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スマートテレビと動画配信サービス

コロナ禍が始まった2020年は、リモートワークが増え、巣ごもり需要が生まれるなど、われわれの社会生活に大きな影響を与えるものだった。

「愛の不時着」は、2020年に配信され、大ヒットしたNetflixオリジナルの韓国ドラマである。北朝鮮と韓国を舞台として、荒唐無稽というか壮大というか、涙あり笑いあり、ロマンスや復讐劇ありのエンターテインメントとして国内外で大人気となった。

筆者も、初めて緊急事態宣言が発出された頃にこのドラマの評判を耳にして、Netflixに加入し、視聴している。

主流となったスマートテレビ

近年、販売されているテレビ機器は、インターネットに接続できるスマートテレビが主流である。テレビ機器を設置する際にインターネット環境に接続することで、地上波や衛星放送の受信以外に、インターネットの動画配信サービスを視聴できる。また、さまざまなアプリを利用することができる。

例えば、Android TVというスマートテレビOSに対応している機種であれば、Google Playストアを通じてアプリをインストールし、使用することができる。それ以外のスマートテレビであっても、「YouTube」や「Netflix」「Hulu」「TVer」などの動画配信サービスのアプリが用意されている。

インターネット接続機能のないテレビ機器でも、ストリーミングデバイスをHDMI端子に接続することで、動画配信サービスを視聴することができる。

ストリーミングデバイスとは、インターネットを経由して動画配信サービスなどをテレビ機器で利用するための機器である。国内で普及しているものとして、AmazonのFire TV、GoogleのChromecast(クロームキャスト)、AppleTVなどがある。

動画配信サービスの動向

スマートテレビやストリーミングデバイスを接続したテレビによって利用できる代表的なものは、動画配信サービスである。

YouTubeは、代表的な動画共有プラットフォームであり、誰でも動画を投稿し、視聴することができる。スマートフォンなどのモバイルデバイスやパソコンと同様に、スマートテレビでも容易に視聴することができる。
また、近年、人気となっているのが、サブスクリプション型の動画配信サービスである。

Amazonプライムの会員には、プライム・ビデオの視聴サービスが含まれている。
世界同時配信でオリジナルのドラマや映画が話題となることが多いのは、前述のNetflixである。
近年急成長し、Netflixを猛追しているのが、ディズニー作品やマーベル、スターウォーズに特化したチャネルのDisney+(ディズニープラス)である。米国ディズニーの系列であるHuluも、国内外の人気ドラマや映画を配信している。

DAZN(ダゾーン)は、スポーツ専門のビデオ・サービスで、プロ野球やサッカー、ゴルフ、テニス、バスケット、ボクシングなどを視聴することができる。

TVer(ティーバー)は、国内の有力民放各社と大手広告代理店によって設立されたサービスで、近年ではテレビ番組の見逃し配信などが人気となっている。

テレビ放送とネットワーク配信

近年の若者はテレビを見ない傾向が大きくなっており、「若者のテレビ離れ」と指摘されることもある。実際、一人暮らしではテレビ受像機を持っていないことも多いという。

一方で、スマートテレビで動画配信サービスを利用することが増えている。つまり、「テレビ離れ」ではなく「テレビ放送(電波)離れ」が進んでいるともいえる。
米国では、スマートテレビや動画配信サービスが普及したことにより、「CATV離れ」が進展したと言われている。

インターネット環境とスマートフォンが一般化して久しい。これらによって、新聞や雑誌の視聴環境や音楽配信が大きな影響を受けたように、テレビ放送の視聴環境も変化していくことが想定される。

(研究調査部 千葉 弘幸)

小ロットと高付加価値印刷で注目されるデジタル加飾

インクジェット技術によって微細なスポット・ニスコーティング加工や箔押し、透明厚盛などをおこなうデジタル加飾が注目されている。

デジタル加飾機は、版や型が不要で専門的なオペレーターやパートナー企業に頼ることなく、小ロットで自由度の高いデザイン表現、短納期でのサンプル製作や製造が可能である。インパクトやプレミアム感あるデザインや手触りを表現し、付加価値の高い印刷物を提供することができる。
世界では、DMやパンフレットなどの商業印刷分野やパッケージ分野などで導入が進んでいる。

