印刷技術」カテゴリーアーカイブ

電飾看板の印刷について教えてください

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:電飾看板の印刷について教えてください

A: 電飾看板は、従来は殆どが透明か半透明(柔版)の素材にスクリーン印刷やオフセット印刷されています。印刷した後、裏から光を透過させて表示されるものなので、透過することによって、反射では見えなかった不要な模様がよく見えます。また、屋外に設置するケースが多いので、ある程度の耐久年数が求められます。 
  例えばスクリーンのメッシュの跡やゴミや浮遊しているホコリやよく磨いだはずのスキージの線等よく見るといろんな不要な模様があったり、西日が直接当たる場所に設置すると耐久性はどうかとよくいわれます。 
  日常何気なく暮らしに役立てている電飾看板でも、印刷物としてみたときにその製作には書籍や雑誌やチラシ等とは違う大変さがあります。

 【スクリーン印刷でのベタ刷り】 
  電飾看板の印刷で大切なことの一つに、ベタを印刷したときにムラを含めた不要な模様が出ないようにすることがあります。 
  スクリーン印刷でベタ面を刷ったときに、スクリーンの紗の目を通ってインキが下に落ちます。そうするとスクリーンの紗の目の跡が付いていて然るべきですが、実際刷ってみるとそんな跡はどこにも見当たりません。ということは、刷られた後にインキが平らにつながり、ベタになっているということです。 
  電飾看板の場合は平らにつながってベタになるインキを使用しており、そのことをレベリング性が高いといっています。 
  透明度があってレベリング性が高く紗の目が残らなくなるり、多少のスキージの線があったとしても自然に消えてくれるということになります。 

 【被印刷体】 
  被印刷体の素材としてはアクリル板や、最近では透明や乳白色のステッカー状のシートに印刷してそれをアクリル板等に貼りつけるというやり方が多いです。 
  なぜなら、リスクの問題が大きいからです。例えば、アクリル板に直接100枚印刷して30枚失敗したとする場合と(検品の際に不要な模様が目立った場合等)、シートに印刷して貼ってダメなものを廃棄てシートを剥がすというのではどっちのリスクが少ないかといったら、当然シートに印刷するほうのリスクが少ないです。シートは剥離性のシートです。曲面の電飾看板にもシートに印刷したほうが都合はいいです。但し球体には対応できません。 
  以前はアクリル板へ直接印刷していました。アクリル板を一定の大きさに切ってそろえて荒立ちしたものを磨くと、アクリル板に磨いた跡がつきます。それから印刷する前に全部両面からきれいにアルコール等で拭くという印刷を始める前の段取りが大変でした。 
  そうした煩雑な手間がかかるということと、技術が発達しシートの素材が新しいのが出てきました。シートならばある程度の量を面付けしサイズを決めておけば、原価も安いしリスクも少なくなります。 

 【オンデマンド出力とスクリーン印刷】 
  透明シートに印刷するということになると、最近はいろんなメーカーからオンデマンドで出力されるシステムが発表されており、それに伴って様々なマテリアルも開発されています。電飾看板をオンデマンドのシステムで出力されているものも結構ありますが、オンデマンドで出力されたものとスクリーン印刷との区分けというのはどうなっているのかについて述べてみたいと思います。 
  今はオンデマンドのシステムが技術的にも機械そのものも精度が良くなっているので、出来上がったものはスクリーン印刷したものと殆ど同じです。 
  どっちを選ぶかといわれたときに客の好みもありますが、他にはロットの問題が大きいです。あくまでも一般論でいうと、大量生産だったらスクリーン印刷のほうが採算の面で安価でしょう。小部数だったらオンデマンドのほうが採算にあうでしょう。 
  あと、耐久性といったことも重要です。ここでの耐久性というのは主に耐光性ということです。 
  オンデマンドの出力機でも熱転写式や静電式の印字方式の機械から出力されたものは結構耐光性があるといわれています。スクリーン印刷も厚盛りで印刷すると耐光性が出ます。 
  スクリーン印刷後、表面処理をします。上からオーバーコート処理ということで紫外線吸収剤入りのクリアをかけ、さらに耐光性のラミネートかけるとある程度の耐光年数はあるといわれています。 
  例えば、企業が合併で看板を新しく製作するときに、最低限の耐光年数を求める場合があるようです。メーカーとすれば一応の年数を要求してきますが、実際に看板が設置される場所によって退色しやすいか否かは明言できないというのが現状でしょう。ですから実績ベースということになります。 

 熊沢印刷工芸(株) TEL 03-3905-1201 

 

(2003年3月17日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

飲み物のグラスに敷くコースターについて教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:飲み物のグラスに敷くコースターについて教えてください。

A:業務用のコースターの場合、大口のユーザーからでも一回の発注が約5万部といわれています。バブル期の頃には、飲み水の紙コップにも使った時代がありました。そのときはもう少し需要がりましたけど、現在はそんなに需要はありません。 

