次世代の高精細テレビ放送として、4K や8K の実用化が注目を集めている。高精細化を推進するにはハードウェアの進化だけでなく、圧縮技術の標準化や普及が不可欠である。 続きを読む
「グラフィックス」カテゴリーアーカイブ
多書体の表現でメッセージや感性を伝える
*印刷物でタイトルや小見出し、本文にどんな書体を使うかは、重要なデザイン要素の1つである。書体は印刷物の顔であり、メッセージを伝える声のようなものなのだ。
表組の行間
日本語組版とつきあう その44
中とびらの組版処理
日本語組版とつきあう その47
スクリーン印刷とプリンテッド・エレクトロニクス
印刷技術は成熟段階に到達したと言われることもあるが、それはごく狭い範囲のことに過ぎない。例えば、スクリーン印刷とその周辺技術は進歩の度合いが大きく、プリンテッド・エレクトロニクスなど世界的に注目されている。
制作効率をアップするカタログ自動組版とWeb連携
モバイルデバイスなどのメディアは多様化が進んでいるが、だからと言って販売促進や情報発信にかける人員や経費を増やすことは許されない。
オンデマンド印刷による小ロット出版の実現
近年、講談社、小学館など大手出版社が本格的なデジタル印刷・製本設備を導入した。出版社が自前の設備で小ロット出版に取り組むことであり、話題となっている。
ギフトカタログのWeb to printと電子版制作
DTPによる印刷物制作とWeb用のHTML制作を別々に進行することは、校正やチェックが2重となり、時間・コスト的にもさまざまな無駄が発生する。コンテンツを一元化し、DTPソフトに依存せずにPDFデータ作成とHTML展開を行うことが出来ないか。
共同印刷の藤森良成氏にギフトカタログのWeb to printに取り組んだ経緯を聞いた。
■DTPによるカタログ制作の問題点
ギフトカタログは定型レイアウトがほとんどで、基本パターンとして1つのページに商品単位の小組をレイアウトする。自動化しやすいケースではあるが、さまざまな要因から自動化されていないことも多い。DTPでフルに制作している場合、商品ごとに製造元や生産者に原稿(データ)と掲載内容に関してアナログなやり取りが発生し、たいへんな手間・コストがかかる。また、DTP上の修正はデータベースに反映することはできないため、次年度のトラブルの種になってしまうという問題があった。
■CatalogPackerの構成と機能
CatalogPackerは、ネットワーク上で定型カタログを制作するためのWeb to Printであり、自動組版システムである。Webブラウザ上で動作するため、OSに依存せず、各PCにDTPソフトウェアをインストールすることも不要である。
商品DBをメンテナンスするユニットとそのデータを組版し割り付けるユニットで構成されている。DBの内容はクライアントや商品のサプライヤーに直接直してもらうことを想定している。DBを修正した後、小組単位で自動組版してPDFを作成し、校了まで進める。
ページアップした後の校正は行わない。実際にはバックグラウンドでXSL-FOを生成し、AH Formatterで組版レイアウトを行っている。
例えば旅行のカタログを作る場合、通常のRDBなら朝昼夕の食事回数を0,0,1と記号化して入力し、印刷物にする際に「朝食0回、昼食0回、夕食1回」という文字列に変換している。
食料品の通販であれば、チルド、冷凍などの区分を文字ではなくマークや画像で表現してほしいとなる。
このような印刷物上のルールを、全部印刷会社側で管理すると校正漏れやミスも多くなる。
そこで、価格・スペックなどを格納する商品DBと、印刷物上の文字列などをXML形式で記述する体裁情報DBに分けた。価格・スペックの修正は、常に体裁情報DBに同期されるようになっている。
小組のレイアウト指示は簡易設定画面から行う。小組の縦横サイズやどの位置にデータベースのどの項目を配置するか、その条件などを設定する。プレビューボタンを押すと、作ったレイアウトにデータベースの1件目が流し込まれて、結果を確認することができる。裏側ではXSL-FOで動作しているが、DTPや組版の専門的な知識は必要ない。簡単なトレーニングでWebオペレーターでも対応できるレベルである。
