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【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-3 網点

  • 平版・凸版印刷などでは、画像の階調表現を網点面積率の大小で表現する。
  • 網点のような周期的パターンの画像を2つ以上重ねると、そこに別の規則的な模様(モアレ)が発生する。各色版を重ねて印刷した際にできるモアレのひとつに、網点が小さな環状あるいは花状につらなったロゼットモアレがある。
  • 各色版を重ねて印刷するときのスクリーン角度が不適切であると、モアレが目立ち絵柄の再現を損なう。モアレを目立たなくするために、各色版の角度をコントロールしている。
  • かつて網点の形成は光学的スクリーンを用いて行われていた。デジタル出力では、従来の網点形状を電子回路でシミュレートしている。網点形状によって画像の滑らかさやシャープさが変わる。

3-3-1 スクリーン線数

  • 網点は1インチに並ぶ網点の数によって、粗密を表現する。これをスクリーン線数という。
  • 平滑度の低い紙では、インキ皮膜厚をより厚くして印刷しなければならないので、網点が太りやすくなる。したがって、紙質に応じて適切なスクリーン線数を選ぶことが必要である。
  • アート・コート紙を使うカラー印刷では175線~230線くらいが使われ、中・上質紙を使う書籍、雑誌や新聞では85線~133線くらいが使われることが多い。
  • 250~300線以上は高精細印刷とも呼ばれ、刷版製版から印刷にいたる品質管理は厳密なものとなる。
  • 巨大な看板などは、いったん網点出力したフィルムを拡大して意図的に粗い線数にして(目伸ばし)、インキを多く乗せて濃度を高く印刷することもある。

3-3-2 スクリーン角度

  • 各色版を印刷で刷り重ねる際にモアレが目立たないようにするために、刷版上で各色版のスクリーン角度を変える。
  • 網点は水平、垂直に並べるよりも45度に傾けた方が目立たなくなるので、単色印刷では45度のスクリーン角度を使う。
  • プロセス4色では、モアレが目立つ版がC、M、K3色あるので、45度に主版を置き、それに対して他の主版の各版をそれぞれ30度ずつ離して置く。これら3色のうちのいずれか2色の中間に、モアレが発生しても目立ちにくいY版を置く。

3-3-3 AMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)

  • アナログ製版の時代から現在に至るまで、最も一般的に使用されている。等間隔に配置された網点の大きさを変化させることで色の濃淡を表現するスクリーニング技術である。網点の再現性、印刷時のインキ転写精度に優れており、オフセット印刷における標準的なスクリーニング方式とされている。網点の形状はスクエアドットの他にラウンドドット、チェーンドットなどがある。

3-3-4 FMスクリーン

  • FMスクリーンでは、網点(実際はドットというべき小さな点)の直径を一定にして、点と点の間隔を制御することで濃淡を表現する。一定面積内の点の数は、明るく表現する部分では少なくなり、暗く表現する部分では多くなる。
  • FMスクリーンの特徴としては、1) 従来のスクリーニングでは網点が規則的に並び、スクリーン角度に起因するモアレがあったが、それがないこと、2) 点が非常に小さいので布地や木目などの表現に優れていること、3) スクリーン線数による制限がないので豊かな階調表現ができること、などである。
  • FMスクリーンでは、絵柄中の平網部分、中間的な明るさのフラットな部分やハイライト部で、画質が荒れた感じになりやすいが、さまざまな対処法がある。
  • 4色プロセスインキセットだけではなく6~7色を使った印刷方式など、将来のカラー印刷への展望を開いた画期的な技術である。

3-3-5 高精細印刷

  • 標準的なオフセット印刷の場合、175線程度のAMスクリーニングを用いることが多い。それに対して、より精細な線数で刷版を製作し、印刷することを高精細印刷と呼ぶ。一般的には250〜300線以上のスクリーン線数を指すことが多い。250線を越えると、網点は肉眼で確認できないほど微細となり、階調もなめらかとなる。画像が鮮明で高彩度の表現が可能となるため、写真集や美術印刷などに用いられる。一方で印刷条件が厳密となるため、管理面の制約もある。

3-3-6 網パーセント

  • 2色以上のインキを刷り重ねて色を出すことを掛け合わせという。普通のカラー印刷におけるCMYK プロセスインキ4色の掛け合わせは、各色の網パーセントを指定することで行う。
  • 平網(ひらあみ)をかけることを網フセと呼び、色見本として10%単位の網の組み合わせが印刷されているものが多い。
  • プロセスインキを「M70%+Y100%」で掛け合わせると、オレンジになるが、オレンジ、黄緑、青紫のような色は、プロセスインキを掛け合わせるより特色を使った方が鮮やかである。
  • 「C50+M50+Y50」など等量のCMYの掛け合わせたグレーは赤みを帯びるためKに置き換えた方が安定する。
  • 特定のプロセスインキ用に分解したCMYK データを別のインキセットで印刷すると仕上がりが全く異なる可能性がある。つまりCMYK データはインキに依存するデバイスデペンドバリューである。
  • CMYK の網パーセントがどのような色になるかは、インキ自体の分光反射率や紙、湿し水管理、刷り順、印刷機本体の調整、また温度・湿度等の印刷工場の環境といった複数の条件が積み重なって影響する。
  • 網パーセント自体は「面積率」という絶対値であるため、印刷工場内での管理には有効でも色を表現する情報としては万能でない。インキや紙や印刷条件が標準化されたものとして、日本ではJapan Color、アメリカではSWOPやGRACol、ヨーロッパではFOGRAなどの指標がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-4 プリプレス

プリプレス工程は、より短い時間で作業を遂行しなければならないので、新たなワークフローの設計や分業体制の改善や、そのコントロールが必要であることを理解する。

3-4-1 ワークフロー

  • デジタル化してシームレスなワークフローになると、文字、イラスト作成、画像処理、ページレイアウトなどの諸作業の分担に合わせて、責任範囲を決めておくのがよい。
  • 出版印刷の場合、編集者は出版物の設計に責任をもち、全体の進行・管理を行って、編集作業を通して印刷物を統一感のあるイメージに仕上げる。
  • 編集者は、文章量のバランス、文体、用字用語、表現が適切であるか、図版類や写真原稿が揃っているかなどのチェックをして必要な修正の指示をする。
  • 完成したページのデータを出力する前には、ページに貼り付ける画像データや線画データ等がすべて揃っているか、また、データの解像度やデータ形式が適切なものとして保存されているかをチェックしなければならない。

➢ アナログ型(DTP以前の製版工程)

