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【クロスメディアキーワード】カウンセリングとコーチング

カウンセリング(Counseling)とは、相談者の抱える「問題」や「悩み」などに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる「相談援助」を指す。

一般的な定義

一般的に、カウンセリングを行う者を「カウンセラー(Counselor)」と呼び、カウンセリングを受ける者を「クライアント(Client)」「カウンセリー(Counselee)」などと呼ぶ。カウンセリングでは、「援助的対人間関係」「行動変容」「クライアントの自律性尊重」が重要視される。問題を抱えている「クライアント」に対し「カウンセラー」がコミュニケーションを重ねることで人間関係を形成し、「クライアント」自身の自律性により行動変容を促す。これがカウンセリングの概要となり、さまざまな理論や技法が提唱されている。

カウンセラーの条件

適切なメディアによるコミュニケーションを目指すメディアのコーディネートでは、情報の受発信を行う主体となる人物をカウンセリングする心構えが必要であり、その知識と能力は重要なものとなる。
カウンセラーには「自己一致」「共感的理解」「無条件の肯定的尊重(受容)」といった3 つの条件が必要であると、アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズが提唱している。「自己一致」とは、クライアントの前で自身が感じていることや経験していることを否定したり歪めてはならないといった態度を指す。「共感的理解」では、クライアントの私的な世界を自身のことであるかのように感じ取る性質を指す。「無条件の肯定的尊重」では、「あいづち」といった単純な行為ではなく、相手の深層に対する受容である。

コーディネーターとして

メディアのコーディネーターは、コンサルティング能力が求められる。
コンサルティングには、カウンセリング能力のほか、自発的行動を促すコーチング能力や精神的な支えとなるメンタリング能力も必要となる。

カウンセリングの技法

カウンセリングの技法は、さまざまな理論に基づき、理論の種類分けが存在する。「精神分析療法」や「来談者中心療法」「ゲシュタルト療法」「論理療法」「行動療法」などが代表的な技法である。カウンセリングでは、クライアントの「考え」や「思い」が最も重要視される。クライアント自身も分析に参加し、理解し、認知する必要がある。しかしながら全ての問題に対し、カウンセリングにより十分な満足感が期待できる解決方法や解答があるわけではない。カウンセリングはさまざまな理論と技法を用いることで、クライアントの「安心感」や「安全感」を誘発するための一つのアプローチであると考えられる。

コーチングとカウンセリング

コーチングとは比較的新しい概念であり、主に一対一の状況で「モデリング」「問題解決」「カウンセリング」などにより、さまざまな技術を教えることを指す傾向がある。特定分野において能力の向上を期待する人物を対象として、コーチングは実施する。将来志向を強く持ち、目標を達成するための道筋を示し、クライアントが求める成果を実現するサポートを行う。
一方カウンセリングでは、問題を抱えているクライアントが対象の中心となる。やや治療的な意味合いもあることから、カウンセラーはパートナーと一致せず、過去から将来といった広範囲に及ぶ内面変化による行動変容を実現する。

コーチングの技術

コーチング技術は複数存在するが、「傾聴」「承認」「質問」「要約」「フィードバッグ」は代表的な技術となる。

・傾聴
特に相手との関係性を確立する段階で重要視される技術は、「傾聴」である。「傾聴」はカウンセリングでも使用されるが、クライアントの「話したいこと」や「伝えたいこと」を「受容的」かつ「共感的」な態度で聴く技術である。意識的に耳を傾ける状態で、偏見や先入観、固定観念を排除し、客観的な姿勢で聴く。さらに、「はげまし」や「うなずき」を加え積極的な姿勢で、クライアントのためにクライアントの立場を考慮して聴くことが重要である。「傾聴」は、「心構え」が必要になり、受容的な態度が最も重要視される。
・質問
コーチングは、「質問」によりクライアントが関心を持つように促す過程を指すこともあり、「質問」技術が重要視される。「質問」は「ポジティブな質問」や「ネガティブな質問」で構成される。「ポジティブな質問」とは、「正解が複数ある質問」や「将来のことに対する質問」「否定形のことばを含まない質問」であり、クライアントの能力を最大限に発揮できるよう使用され、コーチングの本質として重要視されている。
・要約
「要約」技術は、クライアントの抱える課題を整理する「チャンクダウン」を指す。「要約」により解決すべき「問題」と「原因」を明確にすることで、解決へ向かう大きなステップとなる。「要約」技術は、自身の解釈を押し付けず、クライアントが答えを持たせることが注意点となる。
・フィードバック
「フィードバック」とは、クライアントに対し「反応」や「感想」「意見」を率直に伝える技術である。自身の「考え」であることがクライアントに伝わることが大切であり、自身をマネジメントする技術も求められる。あくまでもクライアントの立場を重要視することが求められる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年1月号より転載

