印刷技術」カテゴリーアーカイブ

合成紙に合成紙用インキで印刷した時、インキの乾燥を早くさせる為に良い方法はありますか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:合成紙に合成紙用インキで印刷した時、インキの乾燥を早くさせる為に良い方法はありますか?

A:合成紙に印刷するときは、合成紙用インキを使用するのが通常です。合成紙用インキは、通常のインキに入ってる石油系溶剤が入っていません。その為インキのセットは遅くなります。又湿し水に対する抵抗力が低く乳化しやすい性質になっています。乳化したインキはセット・乾燥は大幅に遅れます。 
 合成紙に印刷するときは、湿し水を出きるだけ少なくし、湿し水pH・室内温湿度は常に一定に保つことが大切です。 
 通常の枚葉インキには、1.0~2.0%のドライヤーが入っていますが、合成紙用インキにはドライヤーが3.0~4.0%入っています。そのため普通の合成紙用インキでも機上安定性が悪い(インキローラー上で乾燥して締まってしまう)結果を招きます。
 それが、ドライヤーを増やすことでインキの機上安定性が更に悪くなるため、ドライヤーを入れて乾燥を早めるのはお勧めできません。
 早くセット乾燥させるためには、刷り本に風入れを行ない、温度の高い所に置いておくことです。刷了後寒い場所等に置いておくと、2~3日過ぎてもインキは乾燥しません。

 

(2005年5月16日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

冬場はどうしても印刷機の生産性が落ちますが何か対策はありますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:冬場はどうしても印刷機の生産性が落ちますが何か対策はありますか。

A:印刷品質をレベルを一定にし生産性を保つためには工場の環境整備が最低条件です。印刷工場の温度は23~25、湿度60%±5%、色温度5000度K、騒音60デシベル以下、という環境にしておくことです。
 この中でも特に重要なのは温度湿度の管理です。この管理が不十分だと機械のトラブルが発生しやすくなります。よくトラブルが発生しやすい乾燥して寒い冬場は、機械のローラやインキツボのインキが冷えて硬くなり、着けローラまでインキが降りてきません。すなわち印刷が不可能となります。
 機械が止まると当然稼働率が下がるためお金に換算するとかなりな金額にもなります。ここでは特に冬は収益があがりにくいある会社を例に工場の生産効率を上げるためのひとつの考え方を取り上げます。

 この会社の始業は8時半からですが、冬場の朝は工場内に置いてあるバケツに薄氷がはっているような状態でした。こういう状態で暖房を入れても、機械のローラーが冷え切っているためインキが硬くて下におりず8時半から作業に入れません。ようやく機械が暖まって見当をみれるのが10時半くらいで約2時間ロスしています。そのためこの2時間分は残業になるため残業代は夏場に比べ約25%アップになります。
 この会社は菊全の4色が2台、菊半の4色が2台入っています。時間とコストの関係で単純な売り上げ計算をすると、例えば菊全が1時間につき平均してと25、000円の売り上げがあるとします。そうすると25、000円/台×2台×2時間で100、000円の売り上げがロスされることになります。
 菊半の機械も1時間につき平均20、000円の売り上げで計算すると20、000円/台×2台×2時間で80,000円ロスすることになり、合計すると本来ならば180、000円売り上げるところ180、000円のマイナスになってしまいます。
 冷え切っている機械を暖めるために2時間かかるわけですが、この時間をとらないために工場の空調を一晩中つけて機械を暖めておくとよいでしょう。しかしこの場合も一晩で約3、000円の電気代がかかります。これも無駄なように見えますが、一晩の約3、000円の電気代と1日180,000円の損失を比べたらどっちがマイナスがということです。
 ですから空調関係は1年を通じてその季節の温湿度に対応させて24時間つけっぱなしのほうがトータルでみるとマイナスは少なくて済むという考え方です。

 

(2006年6月19日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

刷版工程でのステップガイドとは何のために使うものでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:刷版工程でのステップガイドとは何のために使うものでしょうか。