 紙は吸水紙の一種で専用のコースター紙を使っています。この用紙は一般の印刷会社では使用しないため卸業社でも普段在庫していません。一部市販のものもありますが、製紙メーカは専用の原紙を抄いています。
 コースター原紙の寸法はメーカはによっても違いますが、800×1100ミリ、600×800ミリの判があります。連量も薄いもので137kg、厚いもので563kgといった数種類のものがあります。 

 版は樹脂凸版・フレキソ又はスクリーンで印刷されます。いまでこそドライオフセットという方法もありますが、コースター紙には水を使った平版オフセットは向きません。
コースター紙へは不透明度の高いインキを凸版で厚盛りで印刷しています。

 コースター自身、形が三角・四角、それ以上の多角形のものがあり様々で、大きさも約9cm角ものもが多いですから印刷機は小型の機械で印刷します。小ロットですので、通常の印刷のように四六判、菊判の全判や半裁で印刷し複数の後工程を含めるとコスト高になります。あくまでも消耗品なのでコストを追求した場合に一番いい方法としては小型の印刷機のほうが効率がいいことになります。印刷後は刃型を作成して型抜きします。 

 

(2003年4月7日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

紙コップの製作工程について教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:紙コップの製作工程について教えてください。

A:紙コップはコーヒー、ジュース、ヨーグルト、アイスクリームなど飲食物の容器として幅広く利用されています。紙コップは一般的には知られていない多くの手間をかけ製作されており、また衛生上の規制もあります。 
  紙コップの製作方法は画一的なものではありませんが、ここでは基本的な製作工程と材料規制について述べてみたいと思います。

 【プリプレス】
  デザインについては、約100を超える型のサンプルがあり、ユーザーにはどのタイプの紙コップを製造するかを選んでもらいます。選ばれた型に対してどのようにデザインをしていくかということから始まります。
  デザインレイアウトには色々な方法がありますが、紙コップを展開した形が基本になります。紙コップを展開すると扇の下半分がないような状態(以下ブランクという)になります。
  また、貼りあわせ部分やカールという口部を丸めている部分には、文字や絵柄を入れても成型すると隠れてしまうため、成型後の状態を考慮してレイアウトをしていきます。
  またデザインレイアウトをするには一般的にテンプレートと呼ばれる雛型を使用します。(テンプレートはブランクの両サイドの辺を延長していくと交差し、それが扇の中心になりますが、この中心に対して弧が入っています。弧は中心に近づくにしたがってだんだん小さくなってきます。普通の印刷物(チラシ等)をレイアウトするソフト上にある正方形の格子状のグリットに相当するものです) 
  コップに成型したときに、文字や絵柄が水平に見えるためには、扇の中心に対する弧に沿ってレイアウトをする必要があります。例えば単純にまっすぐなレイアウトをすると、成型したときに文字や絵柄の両サイドが跳ね上がって見えてしまいます。 
  また真円は、平面で真円を作りレイアウトしても、コップに成型したときに円が歪んで見えるため、成型したときにどのように見えるかという事を念頭においてレイアウトをしていきます。  デザイン作業にはMacintoshを使用します。まず、ブランクを打ち抜く為の刃の図面はCADを使って作成し、そのデータを利用しデザインテンプレートを作ってイラストレータに落とし込み、デザインをレイアウトをします。 
  色校正については、ベタ印刷の場合はカラーチップで指示を受ける場合が多いようです。通常はカラー出力機を用いて校正しますが、厳密に色調を確認する場合はグラビア印刷機本機で校正をすることもあります。校正が終わったデータは製版部門へ渡り、直接彫刻機で刷版するか又はレーザー露光して腐食するという方法で刷版します。

 【プレス】 
  専用のグラビア輪転機で印刷されます。他の印刷方式は紙コップの印刷は不向きです。その理由の一つはブランクの形状にあります。ブランクは上と下に弧ができます。他の方式だと面付けする際に無駄な部分が出てしまいますが、グラビア輪転機だとエンドレスで印刷できるため、面付けという側面からみると紙の無駄が少ないからです。 
  もう一つの理由は、紙コップ成型時にはブランクに熱をかけたり、高速で搬送するため、耐摩擦性が必要になってきます。こういう耐性にはグラビア印刷が一番適正があるのです。 
  紙の目は、コップに対して垂直になっていなければなりません。なぜならば、後述しますが、加工工程でコップの口元と下部をカーリングさせるときに不都合が生じるからです。製造ロットは一概にいえませんが、最低でも数万という単位で受注されます。 

 【ポストプレス】 
  耐水性をもたせるために、片側又は両側をポリエチレンラミネート加工します。ラミネート加工は、印刷前ラミ加工と印刷後ラミ加工があります。 
その後、胴の部分になるブランクを専用の形状カッターで打抜きます。 

  紙コップは、上記ブランクと丸い底紙といわれる2つの部品からできており、両者を合体させる工程を経て紙コップが出来上がります。 
  底紙は、ポリエチレンをラミネートされたロール状の原紙を底紙打抜機で外側の型で円形に打抜き、内側の型を突き出し絞込んで底紙を作ります。 
  この底紙をコップ状の金型の底に取り付けます。そしてブランクの端をバーナーであぶってポリエチレンフィルムを溶かし、底紙のついた金型にブランクを巻き付けて接着します。昔は糊を使って接着していましたが、今は殆ど内面または外面のポリエチレンラミを溶かして接着をしています。 
  次に胴貼といってブランクの下をバーナーであぶり折りこんで底紙とセットし接着させます。最後にカーリングといってコップの上部を型で外側に巻きこみ、完成です。 

