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【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[DTP]1-5 グラフィックデザイン

  • グラフィックデザインとは、印刷物制作における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。
  • グラフィックデザインは、1つのページの紙面だけでなく、前後のページとのつながりを含めた表現を扱うものであり、Webページなど紙メディア以外のメディアのコンテンツ構成やデザインにもつながる基本技能である。

1-5-1 エディトリアルデザイン

情報やメッセージを他者に伝えるためには、人間の感覚による認識の多くを占める視覚に訴えることが有効である。情報をより正確かつ効果的に伝えるために、情報の視覚化をさまざまな素材や手法を駆使して具現化することがエディトリアルデザインである。

➢ レイアウトデザイン

  • レイアウトデザインの役目は、文字や図版など要素の配置、組み合わせによってある印象を演出することである。
  • レイアウトデザインは、誰に向けてどのような情報を伝えるためにどのように視線を誘導するかという意図をベースに行い、偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。

【代表的レイアウト手法】

  • シンメトリー:左右対称な構図はバランスのとれた安定感のある印象を与える。
  • アシンメトリー:非対称の構図をあえて採用することにより、斬新な印象になる。
  • ムーブマン:静止している平面の中に動きを感じさせる表現のことであり、方向性が備わっている要素を用いたり、遠近や時間経過をイメージさせる配置をしたりすることで効果を演出する。
  • 整列:複数の要素をある基準線を設けて揃えて配置することにより、視線を誘導し情報を認識しやすくするとともに、統一感・安心感を与える。
  • バランス:要素の大きさ、配置、色などにより、紙面上の均衡を保つ。
  • リズム:要素の連続・繰り返しにより軽やかで心地よいテンポを感じさせる。
  • 破調:一定のリズムやバランスがとれている状態の一部をあえて破壊する、またはアクセントをつけることにより、メリハリや深みを演出し、視線を惹きつける。
  • 量感:色や写真、字形や書体などの複合的要素により、体積や容積、重さから実在感、立体感などを感じさせる。
  • 黄金比:約1対1.618の比率で描かれた長方形は、そこから正方形を除いても常に同じ縦横比となる。この比率は最も安定した形状を作るとされる。
  • ルート比率・白銀比:辺の長さが1対√2の比率の長方形は、長辺を半分に分割しても常に同じ縦横比になる。A判、B判の用紙はルート比率になっている。
  • ホワイトスペース:デザイン的必然性を持って設けられる紙面上の何もコンテンツの置かれていない部分をいう。
  • ジャンプ率:紙面を構成する要素の大小差のことをいい、メリハリや訴求効果、平易で落ち着いた印象などをコントロールする。
  • 配色:目的に合わせて色を配置することであり、紙面デザインにおいては、ターゲットと内容を理解し、色のもつ心理的効果なども踏まえて効果的に用いる。色合いを示す「色相」、鮮やかさを表す「彩度」、明るさを表す「明度」の三属性を人間の感覚で等間隔に分割し表現したマンセル表色系などを用いて調整を検討する。
  • 視線誘導:情報を効果的に伝えるためには、読み手の「目の流れ」を意識する。目の流れの原則は、横組みの場合は左上から右下へ、縦組みの場合は右上から左下へという流れが大原則となる。
  • アイキャッチ:誘目性の高い素材により読み手に興味を持たせる。またどの素材から視線を誘導したいか、情報の優先順位をつける役割として用いる場合もある。

➢ グリッドレイアウト

  • 活版印刷時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナーが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。
  • グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なったりしていても複数の紙面を同じように見せることができる。
  • 同じ考えのグリッドをベースにすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、例えば1つの会社の「コーポレートアイデンティティー」といった様式や意匠を維持させることができる。
  • グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に一部を強調することで読者の理解の一助となる。