A:ステップガイドは刷版工程で、焼枠によって光量が違うので焼付け時間を一定に管理するためのゲージです。
通常ステップガイドは15段階に別れています。1段目の濃度が0.15、2段目が0.3、3段目が0.45、4段目が0.6、・・・・・・とそれぞれの段の濃度差が0.15となっています。
 次に、ステップ1段をクリアさせるためには焼枠の露光量(カウント数)の1.4倍(そJの逆の場合は1/1.4倍)の露光量が必要になります。

例えば、9段クリア(カウント数120)の状態でこれを7段クリアにするとします。
そうすると9段目クリアから8段目クリアにしようとすれば

    カウント数120×1/1.4 = 85.7カウント
     8段目クリアから7段目クリアにしようとするには
    カウント数85.7×1/1.4 = 61.2カウント
このように9段目クリアのカウントが120だったのに対し2段下の7段目クリアするには約1/2の61カウントあればいいことになります。
通常の推奨値は最小網点2%が再現されるように管理され、クリアされる段階は6~7段目です。
(カウント数はそれぞれの焼枠によってことなります。) 

 

(2007年6月25日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

印刷機の技術革新とそれに合わせてオペレータの役割はどうなりますか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:印刷機の技術革新とそれに合わせてオペレータの役割はどうなりますか。

A:ここ数年の間に各印刷機メーカーからいろいろな機械が発表され印刷機の技術も飛躍的に進化しています。したがって、どれが一番良いという見方ではなく、それぞれの印刷会社の要求に合ったものかどうかを判断することが経営者に求められてきます。 

  枚葉機はユニットの数が4色以上のものが多く出ています。これは4色以上の色数を使いより色域の広いカラー印刷をしたりインラインで両面4色印刷したりインラインである程度の表面加工をしさらにデザイン性を持たせた加工も可能になりました。 
  従来、こうしたことはオフラインで行い時間がかかっていた事がワンパスで低コスト短納期での生産が可能になりました。また準備時間短縮のためのコンピュータ制御により機構的な改良がなされてオペレータの負担も軽減されました。

  オフ輪も技術革新がなされ、特に各ユニットの単独駆動はもう一般化されています。従来、ユニット間はギアで繋がれてすべてのユニットが同時に動くため準備時間にもそれなりの時間を要していました。これがサーボモータの技術が発達したことによりユニットの単独駆動が可能となり準備時間も短縮されました。
  これにより、従来のオフ輪が7万部以上という大量生産型の機械という概念から脱却し、3万部からのロットで印刷しても採算が取れる機械が出ています。印刷会社の現場では1万部からの仕事もこなしていると聞きます。もちろんコンピュータ制御によりオペレータの負担は軽減されました。

  CTPシステムが一般的になりデジタルデータをやり取りすることにより工程がコンピュータ管理されている今日では印刷機の設定をあまり動かす必要もなくなりました。オペレータがボタンを押せば自動的に版替えからローラ洗浄、インキ濃度調節などをやってくれます。生産効率向上、準備時間短縮のために印刷機が進化するにつれてオペレータのスキルの性質も変わり経験がなくても印刷機を動かせるようになってきました。昔のように腕に技術をもった職人がいた時代とは違ってきています。非常に便利になりましたが、一方で機械が故障したりメンテナンスが必要になったときに、オペレータがどこまで対応できるかという不安要素もあります。これは大きな問題です。
  このためには印刷機の基本を理解し最良の状態を把握してこれを基にして材料の相性を確認しておくことが大切です。そして、胴仕立てやローラー交換、ブラン交換などの点検、調整し判断できるようになる必要があります。
  この解決策としては、印刷機械メーカーが勧める講習に定期的に積極的に参加して、コンユータ化された印刷機のどこまでをオペレータが調整し、どこからがメーカーに頼まなければならないのかを判断できる能力を身につけていくことが大事です。

 

(2008年3月10日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

湿し水のph値は高すぎても低すぎても地汚れが発生してしまうのでしょうか?

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:湿し水のph値は高すぎても低すぎても地汚れが発生してしまうのでしょうか?

