印刷技術」カテゴリーアーカイブ

製作中の印刷物が著作権侵害と分かったとき途中で製作を中止しても発注者からそれまでの代金を取れるのでしょうか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q: 製作中の印刷物が著作権侵害と分かったとき途中で製作を中止しても発注者からそれまでの代金を取れるのでしょうか 

A:著作権を侵害した場合、通常は民事事件として権利者からその行為の差止めと損害賠償を求められます。また、民事だけでは満足されず刑事事件に持ち込まれることもあります。

  この問題で、権利の侵害者は通常発注者であって印刷を請け負った印刷会社ではありません。印刷会社は発注者の「指図」によって仕事をするわけですから発注者が具体的行為者と考えられるでしょう。ただし、例外もあります。印刷会社が発注者と通謀して不法な印刷物を製造・販売した場合は「共犯」「従犯」とされるでしょう。

  印刷途中で著作権侵害に気づいた場合は、単に発注者が著作権法を知らないために起こったミスならば、発注者に必要な権利処理をするように働きかければよいので製作を中止するほどのこともないでしょう。
  その印刷が明らかに発注者の「故意」による犯罪行為である場合には印刷物製作の中止もやむをえないかもしれません。そうすると、印刷の仕事は請負契約ですから仕事が完成しない限り代金を取れない建前があります。しかし、製作を中止し発注者との契約を破棄せざるを得なくなった原因は発注者の反社会的な不法行為にあるので損害賠償を求めることも可能でしょう。

「商品企画のための著作権」社団法人日本印刷技術協会編より

  

(2006年6月12日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

絵柄の中に外国の国旗や五輪マークを印刷するときにどこに許可をもらったらいいか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q: 絵柄の中に外国の国旗や五輪マークを印刷するときにどこに許可をもらったらいいか?

A:商標や意匠に使うことはそれぞれ商標法、意匠法で禁じられていますが、広告等に使う場合には、国内法、国際法および条約上に規制はありません。しかし、実際問題としては各国それぞれ厳重な国内法規をもっていたり、国旗に対して厳格な感情をもっている場合も多いので、その’尊厳’を傷つけないよう十分な配慮が必要です。 
 外国国旗を広告物に印刷したり、店頭や催し物会場に掲げたりしたいときは、当該国の大使館から許可を得たほうがいいでしょう。原産国を誤認させるような使い方は、景品表示法、不正競争防止法で禁じられています。
 五輪マークについては、かつて東京オリンピック当時、岐阜のちょうちん業者が無断使用して紛争が起きたことがあります。このとき東京地裁は「比較的簡単な図案模様にすぎないから、ただちにこれを著作物というには躊躇せざるを得ない」と判断を下しました。
 このことから、五輪マークを無断で広告に使用してもただちに権利侵害とはならないことになります。しかし、五輪マークはオリンピックのシンボルであり、IOCなどの団体が長年の慣行として、商業目的として使用するときは許可を必要とし、かつ有償としていることなどを勘案しますと、この慣行を尊重すべきだと思われます。

 

(2007年7月2日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:知的財産権

Q:電子受発注の中で、消費者の重大な過失とはどの程度までのことを指すのでしょうか?

A:例えば商品を「1個」買うつもりだった消費者が、パソコンの操作ミスにより「11個」 買うとウェブの申込ページに打ち込み、その間違いに気づかないまま 申込み(送信)し、商品が発送されて誤りに気づいたとします。 
 電子契約法(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)が無い頃は、この消費者は、民法95条により、錯誤による契約無効が主張できますが、同条には但し書きで例外があり、この消費者のミスに重大な過失があれば契約無効の主張はできません。この場合、契約を有効としたい事業者側は「重大な過失があり契約は有効だ」と主張できます。
ここで、「重大な過失」とは、「重い不注意」つまり「通常ちょっと注意すれば間違いに気づく程度だった状態」をいいます。 実際、「重大な過失」かどうかは、個別事情によってケースバイケースで判断されるため、例で記載したパターンが一律「重大な過失」とはいえません。しかし、クリックミスや数字の打ち間違いが重大な過失と認められるケースも従来あり、事業者側の立場としては「重大な過失があった」と主張することになるため、法的に不安定な状態でした。
 電子契約法施行後 前述のような特に消費者側にとっての不安定な状況を払拭するため、電子契約法が制定されました。この法律は、事業者側が消費者の申し込み内容など意思を確認するための適切な措置を設けていない場合には消費者側を保護するもので(電子契約法3条)、仮にこの場合、消費者側に「重大な過失」があっても、民法95条ただし書の例外が適用されず、事業者側は消費者側の重過失を問えないことになりました。
 逆にいうと、事業者側が消費者の申し込み内容などの意思を確認するための適切な措置を設けていれば、従来どおり、契約有効を主張する事業者側は錯誤無効を主張する消費者に「重大な過失」を主張することになります。
この場合、事業者側が主張する「重大な過失」としては、例えば「システムで申し込み内容の確認を求めており、ちょっと注意すれば誤りに気づくようになっているのに、これに気づかなかった」点等と考えます。