➢ ユニバーサルデザイン

  • ユニバーサルデザインとは、すべての人のためのデザインを意味し、国籍や年齢、障害・能力の如何にかかわらず利用できるようなデザインを目指すものである。
  • ユニバーサルデザインは、(1)公平性(2)自由度(3)単純性(4)わかりやすさ(5)安全性(6)省体力(7)スペースの確保、などの考え方が基本となっている。
  • ユニバーサルデザインで特に重要なのは、視認性や判読性、デザイン性、可読性である。
  • 年齢による視覚感度の低下や色弱者に配慮したカラーユニバーサルデザイン、言語に依存せずに情報や注意を示すピクトグラム(「絵文字」「絵単語」)などの視覚記号、読みやすさやシンプルさを考慮したUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)の使用なども有用である。

1-5-2 造本設計

  • 印刷物の仕様全般を計画し設計することを造本設計という。印刷物の意図や目的に基づき、印刷物の判型、色数、製本形式、つきものなどの仕様を設計する。
  • 印刷物の形状仕様とともに、版面やノンブル、柱、頭注、脚注など余白部分に組み込まれる要素とそのスタイルも決める。
  • 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。

1-5-3 紙面設計

  • 紙面設計とは、造本設計を基に各紙面(頁)を構成する要素をどのように配置(レイアウト)するかを定めることである。
  • 造本コンセプトに沿ったレイアウトデザインを決め、各ページが統一されたイメージを与えるように各要素のレイアウトフォーマットを定める。

➢ 版面

  • 読み手は視覚表現物を見るときに、同時にその周囲も目にしている。よってより読みやすく美しく見せるには、対象物とその周囲の比率についても考慮すべきである。紙面に占める版面の比率を版面率といい、版面率は読みやすさや読み手に与える印象に影響を及ぼす。
  • 小口の余白は製本のズレがめだちやすいのであまり小さくできないことに注意する。
  • 書籍の版面とは、1つのページの中で文字や図版などの印刷面が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、仕上がり判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
  • マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。

➢ 段組み

  • 複数段を設定して本文を分割することで、書体や文字サイズ、行間や行長、段間などの相関関係により紙面のイメージや読みやすさに効果をもたらす。

➢ 文字組み

  • 版面の内側で基本組体裁に必要な各種要素の値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
  • 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
  • 行と行の間は一般に文字サイズの25%~100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。視線の移動を容易にするために、行長に従い相対的に行間を大きくとる。
  • 情報を伝えるための要素として可読性などに配慮するだけでなく、ビジュアルの要素として書体が持つ表現力による紙面イメージづくりにも配慮する。レイアウトフォーマットを作成するにあたっては、文字組の視覚効果や体裁を踏まえて、情報内容および表現力を考慮した一貫性のある文字スタイル設定が重要となる。

➢ 写真

  • 配置のしかたにより紙面の印象や表現力に影響するので、目的に応じた効果的な配置を考慮する。
  • 紙面構成によっては、写真の構図や印象がデザインを左右する場合もある。写真素材の扱い方に加えて基本 的な撮影の知識まで把握し、配置したい写真の撮影絵柄について指示が出せるとより効果的なデザインが可能となる。

➢ 裁ち落とし

  • 写真を紙面の端いっぱいに配置することにより、裁ち落とされた外側の見えない部分までイメージを広げさせる効果がある。裁ち落とし写真を使用する際には、紙面の外側の塗り足し部分まで写真をのばしておく必要がある。

➢ 全面写真

  • 天地左右すべてを裁ち落とし、紙面全体に1枚の写真を配置することにより、大きなインパクトを与える効果がある。

➢ 図表

  • 情報を図表化することにより、時間の経過や数値をビジュアル化して直感的に伝えることができる。さらに、分類・整理して検索性を高めたり概念やつながりをよりわかりやすく表現することもできる。このような効果的な表現に加えて、紙面にアクセントをつける役割も果たす。