リンク

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【クロスメディアキーワード】発想法と思考法

「発想法」や「思考法」は、メディア戦略立案の際には不可欠な知識となる。両者の適切な活用により、結論に至るまでの「事実」や「前提」を組み立てる論理的な戦略の立案が実現するだけでなく、「MECE(Mutually Exclusive Collectively Exhaustive:それぞれが重複することなく、全体集合としてモレがない)」的な戦術の実行も可能になる。

構造化

問題の根本的な原因を探り、明確に理解できるよう整理する手法として、「構造化」が多く利用される。「構造化」では、表面的な現象として現れた問題の相互関係を整理することで可視化する。アイデアの断片をまとめるために、「ロジカル・シンキング」や「クリティカル・シンキング」などの「論理的思考」を活用する。この手法により問題への対応も対症療法でなく、抜本的な変化を期待できる。したがって「構造化」とは、「複雑に見えるものを幾つかの要素に分解し、それぞれの関係を明らかにし、全体と部分の関係性を明示する」方法であるといえる。

・全体から細部に至るまで各要素間の関係が明確になり、整理された状態で一覧できるようになる
・各要素間の関係に明確な理由(根拠)があるため、導かれた結果には説得力を持つこと・モレやダブりが発生しにくくなる(MECEの考え方を導入するとよい)
・各要素の組み合わせを変更することにより、全く新しいアイデアや問題の解決にも応用できる
などが構造化により享受できる共通の利点である。
さらに「問題点をまとめる」「改善するためのアイデアを創出する」ための代表的な技法として、ブレーンストーミングが挙げられる。

ブレーンストーミング(Brainstorming)

ブレーン(頭脳)とストーム(嵐)から、「頭脳の嵐」と名称がついた会議手法であり、アレックス・F・オズボーンにより考案さた。別称として「ブレスト」「BS」などとも呼ばれる。
企画や戦略の立案や複雑な問題の解決のために、合理的かつ効果的な手法を用いることで、適切な方針により方向性が導かれる。そのためには、考えられる限り全てのアイデアを事前に列挙できる状況を作ることが望まれる。個人により創出されるアイデアの量は、その人の特性により差異があるものの、複数人によるものと比べ、種類や対象などが少なくなる傾向がある。複数の個人により構成される集団の中で意見を出し合い、互いを刺激し合うことでより多くのアイデアを創出する会議手法がブレーンストーミングである。会議の進行役が議案の主旨(テーマや目標)を示した後に、参加者が自由に意見やアイデアを発表する進行となるが、ブレーンストーミングには4 つの原則がある。

1.批判の禁止
参加者の発言を活性化させるため、他者の発言を批判しない。
2.自由奔放
ユニークで斬新なアイデアを促すため、自由奔放な発言を歓迎する。思いもよらない解決への糸口が期待できる。
3.質より量
勢いが重要視される。発言は多いほど好まれる。可能な限り多くのアイデアを出す。
4.連想と結合
ほかの参加者が、一部のアイデアに便乗することを歓迎する。発言の融合や、一部の変更を行う。ブレーンストーミングで提示された意見やアイデアを「特性要因図」や「親和図法」などの技法によりまとめることで、解決すべき問題として「課題」を明確にすることができる。

特性要因図

原因と結果との関係を表した図を指す。「問題(特性)」と、その「原因(要因)」との関係を表す手法として、主にQC(Quality Control:品質管理)の分野で使用されている。魚の骨の形に似ていることから、「フィッシュボーン・チャート」や「魚骨図」とも呼ぶ。QC サークルの生みの親である石川馨博士が考案した。
「特性」とそれに影響を与えるさまざまな「要因」の関係を系統および階層的に整理した図で、右端に「特性」を示す水平の矢線(背骨)を配置し、上下から斜めに接する矢線(大骨)で「要因」を示す。「要因の要因」は順に、「中骨」「小骨」へと分岐する。「特性要因図」は「問題が発生する原因は何か?」を顕在化させることに意味を持つ。「特性」を目的のように表現してしまうと、実際の問題が明確にならないまま願望的な対策が立案される傾向があるため、注意が必要になる。

