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アプリレス、ゴーグルレスで利用できるWeb AR/VR

AR(拡張現実)は新たなユーザー体験を提供し、印刷物の効果をより高める技術として注目され、取り組む印刷会社も多い。しかしながら、利用するにはアプリのダウンロードが必要なことからユーザーからは敬遠されることも少なくない。エイシス株式会社は、2016年11月に設立されたベンチャー企業で現在の従業員は8名と小所帯ながら、Webデザイン、Webシステムの企画、開発、運用を行っている。柱となっている事業がWebAR、WebVRである。JAGAT印刷総合研究会において代表取締役の齋藤瑛史氏に取り組み状況を伺った。

アプリレス、ゴーグルレスが強み

一般的にARやVRを利用するにはヘッドセットやARグラスを身に着けるか、スマホの場合は、アプリをダウンロードして利用することになる。しかし、ヘッドセットを購入するには費用がかかるし、メガネをかけている人や髪形を気にする人には敬遠されがちである。また、アプリのダウンロードについては、最近アメリカで行われた調査では、スマートフォン所有者の最近1か月の新規アプリインストール数の平均はほぼ0であった。そして、1日に使用するアプリ数の平均が約3であった。したがって、スマートフォンにたくさんのアプリが入っていても普段使うものは非常に限定されている。かつ、アプリの8割から9割は一度使われただけで削除されている。

また、開発者側の視点からすると、どんどん登場する新しいデバイスへの対応やAndroidとiOSのどちらにも対応し、かつOSのバージョンアップに対応し続けるというのはかなりの開発負荷である。

これらの課題をクリアするものとして、当社が力を入れているのがWebAR/VRである。アプリをインストールする必要がなく、そしてヘッドセットを装着することもなくARやVRの体験が可能である。

WebVRのサンプルとして「寿司ぽっぷ」というゲームを紹介する。渋谷のスクランブル交差点の3D空間を舞台に空から降ってくるお寿司に視線を当てて地面に落とさないようにするという簡単なゲームである。3D空間のデータとシステムを組み合わせてWebブラウザ上でより気軽にVR体験することができる。

WebARのサンプルとして、「ウェブモン」というゲームを紹介する。マーカーであるカードをかざすと、ARコンテンツとしてモンスターが現れる。それを自分のキャラクターとして登録し、別のカードをかざすと敵役のモンスターが現れ3Dで対戦がはじまる。

多くの人にリーチ可能で拡張性が高い

WebAR/VRのメリットを整理する。一つ目は多くの人にリーチ可能であること。当社の事例ではアプリインストール型と比べて数倍のアクセス数となった実績がある。アプリをインストールするためにパスワードを入力したり、指紋認証したりという手間と新たなアプリを入れるという心理的障壁はかなり大きい。QRコードを読み取るだけで簡単にアクセスできるというWebARのメリットは大きい。

二つ目は開発や保守が容易であること。iOSとAndroidの双方に対応したり、複数のVRコンテンツストアに対応するのは大変である。OSのバージョンアップやストアの審査への対応もある。Webで動作すれば審査はないので、VRコンテンツを状況にあわせて柔軟に修正することができる。

三つ目はWebならではの拡張性があることである。既存のWebサイトに組み込むことができ、ECサイトとの親和性が高い。また、ブックマークやSNSシェアなどWebの機能をそのまま利用できる。Webの新しい技術でAndroidではWebサイトからユーザーにプッシュ通知ができるようになる。Webの進化に合わせていずれはアプリと同等の機能が実現されるだろう。

活用事例としては、人気ミュージシャンのライブプロモーションにWebARが採用されたケースがある。ライブグッズにQRコードが印字されており、そのリンクからミュージシャンのグッズや本人たちの映像が再生されるなど、よりライブを盛り上げる演出がされている。
また、食品メーカーのキャンペーンでWebARの採用が検討されている。お菓子のパッケージにマーカーが印刷されていて、読み取るとキャラクターが出現する。キャラクターと写真を撮ったりSNS投稿すると抽選でプレゼントが当たるというものである。アプリ不要という点が高く評価されている。

さらに製品メーカーのパンフレットにおいても採用する方向で検討が進んでいる。パンフレットを渡した相手だけでなく社内でもコンテンツを共有してほしいので、アプリ不要は魅力的である。印刷物との親和性が非常に高いので、今後の動向に是非、注目していただきたい。

(研究調査部 花房 賢)

人材不足時代をデジタル印刷でどう乗り切るか

JAGATでは印刷物で一番大切なことは「価値」だと考えています。
従来、印刷物で大事なことは品質だとか、正確さであるとか言われていますが、大事なことはビジネスモデルで有り、その結果生み出される価値であるという考え方です。

