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【有資格者寄稿】DTPエキスパートへの挑戦

広告・プロモーション関連会社勤務 佐々木 秀昭(第43期試験合格者)

現場への想いと資格取得の決意

私がDTPエキスパート認証試験を受験しようと思い立ったのは、昨年の1月半ばの事である。受験申請は既に始まっていたが、転職直後であり準備の時間もあと僅か。正直、迷いも不安も多かった。私は直前の12月に転職を果たしていた。どうしてもやりたいと思った事があった。それは『もう一度現場で技術を学びながら伝えたい』という想いだ。現場に戻り物作りに携わろうと思ったのだ。私の経歴は、商業印刷の製版に20年程携わっており自負出来るものだが、それを資格として裏付けるものとして業界でも名高い「DTPエキスパート認証試験(第43期)」を選んだ。そうして、会社からの有資格者歓迎という熱い要求も後押しとなり受験を決意したのである。

試験対策の模索と試験当日までの道のり

受験を決意したものの、どんな勉強をすれば良いのか?どんな対策を講じればよいのか?迷いに迷った。そこで、まずは直近に行われるこの業界のイベント「page2015 DTPエキスパート最新情報ガイダンス(無料)」に参加し話を聴いた。今回から軌道を修正して元の合格基準にするとのアナウンスと試験についてのポイントを知る事が出来た。ガイダンスの終了後に、講師の方にどんな対策があるかを尋ねると「有資格者とコミュニケーションをとるのが一番良い。受験する側と受験させる側では捉え方が異なる。」という大きなヒントを得られた。ガイダンスの中でもコミュニケーションの重要性は何度も取り上げられていた。幸いにも私の周囲には、DTPエキスパート有資格者が多く比較的相談し易い環境があった。だが、試験までの時間はあまり残されていない。内心で焦りながら、私は有資格者の先輩達に試験勉強対策を教えて欲しいとアドバイスをお願いした。すると、一番多く返って来た返答は「とにかく過去問題をやりぬく事」であった。

本を読んだりするよりも圧倒的に効果的だと私も思う。当時、ベテランの有資格者に拝借した「DTPエキスパート認証試験スーパーカリキュラム 第10版準拠」の巻末の模擬問題に挑戦した所、惨憺たる結果となり絶望の淵に追いやられたのである。一番の要因は問題数が多く、解答し切れないという事実がそこに大きく立ちはだかった。
前半200問、後半200問。各2時間で解かなければならない――。ベテランの彼らの代では前後半共に各350問だったと聞き、少しだけ安堵したのを覚えている。残り一カ月でこの問題数をこなすスピード感が重要だという事を思い知ったのである。幸いにも私は有資格者の先輩方から、過去問題集を拝借する事が叶い数回分の模試が可能となった。あとは受験日までの勝負である。時間を計り問題数をこなす。マーカー式なので、なるべく早く塗りつぶせるように濃いめで芯のやわらかい鉛筆を使用するという事も対策の一つとなった。塗っている間のストレスが軽減されること請け合いである。
ある程度のスピード感が備わり試験まであと数日と差し迫った頃、有資格者の先輩から解答率のバランスチェックについて指摘があったのを覚えている。苦手分野のチェックである。確かに毎回似たような問題を間違えたり勘違いしていたりで苦手な項目を見直す事となった。折角の答え合わせをしていながらグラフを作っていなかった事で、曖昧にしか見えていなかった事が響いた。本番では過去問題以外の問題も新設されるのだ。試験直前の数日間は間違えやすい問題を入念にチェックした。出来ればもっと早く対策したかったものである。
こうして、短期間の中でも有資格者の先輩方の協力のもと、反省しきりではあるが筆記試験は対策を講じる事がかろうじて可能になり、試験当日は全てのマークを埋める事が出来たのである。

現場でのフットワークを活かして実技試験に臨む

筆記試験直後は、頭に残る結果での自己採点ではあまり良く無く、実技試験へのやる気が起きなかった。だが、有資格者の先輩方から「課題を提出しない限り合格は無い。」と幾度となく叱咤激励を頂いた。協力してくれる先輩方に朗報を届けたいと奮起し直し、課題に取り組んだ。制作系は比較的得意ではあったが、その仕様や指示書は作った経験が殆どなかった。そこで、考えられる現場を想定して必要なものを用意する事にした。現場には現場である。各工程に携わる方々がどのようにスケジュールを組み、手配し、制作しているのか?有資格者の先輩方以外の声も指示書に落とし込んでいった。まとめ方は「課題制作の手引き」に従い、自己流ながらまとめていった。制作物も指示書も自分なりに納得できるものとなったのは、提出期限の前日であった――。

