エキスパート資格制度活用は人材育成の「はじめの一歩」。有資格者の声をお届けします。 続きを読む
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映像とクロスメディアビジネスには 必須の内容が盛り込まれている
クロスメディアエキスパート認証試験合格者に聞く
株式会社パレイド真辺 庄帝氏 代表取締役
株式会社パレイドは映像を中心に、グラフィック・ウェブ・アプリ開発などクロスメディアビジネスに取り組むクリエイティブエージェンシーである。以前、印刷会社にてクロスメディア事業を率いていた真辺庄帝氏が独立し、2015年2月に設立された。クロスメディアエキスパート(以下、CME)資格を取得したことで現在のビジネスにどのように役立っているのかを真辺氏に聞いた。
CME試験を受験したきっかけをお聞かせください。
真辺 以前、印刷会社にアートディレクターとして在籍していましたが、独立してデジタルコンテンツを軸としたクロスメディア事業を立ち上げたい、と当時の社長に相談しました。「それなら、社内ベンチャーのような形ではどうか」ということになりました。そこで、クロスメディア事業部という名前で組織を立ち上げることになりました。
5 月頃から構想を開始し、10 月から事業部をスタートするとなった時、社長から「クロスメディア事業を立ち上げるのだから、CME の資格を持っていると格好が付くだろう」と言われました。
既に試験日が間近になっていましたので、まず、JAGAT のテキストの過去問題を確認しました。学科問題については弱点を把握することができましたので、そこを集中的に勉強することができました。分らなかったところは、改めて言葉の意味から調べ、関連用語も含めてエクセルの表に書き込むという方法で勉強しました。当時は、ネットワーク系やマーケティング理論が苦手でしたので、この分野について深く勉強するきっかけになりました。
企画書の書き方は、正直、傾向と対策が分からなかったので、取りあえず与えられた案件に対して自分なりに企画書を作っていくという、今までどおりの仕事のやり方で、何とか合格することができました。
CME 資格取得によって得られたことは何でしょうか?
真辺 SWOT 分析などの基礎的な知識や論理的思考をしっかり勉強する良いきっかけになりました。その結果、お客様に「デザインはこうした方が良いです」とか、「メディアプランニングについてはこうした方が良いです」などと説明する際に、ロジカルに説明する癖がつきました。当時在籍していた印刷会社では、「提案できる会社になろう」という目標を持っており、暇さえあれば企業を研究し、自主提案するということはやっていました。
現在の会社の社員に対しては、どんな教育を考えているのでしょうか?
真辺 「この業界で食べていくのなら、CME の知識は基本になる」と社員にはいつも言っています。資格を取得することでたくさん仕事を受注できるということではなく、持ってないレベルであれば仕事は取れないということです。今の会社には10 人のメンバーがいて、全員がクリエイターです。代表の私ともう一人のデザイナーが、営業を兼任しています。会社としては、CME、またはプロモーショナルマーケターの取得者には、毎月4000 円の資格手当を出して取得を奨励しています。受験費用も支給しています。
クライアントの目的は、イベントやキャンペーンによってセールスの実績を上げたいということに尽きます。どの場所・どの分野のセールスを強化するか、どんな手法でどんな材料を用意するのか。その費用がいくらでどのくらいの効果が見込めるかということを伝えるのが企画書・提案書になります。イベントがあれば、ブースのアイキャッチ用の映像を作りましょう。その映像にナレーションを入れると商談用の映像に使えます。さらには、映像の素材を使ってカタログを作りませんかという、3 つの流れで提案することもできます。イベントが終わった後でも、「その映像は営業用やウェブサイトに流すこともできます」と言えば、コンテンツのマルチユース提案になります。少ない投資でより多くの効果を上げる、つまりROI を上げることができます。そういう考え方ができるのが、CME であり、ビジネスに生きてくるのです。
セールスプロモーションのビジネスをするのであれば、ウェブや印刷、イベントなどあらゆるメディアや手段を活用しなければなりません。営業マンなら特にこういう分野をしっかり勉強すべきです。業界用語や専門用語を知らないのは、受注する以前の問題です。
また、デザイナーにはデザインの意図をきちんと説明すべきだとよく言っています。クライアントに説明するときには、フィーリングではなく、理論武装しなければなりません。例えば「ターゲットが40 代50 代だから、漢字を使ったグラフィックの方が響きます」という言い方が必要です。ターゲットがどこの誰で、5W1H とか、何がゴールなのかを意識することで、デザインも変わってくるのです。そういう考え方が身に着くので、CME はデザイナーにもメリットがあるものなのです。
真辺さんから見たCMEの意義は?