通常印刷業界では印刷物の価格を積算的に考えますが、こういう時代は終わった(つつある)と思います。原価や人件費、コストから逆算して価格を決める時代の終焉です。
その印刷物にどれだけの価値があるのかは、クライアント(世の中)が決めることで、結果論でこのチラシをまいたらこれだけ売り上げが上がったとか、ブランド価値がこれだけ上がったとかとかで、価値は決まってきます。その他の評価としては、その印刷物がどれだけ効果を上げたか?つまり、この印刷物がどれだけ役に立ったかで決まってきます。例えばマーケティング活動の中でリードナーチャリング(顧客を真の顧客に育てること)がありますが、この活動に「紙がどれだけ価値があるか?!」なんですが、正直これには効果が大きいと思っています。手を変え、品を変え、顧客がその商品を好きになるのに紙が果たす役割は大きいということです。今までだったらマス的にこの効果をとらえて、その内容を決定していたんですが、デジタルマーケティングと結びついた、デジタル印刷ならその個人に対して、ピンポイントにヒットさせることが可能です。データがかなり集まっている現在は、相当高い精度で効果が期待できます。(昔はプアな情報でしたが、インターネットになって劇的に変化しました。)

そういう時代になっていくときに、どのように印刷ビジネスをとらえるか?
皆さんに、率直に問いたいと思います。要するにデジタル印刷時代の紙の価値です。
JAGAT的に言うと「デジタル×紙×マーケティング」ということです。

そして何かしようと思っても、人材の問題が浮かび上がってきます。
IGAS2018期間中にビッグサイトで行われたDscoopイベントで、HPのIndigo責任者のアローンさんが、欧米ではアナログ印刷機のオペレーターを募集しても「なかなか若い人材が集まらない」と言っています。だからIndigoを6台も入れた。これは北米の大手印刷会社の例なのですが、日本でも特徴ある地方の印刷会社が言い始めています。「地方でやる気のある子はアナログ印刷にそっぽを向く」そんな話を最近色々耳にします。もちろん異論反論はあると思いますが、若い人が印刷に抱くイメージ、例えば若い女性が「活版印刷はとっても暖かくて大好きです。このカスレが特に良いですよね」なんて言うのを耳にすると、私は喜ぶというより「カスレねぇ・・・」と、やりきれない気持ちになってしまいます。また自分の職業を真剣に考えている若者と話して「アナログ印刷の技術習得って難しいんでしょ?!」「三年、イヤ五年かかるんですか?せっかく習得しても、我々が50歳くらいになった時にその技術が通用しますかね??」と懐疑的なことを言われてしまいます。もちろん、その場では真剣に印刷の素晴らしさを説くのですが、正直そういうことがあった晩、寝る前に考え込んで寝不足になってしまいます。
そういう風に悩む若者は紙好き、本好き、文字好きの人間なんで、デジタル印刷の可能性を、説明すると「印刷がそうなっていくのは自明ですよね」と非常に肯定的です。もちろん全ての若者が、行動を論理的に判断するわけではないのですが、雰囲気はこんな感じでは無いかと思います。全世界でアナログ印刷オペレーター不足が問題になっています。デジタル印刷ならアルバイトでも対処できるという理由もありますが、若者にとってこの「技術の将来性が、ピピッとくるイメージ」も非常に大きいと思います。特にビジネスモデルの話は真面目な若者ほど理解されると思います。
これから人材確保は死活問題になってきます。省力化や体力の要らないヘルプ機構はアナログ印刷システム維持のために考えていかねばならないと思いますが、人材面から観たデジタル印刷の魅力も見直す必要があると思うのです。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

関連イベント

【A-1】人材不足時代におけるデジタル印刷活用法

8月22日(水) 10:00-11:30【講演会場A】

日本においてはこれから少子高齢化だけでなく、団塊世代のリタイアが進み、人材確保がさらに急務となります。その一方で、印刷会社におけるデジタル印刷機のオペレータは若年化が進み、女性のオペレータも増えているといいます。デジタル印刷機の導入に際し、品質面や価格面でのオフセット機との比較がある中、労働環境の変化という事象を鑑みた新たなデジタル印刷の可能性を模索します。

Dscoopソウル速報

Dscoopソウルが、2018年5月14日~16日の3日間行われた。場所は韓国の秋葉原ともいえるところで、龍山駅(ヨンサン駅、ちょうど東京駅と秋葉原の位置関係に酷似していて、龍山駅はソウル駅至近にある。)に隣接した巨大ホテル群の中心的存在のDragon City Hotelで開催された。 続きを読む