【クロスメディアキーワード】マスメディアとコミュニケーション

「マスメディア(mass media)」は、「新聞社」「出版社」「放送局」など、特定の情報を発信する事業者から不特定多数の受信者へ向け、情報伝達手段となる「新聞」「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのメディア(媒体)を指す。また、マスメディアにより実現される情報の伝達(コミュニケーション)を「マスコミュニケーション」と呼ぶ。

マスメディアの歴史

15 世紀半ば、グーテンベルクによる活版印刷術の発明により、複数の受信者に対する情報の同時発信が可能になった。1660 年には世界初の日刊紙「ライプツィヒ新聞」が創刊され、その後ヨーロッパ各地で日刊新聞が創刊された。欧米や日本では、19 世紀の産業革命による都市人口の増加と、初等教育の普及による識字率の上昇に伴い、「書籍」や「新聞」の大衆化が進んだ。1895 年には、グリエルモ・マルコーニが電波による無線通信の実験に成功し、放送の手段が確立された。

ビジネスモデル

マスメディアの収入の源は、情報の発信を望む側から受け取る広告料と、受信者に「受信料」「購読料」などとして課金するものに大きく分類できる。
「新聞」や「雑誌」は双方に課金し、書籍は書籍料金として受信者からのみ徴収する。
放送事業者には、「新聞」や「雑誌」と異なり、さまざまな課金手段が存在する。「広告料」や「受信料」のほか、「政府交付金」を受ける放送事業者もある。また、「衛星放送」や「有線放送」の場合には、「ペイ・パー・ビュー方式」により視聴者に課金する事業者もある。
IT(Information Technology)とネットワークの発展により、マスメディアの収入源はインターネットを介し提供されるメディアと競合し、減少傾向にある。

主なマスメディア

主なマスメディアとして、電波によるメディアは、「テレビ放送」「ラジオ放送」などが挙げられる。また、紙によるメディアは、「新聞」「雑誌」「フリーペーパー」などが挙げられる。さらに、「映画」や「音楽」「出版(書籍)」全体をメディアに含む考え方もある。

デジタルメディアによる変化

「新聞」や「雑誌」「ラジオ放送」「テレビ放送」などのマスメディアは、社会的な地位を十分に示すことで発言力を持ち20 世紀に君臨していた。これらのマスメディアは、それぞれが独特の情報に関するシステムを編み出すことで、そのノウハウや影響力が資産となり、事業として大きく成長した。しかし、さまざまな情報がデジタル化され、メディア自体もデジタル化されることで、平準化された技術としてインターネットが頭角を現した。さらに、インターネットの通信速度が高速化し、マスメディアとの境界線がさらに弱まっている。
さまざまなメディアは、デジタル化の影響を受けることで、その役割や性質に変化が生まれ、特別なものとしてではなく、日常のコミュニケーション手段となる道具として扱われるようになっている。メディアのデジタル化によって企業にとってさまざまな事業と連携したメディアの登場や、コミュニティーの形成を重視したマーケティングが展開されるなど、従来のメディアが持つ世界とは異なる環境が、提供され続けることが考えられる。

パーソナル化するコミュニケーション

現代のテレビ放送では、個人視聴の傾向が強まっている。さらに、デジタル放送が普及することで、「見るだけのテレビ放送」だけでなく「利用するテレビ放送」や「参加するテレビ放送」「対話するテレビ放送」などと変化している。今後も、さまざまなデジタルに関する技術の発展により、マスメディアのインタラクティブ性(双方向性)が高まり、コンテンツの企画や制作が重要視されるようになると考えられる。

新しいメディア

1990 年代後半から普及したミドルメディアと呼ばれる「Web サイト」がマスメディアに近い影響力を持ち始めており、「ニュースサイト」「動画共有サイト」「BBS(Bulletin Board System:電子掲示板)」「ブログ」などをマスメディアとして捉える考え方もある。