真辺 今、印刷だけで終わるビジネスはほとんどありません。印刷物を作るなら、同時にウェブに展開されることがほとんどです。つまり、印刷の仕事を受ける時、誰かがそれ以外のビジネスを受けているのです。それを受注できるようにするには、何を勉強すべきか。その内容がこの資格にはあると思います。私の会社でも、展示会に出展することがあります。そこで名刺交換して、これといった方々にはDM として紙の資料を送ります。展示会を見に来る人には、他の企業からもたくさんメールや電話が来ているはずです。だから、コストや手間をかけてもDM を送る意味があるのです。DM を送って届いたタイミングを見計らって電話をするわけです。そういうことが人間の心理を考えたセールスプロモーション、メディア戦略なのです。CME で5W1H に相応しいメディアを選択するということを学んでいるので、なぜ紙が大事なのかを理論的に説明できるようになります。
CME の勉強をすると、今まで見えていなかった景色が見えてきます。紙媒体でもウェブや映像ビジネスでも、その周辺にいろいろなビジネスチャンスが秘められていることが見えてきます。だから、ウェブを作っているお客様に対して「こういう紙媒体があると効果が高まります」と提案することができるのです。
JAGATinfo 2016年7月号より転載
【企業インタビュー:あかつき印刷株式会社】組織で取り組む 提案力向上
クロスメディアエキスパート認証試験合格者に聞く
豊留 拓史氏 第一営業部1 課 係長
あかつき印刷株式会社は東京都の千駄ヶ谷に拠点を置く、新聞印刷を中心とした企業である。その他、冊子、グッズ、ポスター、チラシなどの商業印刷、電子文書やホームページ
の作成のような幅広い分野までカバーしている。営業部門の社員教育の一環として、以前から積極的にDTPエキスパート、クロスメディアエキスパート(以下、CME)試験に取り
組んでいる。同社第一営業部部長の村田麻里氏と同一課係長の豊留拓史氏に話を聞いた。
現在、どのような業務を担当していますか。
豊留 入社して以来営業を担当しており、今年で7 年目です。お客様は建設関係の労働組合のお客様がメインで、組合員向けの月刊の機関紙(新聞)や組合員拡大のための広告チラシなどを受注しています。
DTP エキスパート資格を取得していますが、どのような経緯で受験したのですか。
豊留 配属されると、営業部内では1 年目からDTP エキスパート資格を取得することが目標の一つにありました。入社1 年目の3 月には試験を受けることになっていたので、配属されてからは個人でも勉強は続けていました。
村田 社内でDTP エキスパート受験者向けの講習会を開催しています。すでに資格を取得し、更新を続けている社員が講師になって、次回の受験予定者に講義をしています。土曜日1 日を使って、試験までに10〜12回ほど開催しています。そのほか、テキストを用意し、各自で勉強しています。
具体的にはどのように勉強しましたか。
豊留 講義は事例やサンプルを使うなど工夫されており、分かりやすいものでした。さらに、前回のおさらいとして毎回小テストがあるので、各自勉強しないといけないような仕組みになっていました。点数が悪いと周囲の目も気になりますから、これでモチベーションを保つことができました。結果的にDTP エキスパートは1 回の受験で合格できました。営業として日常的に制作現場とのやり取りを行うので、専門的な用語も使うし、知識がなければ対応できません。DTP エキスパートの勉強を通じて、実務的な知識の幅も、深さも格段に進歩しました。
村田 営業部門では、新入社員にDTP エキスパートの教育を行い、2 年目に受験します。名刺にDTP エキスパートという文字があることで、確実に得意先の信頼感はプラスになります。
クロスメディアエキスパート(以下、CME)にも取り組むのはどのような必要性からですか。
村田 経営層の危機感が反映されています。クロスメディア関連の引き合いがあっても、提案力が弱いので受注できないということがありました。他社は資格受験を通じて理論武装し、いろいろな提案を仕掛けてくる。何もしなければ、どんどん遅れてしまうだけです。