 【材料】 
  紙コップ原紙は一般の紙とは違い、紙コップ専用で耐水性をもたせていたり、印刷適正が良くなるように、原紙の表面を滑らかにするなどの加工がなされています。 
 紙の厚さは原紙の坪量という単位面積あたりの重さであらわします。 
  また、コップ原紙の製造には食品衛生法を受けて食品・添加物等の規格基準(昭和34年12月厚生省告示第370号)の製造基準が適用され、又蛍光物質を使用することは厚生省食品衛生課長通達昭和46年5月8日環食第244号で規制されております。 
  紙コップには一般的に再生紙は利用されませんが、近年の環境問題から、再生紙でもその出所が分かっていれば使用できることもあります。出所が分からない一般の回収品は使用できません。 

  印刷に使用するインキは油性で、熱風をかけて蒸発乾燥させるタイプです。紙コップは食品や人間の口に直接触れるものですから、衛生上の規制が必要です。 
  この点について、食品衛生法には食品包装材料用印刷物を直接規制する条文はありません。そこで、昭和48年に厚生省の指導のもとに、印刷インキ工業連合会が「食品包装材料用印刷インキに関する自主規制」(ネガティブリスト規制)を作成しました。これは食品衛生法の趣旨に沿って、食品包装材料用印刷インキの適正化をはかり内容食品の衛生的安全性を保持することを目的としたものです。そのため、印刷インキの材料として使用される可能性のある物質から、使用してはならない物質を選定し、食品包装材料用印刷インキに配合することを禁止した規制です。
  現在はこの規制にしたがって紙コップは製造されており、この規制に従えば有害物質が入ることはありません。 

 取材協力 東罐興業㈱  
      東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビル 
      tel 03-3502-6054 fax 03-3502-6370 
      URL http://www.tokan.co.jp

      紙コップ製造図 
      URL http://www.tokan.co.jp/product/images/popup.gif  
 

 

(2003年5月5日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

点字制作の注意点について教えてください。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:点字制作の注意点について教えてください。

A:点字印刷とは、縦3点、横2点の6点の組合せからなる点字を触覚により読み取れるように、凸状の点を印刷でつくる方法です。 
  本や名刺だけではなく、最近では公共施設にも点字の案内板や触地図などが多く設置されています。点字は、触れることで、色々な情報を読みとる文字ですから、目で読む普通の文字と比べると制作上の制約もあります。
  ここでは、あまり知られていない点字制作の特長について述べたいと思います。

 【制作上の注意点】
 〔1〕 点字は拡大や縮小ができない文字です。大きくしたり小さくしたりすると、触ったときのザラザラ感が変わってしまい、読みにくくなったり、それが点字だと認識できなくなるからです。点字には、原則として一つのサイズしかないと考えて、制作にのぞまなければなりません。スペースがないからといって、縮小しておさめるようなことはできません。
 〔2〕 点字は、私たちが普段使う一般の文字と表記も一部異なります。点字に対して一般の文字を「墨字」と呼びますが、墨字では、「彼は新宿へ行った」という文章の「彼は」の「は」、「新宿へ」の「へ」にみられるように、実際の発音と異なる表記を用いることがあります。しかし、点字では、こうした表記を発音通り「かれわ しんじゅくえ いった」と書くのです。
  また、例えば「くうき(空気)」や「そうじ(掃除)」などのように、「う」で伸びる長音についても、「くーき」「そーじ」などのように、点字では横棒線の長音符号をを用いて書き表します。
 〔3〕 点字を書く際には、マスあけのルールにも注意を払う必要があります。マスあけは「分かち書き」ともいいます。点字では漢字も一部使われていますが、一般にはカナ表記が殆どです。
  通常、私たちが目にする「墨字」の文章は漢字カナ交じり文で書かれていますから「分かち書き」の必要はありません。しかし、これをすべてカナだけで書いたら、非常に読みにくいものになりますし、場合によっては意味を取り違える恐れも生じることになります。たとえば、「ここではきものをぬいでください」という文章は、分かち書きをしなければ、「履き物を脱ぐ」のか、「着物を脱ぐ」のか区別できません。点字の「分かち書き」のルールでこの文章を書くと、「ここで はきものを ぬいで ください」となります。
  この「分かち書き」のルールを正しく書くことは、点字についてかなり熟練しないと難しいといわれています。たとえば、「東京都」という語は、分けて書くことをしませんし、「都知事」という語も分けて書く必要はありません。ところが、「東京都知事」になると、分かち書きの必要がでてきます。これは「とーきょー」「とちじ」と分けるべきでしょうか?「とーきょーと」「ちじ」と分けるべきでしょうか?
  点字は、表音文字なので、行末で自由に改行することもできません。先ほどの文章を例に挙げると、「ここで はきものを」という文章が行末にきたからといって「ここで は」と改行してしまうと、分かち書きの意味がありません。分かち書きで区切られたひとかたまりの語句は、ひとかたまりで書かれなければならないのです。点字は、拡大、縮小ができないだけでなく、文字の間隔をちょっと詰めるということができませんし、こうした分かち書きの都合から点字の行末は揃いませんし、墨字に比べて1ページあたりに入る分量がとても少なくなることにも注意が必要です。
 〔5〕 点字を書くときの難しさは、レイアウトの問題にもっともあらわれます。点字では、書体を変えて目立たせたりとか、文字を大きくして見出しにするなどというようなことはできません。レイアウトによる書き方の工夫でここは見出しだとか、強調されているとか、意味がわかれるなどとあらわさなければなりません。こうした書き方の工夫には、単に点字の表記に精通しているだけでなく、実際の視覚障害者のアドバイスが得られなければ難しいでしょう。
  今は、パソコンにより、漢字仮名交じり文で書かれたテキスト文書を点字に自動変換してくれる有料・無料のソフトウェアを利用することもできますが、100%正しく書けるということは、まずあり得ないと思って制作にのぞむ必要があります。

