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【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-7 情報管理

3-7-1 情報交換

  • 小ロット化が一段と進むなかワークフローの重要度が増している。印刷物の仕様や機器制御のための情報をデータ交換することにより、自動化や省力化を実現しようという試みが交換されるデータ形式の標準化とともに進んでいる。
  • デジタル化されたプリプレスデータを印刷、後加工の機器制御に活用しようとして生まれたのがCIP3という国際標準化団体である。
  • CIP3とはThe International Cooperation for Integration of Prepress,Press and Postpressの略称で、プリプレス、プレス、ポストプレスという印刷物の製造工程をデジタルで統合することを目的としている。
  • 具体的には集版データ(面付け済みの出力前データ)から版面情報(絵柄の網点面積率)、裁ちトンボや折りトンボの位置などの情報を取得し、紙の作業指示書ではなくデジタルデータを直接、製造機器に伝えることで印刷機や断裁機、折り機などの自動プリセット(事前設定の自動化)を実現しようとするものである。CIP3が定めたデータ交換のための標準フォーマットをPPF(Print Production Format)という。CIP3のPPFファイルは印刷機のインキキーのプリセット用途で大きな効果を発揮し、現在でも多くの印刷会社で利用されている。
  • CIP3は2000年にCIP4へと形を変えた。「Processes in」という言葉が追加され、The International Cooperation for Integration of Processes in Prepress,Press and Postpress となった。CIP4が定めている標準化フォーマットがJDF(Job Definitions Format)である。JDFの最大の特徴は、PPFではデータの流れがプリプレスからそれ以降の工程への一方向であったものがJDFでは双方向のデータ交換が可能となったことである。これにより作業結果(作業にかかった時間、使用した用紙枚数など)を製造機器からフィードバックすることが可能となる。
  • ワークフローを統合し、CIM(Computer Integrated Manufacturing:
    コンピューター制御による統合生産)を実現する要素技術として期待されている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[印刷技術]3-8 特殊印刷

出版印刷や商業印刷など紙を対象にした印刷を一般印刷という。それに対して、プラスチック、金属、ガラス、布などへの印刷は特殊印刷と呼ばれる。また、紙への印刷であっても特殊な機能や効果を持ったインキを用いたり、特殊な印刷方法、加工方法によるものも特殊印刷と呼ばれる。後者は販売促進用のノベルティや商業印刷分野の宣伝広告媒体に用いることで、より消費者の関心を集め、印刷物の効果を上げることができる。
ここでは、コミュニケーション効果を高めるための特殊印刷を中心に取り上げる。

3-8-1 スクラッチ印刷

  • スクラッチ印刷は、印刷面の上に銀色などの特殊インキを印刷するもの。コインや爪などで擦り取ると隠された部分が現れる。
  • セロハンテープオフ印刷はスクラッチ印刷同様、銀インキの隠ぺい性を活かした特殊印刷である。セロハンテープなどの粘着性を利用して表面のインキを剥がし、隠された部分の絵柄を見る。

3-8-2 蓄光・発光・蛍光印刷

  • 蓄光印刷は、光のエネルギーを蓄える性質を持つ顔料を練り込んだインキで印刷するもの。明るいときに吸収・蓄積した光のエネルギーを暗がりになったときに少しずつ光を出し続ける。なお、蓄光性を持つ物質が暗所で発光する際の光を「燐光(りんこう)」という。この発光の明るさを燐光輝度(単位: cd/m2)で示す。
  • 発光(はっこう)とは、光を発すること。 熱放射(黒体放射) (恒星、炎、白熱灯などの光)、ルミネセンス(冷光)、 荷電粒子線の制動放射による発光、 チェレンコフ光などがある。化学反応によって励起状態をつくり、それが基底状態に遷移するときに発光する。これを化学発光と呼ぶ。
  • 生物(せいぶつ)発光(はっこう)とは、生物が光を生成し放射する現象である。化学的エネルギーを光エネルギーに変換する化学反応の結果として発生する。
  • 蛍光(けいこう)(英: fluorescence)とは、発光現象の分類。最も広義には、ルミネセンスによる光(発光)全般を指す場合もあるが、一般的には、ルミネセンスのうち、電子の励起源が可視光より短波長の電磁波による発光を指す(フォトルミネセンス)。紛らわしいが、蛍(ホタル)の発光は化学反応(ケミルミネセンス)によるものであり、蛍光(フォトルミネセンス)とはメカニズムが異なる。
  • 実際の発光・蛍光印刷の例は、多色のHexachromeやステレオ印刷で、彩度を上げるために蛍光剤を混ぜたオレンジやレッドインキが使用されているのが一般的である。同じく特色に蛍光剤を混ぜたインキも一般的である。
  • ブラックライトで発光するRGBインキを使用したRGB発光インキによる印刷物もある。例えばブライダル写真で白いウエディングドレスの写真にブラックライトを当てると、赤いドレスに変化したりする効果を演出することが出来る。
  • カラーマネジメント技術が発達したおかげで比較的簡単にRGB印刷も可能になったといえる。しかし黒に見えるところは何もインキの載っていない部分で紙の白地が黒に見えるようになっているので、紙の上の加算混合ということが出来る。

3-8-3 凹凸

  • 特殊なスクリーン印刷をすることで、一見腐蝕されているかのように見せる擬似エッチングや熱によって膨らむパウダーを印刷面に付着させ立体効果を出す隆起印刷(バーコ)、表面にちぢみ模様の凹凸を発生させるちぢみ印刷などがある。

3-8-4 立体

  • 立体印刷は平面上で絵柄が浮かび上がって見えたり奥行き感を出す等、視覚的に立体感を得られる印刷であり、ホログラムやステレオグラム、2枚写真法、レンチキュラープリント等さまざまな手法がある。
  • 3Dホログラムとは、平面画像と立体画像をまぜ、角度を変えると虹色に変化するレインボータイプのホログラムで、平面上の画像と立体感を感じさせるバックの画像を組み合わせたものである。転写箔とステッカーの2種類のタイプがある。偽造防止用としてクレジットカードやコンサートなどの入場券に使われているほか、ポスターやカレンダーのデザインの一部としても使われている。
  • レンチキュラープリントとは、微細なカマボコ形のプラスチックレンズを絵柄に貼り合わせて、立体像を見る方法である。断面がカマボコ形になっているレンズのことをレンチキュールと呼び、それが均等なピッチで複数並んだものをレンチキュラーレンズという。レンズの厚みや1インチあたりのカマボコ形の本数などは何種類もあり用途ごとに厚みやレンズの線数も使い分けられている。CDやDVDのジャケット・マウスパッド・ステッカー・トレーディングカード等に使われている。
  • 2色立体印刷は、絵柄を赤、青(藍)の2色で印刷し、赤と青のフィルターのメガネを通して見ると絵柄が立体に見える。絵本、地図などの用途がある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-1 コンピューター