CME に挑戦することで、勉強し、知識を得て自信が持てるようにしたかったのです。社内ではCME の講師役がいないため、JAGAT の講師の影山史枝先生に依頼しました。印刷業界の最新情報や関連知識、論述試験対策である提案について徹底的に指導を受けました。講習会を通じて、レベルアップすることができ、合格者を増やすことができました。
CME 試験に挑戦し、取得したことはどのように役立っていますか。
豊留 CME の論述試験、提案書の勉強は非常に役に立ちました。実務では提案書を書いたことがなかったため、初めて教わるようなことばかりでした。学科(選択式)試験は、試験分野の幅も広く最新知識が求められますが、身近なメディアに関することを改めて勉強する機会となりました。講習会を通じて、プレゼンテーションの方法も一から勉強できました。それまでは自己流で対応していましたが、クロスメディアの提案内容を考える際には論理の一貫性や裏付けを明確にすることが重要なのだと学びました。また現状分析やそれを受けて課題を設定するような手法を学ぶことができました。例えば「こういう問題があってこれを解決してほしい」と言われたときに、単にそれを解決するだけではなく、「問題の本質はこういうことではありませんか?」「もっとこうした方が良いのではありませんか?」のような話や提案ができるようになったことが成果です。
村田 ウェブやスマホなどのデジタルメディアの仕事は情報システム部門が中心で、今は規模も小さく、相談を受けてそれに応えるような形でしか機能していません。ただし、ウェブサイトのスマホ対応やレスポンシブ対応を実現するなど、やはり仕事は広がっています。お客様もいろいろと情報を仕入れて「こういうこともできるはず」とお話をいただきます。つまり、現状は、お客様からの要望があって初めて対応はします。そうではなく、こちらから紙媒体とデジタルメディアを連動するとこんな効果が見込めますなどの提案でビジネスに結び付けることが、今後の課題です。CME の試験は、まさにそのための勉強であり、役に立つと思っています。
CME 資格を取得して、何か変わったと感じることはありますか。
豊留 以前であれば、何か相談されても「ちょっと調べておきますね」という具合だったのが、その場で「それは私も注目しており、今勉強しています」のように答えられると、それだけでも「何かあったら、あかつきさんに相談すれば何とかなる」と思ってもらえるようになりました。そのため、最新の動きについては、もっと勉強しようと思っています。他社も、紙媒体と電子メディアの連動を提案し始めていますから、遅れを取るわけにはいきません。
会社全体のCME 取得状況や方針をお聞かせください。
村田 外勤の営業は約30 名で、約7 割がDTP エキスパートを取得していますが、新入社員を含め全員取得を目指しています。CME については45%が取得済みで、最終的には7 割程度を目指しています。価格ではなく、デジタルメディアや印刷を活用した、より魅力的な提案で競争を勝ち抜いていきたいと考えています。そのための最低限の知恵や知識を持つのがCME だと思っています。
豊留 すべてのお客様がデジタルメディアと印刷の連動を意識しているわけではありません。とはいえ、営業なら「もしかしたらお客様が気付いてないだけで、実はクロスメディア的なアプローチによって解決できるかもしれない」という視点を持っていなければいけないと考えています。依頼されたことだけを行うのではなく、こちらがお客様の問題点に気付いて提案することが重要だと思います。
村田 例えばお客様の担当者の年齢が高いと、どうしても従来どおりの紙での情報発信を中心に考えてしまいがちです。しかし、若い人にアピールするにはデジタルメディアは欠かせません。ウェブサイトやSNS の活用は進んでいないので、そのようところに当社がサポートできるようにしていく必要があると考えています。
そういう意味で、印刷物製造業としての設備投資も重要ですが、これからは人材教育に力を入れないとお客様のニーズには応えられないし、それは会社の業績に直結するという危機感を、経営側が持っています。CME 取得をはじめ将来の人材育成のために、人材ならびに人材教育に対しても投資していくという方針です。
JAGAT info 2016年7月号より転載
顧客のマーケティング活動をサポートするDTPエキスパート
【クロスメディアキーワード】Webアクセシビリティー