エキスパート認証者として決意を新たに

合格発表までは非常にもやもやした日が続き居心地がよく無かった。速報での確認は昼休みとなった。受験番号を確認しホッとしたのと同時に、今後の責任を感じ現在に至っている。その責任とは、社内は勿論だが社外においてもである。
良い印刷物を作り、その技術を共に学び伝え、もっと良くなる方法を現場全体で考えるチーム作りの一員としてのDTPエキスパートでありたいと私は願ってやまない。

【クロスメディアキーワード】ユビキタス

パロアルト研究所の技術主任であった「マーク・ワイザー」が1991年に提唱した「ユビキタスコンピューティング」における「ユビキタス」とは、利用者が存在や操作を意識することなく「いつでも、どこでも、誰でも」コンピューターを使用できる環境の総称を指す。

ユビキタスとコンピューター

「ユビキタスコンピューティング」での「コンピューター」は、あくまでも利用者が「意識せず」に使用できなければならない。1984 年、坂村健による「リアルタイムOS」仕様の策定を中心としたコンピューターのアーキテクチャーを構築するプロジェクトである「TRON(トロン)プロジェクト」では、最終目標に「どこでもコンピューター」といったコンセプトが掲げられていた。このコンセプトは「ユビキタス」の方向性と近似しており、その後の日本におけるユビキタスの展開にとって、大きな影響を与えたといわれている。
1990 年代の後半から、携帯電話が普及しインターネット利用も実現したことで、さまざまなサービスをどこでも享受できる環境が提供され始めた。
ユビキタスの実現により、小型化した情報端末がさまざまな製品などに組み込まれると考えられた。「スマートウォッチ」に代表されるコンピューターの機能を身にまとうウェアラブルコンピューターの実現や、さまざまな製品や資材に付与され情報を管理する「ICタグ」の普及のほか、インターネットにつながる端末数を大幅に増やす「IPv6」の定着などにより、「ヒト」と「ヒト」がつながり、「モノ」と「モノ」が結ばれる本格的なユビキタス社会が実現すると考えられており、それを支える機器類の互換性が不可欠となる。既に普及した「スマートフォン」や「タブレット」などの端末により、遠隔からの操作が可能な機器類も市場に展開されている。
技術の標準化は「WWW」の機構である「W3C」による「ユビキタスに関するワークショップ」の開設や、各国での標準化団体による「IC タグ」の規格化や標準化の促進などにより対応が進められている。
なお、総務省は2004 年に次世代「ICT 社会」の実現に向けた中期ビジョンである「u-Japan 政策」を発表しているが、「u-Japan 政策」の「u」には、「ユニバーサル」「ユニーク」などと共に「ユビキタス」の意味が込められている。

ユビキタスの分類

ユビキタスは大きく3 つに分類することができる。

1. ユビキタス・コンピューティング
コンピューターということを生活者に意識させず、コンピューター本体や周辺機器の区別もなく、人々の生活環境に溶け込んだ状態を指す。

2. ユビキタスネットワーク
コンピューター同士が自律的に連携、動作する状態で、監視カメラやセンサーネットワークなどがインターネットと接続し、有機的に動作するシステムもある。

3. ユビキタス社会
ユビキタスに関連する技術により、人間らしい生活を実現する社会を指す。

ユビキタス社会とクロスメディア

ユビキタス社会とは、ユビキタスコンピューティングが実現している社会環境を指し、「生活環境のあらゆる部分に情報通信環境が浸透し、利用者が意識することなく利用できる技術」が実現している社会を意味する。
ユビキタス社会では、「2 次元コード」や「IC タグ」「デジタル家電」など、主にインターネットに接続するさまざまな技術やメディアについて理解が必要となる。不可視であるデジタルデータがコンピューターやネットワークの境界を超えて移動するようになった利点がある一方、データ流出に起因する個人情報の漏えいや、ウィルスによるシステムの破壊などのリスクが大きくなる面もあり、システムの構築や利用については、セキュリティーに対する十分な対策が必要となる。
人々の生活に深く関わる以上、「IT」による「ユビキタス」を意識したサービスの提供者は、利便性の追求とともに社会的責任を自覚しなければならない。このような社会変化に適応するように、事業構造の改善や、メディアの新たな活用方法も模索されている。