口コミ情報

伝統的なマーケティングでは、生活者の商品購入が最終目的と考えた。アメリカのローランド・ホールが提唱した「AIDMA」や電通により提唱された「AISAS」などの生活者の消費行動モデルでは、なるべく多くの生活者に対し「注意」を促し、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識が高まるような情報を発信する必要があるとされている。情報を発信し、多くの生活者を対象に「注意」を促すには、マスメディアの活用が効率的と考えられる。さらに、「関心」から「欲求」や「検索」へと意識を最大限に高めるため、専門家によるクリエイティブが重要視される「広告」が必要であった。
現在では、生活者によるインターネット上の口コミ情報が力を持ち、情報発信の方法として無視できない存在となった。生活者の行動は、マスメディアの情報と比べ、口コミ情報により強く影響を受ける傾向があるとされ、特に「映画」や「ファッション」などの嗜好性の強い商品にその傾向が強い。情報の受信者は主体性を持ち、メディアによるコミュニケーションをイニシアチブを持って行う。

マスメディアとクロスメディア

マスメディアとミドルメディアの組み合わせにより、生活者の商品の認知から始まるシナリオ(動線)を設計する必要がある。マスメディアではクリエイティブの専門家に依頼することで、インターネットへの情報発信と比べ、訴求力の高い「広告」配信の実現が期待できるが、宣伝色の強すぎる「ブログ」の展開は逆効果を誘引する可能性もある。インターネット上に存在する予測が難しい「発言力」の扱い方は、情報を発信したいと考える事業者にとって大きな課題となる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年3月号より転載

2016/10/28 JAGAT Webサイトサーバダウン お詫びと復旧のご案内

2016年10月28日(金)午前9時~9時45分頃、JAGAT Webサイトサーバダウンにより、JAGATサイトにアクセスできない状態が発生しました。
現在サイト全体において復旧しております。
ご不便をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

JAGAT資格制度事務局

クロスメディアエキスパート認証試験、試験方式を一部改定

公益社団法人日本印刷技術協会(略称:JAGAT、本社:東京都杉並区、会長:塚田司郎)は、2016年10月28日、同協会クロスメディアエキスパート認証制度の試験方式を一部改定することを発表しました。

❏『クロスメディアエキスパート認証試験、試験方式を一部改定』

昨今、印刷メディアとWebやモバイル、SNSなどを効果的に利用するクロスメディアコミュニケーションが日常化しています。
しかし、従来の受注依存型の組織ではこのようなビジネスに柔軟に対応することは困難です。さまざまなメディアを活用する能力、論理的で説得性の高い提案能力が求められています。

そのような能力を磨くための手段として、同協会は2006年よりクロスメディアエキスパート認証試験を実施しています。累計で1,100人以上の方が合格しています。この試験は、デジタルメディア活用に必要な知識を問う学科試験と、実際に提案書を作成する記述試験から構成されています。
合格を目指して学習することで、デジタルメディア活用に必要な知識と提案能力を身に付けることが可能です。

このたび、より実践的でハイレベルな提案書を作成出来るよう、試験時間を変更することになりました。
従来の「学科試験(120分)、記述試験(120分)」を「学科試験(100分)、記述試験(140分)」 に変更します。

試験時間変更は、2017年2月26日(日)に実施する第23期試験より適用されます。

JAGAT エキスパート認証制度 Webサイト

❏ 次回エキスパート認証試験の実施予定

次回の第23期クロスメディアエキスパート認証試験は、2017年2月26日(日)に実施します。

受験申請期間は2016年12月13日(火)~2017年1月25日(水)となっており、同サイトの申請フォームから申込むことができます。

認証試験は年2回、実施しており、次々回は2017年8月を予定しています。


公益社団法人日本印刷技術協会 公益社団法人日本印刷技術協会(Japan Association of Graphic Arts Technology:JAGAT)は、印刷に関する技術の開発・向上により、印刷および関連産業の発展、貢献を目的として1967年に創立しました。

【本書の内容・リリースに関するお問合せ先】
〒166-8539 東京都杉並区和田1-29-11
公益社団法人 日本印刷技術協会 広報担当まで
TEL 03-3384-3113 FAX 03-3384-3168