コンテンツのデジタル化は、異なるメディアの融合や新たなメディアの開発へと可能性が広がっている。
Web コンテンツのデザイン
Web コンテンツのデザインに対し、多くの利用者は「視認性」や「可読性」、「判読性」などを求めている。Web コンテンツを制作する際には、奇抜なデザインだけを追求するのではなく、利用者が閲覧する目的の理解が必要になる。複数のコンテンツで構成されるWebサイトは、何度も利用してくれる「リピーター」の確保が重要視され、コンテンツの品質がそれを左右する。
ユーザビリティー
Web サイトやそのコンテンツが分かりにくい構成の場合、利用者は別のサイトを閲覧することを選ぶ可能性が高まる。感覚的に理解できなければ、「戻る」や「ホーム」をクリックしてしまう。利用者の視点を重視しないことは、「リピーター」を逃してしまうことにつながる。
「ユーザビリティー(Usability)」とは、「使える」「便利な」などの意味がある。また、製品やサービスの使い勝手は「ユーティリティー」と「ユーザビリティー」により構成されていると考えることができる。「ユーティリティー」は機能や性能を示し、利用者から見た製品の長所に関する程度を表す。一方「分かりにくさ」などの短所が、どの程度であるかを表すことができる。旧来の製品開発では、高い「ユーティリティー」の付与に力を注ぐ傾向があった。その結果、「ユーティリティー」の高さに反し、機能や性能を使い切れない事象も起きた。現在は、「ユーティリティー」の高さと共に、高い「ユーザビリティー」も求められるようになっている。
Web サイトやそのコンテンツに「ユーザビリティー」が不可欠となる理由の一つに、表示された直後に利用方法が理解できないことで、時間の浪費を招くため、価値のないサービスと判断し、別のWeb サイトを選択することが少なくないことが挙げられる。デザイナーが自身の欲求や利害関係者からの要求を優先することは、利用者の立場を考えず、「ユーザビリティー」を無視してしまう結果を生じる可能性がある。制作者側の欲求重視や組織構造を反映したWeb サイトを設計するのでなく、利用者の立場や視点を考慮したサイト構造の実現が望まれる。
アクセシビリティー
「アクセシビリティー」とは、「利用しやすさ」といった意味を持ち、すべての人が利用できる環境の構築を示す。障がいの有無に関係なくWeb ブラウザーを使用することで、Web サイトを構成するさまざまなコンテンツやサービスから、必要な情報の抽出やベネフィットを享受できるようにすることが重要である。目的としている情報への経路には、多くの問題が横たわっている可能性がある。その問題をできる限り解決する姿勢が、Web サイトの構築に必要であり、「アクセシビリティー」の向上につながる。「アクセシビリティー」は、障がい者や高齢者だけを対象としているだけでなく、健常者にも効用を与えることができる。
Web アクセシビリティー規格
メディアをコーディネートする際にWeb サイトを対象とするのであれば、「Web アクセシビリティー」の基本的な要件と内容を理解した上での、Web サイトの構築や運用に関する適切な提案が求められる。
「Web アクセシビリティー」とは、Web を利用するすべての人が、年齢や身体的制約や利用環境などに関係なく、Web サイトにより提供されている情報に問題なくアクセスし、コンテンツや機能を利用できることを指す。Web サイトの構築やリニューアルにおいても、「Web アクセシビリティー」を意識した企画や設計が必要となる。
JIS X8341-3
2004 年にJIS 規格化された「Web アクセシビリティー」『JIS X8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3 部:ウェブコンテンツ』は、2010 年に改定が行われた。改定内容は、2008 年に勧告となったW3C(World Wide Web Consortium)のアクセシビリティー指針である「Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.0」に基づいている。改訂前のJIS規格は、日本の標準であるという位置付けであったが、2010 年度版は、世界標準に則した内容ということにもなる。
音声