 点字には、文字の大きさや表記の仕方、1ページに入る文字の量や位置など様々なルールがあり、専門的な知識が必要で、企画の段階から視覚障害団体や点字の知識のある製作会社やデザイナーとの打合せが不可欠だということです。

 【製作方法】
  製作の仕方には大きく分けて、用紙そのものを加工するエンボス印刷と、専用のインキを使ったスクリーン印刷があります。

★エンボス印刷
  視覚障害者の手にする点字印刷物のほとんどは、エンボス印刷によるものです。エンボス印刷には、専用の点字プリンターを使って、データ上で作成した点字原稿を連続用紙に出力する方法と、一般的に亜鉛版式と呼ばれ、打刻をした2つ折りの亜鉛版の間に紙をはさみ、圧ローラーの間を通して紙に点字をエンボス印刷する方法とがあります。亜鉛版式は、単票用紙に対応しており、墨字印刷済みの用紙の上から点字を印刷することが可能です。また、小部数でも手軽に作成することができるため、部数がそれほど多くない物件にはコスト面でも安価な方法です。その一方、4C印刷された絵柄の上に印刷すると、絵柄が歪んでしまうことがあるので注意が必要です。

★スクリーン印刷
  スクリーン印刷にもいくつか種類がありますが、代表されるのが、専用の樹脂インキなどを使った手法です。透明のインキを使うことができるので、4C印刷した絵柄の上に点字印刷しても絵柄を生かすことができ、きれいに仕上がるのが特長です。そしてもう一つの特長は、絵柄の縁取りなどの表現ができるということです。点字印刷物には、点字のほかに触図という表現があり、たとえば絵本の絵柄やガイドブックの中の地図などを作成することができます。
  そして、大きくエンボス印刷と違うのは、印刷される素材を幅広く選べるという点です。厚紙はもちろん、PET、アクリル板などにも印刷できます。但し、密着の悪いものもありますので、密着テストが必要です。

     取材協力:株式会社 技秀堂
 〒116-0013東京都荒川区西日暮里2-36-15
        TEL 03-3803-8511
http://www.gishudo.co.jp 

         株式会社 ブレイルコム
        〒112-0002 東京都文京区小石川2-3-4
        TEL 03-5804-6206
http://www.braillecom.co.jp

社会福祉法人 日本点字図書館 
         〒169-8586 東京都新宿区高田馬場1-23-4
        TEL 03-3209-0241
http://www.nittento.or.jp

 

(2003年7月14日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

エーデルグラムとは何でしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:エーデルグラムとは何でしょうか。

A:【概念】 
  エーデルグラムとは、特殊レンズシートを印刷物の画像の上に重ねると、印刷物の絵柄の中の隠し画像を浮かび上がらせる技術をいいます。かまぼこ形状の特殊レンズを用いてモアレ現象を利用しています。もともとは、株券・商品券・約束手形などの金券の偽造防止や認証用に用いるために大日本印刷㈱が独自に開発したものです。
  基本的には、特殊レンズシートと印刷物がワンセットになって使用されて、今では出版向けに多く利用されています。

 【製造方法】
  印刷版式は普通の平版です。以前は単色が主でしたが、カラー画像にも潜像として文字を埋め込んだらどうなるのかということで開発されました。
  基本的には、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック(以下CMYK)の4版ありますが、そのうちの埋め込みたい画像を1版だけに加工します。
  どの版に埋め込むかということは、特に決まりはありません。埋め込みたいところと埋め込める画像によりますが、例えば画像の赤い部分の中に浮かび上がらせたいなら、マゼンタの版に埋め込むと見えやすくなるように、どの版を使うかは絵柄によって違ってきます。