ユビキタスに関連する代表的な技術や用語

・2 次元コード
従来のバーコードと比べ格納できる情報量が多く、表示するスペースを小さくできる。ペーパーメディアとWebサイトを連携するキャンペーンで多用されている。

・ICタグ
トレーサビリティーに関連する活用が進んでいるが、生産コストの圧縮が普及へ向けた課題とされている。リーダーの悪用によって個人情報を漏えいする恐れもあり、セキュリティーに対する注意も必要である。

・デジタル家電
インターネットに接続することで、サービスの更新や拡張ができる家電を指し、情報家電とも呼ばれる。クラッキングの対象となり得るため、セキュリティー対策も課題となる。

・コンテキスト
コンテキスト(Context)とは、(文章の)前後関係、文脈、または(ある事柄の)状況、背景などといった意味があり、用例により訳が異なる。

・クラッキング
クラッキングとは、悪意を持ったコンピューターネットワークへの不正な侵入や、コンピューターシステムの破壊や改ざんなどの行為を指す。ハッキングも同様の意味で使用されることがあるが、「悪意や害意を伴うハッキング」がクラッキングと呼ばれ、「ハッキング」と区別される。

・IoT
「IoT(Internet of Things)」とは、従来は主に「コンピューター」や「プリンター」などの「IT 関連機器」が接続されていたインターネットに対し、それ以外のさまざまな家電や家具などの「モノ」を接続する技術を指す。「モノ」に対しさまざまなセンサーを付与することで、インターネットを介した状態の監視や操作などにより、安全で快適な生活を実現しようとしている。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年8月号より転載

【クロスメディアキーワード】EC

「EC(Electronic Commerce:電子商取引)」は、インターネットをはじめとするさまざまなコンピューターネットワークを用いた「契約」や「決済」などといった取引形態を指す。

インターネットとEC

インターネット上で商取引を行うため、一般的には「EC サイト」を展開する。有形の商品だけではなくアプリケーションやドキュメントなどの無形のデジタルデータとして構成される商品は、在庫や配送などの障壁が少ない取り引きが可能になり、個人の参入が容易であり、国境を越えた直接取引も可能になる。「EC サイト」による顧客の獲得は、在庫保管や店員配置などのコストが削減でき、低価格での商品提供を実現することで、さらなる集客が期待できる。

EC の適用

「EC」を展開する事業者は、「小売業」「サービス業」「卸売業」などが中心だったが、「製造業」でも進展をみせている。また、「建設業」では「企業からの調達」、「製造業」では「事業者への販売」といった「B to B(Business to Business)」での利用もあり、また「B to C(Business to Consumer)」といった「生活者への販売」では、「金融業」「保険業」などでも利用されている。事業者がインターネットから販売を行う主な理由は、「商圏を伴わない新規顧客の獲得」や「取引に伴う間接業務の効率化」などが挙げられる。

EC の種類

「EC」の種類は、「B to B」「B to C」「C to C」の3つに大別できる。

・B to B
「B to B」は企業(事業者)間取引を指し、EC 市場の多くを占める。代表的な例として、「製造業と卸業」「卸業と小売業」などによる「受発注の電子化」や「電子調達」などが挙げられる。また、不特定多数の企業がインターネット上に設けられた取り引きの場に集い相手を探す「eマーケットプレイス」も存在する。

・B to C
「B to C」は事業者と生活者間の取引を指す。事業者からインターネットを通じ、生活者が製品やサービスを購入する「オンラインショッピング」を実現するサービスが代表例といえる。立地条件が課題となることがない「EC サイト」では、事業者の工夫による生活者視点のきめ細かいサービス展開を図ることで、発展を続ける可能性がある。代表的な例として、ネット通販(インターネットによる通信販売)を実現する「EC サイト(単体の店舗)」や、「EC サイト」の集積である「オンラインモール(電子モール、サイバーモールなど)」などがある。「オンラインモール」は、「複数の店舗をまたいだ検索が可能」「決済や配送の一括化が可能」などの利点を生活者に提供できる。また、各店舗の運営者(事業者)に対し共通の「決済システム」を提供することにより、「EC サイト」を独自に構築する場合と比べ、出店費用を抑制する利点を小売業者に提供できる。
また、「One To One マーケティング」「仲介業者の排除」などの特徴がある。生活者への直接販売を通し、事業者は個人の要求に合わせた製品やサービスのカスタマイズを行っている。さらに、複数の製品やサービスを関係づけ、より多くの情報と、選択肢を提示することで、高度な付加価値の提供が可能になった。一方、購入者から代金を預かり、商品の配達を確認した後に事業者に送金する「escrow(エスクロー)」サービスといった取り引きの安全性を保証する仲介サービスも普及している。