音声の再生については、すべての人々に向けた「Webアクセシビリティー」の向上を実現するために、利用者による主導を優先させることが望まれる。2004 年版では、必須項目として「自動的に音を再生しないことが望ましい。自動的に再生する場合には、再生していることを明示しなければならない」とされている。
2010 年版ではさらに詳細を明示し、「自動的に音を再生しない。再生する場合は、3 秒以内に停止させる。またはWeb ページの先頭に停止できるコントロールを提供する」ことを求めている。
また、音声に対して付随する文字による情報の追加も求められる。さまざまな配慮により、初めてすべての人々の「Web アクセシビリティー」の向上が実現できると考えられます。
JAGAT CS部
Jagat info 2016年5月号より転載
【クロスメディアキーワード】クラウドコンピューティング
パソコンにアプリケーションをインストールし、さらにデータについてもそのパソコンに保存している場合、アプリケーションの機能やデータの利用には、「そのパソコンが利用できる環境」に制約される。
クラウドコンピューティングの採用
クラウドコンピューティングとは、ネットワーク(インターネットを指すことが多い)の向こうを「雲(クラウド)」に見立て、これまでパソコンにインストールすることでアプリケーションにより提供されていた機能を「雲の向こう」からサービスとして享受するといった意味が語源となっている。
クラウドコンピューティングを採用し場合は、Webブラウザーによりアプリケーションの機能やデータをサービスとして提供しているサーバーに接続することで、利用できる環境が特定のパソコンになるといった制約がなくなる。さらにケータイやスマホ、タブレットなどパソコン以外の端末からの利用も可能になることがある。クラウドコンピューティングの採用により、データの共有も可能となり、アプリケーションやデータを利用する時間や場所に関する制約もなくなる。しかし、「ネットワークに接続しているサーバー上でデータを処理する」といった考え方は、クラウドコンピューティングに限られるものではない。
ASP(Application Service Provider)によるサービスや、あらゆるモノにコンピューターやIC チップなどが埋め込まれ、有線または無線による通信により常に相互に接続され、いつでもどこからでも、さまざまな情報やサービスを利用できる情報ネットワーク環境である「ユビキタスネットワーク」といった考え方もある。
クラウドコンピューティングの普及
クラウドコンピューティングが一般化した背景には、インターネットの普及や関連する技術の発展がある。ネットワークの利用に高額な費用を要し、機能面においても不便であった時期と比べ、今日ではその障壁が非常に小さなものとなった。
また、仮想化技術やグリッドコンピューティングを利用することで、実際に処理を行うさまざまなハードウェアやさまざまなソフトウェアを意識することなく、サービスを享受できるようになっている。
前述のとおり、クラウドコンピューティングを利用する場合、ハードウェアの購入やシステムの構築に伴う初期投資は、大きな削減を見込むことができ、「短期間だけの試用」も可能であるといった柔軟性も併せ持つ。一方、長期的な利用になることで、契約形態によっては、多くの費用を要するといった例も存在する。
クラウドコンピューティングによるサービスに大きく依存することで、サービスの終了や提供事業者の倒産などが、大きなリスクとなるという懸念もある。さらに、自身でコントロールできないネットワークやシステムの障害による影響を被る恐れもある。
クラウドコンピューティングの欠点
クラウドコンピューティングの欠点として、カスタマイズに対する柔軟性が低いといった意見がある。しかし、サービスの組み合わせにより改善できる可能性がある。また機密情報をインターネットに接続しているシステムに保存して利用することは、ハッキングの対象となるリスクもあり、さらに接続時には盗聴される可能性も否定できない。この点については、クラウドコンピューティングによるサービスを提供する事業者が最も留意するセキュリティー対策に左右されるが、実績のある事業者であれば相応の投資をしている可能性も高く、自身で不完全なセキュリティー対策をしている場合と比べ、高度なセキュリティーを得られるといった考え方もある。