株式会社研文社は、高速インクジェット機、トナー方式デジタル印刷機の導入に加え、極小ロットの高付加価値印刷を実現するために、デジタル加飾機「JetVarnish」を導入した。

デジタル加飾はやや特殊な分野で、顧客(または顧客サイドのデザイナー)の要望・依頼から実現するケースはほとんどない。印刷会社のデザイナーが提案したり、サンプルを製作したりして、採用に到ることがほとんどである。

「JetVarnish」を導入して、最初におこなったのは、デジタル加飾をブランディングするための「テクニカルブック」の制作だという。
スポット・ニスコーティング、透明厚盛、金箔・銀箔のサンプル、プレミアム感あるデザイン表現の可能性を目に見える形にして掲載した冊子である。営業マンを通じて既存顧客に配布し、デジタル加飾で何ができるか、通常の印刷物に高級感を与えることができることを発信した。
また、SNSや「研文社デジタルオンデマンドセンター」のWebサイトを通じて、デジタル加飾をアピールしている。

具体的な案件があると、テスト・サンプルを製作するなどして、その価値を理解してもらい、受注に繋げている。

ダイレクトメールの封筒にデジタル加飾を施した際には、開封率が上がったとして、顧客に喜ばれた事例もある。デジタル加飾を施した商品も好評だったという。

白山印刷株式会社は、元々、小ロットのカラーオフセット印刷と化成品・合成紙などの特殊印刷・コールドフォイルを得意としていた。
多品種小ロット・高付加価値印刷に対する顧客ニーズが、年々高まっているため、3年ほど前に、スポット・ニスコーティング、透明厚盛、金・銀箔が可能なデジタル加飾機「Scodix」を導入した。以来、順調に事業が拡大しているという。

先般、さらなる多品種小ロットに対応するため、HP Indigo 7Kデジタル印刷機を導入した。デジタル印刷とデジタル加飾の相乗効果により、今後の事業拡大を見込んでいる。

白山印刷では、以前からニスコーティング・コールドフォイルに精通した社内デザイナーによって、顧客へのデザイン提案を行い、受注に繋げていた。デジタル加飾機でプレミアム感のある表面加工を実現するには、繊細なデザイン表現とデータ製作が重要である。「Scodix」を導入して以来、社内デザイナー中心に経験を積んだことで着実にレベル向上を果たしているという。

また、Scodix社が2014年から毎年開催している全世界のScodixユーザー向けのコンテスト 「Scodix Design Awards 2021」 において、白山印刷はテクノロジー部門・商業印刷部門・出版部門の3部門、計4作品で賞を獲得している。

近年の印刷物製作は、多品種小ロットが日常化している。また、デザイン表現や高級・プレミアム感など、さらなる差別化も求められている。 デジタル印刷+デジタル加飾は、高級感ある印刷物を製作する手段として、今後の伸長が見込まれている。

(研究調査部 千葉 弘幸)

■ 5/17(火)印刷総合研究会 デジタル加飾の最新動向とユーザー事例

生活者のデジタルシフトに対応するDM

10月26日に実施した印刷総合研究会「実践!デジタル×紙×マーケティング」では、コロナ禍でのDMへの影響やパーソナライズ化や デジタルマーケティングとの連携 が進むDMの現状についてトッパン・フォームズ(株)の今井尋氏にお話しを伺った。

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印刷トラブル!と人間模様 『印刷ボーイズに花束を』発売!

ウェブマガジン「GetNavi」に連載中で印刷業界ネタ満載のマンガ『今日も下版はできません!』の書籍版、シリーズ第3 弾の『印刷ボーイズに花束を』が発売された。

印刷トラブル!と人間模様

専門性の高い職業を舞台にしたお仕事マンガは、以前から人気の高いジャンルの一つである。

印刷ボーイズに花束を(表紙)

『印刷ボーイズ』シリーズは、数少ない印刷業界を描いたマンガの一つである。中堅印刷会社の「ナビ印刷」の営業部に所属する刷本正(すりもと・ただし)を中心に、営業部・製版部・工場のスタッフたちが奮闘し、連日のように襲いかかる難題や客先からの無理な注文に対処していくストーリーが魅力的である。