InDesignなどのDTPでカタログを制作する際、難しいとされているのが爪(インデックス)の自動発生である。例えば、北海道とか東北とか海鮮品なのか野菜果物なのか、フラグによって爪の色や文字、位置を変更する。DTPではオペレーターが手作業で配置するしかないが、XMLなので自動生成することができる。
レイアウト後にデータ修正をする際、画面をクリックすると「データを修正しますか。それともレイアウトを修正しますか」と選択できるようになっている。価格データを修正すると、連動して小組に修正が反映され、PDFが自動で作成される。
また、「今回だけこの価格を特別値引きにしたので、色を変えてほしい」といった修正であれば、レイアウトの情報だけを変更すればいい。
このような形でデータと体裁を分離し、管理しているためコンテンツの一元化を実現することができる。
■今後の課題
実際に運用してみると、一番の問題は商品のサプライヤーが画面上でのデータ修正に慣れていないことであった。
また、この仕組みは定型カタログが対象である。定型カタログはカタログの12~13%でしかない。大量部数であるため仕事としては重要だが、頻度は少ないというのが実態である。
今後は、CSS組版による印刷データ制作にトライしたいと考えている。CSS組版ができれば、Webと共通のラインで紙でも電子でも制作することができる。このような形でコンテンツの一元管理を進めていくことで、印刷会社がシステムインテグレーターやWeb制作会社と差別化することが可能になる。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
レンチキュラー印刷の最新技術と専用ソフトウェアの動向
昨今、立体印刷用の合成データを生成する専用ソフトが著しく発達しており、レンチキュラー印刷が再評価されている。
レンチキュラー画像生成ソフトウェアでは、Photoshopで制作したデータからリアリティのある3D表現や2Dチェンジングなどの表現を、プレビュー画像をチェックしながら、簡単に制作することが出来る。
また、レンチキュラー印刷用ソフトウェアRIPでは、レンズに最適化したデータ補正、500線クラスの高精細網点生成、モアレ低減などの機能によって、より自然な立体画や「動く画像」の表現が可能になった。
立体画の原理・技術、製造方法、レンチキュラー印刷のための専用ソフト、今後の市場開発について株式会社立体技研の代表取締役、上古琢人氏に伺った。
レンチキュラー印刷の最新技術と専用ソフトウェアの動向
私は京都出身で広島大学に行ったが、そのときに3D画像認識の研究というテーマをやった。卒業後、ミノルタ株式会社で3Dスキャナの開発に携わった。そのあと大阪大学大学院に行き、バーチャルリアリティで3Dをやることになった。
その流れの中で、レンチキュラー3Dで何かできないかということで、立体技研を創業した。
レンチキュラーを使った撮影の技術を作って、テディーベアポストカードを作ったのである。これを商品化して、テディーベア以外にPOPやポストカードのようなものを自社のソフトウェアを使って販売するビジネスをしていた。
東京に来てそれを続けていたが、レンチキュラーのビジネスも厳しいということで、ソフトウェアそのものを販売するビジネスを主に今やっている。
レンチキュラー印刷とは
レンチキュラーは100年も昔に特許が出願されている。実際にポストカードとして出回ったのは1960年頃である。アメリカではグリーティングカード、日本ではダッコちゃんが有名だと思うが、1960年くらいに世界中で出回ったという歴史である。 それから30年くらいは日本の大手の印刷会社で技術開発、生産されていた。
1990年頃に各印刷会社さんがDTPということで、そのときにレンチキュラーのソフトウェアが海外から入ってきて、日本の印刷会社数社がレンチキュラー印刷を開始したのである。 弊社が創業したのが2001年。テディーベアポストカードを発売したのが2004年。レンチキュラーソフトウェアを発売したのが2年前である。
それから今年、国産のレンチキュラーレンズが発売された。創業してから何度も国産のレンチキュラーレンズを作りたいという話を聞いてはいたが、やっと実現したという感じである。これは非常にいいレンズである。
レンチキュラー印刷の原理
レンチキュラーレンズは表側がでこぼこした形状をしていて、裏側が平らなレンズ。このでこぼこがかまぼこ型のレンズになっている。かまぼこ型のレンズがいくつも並んでいる構造をしている。この裏にちょっと特殊な印刷をしてあげると、例えばこういう3枚の絵がスウィングすることによって、入れ替わったり、あるいは画像が浮き上がって見える効果を出すことができるのである。