親和図法

QC における情報整理法を指す。既存の知識では体系化しにくい情報やアイデアをカードに記述し、問題点と解決案を導き出す手法である。川喜田二郎(文化人類学者)が開発したKJ法を起源とする。大きく異なる情報やアイデア、明確でない問題に対し、「キーワード」の意味合いから理解できる「親和性」により「グループ化」や「図式化」され、事象の本質を明らかにすることができる。手順としては、特定の主題に対しさまざまな考えをカードに記入し、関連性や親和性を感じ取ることができるカードを並べ、その理由を記入した「見出しカード」を作成する。親和図法は、「カード化した言語データの意味の近さ(親和性)に着目し、同類項ごとに括ることにより、構造(全体と部分の関係)を明確にする」といった特徴がある。

マインドマップ

「マインドマップ」とは、トニー・ブザンにより提唱された、思考や概念を可視化する思考法や発想法である。「なぜ」「どのように」機能するなどの情報と、それに沿った技法を基に考察される。主題となる「キーワード」や「イメージ」を中心に考え、そこから派生する「キーワード」や「イメージ」を放射状に分岐させる記載を行い、全方向となる360 度が関連する図で示される。思考を整理し、発想を豊かにし、記憶力を高めるために、想像(Imagination)と連想(Association)を用いて思考を展開するための代表的な手法である。記載する情報の多くに「フック」が付与されるため、記憶法としても利用される。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年12月号より転載

2017/1/17「クロスメディアエキスパートの提案ロジック」(記述式試験対策講座)を開催します。

第23期試験 第2部(記述式)試験対策にもなるセミナーを開催します。
ベテラン講師の解説と演習を通して、試験と実業務で求められる説得力のある提案書作成までを修得してください。

詳細は、下記よりご覧ください。
2017/1/17「クロスメディアエキスパートの提案ロジック」(記述式試験対策講座)

【DTPキーワード】出版印刷物

出版印刷物とは雑誌、書籍などの多ページの印刷物(ページもの印刷物)を指す。
多量の文字を主体とした印刷物では、文章に図版(説明図/イラスト/写真など)などが付随する場合がある。それらは所定ページの決められた場所にリンクされていなければならない。
伝統的な書籍の構成要素は、前付け、本文、後付けの3つの部分に分けることができる。目次より前に入る「前付け」には、扉、序文、献辞、凡例、口絵がある。本文は、見出し、文章、注などで構成され、奥付以外の「後付け」には、索引、あとがき、付録がある。
出版物は、編集者が企画/設計して、それに基づいて、執筆者/カメラマン/イラストレーターなどの専門家が文章/写真/図版の原稿を作成する。
各種原稿は、文字入力、レイアウト、図版作成などの専門家が加工し、編集者がそれぞれの品質と内容をチェックして、所定位置に貼り込まれる。

前付け[front matter]

書物で本文より前に置かれている付き物の部分を総称していう。

本文[text]

一般的な意味で用いられる本文(ほんぶん)は書籍などの付き物を除く主要部分の文章を指す。一方伝統的書籍では本文ページは見出し、文章、柱などから構成されるが、本文(ほんもん)はページの中で、見出し、リード文、図表、柱、ネームなどを除く主要部分の文章をいう。

後付け[back matter ; end matter]

本文の後ろに付ける付録や文献、索引、奥付、広告等の総称。

改丁

章見出しなどでページを改め、次の奇数ページからまた組み始めること。奇数ページで終わった場合、次の偶数ページは白となる。

改ページ[new page]

章見出しなどでページを改めて組版すること。奇数偶数に関係なくページが変わればよい。

追い込み[run in ; run on]

改行、改段、改ページなどをやめて、前に続けて組むこと。

付き物[annexed matter]

書籍の本文に対して、前付け、後付け、別丁など、本文を除いたものの総称。また、出版物に付属する印刷物(売り上げカード、腰帯び、カバー、ケース、ブックジャケット、愛読者カード、投げ込み広告など)の総称。

束見本[bulking dummy]

印刷前に実際の印刷用紙を使用して製本し、本文ページなど全体の厚みを見る。これにより装丁上の表紙やブックカバーのデザインが可能となる。特に背表紙の幅が重要になる。

装丁(装幀・装釘)[book binding design]

装丁は本文ページ以外の函やカバーなどのデザインが重視される場合があるが、本来はデザインのほかに紙の質、印刷方法、後加工など、保存や強度などの工業設計的要素も含む。
書籍構成