【DTPキーワード】デジタルカメラの撮影

デジタルカメラは、銀塩カメラと基本的には構造が同じで、アナログのフィルムの代わりにCCD またはC-MOS といった撮像素子を使う。
デジタルカメラは使用用途に区分すると、コンシューマ用のレンズ交換が不可能なコンパクトデジタルカメラ、レンズ交換が可能なデジタル一眼レフカメラ、それより大型な撮像素子をデジタルバックとして使う中判デジタルカメラなどがある。最近、ファインダーを除いてその構造上必要であったミラーを排したミラーレス一眼カメラも台頭してきた。ファインダーの代わりに本体背面に付いている液晶ディスプレイで画像の確認をする。
デジタルカメラの撮影は、光源の色温度に注意を払わなくてはならない。光源の色温度の変化に対して、ホワイトバランスを調整して白い被写体が白くなるようにする。
撮影の手法として、メインの被写体にピントをしっかり合わせて、不要な部分はぼかすということも必要である。これにはレンズの被写界深度特性を利用する。
デジタルカメラの被写界深度は、一般に、レンズの焦点距離、絞り、許容錯乱円の大きさに依存する。
コンパクトデジタルカメラの場合、小型で気軽に失敗しない撮影を前提に設計されているのでレンズ焦点距離が短いレンズを使用している。そのため全体にピントが合うため、被写界深度が深く、奥行き感やボケを生かしにくい。撮像素子のサイズによって被写界深度が変わるのではなく、同一画角を得るために使用するレンズの焦点距離が撮像素子のサイズにより変わるため被写界深度に違いが出る。
デジタルカメラでは、一般的に撮像素子の画素数が多いほど、解像度が高いきめ細やかな画像を得ることができる。同じ画素数であれば、大きな撮像素子の方が1 画素当たりの面積(ピクセルサイズ)が大きいのでその表現力は優位である。
撮像素子が小さければ、1 画素当たりの光を取り込める量は少なくなり、感度は低くなる。また、画素数が多くなれば多くなるほど1 画素当たりの光を取り込める量は少なくなり感度は低くなるので、「画素数が多い=高画質」というわけではない。そのため画素数の多さと同様に撮像素子の大きさも画質を決める上で重要になる。
大きな撮像素子のメリットは、ダイナミックレンジが広いので、取り込む情報量の多さから白飛びや黒潰れが抑えられ、表現の豊かな撮影が可能である。
受光面積が広いので感度を上げてもノイズが少なく画質劣化が少ない。また、ぼけを利用した撮影が可能
である。

CCD(シーシーディー)[Charge Coupled Device]

光の情報を電気信号に変換する半導体素子。この変換を光電変換と呼ぶ。デジタルカメラ、スキャナー、ファクシミリなどに使用されており、光を電気に変換する受光素子(画素)を複数個並べ、光の変化を画素ごとに独立して電気信号に変換する。そのため、CCDの画素数が多いほど画像は精密になる。

C-MOS(シーモス)

[Complementary Metal-Oxide Semiconductor]
相補型金属酸化膜半導体。2 種類のMOS FET と呼ばれるトランジスタをペアで使用する。MOS とは、金属と酸化物、半導体という3 種類の物質を重ね合わせた構造を持つ素子。CCD とCMOS では画像データを読み出す方式が異なり、CCD は電気信号を順次送りだし最後に増幅するのに対して、CMOS は1 画素ごとにアンプ(電荷を電気信号に変える変換器)が付いており、画素ごとに信号を増幅して読み取るため、素早い読み出しと省電力化、小型化が可能である。

ミラーレス一眼カメラ[Mirrorless interchangeable-lens camera]