  • デジタル化される前の製版工程では、文字原稿、図版原稿(白黒原稿)・イラスト原稿、写真原稿(階調原稿)の3種類のパーツを別々に仕上げた後にレイアウト指定に従って組み合わせ、1枚のフィルムにまとめ上げていた。このまとめる作業を集版と呼んだ。
  • • その後、集版作業は、CEPS(トータルスキャナー、電子集版装置など電子化された製版機器)と呼ばれた非常に高価な装置によりデジタル化された。
  • デザイン・レイアウト工程で作成された文字や線画データと、スキャナーから入力した画像データとをコンピューター上で統合し集版を行った。
  • DTPでは、こうした版下作成・作図とレタッチや集版は同じ環境で行うことができるため、明確に区別することはできないが作業工程としては分業の場合がある。

3-4-2 製版

カラー印刷における色分解から刷版焼付用の分版フィルムの大貼り、刷版製版までの工程をプロセス製版と呼んでいた。DTPによってこの工程は統合された。作業手順は変わっても、その機能・目的および原稿の再現のためにどのようなコントロールがなされているかは同じである。

➢ デジタルプリプレス

  • DTP(ページレイアウト)ソフトによりページ内における文字、図形、画像の配置や、どのように表示するかが指定される。
  • DTP(ページレイアウト)ソフトが出力処理をする段階でPostScript様式、またはPDF様式のファイルを生成し、あるいはプリンタードライバを経由して出力機に送る。
  • PostScriptファイル、またはPDFファイルは、文字オブジェクト・図形オブジェクト・ビットマップのオブジェクトを位置の脈絡なく混在させて記述できる。

➢ PDFワークフロー

  • Adobe PDF Print EngineはPDFベースのRIPエンジンである。PostScriptでは対応していない「透明」などを含むPDFに対応している。
  • 面付けなどの作業をPDFデータで行うことにより、出力機器への負担が軽くなり、より高速な出力が可能になる

➢ ラスター出力

  • デジタル方式の画像システムでは、画像を構成する要素の中でいちばん細かいものをピクセル(pixel)と呼ぶ。RIPなど画像プロセッサーは、ピクセルの場所を処理空間のアドレスで管理し、画像に従って、どれをオンにして、どれをオフにするかを指定していく。
  • 網点を生成するときは、画像の該当部分の濃度値によってピクセルを置くか置かないかが決定される。一般的にはピクセルは、xy方向とも等間隔に引かれた平行線による直交グリッドに沿って置かれる。
  • RIPは画像のピクセルを、x軸あるいはy軸に沿って取り出し、ラスターデータ化する。
  • レーザープリンターのようにラスターデータを受け取って、光の点の点滅するビームにして出力(露光)するものをラスター出力装置という。

3-4-3 刷版

➢ CTP

  • RIP処理したデータから直接オフセット印刷用の刷版を出力するものをCTP(コンピューター・トゥ・プレート)という。
  • CTPは、フィルム上の処理ができなくなるので、製本の仕様に合わせてページを再配置する面付けや、色版のズレを見込んだ補正であるトラッピング処理が必須である。
  • 刷版は、印刷機が決まらないと出力できなかったり、印刷機の変更でやり直しになるので、作業準備を正確に行う必要がある。
  • CTPは、中間工程がなくなり、デジタル化されたことにより画質の劣化が起こらず、高品質が得られる。刷版製版で行っていた焼き度調整や印刷機に合わせた調整は、前工程と連携しデータに対して処理しなければならない。
  • 従来の現像処理を行わず印刷機の機上もしくは前処理で行う環境に考慮した現像レスのタイプのCTP版が普及しつつある。

➢ 水なし平版

  • 湿し水を必要としない水なし平版は、インキ反発層としてシリコン層を刷版の最上部に作り、画線部はその下に感光性樹脂層として作られている。フィルムの焼付け後の現像処理により画線部のシリコン層が剥離し、その下の樹脂層が露出する。インキを受理する画線部は凹状になっているので、ドットゲインが少ない。
  • また水を使用しないので版上に砂目が不要で、PS版に比較すると網点再現性がよく、水によるインキ乳化がないので光沢のあるボリューム感のある印刷物が得られる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-5 プレス

3-5-1 有版印刷

  • 印刷には4つの版式があるが、今日の商業印刷や出版印刷では、オフセット(平版)印刷が主流になっている。出版の一部および軟包装印刷ではグラビア(凹版)が主流である。凸版印刷の一種であるフレキソ印刷は、包装材料の印刷に使われる。
  • 扱う用紙が長巻の印刷機を輪転方式、カット紙のものを枚葉方式という。
  • 平版は解像性・価格・生産性において、他の版式に比べて優れている点が多く、印刷版式の中で最も多く使われている。

➢ 平版

  • 水と油の反発作用を利用し平面の版を用いて印刷する。版の画線部は親油性でインキが着き、非画線部は親水性で水の皮膜で覆われることによりインキが弾かれる。
  • 水の代わりに、シリコンを用いてインキを反発させる版を使った水なし平版もある。

➢ 凸版

  • 版の凸部が画線部で、そこにインキをつける。もっとも古くから利用された版式で、活字、活版印刷のほか、シール、ラベル、段ボール、ビジネスフォームなどの分野で用いられている。

➢ 凹版

  • 版の凹部が画線部で、版面全体にインキを付けた後、版の表面をぬぐい凹部に残ったインキが転写される。
  • 凹部にあたるセルの深さによって階調を表現しているコンベンショナルグラビアに対して、最近ではセルの大きさによって階調を表現する網グラビアが主流になりつつある。

➢ 孔版

  • 画線部が孔状になっており、その孔をインキが通過して被印刷物に転写される。

3-5-2 デジタル印刷

  • デジタル印刷は無版の印刷方式である。版を使わずにコンピューター上で製作されたデータ(デジタルイメージ)を、電子写真方式やインクジェット方式により、紙やフィルムなどの原反に印刷する。色材はインクやトナーである。
  • 無版方式であることから、印刷版をつくる手間や材料、コストを省くことができる。また、大量複製だけでなく、小ロットや可変(バリアブル)印刷も可能である。
  • ページ単位で印刷内容を変更することが出来るため、書籍などのページ物では電子(自動)丁合が可能である。
  • デジタル印刷が実用化された当初、小ロット印刷に有効であることから、POD(Print On Demand、プリントオンデ
    マンド)、オンデマンド印刷とも呼ばれていた。
  • 最近ではデジタル印刷の機能が分化・専門化し、ビジネスフォームや軟包装、シール・ラベルなど利用目的に応じた専用機種も開発され、普及しつつある。
  • 新たなトナーやインキなどの開発が進み、多色印刷や金・銀・クリアインキ(トナー)、広色域印刷を実現している機種も存在する。
  • 用紙ごとのプロファイル搭載や定期的なキャリブレーションを行うことにより、カラーマネジメントの精度が向上する。