有限会社 セネカ
代表取締役
野尻 研一
(Jagat info 2015年月2号より転載)

【クロスメディアキーワード】コミュニケーションとビジネス

コミュニケーションの種類

コミュニケーションは対象により、「対人コミュニケーション」「集団コミュニケーション」「マスコミュニケーション」の大きく3 つに分類できる。
「対人コミュニケーション」は、特定の相手を限定し電話や手紙などを活用する個対個の日常的なコミュニケーションを指し、インターパーソナル・コミュニケーションとも呼ばれる。
「集団コミュニケーション」は、講演会や会議、社内報など限定された小集団のコミュニケーションを指す。
「マスコミュニケーション」は、新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどのマスメディアを通じた不特定多数の対象者に対して行われるコミュニケーションを指す。一般的には、情報の流れが1 対n と一方向になる。情報の「発信者」と「受信者」の接触が間接的であり、伝達の効果や反応の測定に困難を伴う。

コミュニケーション手段

文明の発達に伴い、コミュニケーション手段は進化している。進化は4 つの変革によると考えられ、「言語の使用」や「文字の登場」「印刷技術の発明」さらに「高度情報化社会」とされている。高度情報化社会では、コンピューターや情報のデジタル化、インターネットの普及などが生活者に大きな影響を与えている。

コミュニケーションの歴史

コミュニケーションの歴史は、4 つの変革で捉えることができる。ラスコー洞窟の壁画で見られるように、文字が登場する以前には、人間は壁画を描くことでコミュニケーションを図った。この頃から情報を目に見える形で表現し、コミュニケーションを行ったと考えられる。
人間は、古代からさまざまなモノに文字を書き、コミュニケーションを行ってきた。古代メソポタミアでは楔形文字、古代エジプトではヒエログリフ、古代中国では甲骨文字が発明された。文字と紙の活用により人々のコミュニケーションは飛躍的に拡大した。
15 世紀には、ヨハネス・グーテンベルグにより活版に、印刷技術を活用した絵画やイラストレーションの流通により、視覚伝達デザインの領域が拡大した。18 世紀の産業革命により情報の需要が激増し、新聞や雑誌が刊行され、不特定多数の生活者に対する情報伝達手段である「マスメディア」が登場した。
20 世紀後半には情報技術の発展によりさまざまなメディアが登場し、情報通信網であるネットワークが整備され、コミュニケーションを取り巻く環境は高度化した。IT(Information Technology)により、「数値」から「文字」「画像」「音声」「映像」など、さまざまな情報がデジタル化され活用された。さらにコンピューターネットワークの発展により、メディアによる双方向コミュニケーションが実現した。
コミュニケーションはメディアにより、「1 対1」から「1 対n」「n 対n」へと進化している。

ビジネスコミュニケーションの要素

ステークホルダーが多く関わるビジネスシーンでは、「指示」や「報告」「連絡」「相談」のほか、「ファシリテーション」「インタビュー」「交渉」「プレゼンテーション」など、さまざまなコミュニケーションが用いられる。
ビジネスシーンでのコミュニケーションには、必要となる要素が多数存在する。「共通認識」や「共通言語」の欠落は、コミュニケーションを阻害する大きな要因となる。不完全なコミュニケーションは大きなトラブルに発展する危険性を秘めており、ビジネスシーンにおいては、可能な限り排除する必要がある。円滑なコミュニケーションを実現するためには、「相互理解」と「信頼関係」が重要視される。「相互理解」と「信頼関係」を醸成するには、ビジネスシーンにおけるコミュニケーションの「要素」へ対する理解が必要になる。代表的なコミュニケーションの「要素」は、「明快性」「一貫性」「関連性」「社会性」「正解性」「簡潔性」などが挙げられる。

要素①:明快性
対象となる受信者に情報を伝達するコミュニケーションでは、情報を受信しているという具体的な意識が持てる「明快性」が必要となる。受信に対する「明快性」を持たせることで、受信者の「情報を受け取った」という意識を高め、その後の行動に影響与える効果が期待できる。また、情報の内容を具体的に表現する「明快性」も必要である。情報の要点を「明快性」のある表現とすることで、ほかの情報への埋没防止が期待できる。また、「明快性」が欠けると、情報に気付かれず無視されてしまう恐れがある。

要素②:一貫性
コミュニケーションの成立を実現するためには、「明快性」と共に「一貫性」も求められる。「一貫性」のある情報発信を繰り返すことで、内容が正確に伝わる可能性が高まる。ビジネスシーンでは、「キャッチフレーズ」や「イメージカラー」を活用することで、複数のメディアを活用した場合にも「一貫性」のある情報発信により、受信者の意識に大きな影響を与える。