2008 年10 月にパナソニックが世界初のミラーレス一眼「LUMIX DCM-G1」を発売。反射鏡を用いた光学式ファインダーを使わずに、電子ビューファインダーや液晶ディスプレイを通して像を確認する仕組み。反射鏡のタイプは実像を直接見ているためシャッターチャンスの反応性が良い。被写界深度のプレビューはファインダー像が暗くなり実際の撮影画像とボケ具合には差が生じる。ミラーレスタイプは実像を画像処理をしているため多少時間がかかる。一方被写界深度の確認は正確にできる。また、物理的な鏡がないためボディは薄型化が可能である。

被写界深度[depth of field]

ある距離の被写体にピントを合わせた場合、その前後の被写体についても鮮鋭な像を結ぶ範囲。レンズの焦点距離が短いほど、また絞りを絞り込むほど被写界深度は深くなる。

焦点距離[focal length ; distance]

レンズの中心からその焦点までの距離。焦点距離はf(小文字)値で表す。小学校の理科の実験で虫めがねに太陽光を入射させると、光軸の先で光の束が一点に集光する点がある。この光の集まる点に黒い紙を持っていくと紙が焦げてしまい、この” 焦げる点” が文字通り” 焦点” ということになる。焦点はカメラでいうところのCCD 面に当たりレンズからCCD までの距離を焦点距離(focal length)と呼ぶ。つまりレンズのf 値とは焦点距離“focal length” の頭文字「f」をとってf 値○○mm と呼ぶ。

絞り[aperture ; diaphragm]

絞りとはレンズに入ってくる光の穴の大きさを開いたり閉じたり調整すること。絞りには値があり、F(大文字)値やFナンバーと呼ばれる。

絞り値[F-number]

計算しやすいようにF 値を√ 2 の2 乗ずつ増やしていくと(段)F1.4(√ 2)、F2(√ 4)、F2.8(√ 8)、…となり、光量は1/2 倍、1/4 倍、1/8倍、と暗くなっていく。絞りとシャッター速度は相反する絞り込むと暗くなりシャッター速度を遅くすることで光を取り込む時間を長くする。逆に開くと明るくなり、シャッター速度を速めて光を取り込む時間を少なくする。この組み合わせで被写界深度などが異なる。

許容錯乱円[Permissible circle of confusion]

ピントが合っている位置にある「点」は、撮像素子上で「点」に写る。しかしピントの合う前後では撮像素子上ではボケて円になる。この円を錯乱円という。
しかし極小円は人の目には点に見える可能性があるため、ぎりぎり点に見えるときの錯乱円の大きさ(直径)を、許容錯乱円径といい、単位をmmで表す。

有限会社 セネカ
代表取締役
野尻 研一
(Jagat info 2015年月7号より転載)

【クロスメディアキーワード】メディアリテラシーとフィルタリング

現代のような高度情報化社会では、多くのメディアに接触する生活者にメディアリテラシーの向上が求められる。情報発信側にもメディアリテラシーへの理解が欠かせない。以前も取り上げたが、改めて解説する。

メディアリテラシー

メディアリテラシーとは、メディアを介した情報の受信者が、主体的に内容を読み解いた上でメディアを活用する能力を指す。リテラシーとは読み書きに関する能力を指すが、さまざまなメディアの持つ個別の様式にはメッセージ性があることから、マーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」とし、メディアリテラシーの重要性を喚起した。現在ではメディア特性を踏まえた情報に対する判断と活用が受信者に求められるため、メディアリテラシーの重要性が高まっている。メディアの多様化により、マスメディアだけでなくミドルメディア(インターネットメディア)やパーソナルメディアなど、さまざまなメディアから情報を取捨選択する能力が受信者には必要になる。
受信者は主体的かつ批判的にメディアに接触する能力が求められるが、発信者はさまざまなメディア特性を理解した上で情報を展開する能力が求められる。

情報の信憑性

テレビ放送の情報なら「正確」で「事実」という安易な判断は、メディアリテラシーに欠ける。発信された情報については、作成された意図を酌み取る必要がある。広告としての情報に関する表現は、利害関係や編集意図が介在することで、中立的な情報が必ずしも発信されているとは限らない。しかしながら、メディアリテラシー向上の目的は、広告を否定するものではない。広告の信憑性は、情報を正確に捉えるためにその役割やバイアス(偏り)を認識する必要がある。