実際のレンチキュラー印刷の用途であるが、例えばカタログとか、これは電車の窓貼りに使ったものであるが、あとはうちわ、文房具、パッケージに使われている。サンプルが置いてあるのであとで見ていただければと思う。
原理について簡単に説明したいと思う。まず、これはレンチキュラーレンズだが、その裏に緑と赤と黄色の帯が順番に並んでいるような画像を印刷する。そうすると、真上から見たときは黄色に、左から見たときは赤に、右から見たとき緑になるように配置することができるのである。 このようなレンチキュラーレンズの効果を利用して、色の代わりに画像を置いてあげるとチェンジングができる。
チェンジングを作る方法は、3D合成ソフトを使う。例えば、3D合成ソフトに飛行機が向こうから飛んでくる画像を入れてあげて、先ほどの帯の画像に並べ替える。そうすると、スイングすることによって、飛行機が向こうから飛んでくるようなチェンジングのレンチキュラーを作ることができる。
3Dの場合だが、ここに3Dにしたい画像があるとする。それを切り抜いて、背景と中景と近景という形で作って、どれくらいの距離に置くのかを作る。
さらに、最近はリアル3Dといって、細かく映像を作ることもできる。デプスマップを使う方法で、手前の方が白く、うしろの方が黒くなる画像を自分でこのショップ上で色を塗って、作りたい奥行きのデプスマップを作る。
こういった画像を3D合成ソフトにかけると、先ほどの帯状の画像ができる。これを印刷すると立体的に見える。
3D合成ソフト
実際の3D合成ソフトを2つだけ紹介したい。1つが弊社で開発した「EasyLentiStudio」である。今まで3D合成ソフトには日本製がなかったが、唯一の日本製である。特長としては簡単に使えることと、安いので入門に最適ということである。
もう1つは「HumanEyes」というソフトである。
特長は、先ほどデプスマップというものを説明したが、これはデプスマップを作る必要がない。立体のままそのままつまんで作ることができるので、非常に効率良くレンチキュラー画像を作ることができる。
レンズ
レンズは何種類かある。
その前にLPIを説明しておきたい。これは、ライン・パー・インチという意味で、1インチの中に何本ラインが入っているかを示している。つまり、この数字が小さいと粗いレンズになり、数字が大きいと細かいレンズになる。
細かいレンズは何がいいかのというと、レンズにピッチの目がほとんど見えないので、見た目が非常にきれいだということである。一方、粗いレンズはどういうときに使うかというと、厚いレンズを作るとどうしても粗いレンズになる。厚いレンズ使うと、3Dの立体感を出すことができるというメリットがあるのである。例えば、75LPI、100LPIは3Dのレンズというのがあって、同じ細かさでも3Dの効果が出せるレンズが存在する。
日本コーバンから国産の新しいレンズがこのたび発売された。
このレンズは販売元が日本コーバン株式会社、製造元が富士フイルム株式会社富士宮工場である。富士フイルムの技術を詰め込んだ素晴らしいレンズである。構造としては、2軸延伸PETと普通のPETが2枚重ねに貼り合わさった構造になっている。従来はこれが1つのただの無延伸のPETだが、貼り合わせることによって非常にいい性能を発揮している。
特長として、耐熱性、寸法安定性、インク密着性、断裁位置の正確性がある。これを従来のレンズと比較してみる。 こちらら側が従来のレンズシートで、こちら側が日本コーバンのレンズシートである。 まず製造方法である従来のレンズは押し出し成型で作っている。押し出し成形でピッチが決まってしまうので、このあとに延伸という、PETを伸ばすということができない。日本コーバンさんのレンズは、延伸で作ったレンズの下に、PETを引っ張って安定したレンズを貼り合わせている。 性能を比較すると、耐熱性というものがある。従来のレンズは屋内用にしか使えない。屋外用は別の素材であることはあるが手に入りにくかったり、使いにくいということがあったが、日本コーバンのレンズは屋外用にも使えるレンズである。