➢ バリアブル印刷

  • バリアブル(可変)印刷とは、無版という特徴を活かし、ページ単位で印刷内容を変更することである。共通のレイアウトに対し宛名や画像などを部分的に差し替える方法と、ページ全体を差し替える方法がある。特定の印刷方式やデータ処理方式を指しているのではなく、総称である。

➢ パーソナライズ印刷

  • バリアブル印刷の一種で、特定の個人向けに編集した内容を印刷することをパーソナライズ印刷と呼ぶことがある。代表的なものとして、顧客情報に応じて内容を変えるDMやIDカード等がある。


➢ バージョニング印刷

  • デジタル印刷では、用紙と判型が同一であれば、内容や枚数の異なる印刷物を一度に大量に印刷することが可能である。例えば、店舗別、地域別など、個々の内容は小ロットであるが、全体として大量印刷することをバージョニング、またはバージョニング印刷と呼ぶことがある。

➢ ハイブリッド印刷(追い刷り方式)

  • 大量印刷に適しているオフセット印刷と無版方式でバリアブル印刷が可能なデジタル印刷を組合せることをハイブリッド印刷(追い刷り方式)と呼ぶことがある。例えば、DM、クーポン券や入場チケットのID番号・バーコード・二次元コードなどが代表的である。背景の固定イメージはオフセット印刷(プレプリント)した上で、デジタル印刷機を使用して、可変データを追い刷りするという方式である。

➢ データプリント分野における一括印刷

  • ビジネスフォームや請求明細書などデータプリント分野などでは、以前はあらかじめオフセット印刷された台紙(プレプリント)に、データ部分のみを追い刷りする方法が多用されていた。昨今、プレプリントの在庫管理の手間やコストが小さくないこと、デジタル印刷機のスピードやカラー画像品質が向上したことから、白紙への一括印刷が主流となりつつある。

3-5-3 品質管理

印刷においては工程変量があることと、その要因、印刷方式による色再現の違い(濃度再現域)を理解する。品質管理は、印刷物製作における入力から出力までの工程をトータルに考えなければならない。

➢ オフセット印刷と品質

  • オフセット印刷で適切なカラーバランスが得られるのは、印刷紙面上でインキ膜厚が1ミクロン前後で刷られている時である。
  • インキ膜厚が大きくなると裏つきなどのトラブルの原因となる。反対に膜厚が小さいと印刷物の色調にボリューム感が不足し、ベタのつぶれが悪くなる。
  • インキ膜厚は濃度と一定の関係がある。膜厚が増すにつれてカラー濃度も高くなる。印刷工場の実作業ではカラー濃度を測定してインキ膜厚の適正量を管理する。
  • 実際の印刷インキはCMYの色相が理想値とは少しずれているのでCMYの等量混合ではニュートラルグレーとはならず、少し赤みのグレーとなる。そのため50%付近の平網でCに対してMとYを10%程度少なくしたカーブで色分解をしておく。
  • カラー印刷物のシャドウ部は墨インキだけではつぶれが悪いので、墨ベタの下には色版の平網を入れることが行われる。通常はC60%程度の墨下を入れるが、黒の色味の調整のために必要に応じてMYを入れることもある。これをリッチブラックと呼ぶ。

➢ 品質基準

  • Japan Colorは、ISO/TC130国内委員会が中心になり、日本印刷学会の協力のもとに作られた印刷における色の標準である。1993年に設定されてから何度か改訂され、最新版は「ISO準拠 ジャパンカラー枚葉印刷用2011(略称:Japan Color 2011)」である。
  • 印刷分野はもちろん、カラーハードコピーの色再現基準として、カラープリンターなどの関連分野も対象になる。また、印刷発注時の品質基準の指標としても利用できる。アート紙、マットコート紙、コート紙および上質紙の4種類の印刷物を用意している。
  • Japan Colorを印刷できることを認証する制度もある。
  • JMPAカラーは、同じ広告データでも印刷会社ごとに色調が異ならないように、日本雑誌協会が策定した雑誌広告用の色標準である。雑誌広告をDTPで制作した場合に、そのDTPデータの色再現が広告会社、出版社、印刷会社で同じとなるように色基準を設定している。

➢ 品質確認

  • DTPからCTP出力する際には、製版印刷の品質管理のために日付・担当・JOB名・刷り色・改版情報(バージョン名など)やカラーパッチ(カラーバー)、テストチャートなど必要な情報をトンボの外側に入れる。
  • 本機校正の品質管理にはカラーパッチを濃度計や色彩計などで計測する。
  • 品質管理上のカラーパッチの役割は、一般にインキの濃度をベタパッチで測り、ドットゲインが正常かどうかを平網でチェックし、CMYの色の偏りをグレーでチェックする。
  • 分色刷りは、各版単独の色校正であり、特に特色や補色が間違いなく印刷されているかどうかを確認できる。また印刷現場に対する版と刷り色の確認用にもなる。
  • 顧客に提出する色校正は、顧客にカラー画像の品質の確認をしてもらい、本刷りの了承を得るためのものである。校正結果は、製版工程への修正の作業指示となり、印刷工程への本刷りの作業指示となる。

➢ 検版

  • 主な検査、検版の種類は、企画デザイン制作時の修正箇所や修正ミスの確認、クライアントやデザイナーからのゲラ(プリント出力)と入稿データの比較、製版の面付け違いの確認、出力時の初版または一つ前の版との比較確認、印刷のためのプレートの出力状態または版面設計の確認などがある。
  • 製版システムのプラットフォームやソフトウェアの相違から生じる文字化け、フォント違いなどのトラブルや文字の変更・訂正、写真の差し替えやトリミング、調子変更、平網指定の変更などを比較・確認する必要がある。
  • プレート出力やデジタル印刷の前に、デジタルデータ同士を比較するデジタル検版システムがある。同システムでは、同一RIPによるRIP済みデータを使用して修正前後のデータを比較し、修正ミスや相違を識別する。
  • 検版結果は例えば初校と再校の差分は、ディスプレイで表示し確認するかプリンター出力して確認するのが一般的である。
  • アナログ媒体の検版すなわち印刷物、プリント出力物等の検版では、通常目視または媒体をスキャナー入力し、デジタル化して検版を行う。この時、比較する媒体自体の伸縮や特性による変倍に対しての補正処理を施し、さらにスキャナー入力時の角度の変化や変倍を補正する必要がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-6.ポストプレス