A:Phとは水素イオン指数のことをいいます。水の分子式はH2Oですが、このうち一部の分子は水素イオンと水酸化イオンに分解しています。この2つのイオンが電気を伝えたり、金属を腐食したり、たんぱく質を凝固させるなどの働きをしています。印刷でphが関連するものは、用紙の塗工層、フィルム関係の現像液、PS版、CTP版現像液、湿し水、インキの乾燥などがあります。
 湿し水は原則として酸性である必要はないのですが通常の平版印刷(枚葉、オフ輪)ではpH5.5~6.0程度の湿し水が使用されています。この場合、湿し水のpH値が下がる=酸性に偏ると画線部が取れやすくなる、インキが乳化しやすくなる、インキの乾燥が悪くなる、インキローラーにインキが付きにくくなるなどの現象が現れます。 逆にpH値が上がる=アルカリ性に傾くとインキが乳化して汚れやすくなる現象があります。
 Phを測定する方法としては、ph計を使用して数値で表示する方式、ph試験紙を液に漬けて発色度合いから判断する方式です。Ph試験紙は簡便に測定できますが正確な測定ができません。

 

(2008年3月17日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

湿し水の導電率とは何ですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q: 湿し水の導電率とは何ですか。 

A:湿し水管理にはpH管理方式、導電率管理方式がありますがバラツキが多いので、現在ではエッチ液をある一定比率で原水と混ぜて補充する定量補充方式が採用されています。
 導電率(電気伝導度)とは電気の通しやすさを示す指標のことです。湿し水に電極を入れ、不純物が多いと電気の伝わりが悪く、不純物が少ないと電気の伝わりがいいということです。湿し水には電解質(酸類・塩類)が溶けているので、この濃度に比例して導電率が変化します。湿し水の管理では湿し水中の電解質濃度が高くなると導電率は大きくなります。この導電率の変化によりエッチ液の補充量を管理することができます。インキの粒子や油分などが湿し水を汚していますが、その量を電気の伝わり方で表示しているということです。
 濃度が高くなる=導電率が大きくなる=エッチ液の補充量が多いということです。実際の湿し水管理では、pH管理方式、導電率管理方式はバラツキが多いので、現在ではエッチ液をある一定比率で原水と混ぜて補充する定量補充方式が採用されています。 

 

(2008年3月17日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

紙粉により人物の顔の中央部分に汚れがでた印刷物が納入されたが、紙粉を無くすることはできないのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:紙粉により人物の顔の中央部分に汚れがでた印刷物が納入されたが、紙粉を無くすることはできないのでしょうか。

A:基本的に顧客は、紙面に汚れがある印刷物が納品されるとクレームをつけるケースが多いです。この場合は刷り直しや値引きになるケースが多いです。 
 紙粉とは紙面にある粉末状のゴミのことです。断裁の際に生ずる粉末状の切りくずが紙面に着いたものや製紙段階のスーパーカレンダー工程時の細かい粉、紙の表面から離れたテン料・繊維片などから生じます。
 細かいパルプ繊維が印刷中に紙の表面から剥離され、ブランケット表面に堆積したり湿し水に入りpHが変動することがあります。特に細かいダスト状の紙粉は版やブランケットに付着しインキ着肉不良の原因になります。
 対策としては紙をフィーダ部に積む前によく突き揃えをして風入れを行いながら紙粉の除去作業を行う、紙に対する印圧を若干少なくする、ゴミ取りローラーを使用する、版に捨てベタを入れるということが行なわれています。
 しかし、こうした対策を施しても紙粉は紙の性質によって出やすさが違ってきますが、多かれ少なかれどんな紙でも出るものです。したがって印刷機のオペレータは数百枚毎に抜き取りをして常に紙面のチェックをしなければなりません。もし、汚れを発見したときには機械を停止して版面とブランケットの洗浄をします。印刷現場としてはこのような紙粉発生防止対策と印刷時のチェック作業を行い、紙面に汚れや白抜けがでた印刷物が顧客に納品されないように努力しています。

 

(2008年5月12日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

IPAに代替するアルコールとはどんなものですか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:IPAに代替するアルコールとはどんなものですか。