ただ、仕様によって、耐熱状況によっては使えない。 寸法安定性は、従来のレンズでは季節、ロットによりレンズのピッチが大きく変化する。特に秋や春に、気温が前の日と10度くらい違うとレンチキュラーは結構不良になったりするが、日本コーバンのレンズは、常温に戻すとピッチがほぼ安定するので、ピッチ測定のミスを減らすことができる。
それからインキの密着性というものがある。従来のレンズシートもコロナ処理みたいなことがされていて、インキののりを良くはしているが、高密着インキが必要で場合によってはアンカーコートをしていく。日本コーバンさんのレンズはコート剤が塗布されていて、紙用のUVインキなどでも印刷可能である。
最後に断裁機の正確性だが、これが私が一番重要だと思っている部分である。 レンズはかまぼこ型をしているが、山と谷がある。昔は、レンズごとに山で断裁されていたり谷で断裁されていたり、というレンズだったのである。今もそうである。
そのレンズを使うと、せっかくきれに印刷しても次のレンズは少し傾いてしまうということになって、なかなか良品を揃えづらかったのである。しかし、こちらの新しいレンズは、レンズの端が揃っているので、1つシートがきれい印刷できればすべて同じように印刷ができる。場合によっては100%近い良品を確保することも可能になった。
レンチキュラー印刷に必要な設備
レンチキュラー印刷をするときに何が必要なのか。
まず、UVオフセット印刷機が必要になる。LED-UV、でもH-UVで大丈夫である。それから、CTPプレートセッターが必要になる。従来はレンチキュラーモードを持っている機種でないとだめという話があったが、「LentiDotManager」という新しいソフトを使うことによって、2400DPIスパイラル露光機があれば、レンチキュラー印刷ができるようになったのである。それから3D合成ソフト。この4つがあれば、レンチキュラー印刷は可能である。
LentiDotManager
LentiDotManagerは、レンチキュラー印刷用製版データ生成ソフトである。
特長としては、まずは印刷の導入のハードルを下げるということである。
それから面付けを効率的に行うことができる。品質を向上させることができる。不良率を低減することができる。これについてもう少し詳しく説明する。
これはLentiDotManagerの画面である。特殊な版面設計は必要ないのである。まず、このような画面で台座を作って、台座に3D合成した画像をあてはめて出力するだけである。 レンチキュラーなので先ほどのLPIというレンズピッチを指定してあげないといけない。指定すると、CMYKと白の1bitTiffデータを生成するのである。
その前に画像合成ソフトのデータをここに入れてあるが、画像合成ソフトのレンズ位置を自動認識して、実際に印刷するレンズに合わせて調整するのである。 それから、画像合成ソフトでついているマーカーを全部マスクしてつめて、効率的な面付けができるようになっているのである。その他、ドットゲインカーブなどアクセサリー類も付けられるので、このソフトさえあれば、版面設計をするようなソフトはまったく必要ないのである。
次の特長は、CTPのハード的な問題をソフトで解消するということである。従来、なぜレンチキュラーモードが必要だったかというと、一般的なCTPのプレートセッターはスパイラル露光をしているので、菱形になってしまうのである。それを機械上で階段上に補正をかけているということがある。そのために縦向きのレンズを入れたときに、階段上の補正が全部横縞となって出てしまうという問題があった。なので、どうしてもプレートセッターで印刷をされている会社さんの場合は、縦向きのレンズのみしか使えなかったのである。
LentiDotManagerを使う場合は、スパイラル露光の斜めの分を逆に補正しておく。これはCMYKで補正するので階段上にならないのである。これで斜めに補正しておいて、1bitにしてから階段上に補正する。そうすることによって、2つの処理をキャンセルして、どちらの線でも使えるようになる。
LentiDotManagerは1bitTiffを出力するが、これは高細線のRIP機能を持っていることである。10線単位で500線まで自由に設定できるのである。 レンチキュラーでお勧めするのは、一番高い500線である。その利点は、線数が高くなるほど3Dのキレがよくなることである。