3-6-1 製本

製本様式には、中綴じ・平綴じ・無線綴じ・あじろ綴じ・糸かがり綴じなどがある。綴じ方が変われば、企画・デザイン・レイアウトの段階で配慮が必要になる。各製本様式で版面や面付けに関してどのような調整が必要であるかを知っておく。

  • 用紙は、書籍が仕上がった状態で紙の目がヨコ目であると、ページがめくりにくくなるので避けねばならない。
  • 用紙サイズを決めるときには、印刷上必要なくわえ代や、製本の裁ち代、無線綴じの場合のミーリング部分などを考慮する必要がある。
  • 綴じが終わった印刷物の天、地、小口を裁断することを三方仕上げ裁ちという。

➢ 並製本

  • 雑誌や簡易な冊子は、一般に表紙の用紙が薄く、表紙と本文のサイズは同一であり、このような製本方式を並製本という。
  • 並製本の綴じ方には週刊誌のような針金中綴じや平綴じ、あるいは接着剤を使って表紙をくるむ無線トジがある。いずれも製本後に仕上げ裁ちをする。一般に雑誌では表紙を1ページ目(あるいは表1)とすることが多い。

➢ 上製本

  • 上製本では、表紙は本文よりもひと回り大きく、三方裁ちの背固めのあとで表紙をつける。表紙をページ数には入れない。
  • 上製本では書籍の用途や耐久性に合わせて、多様な背や表紙の方式がある。本文の綴じられる部分と表紙の背が一体になっているものと、表紙の背と本文の綴じの部分に空隙を作って開きやすくしたホロー・バックがある。

➢ 面付けと折丁
文字組方向によって綴じ方式が右開き・左開きであるか、また平綴じ・中綴じであるか、また印刷サイズによって面付けや製版寸法が異なる。縦組、横組の典型例を覚えておく。

  • 折ったときに正しいページ順になるよう、印刷版のサイズに合わせて各ページを配置することを面付けという。
  • 面付けの際の数・順序・位置は、本の綴じ方、折り方など製本仕様によって決まる。
  • 台割は、片面8ページ、両面(裏表)で16ページを1台としている場合が多い。
  • 面付けで縦組の場合、本は右綴じ・右開きになり、折丁の袋が地になるように折る。横組の場合、本は左綴じ・左開きで折丁の袋が天になるように折る。
  • 面付けを行うときは、背丁・背標を入れる。背丁には書籍名・折数などが入る。背標は折丁の順番を示す標識で、1折から順に縦長の四角ベタを上から下へずらして入れていく。
  • 背丁・背標は、あじろ綴じや無線綴じでは、背に入れる。中綴じはノドまで開くので背丁・背標を背に入れることができないため、天袋や地袋に入れる。
  • 面付け計算は、仕上り寸法に裁ち落とし分(3mm)を加えた製版寸法で、見開き2ページ単位で行う。
  • A列本判(625×880mm)にA5判(天地210×左右148mm)の面付けをする場合は、天地の製版寸法は216mmで、左右の寸法は302mmとなる。その結果、左右の面付け寸法の合計は604mmとなる。
  • 印刷方向にはくわえ先・くわえ尻を加え、印刷の左右方向には針先・針尻を加えて用紙を決める。

3-6-2 折り

  • 商業印刷物で仕上げに折りの入るものは一般にはリーフレットと呼ばれる。
  • 二つ折り、巻き三つ折り、外三つ折り、経本折り、観音折りなどがある。
  • 巻き三つ折りは折った内側の短辺の寸法を2~3mm小さくする必要がある。
  • 外三つ折りの場合は正確に1/3ずつになるように入れる。
  • 観音折りは左右対称に内側へ折り、内側の寸法は外側より2mm程度小さくする。見開きのページに絵柄がまたがる場合は裁ち代部分の絵柄は重複させる。

3-6-3 表面加工

  • 雑誌の表紙や商品パッケージなどは、印刷終了後に印刷物の保護、艶、堅牢性という機能面や、デザインの差別化のために表面加工をする場合がある。その方法を大きく分類すると、1) ニス等を塗布する光沢コート、2) ニス等を塗布し熱と圧を加えるプレスコート、3) フィルム類を熱圧着するラミネートの3つに分けられる。
  • 光沢コート加工は、水性ニスや溶剤系のニスを塗布し熱風で乾燥する方法や、UVニスを塗布し紫外線照射で硬化させる方法がある。オフセット印刷機にニスコーターを取り付け、4色印刷と同時にニスを塗布するインライン方式やニス引き機やグラビア印刷機を使用した方式がある。またニスを印刷面全面に引く方法と、部分的に行うスポットコーティングがある。
  • プレスコート加工は、熱硬化性のニスを塗布した後に鏡面板に熱プレスをする。表面を鏡面光沢の仕上げにできる。
  • ラミネート加工は、通常PP貼りと呼ばれる。印刷物の表面に接着剤を塗布した薄い樹脂フィルムを加熱圧着する方法で、光沢やマットにすることができ保護性にも優れている。ただし、インキ層からの光の反射率が変化することによる色調再現の変化に注意を要する。
  • 箔押しは、文字や模様の凹凸対の型を作り、表側に当たる型に金箔、銀箔、色箔、アルミ箔などを貼り付けて熱と圧を加え、書籍の表紙など比較的厚い紙に凹凸をつけるものである。ホットスタンピングとも呼ばれ、隠ぺい性も高く下地の色に影響されない。箔押し用の版は金属でできた凸版であり、箔押し加工される部分が作られる。
  • エンボス加工は、凹凸模様を彫刻したプレートまたはロールで印刷物に凹凸の模様を生じさせるもので、箔押し機を用いて作業する。

3-6-4 製函

  • 紙器は、印刷後には紙器の展開図の形に打ち抜き、くせ折り、接着剤付けによる貼り合わせ、折りたたみなどの加工によって組み立てる。
  • 用紙を無駄にしない密集した面付けが必要であるが、後加工工程での作業内容によって、紙の目や余白などの制約があるので、紙器のデザインの段階でも、このような印刷の後工程の仕様を念頭に置いて設計しなければならない。
  • 貼り合わせたときに印刷濃度差が目立つ場合は、面付け方法やデザインそのものを再考しなければならない。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-7 情報管理