・C to C
「C to C」は、生活者間の取引を指す。代表的な例として、「ネットオークション」がある。また、オークションで利用される決済や物流などのサービスを提供する企業を「C to C事業者」と呼ぶ場合もある。

企業間電子商取引(B to B EC)

企業間電子商取引の一つである「電子調達」は、「部品」や「資材」の調達を目的に、商品に関連する「見積もり」や「受発注」、「請求」などの処理に対し、インターネットを利用して、時間や場所に影響を受けない取引を目指し、工数や費用の削減効果も見込む。企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化や合理化を図るための手法や概念として、「ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)」がある。取引先との受発注、資材の調達や在庫管理、製品の配送など、総合的な管理がERP では求めらる。これを実現する管理手法に、「SCM(Supply Chain Management)」で、原材料調達から最終顧客まで、取引先を含む商品の流れを供給の連鎖として捉え、コンピューターシステムを活用し統合的に管理する。

市場の動向

個人や規模の小さい法人が小資本で展開できるネットビジネスは、参入障壁が低い。実存する店舗や倉庫などの資産も所有する事業者によるサービス展開を「ブリック&モルタル」と呼ぶ。また、企業が新たにインターネットを活用した事業に進出する際、すでに所有する店舗や流通基盤、顧客を基とし、インターネットの活用による販売手段の拡張をはじめとするサービスの補完を展開することを「クリック&モルタル」とも呼ぶ。一方、インターネット上のみから、事業が拡大するにつれて実店舗も展開し、紙のカタログや雑誌などを発行する傾向もある。
既存の事業とネットビジネスの融合は進み、それぞれをまたがった展開が一般的なものとなっている。さらに昨今では、「オムニチャネル」戦略として「EC サイト」と「実店舗」を複合的に活用し、あらゆる生活者との接点を連携し拡販するマーケティング戦略を採用する事業者も存在する。
今後は配送インフラの充実により、「越境EC」と呼ばれる国際的な取り引きが拡大すると予想されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年6月号より転載

【クロスメディアキーワード】インターネットメディア

インターネットは、アメリカの軍事産業や学術機関のためのネットワークとして運用されていた「ARPANET」が起源であり、その後、世界規模での情報通信を可能にしたネットワークである。

インターネットの登場と歴史

1990 年代に入り、「Web(WWW:World Wide Web)」といった概念が提唱され、ハイパーリンクを用いたネットワークシステムが公開された。Web 技術は、ハイパーテキストとハイパーリンクをその根本に持つ広大なネットワークシステムである。
商用利用が解禁されたインターネット上には数々のWebサイトが構築され、企業による「コーポレートサイト」や「EC(Electronic Commerce)サイト」、製品やサービスの「キャンペーンサイト」などに活用されるようになった。さらに、「NTT ドコモ」による「iモード」の登場によりケータイ(携帯電話)による接続が可能になり、活用範囲がさらに広くなった。

メディアとしてのWeb サイト

「Web 技術」の根本にある考え方は、閲覧するデバイス(機器)やその接続環境に左右されず公平に情報を取得できることである。したがって環境の相違で、必ずしも同じ体裁で情報が閲覧できるとは限らない。ペーパーメディアの多くは、規定のサイズ(A4 やB5など)で提供され、固定のレイアウトで提供される。Webコンテンツとして制作されたデータは、多くの場合、閲覧者の環境によりデザインやレイアウトが変化する。パソコンだけでなく、スマホ(スマートフォン)をはじめとしたさまざまなデバイスが相次いで登場し、その利用者は増加し続けている。

Web 技術

Web技術はインターネットの普及とともに、専門分野の利用者が多かったコンピューターネットワークによる通信を一般的なメディアとして変化させた。
また、「Web 技術」は、「個人サイト」を爆発的に増加させ、「コーポレートサイト」のほか「コミュニティーサイト」やアプリケーションソフトウェアをダウンロードできる「ポータルサイト」など「Web サイト」の拡大に貢献した。さらに、「チャット」や「通話」などさまざまな機能を生み出しながら、成長し続けている。