コンピューターは、「入力」「出力」「演算・制御」「記憶」といった機能を持つ装置として構成される。その種類や特長、用途などを理解する。

4-1-1 データ表現

  • コンピューターは、「0」と「1」による2進数でデータの処理を行う。2進数による表記は、人による識別が困難なため、2進化10進法(BCD:Binary Coded Decimal)や16進数(ヘキサデシマル)でデータを表す。
  • データの最小単位は「bit(ビット)」であり、1Byte(バイト)=8bitである。「Byte」は2の8乗(8bit)であり、10進数で表す場合は256までの数字を表現できる。
  • 画像データのカラー表現(階調表現)では、8bitや16bitといった単位が用いられる。8bitは256階調、16bitは65,536階調の表現が可能である。
  • 文字表現では、0~255までの数値を文字に割り当て処理を行う。漢字を表現する場合は、2バイト(2の16乗=16bit)必要である。
  • コンピューターで扱う情報量は膨大なものとなり、その単位も大きな桁数を表すものが使われている。1KB(キロバイト)は1,024Byte(2の10乗)、1MB(メガバイト)は1,024KB(2の20乗=1,048,576Byte)、1GB(ギガバイト)は1,024MB(2の30乗=1,073,741,824Byte)、1TB(テラバイト)は1,024GB(2の40乗=1,099,511,627,776Byte)である。
  • 伝送速度とは、一定時間内に転送が可能なデータ量を表す。1秒間に転送できるデータ量を表す際には、「bps」の単位が使用される。
  • bps(bit per second)は、通信の際に使用される単位である。1秒間に何bitのデータ転送が可能であるかを示す。実効速度(スループット)は、実質的なデータ転送量や処理量を表し、一般に実効速度は伝送速度よりも遅くなる。

4-1-2 構成

  • コンピューターには、I/O(Input/Output=アイオー)と演算、記憶などの機能がある。I/Oは、入力機能と出力機能を指し、通信機能もI/Oのひとつとされる。

4-1-3 機能

  • 入力機能とは、外部からコンピューターにデータを送信することである。文字信号を送信する「キーボード」、入力位置の指示を送信する「マウス」、画像情報を送信する「イメージスキャナー」や「デジタルカメラ」などがある。
  • 出力機能とは、コンピューターから外部にデータを送信することである。文字や図形、映像などを表示する装置として「ディスプレイ」があり「モニター」とも呼ばれる。また、「プリンター」や「プロッター」は紙へ、「イメージセッター」はフィルムへ、「CTP」は刷版にデータを出力する装置となる。
  • 演算機能では、コンピューターが命令を解読し、CPU(中央処理装置)で演算処理を実行する。広義のCPU(中央処理装置)は、命令を実行するために使用する主記憶も含めた装置を指す。
  • 記憶機能とは、コンピューターで処理するデータやプログラムを格納する機能のことである。CPUから直接アクセスできる主記憶は、半導体メモリーにより構成される記憶装置である。補助記憶装置(ストレージ)とは、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリーなどを指し、外部記憶装置とも呼ばれる。 

4-1-4 インタフェース

  • インタフェースとは、コンピューターと周辺装置を接続するために必要な、回路や装置を指す。パラレルインタフェースとシリアルインタフェースがあり、それぞれの方式の原理や種類、特長、用途などを理解する必要がある。

4-1-5 入力装置

  • 入力装置とは、人がコンピューターに直接的に接触するマン・マシン・インタフェースである。人にとって「理解しやすい」「覚えやすい」「疲労しにくい」「効率的である」などといった要素が求められる。
  • キーボードのキー配列は、「JIS配列」や「親指シフト配列」「50音順配列」などといった複数の規格がある。
  • ポインティングデバイスは、人為的にコンピューターに対する座標位置の指示を行う装置を指す。代表的なデバイスとして、「マウス」「トラックボール」「デジタイザー」「タブレット」「タッチパネル」などが挙げられる。
  • デジタルカメラは、コンパクトカメラから一眼レフカメラまでさまざまなものがあり、レンズや絞り機構を指す光学系と、受光素子とメモリーを含む画像演算回路や記録装置などといった電子系により構成されている。
  • イメージスキャナーは、通信や記録のために画像や文書などを電子化し静止画像情報化する装置である。画像情報をOCR(Optical Character Recognition)を利用し、文字データ化する際にも使用される。

4-1-6 出力装置

  • プリンターには、「インクジェット方式」や「電子写真方式」、「熱溶融転写方式」、「昇華熱転写方式」などがある。
  • 「インクジェット方式」は、微細な粒子にしたインクをポンプや電気的な力により紙に噴射し付着させる印刷方式である。出力する画像の濃淡を制御することが可能なプリンターもある。大きなサイズにも対応可能であり、色材の選択範囲が広い。
  • 「電子写真方式」は、一様に帯電させた感光層に光を当てることで潜像を形成し、感光層にトナーを付着させて現像し、紙などに転写する方式である。光プリンターとも呼ばれ、感光ドラムへの潜像を形成するために、レーザーやLEDを使用する。
  • 「熱溶融転写方式」は、微小な発熱体素子が配列されたプリンターヘッドをインクリボンと紙に押し当て、ヘッドの特定素子を電気により加熱し、インクを溶かして紙に転写する方式であり、解像度は300~600dpi前後である。
  • 「昇華熱転写方式」とは、昇華性染料を塗布したインクシートを熱し、昇華した染料を専用用紙に付着させて印刷するものを指す。ヘッドを加熱する加減により、転移する染料の量が変化するため、連続階調表現が可能である。
  • 液晶ディスプレイであるLCD(Liquid Crystal Display)は、液晶を利用した表示装置であり、画質の安定性とちらつきのなさが特徴であり、液晶モニターと呼ばれることもある。RGBの3原色のフィルターを各画素上に正確に配置することで、100~300dpiのディスプレイが実現できる。液晶自体は発光せず、ディスプレイの背後からバックライトを投射し画面を明るくする。
  • 液晶の配列や駆動方式により、TN(Twisted Nematic)方式やSTN(Super Twisted Nematic)方式がある。視野角が狭いため、角度によりコントラストや色が変化してしまうことが弱点とされていたが、広視野角・高画質技術のVA(Vertical Alignment)方式やPS(In-Plane Switching)方式の採用により改善された。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-2 ソフトウェア