3-7-1 情報交換

  • 小ロット化が一段と進むなかワークフローの重要度が増している。印刷物の仕様や機器制御のための情報をデータ交換することにより、自動化や省力化を実現しようという試みが交換されるデータ形式の標準化とともに進んでいる。
  • デジタル化されたプリプレスデータを印刷、後加工の機器制御に活用しようとして生まれたのがCIP3という国際標準化団体である。
  • CIP3とはThe International Cooperation for Integration of Prepress,Press and Postpressの略称で、プリプレス、プレス、ポストプレスという印刷物の製造工程をデジタルで統合することを目的としている。
  • 具体的には集版データ(面付け済みの出力前データ)から版面情報(絵柄の網点面積率)、裁ちトンボや折りトンボの位置などの情報を取得し、紙の作業指示書ではなくデジタルデータを直接、製造機器に伝えることで印刷機や断裁機、折り機などの自動プリセット(事前設定の自動化)を実現しようとするものである。CIP3が定めたデータ交換のための標準フォーマットをPPF(Print Production Format)という。CIP3のPPFファイルは印刷機のインキキーのプリセット用途で大きな効果を発揮し、現在でも多くの印刷会社で利用されている。
  • CIP3は2000年にCIP4へと形を変えた。「Processes in」という言葉が追加され、The International Cooperation for Integration of Processes in Prepress,Press and Postpress となった。CIP4が定めている標準化フォーマットがJDF(Job Definitions Format)である。JDFの最大の特徴は、PPFではデータの流れがプリプレスからそれ以降の工程への一方向であったものがJDFでは双方向のデータ交換が可能となったことである。これにより作業結果(作業にかかった時間、使用した用紙枚数など)を製造機器からフィードバックすることが可能となる。
  • ワークフローを統合し、CIM(Computer Integrated Manufacturing:
    コンピューター制御による統合生産)を実現する要素技術として期待されている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-8 特殊印刷

出版印刷や商業印刷など紙を対象にした印刷を一般印刷という。それに対して、プラスチック、金属、ガラス、布などへの印刷は特殊印刷と呼ばれる。また、紙への印刷であっても特殊な機能や効果を持ったインキを用いたり、特殊な印刷方法、加工方法によるものも特殊印刷と呼ばれる。後者は販売促進用のノベルティや商業印刷分野の宣伝広告媒体に用いることで、より消費者の関心を集め、印刷物の効果を上げることができる。
ここでは、コミュニケーション効果を高めるための特殊印刷を中心に取り上げる。

3-8-1 スクラッチ印刷

  • スクラッチ印刷は、印刷面の上に銀色などの特殊インキを印刷するもの。コインや爪などで擦り取ると隠された部分が現れる。
  • セロハンテープオフ印刷はスクラッチ印刷同様、銀インキの隠ぺい性を活かした特殊印刷である。セロハンテープなどの粘着性を利用して表面のインキを剥がし、隠された部分の絵柄を見る。

3-8-2 蓄光・発光・蛍光印刷

  • 蓄光印刷は、光のエネルギーを蓄える性質を持つ顔料を練り込んだインキで印刷するもの。明るいときに吸収・蓄積した光のエネルギーを暗がりになったときに少しずつ光を出し続ける。なお、蓄光性を持つ物質が暗所で発光する際の光を「燐光(りんこう)」という。この発光の明るさを燐光輝度(単位: cd/m2)で示す。
  • 発光(はっこう)とは、光を発すること。 熱放射(黒体放射) (恒星、炎、白熱灯などの光)、ルミネセンス(冷光)、 荷電粒子線の制動放射による発光、 チェレンコフ光などがある。化学反応によって励起状態をつくり、それが基底状態に遷移するときに発光する。これを化学発光と呼ぶ。
  • 生物(せいぶつ)発光(はっこう)とは、生物が光を生成し放射する現象である。化学的エネルギーを光エネルギーに変換する化学反応の結果として発生する。
  • 蛍光(けいこう)(英: fluorescence)とは、発光現象の分類。最も広義には、ルミネセンスによる光(発光)全般を指す場合もあるが、一般的には、ルミネセンスのうち、電子の励起源が可視光より短波長の電磁波による発光を指す(フォトルミネセンス)。紛らわしいが、蛍(ホタル)の発光は化学反応(ケミルミネセンス)によるものであり、蛍光(フォトルミネセンス)とはメカニズムが異なる。
  • 実際の発光・蛍光印刷の例は、多色のHexachromeやステレオ印刷で、彩度を上げるために蛍光剤を混ぜたオレンジやレッドインキが使用されているのが一般的である。同じく特色に蛍光剤を混ぜたインキも一般的である。
  • ブラックライトで発光するRGBインキを使用したRGB発光インキによる印刷物もある。例えばブライダル写真で白いウエディングドレスの写真にブラックライトを当てると、赤いドレスに変化したりする効果を演出することが出来る。
  • カラーマネジメント技術が発達したおかげで比較的簡単にRGB印刷も可能になったといえる。しかし黒に見えるところは何もインキの載っていない部分で紙の白地が黒に見えるようになっているので、紙の上の加算混合ということが出来る。

3-8-3 凹凸

  • 特殊なスクリーン印刷をすることで、一見腐蝕されているかのように見せる擬似エッチングや熱によって膨らむパウダーを印刷面に付着させ立体効果を出す隆起印刷(バーコ)、表面にちぢみ模様の凹凸を発生させるちぢみ印刷などがある。

3-8-4 立体

  • 立体印刷は平面上で絵柄が浮かび上がって見えたり奥行き感を出す等、視覚的に立体感を得られる印刷であり、ホログラムやステレオグラム、2枚写真法、レンチキュラープリント等さまざまな手法がある。
  • 3Dホログラムとは、平面画像と立体画像をまぜ、角度を変えると虹色に変化するレインボータイプのホログラムで、平面上の画像と立体感を感じさせるバックの画像を組み合わせたものである。転写箔とステッカーの2種類のタイプがある。偽造防止用としてクレジットカードやコンサートなどの入場券に使われているほか、ポスターやカレンダーのデザインの一部としても使われている。
  • レンチキュラープリントとは、微細なカマボコ形のプラスチックレンズを絵柄に貼り合わせて、立体像を見る方法である。断面がカマボコ形になっているレンズのことをレンチキュールと呼び、それが均等なピッチで複数並んだものをレンチキュラーレンズという。レンズの厚みや1インチあたりのカマボコ形の本数などは何種類もあり用途ごとに厚みやレンズの線数も使い分けられている。CDやDVDのジャケット・マウスパッド・ステッカー・トレーディングカード等に使われている。
  • 2色立体印刷は、絵柄を赤、青(藍)の2色で印刷し、赤と青のフィルターのメガネを通して見ると絵柄が立体に見える。絵本、地図などの用途がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-1 コンピューター