ポータルサイトの特徴

「ポータル(portal)」とは、「門」や「入口」などといった意味を持ち、インターネット上で無数に広がるWeb サイトへの入口となる「検索」「リンク」のほか、「事件」や「株価」などの「ニュース」をはじめとする情報提供を行っている。さらに、「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」や「チャット」「Webメール」などといったサービスを提供することで莫大な利用者を獲得し、広告収入に支えられるビジネスモデルを実現した。
「グーグル(google)」をはじめとする検索エンジンを提供する事業者によるWeb サイトのほか、「マイクロソフト」などのWeb ブラウザーを提供する事業者が展開するWeb サイト、インターネットのプロバイダーである事業者によるWeb サイトは、ターゲット(対象者)を絞らないポータルサイトとして競争している。
ポータルサイトの持つ機能的な傾向は、ビジネスモデルを重視し大きな変化を繰り返すことで、個人ごとに掲載する情報を変化させる「パーソナライズ」も実現している。さらに中古車情報や住宅情報などを提供するほかのWeb サイトと提携することで、ポータルサイトとして幅広い情報の提供を行っている。
ポータルサイトの収益は、広告によるものが大半を占めるが、「オークション」や「ショッピング」などのような機能を提供することで「手数料収入」を得る事業者も存在する。また、インターネットの帯域が広くなったことで、「映画の予告」やテレビ放送向けの「CM(Commercial Message)」など、映像のストリーミング配信も利用されるようになった。

メールマガジンの特徴

「メールマガジン」とは、電子メールを利用することで登録者に定期的な情報配信を行うサービスであり、略して「メルマガ」とも呼ばれる。「バックナンバー(過去の記事)」の多くは、Web サイトに再掲載される。有料と無料のサービスがあり、ほとんどの無料サービスでは数行の広告が掲載される。
情報の発信者となる発行者は、企業や個人などさまざまであり、企業によるものでは商品情報やニュースリリース、特定分野についてのコラムなど、非常に多岐にわたる。メールマガジンは、文字だけで構成することが可能であり編集が容易であること、「まぐまぐ」や「メルマ!」などの配信システムを無料で提供する事業者が存在することなどにより、インターネットが普及する中で早期からメディアとして地位を確立した。
利用者は嗜好に合わせメールマガジンを検索と選択を行いメールアドレスを登録することで、無料でメールマガジンが配信されるようになる。配信システムについては無料で提供されていることが多く、メールマガジンに掲載される広告によりビジネスモデルが成立している。

メールマガジンの活用

企業により提供されるメールマガジンとしては、事前に受信を承諾した利用者に対し配信する「オプトイン」によるサービスが一般化している。企業による「メールマガジン」は、マーケティングの一つである「メールマーケティング」として活用されている。この場合、利用者の「年齢」「性別」「居住地」「趣味」「嗜好」をデータベースにより蓄積することで、さまざまな「コミュニケーション」を実現する機会をうかがう。
Web サイトを利用する顧客を待つだけではなく、新規顧客をリピート顧客として育成し囲い込む重要性が高まり、メールマガジンは注目された。さまざまな告知手段と比較した場合においても、メールマガジンによるリピート顧客への育成は期待できると評価されている。メールマガジンは顧客にとって有用な情報源となり、「読み物」としての楽しいものが好まれ、工夫次第で「商品案内」として製品やサービスに対する理解を促す。ただし受信されたメールマガジンがすべて読まれるわけではなく、受信者のほとんどは、「件名」や「目次」で判断するなど、「ペーパーメディア」による「DM(Direct Mail)」と近似した傾向がある。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年5月号より転載

【クロスメディアキーワード】パーソナルメディアとインターネット

主に個人の利用者が、情報の「発信」や「記録」「編集」するために用いられるメディアとして、「パーソナルメディア」と呼ばれるものがある。

代表的なパーソナルメディア

「パーソナルメディア」は、「マスメディア」が情報を大量に「発信」できることと対比される傾向がある。これらのメディアを介した情報の受発信が、比較的匿名性の低い知り合い同士の間で起こるものが多い。「パーソナルネットワーク」「インターパーソナルネットワーク」などと呼ばれることもある。「パーソナルメディア」とは、「カメラ」「家庭用ビデオカメラ」「テープレコーダー」などのほか「ケータイ(フィーチャーフォン)」「スマホ(スマートフォン)」などの機器を指し、「アマチュア無線」や「電子メール」「チャット(Chat)」「ブログ(Blog)」「ソーシャルメディア」などの仕組みやサービスも「パーソナルメディア」と呼ぶことがある。パーソナルメディアによるコミュニケーションでは、特に「ケータイ」「スマホ」などのモバイル端末とインターネット接続による「電子メール」や「ソーシャルメディア」の普及が、生活者間の関係性の維持や発展に大きく貢献している。