A:IPAとはisopropyl alcoholの略で水によく溶ける有機溶剤です。化学的には水酸基を持った低級アルコールで、一般の飲用アルコールであるエタノールと類似の構造、性質を持った化合物です。この化合物が湿し水に使われ出したのは印刷機の湿し水機構がモルトン方式から連続給水方式に代わったときでした。連続給水方式では湿し水を十分に版に供給するために湿し水の粘度を上げる必要があります。また、高品質な印刷を遂行するためには水を絞らなくてはなりません(出来るだけ少ない水で非画像部を確実に覆う)。この2つの目的を達成するために連続給水方式では湿し水にIPAが大量に使用されてきました。
  しかし、社会全体で環境対応が強くさけばれるようになってからはIPAが避けられるようになりました。その理由としては2つあります。第一に法律の規制があります。IPAは労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則の第二種有機溶剤に指定されています。これに指定されると換気設備、環境測定、健康診断をしなければならないという義務が使用者に課せられることになります。第二に通常は数%から10%の添加で印刷しますが、添加すると臭気が厳しくなり作業環境が悪くなることから人の健康にも影響します。
そこでIPAの削減対策としてメーカーからノンアルコールエッチ液とIPA代替添加液の2つの提案があります。
  一般に湿し水に求められる機能としては表面張力低下、水の増粘、インキとの乳化コントロール、整面、防腐・防錆、消泡等があります。従来は表面張力低下と水の増粘をIPA、その他の機能をエッチ液の添加で達成して来ました。
 環境対応の一環としてメーカーとしては湿し水の機能を全て兼備したノンアルコールエッチ液を開発し、環境改善に貢献しています。またノンアルコールエッチ液だけでは不十分で、どうしてもIPAが必要な場合を想定して代替の添加液(商品名:AG-U2)を提供しています。ノンアルコールエッチ液は単体で使用し、AG-U2はエッチ液と併用します。

  代替アルコール(AG-U2)は基本的にIPAとよく似た性質の化合物で沸点も82℃でほぼIPAと同じような揮発性を示す有機溶剤ですが、分子構造の違いから労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則の規制を受けません。両者とも表面張力を落とし水の粘度と上げることが目的です。しかし、代替アルコール(AG-U2)は従来のIPAよりも少量の添加で目的を達成する効果があることが利点です。
  IPAの代替としては他に有機溶剤中毒予防規則規制外のエタノールもありますが、IPAの代替溶剤として多用されていましたが、エタノールは目的を達成するためにはより多くの添加量が必要になりますので、現在では縮小気味です。

  IPAの濃度は比重管理又はガスセンサーで管理されています。管理装置の適応を考慮して、IPA代替溶剤はAG-U2やエタノールのように化学的にも物性的にも類似の化合物が選択されています。
IPAの規制において有機溶剤中毒予防規則では5%以上のときに適用、とされています。反対解釈すると5%以下であれば規制がないということになりますが、実際には原液を容器から移すときなどは規制対象と考えられます。従って、5%以下の添加量であっても非規制材料への転換が望まれます。
  AG-U2、エタノールなどのIPA代替溶剤は労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則の規制を受けませんが構造、物性が類似した有機溶剤であるので全く無害ではなく、似たような影響はあります。実際の使用においては規制があるものと同じような扱いをすることが望まれます。それによって危険性が下がり環境もよくなるということです。
また、AG-U2についてはより少量で効果を発揮するので添加量を落とすことが出来、それによって職場環境の改善が達成されるものと考えられます。

 取材協力:光陽化学工業(株)

 

(2008年6月9日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

 

印刷機上でニスコーティングする機構はどうなっているのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:印刷機上でニスコーティングする機構はどうなっているのでしょうか。

A:現在の印刷機には印刷ユニットの後にニス専用のコータユニットを装着しているものが多いです。ここで使用されているニスには乾燥機構から、水性ニスとUVニスの2種類があります。
 水性ニスは塗布した後にIR、つまり熱風により水性ニスの水分を蒸発させ、エマルジョンや樹脂を固化させて乾燥させます。UVニスをコータにより塗布する場合、下地インキにはUVインキ、ハイブリットインキ、油性インキが選択できます。印刷機上でニスコーティングする機構にはロールコータ方式とチャンバーコータ方式があります。
 ロールコータ方式は湿し水装置と同様にニス舟にニスを満たし、そこに浸ったニス元ローラからそれに接触するその他のローラの回転によってニスを転移させていくのが一般的な方法です。ニス元ローラの回転数を変えることにより無段階にニスの盛りを変化させることができる利点があります。しかし盛り量をあまり多くできないという問題があり、ローラが複数ありニス舟を含めて洗浄に時間がかかります。
 チャンバーコータ方式はニス着けローラ自体にニスを供給する方式で、ローラに接するチャンバー(小部屋)にニスを送り込みローラ表面に形成された均一で微細なセル(小孔)にニスを入れ転移さていく方式です。このローラをアニロックスローラといいます。チャンバーにはブレードが取り付けられており、チャンバーからのニスの漏れを防ぐとともにアニロックスローラ表面のニスを均一にします。これはニスの盛り量がロールコータよりも多く盛れる点であり特にロールコータでは難しかった金や銀、蛍光色などのニスの厚盛りにはチャンバー方式が向いています。