4-2-1 OS(Operating System)

  • OSは、コンピューターにより処理を行う上で、共通して必要となる入出力機器の制御やファイルの管理などの機能を果たすものであり、基本ソフトウェアとも呼ばれる。複数のアプリケーションを同時に実行するための管理や、複数ユーザー管理などの機能をもつものもある。OSの種類により、データを扱う方法が異なり、効率的にファイルへの記録をするためフォーマットが異なる。
  • 「UNIX」は、1960年代にAT&Tのベル研究所がミニコン用に開発したマルチユーザーやマルチタスク機能をもつOSであり、パソコンから大型コンピューターまで幅広く使用されている。
  • 記録媒体やサーバー上にあるデータの読み込みが可能である場合において、OSやアプリケーションが同等に解釈できる必要がある。
  • Windowsのデータは、その種類が拡張子により設定されており、「.TXT」はテキスト、「.TIF」はTIFF画像などとなっている。
  • WindowsのデータをMacで使用するには、拡張子によるアプリケーションとの関連をリンクできるが、MacのファイルをWindowsで使用する際には、適切な拡張子を付与する必要がある。
  • テキストデータの行末処理では、行頭への復帰(CR:Carriage Return)と次行送り(LF:Line Feed)といった2種の制御コードが存在する。テキストエディターやワープロソフトによって対応が異なるので、データ交換する際には注意が必要である。

4-2-2 アプリケーション

  • アプリケーションには、「ワードプロセッサー」や「スプレッドシート」、「データベース」、「ドロー」、「フォトレタッチ」、「3D」などがある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-3 ネットワーク

4-3-1 ネットワーク構成

  • コンピューターネットワークの構築には、ネットワークOSやサーバーOS、サーバー用やクライアント用のアプリケーション、接続するLAN(Local Area Network)ケーブルと周辺機器や、無線LAN環境などが必要である。
  • 代表的LANであるEthernetは、同軸ケーブルを使用したバス型の10Base5や10Base2により配線していたが、対線(ツイストペアケーブル)を用いる10Base-Tや100Base-T、1000Base-Tによる配線が主流となった。
  • 各機器からのケーブルを集線する装置であるハブ(HUB)は、スター型配線で、媒体共有型のリピーターハブに加え、スイッチングハブが主流である。
  • 無線LANを有線LANと接続する場合や、無線LANからインターネットに接続するには、アクセスポイントを経由するインフラストラクチャモードを使用する。パソコンを移動してもアクセスポイントを自動的に切り替えるローミング機能を利用する。
  • 無線LANと有線のEthernetは、中継機とハブを接続することで1つのLANとして構成できる。
  • IEEE802.11b規格に準拠している無線LANの製品は、最大11Mbpsの速度で通信できるが、電波状態が悪くなると自動的に速度を落とす仕組みになっている。IEEE802.11g規格では最大54Mbpsの速度がある。
  • 無線LANを使用する場合、アクセスポイントまでの距離や電波を通しづらい金属やコンクリートなどの障害物への配慮が必要である。

➢ Bluetooth

  • Bluetoothとは、携帯情報機器などで数m程度の機器間接続に使われる無線通信技術のひとつである。免許なしで自由に使うことのできる2.45GHz帯の電波を利用し、最高24Mbpsの速度で通信を行うことができる。ノートPCとキーボードやマウスなどの周辺機器を無線で接続し、データをやりとりすることができる。近年では、スマートフォン、タブレットPCの周辺機器との接続や、携帯電話のハンズフリー通話にも使用されている。
  • スウェーデンのエリクソンが開発した技術をもとに、IBM、Intel、Nokia、東芝などが中心となって設立されたBluetooth SIGが仕様策定や普及を推進している。IEEEによってIEEE 802.15.1として標準化されている。

IEEE802.11規格

4-3-2 ストレージ

  • サーバーで使用されるRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、ハードディスクの故障によるデータ損失を防ぐため、ディスク装置の多重化によるデータの冗長性で、故障時のデータの自動修復を行う1つの手法である。

RAID 種類(準備中)

  • RAIDの導入により、ドライブの集合を1つの巨大なドライブとみなすことができるようになる。
  • NAS(Network Attached Storage)は、LAN対応の外付けハードディスクとして使用されることがあり、1000Baseといった高速ネットワークの普及とともに使用方法が拡大した。
    今日のサーバーコンピューターのように、ネットワーク上に配置されるストレージ用のファイルシステム専用サーバーである。
    内部には、OSとファイルに関するプロトコルを処理するソフトウェアが組み込まれている。ネットワーク上にデータを送信するため、ネットワークに負荷がかかる傾向がある。
  • SAN(Storage Area Network)は、ストレージに適したコンピューターネットワークを別に用意するものであり、ネットワークに対するオーバーヘッドはNASよりも小さいが、異なるファイルシステムを持つサーバー間でのデータ共有に困難を伴う。
    データの転送効率を優先的に考えているために、光ファイバーやハブ、その他ネットワーク機器などに対する投資が必要となる。

4-3-3 プロトコル

  • プロトコルとは、通信を行う際にデータを正しく送受信するため、送信側と受信側のそれぞれが処理する手順を指す。
  • 目的とする通信の内容や、伝送路の形態(ネットワークの有無)などにより、種々の構造化されたプロトコルがある。構造を階層化したISO標準モデルとして、7階層のOSI(Open System Interconnection)がある。
  • 電気的または機械的な接続を可能にするためのプロトコルは、回線の種類と電気的な配線について接続方法が規定されている。
  • プロトコルには、伝送路でデータに誤りが発生した場合の訂正方法や、正しく受信した場合の合図の送り方などが規定されている(伝送制御手順)。
  • インターネットのレイヤー構造は、インタフェース層を含めて5階層(またはインタフェース層を考えない4階層)で構成され、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルはソフトウェアによるパケットといった単位の情報で制御を行い、ネットワークの種類を問わず信頼性の高いデータの送受信を行う。
  • 通信プロトコルの上位には、送受信のタイミングや使用する文字コード、データの圧縮方式、ファイル転送の方法などのプロトコルが必要になる。