インターネットとパーソナルメディア

旧来のコミュニケーション手段では、「手紙」で行われていたコミュニケーションが、「電子メール」や「ソーシャルメディア」などによりコミュニケーションの頻度を高め、さらに対面によるコミュニケーション機会の創出に貢献している。学校や職場を離れることで、必然的な対面によるコミュニケーションの機会を失った場合にも、パーソナルメディアの進化に伴う「電子メール」や「ソーシャルメディア」などの活用により、人々の関係性の継続や、広い人的ネットワークの構築や保持が可能になっている。

チャット

「チャット」は、「世間話」「おしゃべり」などの意味があり、パソコン通信の時代から存在し、複数の参加者が画面を共有し文字情報を会話的にアップロードできるサービスである。当初の「チャット」は、一つの画面で構成されるリアルタイムな「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」のようなものであり、情報は参加者全員で共有される。インターネットが普及したことで、「IRC(Internet Relay Chat)」として運用されており、参加者は「入室する」といった「メタファー」を使用する。
専用アプリケーションを使用し参加する場合と、チャット機能のあるコンテンツにWeb ブラウザーから参加する場合がある。Web ブラウザーによるチャット利用を可能にするための「CGI(Common Gateway Interface)」によるプログラムや、「インスタントメッセンジャー(Instant Messenger)」などのアプリケーションを利用してシステムを構成する。「チャット」自体は断片的なコミュニケーション手段であるため、社会的なメディアとして大きな役割を期待することは難しい。代表的な「インスタントメッセンジャー」には、映像や音声にも対応している「Skype」や、「ケータイ」や「スマホ」「パソコン」に対応したテキストによる「チャット」機能を持つ「LINE」、「SNS(Social Networking Service)」の最大手である「フェイスブック(Facebook)」が展開する「Facebook Messenger」などが広く普及している。

ブログ

「ブログ」は「ウェブログ」とも呼ばれる。個人の生活者が新聞やテレビなどで配信されたニュースを紹介し、独自のコメントやコラムを加え、関連したニュースサイトやポータルサイトへのリンクを掲載しているブログサイトも存在する。
「ブログ」の内容に対する生活者の関心は、マスメディアに匹敵する可能性もあるが、マスメディアのニュースがなければ「ブログ」が活性化しないといった相補関係にあり、すでに確立された旧来のメディアにとって脅威にはなり難いが、個人による情報発信がメディアの一角を占めるようになっている。個人が開設したWeb サイトは、無責任であり内容の信頼性が欠けるといった傾向がある。これは「ブログ」にも当てはまるが、匿名による「BBS」との比較であれば、Webサイトの運営者を明示することで、運営者の意思表示として信憑性があると考えられる。

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアは、インターネット上のコミュニケーションツールとして普及し、多くの会員(利用者)で形成されている。ソーシャルメディアによる情報の伝達力は、マスメディアに匹敵するほどになり、媒体価値を高く評価されるようになった。現在では、企業などのさまざまな組織が生活者とのコミュニケーションを図る上で、欠かせないメディアとなっている。

SNSの歴史

利用者を限定したコミュニティー型情報サービスは、1980 年代頃から存在していた。日本では「ケータイ」の普及に伴い、「ケータイ」向けの「SNS」も発展した。パソコン通信やインターネットの普及段階で多く利用されていた「BBS」といったオープンサービスでは、情報の発信者が意図しない非難や批判の殺到を意味する「炎上」につながる事象も存在する。「炎上」は、継続的に発展するコミュニケーションの妨げとなることも少なくなかった。その後、情報の発信者が「ブログ」のように他者からのレスポンス情報の公開をコントロールできる機能を実現することで、コンテンツとしての品質もコントロールできるようになった。当初の「ブログ」は、専門知識を有する人物の情報発信を中心に、アメリカで使用されていた。しかしながら日本では、個人的な日記を公開するために使用され、関係性の高い生活者同士のコミュニケーションツールとして急速に発達した。ブログは「インタラクティブ(双方向性)」を重視したコミュニケーションツールではなかったことから、閲覧者の管理もコントロールできるアプリケーションとして「SNS」が登場した。