※民法95条
 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重  大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

※電子契約法3条 民法第九十五条 ただし書の規定は、消費者が行う電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示について、その電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が次のいずれかに該当するときは、適用しない。ただし、当該電子消費者契約の相手方である事業者(その委託を受けた者を含む。以下同じ。)が、当該申込み又はその承諾の意思表示に際して、電磁的方法によりその映像面を介して、その消費者の申込み若しくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について確認を求める措置を講じた場合又はその消費者から当該事業者に対して当該措置を講ずる必要がない旨の意思の表明があった場合は、この限りでない。
   一  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該事業者との間で電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を行う意思がなかったとき。
  二  消費者がその使用する電子計算機を用いて送信した時に当該電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる内容の意思表示を行う意思があったとき。

 

(2007年10月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ノーカーボン紙に減感インキを印刷すると給水ローラに絡みやすくなりますが、対策はありますか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:ノーカーボン紙に減感インキを印刷すると給水ローラに絡みやすくなりますが、対策はありますか

A:減感インキは絡みやすいインキです。乳化したインキは粘りが無くボソボソした感じになり、ツボから出たインキはローラ上で粘りがないためインツボに戻ろうとする力が無くなります。インキローラ上で新しいインキとの交換がやりずらく、さらにインキ乳化が進みます。それがローラ上のインキ余りになって給水ローラの端に溜まり、またブランケットの端についてしまいます。 
 対策として版面の水上がり量をできる限り少なくすることですが、版面の水上がり量が見ずらくて調整が困難です。水量を減らして版面が乾いて汚れを発生させます。次に水量を徐々にあげて版面から汚れが取れたところが水上がり量の最適量と考えます。
また、エッチ液の入れ過ぎも考えられます。エッチ液には親水性高分子が入っておりエッチ液を増やすことは、更にインキ乳化を促進します。減感インキの印刷時は通常のエッチ液量を少なめにすることです。または、エッチ液を他の種類に換えてみるのも一つの方法です。

 

(2008年3月24日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

マンガ雑誌の本文の紙に色々な色が使われていますが,何か意味がありますか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:マンガ雑誌の本文の紙に色々な色が使われていますが,何か意味がありますか?

A:週刊のマンガ雑誌に使われている表面がザラザラした用紙のことを印刷せんか紙といいます。白だけでなくオレンジやグリーン、イエローといった色のついた紙が多く使われています。
この印刷せんか紙は非塗工紙の中でもグレードは低い部類に入ります。
この印刷せんか紙は、古紙から作られており新聞古紙を30~40%と、印刷工場や製本工場から出る裁落としを原料とするのが一般的です。印刷せんか紙には色がついているものが、殆どです。
色がついている理由は大きく二つあります。
第一に製紙メーカーの側の事情があります。印刷せんか紙は新聞古紙を多く含んでできていますが、脱墨技術が進歩したとはいえ、完全に脱墨することは困難であり、どうしても黒ずんでしまいます。真白にはできないということです。これをカバーするために用紙に色をつけるようになりました。
第二に、出版社側のコストの面です。以前はマンガ本もすべて白い紙を使い、何種類かの色インキで印刷していたようです。しかし、色数が多いと制作コストが膨らみます。そこで、墨インキ一色で何色かの印刷せんか紙を組み合わせることにより本に変化をつける工夫をしました。
ここで、製紙メーカー、出版社のメリットが一致した結果マンガ雑誌は殆どのページが色用紙で占められています。
また読者にとっても、同じ色の用紙だと中間まで読んでいくと飽きてくるかもしれません。読んでいるうちに、このモノクロのワンパターンがもたらすマンネリを緩和する、メリハリをつけるといった意味があるようです。

 

(2001年11月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

縦目のA4広報誌を発注していますが,横目にしてもよいかのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:縦目のA4広報誌を発注していますが,横目にしてもよいかのでしょうか?