4-3-4 インターネット

  • インターネットは、通信プロトコルであるTCP/IPを用い、世界中のネットワークを相互に接続した巨大なコンピューターネットワークである。
  • ルーターは接続するコンピューターへの経路を決定する装置であり、インターネットでは、経路中の専用または汎用コンピューターなどが使用される。
  • 経路となるネットワークが寸断された場合は、ルーターが迂回経路を見つけ出すため接続性が高い。
  • データを細切れのパケット単位で送信する方法(パケット通信)を採用しているため、中継に使用されるコンピューターシステムの負荷が軽く、ネットワークの柔軟性を高めている。
  • IPパケットのヘッダーには、送信元アドレス、送信先アドレス、プロトコル種別、ポート番号などが含まれており、プロトコルはTCPが採用されている。
  • ネットワークの単位となる名称は、ドメインにより管理されている。インターネットに接続する各装置にはIPアドレスが割り振られており、それに対応するホスト名をDNS(Domain Name System)が管理している。
  • インターネット上のサーバーコンピューターは、用途によりさまざまなものがあり、これらが組み合わされて使われている。一般的に必須とされるDNSサーバーをはじめ、POP(Post Office Protocol)サーバーやSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバーは電子メールで使用される。
  • IPパケットのヘッダー内に含まれるポート番号により、送信される情報のサービス種別が識別され、例えばHTTPであれば80となっている。

4-3-5 クラウド

  • クラウドコンピューティングでは、サーバーが連携し合い、クラウド(雲)と呼ばれる仮想化された1個のコンピューターリソースとして捉えられる。
  • 従来は、ユーザー自身がハードウェアやソフトウェア、データなどを自分自身で保有・管理していたのに対し、クラウドではインターネット上で提供されているさまざまなサービス(クラウドサービス)についてユーザーが必要な機能を必要な分だけ選択して利用するといった形態となる。ユーザーが用意するものはインターネットへの接続環境のみである。
  • 主なクラウドサービスとしては、Google App EngineやAmazon Web Services、Microsoft Azureなどが有名である。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[情報システム]4-4 マークアップ言語

4-4-1 HTML

  • HTMLはWeb(World Wide Web)上の文書を記述するためのマークアップ言語であり、文書の論理構造や表示方法などを記述することができる。
  • W3C(World Wide Web Consortium)により標準化が行われ、通常WebブラウザーはHTML文書の解釈や表示が行える。
  • インターネット上のWebサイトでは、HTMLとWeb技術が使用されている。
  • HTMLはSGMLを基に開発されたもので、SGMLと同様にテキストファイルにタグを記述する。ハイパーリンクについても同様である。
  • HTML文書はオフラインでの使用も可能であるが、Webサーバーに設置し、インターネット上に公開することで情報提供サービスを実施できる。

4-4-2 HTML5

  • HTML5は、Web関連技術の標準化団体W3C(World Wide Web Consortium)が策定したHTMLの最新版である。2008年1月にW3Cよりドラフト(草案)が発表され、2014年10月に勧告となった。
  • 小数点以下のバージョンを表記する場合には「HTML」と「5.1」の間にスペースを入れた「HTML 5.1」、小数点以下を表記しない場合は、「HTML5」のようにスペースを含めない表記法が採用されている。
  • HTMLは、1997年に勧告となったHTML 4.0に至るまで、Web上でドキュメントを閲覧するための技術として機能が追加されてきた。その後、HTMLを再定義した「XHTML」として、コンピューターがXHTMLを読み込んで内容を認識できるようにする「セマンティックWeb」として改定を進める方向であった。
  • しかし、2004年頃からHTMLとJavaScriptによるWebアプリケーションにフォーカスした新しい独自仕様の策定を進めるコミュニティーが立ち上がるなど、セマンティックWebは徐々に支持を失っていった。その結果、W3Cも方向転換し、WHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)というコミュニティーと共同でHTML5の仕様策定を進めることとなった。
  • HTML5改定の主目的は、「セマンティックWeb」に近づけることとともに、最新のマルチメディアをサポートし、Webアプリケーションを開発するためのプラットフォームとなることである。
  • HTML5では、新たにaudio要素、video要素、SVG、canvas要素などのマルチメディアをサポートしており、従来プラグインとして提供されていたリッチインターネットアプリケーションのプラットフォームを置き換えることを標榜している。
  • また、JavaScriptにより対話的な処理をWebブラウザー上で動作させることが可能となっている。

4-4-3 XML

  • Extensible Markup Language(エクステンシブルマークアップランゲージ)は、マークアップ言語作成のため、汎用的に使うことができる仕様、および仕様により策定される言語の名称である。一般にXML(エックスエムエル)と呼ばれている。
  • XML の仕様は、World Wide Web Consortium (W3C) により策定・勧告されている。1998年2月にXML 1.0 が勧告された。
  • XMLは、目的に応じたマークアップ言語群を創るために汎用的に使うことができる仕様である。XMLでは使用者が独自にタグを定義することによって、文書に意味を付加することができるメタ言語であり、拡張可能な言語と分類される。
  • XMLの最も重要な目的は、異なる情報システム間で構造化された文書や構造化されたデータを共有、交換することである。
  • XMLは、XML宣言や文書型定義、文書により構成される。XML文書には、DTDなどスキーマ定義を必要とする「valid XML文書」と、DTDなどスキーマ定義がなくても検証できる整形式の「well-formed XML文書」がある。
  • XMLの活用により、紙メディアだけでなくデジタルメディアを視野に入れたコンテンツデータの統一モデルが可能となり、ワンソースマルチユースが実現できる。各メディアに依存するレイアウト情報は、コンテンツ要素と分離することにより、汎用的なデータモデルが実現する。
  • XML導入の利点は、テキストデータが主体となるため、データの取り扱いや、処理を一貫して行えることがあげられる。
  • また、タグにより内容を定義するものであり、文書データベースとしての用途が期待できることもあげられる。