メディア特性

情報技術の発展により、パソコンやスマホ(スマートフォン)、タブレットなどのさまざまな端末が生活者に普及した。テレビ放送や新聞、雑誌などの直感的に理解しやすいメディアと比べ、インターネットに接続することで閲覧できるさまざまなメディアは、そのメディアごとの特性を捉えることに困難が伴う。
ブログとSNS(Social Networking Service)のように、使用法が異なるものの機能は共通点が多い場合、技術やサービスの名称によりメディア特性を区分することに意味を持たないことがある。メディアが、すべて同質のメディアであるとは限らない。それぞれのメディアに対する情報の受発信の特徴を考察し、その役割と評価などの特性を熟考することが必要になる。

高度情報化社会

メディアリテラシーが向上することで、高度情報化社会を正確に捉え、充実したコミュニケーションを図るきっかけを得ることが期待できる。ビデオカメラとインターネットによる市民チャンネルのようなインターネット放送が一般化し、情報の受信者が発信者でもある社会が到来している。

フィルタリングサービス

メディアリテラシーが未発達の可能性がある未成年者を対象とし、健全な育成を目的とするフィルタリングサービスが提供されている。ケータイ(フィーチャーフォン)やスマホの未成年者による利用が拡大したことから、配信される情報への規制が求められている。インターネット上には、犯罪につながる情報や未成年者に有害な情報も存在する。したがって、それらのコンテンツやコミュニティーサイトに対する接続を制限する「フィルタリング」が実施されている。日本の「フィルタリング」は、総務省の要請により移動体通信事業者が実施するサービスである。「フィルタリング」は利用者ごとに、有効や無効の切り替えが可能で、一般的には、保護者が未成年者の利用する端末の設定について判断するので、移動体通信事業者は保護者に対し「フィルタリング」に関する意思の確認を行う。

フィルタリングの種類

「フィルタリング」には、「ホワイトリスト方式」と「ブラックリスト方式」の2 種類がある。

・ブラックリスト方式
特定のカテゴリーに属するWeb コンテンツやWebサイトをリスト化し、接続を制限する方式。一律でカテゴリーの分類を行うため、健全なWeb コンテンツやWebサイトに接続できない可能性もある。
・ホワイトリスト方式
一定の基準を満たしたWeb コンテンツやWeb サイトのみをリスト化し、リストに入っていない場合に接続を制限する方式。無数に存在するWeb コンテンツやWebサイトの極めて部分的なものとなるため、利便性が損なわれる傾向がある。

フィルタリングの課題

「フィルタリング」用のリストは、その提供事業者がWeb コンテンツやWeb サイトの情報を収集し、移動体通信事業者へ提供している。リストの内容は、詳細な解析が行われた上で分類されているとは限らない。正確な「フィルタリング」が行われない可能性が残っている。有用な情報を提供しているにも関わらず、接続が制限されてしまう事象もあり、コンテンツ提供事業者から問題視されることもある。

フィルタリングの動向

現在では、未成年者が利用する端末に対するフィルタリング使用の原則化が完了している。今後は更なる普及促進とともに、機能のカスタマイズ化といった画一的な現行モデルの改善策の検討も進められている。一部の地方自治体では、未成年者に対する「フィルタリング」を実質的に義務化する動きもある。

メディアリテラシーとフィルタリング

「フィルタリング」はメディアリテラシーの向上に対する阻害要因となる可能性もある。未成年者も情報の選別ができるように、メディアリテラシーの向上を考慮した取り組みが必要になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年2月号より転載

2016年8月21日実施試験合格発表掲載予定日

第46期DTPエキスパート/第22期クロスメディアエキスパートの合格者の受験番号は、

2016年10月28日(金) 9:00

に掲載予定です。

発表まで今しばらくお待ちください。

JAGAT資格制度事務局