  基本的に、浮かび上がる画像は、印刷物上では万線状になっています。パソコンのソフトで浮かび上がらせる画像を線に分割する技術があります。
  シート用のレンズは主に0.3ミリピッチのかまぼこ型のレンチキュラーレンズを使っています。印刷物上では、約0.05ミリピッチの細かさで万線を作り、埋め込みたい画像は万線に対して網点を半波長ずらしており、0.05ミリピッチでずれていることになります。
  他の画像のところは網点が通常の印刷物と同様に並んでいますが、潜像の版だけ万線で濃淡を表現しています。したがって、これにレンズをあてると、ずれたところが浮かび上がってくるというわけです。
  画像のスクリーン線数は、すべて対応できます。高精細印刷にも対応可能ということですが、実績がないのでこちらのほうはあくまでも理論上ということになります。
  スクリーン角度の問題で、モアレが出る出ないというのがありますが、そこは出力機を調節しながらモアレがでないような状態で出力するということになります。

 【特殊レンズシート】
  万線シートのピッチや厚みによって、素材もさまざまです。通常、0.2ミリピッチというのが一番細かいもので、0.5ミリピッチまであります。ピッチさえ合えば素材や厚みも気にする必要はありません。

 【用途】
  現在、エーデルグラムが使用されている印刷物では、小学生以下の子供向けの雑誌類など教材関係に多く使われています。子供が遊びながら、学べるというのが大きな理由です。
  例えば、動物の名前だとか、動物の骨があって骨格がどうなっているかなど、ゲーム感覚で、普通の雑誌では使えないような道具を使って学習できます。また、英語教材などで答えが潜像画像として埋めこまれているというような方法で学習の手段としても使われています。

 【今後の展開】
  今後は、DMへの活用も考えられます。基本的にはDMを受け取った人がDMを持参してお店に行き、そこでレンチキュラーを重ねて確認してもらって懸賞になる等、来店を促すようなツールとしても考えられます。 
  また商品は模造されるケースがあります。模造される毎に刷り替えていたのでは、非常にコストが高くなってしまいます。こういうときに潜像を埋め込んでおけば、レンズをあてるだけで、自分のところのものだと確認できます。ランニングコストが安く簡単に検証できることになります。

  本来は証券の偽造防止というところから出発したエーデルグラムですが、株券・商品券・約束手形などの金券には殆ど利用されていません。証券は機械で認識させることが多く、また見て分かるようなホログラムが印刷されています。
  それに商品券を確認するのにレンチキュラーレンズを1個づつ店のレジに置くと、混雑時のお会計が大変効率の悪いものになりますので、日常生活で使うには向かないでしょう。

   取材協力:大日本印刷㈱ URL http://www.dnp.co.jp/index_j.html
 

 (2003年10月13日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている色々な印刷物はどうやって制作されていますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

 

Q:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている色々な印刷物はどうやって制作されていますか。

A:駅・デパート・スーパー等の床や壁に貼られている印刷物(一般にはサインパネルと呼ばれている)で人物・物体を切りぬいたり○型□型等にカットされて製品の売り場案内や出入口方向の表示、ポスター等になっているのをよく目にします。当然、それらはプリンタからオンデマンドで出力された印刷物です。しかし、床に貼られていると靴で踏まれたり、壁や手すりに貼られていると人体と接触することにより磨耗して行きます。   また、ある一定の期間が経過すると跡形も無く剥がされなければならないものもあります。そこで、このような印刷物は通常の物とは違った材料を使用して制作されていますが、どのように制作されているのかについて、ローランド ディー.ジー.(株)のプリント&カットマシンによるフロアサイン制作を一例として述べたいと思います。

 

【レイアウト】  

まず、レイアウトは、特に専用のレイアウトソフトが必ずしも必要ではなく、市販されているイラストレーターで作成し出力します。  また、人物・物体を切りぬいたり○型□型等のカットはどうされているかというと、イラストレーターでカッティング線を絵柄と併せて作成します。切り取る抜き型の線をつくっています。  文字の場合だったらアウトラインを抜いてもらえばいいです。写真の一部の絵柄等の変型ならばフォトショップでアウトラインをとって、イラストレーターにパスのデータだけをもってくればカットラインとして認識されます。  ここで「出力」すると出力機側にはプリントとカッティング機能があり、グラフィックスとカットのラインを認識してくれます。プリント後、自動的に原点に戻り型を切るということになります。

 

【水性と溶剤系のインクジェットプリンタ】  

出力機は主に水性と溶剤系のインクジェットプリンタがあります。このどちらが多く使われていたりどちらが向いているのかについてはいろんな見方があります。しかし、いずれにしても表面保護等の為にラミネート加工をしなければなりません。ラミネート加工すると耐光性、耐摩擦性が上がりますので、短期間のご使用においてはどちらのインクを選んでも構いませんが、耐光性が問われる場合は優れた耐光性を持つ溶剤系インクのほうがいいようです。  次に、生産コストには差が出てきます。インクの値段はメーカーにより多少の違いもありますが、そんなに差はありません。溶剤系のインキはコスト的には安価ですが、水性インクに比べると若干、彩度が落ちます。  印字される素材としては塩ビやPET、フィルムベースのものがあります。印字される素材は水性と溶剤系を比べると値段に格差があり、溶剤系のプリンタ用の素材は水性に比べて約半分のコストで済むので一般的には生産コストは溶剤系の方が安価でできます。水性のインクジェットだと専用紙である必要がありますが、溶剤系は専用紙だけでなく色々なものに印字できるという特長があります。