4-4-4 EPUB

  • EPUBは、米国の電子書籍の標準化団体のひとつである国際電子出版フォーラム(International Digital Publishing Forum:IDPF)が規定した電子書籍用ファイルフォーマット規格である。モバイル端末などへのダウンロード配信を前提にパッケージ化された、XHTMLのサブセット的なファイルフォーマットである。
  • 2011年に規定されたEPUB3.0では、日本や台湾、香港などで多用される縦組みのほか、右から左に記述されるアラビア語やヘブライ語の機能が追加され、グローバル対応が進展した。さらに、EPUB3.0は2014年にISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)からTechnical Specification(技術仕様書)として出版されており、国際標準に準じた位置づけにある。
  • EPUBのファイル構造は、XHTML形式の情報内容(コンテンツ)をZIP圧縮し、ファイル拡張子を「.epub」としたものである。ビットマップ画像やCSSによるデザイン制御、SVG 1.1などをサポートしている。
  • EPUB3.0は縦書き・ルビなどの日本語組版に対応しており、多くのEPUBリーダーがこれらを実装している。しかし、2016年時点ではEPUBリーダーによっては挙動が異なることがあるため、出版団体がガイドラインを発行するなどの対策がとられている。
  • 国内の電子書籍ストア大手であるアマゾンはKindle Format 8などの独自フォーマットを採用しているが、EPUBから容易に変換できるツールを無償公開している。そのため、多くの出版社がEPUB形式の電子書籍製作を中心としている。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[コミュニケーション]5 コミュニケーション

印刷物などのメディアは、情報の移動・伝達=コミュニケーションの手段のひとつであり、コミュニケーションについての理解はメディアビジネスの根幹である。
メディア制作の源泉となる顧客企業のマーケティング活動では、コミュニケーション施策が重視される。情報収集と分析を基にメディア施策を立案し、多様化した各種メディアの特性を理解したうえで的確なメディアデザインを行うことが求められる。
印刷物をはじめとしたメディア制作にあたっては、制作目的を把握したうえで適切な仕様に落とし込むことが、情報の効果的な展開を効率よく行うためのポイントとなる。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[コミュニケーション]5-1 情報デザイン

5-1-1 情報収集

情報と知識は区別すべきである。現状把握、問題解決、未来予測など目的によって、情報収集の情報源や方法は異なる。
情報は闇雲に集めるものではなく、効率よく情報収集することが重要である。
そのためには、「誰のために・何のために」(WHY)、「何を」(WHAT)、「どこから」(WHERE)、「誰が」(WHO)、「いつ」(WHEN)または「どの期間」(HOW LONG)、「どのように」(HOW TO)、「どのくらい」(HOW MANY)、集めるかが重要である。

➢ 調査

  • 調査は物事の実態や動向を明確にするために調べることである。それには、これまでの経緯を知るための調査、現状を把握するための調査、仮説を検証するための調査、問題を解決するための調査等がある。
  • 調査はこれらの物事を進めるための出発点であり、何を理解したいかを明確な目的としなければならない。
  • まず目的を設定し、調査の手法を決める。その後に具体的な調査計画を行い実際の調査に臨む。調査された結果は整理・分析して、自分や関係者が理解しやすいように表現して共有できるようにまとめる。

➢ 定性調査と定量調査

  • 調査は大きく分けて定性調査と定量調査の2つがある。
  • 定性調査は、調査対象者の思いや感じたこと、また生の声や行動等の数値化できない情報のことで、得られたデータを定性データという。インタビューや観察法等がある。
  • 定量調査は対象を量的な情報で数値化して把握できる調査のことで、得られたデータを定量データという。質問とそれに対応した回答が予め用意されているアンケート等がある。

➢ 分析

  • 分析とは特徴を捉えることである。何らかの目的で収集された複雑な文字や符号、数値等の事柄を一つ一つの要素や成分等に分類、整理、成型、取捨選択した上で解釈し、構成を明らかにして、価値のある意味を見出す作業である。
  • 分析の手法は、分析したい元の情報の形態や得たい結果によってさまざまであり、どのような分析手法が目的に合っているかを見極めることも大切である。また分析結果に対する判断力も重要である。

➢ 定性データの分析

  • 定性調査で得られるものとして、インタビューでのメモや録音、観察で得た写真や映像等のデータがある。これらを分析するには、次の手順で行う。
    1) 要素化。個別の要素に分類し新たな視点で構成する。
    2) グループ化とラベリング。互いに関係のあるデータを1つにまとめて意味を理解し、適切なラベルを付ける。
    3) 構造化。グループ同士の因果関係や包含などの関係性を見出し、構造を整理する。必要であれば説明用に文字や図を用いる場合もある。

➢ 定量データの分析
• 定量データを分析するには主に3つの種類に分けることができる。
1) 比較(比率)、2) 構成(数量やボリューム)、3) 変化(推移)、である。

➢ グラフ化(定量データ)

  • 定量調査等で得られた文字や符号、数値等のデータは、グラフ等を用いて可視化すると良い。
  • 円グラフ、棒グラフ、レーダーチャート、ヒストグラム、折れ線グラフなど、適切な結果を表現できるグラフを選ぶことが重要である。

➢ クロス集計(定量データ)

  • 複数の項目を縦横に分けて分析する手法をクロス集計という。多くの表計算ソフトがこの機能を持っている。
  • 例えば1つないし2つの項目を縦に並べ、もう1つの項目を横に並べて、異なる要素を掛け合わせて集計(クロス集計)することで、単純な集計では得られない傾向や値を見ることができる。

➢ 統計処理(定量データ)

  • 統計分析とも言い、統計学の手法のひとつである。データを客観的に説明できる方法である。単純な集計では得られない隠れた情報を捉えることが可能になる。またデータ全体の概要を理解することもできる。
  • 統計の処理には目的に応じて多くの手法がある。例えば「予測要因分析」、「パターン分類」、「知見の発見」等がある。
  • 標本の分布の特徴を現す平均値、最頻値、中央値といった「代表値」、データのばらつきを現す「分散」、「標準偏差」、2つの異なる集合間に違いがあるかを検証する「検定」といった統計処理の手法がある。

5-1-2 プレゼンテーション

  • プレゼンテーションは限られた条件のもとで、話し手の持つ情報・事実・意見・考え等を聞き手に分かりやすく正確に伝え、受け入れてもらうための行動である。
  • 主役は聞き手であり双方向のコミュニケーションによって話し手と聞き手の要望が一致することが大切である。
  • プレゼンテーションは目的、伝える内容等によって「提案・説得型」、「報告・共有型」、「講演・スピーチ型」の3種類に分けられる。

➢ ペルソナ・シナリオ

  • 製品開発やサービスの目的やコンセプトを明確にするために、調査で示された典型的なターゲットユーザーの特徴や人格を設定した架空の人物をペルソナという。
  • この人物の生活行動や利用パターン、思考、感情等をシミュレーションしストーリー化することをシナリオという。
  • 人物像を設定することで、開発やサービスを提供する異なる分野や立場の関係者間でイメージやビジョンを共有でき、効率的で精度の高い検討を進めることができる。