A:縦目のA4広報誌を発注していますが,印刷会社から横目にしてもよいか,と聞かれたという質問がありました。 用紙は木材の中の植物繊維からできています。紙の目とは、木材の中にある植物繊維の流れている方向のことをいい、日本工業規格で定められた用紙の長辺に平行に目が流れているものを縦目、短辺に平行に目が流れているものを横目の紙といっています。
書籍にしたときには、左右に開きますから紙の流れ目は上下に流れていなければなりません。つまり必ず本のノドに平行になっていなければなりません。
上記の質問の場合、おそらく今までクライアントの方はA4仕上がりの広報誌が縦長の状態で、その結果として縦目になっている、だから「従来は縦目で」といっていると思います。
逆に、もしその広報誌の仕上がりが横長の状態であるなら、その紙は横目の状態になっていなければなりません。
印刷業者が「横目でやってもいいか」といったのは、あくまで製造上での話しだと思います。発注側としては仕上がりが横長でも縦長でも結果として書籍のノドに平行に目が流れていれば問題ありません。
例えば仕上がりがA4版縦置きの広報誌の場合、その広報誌を印刷するには、菊全の印刷機(A全版でもいい)で印刷する場合は菊全横目の用紙を使用しなければなりません。また、菊半裁(A半裁でもいい)の印刷機で印刷する場合は菊半裁縦目の用紙を使用しなければなりません。
印刷業者は、全版の原紙寸法の状態で紙の目のことをよくいいますが、印刷業者以外の方は仕上がりの状態で目のことをいう傾向があると思います。
上記の場合は、印刷業者とクライアントとの、紙の目に対する考え方の違いの表れだと思います。こういう場合、印刷業者はあくまでお客さんの考えを理解することを心がける事がトラブル回避へもつながると思います。
ちなみに、紙の目がノドに直角の状態(逆目)の場合、最初のページは開けても中のページは開けなくなり本の機能を果たすことはできません。

 

(2001年11月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

無線綴じ本の小口に凹凸ができますが、どうしてでしょう?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:無線綴じ本の小口に凹凸ができますが、どうしてでしょう?

A:無線綴じの本ですから、製本してから三方断ちします。三方断ちした直後は当然に小口部は揃っています。しかし、その後の保管の仕方によっては、少々波打つこともありえます。原因は、湿度の具合によることが考えられます。
 印刷工場では、用紙のゆがみを防ぐために常に、湿度を55~60%前後に保っています。それは、用紙が55~60%前後の水分を含んでいるため、それよりも少なくなると用紙は縮み、多くなると広がります。
 本の保管も、湿度の変化が大きい情況におかないことが大切でしょう。
用紙がゆがむ方向は、目に平行に広がりが大きく、目の方向には広がりが小さいです。したがって、マニュアル本は小口に平行に目が走っていますから小口部分が波打ちが大きく、天地方向は少なくなります。

 

(2001年11月26日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

抗菌コートとは何ですか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:抗菌コートとは何ですか?

A:抗菌コートとは、各種の抗菌剤を、オーバープリント用インキまたは染料に分散させ、印刷加工製品にコートすることによって、低コストで抗菌効果機能を付加させる技術です。 
 従来の抗菌処理製品は、プラスチックに抗菌剤を練り込んだものが多く、小ロットものへの対応はコスト高になっている。この技術は、印刷後のオーバープリントや、塗料のコートで抗菌効果をださせるものなので、プラスチック製品だけでなく紙製品にも応用可能です。
 製作方法:通常のオフセットやグラビアで印刷されたものの表面に、抗菌ニスをオーバープリントまたはコーティングで加工処理します。

 

(2001年12月24日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

中とじ製本のホッチキスの間の寸法には規格があるのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:後加工

Q:中とじ製本のホッチキスの間の寸法には規格があるのでしょうか?