両機構の特長は以下のようになっています。
●ロールコータ
①1種類でいろいろなニッフが調整できる。
②ニップを変えることにより塗布量を変えられる。
③ニップの固定が不安定にためニップの調整が難しい。
④ゴムロールの変化があるため、経時や温度により膜厚の変動、塗布量の不安定が予測される。
●チャンバーコータ
①塗布量の安定性。
②塗布量の調整(アニロックスローラの交換により)が容易。
③複数のアニロックスローラが必要であため経費と置き場が必要。
④アニロックスローラの交換に手間がかかる。
⑤アニロックスローラのセルの深さが決まっているので塗布ニス膜厚が固定される。

 現在はチャンバーコータが主流になっており、印刷機メーカーは複数のアニロックスローラ交換手間がかからないような装置の開発が行われています。品質面では膜厚を一定にすることが重視されているので、新台のほとんどがチャンバーコータ方式を採用しており、水性ニス・UVニスの両方に対応しています。
   参考資料「オフセット印刷技術(作業手順と知識)」日本印刷技術協会編

 

(2009年2月9日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

 

オフセット印刷用のJapan Color2001とオフ輪用のJapan Color2003がありますが、枚葉印刷と輪転印刷では何故色が違ってしまうのでしょうか。

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:オフセット印刷用のJapan Color2001とオフ輪用のJapan Color2003がありますが、枚葉印刷と輪転印刷では何故色が違ってしまうのでしょうか。

A:平版印刷での枚葉印刷と輪転印刷(この場合はドライヤーで熱風乾燥させるヒートセット型オフ輪とします)で色の違いが出るということには、様々な背景があります。
 乾燥の方式による違い
 枚葉印刷は自然に乾燥する方式で、それは植物油が「酸化重合」により固まり、また鉱物油は用紙に「浸透乾燥」することで、インキが時間をかけて用紙に固着されます。一方のオフ輪は紙面上で100度~110度ほどの熱を与え、鉱物油成分を瞬間的に蒸発させることでインキを固着します。この方式の違いにより、インキ表面は異なる印刷面を持つことで、光の反射等の影響もあり色が変わって見えます。

 紙の問題
  オフ輪用紙は縦目の紙を印刷方向に引っ張っていきますが、枚葉紙は縦目・横目の違いもあり、湿し水を含むことで逆目方向に用紙が伸びてしまいます。この影響で見当精度が悪くなり微妙な色変化がありますが、オフ輪の場合は同一の用紙でもこの点はあまり影響がなく、相違点が現れます。また、マット・上質系の用紙では、アート・コート紙よりもインキの量(膜厚)が多くなり、その用紙への転写量の違いでも色が変わってきます。

 根本的な相違は印刷機構の違い
 枚葉印刷は版胴・ブランケット胴・圧胴の3胴で用紙に転写しますが一般的なオフ輪は版胴・ブランケット胴が上下に並び、上下のブランケット胴の間に用紙が流れ、ブランケット胴が圧胴も兼ねて相互のインキを用紙に押しつけています。この違いにより印刷時のドットゲイン(インキの太り)やトラッピング(インキの刷り重ね量)、網点やベタのツブレなどに違いが出ます。この違いがもっとも普遍的なものです。

  枚葉とオフ輪の相違は絵柄・用紙・インキの色相・印刷速度・その他で様々な相違点が出てきますので、一概に答えはありませんが概ね、上記のような要因が主だと考えてください。

 

(2010年3月1日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)