関連用語
・マッシュアップ
「マッシュアップ」とは、「混ぜ合わせる」といった語源から、もとは「違う曲のボーカルと伴奏を融合させて新たな表現を試みる」といった音楽の手法を指す。さらに、複数の機能やコンテンツを融合し、新規にサービス化することについても「マッシュアップ」と呼ぶようになった。特に「Web 技術」においては、無償で提供された複数のAPI(Application Programming Interface)を組み合わせ、あたかも一つのサービスであるかのように機能させることを指す場合が多く見られ、「Web2.0」の特徴の一つとして挙げられていた。
・SaaS
SaaS(Software as a Service)は、アプリケーションソフトウェアをパッケージといった形態ではなく、ネットワークからアプリケーションソフトウェアの機能をサービスとして提供することを主に指している。導入に際しての敷居が低いことや、すぐに利用が開始できる点が代表的なメリットとして挙げられるが、使用中のトラブル対応もサポートしていることが多く、導入だけでなく運用に対しても優位性がある。
・SLA
SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証制度)では、サービスを提供する事業者と委託する事業者間で、内容と範囲、品質に対する水準を明確にし契約を行う。
JAGAT CS部
Jagat info 2016年4月号より転載
【クロスメディアキーワード】メディアとしてのブログ
個人の情報発信スタイルを支えるブログは、独自のジャーナリズムを実現し、メディアとして価値が認められている。
ブログの登場
ブログが普及する以前、個人がWeb コンテンツを公開する場合には、パソコンにインストールされているテキストエディターや専用アプリケーションを使用していた。インターネット上のアプリケーションサービスとして提供されるブログの登場で、個人が容易に占有的なコンテンツ展開を行えるようになった。
情報発信が容易となることで、文章表現能力やコンテンツ制作能力に優れたブロガーが商業的なメディアと同等の情報発信を行うことが可能となり、新聞や雑誌の購読率にも影響を与えるようになっている。ポータルサイトやコミュニティーサイトを運営する法人が、メディアとして価値のあるブログを集めブログ総合サイトとして運営することにより、ブログジャーナリズムの発展を後押しした。場所を問わず情報発信が可能なリアルタイム性の高い「Twitter」に代表されるマイクロブログも登場し、生活者の情報接触時間に大きな影響を与えている。
ブログサービスの種類
ブログサービスには、ブログ専用の有料サービスのほか、独自ドメインがないポータルサイトの無料サービス、レンタルサーバーにアプリケーションをインストールして使用するものなどがある。アプリケーションサービスとして提供されるブログの利用は、システムに関する特別な知識や技術が必要ない。コンテンツ制作では、利用できるデザインや機能は限定されるが、ワープロによる文書データ作成と同様で、テンプレートに従い文章や画像を配置することで完成させることが可能であり、多くの人々に利用されている。
一方、レンタルサーバーにインストールし利用するブログは、カスタマイズによりレイアウトやデザインの変更のほか、さまざまな機能を追加できる。デザインやプログラミング、システムに関する知識が必要になる。しかしCMS(Contents Management System)で構築されたWeb サイトと遜色ないサイト構築が可能であり、企業が事業活動における情報の受発信手段として利用することが多くなっている。
ブログの機能
「トラックバック」は、ブログの代表的な機能の一つで、別のブログにリンクを設置した際に、リンク先のブログ運営者に通知を行う仕組みである。発信している情報と関係のある他のブログと、連携や交流が可能になる。また、ブログで公開されている記事に対し、閲覧者が意見や感想を入力できる「コメント機能」も代表的なものである。「コメント機能」により、ブログは双方向性のあるコミュニケーションメディアとなる。コメント入力者の名前欄に、自身のブログURL やメールアドレスの掲載が可能であり、「誘導」や「情報収集」などできるなど、コメント入力者の利点もある。