 

【後加工】  

プリントアウトした後のインクは、水性の場合はすぐ乾くので、すぐ後加工の作業にかかれます。しかし、溶剤系のインクは、メーカーによって差がありますが、乾燥には多少時間がかかります。溶剤系の場合は溶剤成分が揮発しないと、ラミネートしたときに気泡ができます。ですから、一晩くらいおかないと完全に乾燥しないケースがあります。  印字した後はラミネート加工を施します。この場合、普通のラミネートだと雨が降ったときに水で滑ります。それで、最近は水がついても滑らないラミネートの素材が開発されています。  また、素材が塩ビなのかPETなのかフィルムベースなのかによってラミネートとの相性があるので、それをあわせてもらう必要があります。  そうしないと作成後に伸縮があったり、長期に掲示するものだと、伸び縮みや割れてきたり気泡ができたりすることがあります。屋内でも、白色灯は紫外線を出しますから、その対策としてもラミネートするほうがよいでしょう。  材料を選ぶときに結局どういう場所のどういう用途でどのくらいの期間使用するのかということで、それぞれ違ってくるし、インクの選択も違ってくるでしょう。そういうことは、材料の組合せで、より効果のあるやり方を選択しなければなりません。  メーカー各社により、いくつか制作方法がありますが、基本的にはプリントアウト・ラミネート・カッティングという工程を経て制作されます。

取材協力:ローランド ディー.ジー.(株)

 

(2004年1月5日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

フィルムへの印刷はなぜグラビアなのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:フィルムへの印刷はなぜグラビアなのでしょうか?

A:【グラビアの特徴】 
  グラビアは凹版印刷の一種で、細かい凹点(グラビアセル)内に詰められたインキの量によって濃淡を表現します。版の窪んだ部分にインキをためて、それを圧胴の圧力でインキを転移させて印刷します。
  特徴としてはインキを載せ転移させる量が一定であるという計量精度に優れています。1インチあたり何本セルが入っているかというスクリーン線数にもよりますが、セルが浅ければ少ないインキが入りますし、深ければ多くのインキが入ることにより高精度な細密な再現性が得られます。インキの転移量を細かく調整できるので、非常にカラー再現にすぐれているという印刷手法です。
  また、グラビアインキは一般的に油性インキが主流です。アルコールやトルエン、酢酸エチル等のインキ溶剤が使われています。最近は環境等の問題でトルエンを使用しないインキや、逆に水性のインキが出ていますが、基本的には油性インキになっています。

 【グラビアとフィルムの相性】
  一般的に、プラスチックフィルムは濡れ性が悪く水を弾く性質があります。そういう被印刷体にインキをつける場合に、グラビアで印刷が向いている理由のひとつに油性の性質をもっているので付着性がいいことがあげられます。もうひとつは、カラー再現の中で細かな印刷がしやすいことがあります。
  例えば紙の場合はグラビア以外にもオフセットや凸版で印刷しますが、紙にインキが吸い込むため、インキの計量精度を計算できないところがあります。しかしフィルムはインキを吸い込むことがないため、ほしい量をほしい個所にキッチリ転移させることができ計量精度が高く再現性がいいことがあげられます。
  また、例えば用紙だと多少表面に凹凸があるために、インキが付かなかったり付き過ぎたりすることがありますが、プラスチックフィルムの表面には非常に平滑性がありグラビアの版も表面が平らで窪みがあります。そういう意味では平らな面に平らな版をつけるということで適しているともいえます。
  紙の場合はグラビアだとかすれぎみになることもありますが、平滑なフィルムはかすれることはありません。そういう意味ではグラビアの相性がいいといえるでしょう。

 【フレキソの動向】
  プラスチックフィルムの印刷をグラビア以外でやっているのがフレキソ印刷です。オムツとか生理用品でポリエチレン単体の袋、スーパーのお持ち帰りの袋などフレキソで印刷されているケースが多いでしょう。
  単体の袋ではフレキソで印刷されるケースがありますが、複合されて貼り合わせされたラミネートものだと殆どグラビアです。
  軟包装でもよくありますが、リピートでオーダーをいただく仕事が多いと、色合わせがとても重要でフレキソだと色ムラが出やすいといわれています。
  版についても、フレキソは樹脂版をシリンダーに貼りつけて印刷するため、印圧の調整が微妙で、グラデーションも難しいかもしれません。
  カラーカーブで0%から100%までリニアになればいいですが、フレキソの場合ハイライトの再現性が非常に難しく、インキが付いたり付かなかったりします。逆にベタ部ではインキがはみ出て太りすぎる傾向があります。
  最近は版周りの進歩もあり、インキの転移量を微細に変えることもできますので以前よりは技術的に改善されています。しかし、グラビアと比較するとまだ印刷品質の差があり、顧客に満足してもらえないというのが現状でしょう。