500線くらいなると、網とレンズの干渉縞があまり目立たなくなる。500線と聞いて、「そんな印刷、精度が高過ぎてできない」とおっしゃるが、レンチキュラー印刷というのは、実はそんなにクオリティの高い印刷ではないのである。シャドウ部の潰れやハイライトの飛びは実は問題がなくて、レンズを介して観察してもらえば分かるがほとんどそういうことは問題にはならない。
もう1つは、この500線は2400DPIのCTPでも可能なのである。なぜ可能なのかとよくいわれるが、通常の印刷でなぜできないのかというと、普通の画質のときに500線にすると、上手く表現できない部分が出てくるかと思うのである。しかし、レンチキュラーの場合は実際にはレンズを通すと、100線のレンズとか150線のレンズの裏に印刷するので、500線になっても特に問題になることはない。
だから、LentiDotManagerは500線出せるようにしている。 さらに上のグレードも用意している。来年の2月発売予定で、4000DPI以上のCTPで600線~1000線の設定ができるグレードを用意している。
この特長は3Dのキレがさらによくなることと、さらに網が細かくなるので、干渉縞がなくなる感じになる。
次の機能は色ごとのファンアウト補正機能である。ファンアウト補正というと、紙などで湿気で伸びることをイメージされると思う。レンチキュラーで問題になってくるのは、くわえとくわえ尻の間で数十ミクロンの縮小拡大があるのである。そういうファンアウトである。
それくらいのファンアウトが起きると、くわえが小さくてくわえ尻が大きいとなると、くわえ尻の角の部分が横にずれてしまって不良になってしまうという問題が起きる。補正をかけることによって、全体を長方形にして、全面のピッチを合わせることが可能になる。
もう1つ、色見当のずれも結構問題になる。これも数十ミクロン程度のものでもレンズで拡大されて問題になることもある。それから、機械的にコッキングで数十ミクロンのところを合わせきれないという機械も出てきて問題になるが、そういうものをミクロン単位で合わせることができるのである。 このファンアウトと補正の特長だが、レンズとは干渉しない補正になっているのである。通常のファンナアウト補正は1bittiffに対して行うので、tiffを補正したときできるパターンはレンズと干渉してしまうという可能性がある。しかし、これの場合は割り付ける前のCMYK画像に対して補正をかけるので、補正パターンが縞にならないようになっているのである。
その他の縞、モアレの低減の機能であるが、1つはチェンジンをきれにするという機能がある。通常の網ではチェンジングの切り替わり時に縞が発生する。それはチェンジングの帯とレンズが干渉して縞が発生してしまうことがあるのであるが、独自の網によって、縞の発生を除去するようになっている。 もう1つは、面付けした画像1つ1つに対して1度単位で別々の網角を設定することができるのである。画像を何種類か割り付けたときに、ある画像は例えばマゼンダが縞が出てしまった、あるいは皺が出てしまったというときに、1つの画像はマゼンダとイエローを入れ替えて、もう1つはシアンとイエローを入れ替えるとか、2、3度角度を変えてごまかすとか、そういうことができるのである。
またもう1つの機能は、独自のチャートによるピッチ測定である。従来はストライプを使ったチャートで測定していたが、LentiDotManagerは実際に3D的な方法で測定するようになっているのである。まず、CTP上にチャートを出力してレンズを乗せてそれを見るようになっているのである。
従来の方法との比較だが、従来の方法はレンズにストライプを印刷しなければならなかった。LentiDotManagerの場合は、印刷は不要である。また、従来の方法はストライプとレンズがどれくらいずれているかを見るために、1ラインずつルーペで確認することが必要だったが、LentiDotManagerは3D的に見るということなので、表から目視で確認することができる。3つ目は、ピッチは1つ1つ見るので、例えば1ライン合っていたとしても、何ラインかは合っていないものが出てくるので、正確なピッチを求めるのは大変だったりするのである。こちらの方法だと、どこのラインが合っていて、どのラインがずれているのか、一目瞭然で分かるのである。中央を見れば、正確なピッチが分かるのである。