コンピューターは、「入力」「出力」「演算・制御」「記憶」といった機能を持つ装置として構成される。その種類や特長、用途などを理解する。

4-1-1 データ表現

  • コンピューターは、「0」と「1」による2進数でデータの処理を行う。2進数による表記は、人による識別が困難なため、2進化10進法(BCD:Binary Coded Decimal)や16進数(ヘキサデシマル)でデータを表す。
  • データの最小単位は「bit(ビット)」であり、1Byte(バイト)=8bitである。「Byte」は2の8乗(8bit)であり、10進数で表す場合は256までの数字を表現できる。
  • 画像データのカラー表現(階調表現)では、8bitや16bitといった単位が用いられる。8bitは256階調、16bitは65,536階調の表現が可能である。
  • 文字表現では、0~255までの数値を文字に割り当て処理を行う。漢字を表現する場合は、2バイト(2の16乗=16bit)必要である。
  • コンピューターで扱う情報量は膨大なものとなり、その単位も大きな桁数を表すものが使われている。1KB(キロバイト)は1,024Byte(2の10乗)、1MB(メガバイト)は1,024KB(2の20乗=1,048,576Byte)、1GB(ギガバイト)は1,024MB(2の30乗=1,073,741,824Byte)、1TB(テラバイト)は1,024GB(2の40乗=1,099,511,627,776Byte)である。
  • 伝送速度とは、一定時間内に転送が可能なデータ量を表す。1秒間に転送できるデータ量を表す際には、「bps」の単位が使用される。
  • bps(bit per second)は、通信の際に使用される単位である。1秒間に何bitのデータ転送が可能であるかを示す。実効速度(スループット)は、実質的なデータ転送量や処理量を表し、一般に実効速度は伝送速度よりも遅くなる。

4-1-2 構成

  • コンピューターには、I/O(Input/Output=アイオー)と演算、記憶などの機能がある。I/Oは、入力機能と出力機能を指し、通信機能もI/Oのひとつとされる。

4-1-3 機能

  • 入力機能とは、外部からコンピューターにデータを送信することである。文字信号を送信する「キーボード」、入力位置の指示を送信する「マウス」、画像情報を送信する「イメージスキャナー」や「デジタルカメラ」などがある。
  • 出力機能とは、コンピューターから外部にデータを送信することである。文字や図形、映像などを表示する装置として「ディスプレイ」があり「モニター」とも呼ばれる。また、「プリンター」や「プロッター」は紙へ、「イメージセッター」はフィルムへ、「CTP」は刷版にデータを出力する装置となる。
  • 演算機能では、コンピューターが命令を解読し、CPU(中央処理装置)で演算処理を実行する。広義のCPU(中央処理装置)は、命令を実行するために使用する主記憶も含めた装置を指す。
  • 記憶機能とは、コンピューターで処理するデータやプログラムを格納する機能のことである。CPUから直接アクセスできる主記憶は、半導体メモリーにより構成される記憶装置である。補助記憶装置(ストレージ)とは、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリーなどを指し、外部記憶装置とも呼ばれる。 

4-1-4 インタフェース

  • インタフェースとは、コンピューターと周辺装置を接続するために必要な、回路や装置を指す。パラレルインタフェースとシリアルインタフェースがあり、それぞれの方式の原理や種類、特長、用途などを理解する必要がある。

4-1-5 入力装置

  • 入力装置とは、人がコンピューターに直接的に接触するマン・マシン・インタフェースである。人にとって「理解しやすい」「覚えやすい」「疲労しにくい」「効率的である」などといった要素が求められる。
  • キーボードのキー配列は、「JIS配列」や「親指シフト配列」「50音順配列」などといった複数の規格がある。
  • ポインティングデバイスは、人為的にコンピューターに対する座標位置の指示を行う装置を指す。代表的なデバイスとして、「マウス」「トラックボール」「デジタイザー」「タブレット」「タッチパネル」などが挙げられる。
  • デジタルカメラは、コンパクトカメラから一眼レフカメラまでさまざまなものがあり、レンズや絞り機構を指す光学系と、受光素子とメモリーを含む画像演算回路や記録装置などといった電子系により構成されている。
  • イメージスキャナーは、通信や記録のために画像や文書などを電子化し静止画像情報化する装置である。画像情報をOCR(Optical Character Recognition)を利用し、文字データ化する際にも使用される。

4-1-6 出力装置

  • プリンターには、「インクジェット方式」や「電子写真方式」、「熱溶融転写方式」、「昇華熱転写方式」などがある。
  • 「インクジェット方式」は、微細な粒子にしたインクをポンプや電気的な力により紙に噴射し付着させる印刷方式である。出力する画像の濃淡を制御することが可能なプリンターもある。大きなサイズにも対応可能であり、色材の選択範囲が広い。
  • 「電子写真方式」は、一様に帯電させた感光層に光を当てることで潜像を形成し、感光層にトナーを付着させて現像し、紙などに転写する方式である。光プリンターとも呼ばれ、感光ドラムへの潜像を形成するために、レーザーやLEDを使用する。
  • 「熱溶融転写方式」は、微小な発熱体素子が配列されたプリンターヘッドをインクリボンと紙に押し当て、ヘッドの特定素子を電気により加熱し、インクを溶かして紙に転写する方式であり、解像度は300~600dpi前後である。
  • 「昇華熱転写方式」とは、昇華性染料を塗布したインクシートを熱し、昇華した染料を専用用紙に付着させて印刷するものを指す。ヘッドを加熱する加減により、転移する染料の量が変化するため、連続階調表現が可能である。
  • 液晶ディスプレイであるLCD(Liquid Crystal Display)は、液晶を利用した表示装置であり、画質の安定性とちらつきのなさが特徴であり、液晶モニターと呼ばれることもある。RGBの3原色のフィルターを各画素上に正確に配置することで、100~300dpiのディスプレイが実現できる。液晶自体は発光せず、ディスプレイの背後からバックライトを投射し画面を明るくする。
  • 液晶の配列や駆動方式により、TN(Twisted Nematic)方式やSTN(Super Twisted Nematic)方式がある。視野角が狭いため、角度によりコントラストや色が変化してしまうことが弱点とされていたが、広視野角・高画質技術のVA(Vertical Alignment)方式やPS(In-Plane Switching)方式の採用により改善された。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-2 ソフトウェア

4-2-1 OS(Operating System)