コミュニティーサイト

ソーシャルメディアにより形成される「コミュニティーサイト」は、同様の物事に関心を持つ利用者が自発的に集まりコミュニケーションが行われるサービスである。基本的にサービス自体は無料で提供され、主に広告による収益で運用される。サービス提供者が用意したWeb コンテンツ生成機能を使用し、利用者はコンテンツを制作し公開する。
また、「カテゴリー」や「テーマ」により分類された「コミュニティー」で、利用者同士がコミュニケーションを図ることができる。「メーリングリスト」や「ファイル共有」などのグループウェアの機能と近いサービスを利用し、他者と情報の共有を図ることで、「口コミ」による情報展開が期待できる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年4月号より転載

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-11 デジタルメディア環境とビジネスモデル

デジタル技術とネットワークを組み合わせて、顧客に新たな利便性を提供する動きが活発化している。小ロット多品種化が急速に進む中、営業効率を上げるための手法としても有効である。例えば、Webを活用した入稿、プリフライト、画面校正、修正前後のデータ比較、などの機能を備えたWeb校正システムが普及しつつある。こうしたツールを利用しつつ、独自のサービスやビジネスモデルが生まれてきている。

4-11-1 Web to Print

  • Web to Printとは、Webブラウザーからデータエントリーや印刷指示を行い、印刷物を制作・納入するシステムや仕組み、およびビジネスの総称である。Web to Print を活用したさまざまなビジネスは世界各国で成長しているほか、国内でも急増している。
  • 代表的なモデルとして次のようなものがある。
    1) 印刷発注者がWebブラウザーからデータ入稿と印刷発注を行い、印刷物を制作するという形式のもの。
    印刷通販やデジタル印刷ビジネスの基盤として普及している。
    名刺や製造マニュアルなどのリピート発注において、発注側、受注側双方で大きな効率化が実現できる。
    2) 印刷発注者が、あらかじめ用意されたデザインテンプレートの中から気に入ったものを選択し、テキストや画像など自分の情報をオンラインで編集し、オーダーするというもの。はがき・年賀状、フォトアルバム、ブログ出版など対象はさまざまである。自動組版の機能を提供するサービスもある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-10 デジタルサイネージ

  • デジタルサイネージとは、ディスプレイやプロジェクターなどの装置を使用して表示や通信を行う電子看板システムの総称である。用途によって電子ポスターや電子POP、デジタル掲示板と呼ばれることもある。
  • 従来の看板やポスターとの最大の違いは、文字や静止画像だけでなく音声や動画を使用できること、また秒単位で表示内容を切り替えられることである。そのため、場所や時間に応じて、対象を絞った広告や告知、またリアルタイムの情報発信も可能であり、高い広告効果が期待できる。紙などの広告物やポスターと違い、貼り替えなどのコストや手間も発生しないというメリットもある。
  • ビルの壁面やショッピングセンター、駅、空港など、さまざまな場所に設置され活用されている。また、JR東日本のトレインチャンネルのような電車内広告ディスプレイとしての使用例もある。列車の運行情報を表示する画面と広告画面を並べ、認知度を高めている。時間帯に応じて広告内容を変更することや特定の駅に関する情報を発信することが可能であり、電車内広告はデジタルサイネージの適性が高いと言える。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-9 デジタルデバイス

マルチデバイスの時代では、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などスクリーンデバイスの数が増え、複数のメディアを同時に利用するマルチスクリーン利用者が増えている。テレビやスマートフォン、タブレット端末などを複数併用しているため、同じコンテンツをさまざまなデバイスで見る機会が増えている。表示解像度がデバイスごとに異なるため、ブラウザーの横幅に対応して、表示レイアウトが変わる「レスポンシブWebデザイン」という考え方がある。

4-9-1 電子書籍

  • 電子書籍の表現方法を大別するとリフロー型、固定レイアウト(フィックス)型、プログラム型がある。リフロー型は端末サイズや文字サイズによって文字がリフローする方式である。
  • 固定レイアウト(フィックス)型は固定した誌面を元にしたものである。レイアウト重視の雑誌などを電子書籍化する方法として、普及している。
  • プログラム型はAppleのApp Storeで販売されるようなアプリケーションに準拠した形式を指す。著作権管理や課金が比較的容易であるという特徴を持つ。