5-1-3 論理的思考

論理は思考の形式や法則を意味し、思考は思いめぐらせ考えることを意味する。つまり議論や物事に対して筋道を立てて、論理的に考えることをいう。
論理的とは、前提となる考えや根拠となる事実が客観的で正しく、その前提や事実と主張との関係が明確であることを指す。論理的に組み立てられた主張は、客観的で不足や過剰がなく説得力が増す。
近年では課題解決や戦略策定など構造的に物事を考えるために必要なビジネススキルのひとつとして注目されており、学校においても思考力を高める教育が進められている。

➢ 問題認識

  • 問題には、認識されているものと、そうでないものがある。認識されていない問題には、表面化しているが気が付いてないものと、表面化されずに隠れていて分からないものがある。気が付いていないものには、慣れてしまっている、あるいは不便さを感じていない場合等がある。隠れているものには、問題が表面化されずに進行中であり、放っておけば問題が発生する状態であるものがある。
  • また問題には、現在起きてしまった、または進行中の発生型。次の段階や目標等と、現状との差で生じる設定型。予め推測でき将来生じる潜在的問題の将来型がある。
  • 問題認識は問題を定義付け、何のために解決するか目的を明確にする必要がある。

➢ 目標設定

  • 何のため(目的)に何をする(目標)のか、目標は目的達成のために設定するものである。目的と目標は明確に区別しなければならない。
  • 目標は、1) 現状値:現状がどのレベルにあるのか把握する、2) 目標値:現状をどのレベルにするのか、3) 達成期限:いつまでに達成するのか、4) 評価:達成度合いを何で測るのか、といったことを最初に明確にしておかなければならない。

➢ 原因分析

  • 目標が達成されない場合や、問題が生じた場合、また問題が予測される場合には、何らかの原因がある。
  • 問題はあるべき姿と現状との差異であり、この差異の中に原因が存在する。この原因は解決すべき課題である。
  • 原因を調査する手順は、
    1) 現状調査:事実と情報を収集する。
    2) 原因調査:原因を分析する。分析方法には、特性要因図(魚骨図)やこれを反映したQC工程表などがある。
    3) 問題分析:関係する要素を見つけ出し問題を整理して、ロジックツリー等で体系化する。ロジックツリーでは横の要因(区分の異なる原因)と縦の要因(原因のさらなる原因)とを組み合わせて図解化する。

➢ 解決策の立案

  • • 問題の解決策は、原因分析で特定された原因を取り除くことで、問題が起きる前の状態に戻し、これから起こりうる問題を防ぐことである。しかし原因を取り除くことができなければ、新しい方法を考えなければならない。
  • • 新しい方法とは、問題が起きる前の状態に戻すことではなく、あるべき状態への目標に近づけるための別の方法のことである。未知の解決策を考えなければならない場合もあり、柔軟かつ斬新な発想力、幅広い知識と過去の事例の活用力、コミュニケーション能力等が必要になってくる。


➢ 発想の手法

  • • 創造的な発想の種類は大きく分けて次の4つがある。
    1) 発散手法:発散的に思考することで事実やアイデアを出すための発想法で、自由連想法、制限連想法、類比連想等がある。
    2) 収束手法:発散手法で出されたアイデア等をまとめて行く方法である。空間型(演繹法、帰納法)、系列型(因果法、時系列法)等がある。
    3) 統合手法:発散と収束を繰り返す方法である。
    4) 態度手法:創造的な態度を身に付け、心理的な行動等から発想する方法で、瞑想型法、交流型法、演劇型法等がある。

➢ ブレインストーミング

  • 米国アレックス・F・オズボーンが考案した、アイデアを創造する発散型の集団思考法で、自由連想法のひとつである。
  • この手法は、
    1) 批判禁止:相手の意見を批判しない。
    2) 自由奔放:つまらないアイデア、見当違いなアイデアでも良い。思いついたことを何でも歓迎する。
    3) 質より量:アイデアは多い程良い。
    4) 連想・結合:他人のアイデアから関連するアイデアを出したり、組み合わせたりしても良い。

➢ チェックリスト法

  • 発想の視点となる項目を並べて、アイデアを洗い出す発散型の強制連想法のひとつである。
  • 例えばオズボーンのチェックリストでは、
     他に利用したらどうか?
     アイデアを借りたらどうか?
     大きくしたらどうか?
     小さくしたらどうか?
     変更したらどうか?
     代用したらどうか?
     入れ換えたらどうか?
     逆にしたらどうか?
     組み合わせたらどうか?
    という項目がある。
  • 項目に制限はなく、目的に合わせてリストを準備する。

➢ マトリックス法

  • 変数2つを組み合わせ、そこから発想する発散型で、帰納法のひとつである。
  • 例えば、メニュー開発等のテーマを決めて、これに関連する変数(言葉や事象等)を洗い出して2つに絞り込む。例えば季節と食材。次にこの変数を元に関連する要素を洗い出す。例えば春、夏、秋、冬、と海の食材、山の食材、家畜、主食等。次にこれらを表の縦と横の項目に並べる。そして交差するすべての欄に連想するアイデアを記述していく方法である。

➢ NM法

  • 創造工学研究所所長の中山正和氏が考案した発散型類比法のひとつである。思考のプロセスを手順化することで手順に沿ってイメージ発想を行う。
    1) 課題を決める。
    2) キーワードを決める。
    3) 類比を発想する。
    4) 類比の背景を探る。
    5) アイデアを類比の背景と結びつけて発想する。
    6) 5) を使って解決策にまとめる。

➢ KJ法

  • 文化人類学者の川喜多次郎氏が考案した収束型の帰納法のひとつである。川喜多次郎氏の頭文字をとってKJ法と名付けられた。
    1) テーマを決める。
    2) ブレインストーミング等で意見やアイデアを1件1枚の小さな紙に書き出して模造紙等に並べる。
    3) 似たものを小グループとして見出しを付ける。さらに似たものを集めて中グループ、大グループとしてまとめて(10グループ以内程度)見出しをつける。
    4) グループ同士を構造化(上位と下位、原因と結果等)して、線や矢印等で関連性を作図する。
    5) 図や文章等でまとめる。

5-1-4 情報の構造

1つの要素(単体)の情報では価値は低いが、関連するものを1つにまとめたり、まとまった情報同士の関連性を見出したりすることで、新たな価値を生むことができる。また、既にまとめられた情報を新たな視点で再度構造化することで、当初とは異なった価値を生むこともある。
情報の構造化とは、目的に合わせて情報の関係性を示し意味を分かりやすくすることである。