  • OSは、コンピューターにより処理を行う上で、共通して必要となる入出力機器の制御やファイルの管理などの機能を果たすものであり、基本ソフトウェアとも呼ばれる。複数のアプリケーションを同時に実行するための管理や、複数ユーザー管理などの機能をもつものもある。OSの種類により、データを扱う方法が異なり、効率的にファイルへの記録をするためフォーマットが異なる。
  • 「UNIX」は、1960年代にAT&Tのベル研究所がミニコン用に開発したマルチユーザーやマルチタスク機能をもつOSであり、パソコンから大型コンピューターまで幅広く使用されている。
  • 記録媒体やサーバー上にあるデータの読み込みが可能である場合において、OSやアプリケーションが同等に解釈できる必要がある。
  • Windowsのデータは、その種類が拡張子により設定されており、「.TXT」はテキスト、「.TIF」はTIFF画像などとなっている。
  • WindowsのデータをMacで使用するには、拡張子によるアプリケーションとの関連をリンクできるが、MacのファイルをWindowsで使用する際には、適切な拡張子を付与する必要がある。
  • テキストデータの行末処理では、行頭への復帰(CR:Carriage Return)と次行送り(LF:Line Feed)といった2種の制御コードが存在する。テキストエディターやワープロソフトによって対応が異なるので、データ交換する際には注意が必要である。

4-2-2 アプリケーション

  • アプリケーションには、「ワードプロセッサー」や「スプレッドシート」、「データベース」、「ドロー」、「フォトレタッチ」、「3D」などがある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-3 ネットワーク

4-3-1 ネットワーク構成

  • コンピューターネットワークの構築には、ネットワークOSやサーバーOS、サーバー用やクライアント用のアプリケーション、接続するLAN(Local Area Network)ケーブルと周辺機器や、無線LAN環境などが必要である。
  • 代表的LANであるEthernetは、同軸ケーブルを使用したバス型の10Base5や10Base2により配線していたが、対線(ツイストペアケーブル)を用いる10Base-Tや100Base-T、1000Base-Tによる配線が主流となった。
  • 各機器からのケーブルを集線する装置であるハブ(HUB)は、スター型配線で、媒体共有型のリピーターハブに加え、スイッチングハブが主流である。
  • 無線LANを有線LANと接続する場合や、無線LANからインターネットに接続するには、アクセスポイントを経由するインフラストラクチャモードを使用する。パソコンを移動してもアクセスポイントを自動的に切り替えるローミング機能を利用する。
  • 無線LANと有線のEthernetは、中継機とハブを接続することで1つのLANとして構成できる。
  • IEEE802.11b規格に準拠している無線LANの製品は、最大11Mbpsの速度で通信できるが、電波状態が悪くなると自動的に速度を落とす仕組みになっている。IEEE802.11g規格では最大54Mbpsの速度がある。
  • 無線LANを使用する場合、アクセスポイントまでの距離や電波を通しづらい金属やコンクリートなどの障害物への配慮が必要である。

➢ Bluetooth

  • Bluetoothとは、携帯情報機器などで数m程度の機器間接続に使われる無線通信技術のひとつである。免許なしで自由に使うことのできる2.45GHz帯の電波を利用し、最高24Mbpsの速度で通信を行うことができる。ノートPCとキーボードやマウスなどの周辺機器を無線で接続し、データをやりとりすることができる。近年では、スマートフォン、タブレットPCの周辺機器との接続や、携帯電話のハンズフリー通話にも使用されている。
  • スウェーデンのエリクソンが開発した技術をもとに、IBM、Intel、Nokia、東芝などが中心となって設立されたBluetooth SIGが仕様策定や普及を推進している。IEEEによってIEEE 802.15.1として標準化されている。

IEEE802.11規格

4-3-2 ストレージ

  • サーバーで使用されるRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、ハードディスクの故障によるデータ損失を防ぐため、ディスク装置の多重化によるデータの冗長性で、故障時のデータの自動修復を行う1つの手法である。

RAID 種類(準備中)

  • RAIDの導入により、ドライブの集合を1つの巨大なドライブとみなすことができるようになる。
  • NAS(Network Attached Storage)は、LAN対応の外付けハードディスクとして使用されることがあり、1000Baseといった高速ネットワークの普及とともに使用方法が拡大した。
    今日のサーバーコンピューターのように、ネットワーク上に配置されるストレージ用のファイルシステム専用サーバーである。
    内部には、OSとファイルに関するプロトコルを処理するソフトウェアが組み込まれている。ネットワーク上にデータを送信するため、ネットワークに負荷がかかる傾向がある。
  • SAN(Storage Area Network)は、ストレージに適したコンピューターネットワークを別に用意するものであり、ネットワークに対するオーバーヘッドはNASよりも小さいが、異なるファイルシステムを持つサーバー間でのデータ共有に困難を伴う。
    データの転送効率を優先的に考えているために、光ファイバーやハブ、その他ネットワーク機器などに対する投資が必要となる。

4-3-3 プロトコル

  • プロトコルとは、通信を行う際にデータを正しく送受信するため、送信側と受信側のそれぞれが処理する手順を指す。
  • 目的とする通信の内容や、伝送路の形態(ネットワークの有無)などにより、種々の構造化されたプロトコルがある。構造を階層化したISO標準モデルとして、7階層のOSI(Open System Interconnection)がある。
  • 電気的または機械的な接続を可能にするためのプロトコルは、回線の種類と電気的な配線について接続方法が規定されている。
  • プロトコルには、伝送路でデータに誤りが発生した場合の訂正方法や、正しく受信した場合の合図の送り方などが規定されている(伝送制御手順)。
  • インターネットのレイヤー構造は、インタフェース層を含めて5階層(またはインタフェース層を考えない4階層)で構成され、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルはソフトウェアによるパケットといった単位の情報で制御を行い、ネットワークの種類を問わず信頼性の高いデータの送受信を行う。
  • 通信プロトコルの上位には、送受信のタイミングや使用する文字コード、データの圧縮方式、ファイル転送の方法などのプロトコルが必要になる。

4-3-4 インターネット

  • インターネットは、通信プロトコルであるTCP/IPを用い、世界中のネットワークを相互に接続した巨大なコンピューターネットワークである。
  • ルーターは接続するコンピューターへの経路を決定する装置であり、インターネットでは、経路中の専用または汎用コンピューターなどが使用される。
  • 経路となるネットワークが寸断された場合は、ルーターが迂回経路を見つけ出すため接続性が高い。
  • データを細切れのパケット単位で送信する方法(パケット通信)を採用しているため、中継に使用されるコンピューターシステムの負荷が軽く、ネットワークの柔軟性を高めている。
  • IPパケットのヘッダーには、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコル種別、ポート番号などが含まれており、プロトコルはTCPが採用されている。
  • ネットワークの単位となる名称は、ドメインにより管理されている。インターネットに接続する各装置にはIPアドレスが割り振られており、それに対応するホスト名をDNS(Domain Name System)が管理している。
  • インターネット上のサーバーコンピューターは、用途によりさまざまなものがあり、これらが組み合わされて使われている。一般的に必須とされるDNSサーバーをはじめ、POP(Post Office Protocol)サーバーやSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバーは電子メールで使用される。
  • IPパケットのヘッダー内に含まれるポート番号により、送信される情報のサービス種別が識別され、例えばHTTPであれば80となっている。