要素③:関連性
情報に対する理解を受信者に促すためには、情報発信の背景や結果について「関連性」のある情報発信も必要となる。受信者の行動を推測し部分的な情報を発信するのではなく、必要な情報をすべて提示することが望まれる。指示や依頼の場合、「関連性」のある情報発信を軽視することで、受信者の誤った解釈が原因となり、目的と異なる結果をもたらす危険性が高まる。

要素④:社会性
高度情報化社会の生活者は、膨大な量の情報と複数のメディアによるコミュニケーションが強いられる。「電子メール」や「チャット」などのデジタルメディアによるビジネスシーンでのコミュニケーションは、扱われる文章の厳格な作法が緩和される傾向がある。しかしながら、「社会性」を意識した最低限の礼儀を守らないことで、受信者の気分を損なうことは少なくない。「誤字」や「脱字」「言葉遣い」の注意だけでなく、「礼儀」を中心とした「社会性」に基づく「受信者への配慮」を重要視することが望まれる。

要素⑤:正解性
「確認」は、コミュニケーションの「正解性」を高める手法として、非常に有効な手段である。誤った認識を避ける目的で「確認」を行うことにより、結果として効率的かつ効果的な意思疎通を図ることが可能になる。特に異なる業界や組織、異文化の人々とコミュニケーションを行う際には、意識的に正確に繰り返す「確認」や、理解しやすい表現による「確認」などを行うことで「正解性」が高まる。

要素⑥:簡潔性
情報の不足は、コミュニケーションの効果を妨げる原因になる。しかし、過度な情報もコミュニケーションの効果を妨げる原因になる。「聴取」や「閲読」に関わらず、情報の受信者が内容を理解するために集中力を持続する時間は限られている。したがって、受信者の集中力が持続できる範囲で、伝えるべき情報を発信することが求められる。要点を早い段階で提示し、受信者の関心が薄れる前に情報発信を終える技術が必要である。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年11月号より転載

【クロスメディアキーワード】コミュニケーションの基本

さまざまなメディアをコーディネートする上で、生活者の「コミュニケーション」に関する基本的な知識は、非常に重要になる。

コミュニケーションとは

メディアのコーディネートを前提とした本稿では、情報の伝達とその効用を重視し、「コミュニケーションとは、社会生活を営む生活者間で行われる、送り手と受け手による知覚や感情、思考などの情報伝達と共通理解や共同関係」であると定義する。
「送り手」は収集した情報を構造化し、「受け手」が理解できるように手を加えて、「コミュニケーション」の価値を高められる。情報を効率的かつ効果的に表現することで、「コミュニケーション」の目的を達成することが可能になる。目的や意図のある情報として明確化するには、情報の加工が必要になる。情報を人々の経験に基づく知識をもとに、生活者が理解できるように加工することで、目的や意図の伝達が可能となり、共有すべき知識の源となる。

コミュニケーションの構造

人と人による「コミュニケーション」を図る場合、事前の共有が前提となることがある。そのとき前提の中でも、表現方法や物事の関係性や背景などの状況を含めた「コンテキスト(文脈)」が、重要になる。同様の情報でも、「受け手」が異なることで、解釈も異なる場合がある。有効な「コミュニケーション」は、事前に共有しなければならない「知識」と「理解」が必要になる。受け手による誤解を避け、正確な理解を促す「コミュニケーション」手法が重要である。

コミュニケーションの要素

「コミュニケーション」において「言葉」は、情報を表現するための中心的な要素である。また「言葉」には、「話し言葉」と「書き言葉」があり、「話し言葉」では表現内容のほかに、「声の調子」「声のテンポ」「声量」「リズム」「イントネーション」「間のとり方」などが重要な要素となる。表現内容とほかの要素は、「受け手」となる人に多様な反応を誘引する。
「書き言葉」は、文字の発明により実現した。「書き言葉」は「話し言葉」が使用できない場面で、基本的に使用される。地理的や時間的に不都合がある「受け手」に対し、情報を発信する際に重要な「コミュニケーション」の要素となる。また、「書き言葉」を重要な要素として位置付け、「論文」や「小説」などとして自己表現に使用する「送り手」となる人々も存在する。
しかし、「言葉」だけが唯一の表現するための要素ではない。「ジェスチャー」の一つである「表情」「視線」についても、「コミュニケーション」の重要な要素であると考えられる。このことから、「小説」では「表情」や「視線」も、「言葉」で表現することがある。
さらに「身体の接触」も、アメリカの社会学者であるアーヴィング・ゴッフマンにより、「コミュニケーション」の要素であると提唱されている。「身体の接触」は、「話し言葉」の「強調」や「捕捉」などとして、作用することが多い。
これらの例から理解できるように「コミュニケーション」は、「バーバル(言語的)コミュニケーション」と「ノンバーバル(非言語的)コミュニケーション」として、大きく2 つに分類できる。