➢ 情報の組織化

  • 個別の情報を1つのまとまりとして扱うことで価値を持たせることを情報の組織化または情報の構造化という。
  • 米国の建築家リチャード・ソール・ワーマン(Wurman, Richard Saul)がLATCH(5つの帽子掛け)という情報の組織化を提唱した。
  • LATCHは次の5つである。
    1) Location(位置):地図やエリア等でまとめる。
    2) Alphabet(アルファベット):順番や順序等でまとめる。
    3) Time(時間):時系列や時間軸等でまとめる。
    4) Category(分野):科目や範囲、関連等でまとめる。
    5) Hierarchy(階層・連続量):大小、重要度等でまとめる。

➢ 情報構造の種類

  • 情報の一要素は他の要素と何らかの関係性を持たせることができる。
  • この関係性は7つの種類に分けることができる。
    1) 線形構造。順序があり直線的な流れを表す。
    2) 階層構造。カテゴリ等の上下の関係を表す。
    3) 並列構造。時間軸や空間軸等において別々の情報が並行に並ぶ関係を表す。
    4) 行列構造。縦横2方向の直線的な情報を表す。
    5) 放射状構造。情報同士がさまざまな関係を表す。
    6) 重ね合わせ構造。情報同士を重ね合わせる関係を表す。
    7) 拡大構造。元の情報から一部を拡大して詳細な情報を表す。

5-1-5 メディア特性

コミュニケーションは、メディアの特性を捉えてその特性に沿った情報発信をすることにより効果を増す。多様化する各メディアの特性を捉えた上で、対象や状況に応じたメディアの選定とコンテンツ展開を計画するコミュニケーションデザインの観点が不可欠となる。

➢ クロスメディア

  • クロスメディアとは、ある情報について、文字や音、映像などのさまざまな素材と、印刷やインターネットなど、複数のメディアを用いて効果的な伝達を行う手法である。インターネットとそれに対応したモバイル端末が普及するに従い、複数のメディアを横断的に使用する手法が一般化している。

➢ 紙メディア

  • IT技術の進歩に伴って情報伝達の手段が多様化しているが、紙メディア(印刷物)には、さまざまな利点があり、重要な媒体として位置づけられる。
  • 紙メディアは、サイズをさまざまに変えることができるのでB全ポスターからチラシやペットボトルなどに貼る小さいシールまで幅広い用途に対応できる。形状も多様に変えることが可能で、多角形、円、不定形、折ることで立体的にすることもできる。また、使われる場ごとで要求される大きさに応じて折る、丸める、などが可能で、携帯性に優れている。
  • 紙メディアは、インタフェースに関しては、使うために特別な道具を必要とせず、子供から大人まで、いつでもどこでも利用できるメディアである。
  • 紙メディアは、文字や写真、イラストはもとより、他の方法でも情報伝達、配信ができる。例えばJANコードに代表される一次元バーコードを印字すれば、商品管理機能の一端を担わせることもできる。
  • 携帯電話やスマートフォンなどモバイルのリーダーからも読み取りが可能になったことで、紙メディアは情報収集のツールとしても考えることができる。二次元コードを印字すれば、インターネット経由でサーバー上のコンテンツや各種の仕掛けにアクセスさせることができる。
  • 個別ニーズの把握・分析が要求されている現在、商品ごとや個人ごとの紐づけを紙メディアへ付加することで、その分析端末とも考えられる。このように、紙メディアは先端技術との連携も可能である。マスメディアだけでなく新しい情報媒体が現れている中、「紙メディア」がネットワークの中心になることも可能である。
  • 新聞折り込みのスーパーマーケットのチラシは、読み手の第一印象や視線を測って設計され、多くの情報が載っている。このようなものをWeb上へ置いた場合、掲載できる情報量は半無限であるが、読み手が一瞥できる範囲は比較的小さい。折り込みのチラシはテレビ、ラジオのマス広告とは異なり、対象地域を絞り込んで重点的に宣伝できる。またチラシからWebページに誘導するためにWebページのアドレスを印刷して紙メディアと電子メディアのそれぞれの利点を活かそうとする方法もある。
  • 環境問題が叫ばれる現在では紙の素材も多様になってきている。CO2削減に向けた動きとともにCSRと密接に関わった環境配慮の姿勢からエコに通じる紙の選択が増えている。代表的なエコ用紙には、リサイクル用紙(再生紙)があるが、最近は環境対応用紙としてケナフやバガスなどの非木材系の紙を使うことも多くなってきた。
  • カーボン・オフセットとは、企業活動や商品製造等によって排出してしまう温室効果ガス排出量(二酸化炭素)のうち、どうしても削減できない量の全部または一部を、他の場所での排出削減・吸収量で埋め合わせする仕組みである。発生してしまった二酸化炭素の量を何らかの方法で相殺し排出を実質ゼロに近づけようという発想である。

➢ デジタルメディア

  • デジタルメディアの特徴として、1) 双方向性、2) 速報性、リアルタイム性、3) 検索性の高さ、4) 再利用、再編集の容易さ、5) 情報量の制約が少ない(大容量のデータが扱える)、6) 配信コストが安い、などが挙げられる。
  • SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)は、インターネット上で提供される、利用者を限定したコミュニティー型の情報サービスで、代表的なものにFacebookやmixi、Twitterなどがある。こうしたサービスの総称をソーシャルメディアという。マスメディアに匹敵するほどのユーザー数を持つようになり、広告・販促活動やECへの影響力が増している。
  • 無料で誰でも始められるという手軽さもあり、商品の情報をFacebookで写真付きで紹介したり、セール情報をTwitterでツイートして誘客する店舗も多い。
  • O2O(オー・ツー・オー)とは「Online to Offline」を略した言葉である。オンラインからオフラインへ、とはすなわちインターネット上での集客を実店舗へ誘導することを指している。このキーワードを耳にする機会が近年増えた背景には、スマートフォンの普及とそこで動作するアプリ、ソーシャルメディアを組み合わせやすくなったことがある。
  • オムニチャネルのオムニ(OMNI-)は「すべて」とか「広く、あまねく」という意味があり、インターネットや実店舗など、あらゆる顧客との接点を連携させて拡販するマーケティング戦略を指している。具体的には、小売業などで実店舗とテレビショッピング、テレビCM、カタログ通販、Eコマースや商品の情報ページ、SNSなど、あらゆる顧客接点を連携させて販売につなげようとする考え方や施策をいう。
  • 顧客が商品を認知して、購入を検討し、実際に購入するまでのプロセスで、どのチャネルを経由して販売店側にアプローチしても、不利益を感じることなく買い物ができる環境を提供するというのが基本コンセプトである。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[コミュニケーション]5-2 マーケティング活動と印刷メディア