毎回さまざまなトラブルに見舞われては何とか対処していく姿に、思わず笑いがこぼれてしまう。また、一話ごとに印刷に関する知識がストーリー中で解説されているため、一般の読者にも自然に理解できるようになっている。

今回のストーリー中では、「DTPエキスパート試験」「広色域印刷・シズル感」「活版印刷」など、興味深い内容が盛り込まれている。

新人の営業マンが本格的に印刷知識を習得しようとDTP エキスパート試験を目指し、製版部の女性スタッフと勉強会を行っている。それを知った先輩社員(この女性に気がある)は、最初は「試験なんて」と反発していたが、結局は一緒に勉強し、そろって合格する。

また、RGB にこだわるデザイナーの要請から広色域インキで対応することとなり、さらに得意先担当者が「シズル感」に執着したことから、高精細印刷にまで発展したという話も収録されている。その結果、シズル感あふれる立派な料理本が完成し、発売後は大評判になる。

活版印刷の達人が手掛けた名刺が、各界の大物たちに評判の「幸運の名刺」として有名になるというストーリーもある。

トラブルやクレームだけでなく、印刷を通じた夢のある内容も盛り込まれている。

印刷の実体験をベースに

本誌2020年2月号では、作者である奈良裕己氏へのインタビューを掲載している。奈良氏は大手印刷会社の営業マン出身である。愛すべき印刷会社の日常や個性豊かなキャラクターを描きたい、世の中に印刷の楽しさや奥深さを知ってもらいたいという思いで作品を描いていると、熱く語っていた。

また、作品のキャラクター設定は、少し怖いけれど頼りになるような現場の方たち、印刷が大好きで仕事に一生懸命な営業スタッフなど、実在する人をヒントに設定されているそうだ。印刷会社時代にはDTPエキスパートも取得されており、スキルアップの大切さを実感したそうである。

『印刷ボーイズ』シリーズには、印刷会社の日常や楽しさが存分に描かれており、印刷人必読といえるだろう。未読の方がおられたら、電子版ではなく紙版の書籍を購入して読んでもらいたい。
紙版の良いところは、周囲の人と読書体験を共有できることである。ぜひ『印刷ボーイズ』の楽しさを共有してもらいたい。

(資格制度事務局 千葉 弘幸)

※(JAGAT Info 2021.10月号より抜粋)

印刷ボーイズに花束を 業界あるある「トラブル祭り」3
株式会社ワン・パブリッシング

定着しつつあるオンライン校正

2020年4月に新型コロナウイルスに関わる最初の緊急事態宣言が発出されて、1年4ヶ月以上経過した。現在も、多くの都道府県で爆発的な感染拡大の状況となっており、未だコロナ禍の収束を見通すことができない。

印刷ビジネスにおいても、クライアントおよび印刷会社の双方で、広くテレワークが実施されている。そのため、従来のような校正紙のやりとりから、オンライン校正に移行するケースが急速に拡大している。

PDFを介した校正や、ワークフローRIPのオンライン入稿・校正・検版機能は、以前から実現されていたが、実際にはそれほど浸透していなかった。校正紙のやり取りに慣れた発注関係者や営業担当者に、新しい業務フローを提案することは容易ではなかったためである。

デザイン制作や出版物の編集制作におけるオンライン校正は、オフィスでも自宅でも校正作業がおこなえ、一斉通知やチャット機能により関係者間のコミュニケーションも容易である。プロジェクト全体の進行状況を共有することもできる。

印刷会社では、印刷入稿から赤字校正・プリフライト・デジタル検版などをオンライン化することで、顧客サービスや納期短縮、品質管理の面で大きな効果を上げることができる。つまり、オンライン校正は印刷ワークフローのDXそのものだと言える。

実際にオンライン入稿・校正に移行した印刷会社のほとんどが、社内業務の大幅な効率化と顧客サービスの向上を実現しているという。クライアントからの評価も高いようだ。

印刷物特有の色校正をどうするかは、引き続き課題とされるだろう。しかし、コロナ禍が収束したとしても、オンライン校正が印刷ワークフローのスタンダードとして、このまま定着することは間違いないといえる。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)