バーバルコミュニケーション

文字や画像、音声、映像などを使用した「コミュニケーション」は、「バーバルコミュニケーション」に分類される。「コミュニケーション」の中では、意識的に行うことを前提に、断続的であることも多く、論理的要素も求められ、意思を明確に伝達する際に用いられる。理性で訴えることが多く、「コミュニケーション」の表現において言語への依存度が高い文化圏で重要視される傾向がある。
バーバルコミュニケーションは、ペーパーメディアやデジタルメディアを活用したコミュニケーションにおいて、コンテンツを構成する中心的な要素となる。また、ビジネス上では手紙や電子メール、報告書、提案書など、さまざま「コミュニケーション」の場で、必要不可欠なものとなる。

ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションは、「表情」や「視線」「身振り」「手振り」などの「ジェスチャー」が分類される。「コミュニケーション」全体の中では使用比率が高く、意識的かつ無意識的に行われる。継続的な「コミュニケーション」に適用され、強い感覚的要素を伴う。感情的表現により感性に訴求し、「コミュニケーション」の表現において、言語への依存度が低い日本を含む文化圏で重要視される傾向がある。「ジェスチャー」は、「あくび」や「腕組み」など、無意識に行われるものがある。無意識の「ジェスチャー」は、感情の処理や生理的欲求の充足のために多く行われる。

メラビアンの法則

アメリカのアルバート・メラビアンによる「メラビアンの法則」は、限られた環境の中で話し手の印象は、「表情」「声の調子」「言語」の順に重要視され、非言語的な要素が比較的大きいと提唱されている。

ザイアンス効果(単純接触効果)

ロバート・ザイアンスは、何度も見聞きすることで、次第に良い感情が起こる効果があると提唱する。これは、会う機会の多い人や何度も聞く音楽は、好きになる傾向があることを意味する。経験による潜在記憶は、印象評価において誤って帰属されるという、知覚的流暢性誤帰属説で説明されている。潜在学習や概念形成など、働きも関わるとされており、この傾向を「ザイアンス効果」や「単純接触効果」と呼ぶ。
「セブンヒッツ理論」は、「ザイアンス効果」を理論的に発展させ、マスメディアやミドルメディア(インターネットメディア)により、生活者が商品に関連した情報に7 回触れることで、実店舗やEC(Electronic Commerce)サイトでその商品を購入する確率が高くなると提唱している。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年10月号より転載

【クロスメディアキーワード】組織とメディアコミュニケーション

企業にとって顧客と同様に重要な利害関係者として、従業員が挙げられる。従業員同士の円滑なコミュニケーションにより、企業は継続的な発展を期待できる。

組織とコミュニケーション

企業を代表とするさまざまな組織は、複数の人により構成されている。メディアコミュニケーションによる情報の受発信や合意形成は、組織の根幹を支える。実際の企業による経済活動は、従業員によって行われている。企業の活動では、経営者が方針を示し、管理職が方針を理解しそれぞれの活動へ展開し、管理職が率いる従業員により実現していく。組織内のメディアコミュニケーションは企業の活動にとって、非常に重要であり、必要不可欠なものとなる。IT(InformationTechnology)の発展により、組織内のコミュニケーションのあり方は多様になるだけでなく、変化し続けている。

メディアコミュニケーションの種類

電子メールやグループウェアにより、組織内のメディアコミュニケーションは、大きく様変わりしている。全組織で共有すべき情報は、本部機能を持つ部署から、全従業員に向けられて発信されることが多い。
デジタルメディアが普及する以前は、既存のメディアとして、社内報などのペーパーメディアが多く利用されていた。デジタルメディアが普及した後は、電子メールのほか、イントラネット上のBBS(BulletinBoard System:電子掲示板)やSNS(SocialNetworking Service)、ブログ(Blobg、Weblog)などを導入している組織も多い。
また、組織内における個人と個人によるメディアコミュニケーションでは、電子メールや電話が多く用いられ、緊急性が比較的高い場合や、言葉のニュアンスまで伝えたい場合に利用されている。緊急性が低い場合や、文章によって記録を残したい場合には、電子メールが用いられる。しかし、電子メールやBBSなどのデジタルメディアによるコミュニケーションは便利な側面、使用法を誤ると、思わぬトラブルの原因となる。