5-2-1 マーケティング

  • マーケティングとは、本来は顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、プロセスを指す言葉である。日本マーケティング協会は「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合活動である。」と定義している。
  • マーケティングミックスとは、マーケティング戦略においてマーケティング・ツールを組み合わせて、望ましい反応を市場から引き出すことである。代表的なものとして、製品(Product)、価格(Price)、販促(Promotion)、流通(Place)からなる4P理論がある。また、買い手側の視点から、顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客とのコミュニケーション(Communication)、顧客利便性(Convenience)を4C理論とする考え方もある。

5-2-2 インターネットマーケティング

  • インターネットマーケティングとは、インターネット上での商品やサービスのマーケティングである。Webマーケティング、オンラインマーケティング、ネットマーケティングと呼ばれることもある。狭義にはインターネットや電子メールなどを利用したマーケティングを指すが、広義にはデジタル化された顧客データ管理システムや電子的な顧客関係管理システムを含む。

5-2-3 デジタルマーケティング

  • デジタルマーケティングとは、顧客にリーチし、顧客をリードし、顧客に購入を促し、顧客を保持するために、デジタルテクノロジーを用いた測定可能でインタラクティブな手法である。インターネットマーケティング、またはWebマーケティングに留まらず、オフラインを含むあらゆるチャネルのマーケティングを総括的に管理するものである。

5-2-4 マーケティングオートメーション

  • マーケティングオートメーションは、メールやソーシャルメディア、Webなどを活用したマーケティング活動を効率化し、効果的にすることであり、またはそれを目的としたソフトウェアである。一般に、メール配信や登録フォーム、キャンペーン管理、リード(見込客)管理・リードナーチャリング、マーケティング分析、Web解析、リードの行動分析などの機能を実装し、それらのワークフローを自動化することができる。また、これらの一連の活動の1つとして、重要顧客に対してDMやパーソナライズされた紙メディアを制作・送付することもある。

【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[DTP]1-4 ワークフロー

印刷物の制作工程は、プリプレス工程のデジタル化によりシームレスになっている。全体工程を見渡したワークフロー設計と、各工程での責任範囲を決める必要がある。
プリプレス工程では、造本、印刷・後加工の仕様に適合するように、作業の設計を行う必要がある。

1-4-1 全体工程

  • 印刷物の制作工程および役割分担は、おおよそ下記のようになる。(制作物の特性によっては、下記のほかにアートディレクターやクリエイティブディレクターという立場の人が関わる場合もある。)
    制作物内容の企画(編集者・ディレクター)
    誰に向けたどのような情報を伝える制作物かを決めるとともに、その目的に即した情報の表現と演出を検討する。
    制作工程確定(編集者・ディレクター)
    全体工程と進行の管理をする。
    企画に沿った制作物の仕様設計(エディトリアルデザイナー、グラフィックデザイナー:造本設計・紙面設計)
    制作物の形状からレイアウトデザインフォーマットまで確定する。
    各要素の作成(原稿執筆:ライター、撮影:カメラマン、描画:イラストレーターなど)
    DTP制作環境の準備(編集者・ディレクター・システム担当者)
    使用するアプリケーション(ソフトウェア)やデータ受け渡し方法などの環境を整える。
    レイアウトデータの作成(DTPオペレーター)
    ページの基本デザインフォーマットに従って、各ページに要素をレイアウトする。
    校正(編集者・各要素作成者)
    校正紙を確認し、修正を的確に指示する。
    印刷出力用データの準備(DTPオペレーター)
    データの印刷適性を確認し、出力環境に沿ったデータ形式で準備する。
    色校正(編集者・各要素作成者)
    校了
    印刷仕様とともにデータを出力側に渡す。
    面付け(出力オペレーター)
    印刷機にかける版のサイズに合わせて各ページを面付けする。頁物の面付けは、製本の綴じ方や折り方などの仕様によって変わる。
    CTP(または無版印刷へ)(出力オペレーター)
    印刷(印刷機オペーレーター)
    折り(折加工機オペレーター)
    丁合・製本・断裁(製本機オペレーター)
    その他
  • 端物の制作工程では、端物独自の特殊な折り加工(巻三つ折りや経本折り、観音折りなど)を必要とする場合があるので、最終加工を想定したレイアウトデザインをする。

1-4-2 企画と制作工程管理

  • 制作の前提条件は、発注者の意向を確かめ、よく吟味して確認することが重要である。
  • 制作物は、その内容と目的に沿って設計されることが重要であるため、下記の前提条件の確認が必須となる。
     目的:制作物が何のために用いられるものであるかを明確にする。
     ターゲット:誰に向けたものであるかを明確にする。
     内容:どんな情報を発信するのかを明確にする。
     場所:どのような状況で使用するのかを明確にする。
     時期:いつ使用するのかを明確にする。
     値段:プロジェクト予算や制作物の費用対効果を考慮する。
     数量:制作物の発行部数、露出量を明確にする。
     方法:どのようなメディアを使用するのかを明確にする。

➢ 制作工程の計画
工程の計画・費用

  • 企画に沿った制作物を具現化するための工程を計画する。
  • 計画に際しては、実作業者が計画を継承して制作を進めるために必要な仕様設計や制作手法、作業工程、詳細設定などを制作工程表などとしてまとめる。
  • 制作工程表には一般に下記の項目が必要となる。
    1) 制作コンセプト(企画意図)
    2) 費用(各種費用および作業工数に基づく制作工程の数値化)
    3) 制作環境(ハードウェア、ソフトウェア、環境設定、データの授受方法など)
    4) 制作工程(全体のワークフローとスケジュール、各種役割分担など)
    5) 制作物の仕様(造本設計や紙面設計、納品形態、必要に応じて各コンテンツの詳細指定など)
    6) その他制作上の注意点(制作工程の標準化や効率化など)

工程の進行・管理

  • 制作工程の進行・管理にあたっては、指示書をわかりやすく、用語を正しく用いることにより、作業者がスムーズに業務にとりかかれることが望ましい。
  • 一連の作業管理のために、作業予定を時系列に記した進行表に基づき、各工程の制作を進行する。
  • 書籍制作においては、編集企画段階ではどのページに何が入るかを確認するためのページ割表を作成し、印刷段階ではページ順とノンブルの関係、折りと表裏の関係を明確にするために別途台割表を作成する。