有名なブログアプリケーションには、プラグインとしてさまざまな機能がサードパーティーとなる法人や個人から提供されており、短時間かつローコストで多機能なシステムを立ち上げることができる。
マイクロブログ
「Twitter」のような文字数に制限があるマイクロブログの登場で、個人の「気付き」や「感想」「事象」などを即時的に情報発信が可能となった。また、ケータイやスマホなどのモバイル端末の普及や通信環境の充実により、場所や時間を問わずに情報の受発信を行えるようになり、マイクロブログの普及に貢献した。
高度情報化社会の生活者は、さまざまな情報への接触時間が長くなる傾向があり、情報の受発信源であるマイクロブログは、メディアとしての価値が認められている。マイクロブログからコーポレートサイトやSNS への連携や誘導が可能なことから、話題性の高い情報がマイクロブログに投稿される傾向がある。放送局や新聞社、出版社などといったマ スメディアを運営する組織が、マイクロブログのアカウントを取得し、速報性のある情報配信を行っている。
ブログの問題点
ブログの活用は、「情報発信が容易である」「更新が容易である」「SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策も行える」などさまざまな利点がある一方で、いくつかの欠点もある。ブログにより記事を日々公開すると、トップページの最新記事は数件が掲載されるが、古い記事は掲載されない。したがって、閲覧者が過去の記事を読む可能性が徐々に低くなる傾向がある。過去の記事が「価値のある情報」であっても、専門的なカスタマイズを行わない限り、PV(Page View)数は伸びない。
ブログによる情報氾濫
ブログの登場により情報発信が容易になったが、「価値のある情報」が常に発信できるとは限らない。安易な情報発信は、信憑性や公平性を欠く可能性を秘めており、ブランドを傷つける恐れもある。誹謗中傷ともとれる情報発信を行ってしまったために、閲覧者の反感を高め、企業が謝罪する事例があった。また、株の取引市場に大きな影響を与え、株価が暴落する事例もある。さらに、著名人であると偽り、情報発信を行う事例も後を絶たない。
検索サイトの検索結果表示では、探している情報が見つけにくくなるといった問題も起きている。
適切な情報発信に向けて
企業が事業活動の一環でブログを活用するのであれば、自己満足的ともいえる安易な情報発信を避ける考えも必要である。コンテンツとして表現されていることが、すべてであると解釈する閲覧者を生むことも考えられ、個人や法人を問わず、意図しない「印象」をブログにより与えてしまう可能性もある。
「ブログ」で表現するコンテンツは、インターネット上にあるごく一部であり、表現する内容については、十分な検討をした上での公開が望まれる。
JAGAT CS部
Jagat info 2016年3月号より転載
「DTPエキスパートカリキュラム」第12版発表 ~ 試験範囲が示す人物像、役割
DTPエキスパート認証試験の最新カリキュラム改訂(第12版)を11/18に発表した。
カリキュラムは試験の出題範囲をまとめたものであるが、同時に目指すべき有資格者の人物像や役割も示している。 続きを読む
【クロスメディアキーワード】ダイレクトメールの特性
「DM(Direct Mail)」は、販売促進の代表的な一つの手法である。個々の顧客に対し、直接的に情報を訴求できる媒体であり、固定客の維持には適しており、その特徴から活用方法はさまざまである。
ダイレクトメール
「DM」は目的に応じターゲット(対象者)を選定にすることにより、高い効果を期待できる。また、効果測定が可能であるといった利点があり、「DM」による告知を行ったプレゼントキャンペーンでは、申込者数がレスポンス率となり、「DM」の効果が測定できる。
送付先となるターゲットに合わせ情報をカスタマイズすることで、深い情報の発信が可能だが、ターゲット数と比例し費用も増加することから、到達度が犠牲になってしまう傾向がある。効果の指標となる「レスポンス率」を上げる方法を理解し、効果的な情報発信を行うために、マーケティングに関する知識やデータの分析方法の理解が必要になる。
認知と興味