A:特に決まった規格はありません。しかし、ランダムに綴じているわけではなく一応の目安はあります。
 一つの考え方をご紹介します。上のホッチキスの中央から下のホッチキスの中央までの距離が、書籍の天地寸法の2分の1になるようにして、天から上のホッチキスの中央までが天地の4分の1、下のホッチキスの中央から地までの距離が天地の4分の1となるように機械を設定することが多いです。この寸法で綴じれば可も無く不可も無く、バランスよく製本できます。 
 これは、あくまでも基本的な考え方であり、この寸法に拘る必要はありません。多くの場合は、出版社から製本会社へ具体的な指示がなされています。

 

(2002年1月21日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ラミネートとはどんなものですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

Q:ラミネートとはどんなものですか。

A:ラミネートとは、印刷物やデジタル出力紙等の保存性を高めるため、ラミネートフィルムを印刷物の両面、又は片面に貼ることです。使用する基材フィルムの光沢性により、付加的に高級感がえられます。頁物、表紙のPP貼りは良く知られるところです。 

 【ラミネート加工するための目的】
  まず出力紙の染料、顔料トナーインキの退色を防止することです。変退色要因の酸素(オゾン)、湿度、光をラミネートフィルムが遮断します。次に、ラミネートフィルムの光沢性により、インキ等では出すことができない高級感を付与することができます。また、紙や印刷インキの耐衝撃性や引裂強度を向上させ基材の補強をはかるという表面保護の役割があります。
  また、紙面とインキ面との接着力が弱い出力紙で、ラミネートフィルムを貼ることにより、耐磨耗性を向上させることができます。

 【ラミネートフィルムの種類】
  ラミネートフィルムの基本構成は、基材フィルムA/接着層Bで構成されます。
(1)Aが12μ/Bが20μ、トータル32μのラミネートフィルムを薄手フィルムと呼び、ポスター等展 示用に使用されています。
(2)Aが50μ/Bが50μ、トータル100μのラミネートフィルムを中手(なかて)フィルムと呼び、メ ニュー等に使用されています。
(3)Aが75μ/Bが75μ、トータル150μのラミネートフィルムを厚手フィルムと呼び、下敷き等に使 用されています。
(4)光沢加工用のPPフィルムは、AがOPP15μマットと光沢の2種類、Bが12μ、トータル27μが標準 的です。

 【加工方式】
  ロール式とパック式の2種類のラミネーター(ラミネートフィルムと印刷物を貼り合わせる装置)があります。ロール式はラミネートフィルムが巻物状となっていて、被ラミネート物は、枚葉・長尺物でもラミネート可能で大量生産型です。使用できるフィルムは薄手、中手、厚手、PPフィルム何れも可能です。
  パック式は、枚葉専用で使用フィルムは中手のみで、枚葉のフィルムの接着面を2枚重ね合わせて、ラミネート時に被ラミネートのズレを防ぐために間にシールを挟んでから被ラミネート物を中に入れてラミネーターに通す方法です。この作業は手動で行ないます。最大A3判迄ラミネート可能で、少量生産型のラミネーターです。

 【環境問題】
  印刷物は、いずれは廃棄物として焼却されますが、その際にダイオキシンが発生するかどうかが問題になります。
  ラミネートメーカーは、官庁のグリーン調達が進む以前からこの問題にいち早く取組んできており、オレフィン系樹脂などのエチレン共重合体等を原料としたフィルムを開発・使用しています。したがって、オレフィン系樹脂を使用したラミネートに関してはダイオキシンが発生することはありません。
  ダイオキシンを発生させる物質は、塩素・臭素・フッ素・ヨウ素などのハロゲン化合物です。例えば、塩素系の製品である塩ビ包材などを可燃ゴミとして焼却すると塩化水素ガスが発生します。それに生ゴミから出る水蒸気と混ざることで、可燃性物質も不燃性の塩化水素ガスの中で不完全燃焼しダイオキシンが発生しやすくなりますので、塩化ビニール、塩化ビニリデン等の塩素系有機化合物を原料にしなければ、ダイオキシンは発生しません。

 資料提供:東京ラミネックス(株)

(2002年7月1日)
(印刷情報サイトPrint-better・「ナンデモQ&A:後加工」より転載)

 

>>よりわかりやすい(初心者向け)の説明はこちら
高級感や保存性をアップする「ラミネート加工」とは【印刷基本のき】