面に接着剤を塗布した薄い樹脂フィルムを加熱圧着する方法で、光沢やマットにすることができ保護性にも優れている。ただし、インキ層からの光の反射率が変化することによる色調再現の変化に注意を要する。
  • 箔押しは、文字や模様の凹凸対の型を作り、表側に当たる型に金箔、銀箔、色箔、アルミ箔などを貼り付けて熱と圧を加え、書籍の表紙など比較的厚い紙に凹凸をつけるものである。ホットスタンピングとも呼ばれ、隠ぺい性も高く下地の色に影響されない。箔押し用の版は金属でできた凸版であり、箔押し加工される部分が作られる。
  • エンボス加工は、凹凸模様を彫刻したプレートまたはロールで印刷物に凹凸の模様を生じさせるもので、箔押し機を用いて作業する。

3-6-4 製函

  • 紙器は、印刷後には紙器の展開図の形に打ち抜き、くせ折り、接着剤付けによる貼り合わせ、折りたたみなどの加工によって組み立てる。
  • 用紙を無駄にしない密集した面付けが必要であるが、後加工工程での作業内容によって、紙の目や余白などの制約があるので、紙器のデザインの段階でも、このような印刷の後工程の仕様を念頭に置いて設計しなければならない。
  • 貼り合わせたときに印刷濃度差が目立つ場合は、面付け方法やデザインそのものを再考しなければならない。

【DTPエキスパートカリキュラムver.13】[印刷技術]3-7 情報管理

3-7-1 情報交換

  • デジタル化されたプリプレスデータを印刷、後加工の機器制御に活用するために生まれたのが、CIP3という国際標準団体である。
  • CIP3が定めたデータ交換のための標準をPPF(Print Production Format)という。CIP3のPPFファイルは印刷機のインキキーのプリセット用途で大きな効果を発揮した。
  • CIP3は、2000年にCIP4(The International Cooperation for Integration of Processes in Prepress,Press and Postpress)へと改組した。CIP4が定めた標準がJDF(Job Definitions Format)であり、ワークフロー統合に活用されている。