4-9-2 スマートフォン

  • インターネットとの親和性が高く、パソコンの機能を併せ持つ携帯電話はスマートフォンと呼ばれている。
  • 2016年時点の代表的な機種には、iOSやAndroidなどのモバイルOSが搭載されたものがある。利用者自身がソフトウェア(アプリ)を追加することで、自由にカスタマイズできることが特徴である。
  • 一般的なスマートフォンでは、通信回線や無線LAN(Wi-Fi)を通じてインターネットに容易にアクセスすることができ、また比較的大きな画面やカメラ、ソフトウェアキーボードなどを搭載しており、電子メールの送受信、Webブラウザー、写真・ビデオ・音楽の撮影や再生、ゲームや電子書籍などさまざまな機能を利用することができる。また、GPSを搭載した機種では、地図ソフトや経路案内などの位置情報サービスを利用することもできる。
  • 2016年時点において、国内では幅広く普及しており、携帯端末の大半を占めるようになっている。
  • スマートフォンの普及によって、誰もが、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境が成立した。そのため、ネットショッピングの拡大やSNSやソーシャルゲームの流行、電子書籍の普及、ビジネスでの活用など社会生活全般への影響も大きくなっている。

4-9-3 タブレットPC

  • タブレットPC(タブレット端末)とは、板状のオールインワン・コンピューターを表す名称である。スレートPCと呼ばれることもある。
  • 2010年、AppleはモバイルOSであるiOSを搭載したiPadを発売した。スマートフォンのように小型画面ではなく10インチ前後の画面を持っていること、スマートフォンから電話機能を取り外したものとなっている。PCと違い起動が早いこと、通常のPCより低価格で通信まで可能な一体型であること、さらにタッチパネルを搭載し、直感的なUIを持つことから、幼児や高齢者にも簡単に利用できることが特徴である。
  • Webブラウザーや動画などデジタルメディアプレーヤーとしての位置付け、ネットブックなどの小型PCに置き換わるもの、ゲーム端末、電子書籍(雑誌)リーダーなどの利用が進んでいる。ビジネス用途でも携帯可能な電子カタログやプレゼン端末
  • 、電子マニュアルなどの利用が急速に普及している。電子教科書や通信教育などの教育分野でも注目されており、さまざまな利用方法が模索されている。

  • 電子カタログやプレゼン端末、電子マニュアルなどを目的に企業内で一括導入されるケースも増えている。
  • 世界のPC出荷台数は2012年頃から減少傾向となっており、主な要因としてタブレットやスマートフォンとの競合の影響と指摘されることが多い。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-8 コンテンツ管理

Webや電子書籍への転用など、印刷物で使用するコンテンツの複数メディアへの展開を当初より想定したデータ管理やワークフロー設計の重要性が増している。今後は、さらに動画、音声などの要素も含めて一元的に扱うマルチメディア対応などが想定される。

4-8-1 ワンソースマルチユース

  • 印刷用データを基に、各種記録メディアやインターネットメディアといった異なるメディアへのコンテンツ展開が行われる。
  • 印刷用に加工されたデータを他媒体へ展開するには、データの再加工を行わなければならず、工数の増大につながる。
  • 印刷用データにおけるサイズや書体指定のような情報を保持せず、印刷メディアやインターネットメディア向けといった、複数メディアへの出力を想定した共有または共通データの作成を求められることがある。
  • 最終的に出力されるメディアを構成する情報をデータベース化し、出力メディアに合わせた検索を行い、データ抽出後に自動的にレイアウトするマルチメディア対応のデータベースが活用されている。
  • 共有または共通データのデータベース化は、情報のメディアミックス展開の際にも有効な資産となる。

4-8-2 CMS(Contents Management System)

  • CMSとは、コンテンツを管理するシステムを指す。
  • 広義では、組織で使用する文書を効率的に管理するためのシステムやソフトウェアを指す。
  • 狭義では、Webコンテンツを構成するテキストや画像、音声、動画などのデジタル素材を体系的に管理し、配信処理などを行うシステムの総称を指す。
  • コンテンツのテンプレートをデータベースに登録し、条件に従いXMLやCSS、XSLなどを用い、テキストデータや画像とともにWebサイトや紙メディアのページを自動生成する仕組みを構築することが可能である。