新たなメディアの問題点

既存のメディアが整理されないまま新たなメディアが導入されている状況では、組織内のメディアは多様化し、既存のメディアとの間で機能的な重複や非効率を生じる可能性がある。利用されるメディアが多様化することで、メディアの選択による混乱や、メディア選択の調整、利用メディアの違いによるコミュニケーションの制限によって効率が落ち、コミュニケーション環境の有効性が低下する場合がある。
対策として、メディアの利用ルールを策定することで、非効率な状況を改善できる場合もあるが、根本的な問題解決にはつながらない。導入されるメディアが多様化しても、利用されるメディアは同じ程度には多様化せず、飽和する傾向もある。職務の特性により、メディアの多様性に対する接点も異なる。

新しいメディア導入の理由

既存のメディアを利用しているにもかかわらず、新たなメディアが導入されるのは、組織を管理する上でコミュニケーションが重要視されるからである。コミュニケーションは組織が機能するために不可欠な要素であるばかりでなく、市場環境への対応や、新製品開発での革新の形成にも影響している。このような中、新たなメディアが考案され、その効果が魅力的に訴求されることで、たとえ既存のメディアと機能が重複していても、新たなメディアの導入は正当化される可能性がある。また、他社の採用や部署からの要望などにより、新たなメディアの導入が後押しされる場合もある。
さらに、目標とすべき優良な組織が、新たなメディアを導入した事例があれば、自らも導入しようと検討する場合もある。あるいは現状の問題を解決するために、新たなメディアの導入が必要であることや、既存のメディアではその問題が解決できないことに対する部署からの主張があれば、その導入を検討せざるを得ない。その場合、要望を出した部署のみが、新たなメディアを導入すればよいといった議論がある。しかしながら、一般的にメディアには、「ネットワーク効果」が働く。

ネットワーク効果

「ネットワーク効果」とは、相互に接続される製品やサービスに見られる性質の一つであり、「同一の製品やサービスを利用する人々が増加するほど価値が高まる」といった効果を指す。同様の概念に、「通信網の価値は利用者数の二乗に比例する。また、通信網の価格は利用者数に比例する」という「メトカーフの法則」がある。また、エベレット・ロジャース(Everett Rogers)が提唱した「クリティカルマス」は、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となっている普及率を表している。この考え方を応用すると、双方向のコミュニケーションを実現するメディアも、利用者数がある程度増加しないと十分な効果が期待できないために利用者も増えない。したがって、一部の部署だけが新たなメディアを導入し、限られた人だけに利用させることは、必ずしも得策とは限らない。

新たなメディアの導入へ

SNS は利用者の人間関係を可視化することで、新たな人的ネットワークの形成を支援するメディアの一つである。しかし、わずかな利用者でSNSを利用しても、真の価値を享受できる可能性はあまりないので組織全体に導入されることが望まれる。
さらにIT の低廉化は、新たなメディアの導入へのハードルを下げる効果が期待できる。ハードウェアは、性能の向上と価格の低下が飛躍的に見られる。ソフトウェアも、オープンソースで提供されているものも多く、それらの組み合わせにより、低コストで実用に耐えられる情報システムの構築が可能になった。メディアやIT に対する正しい見識を持つことで、「大きな改善」の可能性がある。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年9月号より転載

【クロスメディアキーワード】顧客とのメディアコミュニケーション

企業にとってステークホルダー(利害関係者)は複数存在するが、多くの場合、顧客はその中でも重要視される。

コンタクトポイント

顧客が製品やサービスを購入することで、企業は利益を確保できる。顧客とのコミュニケーションは、企業の継続性を担保するために、不可欠なものとなる。情報を顧客へ向けて発信する際、コミュニケーションが発生する点(場)を「コンタクトポイント(顧客接点)」と呼ぶ。
また、インターネットと対応したモバイル端末の普及により、「コンタクトポイント」は大きな影響を受けた。現在は、顧客とのコミュニケーションに対し、インターネットメディアである「電子メール」や「さまざまなWebサイト」を「コンタクトポイント」として企業は活用しているが、「テレビ」や「ラジオ」、「新聞」「雑誌」「電話」「DM(Direct Mail)」などの旧来からのメディアも当然のように併用されている。
企業が顧客との有効な関係を構築するためには、対象となるそれぞれの顧客に向け、「コンタクトポイント」を見極め、「求められている情報」を最適なタイミングで提供することが求められる。また、「顧客が企業や商品に対し抱いていること」を読み取り、素早く回答していくことも必要となっている。