 取材協力:大日本印刷㈱ 包装総合開発センター
   http://www.dnp.co.jp/

 

(2004年7月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

A:印刷は、元々は版にインキを付けて圧力をかけることによってインキを版から被印刷物に転写させることであり、従来から現在までそのように行われています。また、デジタル技術の発達した現在では、版を用いなくても印刷できるようなシステムも確立し、印刷の概念が従来よりも拡大して解釈されています。また、印刷の原語はprintですが、printは一回限りの表現にも使われています。 
  厳密にいえば、水や空気への印刷はできるのかと問われると答えるのに苦労します。しかし、空中や水中に何らかの方法で絵柄を表現したり又は水を媒体としてプリントのようなことは行われています。
これらのことをさらに拡大解釈して空気や水への『印刷』として捕らえている場合もあり、その例をいくつか挙げます。

●空気への『印刷』
① 空気というより空に『印刷』するということで言えば、オリンピック等の世界的なイベントでジェット機が煙を噴射して五輪のマーク等を空に表現することが挙げられます。

② これと似たようなことで、一機のセスナ機から5つの煙を出す装置を取りつけ、セスナ機が2機で水平飛行して空に文字やマーク等を煙で表現することもきます。
また、イベントのステージでスモークを出し、そこにレーザー光線で映像や文字を写すこともあります。このように空中に絵柄を描いていることになるでしょう。

●水を媒体とした『印刷』
① 水溶紙を使った方法があります。水溶紙は、水に濡らすとすぐに溶ける性質をもっており、軍事用、産業用、医療用の機密文書等に用いられています。重要な機密事項を守るための用紙です。この用紙をディゾルボといって三島製紙㈱の商標となっています。版式は、用紙の性質上、ドライオフセット印刷または水無しオフセット印刷を使います。 しかし、単純に印刷するだけでは水に浸せばすべて溶解します。そこで孔版でゾルインキという 水に溶解しない塩ビ系のインキで印刷すると、水に浸しても紙は溶解するが絵柄だけ水の上に浮いている状態ができます。
これと同じように水で溶解するフィルムもいろいろあります。フィルムといえばオブラートが代表的です。ベースがゼラチンやアラビアゴム等の素材でできています。これにゾルタイプのインキで印刷しておけば水の中に絵柄を残すという同じ効果が出せます。

② 水出し印刷は、水質紙に絵柄がオフセット印刷されており、その上にスクリーン印刷等で水出しインキを印刷して隠蔽し、水をつけると絵柄が出てくることをいいます。水の浸透性に差をつけて絵柄を表現します。具体的には、幼児用玩具、幼児向け本の付録等に使われます。

③ 水圧印刷は、水溶性のフィルムに例えば木目や大理石等のパターンの絵柄をグラビア印刷します。そして、それを水槽に入れるとフィルムが溶解され木目や大理石等のパターンだけが水面に残ります。そこにプラスチックなどの成形品や曲面状のものを水中に浮かぶ絵柄パターンの部分に潜らせて水から引き上げて転写されます。
  水を潜らせるために、複雑に歪曲した部分や凹凸の形状のものにでも転写が可能です。現在では家電製品や自動車のフロントパネルの成形品などに使われています。

④ スライド転写は、ベースの上に水溶性の剥離層を設けその上に絵柄を孔版印刷しさらに接着剤をコートしたものです。そして、それが水で溶解して層が浮き上がり例えばプラスチックモデルの絵付け用シールや学用品などに貼ったり、人の肌に絵柄を写すこともできます。
  工業用としては、ガラスや陶器に貼り、それで焼きの釜に入ると完全に密着して洗ってもブラシで擦っても落ちません。またオートバイのタンクや車のボディへの絵柄付け等に利用されています。水に印刷するのではなく水を媒体にして転写しています。

⑤ 墨流しは、ゼラチンや寒天の上に染料をたらして流し模様のパターンを作り紙に写すことをいいます。寒天の上にドロドロした皮膜でパターンを作りその上に紙や布などを通すことによりパターンが写されます。たとえば製本の小口の部分を墨流しするとマーブルな感じ出て非常に高級感がえられます。

⑥ パウダーを使ってコーヒーや飲み物に星やハートマーク等のマスクをおいて粉ミルクを振り掛けると粉ミルクや粉チーズのマークができことを広く解釈すれば『印刷』といえるかもしれません。
  静電インクというトナーでチャージを与えることによってケーキ等のクリームの上に絵柄を表現できます。このトナーは、且つ食用でないといけません。水ではないですが、水に近いものへの『印刷』です。

  このように水を利用していろいろな印刷物が製作されています。空気や水への印刷というのはあくまで拡大解釈であり、いいかえると空気や水を利用して空中や水中に絵柄を残して情報を伝達できるという意味ともいえるかもしれません。 
 

(2005年2月14日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

立体印刷でHALSとはどういう印刷ですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:立体印刷でHALSとはどういう印刷ですか。