その他の機能は、ホットフォルダが使えたり、バックグランド処理でいくつかのデータを予約をさせたり、また通常画像が使えるので、ポストガードの裏面を同じ面付けで作ったりすることもできるのである。
まとめて、従来の方法と比較していきたい。 まず設備である。従来は3D画像合成ソフトに専用CTPセッタと高細線網点が必要だった。しかし、このソフトの場合は3D画像合成ソフトとLentiDotManagerがあればできるのである。
それから面付けは、汎用のソフト、例えばInDesignで面付けすることになると、レンズピッチに合わせて細かい位置の面付けが必要になる。あるいは専用の面付けソフトで面付けするという方法もあるが、その場合もCMYKで面付けしてしまうので画像のサイズの制限がかかってくることがあった。しかし、LentiDotManagerはそういう問題がなくて、ミリ単位の普通の画像と同じように面付けをして、調整はソフトが勝手にやってくれるのである。出力は1bitTiffなので画像サイズの制限が少ない。
それから縞とかざらつき。従来のレンズでも同じように色々な縞が出てくるが、除去できない。そういう場合は元画像をちょっとさわってごまかすなどする。また、FMにして何とかという話もあったが、FMはFMで変なドットが目立ったりして、あまりきれいにはいかない。一方、LentiDotManagerは色々な除去の方法を提案している。
それから高細線の網にすることによって縞自体が目立たなくなるのである。
それからピッチずれ。これもなかなか合わない。合わないので検品していいものだけを出荷するということをしている。LentiDotManagerを使って正確に補正をして、またさらにいいレンズも出ているので、そういうことをするとほぼ100%近く取ることも可能になった。
それから色ずれ。機械の調整範囲を超えていたらどうしようもないので、ずれたままということもあった。ファンアウトも調整ができなかったのである。こういった機械に依存する色ずれやファンアウトをミクロン単位で補正できるようにしたのである。
それから、レンチキュラー印刷をやったことがない会社さんが立ち上げるとき、何度も失敗しながら品質を上げていくことをされていたが、会社さんによっては上手くいかずに断念する場合もあったと聞いている。LentiDotManagerを導入された会社さんは、テスト印刷のときから、そこそこ製品として展示会に出せるものを印刷されている。こちらもサポートもあるため、安心していただけるのである。
レンチキュラー業界の動向
スクリーンから、新しいCTPが発売されると聞いている。縦横4800DPIのCTPが登場する。これのいいところは階調性が上がるだけではなく、4000から4800にすることによって、レンズの線数やチェンジする画像の倍数になるので縞が発生しにくいという特長があるのである。 レンズは、日本コーバン製レンズのラインナップも拡充されると聞いている。それから軟質塩ビを使ったアパレル用のレンチキュラーもある。実際、有限会社サンコーさんで、LentiDotManagerを使って刷ってもらったサンプルを展示させていただいている。 用途については、今まではカードやPOPに使っていたが、折り曲げてパッケージに使ったり、商品自体の一部として使ったり、広がってきている。
レンチキュラー印刷の今後
中国のレンチキュラー市場は聞くところによると日本の数百倍といわれている。人口が20倍くらいあるので、日本もまだ10倍くらいの市場の拡大が期待できるのはないかと思っている。品質だが、調べてみると、半導体のフォトレジスト技術、半導体の回路を印刷する技術だが、これを使ったカラー印刷がある。1つの画素が光の波長のサイズになっている。 光の波長と共鳴して色が出るという原理を使っていて、50ミクロン×50ミクロン、500線の1つの網くらいのサイズの中に画像ができるというものがある。これでレンチキュラーを使うとものすごいものができるのはないかと思っているのである。今後、印刷技術がどんどん進化してくれると、レンチキュラーもいいものができるのではないかと期待している。
2014年11月5日「レンチキュラー印刷、立体印刷の今」より(文責編集)
Web to printによる新ビジネス展開
Web to printは、単に印刷物を制作し、オーダーするツールというだけでなく、より大きな問題を解決するソリューションとなる場合がある。