情報とメディア

メディアによるコミュニケーションは、「情報(コンテンツ)」と「メディアの選択」が重要であり、双方の適切な組み合わせにより、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことを実現する。また、顧客が企業となる「B to B(Business to Business)型」の事業を展開する企業にとっては、「顧客となる企業にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」こととなる。
「顧客が求めていない情報を望んでいないタイミングとメディアで提供する」といった、一方的なメディアによるコミュニケーションは、現在でも複数存在している。このようなメディアによるコミュニケーションでは、顧客との有効な関係の構築自体が難しいものとなる。

コミュニケーションプランニング

企業が顧客とのコミュニケーションを設計するには、まず、「顧客を知る」ことが必要となる。顧客の嗜好や行動について知ることが求められる。次に「顧客を知る」に基づき、「顧客が求めている情報を予測する」行動が必要となる。求めている情報が明確であれば、企業が顧客とコミュニケーションを行う大きな機会となる。さらに求めている情報を分析し、「顧客に提供すべき情報を選別する」ことから、企業にとっても有効なコミュニケーションを実現する。最後に「顧客に情報を提供するメディアを選定する」ことで、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことが可能になる。

顧客の行動

顧客との適切な「コンタクトポイント」を明確にするには、メディアによるコミュニケーションの対象となる顧客が持つ「嗜好」を把握し「行動」を予測する。「顧客視点」によるマーケティング戦略を立案し、「顧客の立場」を最重要視する。
「ソーシャルメディアが一般的に注目されているから」「新商品を開発したから」などの企業側の理由だけで、顧客とのコミュニケーションを図ろうとしても、むしろ、費用だけを要してしまい、成功の可能性を低めていく結果をもたらしてしまうかもしれない。まず「日々、顧客が経験する生活における行動」を理解することが大切になる。
また、顧客の行動を理解するために、顧客の行動を「プロモーションの段階」では「問題認識や情報検索」、「セールスの段階」では「代替品の評価や購買決定」、「アフターセールスの段階」では「購買後の行動」といった分類をして分析することが重要であると、アメリカ合衆国の経営学者である「フィリップ・コトラー」は提唱している。

提供すべき情報

「顧客の行動」を把握し、コミュニケーションの必要性を得ることができたら、「顧客が求める情報」を分析し、「提供すべき情報」を選定する。
EC(Electronic Commerce)サイトから商品を購入する際、「クレジットカードを利用し注文することは可能であるか」「クレジットカードの情報を入力しても安全であるか」「何か問題が発生したときに保証はあるか」などは、顧客にとって大変重要なこととなる。さらに注文後に「正確に注文が行えているか」といった確認も必要であり、「商品の到着日時」などの情報も求められる。
ネット(インターネット)通販を展開する大手の事業者は、前述した情報提供のほか、顧客の行動を詳細に把握し、必要な情報を適切なタイミングで提供することで、顧客から信頼を獲得している。

メディアの選択

「コンタクトポイント」を設定し、「提供すべき情報」の選定後は、コミュニケーションに使用するメディアを選択する。
メディアは多種多様なものが存在するが、「顧客の行動」と「提供すべき情報」によりメディアの選択は大きく影響を受ける。
インターネットを利用できる「パソコン」や「スマートフォン」「タブレット」などとのデバイス(端末)で使用が可能である「デジタルメディア」は、多くの「コンタクトポイント」での活用を見込むことができる。しかしながら「デジタルメディア」は、必ずしも万能なわけではない。「プロモーションの段階」で、大量な電子メールの送付や、ソーシャルメディアへの執拗な投稿は、顧客に不快感を与える可能性もある。
メディアの選択肢が旧来のマスメディアやSP(Sales Promotion)メディアに限られていた時代と比較すると、インターネットの普及は、企業と顧客のコミュニケーションのあり方に、大きな影響を与えている。大切なことは、手段を優先せずに「顧客の立場」を考慮したメディアによるコミュニケーションにより、「情報」と「メディアの選択」を慎重に組み合わせることにある。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年8月号より転載