4-3-5 クラウド

  • クラウドコンピューティングでは、サーバーが連携し合い、クラウド(雲)と呼ばれる仮想化された1個のコンピューターリソースとして捉えられる。
  • 従来は、ユーザー自身がハードウェアやソフトウェア、データなどを自分自身で保有・管理していたのに対し、クラウドではインターネット上で提供されているさまざまなサービス(クラウドサービス)についてユーザーが必要な機能を必要な分だけ選択して利用するといった形態となる。ユーザーが用意するものはインターネットへの接続環境のみである。
  • 主なクラウドサービスとしては、Google App EngineやAmazon Web Services、Microsoft Azureなどが有名である。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-4 マークアップ言語

4-4-1 HTML

  • HTMLはWeb(World Wide Web)上の文書を記述するためのマークアップ言語であり、文書の論理構造や表示方法などを記述することができる。
  • W3C(World Wide Web Consortium)により標準化が行われ、通常WebブラウザーはHTML文書の解釈や表示が行える。
  • インターネット上のWebサイトでは、HTMLとWeb技術が使用されている。
  • HTMLはSGMLを基に開発されたもので、SGMLと同様にテキストファイルにタグを記述する。ハイパーリンクについても同様である。
  • HTML文書はオフラインでの使用も可能であるが、Webサーバーに設置し、インターネット上に公開することで情報提供サービスを実施できる。

4-4-2 HTML5

  • HTML5は、Web関連技術の標準化団体W3C(World Wide Web Consortium)が策定したHTMLの最新版である。2008年1月にW3Cよりドラフト(草案)が発表され、2014年10月に勧告となった。
  • 小数点以下のバージョンを表記する場合には「HTML」と「5.1」の間にスペースを入れた「HTML 5.1」、小数点以下を表記しない場合は、「HTML5」のようにスペースを含めない表記法が採用されている。
  • HTMLは、1997年に勧告となったHTML 4.0に至るまで、Web上でドキュメントを閲覧するための技術として機能が追加されてきた。その後、HTMLを再定義した「XHTML」として、コンピューターがXHTMLを読み込んで内容を認識できるようにする「セマンティックWeb」として改定を進める方向であった。
  • しかし、2004年頃からHTMLとJavaScriptによるWebアプリケーションにフォーカスした新しい独自仕様の策定を進めるコミュニティーが立ち上がるなど、セマンティックWebは徐々に支持を失っていった。その結果、W3Cも方向転換し、WHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)というコミュニティーと共同でHTML5の仕様策定を進めることとなった。
  • HTML5改定の主目的は、「セマンティックWeb」に近づけることとともに、最新のマルチメディアをサポートし、Webアプリケーションを開発するためのプラットフォームとなることである。
  • HTML5では、新たにaudio要素、video要素、SVG、canvas要素などのマルチメディアをサポートしており、従来プラグインとして提供されていたリッチインターネットアプリケーションのプラットフォームを置き換えることを標榜している。
  • また、JavaScriptにより対話的な処理をWebブラウザー上で動作させることが可能となっている。

4-4-3 XML

  • Extensible Markup Language(エクステンシブルマークアップランゲージ)は、マークアップ言語作成のため、汎用的に使うことができる仕様、および仕様により策定される言語の名称である。一般にXML(エックスエムエル)と呼ばれている。
  • XML の仕様は、World Wide Web Consortium (W3C) により策定・勧告されている。1998年2月にXML 1.0 が勧告された。
  • XMLは、目的に応じたマークアップ言語群を創るために汎用的に使うことができる仕様である。XMLでは使用者が独自にタグを定義することによって、文書に意味を付加することができるメタ言語であり、拡張可能な言語と分類される。
  • XMLの最も重要な目的は、異なる情報システム間で構造化された文書や構造化されたデータを共有、交換することである。
  • XMLは、XML宣言や文書型定義、文書により構成される。XML文書には、DTDなどスキーマ定義を必要とする「valid XML文書」と、DTDなどスキーマ定義がなくても検証できる整形式の「well-formed XML文書」がある。
  • XMLの活用により、紙メディアだけでなくデジタルメディアを視野に入れたコンテンツデータの統一モデルが可能となり、ワンソースマルチユースが実現できる。各メディアに依存するレイアウト情報は、コンテンツ要素と分離することにより、汎用的なデータモデルが実現する。
  • XML導入の利点は、テキストデータが主体となるため、データの取り扱いや、処理を一貫して行えることがあげられる。
  • また、タグにより内容を定義するものであり、文書データベースとしての用途が期待できることもあげられる。

4-4-4 EPUB

  • EPUBは、米国の電子書籍の標準化団体のひとつである国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum:IDPF)が規定した電子書籍用ファイルフォーマット規格である。モバイル端末などへのダウンロード配信を前提にパッケージ化された、XHTMLのサブセット的なファイルフォーマットである。
  • 2011年に規定されたEPUB3.0では、日本や台湾、香港などで多用される縦組みのほか、右から左に記述されるアラビア語やヘブライ語の機能が追加され、グローバル対応が進展した。さらに、EPUB3.0は2014年にISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)からTechnical Specification(技術仕様書)として出版されており、国際標準に準じた位置づけにある。
  • EPUBのファイル構造は、XHTML形式の情報内容(コンテンツ)をZIP圧縮し、ファイル拡張子を「.epub」としたものである。ビットマップ画像やCSSによるデザイン制御、SVG 1.1などをサポートしている。
  • EPUB3.0は縦書き・ルビなどの日本語組版に対応しており、多くのEPUBリーダーがこれらを実装している。しかし、2016年時点ではEPUBリーダーによっては挙動が異なることがあるため、出版団体がガイドラインを発行するなどの対策がとられている。
  • 国内の電子書籍ストア大手であるアマゾンはKindle Format 8などの独自フォーマットを採用しているが、EPUBから容易に変換できるツールを無償公開している。そのため、多くの出版社がEPUB形式の電子書籍製作を中心としている。