A:立体印刷は平面上で絵柄が浮かび上がって見えたり奥行き感をだす等、視覚的に立体感を得られる印刷であり、ホログラムやステレオグラム、2枚写真法、レンチキュラーレンズ法等さまざまな手法があり、立体感をだすための一つの手法としてHALSがあります。
  HALSとは、グラパックジャパン㈱の特許製法により製造されたマイクロアレイレンズシートです。このシートの片面には微細なレンズが碁盤の目状に規則的に配列されており、蒲鉾型のレンチキュラーレンズとは違い一定のピッチ間隔で半球状の微細なレンズが敷き詰められています。したがってこのレンズの片面はマイクロレンズが敷き詰められてザラザラしており、もう片面が平滑性をもつ光沢面となっています。
  現在HALSには400-PP、500-PP、400-PETG、500-PETGの4種類の製品があり、これは製品名の通り材質がPETかPPかということ、材料厚が0.4mmか0.5 mm であることを表しています。

 【製造方法】
  このHALSシートの光沢面に立体視させるためのドットパターンをデザインに合わせた色のUVインキで平版印刷します。このシートはフィルムという特殊原反であるため通常の油性インキの密着性と乾燥性に問題があるためUVインキを使用しています。
  HALSシートの一定のピッチ間隔をもった半球状の微細なレンズと印刷されたドットパターンのピッチがぴったり同じになると立体感は出ません。レンズとドットパターンのピッチを微妙にズラして印刷することにより立体感を出しています。このピッチ幅はIllustratorでデータを作成するときにピッチ幅を少なめにしたり大きめに調整しています。
  またレンズを通して小さい網点を大きく見せているので四角やハート型などドット形状を変えることによりさまざまなデザイン上の効果を出すことができます。そしてドットパターンを印刷した後にその上に白ニスや合紙などを貼って表面を保護します。
 上記の処理後、ザラザラのレンズ面側から見るとドットパターンが実際の印刷面より浮かんだり沈んだり立体的に見えます。
  ザラザラのレンズ側への絵柄の印刷は平版オフセット、スクリーン、グラビア、インクジェットプリンタのいずれかで印刷します。そして絵柄のバックグランドにドットパターンによる遠近感をだすことにより訴求力を高める効果が発揮されます。

 【用途】
  使用目的として注目されているのは、販促ツールやPOPなどのSP関係です。通常のプラスチック素材と同じように曲げ加工もできるのでパッケージの用途にも使えます。 どこに使うかの制限はありません。ただPPやPETですから極端に熱がかかるところには使えませんので材質的な制限はあります。そういう物理的な規制を除けばアイディア次第でどこにでも使用できます。
  また今後考えられる市場が交通広告です。交通広告は印刷の制作費の他に掲載料が必要です。この掲載料はバスや電車の中など人目につきやすいところに設置されるための料金と考えられます。
    確かにHALSという媒体は紙よりは高いかもしれません。しかし、紙よりも訴求力は高いと考えることができるので最終的な投資対効果でみたときにプラスの効果があるのではという期待もあります。通常の紙にするのか前例のないHALSのようなものにするかはそれぞれの企業の考え方です。今後の方向性として交通広告市場にも期待されます。

 取材協力:グラパックジャパン㈱
     TEL 03-5213-5554 FAX 03-5213-5559
 http://www.grapac.co.jp/

 

 (2006年3月20日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

3D印刷はどうして立体的に見えるのでしょうか

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:3D印刷はどうして立体的に見えるのでしょうか

A:3Dとは、印刷物を立体的にみせるために、かまぼこ型のレンズを万線状に並べた特殊シート(表面が波形、裏面は平面)に画像を印刷する技術です。 3Dを制作するには、特殊レンズシートを介して見たときに立体的に見えるような印刷版をつくらなければなりません。使用する原稿は複数の写真や3D用のイラストです。この原稿を専用の画像処理ソフトで処理します。
具体的には奥行きがでるように万線模様がつくられており、沈む部分の画像はより細かい万線で浮き出る画像は粗い万線でかつ絵柄をズラしてデータを作成して印刷用版をCTP出力します。
 通常の用紙に印刷して特殊シートを貼り合わせるやり方もありますが、これだと2工程になる為、特殊シートの平面側に直接印刷します。このときシートは非吸収素材であるためUVインキで絵柄を印刷し、かつ素材が透明であるため絵柄を印刷したあとにホワイトインキを2度以上印刷して透けないようにします。
 印刷された画像に特殊レンズシートを通して見ると、かまぼこレンズの作用により左目と右目の画像が分かれ、その画像が人の頭の中で合成され立体画像となって認識されます。特殊レンズシートのかまぼこ状の万線の本数は1インチあたり100本、75本、50本、40本、20本などがある。これは用途により選択されます。
用途としては、名刺・ハガキ・ポスター・清涼又はアルコール飲料缶の宣伝用ポスター・本の表紙・カード類に多く使われています。
3Dは印刷物全体に変化をもたらすため、名刺やハガキなどは初対面の人にインパクトを与え、ポスターやパンフレットは注目度を集めるという宣伝効果が期待できます。
 

取材協力:㈱陽成社
       新宿区赤城下町44 TEL 03-5229-4202
 URL http://www.yosey.co.jp

 

(2007年2月1日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)