一般的に「DM」では、消費行動のきっかけとなる生活者の「認知」「興味」を向上させるための情報を提供する。サンプルや割引クーポンなどを同梱することで、「DM」の受信者へ「認知」「興味」を刺激し、消費行動へと導く。したがって、「AIDA」や「AIDMA」などの生活者の消費行動モデルについても理解した上で、マーケティングの一環として「DM」の適切な企画を立案し、配信することが望まれる。
One to One DM
「One to One DM」は、ターゲットとなる顧客ごとの「嗜好」や「最新購買日」「累計購買回数」「累計購買金額」などの属性に合わせ、掲載する情報に変化を与え展開する「DM」である。「One to One DM」の実現には、顧客の分析が必要となる。
顧客に関する情報は、主に基本情報と購買データに分かれる。基本情報は、「年齢」や「性別」「住所」などといった属性により構成される。購買データは、「最新購買日」「累計購買回数」「累計購買金額」などの購買履歴により構成される。これらの情報を蓄積しているデータベースから、セグメント化(属性によって分類)されたデータを抽出し分析する。分析結果を基に、セグメントごとに対応した計画を策定し「DM」を展開することで、効果的な結果が期待できるようになる。
分析に用いるデータには、さまざまな行動履歴が含まれていることが望ましい。その理由は、さまざまな行動履歴により、セグメントに幅を持たせることができるようになるからである。
データマイニング
顧客に関するデータを解析し、項目ごとの相関関係や法則などを発見するためには、「データマイニング」に関する技術を利用することで、効率的かつ効果的な結果が期待できる。「データマイニング」は、データベースを「潜在的な顧客ニーズが眠る鉱山として捉え、この鉱山から採掘する(mining:マイニング)」という意味を持つ。
スーパーマーケットのPOS(Point Of Sales)データをデータマイニングすることにより、「ビールを買う顧客は、一緒に紙オムツを買うことが多い」「雨の日は肉の売り上げが良い」などのような、項目間の相関関係を発見することができる。通常では思いつかない仮説ができることも、データマイニングの特徴である。
ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングでは、見込顧客や既存顧客に対する個別のマーケティング施策により、「顧客の囲い込み」や「商品の販売」を拡大する。ダイレクトマーケティングでは、プロモーションの結果がターゲットのレスポンスといった観点から測定することが前提となる。したがって、顧客データに大きく依存する傾向がある。通信販売事業と深い関係性があり、さまざまなSP(Sales Promotion)メディアに支えられている。対象となる生活者に対し、単に情報を発信するだけではなく、必要な情報を選別し送付することで、期待する行動を促すことが目的となる。
カスタマーシェア
カスタマーシェアとは、顧客の一定期間における購買総額のうち、個別の商品にそれぞれどれだけ費用を投じたかを示す割合を指す。販売側にとっては、顧客の総購買金額の何パーセントを獲得したかを表す。
カスタマーシェアの最大化を考える場合に、顧客のライフサイクルにおける節目の需要を理解することで、さまざまな商品に対し応用が可能になる。「進学」「就職」「結婚」などの節目には、一般的に消費行動が連動している。「結婚」を機会に家具を購入するなどの行動は、その典型的な例といえる。また、「出産」により家族構成が変化するときにも、大きな消費機会が訪れる。このようなタイミングに合わせ、特定の顧客に対し継続的に「DM」による販売促進活動を展開することが、固定客の囲い込みにつながる。
JAGAT CS部
Jagat info 2016年2月号より転載
DTPエキスパートカリキュラム改訂第12版公開
DTPエキスパートカリキュラム最新版(改訂第12版)を公開しました。
下記よりご覧いただけます。
次期第47期試験は、第12版を基に実施します。
第47期DTPエキスパート認証試験 受験案内
カリキュラム第12版改訂ポイント解説を含めた試験対策セミナー
【2017/1/18東京開催】「DTPエキスパートのポイント解説」認証試験・学科/課題制作対策講座
【2017/1/19大阪開催】「DTPエキスパート学科・課題制作対策講座」